説明

洗浄水タンク装置

【課題】排水時の排水弁を閉止する時間を変えることができ、貯水タンクの排水口から便器へと供給される洗浄水の水量が大、中、小の少なくとも3段階を含む多段階の便器洗浄を簡易な構造で実現することができる洗浄水タンク装置を提供する。
【解決手段】本発明の洗浄水タンク装置18は、貯水タンク22と、上下動することにより排水口22aを開閉して便器への洗浄水の供給を行う排水弁装置34の弁体74と、貯水タンクの内部領域について、排水口を含む第1の内部領域V1と排水口を含まない第2の内部領域V2とに分離する筒体36と、この筒体の壁体部36cに形成された開口部36aと、この開口部を開閉する切替弁72と、貯水タンクの排水口から便器へと供給される洗浄水の水量が大、中、小の少なくとも3段階を含む多段階の便器洗浄が可能となるように、排水弁が排水口を閉止する時間を切り替える排水弁閉止時間切替手段76a,76b,78と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄水タンク装置に係り、特に、便器を洗浄する洗浄水を貯水する洗浄水タンク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、便器を洗浄する洗浄水を貯水する洗浄水タンク装置として、例えば、特許文献1に記載されているように、洗浄水タンクの底部に形成された排水口とこの排水口を開閉させる排水弁とを囲むように筒体が設けられ、この筒体の側面には開口が形成されると共に、この筒体の開口を開閉する切替弁が設けられているものが知られている。
このような、従来の洗浄水タンク装置においては、便器の大洗浄を行う際には、筒体の開口が切替弁で開放されたままの状態で排水弁が上昇して排水口を開放することにより、洗浄水タンク内の洗浄水が筒体の開口を通過し、排水口から便器へ排出される洗浄水量を多くする一方、便器の小洗浄を行う際には、筒体の開口が切替弁で閉鎖された状態で排水弁が上昇して排水口を開放し、洗浄水タンク内から排水口を経て便器へ排出させる洗浄水量を少なくすることにより、大洗浄モードと小洗浄モードのいずれかの洗浄モードに切り替えるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61−72144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、水洗大便器において、男性の小便後には、トイレットペーパーなどを流す場合がほとんどなく、このようなトイレットペーパーなどを流さない場合には、従来の小洗浄より少ない洗浄水量で小便を排出できる。そして、近年のさらなる節水ニーズにより、従来の大洗浄及び小洗浄に加えて、小便のみを排出可能な、従来の小洗浄よりさらに洗浄水量の少ない小洗浄(本願では「エコ小洗浄」ともいう)が要望されている。
【0005】
しかしながら、上述した従来の洗浄水タンク装置では、筒体に形成された開口を全開するか或いは切替弁で閉鎖するかのいずれか一方で大洗浄と小洗浄とを行っているため、2段階の洗浄量しか得ることができないという問題があり、上述したような近年の節水ニーズには応えられないものとなっている。
【0006】
また、上述した従来の洗浄水タンク装置では、排水弁が上昇して排水口から洗浄水の排水が開始された後の排水弁は、大洗浄モードと小洗浄モードのいずれの洗浄モードにかかわらず、排水弁により排水口が閉鎖されるまで、排水弁が一定の速度で下降する。
したがって、上述した従来の洗浄水タンク装置において、例えば、小洗浄モードの洗浄水量よりもさらに少ない洗浄水量に設定したエコ小洗浄モード等、大洗浄モードや小洗浄モード以外の洗浄モードの洗浄水量に設定することができるようにするためには、筒体にさらなる開口とこれを開閉するさらなる切替弁を追加して設ける等、筒体の構造を複雑にしなければならないという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、上述した従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、排水時の排水弁を閉止する時間を変えることができ、貯水タンクの排水口から便器へと供給される洗浄水の水量が大、中、小の少なくとも3段階を含む多段階の便器洗浄を簡易な構造で実現することができる洗浄水タンク装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、便器を洗浄する洗浄水を貯水する洗浄水タンク装置であって、洗浄水を貯水し、底面に排水口が形成された貯水タンクと、上下動することにより上記排水口を開閉して便器への洗浄水の供給を行う排水弁と、上記貯水タンクの底面から上方に延びるように設けられた壁体であって、この壁体の上端部が上記排水弁による排水が開始される前の上記貯水タンク内の貯水水位よりも低い所定位置に位置し、上記貯水タンクの内部領域について、上記排水口側に配置される第1の内部領域とこの第1の内部領域の外側に配置される第2の内部領域とに分離する共に、上記第1の内部領域と上記第2の内部領域とを連通させる開口部が形成された上記壁体と、この壁体の開口部を開閉する開口部切替弁と、上記貯水タンクの排水口から便器へと供給される洗浄水の水量が大、中、小の少なくとも3段階を含む多段階の便器洗浄が可能となるように、上記排水弁が上記排水口を閉止する時間を切り替える排水弁閉止時間切替手段と、を有することを特徴としている。
このように構成された本発明においては、排水弁が上昇して貯水タンクの排水口が開放され、貯水タンク内の洗浄水が排水口から便器へと供給される際に、開口部切替弁により壁体の開口部を開放した状態と閉鎖した状態にそれぞれ設定することにより、少なくとも2段階の便器洗浄が可能となる。さらに、排水弁閉止時間切替手段により、排水弁が排水口を閉止する時間を切り替え、更なる段階の便器洗浄が可能となる。したがって、少なくとも2段階の便器洗浄が可能となる状態となっている壁体に複雑な構造を施すことなく、排水弁閉止時間切替手段を追加することによって、排水時の排水弁が排水口を閉止する時間を変化させることができ、貯水タンクの排水口から便器へと供給される洗浄水の水量が大、中、小の少なくとも3段階を含む多段階の便器洗浄を簡易な構造で実現することができる。
