説明

洗浄用袋体及び洗浄方法

【課題】良好な漬け置き洗いが可能であるとともに、被洗浄物を袋体内でこすり洗いができ、高い洗浄効果を得ることが可能とした洗浄用袋体及び洗浄方法を提供する。
【解決手段】吸水性基材8又は防水性基材16と、撥水性基材7とからなる袋体1であって、撥水性基材8が袋状に形成され、撥水性基材8の内面の一部又は全部に吸水性基材8又は防水性基材16が積層された積層構造を有し、吸水性基材8の表面にエンボス加工が施された構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚れのひどい空気調和機用フィルターや換気扇の羽根、あるいは、殺菌・漂白が必要なまな板等の漬け置き洗いが必要な被洗浄物を洗浄する際に使用する洗浄用袋体並びにこの袋体を使用した洗浄方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、水よりも比重が軽い被洗浄物を漬け置き洗いする場合、あるいは、まな板等の大型の被洗浄物で、漬け置き洗いする容器の確保が困難な場合などにおいては、被洗浄物の一部を洗浄液の入った容器に浸漬し、外部に露出した部分については洗浄液を湿潤させた布帛などを被せることにより、被洗浄物の全体に洗浄液が接触するようにしていた。
【0003】
しかし、上記方法においては、布帛から水分が蒸発し易く、水分不足により布帛全体が乾燥してしまったり、全体が乾燥しなくとも部分的に乾燥して洗浄むらが生じたりするという問題があった。
【0004】
これらの問題点を解決するものとして、特許文献1に示すように、吸水性を有する繊維基材と、撥水性を有する繊維基材又は通気性を有する防水性基材とからなる袋体であって、そのうちの一方の基材が袋状に形成され、他方の基材が一方の基材の一部又は全部に積層された積層構造を有する洗浄用袋体が提案されている。
【0005】
上記洗浄用袋体は、被洗浄物を収納し、袋体の一部を洗浄液に浸漬することにより、被洗浄物全体に洗浄液を接触させることが可能となり、良好な漬け置き洗いを達成することができる。
【特許文献1】特許第3559484号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に示す洗浄用袋体は、漬け置き洗いの状態では袋体と被洗浄物との間に薄い洗浄液の層が介在するため、洗浄液の表面張力により袋体と被洗浄物とが強く密着した状態となっていた。したがって、被洗浄物の表面に物理的に汚れが付着している場合、汚れの表面側に位置する袋体の部分を摘んで汚れをこすり洗いしようとしても困難であり、更なる高い洗浄効果が望まれていた。
【0007】
そこで、本発明においては、良好な漬け置き洗いが可能であるとともに、被洗浄物を袋体内でこすり洗いができ、高い洗浄効果を得ることが可能とした洗浄用袋体及び洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明にかかる洗浄用袋体は、袋体を構成する内面側の繊維基材の表面にエンボス加工が施されたことを特徴とし、これにより、良好な漬け置き洗いが可能であるとともに、被洗浄物を袋体内でこすり洗いができ、高い洗浄効果を得ることが可能となる。
【0009】
より具体的には、吸水性を有する繊維基材(以下、「吸水性基材」と称する)と、撥水性を有する繊維基材(以下、「撥水性基材」と称する)とからなる袋体であって、そのうちの撥水性基材が袋状に形成され、吸水性基材が撥水性基材の一部又は全部に積層された積層構造を有し、吸水性基材の表面にエンボス加工が施されたことを特徴とするものである。
【0010】
上記構成の洗浄用袋体内に被洗浄物を収納し、袋体の一部を洗浄液に浸漬すると、通水性を有する積層基材を通じて浸漬された部分から袋体内部に洗浄液が導入される。洗浄液は、吸水性基材によって袋体の上部側にも吸上げられ、被洗浄物を収納した袋体全体に洗浄液が行き渡って湿潤状態にするとともに、湿潤状態となった袋体が被洗浄物と密着して完全に漬け置く洗い方と同等の作用が達成される。このように袋体内全体に洗浄液が行き渡ることにより、漬け置き洗いが可能になる。
【0011】
