説明

洗浄水生成装置

【課題】少量の洗浄水を滴下した状態で排水できるようにすること。
【解決手段】洗浄水生成装置10は、原液を連続して定量移送する原液移送部20と、オゾンを含むオゾンガスを発生させるオゾンガス発生部30と、原液にオゾンガスを混合して気液混合水を生成する気液混合部40と、気液混合水を原液に溶解しない廃ガスと原液にオゾンを溶解させた洗浄水とに分離して貯留する気液分離部50とを備え、気液分離部50に貯留した洗浄水を廃ガスの圧力で排水するようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原液にオゾンを溶解させた洗浄水を生成する装置と方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水[H2O]にオゾン[O3]を溶解させたオゾン水は、オゾンによる優れた洗浄力や殺菌力を有することから、医療、食品、製造などの各種分野で利用されている。例えば医療の分野において、オゾン水で手指や医療器具を洗浄することにより、細菌や微生物を死滅させ、病院での院内感染を防ぐのに役立っている。また、近年では眼科での手術や治療の際にオゾン水を消毒液として使用する例も見られ、この場合、原料水に体液と同濃度の生理食塩水を使用すると、術部や患部への刺激が少なくなることが知られている(例えば特許文献1を参照)。
【0003】
ところで、医療の現場には、上記のようにオゾン水を洗浄水や消毒液として使用することができるように、オゾン水を生成して排水する装置が設置されている。しかし、その装置のほとんどは毎分3〜5L程度の大流量のオゾン水を排水するものであり、流れるオゾン水の水量が多いので、特に眼科において患者の眼を直接洗浄する用途には適していなかった。また、このような大流量の装置を使って眼を洗浄する場合には、一旦排水したオゾン水を別の器具に移し変えて使用することになるが、オゾン水は時間の経過とともにオゾン濃度が低下してしまうため、あらかじめ高濃度のオゾン水を生成しておかなければならずコスト的に無駄があった。
【0004】
【特許文献1】特開2005−21798号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記のような問題を解決するために考案されたものであり、その目的とするところは、原液に所定濃度のオゾンを溶解させた洗浄水を小流量で生成して排水できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明の洗浄水生成装置は、原液にオゾンを溶解させた洗浄水を生成する装置であって、原液を連続して定量移送する原液移送部と、オゾンを含むオゾンガスを発生させるオゾンガス発生部と、原液移送部から定量移送された原液にオゾンガス発生部で発生させたオゾンガスを混合して気液混合水を生成する気液混合部と、気液混合部で生成した気液混合水を原液に溶解しない廃ガスと原液にオゾンを溶解させた洗浄水とに分離する気液分離部と、を備え、気液分離部に貯留した洗浄水を廃ガスの圧力で排水することを特徴とするものである。
【0007】
また、上記の目的を達成するために、本発明の洗浄水生成方法は、原液にオゾンを溶解させた洗浄水を生成する方法であって、連続して定量移送される原液に、オゾンを含むオゾンガスを混合して気液混合水を生成した後、生成した気液混合水を原液に溶解しない廃ガスと原液にオゾンを溶解させた洗浄水とに分離して貯留し、貯留した洗浄水を廃ガスの圧力で排水することを特徴とするものである。
【0008】
また、特に本発明の洗浄水生成装置は、原液にオゾンを溶解させた洗浄水を生成する装置であって、原液の容器に取り付けた排水用キャップからホースを介してチューブポンプにより原液を定量移送する原液移送部と、オゾンを含むオゾンガスを発生させるオゾンガス発生部と、原液移送部から定量移送された原液とオゾンガス発生部で発生させたオゾンガスを混合して気液混合水を吐出するエジェクタと、エジェクタの吐出口に接続されたスタティックミキサとにより構成され、スタティックミキサ内に交互に配置した整流板により気液混合水を乱流攪拌する気液混合部と、気液混合部で生成した気液混合水を中空容器内で原液に溶解しない廃ガスと原液にオゾンを溶解させた洗浄水とに分離する気液分離槽と、気液分離槽よりも容積の小さな中空容器内で気液分離槽から別々に排出した廃ガスと洗浄水を分離した状態で貯留する気液分離管とにより構成された気液分離部と、を備え、気液分離部に貯留した洗浄水を廃ガスの圧力で排水することを特徴とするものである。