【0009】
本発明において、好ましくは、上記排水弁閉止時間切替手段は、上記排水弁の上方に洗浄水を貯水する共にその貯水された洗浄水を所定流量で排出する水抜き穴が形成された貯水部と、この貯水部の水抜き穴を開閉する水抜き穴切替弁と、を備え、上記排水弁閉止時間切替手段は、上記水抜き穴切替弁により上記貯水部の水抜き穴を閉鎖した状態で、上記貯水部に貯水された洗浄水の荷重を上記排水弁に作用させることにより、上記排水弁が上記排水口を閉止する時間を早める。
このように構成された本発明においては、排水弁が上昇して貯水タンクの排水口が開放され、貯水タンク内の洗浄水が排水口から便器へと供給される際、排水弁閉止時間切替手段の水抜き穴切替弁が貯水部の水抜き穴を閉鎖した状態に設定することにより、貯水部に貯水された洗浄水の荷重が錘となって、排水弁が閉止する時間が早まり、且つ安定して下降することができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、上記排水弁閉止時間切替手段は、上記排水弁が最も上昇した状態では、上記貯水部の上端が上記壁体の上端以下に位置するように設定する。
このように構成された本発明においては、排水弁が最も上昇した状態では、排水弁閉止時間切替手段の貯水部の上端が壁体の上端以下に位置していることにより、大、中、小の少なくとも3段階を含む多段階の便器洗浄のいずれの場合においても、貯水タンクの第1の内部領域内の洗浄水の水位の下降が開始することにより、排水弁の下降を開始させることができ、排水弁が排水口を閉鎖した際の閉止音を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置が適用された水洗便器の断面図である。
【図2】本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置の概略構造を示す正面断面図である。
【図3】本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置の排水弁装置の分解斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置の排水弁装置の排水開始前の状態を示す正面断面図である。
【図5】本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置の排水弁装置の大洗浄モードにおける排水開始時の状態を示す概略断面図である。
【図6】本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置の排水弁装置の大洗浄モードにおける排水開始直後の状態を示す概略断面図である。
【図7】本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置の排水弁装置の大洗浄モードにおける排水途中の状態を示す概略断面図である。
【図8】本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置の排水弁装置の大洗浄モードにおける排水終了後の状態を示す概略断面図である。
【図9】本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置の排水弁装置の小洗浄モードにおける排水開始時の状態を示す概略断面図である。
【図10】本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置の排水弁装置の小洗浄モードにおける排水途中の状態を示す概略断面図である。
【図11】本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置の排水弁装置の小洗浄モードにおける排水終了後の状態を示す概略断面図である。
【図12】本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置の排水弁装置のエコ小洗浄モードにおける排水開始時の状態を示す概略断面図である。
【図13】本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置の排水弁装置のエコ小洗浄モードにおける排水途中の状態を示す概略断面図である。
【図14】本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置の排水弁装置のエコ小洗浄モードにおける排水終了後の状態を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
つぎに、添付図面により、本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置を説明する。
まず、図1により、本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置が適用された水洗便器を説明する。図1は、本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置が適用された水洗便器の断面図である。
【0013】
図1に示すように、符号1は洗落し式の水洗便器を示し、この便器1は、便器本体2を備え、この便器本体2にはボウル部4と、導水路6と、ボウル部4の下部と連通するトラップ管路8がそれぞれ形成されている。便器本体2のボウル部4の上縁部には、内側にオーバーハングしたリム10と、導水路6から供給される洗浄水を吐水する第1吐水口12が形成され、この第1吐水口12から吐水された洗浄水は、旋回しながら下降してボウル部を洗浄するようになっている。
【0014】
