説明

洗浄用樹脂組成物

【課題】 各種樹脂の成型に使用する加工成形機を洗浄するために用いる洗浄用樹脂組成物の提供。
【解決手段】 (A)ベース樹脂を100質量部と、(B)溶融スラグ、鉄鋼スラグ又はこれらの破砕物、及び人造鉱物繊維から選ばれる1種以上を(A)成分100質量部に対して5〜150質量部を含有する洗浄用樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種樹脂の成形に使用する加工成形機を洗浄するために用いる洗浄用樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂は、射出成形品、押出成形品、フィルム等に幅広く利用されている。これらのプラスチック成形品は多品種少量生産の傾向にあり、品種の切替え頻度が多くなっているため、品種切替え時の成形機内の洗浄が品質管理上重要となってきている。熱可塑性樹脂の成形加工において、品種切替えの際における成形機の洗浄法としては、下記の方法が知られている。
【0003】
まず、後続に使用する樹脂で洗浄する、即ち、スクリューを抜かずに置換用樹脂を用いて先行品種を置換する方法である。しかし、この方法では洗浄に多量の樹脂を流す必要があり、ロス分が多くなるという問題がある。
【0004】
次に、加工成形機を分解掃除する方法があるが、この方法はあまりに時間がかかり過ぎるという問題がある。例えば押出成形における色替えの場合を例にとると、押出機を停止し、スクリューを抜いた後、スクリュー及びシリンダー内部をブラッシング等の方法で洗浄した後、再びスクリューを組込む等の煩雑な作業が必要となる。
【0005】
これらの方法に替えて、置換用樹脂量が少なくて済み、洗浄操作も簡便であることから様々な洗浄剤で洗浄する方法が試みられている。しかし、この洗浄剤による洗浄法の場合も、洗浄後に前剤が残留して焼けや成形不良の原因になったり、また完全に前剤を排出できても洗浄剤が残留し、次の樹脂への置換に多量の樹脂と長い時間を必要とするという問題がある。
【0006】
また洗浄剤には、熱可塑性樹脂に界面活性剤を添加し洗浄性を高めているものがあるが、界面活性剤を添加すると成形機や押出機のスクリューとの摩擦が小さくなるため、前方に洗浄剤を送り出すことが困難になり、洗浄に時間がかかったり場合によっては洗浄できないという問題がある。
【特許文献1】特開平9−208992号公報
【特許文献2】特開2000−119458号公報
【特許文献3】特開2000−119464号公報
【特許文献4】特開2002−1734号公報
【特許文献5】特許第2976143号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
樹脂の加工成形機用の洗浄剤には、実用上、次の要件(i)及び(ii)、必要に応じて更に要件(iii)を満たすことが望まれている。
【0008】
(i)品種替え時における洗浄性:加工成形機内に残留する樹脂を押し出すためのもの;
(ii)洗浄剤の自己排出性:洗浄剤自体が加工成形機内に残留することを防止するためのもの;
(iii)異物除去性:焦げ(加工成形時に加えられた熱により、シリンダー内壁やスクリューに樹脂が変質してこびり付いたもの)等の異物を加工成形機から押し出すためのも
の。
【0009】
要件(i)を満たすようにするためには、樹脂により洗浄剤の粘性を高めればよく、要件(ii)を満たすようにするためには、界面活性剤を配合して流動性を高めればよいが、樹脂と界面活性剤を配合しただけでは、要件(i)及び(ii)の両方を十分に満足させることはできず、改善の余地がある。
【0010】
特許文献5には、特定範囲のメルトフローレイトを有する熱可塑性樹脂にガラス粒が含有された成形機用洗浄剤が開示されている。しかし、ガラス粒は、平均粒径が10〜200μのガラスを主成分とする粒状物質であり、具体的にはガラス粉末、ガラス球、シラスバルーン(火山灰を原料とした0.1mm以下の微細な中空ガラス球)、クエックサンドが例示されているだけであり、実施例1では平均粒径40μのガラス球が使用されている。
【0011】
本発明は、上記した2つ又は3つの要件を満たす、加工成形機に適用したときの洗浄力が高く、後剤への置換も容易である洗浄用樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、課題の解決手段として、(A)ベース樹脂を100質量部と、(B)溶融スラグ、鉄鋼スラグ又はこれらの破砕物、及び人造鉱物繊維から選ばれる1種以上を(A)成分100質量部に対して5〜150質量部を含有する洗浄用樹脂組成物を提供する。