【0009】
また、特に本発明の洗浄水生成装置は、原液にオゾンを溶解させた洗浄水を生成する装置であって、原液の容器に取り付けた排水用キャップからホースを介してチューブポンプにより原液を定量移送する原液移送部と、オゾンを含むオゾンガスを発生させるオゾンガス発生部と、原液移送部から定量移送された原液とオゾンガス発生部で発生させたオゾンガスを混合して気液混合水を吐出するエジェクタと、エジェクタの吐出口に接続された螺旋形ホースとにより構成され、螺旋形ホース内を流れる気液混合水に渦流を発生させる気液混合部と、気液混合部で生成した気液混合水を中空容器内で原液に溶解しない廃ガスと原液にオゾンを溶解させた洗浄水とに分離する気液分離槽と、気液分離槽よりも容積の小さな中空容器内で気液分離槽から別々に排出した廃ガスと洗浄水を分離した状態で貯留する気液分離管とにより構成された気液分離部と、を備え、気液分離部に貯留した洗浄水を廃ガスの圧力で排水することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、連続して定量移送される原液にオゾンガスを混合した気液混合水を生成し、その気液混合水を廃ガスと洗浄水に分離した状態で貯留して、貯留した洗浄水を廃ガスの圧力で排水するようにしたので、少量の洗浄水を滴下した状態で排水することができ、特に眼科において例えば白内障や緑内障等の手術あるいは治療の際に患者の眼を直接洗浄するのに好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0012】
------ 装置の概略 ------------------------------------------------------------
図1は洗浄水生成装置の機能ブロック図、図2は同装置の正面図、図3は同装置の背面図、図4は同装置の右側面図である。図示したように、本実施形態の洗浄水生成装置10は、原液に所定濃度のオゾンを溶解させた洗浄水を生成する装置であり、特に眼科で手術や治療の際に患者の眼を直接洗浄できるように毎分約150〜200ml程度の少量の洗浄水を排水する小型の装置にしたことが特徴である。この装置10は、図4に示すようにケース11の内部に設けられた収容空間に、原液移送部20と、オゾンガス発生部30と、気液混合部40と、気液分離部50と、廃ガス処理部60を備えて構成されている。以下、各部の構成と動作を詳細に説明する。なお、図2の正面図と図3の背面図においては、内部の構造を理解し易くするためにケースを図示していない。また、図中において、実線の矢印は液体の流れを、点線の矢印は気体の流れを表わしている。
【0013】
------ 原液移送部 ------------------------------------------------------------
図1において、原液移送部20は、洗浄水の原料である原液を連続的に定量移送する手段であり、本実施形態では容器21とチューブポンプ22により構成されている。原液は水道水(水圧:約0.2〜0.5MPa)のように圧力を加えられた状態で供給されるものを使用するのではなく、容器等からの自由落下により供給される小流量のものを使用する。なお、以下の実施形態では、原液の一例として、塩化ナトリウムを0.9%含有する食塩水(以下「生理食塩水」という)を使用した例を挙げて説明するが、原液の種類は生理食塩水に限られず、精製水、蒸留水、リンゲル液、あるいは眼灌流洗浄液(例えばオキシグルタチオン溶液)などを使用することもできる。
【0014】