ボウル部4の下方には、一点鎖線で貯留面W0が示された溜水部14が形成されている。この溜水部14の下方には、排水トラップ管路8の入口8aが開口し、この入口8aから上昇路8bが後方に延びている。この上昇路8bには下降路8cが連続し、下降路8cの下端は排水ソケット(図示せず)を介して床下の排出管(図示せず)に接続されている。また、ボウル部4の貯留面W0の上方位置には、導水路6から供給される洗浄水を吐水する第2吐水口16が形成され、この第2吐水口16から吐水される洗浄水が溜水部14の溜水を上下方向に旋回させる旋回流を生じさせるようになっている。
【0015】
便器本体2の導水路6の上方には、便器本体2に供給する洗浄水を貯水する洗浄水タンク装置18が設けられている。後述するように、洗浄水タンク装置18の貯水タンク22の底部には、便器本体2の導水路6と連通する排水口22aが形成され、貯水タンク22内の洗浄水が導水路6へと排水されるようになっている。
【0016】
つぎに、図2により、洗浄水タンク装置18の概略構成について説明する。図2は、本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置の概略構造を示す正面断面図である。
なお、本実施形態による洗浄水タンク装置は、上述した洗落し式以外の他のタイプの水洗便器(例えば、サイホン式水洗便器など)にも適用可能である。
【0017】
図2に示すように、洗浄水タンク装置18は、陶器製の外装タンク20と、その内方に配置され、洗浄水を貯水する貯水タンク22と、外装タンク20に載せられる蓋体24と、を備えている。
【0018】
貯水タンク22は、それを取り囲むように断熱体26が設けられ、この断熱体26を介して、所定の係合部材28により、貯水タンク22が外装タンク20に取り付けられる。また、貯水タンク22の底面には、上述した便器本体の導水路6に連通する排水口22aが排水口部材22bによって形成されている。この排水口部材22bは、所定の係合部材30で固定され、貯水タンク22が外装タンク20に取り付けられる。
【0019】
また、蓋体24には、蓋体24に形成された手洗い鉢24aに手洗い用の水を吐水する手洗いカラン32が設けられている。手洗いカラン32から吐水された手洗い鉢24aの水は、手洗い鉢24aに形成された吐水口(流入口)24bにより、貯水タンク22に流入される。
この蓋体24の下方には、吐水口24bから流入する水を、後述する排水弁装置34の筒体36内に導く導水部材38が設けられている。
【0020】
つぎに、洗浄水タンク装置18は、洗浄水給水装置40を備えている。この洗浄水給水装置40は、従来のものと同様のものであり、外部の水道管などの給水源(図示せず)に接続される給水管42、給水装置用フロート44、給水管42と連通し、貯水タンク22に洗浄水を吐水する吐水管45、給水装置用フロート44にレバー46を介して連結される給水バルブ48などを備えている。
【0021】
本実施形態では、この洗浄水給水装置40により、排水開始の所定時間後、給水を開始するようにしている。本実施形態では、貯水タンク22の満水時の止水水位は、図2に示す位置(WL0)で一定になるようにしている。
【0022】
また、この洗浄水給水装置40は、手洗いカラン32に水を供給する手洗い給水管50を備え、便器への洗浄水の供給開始時(排水開始時)、上述した蓋体24の手洗いカラン32に水の供給を開始するようにしている。
【0023】
つぎに、洗浄水タンク装置18は、操作装置52及びこの操作装置52の操作により作動される排水弁装置34を備えている。
操作装置52は、操作レバー54と、モータ56と、このモータ56に接続される操作ボタン58と、を備える。
操作ボタン58は、後述する大洗浄用、小洗浄用、エコ小洗浄用の3つの操作ボタンを備えている。
【0024】
操作レバー54は、一方(本実施形態では、手前側)に(90度)回動させると、後述する大洗浄が開始され、他方(本実施形態では、奥側)に(90度)回動させると、後述する小洗浄が開始されるように、排水弁装置34を作動させる手動式の操作レバーである。
【0025】
また、モータ56は、大洗浄のボタンが押されると、操作レバー54と同一の一方(手前側)の方向に回転し、小洗浄のボタンが押されると、操作レバー54と同一の他方(奥側)の方向に回転して、それぞれ、大洗浄或いは小洗浄が開始されるように排水弁装置34を作動させるようになっている。
このように、本実施形態では、使用者は、大洗浄及び小洗浄については、操作レバー54を操作してもよいし、操作ボタン58を押してもよい。
さらに、エコ小洗浄については、モータ56によってのみ、即ち、使用者が操作ボタン58を押すことによって、排水弁装置34が作動される。
【0026】
これらの操作レバー54及びモータ56には、ワイヤー部材やユニバーサルジョイントなどにより構成される回転伝達部材60が連結されている。
この回転伝達部材60の他端側には、その回転に伴って、回転伝達部材60を中心に揺動する第1の引き上げ部材62及び第2の引き上げ部材64が取り付けられ、これらの第1の引き上げ部材62及び第2の引き上げ部材64の先端部には、それぞれ、第1玉鎖66の上端部分及び第2玉鎖68の上端部分が取り付けられている。
【0027】
これらの第1の引き上げ部材62及び第2の引き上げ部材64は、回転伝達部材60を一方側(大洗浄時)に回転させると、第1の引き上げ部材62のみが、その一方側に揺動して第1玉鎖66のみを引き上げ、一方、回転伝達部材60を他方側(小洗浄時)に回転させると、第1の引き上げ部材62及び第2の引き上げ部材64の両方が、その他方側に揺動して第1玉鎖66及び第2玉鎖68の両方を引き上げるような機構とされている。
【0028】
つぎに、図2〜図4により、排水弁装置34について説明する。
図3は、本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置の排水弁装置の分解斜視図であり、図4は、本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置の排水弁装置の排水開始前の状態を示す正面断面図である。