【0013】
本発明の(B)成分は、特許文献5に開示されたガラス粒(平均粒径が10〜200μのガラスを主成分とする粒状物質であり、ガラス粉末、ガラス球、シラスバルーン、クエックサンド)は含まない。
【発明の効果】
【0014】
本発明の洗浄用樹脂組成物は、押出機、射出成形機等に対して優れた洗浄効果を有し、また、後剤への置き換えも非常に容易であり、短時間でかつ少量の材料で樹脂の色替えができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
<(A)成分>
(A)成分のベース樹脂は、スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリメタクリレート、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリサルホン系樹脂(PSF)のほか、成形加工温度が300℃を超えるような樹脂である、ポリエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリイミド(PI)等を挙げることができる。特に好ましくはスチレン系樹脂、オレフィン系樹脂である。
【0016】
スチレン系樹脂としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン系モノマーの単独又は共重合体のほか、これらのスチレン系モノマーと共重合可能なモノマー、例えばアクリロニトリル、メチルメタクリレート等のビニル系モノマーとの共重合体を挙げることができる。
【0017】
また、スチレン系樹脂は、ブタジエンゴム等のジエン系ゴム、エチレン/プロピレン系ゴム、アクリル系ゴム等に上記のスチレン系モノマー及びビニル系モノマーをグラフト重合させたゴム変性スチレン系樹脂にすることができる。このようなスチレン系樹脂としては、ポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、AAS樹脂、AES樹脂、MS樹脂、MBS樹脂等を挙げることができる。特に好ましくは、ポリスチレン、AS樹脂である。
【0018】
スチレン系樹脂は、重量平均分子量が100,000〜600,000の範囲のものが好ましく、100,000〜500,000の範囲のものがより好ましく、150,000〜450,000の範囲のものがより好ましい。
【0019】
ポリカーボネート系樹脂としては、2価フェノールとカーボネート前駆体とを、周知の溶液法又は溶融法により反応させて得られるものを挙げることができる。
【0020】
2価フェノールは、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)サルファイド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン等から選ばれる1種以上を挙げることができる。これらの中でもビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン系のものが好ましく、特にビスフェノールAが好ましい。
【0021】
カーボネート前駆体は、ジフェニルカーボネート等のジアリルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート、ホスゲン等のカルボニルハライド、2価フェノールのジハロホルメート等のハロホルメート等から選ばれる1種以上を挙げることができる。
【0022】
ポリカーボネート系樹脂の粘度平均分子量は特に限定されるものではないが、約17000〜32000の範囲が好ましい。
【0023】
ポリオレフィン系樹脂としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、3−メチルブテン−1,4−メチルペンテン−1等のα−オレフィンの単独重合体、又はこれらα−オレフィンのランダム若しくはブロック等の共重合体、或いはこれらのα−オレフィンを主成分として含有し(好ましくは50質量%以上)、その他のモノマーを共重合させた共重合体を挙げることができる。
【0024】