図2に示すように、本例の生理食塩水はプラスチック等の容器21に充填された市販品を使用し、付属のキャップを排水用キャップ23に付け替えてセットされる。排水用キャップ23は、図5に拡大して示すようにキャップ本体の天板23aに排水口23bを開口した2段式のノズル23cを設けたものである。また、ノズル23cには排水口23bを横断する溝23dが形成され、この溝23dに十文字形の仕切板23eが嵌め込まれている。この排水用キャップ23を容器21の口に装着して逆さまにセットすると、排水口23bの断面が非円形状(本例では半円形)に仕切られるので落下する液体の表面張力が作用しにくくなり、容器21内の生理食塩水が仕切板23eを伝ってスムーズに流れ出るようになっている。なお、仕切板23eは生理食塩水で錆びないようにステンレスで構成され、その端部をノズル23cの先端からわずかに突出させることによって流れ具合をより良くしてある。
【0015】
図2において、容器21から流れ出た生理食塩水は、ノズル23cに接続された食塩水用のホース24を通ってチューブポンプ22に供給される。チューブポンプ22は、ゴム製のチューブ22aの弾性力を利用して液体を移送するポンプである。このポンプを起動すると、ギヤードモータ(図示略)によって回転するローラ22bがチューブ22aを押し潰しながら公転する。そして、押し潰されたチューブ22aが弾性力で復元する際にホース24から生理食塩水を吸入し、ローラ22bの回転に伴ってチューブ22a内の生理食塩水が一定量ずつ連続して送り出されるようになっている。なお、チューブ22aのサイズとギヤードモータの回転数を変更することで移送流量を調節することができ、本実施形態では移送流量を毎分200mlに設定した生理食塩水が気液混合部に連続して定量移送される。
【0016】
------ オゾンガス発生部 ------------------------------------------------------
図1において、オゾンガス発生部30は、オゾンと酸素の混合ガス(以下「オゾンガス」という)を発生させる手段であり、本実施形態では酸素ボンベ31と電磁弁32とオゾン発生器33により構成されている。
【0017】
図2に示すように、オゾン発生器33は、酸素を原料ガスに利用して放電によってオゾンガスを発生させるもので、その給気口が電磁弁32を介して酸素ボンベ31に接続されている。このオゾン発生器33では、酸素ボンベ31から供給された原料ガスが放電管33a内を通過する際に、放電管33aに高周波高電圧を印加することによって無数の放電が生じ、原料ガス中にオゾンが発生するようになっている。その発生原理は、放電管33a内を通過する酸素分子[O2]が放電によって酸素原子[O]に分解され、分解された酸素原子同士が分子に戻ろうとした時に、酸素原子[O]と分解されていない酸素分子[O2]とが結合してオゾン分子[O3]が生成されるというものである。また、酸素ボンベ31からの原料ガスの供給量は電磁弁32によって調節され、本実施形態では流量が毎分250ml、圧力が0.02MPaに設定される。なお、オゾン発生器33にはオゾンガス用のホース34の先に逆止弁35が接続されており、発生したオゾンガスが逆止弁35を通じて気液混合部40に供給されることにより、オゾンガスがオゾン発生器33に逆流しないように構成されている。
【0018】
------ 気液混合部 ------------------------------------------------------------
図1において、気液混合部40は、原液移送部20から移送された原液に、オゾンガス発生部30で発生させたオゾンガスを混合した混合水(以下「気液混合水」という)を生成する手段であり、本実施形態ではエジェクタ41とスタティックミキサ42により構成されている。
【0019】
図2に示すように、エジェクタ41は、エジェクタ法を利用して気体と液体を混合するもので、水平方向の吸入口41aがチューブポンプ22のチューブ22aに接続され、垂直方向の吸入口41bが逆止弁43を介してオゾンガス用のホース34に接続されている。エジェクタ41内の通路は吸入口41aから吐出口41cの途中でテーパ状に絞られているため、チューブポンプ22から移送された生理食塩水はテーパ部でその流速が増加し、この加速した生理食塩水の水流によって、オゾン発生器33で発生させたオゾンガスがホース34を通じて吸入口41bからエジェクタ41内に吸い込まれる。これにより、エジェクタ41内で生理食塩水とオゾンガスが合流し、生理食塩水にオゾンガスを混合した気液混合水が吐出口41cから所定の圧力で吐出される。