まず、図3に示すように、本実施形態による洗浄水タンク装置18の排水弁装置34は、貯水タンク22の底面に取り付けれて排水口22aを形成する排水口形成部材22bと、この排水口形成部材22bを取り囲むように貯水タンク22の底面から上方に延びるように設けられた筒体36と、この筒体36の内方に上下方向に延びるように配置され、排水口22aと連通するように排水口形成部材22bに取り付けられるオーバーフロー管70と、筒体36の側面に形成された開口部36aを開閉する切替弁72と、弁体74と、この筒体36の内方に配置されるフロート76と、このフロート76の上端部に回動可能に取り付けられ、後述するフロート76の貯水部76aの底面に形成された水抜き穴76bを開閉する切替弁部材78を備えている。
【0029】
図3に示すように、筒体36の開口部36aは、筒体36の一側面における上下方向の中間部よりも下方に形成され、この開口部36aの断面は、ほぼ矩形状となっている。
また、筒体36は、開口部36aの下方且つ側方の両側に軸36bを備え、切替弁72は、筒体36の軸36bに回動可能取り付けられる受部72aを備えている。
さらに、切替弁72の上端部には、第2玉鎖68の下端部が取り付けられ、第2の引き上げ部材64が第2玉鎖68を引き上げることにより、切替弁72が、筒体36の軸36bを中心に所定の下方位置から開口部36aを閉鎖する位置まで回動することができるようになっている。
【0030】
また、切替弁72には、錘80が取り付けられている。図2に示すような第2の引き上げ部材64による引き上げが行われる前の状態で切替弁72が開口部36aを開放している初期位置の状態から、第2の引き上げ部材64による第2玉鎖68の引き上げが行われて切替弁72が開口部36aを閉鎖した後、第2の引き上げ部材64による第2玉鎖68の引き上げが解除された際に、切替弁72の自重と錘80の重さにより、切替弁72が開口部36aを開放している初期位置の状態に戻るようになっている。
【0031】
フロート76は、上方が開放されて底面に水抜き穴76bが形成された貯水部76aと、この貯水部76aの上端から上方に延びて、切替弁部材78の軸78aが回動可能に取り付けられる受部76cと、貯水部76aの底面よりも下方に空間を形成すると共に、その下端に弁体74が取り付けられるフロート部76dを備えている。
【0032】
また、フロート76は、オーバーフロー管70の円筒部70aの外周に沿って上下方向に摺動可能に取り付けられたガイド部76eを備え、弁体74は、フロート76と共にオーバーフロー管70の円筒部70aの外周に沿って上下動可能であり、排水口形成部材22bの上端に位置する弁座22cに着座すると、排水口22aを閉鎖する排水弁として機能するようになっている。
【0033】
さらに、図2及び図4に示すように、筒体36は、貯水タンク22の底面から上方に延びてほぼ直方体形状の筒体36を形成する壁体部36c,36d,36e,36fを備え、筒体36の各壁体部36c,36d,36e,36fの上端は、排水弁装置34による排水が開始される前の貯水タンク22内の貯水水位、すなわち、貯水タンク22の満水時の止水水位WL0よりも低い所定位置に位置している。
また、貯水タンク22の内部領域は、筒体36の各壁体部36c,36d,36e,36fにより、貯水タンク22内において、筒体36の各壁体部36c,36d,36e,36fの上端以下に配置される貯水タンク22の内部領域は、排水口22a及び弁体74を含む第1の内部領域V1と、排水口22a及び弁体74を含まない第2の内部領域V2とに分離されている。
【0034】
さらに、切替弁部材78は、フロート76の貯水部76aの水抜き穴76bを開閉する弁部78bを備え、切替弁部材78の上端部には、第1玉鎖66の下端が連結されている。第1の引き上げ部材62が揺動することにより、第1玉鎖66が水平方向に移動すると、切替弁部材78が、フロート76の受部76cに回動可能に取り付けられている軸78aと共に回動し、切替弁部材78の弁部78bが、フロート76の貯水部76aの水抜き穴76bを開閉するようにスライドすることができるようになっている。
【0035】
また、これらのフロート76の貯水部76a、この貯水部76aの水抜き穴76b、この水抜き穴76bを開閉する切替弁部材78は、貯水タンク22の排水口22aから便器本体2へと供給される洗浄水の水量が大、中、小の少なくとも3段階を含む多段階の便器洗浄が可能となるように、排水弁装置34の弁体74が排水口22aを閉止する時間を切り替える排水弁閉止時間切替手段として機能するようになっている。
ここで、排水弁装置34の弁体74が排水口22aを閉止する時間(排水弁閉止時間)については、操作ボタン58又は操作レバー54の操作によりフロート76及び弁体74が最も上昇した時からフロート76及び弁体74が下降し、弁体74が排水口22aを閉鎖して停止する時までの時間に相当している。
【0036】
本実施形態においては、小洗浄モード及びエコ小洗浄モードによる便器洗浄が行われる際には、このような排水弁閉止時間切替手段により、排水弁装置34の弁体74が排水口22aを閉止する時間が、大洗浄モード時よりも早まるように切替られる。
【0037】
大洗浄モード、小洗浄モード、エコ小洗浄モードのいずれの洗浄モードによる便器洗浄が行われる排水開始時にフロート76及び弁体74が最も上昇した状態となるようになっているが、この状態では、フロート76の貯水部76aの上端が筒体36の壁体部36c,36d,36e,36fの上端以下に位置するように設定されている。
【0038】
つぎに、図2〜図14により、本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置の動作(作用)を説明する。
まず、図2〜図8により、本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置により実行される3種類の洗浄モードのうちの大洗浄モードについて説明する。
図5は、本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置の排水弁装置の大洗浄モードにおける排水開始時の状態を示す概略断面図であり、図6は、本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置の排水弁装置の大洗浄モードにおける排水開始直後の状態を示す概略断面図である。