他のモノマーとしては、ブタジエン、イソプレン、ジシクロペンジエン、1,4−ヘキサジエン、4−エチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン等のジエン類、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、マレイン酸イミド等の不飽和酸又はその誘導体、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族アルケニル化合物等を挙げることができ、これらは1又は2以上組合わせて用いることができる。
【0025】
ポリオレフィン系樹脂は、非晶性又は結晶性のものを用いることができるが、好ましくは結晶性を示すものである。これらの中でも、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(1−ブテン)、エチレン−プロピレン共重合体、ポリ(3−メチルブテン−1)、ポリ(4−メチルペンテン−1)が好ましい。
【0026】
ポリフェニレンスルフィド樹脂は、−C−S−で示される繰り返し単位を有する単独重合体又は共重合体である。
【0027】
ポリフェニレンスルフィド系樹脂は、上記繰り返し単位を70モル%以上含むものが好ましく、90モル%以上含むものがより好ましく、100モル%含むものが更に好ましい。
【0028】
共重合単位としては、上記繰り返し単位において、メタ結合、エーテル結合、スルフォン結合、ビフェニル結合、アミノ基置換フェニルスルフィド結合、カルボキシル基置換フェニルスルフィド結合、アルキル基置換フェニルスルフィド結合、ニトロ基置換フェニルスルフィド結合、フェニル基置換フェニルスルフィド結合、アルコキシ置換フェニルスルフィド結合、3官能フェニルスルフィド結合を含む構成単位等を挙げることができる。が、共重合体単位の含有量は、30モル%以下が好ましく、10モル%以下がより好ましく、5モル%以下が更に好ましい。
【0029】
ポリアミド系樹脂としては、ジアミンとジカルボン酸とから形成されるポリアミド樹脂及びそれらの共重合体、具体的にはナイロン66、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン6・10)、ポリヘキサメチレンドデカナミド(ナイロン6・12)、ポリドデカメチレンドデカナミド(ナイロン1212)、ポリメタキシリレンアジパミド(ナイロンMXD6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)及びこれらの混合物や共重合体;ナイロン6/66、6T成分が50モル%以下であるナイロン66/6T(6T:ポリヘキサメチレンテレフタラミド)、6I成分が50モル%以下であるナイロン66/6I(6I:ポリヘキサメチレンイソフタラミド)、ナイロン6T/6I/66、ナイロン6T/6I/610等の共重合体;ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ナイロン6T)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ナイロン6I)、ポリ(2−メチルペンタメチレン)テレフタルアミド(ナイロンM5T)、ポリ(2−メチルペンタメチレン)イソフタルアミド(ナイロンM5I)、ナイロン6T/6I、ナイロン6T/M5T等の共重合体が挙げられ、そのほかアモルファスナイロンのような共重合ナイロンでもよく、アモルファスナイロンとしてはテレフタル酸とトリメチルヘキサメチレンジアミンの重縮合物等を挙げることができる。
【0030】
更に、環状ラクタムの開環重合物、アミノカルボン酸の重縮合物及びこれらの成分からなる共重合体、具体的には、ナイロン6、ポリ−ω−ウンデカナミド(ナイロン11)、ポリ−ω−ドデカナミド(ナイロン12)等の脂肪族ポリアミド樹脂及びこれらの共重合体、ジアミン、ジカルボン酸とからなるポリアミドとの共重合体、具体的にはナイロン6T/6、ナイロン6T/11、ナイロン6T/12、ナイロン6T/6I/12、ナイロン6T/6I/610/12等及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0031】
ポリエステル系樹脂は、二価以上のカルボン酸成分又はエステル形成能をもつそれら誘導体、二価以上のアルコール成分及び/又はフェノール成分、エステル形成能をもつそれら誘導体とを公知の方法で重縮合して得られる飽和ポリエステル樹脂である。
【0032】
ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等から選ばれる1種以上を挙げることができる。これらの中でも、特に成形性、耐熱性等の性能のバランスが優れていることから、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートが好ましい。
【0033】
ポリサルホン系樹脂(PSF)としては、例えば下記式(I)の繰り返し単位を含有するポリサルホンが挙げられる。
【0034】
−C-C(CH)-C-O-C-SO-C-O- (I)
ポリエーテルケトン(PEEK)は、フェニルケトンとフェニルエーテルの組合せ構造からなり、パラフェニレン単位がエーテル基とケトン基で規則的に結ばれた構造を持つ重合体である。
【0035】
ポリエーテルイミド(PEI)としては、下記式(II)の繰り返し単位を有するものを
挙げることができる。
【0036】
【化1】

【0037】
ポリエーテルスルホン(PES)としては、下記式(III)の繰り返し単位を主構成要素とする重合体を挙げることができる。
【0038】
[−ph−SO−ph−O−]n (III)
(ただし、phは、p−フェニレン単位を表す。)
ポリアミドイミド(PAI)としては、トリメリット酸無水物の反応性酸誘導体およびジアミン又はジイソシアネートから得られるものを挙げることができる。
【0039】
ポリイミド(PI)は、主鎖中にイミド環や芳香環等の分子構造を有する重合体であり、芳香族テトラカルボン酸二無水物とジアミンを縮重合することによって得られるものを挙げることができる。
【0040】
<(B)成分>
(B)成分は、溶融スラグ、鉄鋼スラグ又はこれらの破砕物、及び人造鉱物繊維から選ばれる1種以上である。
【0041】
溶融スラグは、焼却灰等の廃棄物を燃焼熱や電気から得られた熱エネルギー等により、高温(1200℃以上)で加熱、燃焼させ、無機物を溶融させた後に冷却したガラス質の固化物である。溶融スラグは、必要に応じて破砕したものを用いることができる。
【0042】
溶融スラグの平均粒径(球に換算したときの平均粒径)は、1〜200μmが好ましく、1〜100μmがより好ましく、5〜50μmが更に好ましい。
【0043】
鉄鋼スラグは、鉄鋼製造工程において副産物として生成されるもので、高炉スラグと製鋼スラグに分けることができる。高炉スラグと製鋼スラグは、単独で用いてもよいし、併用してもよい。高炉スラグと製鋼スラグは、必要に応じて破砕したものを用いることができる。
【0044】
高炉スラグは、冷却方法により、徐冷スラグ(徐冷処理したもの)と水砕スラグ(急冷処理したもの)に分けることができる。徐冷スラグと水砕スラグは、単独で用いてもよいし、併用してもよい。徐冷スラグと水砕スラグは、必要に応じて破砕したものを用いることができる。
【0045】
高炉スラグと製鋼スラグ(徐冷スラグ、水砕スラグ)の平均粒径(球に換算したときの平均粒径)は、1〜200μmが好ましく、1〜100μmがより好ましく、5〜50μmが更に好ましい。
【0046】
人造鉱物繊維としては、ロックウール(岩綿)、スラグウール(鉱さい綿)から選ばれ
るものを用いることができる。
【0047】
ロックウールは、玄武岩その他の天然鉱物などを主原料として、キュポラや電気炉で1,500〜1,600℃の高温で溶融するか、又は高炉から出たのち、同程度の高温に保温した溶融スラグを炉底から流出させ、遠心力などで吹き飛ばして繊維状にした人造鉱物繊維である。なお、けい酸分と酸化カルシウム分を主成分とする高炉スラグを原料としたものもロックウールとする場合もある。
【0048】
スラグウールは、けい酸分と酸化カルシウム分を主成分とする高炉スラグを原料としてロックウールと同様にして製造したもの人造鉱物繊維である。
【0049】
人造鉱物繊維の平均繊維長Lは、1〜5,000μmが好ましく、1〜1,000μmがより好ましく、5〜500μmが更に好ましい。
【0050】
人造鉱物繊維の平均繊維径Dは、1〜20μmが好ましく、1〜10μmがより好ましく、2〜7μmが更に好ましい。
平均繊維長Lと平均繊維径Dとの比L/Dは、1〜1000が好ましく、1〜100がより好ましく、2〜80が更に好ましい。
【0051】
本発明の組成物中、(B)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、5〜150質量部であり、好ましくは10〜100質量部、より好ましくは10〜70質量部である。