【0020】
エジェクタ41の吐出口41cにはスタティックミキサ42が接続されている。スタティックミキサ42は、流路管内にねじれ方向の異なる整流板(図示略)を交互に配置した構成であり、整流板によって流体の流れを分割して方向転換させ、乱流による攪拌を起こして生理食塩水にオゾンガスを効果的に溶解させるようになっている。そして、エジェクタ41とスタティックミキサ42を通じて生成された気液混合水は、気液分離部50に供給される。
【0021】
また、スタティックミキサ42の代わりに、図6に示すような螺旋形ホース44を用いても良い。螺旋形ホース44は連続する螺旋状波形に成形したフッ素樹脂製のホースであり、このホースの一端をエジェクタ41の吐出口41cに接続し、エジェクタ41から吐出した気液混合水に渦流を発生させて生理食塩水にオゾンガスを溶解させることができる。また、螺旋形ホース44の内部に複数個の微小ボールを数珠状に連結したボールチェーン45を収容しておけば、ホース内を流れる気液混合水がこのボールチェーン45に衝突して回転しながら進むことによって、生理食塩水とオゾンガスが効率良く混ざり合うようになる。このボールチェーン45は気液混合水に対する耐食性を持たせるためにSUS316やSUS304等のステンレス鋼で成形されているのが好ましい。なお、螺旋形ホース44全体をコイルのように巻いて接続すれば、気液混合水が大きく回りながら流れ落ちるので、滞留時間が長くなって生理食塩水とオゾンガスがさらに良く混ざり合うようになる。
【0022】
------ 気液分離部 ------------------------------------------------------------
図1において、気液分離部50は、気液混合部40で生成された気液混合水を、原液に溶解しない酸素と残留オゾンの混合ガス(以下「廃ガス」という)と、原液にオゾンが溶解したオゾン水(以下「洗浄水」という)とに分離する手段であり、本実施形態では気液分離槽51と気液分離管52と流水防止器53により構成されている。
【0023】
図2に示すように、気液分離槽51は、円筒状の中空容器を寝かせた状態で設置したもので、その給水口51aがスタティックミキサ42に接続されている。スタティックミキサ42から給水口51aを介して供給された気液混合水は、内部の分離室51bに一時的に貯留される。ここで、分離室51bに貯留された気液混合水はこの室内で廃ガスと洗浄水に分離され、廃ガスは分離室51bの天面に開口した排気口51cから流出し、洗浄水は分離室51bの底面に開口した排水口51dから流出するようになっている。
【0024】
気液分離管52は、気液分離槽51よりも容積の小さな管状の中空容器からなり、この容器を起立した状態でかつその中央部が気液分離槽51と同一高さになるように設置されている。その理由は、気液分離管52が気液分離槽51より低い位置にあると洗浄水の流れが速くなって気泡が発生しやすくなり、逆に高い位置にあると洗浄水が溜まる速度が遅くなるからである。また、気液分離管52の側面上方には廃ガス用のホース55が接続され、側面下方には洗浄水用のホース56が接続されている。これにより、気液分離槽51から流出した廃ガスが気液分離管52の管部52aの上方から流入し、これとは別に気液分離槽51から流出した洗浄水が気液分離管52の管部52aの下方から流入することによって、管部52a内に廃ガスと洗浄水が分離した状態で貯留される。そして、管部52aの天面に開口した排気口52bから廃ガスが流出し、管部52aの底面に開口した排水口52cから洗浄水のみが排水チューブ54を通じて装置の外部に提供される。なお、気液分離管52の排水口52cは下方に向かって次第に狭くなる漏斗状に形成されているため、管部52a内の水位が上昇するにつれて底部では気泡が取り除かれる。そして、気泡のない洗浄水(オゾン濃度2〜10ppm)が排水チューブ54から毎分約150〜200ml程度の流量で滴下するようになっている。
【0025】