また、図7は、本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置の排水弁装置の大洗浄モードにおける排水途中の状態を示す概略断面図であり、図8は、本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置の排水弁装置の大洗浄モードにおける排水終了後の状態を示す概略断面図である。
【0039】
まず、図4に示すように、洗浄水タンク装置18の大洗浄モードにおける排水開始前の状態では、排水口22aが排水弁装置34の弁体74によって閉鎖されている。
このとき、切替弁72は、自重と錘80の重さにより、筒体36の開口部36aを開放した状態となっている。
また、フロート76の貯水部76aの水抜き穴76bは、切替弁部材78の弁部78bによって開放された状態となっている。
【0040】
つぎに、図5に示すように、大洗浄モードを開始する際、使用者が図2に示す操作レバー54を手前側に90度回転させ、或いは、大洗浄のボタンが押されモータ56が作動されると、図2に示す初期位置の状態の第1の引き上げ部材62のみが揺動され、第1玉鎖66を介して排水弁装置34のフロート76が引き上げられる。
このとき、図5に示すように、フロート76及び弁体74は、最も上昇した状態となり、フロート76の貯水部76aの上端が、筒体36の壁体部36c,36d,36e,36fの上端と同一の高さ位置にあるか、或いは、筒体36の壁体部36c,36d,36e,36fの上端よりもわずかに低い高さ位置にある。
これにより、排水弁装置34の弁体74が上昇して排水口22aが開放され、排水が開始され、貯水タンク22の水位WL1が低下するが、排水開始時には、貯水タンク22の第1の内部領域V1、第2の内部領域V2、及び筒体36のフロート76の貯水部76aには、洗浄水が満たされている状態となっている。
また、フロート76の貯水部76aの水抜き穴76bは、切替弁部材78の弁部78bによって開放された状態となっている。
【0041】
一方、第2の引き上げ部材64は揺動せず、第2玉鎖68は第2の引き上げ部材64によって引き上げられないため、切替弁72は筒体36の開口部36aを開放したままの状態となっている。
第1の引き上げ部材62によってフロート76の引き上げが完了すると、操作レバー54は初期位置に戻されて、第1の引き上げ部材62が初期位置に戻され、或いは、第1の引き上げ部材62が初期位置に戻るようにモータ56が作動される。
【0042】
つぎに、図6に示すように、排水開始後、切替弁72が筒体36の開口部36aを開放したままの状態で、貯水タンク22内の洗浄水の全体の水位が時間と共に低下し、図6に二点鎖線WL2で示されている筒体36の上縁部(上面)付近の水位まで低下した時点で、筒体36の内部領域V1(貯水タンク22の第1の内部領域V1)の洗浄水が、筒体36の外部領域V2(貯水タンク22の第2の内部領域V2)の洗浄水よりも優先的に排水口22aから排出されるようになり、筒体36の内部領域V1の洗浄水の水位WL3が、筒体36の外部領域V2の洗浄水の水位WL4よりも低下する。
このとき、フロート76の貯水部76aの水抜き穴76bは、切替弁部材78の弁部78bによって開放された状態となっており、フロート76の貯水部76a内と筒体36の内部領域V1とが水抜き穴76bによって連通しているため、フロート76の貯水部76a内の水位は、筒体36の内部領域V1の水位WL3と等しくなる。
【0043】
その後、図6に示す筒体36の内部領域V1の水位WL3と筒体36の外部領域V2の水位WL4とが、時間の経過とともに低下すると、図7に示すように、フロート76及び弁体74が筒体36の内部領域V1の水位の低下と共に低下する。
そして、フロート76の貯水部76a内の洗浄水が水抜き穴76bから筒体36の内部領域V1に抜けて、筒体36の内部領域V1の水位WL5が筒体36の開口部36aの上縁部付近まで低下した時点で、筒体36の内部領域V1の水位WL5と筒体36の外部領域V2の水位WL6が等しくなる。
【0044】
つぎに、図8に示すように、筒体36の内部領域V1の水位WL5と筒体36の外部領域V2の水位WL6が同一水位WL7で時間とともに低下すると、フロート76及び弁体74もこの水位WL7と共に低下し、弁体74が弁座22cに着座して排水口22aを閉鎖し、排水が終了する。
【0045】
最終的には、図8に示す貯水タンク22の内部領域V1,V2の洗浄水の全体の水位WL7は、弁体74が排水口22aを閉鎖した後に、筒体36の外部領域V2の洗浄水が、筒体36の開口部36aを介して筒体36の内方に流入し、最終的に得られる死水水位である。
また、フロート76の貯水部76a内の水位についても、筒体36の内部領域V1とが水抜き穴76bによって連通しているため、貯水タンク22の内部領域V1,V2の洗浄水の全体の水位WL7と等しくなる。
なお、大洗浄モード時に貯水タンク22の排水口22aから便器本体2へ排出されて便器洗浄に使用される洗浄水量Q1は、図4及び図8に示す排水開始前の貯水タンク22内の水位WL0から図8に示す排水終了後の貯水タンク22内の水位WL7を差し引いた水位に相当する洗浄水量となる。
【0046】
つぎに、図4及び図9〜図11により、本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置により実行される3種類の洗浄モードのうちの小洗浄モードについて説明する。
図9は、本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置の排水弁装置の小洗浄モードにおける排水開始時の状態を示す概略断面図であり、図10は、本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置の排水弁装置の小洗浄モードにおける排水途中の状態を示す概略断面図であり、図11は、本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置の排水弁装置の小洗浄モードにおける排水終了後の状態を示す概略断面図である。