【0052】
<その他の成分>
本発明の組成物には、成形機洗浄剤用組成物に配合される公知の界面活性剤を配合することができるが、(C)アニオン界面活性剤が好ましい。
【0053】
アニオン界面活性剤は、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル又はアルケニルエーテル硫酸塩、アルキル又はアルケニル硫酸塩、炭素数8〜20のα−オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩類、アルキル又はアルケニルエーテルカルボン酸塩、α−スルフォ脂肪酸塩、α−スルフォ脂肪酸エステル、炭素数が12〜20の飽和又は不飽和脂肪酸のアルカリ金属塩等から選ばれる1又は2以上を挙げることができる。
【0054】
アニオン界面活性剤としては、特にアルカンスルホン酸又はその塩を50質量%以上含む陰イオン界面活性剤が好ましい。
【0055】
アルカンスルホン酸又はその塩は、下記一般式(1)で表されるものが好ましい。一般式(1)中のnは平均値であるから、一般式(1)で表されるものは炭素数の異なるものの混合物となる。(C)成分として用いるアルカンスルホン酸又はその塩(以下(C-1)成分という)は、自己排出性の発現に寄与すると共に、(D)成分との組合せに生じる作用により組成物がシリンダー内壁を押す力を向上させる。
【0056】
【化2】

【0057】
〔式中、mは平均で5〜30の数、nは0〜30、n≦m、Mは、好ましくはH、Na、K、Mg、Caを示す。〕
アルカンスルホン酸又はその塩以外の陰イオン界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル又はアルケニルエーテル硫酸塩、アルキル又はアルケニル硫酸塩、炭素数8〜20のα−オレフィンスルホン酸塩、アルキル又はアルケニルエーテルカルボン酸塩、α−スルフォ脂肪酸塩、α−スルフォ脂肪酸エステル、炭素数が12〜20の飽和又は不飽和脂肪酸のアルカリ金属塩等から選ばれる1又は2以上を挙げることができる。
【0058】
(C)成分中のアルカンスルホン酸又はその塩の含有量は50質量%以上、好ましくは90〜100質量%、より好ましくは99〜100質量%である。
【0059】
本発明の組成物中、(C)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して0.5〜20質量部が好ましく、より好ましくは1〜10質量部、更に好ましくは2〜5質量部である。含有量が0.5質量部以上であると十分な洗浄効果を付与でき、特に自己排出性が向上され、20質量部以下であると自己排出性が良好であると共に、押出機内や成形機内に残留して汚染することが抑制される。
【0060】
本発明の組成物には、更に(D)アルキレングリコール脂肪酸エステルを配合することができる。
【0061】
(D)成分のアルキレングリコール脂肪酸エステルは、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール等のアルキレングリコールと炭素数12〜22の脂肪酸のエステル化合物を挙げることができる。(D)成分は、(C-1)成分との組合せに生じる作用により組成物がシリンダー内壁を押す力を向上させる。
【0062】
(D)成分としては、エチレングリコールモノラウレート、エチレングリコールジラウレート、プロピレングリコールモノラウレート、プロピレングリコールジラウレート、テトラメチレングリコールモノラウレート、テトラメチレングリコールジラウレート、ヘキサメチレングリコールモノラウレート、ヘキサメチレングリコールジラウレート、エチレングリコールモノミリステート、エチレングリコールジミリステート、プロピレングリコールモノミリステート、プロピレングリコールジミリステート、テトラメチレングリコールモノミリステート、テトラメチレングリコールジミリステート、ヘキサメチレングリコールモノミリステート、ヘキサメチレングリコールジミリステート、エチレングリコールモノパルミテート、エチレングリコールジパルミテート、プロピレングリコールモノパルミテート、プロピレングリコールジパルミテート、テトラメチレングリコールモノパルミテート、テトラメチレングリコールジパルミテート、ヘキサメチレングリコールモノパルミテート、ヘキサメチレングリコールジパルミテート、エチレングリコールモノステアレート、