流水防止器53は、廃ガスを排気する際に洗浄水が流れ出ないように阻止する機能を備えたもので、空洞部53aを有する円筒状の中空容器を気液分離管52の排気口52bに接続することにより気液分離管52よりも高い位置に設置されている。また、空洞部53a内には円錐形状の先端部を有するフロート53bが収容されており、フロート53bの先端部には空洞部53aのテーパ面に当接してシールするOリング53cが嵌め込み固定されている。したがって、気液分離管52の管部52a内の水位が過度に上昇し、洗浄水が排気口52cから流水防止器53の空洞部53a内に流れ出た場合には、空洞部53a内に満たされた洗浄水によってフロート53bが浮力で上昇する。そして、フロート53bが空洞部53aのテーパ面まで上昇すると、先端部のOリング53cによって排気口53dが閉じられ、廃ガスの排気を一時的に停止し、かつ排気口53dから洗浄水が流出するのを防止するようになっている。
【0026】
------ 廃ガス処理部 ----------------------------------------------------------
図1において、廃ガス処理部60は、気液分離部50で分離された廃ガスを酸素に分解して排気する手段であり、本実施形態では流量調節弁61とオゾン分解器62により構成されている。
【0027】
図3に示すように、流量調節弁61は、廃ガスの排気量を調節するためのステンレス製の開閉弁であり、流水防止器53に塩化ビニル製の廃ガス用のホース63を介して接続されている。流量調節弁61の操作つまみ61aを手動で回すと内部の弁が開閉し、流水防止器53からオゾン分解器62へと排気される廃ガスの流量が調節される。なお、廃ガス用のホース63の内径を小さくすることで廃ガスの排気量を調節しても良く、その場合には流量調節弁61を設ける必要がなくなる。
【0028】
オゾン分解器62は、活性炭を利用してオゾンを分解するもので、その給気側が流量調節弁61に接続されている。オゾン分解器62の内部には、給気側と排気側にそれぞれフィルタ62aが設けられており、これらのフィルタ62a,62a間にオゾン分解触媒として破砕状の活性炭62bが充填されている。これにより、流量調節弁61から給気した廃ガスはフィルタ62aを通って活性炭62bの隙間を抜けていくが、このとき廃ガス中の残留オゾンが活性炭62bに吸着されて反応し、オゾン分子[O3]が酸素分子[O2]に分解される。また、オゾン特有の臭気もこの活性炭62bによって脱臭される。そして、分解された酸素は、オゾン分解器62の排気側に接続された酸素用のホース64を通って外気に開放される。なお、フィルタ62aの外側には空隙部62cが設けられているが、これは流量調節弁61から給気した廃ガスと活性炭62bを通して分解した酸素とを瞬時に広がりやすくするためのスペースである。
【0029】
------ 気液分離部と廃ガス処理部との関係 --------------------------------------
気液分離部50と廃ガス処理部60は上記の通りに構成されているが、内径(φ2)の小さな排水チューブ54から一定量の洗浄水を排出することは、気液分離管52と排水チューブ54の内部にある洗浄水の自重に頼るだけでは難しい。そこでこの装置では、気液分離槽51、気液分離管52、流水防止器53、排水チューブ54、流量調節弁61及びオゾン分解器62について、これらの間の圧力バランスを利用して排水チューブ54から一定量の洗浄水を吐出する構造を採用している。
【0030】
すなわち、図7に示すように排水チューブ54からの排水量が少ないと、気液分離槽51の分離室51bと、気液分離管52の管部52aと、流水防止器53の空洞部53aにそれぞれ洗浄水が満たされる。このとき、流量調節弁61の操作つまみ61aを回して廃ガスの排気量を多くすることにより、廃ガスの圧力によって排水チューブ54からの洗浄水の排水量が増加する。
【0031】