上記袋体は、袋体の内表面に露出する吸水性基材の表面にエンボス加工が施されているため、吸水性基材と被洗浄物との接触面積が減少し、結果的に吸水性基材(袋体)と被洗浄物との間に作用する洗浄液の表面張力が減少し、両者を容易に離間させることが可能となる。したがって、袋体を摘んで被洗浄物に押し当てて容易にこすり洗いすることが可能となる。このとき、吸水性基材の表面に施されたエンボス加工によって形成された表面凹凸は、被洗浄物表面に付着した汚れを効果的にかき落すことができ、優れた汚れ落とし性を発揮する。
【0012】
ここで、繊維基材とは、織布あるいは不織布など、繊維を原料として作成される基材であって、適当な間隙を備えることにより通水性を有するものを意味するものである。吸水性基材とは、吸水性を有する材質の繊維からなる基材のみならず、毛細管現象により水を吸上げる能力を有する基材も含むものである。
【0013】
撥水性基材は、撥水処理を施すことによって少なくとも表面が撥水性を有する繊維基材を意味するものであるが、撥水性基材であっても繊維基材の繊維の間隙を調整することにより袋体の外部から内部へ向けての通水性を確保することができる。
【0014】
本発明の洗浄用袋体は、吸水性基材と撥水性基材とが積層された積層基材を使用してこれを袋状に形成すればよい。この場合、撥水性基材を袋体の外面側に配する。すなわち、積層基材における吸水性基材を袋体の内面側に配しているので、袋体内に導入された洗浄液は吸水性基材によって袋体の上部側に吸上げられ、袋体全体に洗浄液が行き渡り、洗浄液によって湿潤状態となった吸水性基材が被洗浄物に密着する。
【0015】
外面側は、撥水性基材によって覆われているので、湿潤状態にある吸水性基材からの洗浄液や水分の蒸発が抑制され、洗浄むらを起こすおそれもなく、長時間にわたって良好な漬け置き洗いを達成することができる。ここで、洗浄液による漬け置き洗いとは、汚れを落とす場合に限らず、殺菌・漂白を目的とするものも含むものである。
【0016】
また、高濃度の洗浄液による漬け置き洗いが必要な場合には、予め洗浄用袋体に被洗浄物及び固形状あるいは濃縮タイプの液状洗浄剤を収納しておいて袋体の一部を水に浸漬する方法を採用することが可能である。
【0017】
上記方法によれば、袋体内部に導入された水によって洗浄液が調製されるが、洗浄剤は袋体内部に導入された一部の水によって溶解あるいは希釈されるため、高濃度の洗浄液が調製されることになり、容器内においてあらかじめ高濃度の洗浄液を調製しておく場合に比べて、洗浄剤の使用量は少なくて済むという利点を有する。
【0018】
本発明にかかる洗浄用袋体は、吸水性基材と撥水性基材とを積層することによって優れた効果を奏するものであるが、必ずしも袋体全体が積層基材から構成されている必要はなく、袋体の一部を吸水性基材で形成する構成を採用することも可能である。すなわち、空気の脱気性を確保するためには、撥水性基材を袋状に形成すればよく、吸水性基材について、最低限必要な箇所のみ、撥水性基材と積層することができる。
【0019】
吸水性基材が撥水性基材の一部に積層された積層構造を有している場合は、積層されていない部分の撥水性基材の内面側表面にエンボス加工が施されていてもよく、汚れ落とし性の点で好ましい。上記エンボスは少なくとも内面側に施されていればよく、外面側にも施されていることを妨げない。
【0020】
積層基材を構成する基材のうち、撥水性基材の代りに請求項2で示す通り、通気性を有する防水性基材(以下、「防水性基材」と称する)を使用することも可能である。ここで、防水性基材としては、シート状乃至フィルム状のものであって、一般的な合成樹脂製の通気性防水シートを例示することができる。
【0021】
通気性を有する防水性基材を使用する場合、洗浄液又は水を袋体内部に導入するために、防水性基材を貫通する一個又は複数個の微小な貫通孔を穿設すればよい。ここで、微小な貫通孔とは、袋体内部に洗浄液又は水を導入可能な小径の孔を意味するものであり、前記撥水性基材に替えて吸水性基材と積層して積層基材となし、洗浄用袋体を構成すれば、上記と同様の作用効果を達成することができる。
【発明の効果】
【0022】