エチレングリコールジステアレート、プロピレングリコールモノステアレート、プロピレングリコールジステアレート、テトラメチレングリコールモノステアレート、テトラメチレングリコールジステアレート、ヘキサメチレングリコールモノステアレート、ヘキサメチレングリコールジステアレート、エチレングリコールモノオレート、エチレングリコールジオレート、プロピレングリコールモノオレート、プロピレングリコールジオレート、テトラメチレングリコールモノオレート、テトラメチレングリコールジオレート、ヘキサメチレングリコールモノオレート、ヘキサメチレングリコールジオレート、エチレングリコールモノベヘネート、エチレングリコールジベヘネート、プロピレングリコールモノベヘネート、プロピレングリコールジベヘネート、テトラメチレングリコールモノベヘネート、テトラメチレングリコールジベヘネート、ヘキサメチレングリコールモノベヘネート、ヘキサメチレングリコールジベヘネート等から選ばれる1又は2以上を挙げるこ
とができる。
【0063】
(D)成分としては、プロピレングリコールモノベヘネートが好ましく、更に下記式(2)及び(3)で示されるプロピレングリコールモノベヘネートの混合物がより好ましい。
【0064】
【化3】

【0065】
式(2)と式(3)のプロピレングリコールモノベヘネートの質量比〔(1)/(2)〕は、好ましくは4:1〜1:1であり、より好ましくは3:1〜1:1である。
【0066】
本発明の組成物中、(D)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して0.1〜10質量部が好ましく、より好ましくは1〜5質量部、更に好ましくは1〜3質量部である。含有量が0.1質量部以上であると十分な洗浄効果を付与でき、特に品種替え時の洗浄性が向上され、10質量部以下であると品種替え時の洗浄性が良好であると共に、押出機内や成形機内に残留して汚染することが抑制される。
【0067】
本発明の組成物には、更に(E)有機燐化合物を配合することができる。(E)成分の有機燐化合物は、燐原子に結合するエステル性酸素原子を1つ以上有するものが好ましい。(E)成分は、焦げに対して高い溶解力を有しているため、特に異物除去性の発現に寄与する成分である。
【0068】
(E)成分は、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリオレイルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、トリス(o−フェニルフェニル)ホスフェート、トリス(p−フェニルフェニル)ホスフェート、トリナフチルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、ジフェニル(2−エチルヘキシル)ホスフェート、ジ(イソプロピルフェニル)ホスフェート、o−フェニルフェニルジクレジルホスフェート、ジブチルホスフェート、モノブチルホスフェート、ジ(2−エチルヘキシル)ホスフェート、モノイソデシルホスフェート、2−アクリロイルオキシエチルアッシドホスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルアッシドホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイルオキシメチルホスフェート等から選ばれる1又は2以上を挙げることができ、これらの中でもトリフェニルホスフェートが好ましい。
【0069】
また(E)成分は、トリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリストリデシルホスファイト、ジブチルハイドロジエンホスファイト等の亜燐酸エステル及びこれらの縮合物、トリフェニルホスフィンオキシド、トリクレジルホスフィンオキシド、メタンホスホン酸ジフェニル、フェニルホスホン酸ジエチル等から選ばれる1又は2以上を用いることもできる。
【0070】
(E)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して0.1〜20質量部が好ましく、より好ましくは1〜10質量部、更に好ましくは2〜5質量部である。含有量が0.1質量部以上であると十分な洗浄効果が付与でき、特に異物除去性が向上され、20質量部以下であると異物除去性が良好であると共に、押出機内や成形機内に残留して汚染することが抑制される。