また、図8に示すように圧力のバランスが取れた状態においては、気液分離管52の管部52aの内容積に比べて気液分離槽51の分離室51bの内容積の方が大きいので、気液分離管52内の水面の高さは変動しにくくなる。このとき、気液分離槽51では、廃ガスの大部分が排気口51cからホース55を通って気液分離管52の管部52aの上方に抜け出るとともに、洗浄水と微細な気泡が排水口51dからホース56を通って気液分離管52の管部52aの下方に流れ出る。ここで、気液分離管52の下方においては大きな気泡がないため、管部52a内の水位の変動が少なく、安定した水量の洗浄水が排水チューブ54から供給される。
【0032】
さらに、排水チューブ54の抵抗が大きく排水量が少なくなると、気液分離槽51の分離室51bと気液分離管52の管部52aに洗浄水が満たされるので、流水防止器53の流水防止機能が働いて洗浄水と廃ガスの流出が停止する。これにより、気液分離槽51の分離室51bと、気液分離管52の管部52aと、流水防止器53の空洞部53aの内部圧力が大きくなる。したがって、これらの圧力が排水チューブ54の抵抗よりも大きくなるため、その圧力によって気液分離管52の管部52a内の洗浄水が排出チューブ54から押し出され、洗浄水の排水量が増加する。なお、洗浄水の排水量が増加して気液分離管52の管部52a内の水位が下がると、流水防止器53のフロート53bが下降して排気口53dが開く。これにより、廃ガスが排気口53dから流量調節弁61を通ってオゾン分解器62に流れるようになり、圧力のバランスが元の状態に戻る。
【0033】
このように、本装置によれば、気液分離部50と廃ガス処理部60の間の圧力バランスを利用することによって、排水チューブ54から常に一定量(毎分150〜200ml)の洗浄水を吐出することができる。
【0034】
------ その他 ----------------------------------------------------------------
洗浄水生成装置にはフットスイッチ(図示略)が接続されており、フットスイッチのペダルを踏んで電源のON/OFFを切り換えることができる。電源をONすると、図3に示すコントローラ71に内蔵されたリレー回路により、チューブポンプ22を起動した後に酸素ボンベ31を開いてオゾン発生器33が運転を開始するように制御される。これにより、電源投入時には先に生理食塩水が移送されてからオゾンガスが発生するため、オゾンガスのみが排水チューブ54から室内に排気されないようになっている。一方、電源をOFFすると、コントローラ71によって始めにチューブポンプ22の運転を停止し、その後にオゾン発生器33からのオゾンガスの発生が止まり、最後に酸素ボンベ31が閉じて酸素の供給を停止するように制御される。したがって、電源切断時には配管内に溜まった液体が酸素ボンベ31からのガス圧力によって排水チューブ54からすべて押し出されるので、配管内に不要な液体が残らないようになっている。なお、コントローラ71とAC電源とはトロイダルトランス72によって電気的に絶縁されている。
【0035】
また、本装置を使用した後には、オゾンガスや生理食塩水に接触した部分を殺菌消毒するために熱処理を行う必要があるが、この装置によれば熱処理を行う部分だけを簡単に取り外すことができる。すなわち、図9に示すように、気液混合部40のエジェクタ41と、気液分離部50の気液分離槽51、気液分離管52及び流水防止器53のすべてが一枚の取付板73に装着されており、この取付板73には左右両側に一対のステンレス製の取手74,74が取り付け固定されている。また、エジェクタ41と流水防止器53には、それぞれねじ込み式の継手75を介してオゾンガス用のホース34と廃ガス用のホース63が接続されている。
【0036】
したがって、使用後に電源を切断してケース11を取り外した後、図10のように継手75を回して取り外せば取付板73が装置本体から切り離されるので、一対の取手74,74を持って取付板73ごと持ち運ぶことが可能になる。よって、殺菌消毒のために部品の分解作業を行わなくても済み、メンテナンスを簡単に実施できるという利点がある。なお、装置本体側に残されたチューブポンプ22については、カセット22cをひねって脱着し、内部のチューブ22aと外部の食塩水用のホース24を取り外してそれぞれを殺菌消毒すれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】洗浄水生成装置の機能ブロック図。