以上の説明から明らかなように、本発明に係る洗浄用袋体は、吸水性基材又は防水性基材と、撥水性基材とからなる袋体であって、吸水性基材として表面にエンボス加工が施されたものを使用したため、袋体と被洗浄物との間に作用する洗浄液の表面張力を効果的に低下させ、これにより撥水性基材又は防水性基材を摘んで容易にこすり洗いすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1乃至図3は、本発明に係る洗浄用袋体の第1の実施の形態を示す図である。この洗浄用袋体1は、可撓性を有する縦長矩形状の積層基材2a,2bを2枚重ね合せて短辺の一方を開口部3とし、他の三辺を融着して作成されている。開口部3には、雌雄一対の線状ファスナー4、4が形成されており、これにより開口部を密封可能とし、後述のように洗浄剤5を溶解して袋体内部で調製される高濃度の洗浄液13が開口部3から漏出しないように構成されている。
【0024】
積層基材2a、2bは、図2に示すように、撥水性基材7である撥水処理を施した不織布と、吸水性基材8である吸水性不織布の二層構造とされている。吸水性基材8は、片側表面にエンボスロールによってエンボス加工が施されており、これにより表面凹凸8aが形成されている。
【0025】
表面凹凸8aは、浮き出し模様又はくぼみ模様のいずれであってもよく、模様についても特に限定はなく、円形、多角形又は不定形の模様のいずれであってもよい。凹凸の高低差は、0.1mm〜0.9mmであるのが好ましく、0.3mm〜0.6mmであるのがより好ましい。
【0026】
撥水性基材7は、吸水性基材8の凹凸面8aとは反対側の面と接するように積層され、袋体1の外面側に撥水性基材7が配された構成となっており、袋体1内部への水の導入は、積層基材2a、2bの繊維間の間隙を通じて行われる。
【0027】
図3は、洗浄用袋体を使用して被洗浄物を漬け置き洗いする作業工程を示す図である。先ず、図3(a)において、洗浄用袋体1の開口部3から被洗浄物10及び固形の洗浄剤5を袋体内部に収納して開口部3を線状ファスナー4、4によって密封し、同図(b)において、洗浄用袋体1を水11を入れた容器12に一部浸漬する。これによって、水に浸漬された袋体部分には水圧がかかるため、撥水性基材7及び吸水性基材8の繊維の間隙から袋体1の内部に水がスムーズに導入され、洗浄剤5が溶解されて高濃度の洗浄液13が調製される。
【0028】
同図(c)において、調製された洗浄液13は、袋体内面側の吸水性基材8によって吸上げられ、袋体全体に行き渡って湿潤状態とするとともに、湿潤状態となった袋体1が被洗浄物10と密着して完全に漬け置く洗い方と同等の作用が達成される。袋体1の外面側は撥水性基材7によって覆われており、吸水性基材8からの洗浄液13や水分の蒸発が抑制されるため、洗浄むらを起こすおそれもなく、長時間にわたって良好な漬け置き洗いを達成することができる。
【0029】
このようにして袋体1内部全体が湿潤状態になると、図4に示すように、吸水性基材8の表面凹凸8aのくぼみ内にも洗浄液が満たされるため、被洗浄物10の全体が洗浄液で包まれた状態となる。
【0030】
また、吸水性基材8の表面凹凸8aによって吸水性基材8と被洗浄物10との接触面積が減少するため、両者の密着性が低下して容易に離間させることが可能となる。したがって、袋体1を摘んで被洗浄物10に押し当てて容易にこすり洗いすることが可能となる。このとき、吸水性基材8の表面に形成された表面凹凸8aは、被洗浄物表面10に付着した汚れを効果的にかき落すことができ、優れた汚れ落とし性を発揮する。
【0031】
図5及び図6は、洗浄用袋体の第2の実施の形態を示す図である。この洗浄用袋体14は、図6に示すように、防水性基材16と吸水性基材8とから積層基材15が構成されており、積層基材15以外は第1の実施の形態と同じ構成となっている。
【0032】
すなわち、防水性基材16としては、微細な通気孔を備え、通気性及び防水性を有するポリプロピレン製のメルトブロー不織布が使用され、この防水性基材16に吸水性基材8を加熱圧着することで積層基材15が形成されている。吸水性基材8は、片側表面にエンボスロールによってエンボス加工が施されており、これにより表面凹凸8aが形成されている。防水性基材16は、吸水性基材8の凹凸面8aとは反対側の面と接するように積層され、袋体1の外面側に防水性基材16が配された構成となっている。