【0071】
本発明の組成物では、本発明の課題を解決する上で、(C)成分(好ましくは(C-1)成分)と(D)成分の含有量を関連づけることが好ましい。(C)成分と(D)成分の合計量中の含有割合は、(C)成分は55〜99質量%が好ましく、60〜90質量%がより好ましく、70〜80質量%が更に好ましく、(C)成分は1〜45質量%が好ましく、10〜40質量%がより好ましく、20〜30質量%が更に好ましい。
【0072】
また、(A)成分100質量部に対する(C)及び(D)成分の合計含有量は、0.5〜20質量部が好ましく、1〜10質量部がより好ましく、2〜7質量部が更に好ましい。
【0073】
本発明の組成物では、本発明の課題を解決する上で、(C)(好ましくは(C-1)成分)、(D)、(E)成分の含有量を関連づけることが好ましい。(C)、(D)、(E)成分の合計量中の含有割合は、次のとおりである。
【0074】
(C)成分(好ましくは(C-1)成分)は20〜90質量%が好ましく、20〜70質量%がより好ましく、30〜60質量%が更に好ましい。
【0075】
(D)成分は5〜30質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましく、10〜20質量%が更に好ましい。
【0076】
(E)成分は5〜75質量%が好ましく、25〜70質量%がより好ましく、30〜60質量%が更に好ましい。
【0077】
また、(A)成分100質量部に対する(C)、(D)、(E)成分の合計含有量は、1〜20質量部が好ましく、1〜10質量部がより好ましく、5〜10質量部が更に好ましい。
【0078】
本発明の組成物には、本発明の課題を解決できる範囲内で他の成分を含有させることができ、特に(F)、(G)成分が好ましい。
【0079】
(F)成分である多価アルコールは、複数個のヒドロキシル基が結合している非環式及び環式化合物である。かかる(F)成分としては、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ペンチトール類(アドニトール、アラビトール等)、ヘキシトール類(ズルシトール、イノシトール等)、サッカリド類(アミロース、キシラン等)及びこれらの誘導体(N−メチルグルカミン等)等から選ばれる1又は2以上を挙げることができる。
【0080】
本発明の組成物中、(F)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して0.5〜20質量部が好ましく、より好ましくは5〜10質量部である。含有量が0.5質量部以上であると十分な洗浄効果を付与でき、20質量部以下であると押出機内や成形機内に残留して汚染することが抑制される。
【0081】
(G)成分である金属石鹸は、炭素数6〜22の脂肪酸と金属(Mg,Li,Zn,Ca,Al,Sn等)の塩である。
【0082】
(G)成分としては、カプロン酸マグネシウム、カプロン酸リチウム、カプロン酸亜鉛、カプロン酸カルシウム、カプロン酸アルミニウム、カプロン酸錫、カプリル酸マグネシウム、カプリル酸リチウム、カプリル酸亜鉛、カプリル酸カルシウム、カプリル酸アルミニウム、カプリル酸錫、カプリン酸マグネシウム、カプリン酸リチウム、カプリン酸亜鉛、カプリン酸カルシウム、カプリン酸アルミニウム、カプリン酸錫、ラウリン酸マグネシウム、ラウリン酸リチウム、ラウリン酸亜鉛、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸アルミニウム、ラウリン酸錫、ミリスチン酸マグネシウム、ミリスチン酸リチウム、ミリスチン酸亜鉛、ミリスチン酸カルシウム、ミリスチン酸アルミニウム、ミリスチン酸錫、パルミチン酸マグネシウム、パルミチン酸リチウム、パルミチン酸亜鉛、パルミチン酸カルシウム、パルミチン酸アルミニウム、パルミチン酸錫、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸錫、オレイン酸マグネシウム、オレイン酸リチウム、オレイン酸亜鉛、オレイン酸カルシウム、オレイン酸アルミニウム、オレイン酸錫、ベヘニン酸マグネシウム、ベヘニン酸リチウム、ベヘニン酸亜鉛、ベヘニン酸カルシウム、ベヘニン酸アルミニウム、ベヘニン酸錫等から選ばれる1又は2以上を挙げることができる。
【0083】