【図2】洗浄水生成装置の正面図。
【図3】洗浄水生成装置の背面図。
【図4】洗浄水生成装置の右側面図。
【図5】生理食塩水の容器に取り付ける排出用キャップの説明図。
【図6】気液混合部の一例である螺旋形ホースの説明図。
【図7】気液分離部における排水チューブからの排水量が少ない状態の説明図。
【図8】気液分離部における圧力のバランスが取れた状態の説明図。
【図9】洗浄水生成装置について作業板を取り外す前の状態の説明図。
【図10】洗浄水生成装置について作業板を取り外した後の状態の説明図。
【符号の説明】
【0038】
10 洗浄水生成装置
11 ケース
20 原液移送部
21 容器
22 チューブポンプ
23 排水用キャップ
24 食塩水用のホース
30 オゾンガス発生部
31 酸素ボンベ
32 電磁弁
33 オゾン発生器
34 オゾンガス用のホース
35 逆止弁
40 気液混合部
41 エジェクタ
42 スタティックミキサ
43 逆止弁
44 螺旋形ホース
45 ボールチェーン
50 気液分離部
51 気液分離槽
52 気液分離管
53 流水防止器
54 排水チューブ
55 廃ガス用のホース
56 洗浄水用のホース
60 廃ガス処理部
61 流量調節弁
62 オゾン分解器
63 廃ガス用のホース
64 酸素用のホース
71 コントローラ
72 トロイダルトランス
73 取付板
74 取手
75 継手

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原液にオゾンを溶解させた洗浄水を生成する装置であって、
原液を連続して定量移送する原液移送部と、
オゾンを含むオゾンガスを発生させるオゾンガス発生部と、
原液移送部から定量移送された原液にオゾンガス発生部で発生させたオゾンガスを混合して気液混合水を生成する気液混合部と、
気液混合部で生成した気液混合水を原液に溶解しない廃ガスと原液にオゾンを溶解させた洗浄水とに分離して貯留する気液分離部と、
を備え、気液分離部に貯留した洗浄水を廃ガスの圧力で排水することを特徴とする洗浄水生成装置。
【請求項2】
原液にオゾンを溶解させた洗浄水を生成する装置であって、
原液の容器に取り付けた排水用キャップからホースを介してチューブポンプにより原液を定量移送する原液移送部と、
オゾンを含むオゾンガスを発生させるオゾンガス発生部と、
原液移送部から定量移送された原液とオゾンガス発生部で発生させたオゾンガスを混合して気液混合水を吐出するエジェクタと、エジェクタの吐出口に接続されたスタティックミキサとにより構成され、スタティックミキサ内に交互に配置した整流板により気液混合水を乱流攪拌する気液混合部と、
気液混合部で生成した気液混合水を中空容器内で原液に溶解しない廃ガスと原液にオゾンを溶解させた洗浄水とに分離する気液分離槽と、気液分離槽よりも容積の小さな中空容器内で気液分離槽から別々に排出した廃ガスと洗浄水を分離した状態で貯留する気液分離管とにより構成された気液分離部と、
を備え、気液分離部に貯留した洗浄水を廃ガスの圧力で排水することを特徴とする洗浄水生成装置。
【請求項3】
原液にオゾンを溶解させた洗浄水を生成する装置であって、
原液の容器に取り付けた排水用キャップからホースを介してチューブポンプにより原液を定量移送する原液移送部と、
オゾンを含むオゾンガスを発生させるオゾンガス発生部と、
原液移送部から定量移送された原液とオゾンガス発生部で発生させたオゾンガスを混合して気液混合水を吐出するエジェクタと、エジェクタの吐出口に接続された螺旋形ホースとにより構成され、螺旋形ホース内を流れる気液混合水に渦流を発生させる気液混合部と、
気液混合部で生成した気液混合水を中空容器内で原液に溶解しない廃ガスと原液にオゾンを溶解させた洗浄水とに分離する気液分離槽と、気液分離槽よりも容積の小さな中空容器内で気液分離槽から別々に排出した廃ガスと洗浄水を分離した状態で貯留する気液分離管とにより構成された気液分離部と、
を備え、気液分離部に貯留した洗浄水を廃ガスの圧力で排水することを特徴とする洗浄水生成装置。
【請求項4】