【0047】
まず、図4に示すように、洗浄水タンク装置18の小洗浄モードにおける排水開始前の状態では、上述した大洗浄モードと同様に、排水口22aが排水弁装置34の弁体74によって閉鎖され、切替弁72は、自重と錘80の重さにより、筒体36の開口部36aを開放した状態となっている。
また、フロート76の貯水部76aの水抜き穴76bは、切替弁部材78の弁部78bによって開放された状態となっている。
【0048】
つぎに、図9に示すように、小洗浄モードを開始する際、使用者が図2に示す操作レバー54を奥側に90度回転させ、或いは、小洗浄のボタンが押されモータ56が作動されると、第1の引き上げ部材62及び第2の引き上げ部材64の両方が揺動する。
【0049】
また、第1の引き上げ部材62の揺動により、第1玉鎖66を介してフロート76が引き上げられ、これにより、排水口22aが開いて、排水が開始されると共に、フロート76の貯水部76aの水抜き穴76bは、切替弁部材78の弁部78bによって閉鎖される。
さらに、第2の引き上げ部材64の揺動により、第2玉鎖68を介して切替弁72が引き上げられ、切替弁72が筒体36の開口部36aを閉鎖する。
【0050】
このとき、図9に示すように、フロート76及び弁体74は、最も上昇した状態となり、フロート76の貯水部76aの上端が、筒体36の壁体部36c,36d,36e,36fの上端と同一の高さ位置にあるか、或いは、筒体36の壁体部36c,36d,36e,36fの上端よりもわずかに低い高さ位置にある。
これにより、排水弁装置34の弁体74が上昇して排水口22aが開放され、排水が開始され、貯水タンク22の水位WL101が低下するが、排水開始時には、貯水タンク22の第1の内部領域V1、第2の内部領域V2、及び筒体36のフロート76の貯水部76aには、洗浄水が満たされている状態となっている。
【0051】
このような第1の引き上げ部材62及び第2の引き上げ部材64による引き上げの完了の直後に操作レバー54は初期位置に戻されて、第1の引き上げ部材62が初期位置に戻され、或いは、第1の引き上げ部材62が初期位置に戻るようにモータ56が作動される。
【0052】
第2玉鎖68を介して切替弁72が引き上げられた後、一端、切替弁72が筒体36の開口部36aを閉鎖するが、その後、図10に示すように、切替弁72は、その自重と錘80の重さにより、筒体36の開口部36aを開放する。
【0053】
また、貯水タンク22内の洗浄水の全体の水位が、図10に二点鎖線WL2で示されている筒体36の上縁部(上面)付近の水位まで低下した時点で、筒体36の内部領域V1の洗浄水が、筒体36の外部領域V2の洗浄水よりも優先的に排水口22aから排出されるようになり、筒体36の内部領域V1の洗浄水の水位WL103が、筒体36の外部領域V2の洗浄水の水位WL104よりも低下する。
このとき、フロート76の貯水部76aの水抜き穴76bは、切替弁部材78の弁部78bによって閉鎖されたままの状態となっており、フロート76の貯水部76a内には洗浄水が満水状態となっている。
したがって、このようなフロート76の貯水部76a内に貯水された洗浄水の荷重が錘(水錘)となって、フロート76及び弁体74を押し下げる力として作用するため、フロート76及び弁体74が、筒体36の内部領域V1の洗浄水の水位WL103より下に沈み込み、その状態を維持しつつ水位WL103の下降速度とほぼ同一の速度で下降するか、或いは、筒体36の内部領域V1の洗浄水の水位WL103よりも早い速度で下降する。この結果、フロート76及び弁体74が、上述した大洗浄モードより早く降下することになり、排水口22aを早く閉止することになる。
【0054】
その後、図11に示すように、フロート76及び弁体74が、フロート76の貯水部76aの水抜き穴76bが切替弁部材78の弁部78bによって閉鎖されたままの状態で、上述した大洗浄モードよりも早く下降し、弁体74が弁座22cに着座して排水口22aを早く閉鎖し、排水が終了する。
【0055】
最終的には、図11に示す貯水タンク22の内部領域V1,V2の洗浄水の全体の水位WL105は、弁体74が排水口22aを閉鎖した後に、筒体36の外部領域V2の洗浄水が、筒体36の開口部36aを介して筒体36の内方に流入し、最終的に得られる死水水位である。
また、フロート76の貯水部76aの水抜き穴76bが切替弁部材78の弁部78bによって閉鎖されているが、フロート76の貯水部76a内の水位についても、筒体36の内部領域V1の水位がフロート76の貯水部76aの上端を上回るため、貯水タンク22の内部領域V1,V2の洗浄水の全体の水位WL105と等しくなる。
【0056】
なお、小洗浄モード時に貯水タンク22の排水口22aから便器本体2へ排出されて便器洗浄に使用される洗浄水量Q2は、図4及び図11に示す排水開始前の貯水タンク22内の水位WL0から図11に示す排水終了後の貯水タンク22内の水位WL105を差し引いた水位に相当する洗浄水量となり、大洗浄モード時に使用される洗浄水量Q1よりも少ない洗浄水量となる。
【0057】
つぎに、図4及び図12〜図14により、本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置により実行される3種類の洗浄モードのうちのエコ小洗浄モードについて説明する。
図12は、本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置の排水弁装置のエコ小洗浄モードにおける排水開始時の状態を示す概略断面図であり、図13は、本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置の排水弁装置のエコ小洗浄モードにおける排水途中の状態を示す概略断面図であり、図14は、本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置の排水弁装置のエコ小洗浄モードにおける排水終了後の状態を示す概略断面図である。
【0058】