本発明の組成物中、(G)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して0.05〜5質量部が好ましく、より好ましくは0.5〜5質量部である。含有量が0.05質量部以上であると十分な洗浄効果を付与でき、5質量部以下であると200℃以上の高温雰囲気においても低融点の金属塩(リチウム、錫など)が融け出し、押出機内や成形機内に残留して汚染することが抑制される。
【0084】
本発明の組成物は、上記各成分を、ヘンシェルミキサー、タンブラーブレンダー、ニーダー等の混合機で予備混合した後、押出機で混練したり、加熱ロール、バンバリーミキサーで溶融混練することによって製造する。
【実施例】
【0085】
以下、実施例、比較例を示し、本発明を更に詳細に説明するが、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例で使用した各成分の詳細は下記の通りである。
【0086】
〔洗浄用樹脂組成物〕
(A)成分
AS:ダイセルポリマー(株)製,「セビアン020」
PP:サンアロマー(株)製,「サンアロマーPS201A」
PE:三井化学(株)製,「ハイゼックス5000SR」
PSF:ソルベイアドバンストポリマーズ(株)製、「P−1700 NT 11」
(B)成分
高炉スラグ:新日鐵高炉セメント(株)製,「エスメント」
ロックウール:日本ロックウール(株)製,「エスファイバーFF」
比較例に用いたフィラー
ガラス繊維:日本電気硝子(株)製,「ESC−03−T−120」
ガラスビーズ:ポッターズ・バロティーニ(株)製,「GB731−PN」
(C)成分
アルカンスルホン酸ナトリウム:クラリアントジャパン(株)製,「Hostapur SAS93」〔先行使用樹脂〕
ABS:ダイセルポリマー(株)製,「セビアン500」
PC:三菱エンジニアリングプラスチック(株)製,「ノバレックス7025G30」
PP:サンアロマー(株)製,「サンアロマーPS201A」
PPS:ポリプラスチックス(株)製「フォートロン1130A1」
〔後続使用樹脂〕
AS:ダイセルポリマー(株)製,「セビアン020」
PC:三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製,「ユーピロンS−2000」
PP:サンアロマー(株)製,「サンアロマーPS201A」
PSF:ソルベイアドバンストポリマーズ(株)製、「P−1700 NT 11」
実施例及び比較例
表1に示す組成の各成分をタンブラーブレンダーで混合後、押出機にて溶融混練し、ペレット形状の洗浄用樹脂組成物を得た。これらの成分を使用し、下記の方法で洗浄試験を行った。
【0087】
[洗浄性評価]
射出成形機(三菱重工業製「三菱射出成形機265/100MSII」(表1に示す成形温度)に、先行使用樹脂として表1に示す樹脂の黒着色品(カーボンブラック濃度1%)を1kg流した。その後、表1の組成の洗浄用樹脂組成物を流して黒色が消えるまでの洗浄用樹脂組成物の使用量(W1)による評価を行った。続いて後続使用樹脂として表1に示す樹脂を流して射出成形し、成形品に洗浄用樹脂組成物の残留物が消えて良品が得られるまでの後続使用樹脂の使用量(W2)による評価を行った。
【0088】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ベース樹脂を100質量部と、(B)溶融スラグ、鉄鋼スラグ又はこれらの破砕物、及び人造鉱物繊維から選ばれる1種以上を(A)成分100質量部に対して5〜150質量部を含有する洗浄用樹脂組成物。
【請求項2】
鉄鋼スラグが高炉スラグ及び/又は製鋼スラグであり、高炉スラグが徐冷スラグ及び/又は水砕スラグである、請求項1記載の洗浄用樹脂組成物。
【請求項3】
人造鉱物繊維がロックウール及び/又はスラグウールである、請求項1又は2記載の洗浄用樹脂組成物。
【請求項4】
更に界面活性剤を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の洗浄用樹脂組成物。




【公開番号】特開2006−257297(P2006−257297A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−77813(P2005−77813)
【出願日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(501041528)ダイセルポリマー株式会社 (144)
【Fターム(参考)】