気液分離部は、廃ガスを排気する際に洗浄水が流れ出ないように阻止する流水防止器を更に備えたことを特徴とする請求項1、2または3のいずれか1項に記載の洗浄水生成装置。
【請求項5】
流水防止器は、気液分離管の排気口に接続された中空容器からなり、この中空容器内に洗浄水が満たされた場合に浮力により上昇して中空容器の排気口を塞ぐフロートを収容したものであることを特徴とする請求項4に記載の洗浄水生成装置。
【請求項6】
エジェクタに継手を介してオゾンガス用のホースが接続され、流水防止器に継手を介して廃ガス用のホースが接続されており、エジェクタ、気液分離槽、気液分離管及び流水防止器を装着した取付板が装置本体から取り外し可能に設けられていることを特徴とする請求項4または5に記載の洗浄水生成装置。
【請求項7】
原液移送部は、原液の容器に取り付けた排水用キャップからホースを介してチューブポンプにより原液を定量移送するものであり、排水用キャップは、キャップ本体に排水口を開口し、この排水口を横断する仕切板によって排水口の断面が非円形状に仕切られていることを特徴とする請求項1に記載の洗浄水生成装置。
【請求項8】
気液混合部は、原液移送部から定量移送された原液とオゾンガス発生部で発生させたオゾンガスを混合して気液混合水を吐出するエジェクタと、エジェクタの吐出口に接続されたスタティックミキサとにより構成され、スタティックミキサ内に交互に配置した整流板により気液混合水を乱流攪拌することを特徴とする請求項1に記載の洗浄水生成装置。
【請求項9】
気液混合部は、原液移送部から定量移送された原液とオゾンガス発生部で発生させたオゾンガスを混合して気液混合水を吐出するエジェクタと、エジェクタの吐出口に接続された螺旋形ホースとにより構成され、螺旋形ホース内を流れる気液混合水に渦流を発生させることを特徴とする請求項1に記載の洗浄水生成装置。
【請求項10】
螺旋形ホースの内部に複数個の微小ボールを数珠状に連結したボールチェーンが収容されていることを特徴とする請求項9に記載の洗浄水生成装置。
【請求項11】
気液分離部は、中空容器内で気液混合水を廃ガスと洗浄水に分離する気液分離槽と、気液分離槽よりも容積の小さな中空容器内で気液分離槽から別々に排出した廃ガスと洗浄水を分離した状態で貯留する気液分離管とにより構成されていることを特徴とする請求項1に記載の洗浄水生成装置。
【請求項12】
気液分離部は、廃ガスを排気する際に洗浄水が流れ出ないように阻止する流水防止器を更に備えたことを特徴とする請求項11に記載の洗浄水生成装置。
【請求項13】
流水防止器は、気液分離管の排気口に接続された中空容器からなり、この中空容器内に洗浄水が満たされた場合に浮力により上昇して中空容器の排気口を塞ぐフロートを収容したものであることを特徴とする請求項12に記載の洗浄水生成装置。
【請求項14】
気液分離部で分離された廃ガスを酸素に分解して排気する廃ガス処理部を更に備えたことを特徴とする請求項1、2または3のいずれか1項に記載の洗浄水生成装置。
【請求項15】
廃ガス処理部は、給気側及び排気側に設けられたフィルタとフィルタ間に充填された活性炭とを内蔵したオゾン分離器により構成されていることを特徴とする請求項14に記載の洗浄水生成装置。
【請求項16】
原液にオゾンを溶解させた洗浄水を生成する方法であって、
連続して定量移送される原液に、オゾンを含むオゾンガスを混合して気液混合水を生成した後、生成した気液混合水を原液に溶解しない廃ガスと原液にオゾンを溶解させた洗浄水とに分離して貯留し、貯留した洗浄水を廃ガスの圧力で排水することを特徴とする洗浄水生成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−58000(P2010−58000A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−223162(P2008−223162)
【出願日】平成20年9月1日(2008.9.1)
【特許番号】特許第4256453号(P4256453)
【特許公報発行日】平成21年4月22日(2009.4.22)
【出願人】(591264496)日本▲まき▼線工業株式会社 (13)
【Fターム(参考)】