まず、図4に示すように、洗浄水タンク装置18のエコ小洗浄モードにおける排水開始前の状態では、上述した大洗浄モード及び小洗浄モードと同様に、排水口22aが排水弁装置34の弁体74によって閉鎖され、切替弁72は、自重と錘80の重さにより、筒体36の開口部36aを開放した状態となっている。
また、フロート76の貯水部76aの水抜き穴76bは、切替弁部材78の弁部78bによって開放された状態となっている。
【0059】
つぎに、図12に示すように、エコ小洗浄モードを開始する際、使用者が図2に示す操作レバー54を奥側に90度回転させ、或いは、エコ小洗浄のボタンが押されモータ56が作動されると、第1の引き上げ部材62及び第2の引き上げ部材64の両方が揺動する。
【0060】
また、第1の引き上げ部材62の揺動により、第1玉鎖66を介してフロート76が引き上げられ、これにより、排水口22aが開いて、排水が開始されると共に、フロート76の貯水部76aの水抜き穴76bは、切替弁部材78の弁部78bによって閉鎖される。
さらに、第2の引き上げ部材64の揺動により、第2玉鎖68を介して切替弁72が引き上げられ、切替弁72が筒体36の開口部36aを閉鎖する。
【0061】
このとき、図12に示すように、フロート76及び弁体74は、最も上昇した状態となり、フロート76の貯水部76aの上端が、筒体36の壁体部36c,36d,36e,36fの上端と同一の高さ位置にあるか、或いは、筒体36の壁体部36c,36d,36e,36fの上端よりもわずかに低い高さ位置にある。
これにより、排水弁装置34の弁体74が上昇して排水口22aが開放され、排水が開始され、貯水タンク22の水位WL201が低下するが、排水開始時には、貯水タンク22の第1の内部領域V1、第2の内部領域V2、及び筒体36のフロート76の貯水部76aには、洗浄水が満たされている状態となっている。
【0062】
このような第1の引き上げ部材62及び第2の引き上げ部材64による引き上げの完了の直後に操作レバー54は初期位置に戻されて、第1の引き上げ部材62が初期位置に戻され、或いは、第1の引き上げ部材62が初期位置に戻るようにモータ56が作動される。
また、エコ小洗浄モードでは、使用者が操作ボタン58を押すことによって、モータ56によって、第2の引き上げ部材64が引き上げた状態が維持され、切替弁72が筒体36の開口部36aを閉鎖した状態が終始維持される。
【0063】
つぎに、図13に示すように、排水開始後、貯水タンク22内の洗浄水の全体の水位が時間と共に低下し、図13に二点鎖線WL2で示されている筒体36の上縁部(上面)付近の水位まで低下した時点で、筒体36の内部領域V1の洗浄水のみが、排水口22aから排出されるようになり、筒体36の内部領域V1の洗浄水の水位WL203が、筒体36の外部領域V2の洗浄水の水位WL2よりも低下する。
このとき、フロート76の貯水部76aの水抜き穴76bは、切替弁部材78の弁部78bによって閉鎖されたままの状態となっており、フロート76の貯水部76a内には洗浄水が満水状態となっている。
したがって、このようなフロート76の貯水部76a内に貯水された洗浄水の荷重が錘(水錘)となって、フロート76及び弁体74を押し下げる力として作用するため、フロート76及び弁体74が、筒体36の内部領域V1の洗浄水の水位WL203より下に沈み込み、その状態を維持しつつ水位WL203の下降速度と略同一の速度で下降するか、或は、筒体36の内部領域V1の洗浄水の水位WL203が下降する速度よりも早い速度で下降する。この結果、フロート76及び弁体74が、上述した大洗浄モードより早く降下することになり、排水口22aを早く閉止することになる。
【0064】
その後、図14に示すように、フロート76及び弁体74が、フロート76の貯水部76aの水抜き穴76bが切替弁部材78の弁部78bによって閉鎖されたままの状態で、上述した大洗浄モードよりも早く下降し、弁体74が弁座22cに着座して排水口22aを早く閉鎖し、排水が終了する。
【0065】
最終的には、図14に示すように、貯水タンク22の第1の内部領域V1の水位WL204は、フロート76の貯水部76aの上端部よりも高く且つ貯水タンク22の第2の内部領域V2の水位WL2よりも低い水位となり、貯水タンク22の第1の内部領域V1の水位WL204と第2の内部領域V2の水位WL2が、最終的に得られる死水水位である。
【0066】
なお、エコ小洗浄モード時に貯水タンク22の排水口22aから便器本体2へ排出されて便器洗浄に使用される洗浄水量Q3は、図4及び図14に示す排水開始前の貯水タンク22内の水位WL0から図14に示す排水終了後の貯水タンク22内の水位WL2,WL204を差し引いた水位に相当する洗浄水量となり、大洗浄モード時に使用される洗浄水量Q1及び小洗浄モード時に使用される洗浄水量Q2よりも少ない洗浄水量となる。
【0067】
上述した本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置18によれば、排水弁装置34の弁体74が上昇して貯水タンク22の排水口22aが開放され、貯水タンク22内の洗浄水が排水口22aから便器本体2へと供給される際に、切替弁72により筒体36の開口部36aを開放した状態と閉鎖した状態にそれぞれ設定することにより、大洗浄モードと小洗浄モード、或いは、小洗浄モードとエコ小洗浄モードによる少なくとも2段階の便器洗浄が可能となる。
さらに、切替弁部材78によってフロート76の貯水部76aの水抜き穴76bを閉鎖することにより、切替弁部材78によってフロート76の貯水部76aの水抜き穴76bを開放している場合よりも排水弁装置34の弁体74が排水口22aを閉止する時間を早めて、排水口22aを早く閉鎖し、更なる段階の便器洗浄が可能となる。
したがって、少なくとも2段階の便器洗浄が可能となる状態となっている筒体36において、さらなる開口部を設けたりする等の複雑な構造を施すことなく、切替弁部材78によってフロート76の貯水部76aの水抜き穴76bを開閉することにより、排水弁装置34の弁体74が排水口22aを閉止する時間を変化させることができるため、貯水タンク22の排水口22aから便器本体2へと供給される洗浄水の水量が大、中、小の少なくとも3段階(大洗浄、小洗浄、エコ小洗浄)を含む多段階の便器洗浄を簡易な構造で実現することができる。