【0033】
積層基材15には、複数個の貫通孔9が穿設されており、これによって袋体14内部への水の導入を可能としている。なお、本実施の形態においては、貫通孔9は、積層基材15全体を貫通するように穿設されているが、少なくとも防水性基材16を貫通するものであればよい。
【0034】
上記構成の洗浄用袋体14を図3で示す手順で使用する場合、貫通孔9を通じて袋体14内部に水が導入されて洗浄剤5が溶解され、高濃度の洗浄液13が調製される。洗浄液13は、袋体内面側の吸水性基材8によって吸上げられ、袋体14全体に行き渡って湿潤状態とするとともに、湿潤状態となった袋体14が被洗浄物に密着する。
【0035】
積層基材16には、貫通孔9が穿設されているが、その径は微小であり、さらに、洗浄用袋体14の外面側は防水性基材16によって覆われているために、吸水性基材8からの洗浄液13や水分の蒸発が効果的に抑制され、洗浄むらを起こすおそれもなく、長時間にわたって良好な漬け置き洗いを達成することが可能となる。
【0036】
このようにして袋体1内部全体が湿潤状態になると、第1実施形態のときと同様に、吸水性基材8の表面凹凸8aのくぼみ内にも洗浄液が満たされるため、被洗浄物10の全体が洗浄液で包まれた状態となる。また、表面凹凸8aによって吸水性基材8と被洗浄物10とを容易に離間させることが可能となり、効果的にこすり洗いすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係る洗浄用袋体の第1の実施の形態を示す図
【図2】図1における積層基材の断面図
【図3】(a)、(b)、(c)は本発明に係る洗浄用袋体の漬け置き洗いする作業工程を示す図
【図4】本発明に係る洗浄用袋体を漬け置き洗いしたときの部分拡大図
【図5】本発明に係る洗浄用袋体の第2実施形態を示す図
【図6】図5における積層基材の断面図
【符号の説明】
【0038】
1、14 洗浄用袋体
2、15 積層基材
3 開口部
4 線状ファスナー
5 洗浄剤
7 撥水性基材
8 吸水性基材
9 貫通孔
10 被洗浄物
11 水
12 容器
13 洗浄液
16 防水性基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
袋体を構成する内面側の繊維基材の表面にエンボス加工が施されたことを特徴とする洗浄用袋体。
【請求項2】
吸水性を有する繊維基材と、撥水性を有する繊維基材とからなる袋体であって、前記撥水性を有する繊維基材が袋状に形成され、該撥水性を有する繊維基材の内面の一部又は全部に吸水性を有する繊維基材が積層された積層構造を有し、前記吸水性を有する繊維基材の表面にエンボス加工が施されたことを特徴とする洗浄用袋体。
【請求項3】
吸水性を有する繊維基材と、通気性を有する防水性基材とからなる袋体であって、前記防水性基材が袋状に形成され、該防水性基材の内面の一部又は全部に吸水性を有する繊維基材が積層された積層構造を有し、前記防水性基材を貫通する一個又は複数個の微小な貫通孔が穿設され、前記吸水性を有する繊維基材の表面にエンボス加工が施されたことを特徴とする洗浄用袋体。
【請求項4】
請求項1、2又は3記載の洗浄用袋体に、被洗浄物を収納し、前記袋体の一部を洗浄液に浸漬することを特徴とする洗浄方法。
【請求項5】
請求項1、2又は3記載の洗浄用袋体に、被洗浄物および洗浄剤を収納し、前記袋体の一部を水に浸漬することを特徴とする洗浄方法。
【請求項6】
前記袋体の一部を水に浸漬した後に、袋体を掴んで被洗浄物をこすり洗いすることを特徴とする請求項4又は5記載の洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−95099(P2006−95099A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−285188(P2004−285188)
【出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【出願人】(000186588)小林製薬株式会社 (518)
【Fターム(参考)】