【0068】
また、本実施形態による洗浄水タンク装置18によれば、排水弁装置34の弁体74が上昇して貯水タンク22の排水口22aが開放され、貯水タンク22内の洗浄水が排水口22aから便器本体2へと供給される際、切替弁部材78によってフロート76の貯水部76aの水抜き穴76bを閉鎖した状態に設定することにより、フロート76の貯水部76aに貯水された洗浄水の荷重が錘(水錘)となって、排水弁装置34の弁体74の排水口22aを閉止する時間が、切替弁部材78によってフロート76の貯水部76aの水抜き穴76bを開放している場合よりも早く且つ安定して下降することができる。
【0069】
さらに、本実施形態による洗浄水タンク装置18によれば、排水弁装置34の弁体74が最も上昇した状態では、フロート76の貯水部76aの上端が筒体36の壁体部36c,36d,36e,36fの上端以下に位置していることにより、大、中、小の少なくとも3段階(大洗浄、小洗浄、エコ小洗浄)を含む多段階の便器洗浄のいずれの場合においても、貯水タンク22の第1の内部領域V1内の洗浄水の水位の下降が開始することにより、排水弁装置34の弁体74の下降を開始させることができ、排水弁装置34の弁体74が排水口22aを閉鎖した際の閉止音を低減させることができる。
【0070】
なお、上述した本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置においては、一例として、フロート76及び弁体74が最も上昇した状態でフロート76の貯水部76aの上端が筒体36の壁体部36c,36d,36e,36fの上端以下に位置するように設定した形態について説明したが、このような形態に限定されず、フロート76及び弁体74が最も上昇した状態でフロート76の貯水部76aの上端が筒体36の壁体部36c,36d,36e,36fの上端よりも上方に位置するようにしてもよい。
【0071】
また、上述した本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置においては、一例として、筒体36の壁体部36c,36d,36e,36fによって、貯水タンク22の内部領域について排水口22aを含む第1の内部領域V1と排水口22aを含まない第2の内部領域V2とに分離するような形態について説明したが、筒体36を設ける代わりに、貯水タンク22の内部領域V1,V2を分離する壁体を貯水タンク22内に設けてもよい。
【符号の説明】
【0072】
1 水洗便器
2 便器本体
4 ボウル部
6 導水路
8 トラップ管路
8a 排水トラップ管路の入口
8b 排水トラップ管路の上昇路
8c 排水トラップ管路の下降路
10 リム
12 第1吐水口
14 溜水部
16 第2吐水口
18 洗浄水タンク装置
20 外装タンク
22 貯水タンク
22a 排水口
22b 排水口形成部材
22c 弁座
24 蓋体
24a 手洗い鉢
24b 吐水口
26 断熱体
28 係合部材
30 係合部材
32 手洗いカラン
34 排水弁装置
36 筒体
36a 開口部
36b 軸
36c 壁体部
36d 壁体部
36e 壁体部
36f 壁体部
38 導水部材
40 洗浄水給水装置
42 給水管
44 給水装置用フロート
45 吐水管
46 レバー
48 給水バルブ
50 手洗い給水管
52 操作装置
54 操作レバー
56 モータ
58 操作ボタン
60 回転伝達部材
62 第1の引き上げ部材
64 第2の引き上げ部材
66 第1玉鎖
68 第2玉鎖
70 オーバーフロー管
70a 円筒部
72 切替弁(開口部切替弁)
72a 受部
74 弁体
76 フロート
76a 貯水部(排水弁下降速度切替手段)
76b 水抜き穴
76c 受部
76d フロート部
76e ガイド部
78 切替弁部材(排水弁下降速度切替手段、水抜き穴切替弁)
78a 軸
78b 弁部
80 錘

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器を洗浄する洗浄水を貯水する洗浄水タンク装置であって、
洗浄水を貯水し、底面に排水口が形成された貯水タンクと、
上下動することにより上記排水口を開閉して便器への洗浄水の供給を行う排水弁と、
上記貯水タンクの底面から上方に延びるように設けられた壁体であって、この壁体の上端部が上記排水弁による排水が開始される前の上記貯水タンク内の貯水水位よりも低い所定位置に位置し、上記貯水タンクの内部領域について、上記排水口側に配置される第1の内部領域とこの第1の内部領域の外側に配置される第2の内部領域とに分離する共に、上記第1の内部領域と上記第2の内部領域とを連通させる開口部が形成された上記壁体と、
この壁体の開口部を開閉する開口部切替弁と、
上記貯水タンクの排水口から便器へと供給される洗浄水の水量が大、中、小の少なくとも3段階を含む多段階の便器洗浄が可能となるように、上記排水弁が上記排水口を閉止する時間を切り替える排水弁閉止時間切替手段と、を有することを特徴とする洗浄水タンク装置。
【請求項2】
上記排水弁閉止時間切替手段は、上記排水弁の上方に洗浄水を貯水する共にその貯水された洗浄水を所定流量で排出する水抜き穴が形成された貯水部と、この貯水部の水抜き穴を開閉する水抜き穴切替弁と、を備え、上記排水弁閉止時間切替手段は、上記水抜き穴切替弁により上記貯水部の水抜き穴を閉鎖した状態で、上記貯水部に貯水された洗浄水の荷重を上記排水弁に作用させることにより、上記排水弁が上記排水口を閉止する時間を早める請求項1記載の洗浄水タンク装置。
【請求項3】
上記排水弁閉止時間切替手段は、上記排水弁が最も上昇した状態では、上記貯水部の上端が上記壁体の上端以下に位置するように設定する請求項2に記載の洗浄水タンク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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