説明

洗浄装置

【課題】 搾乳作業の際に搾乳ユニットが汚れた場合でも、汚れが発生した場所での洗浄を可能にするとともに、十分な汚れの除去(洗浄)及び洗浄処理の時間短縮を可能にする。また、搾乳ユニットに対する的確かつ最適な洗浄を可能にする。
【解決手段】 外部への洗浄液Wの飛散を防止する飛散防止用のキャビネット部2,このキャビネット部2の内部に搾乳ユニット51をセットするためのセッティング部3.及びこのセッティング部3にセットされた搾乳ユニット51の複数の部位に洗浄液Wを噴射することにより当該搾乳ユニット51の洗浄を行う複数のノズルn…を有する洗浄液噴射部4とを有する搾乳ユニット洗浄手段Fwと、洗浄液噴射部4に対して洗浄液Wを供給する洗浄液供給手段Fsと、少なくとも使用時における搾乳ユニット51をセット可能な位置まで搾乳ユニット洗浄手段Fwを移動可能な移動手段Fmとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搾乳システムにおける搾乳ユニット等を洗浄する際に用いて好適な洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、搾乳システムにおける搾乳ユニットを洗浄可能な洗浄機能を備える洗浄装置としては、既に、本出願人が提案した特許文献1で開示される真空配管式搾乳機の洗浄装置が知られている。
【0003】
この洗浄装置は、洗浄槽と、洗浄水供給手段とを備えており、洗浄槽に満たした洗浄水にティートカップを浸せば、真空ポンプの真空圧によって洗浄水が吸引され、ティートカップを備える搾乳ユニット及びミルク輸送ライン、即ち、搾乳機(搾乳システム)を一巡した後、レシーバーに流入する。これにより、搾乳ユニット及びミルク輸送ラインを含む搾乳機は洗浄水により洗浄される。そして、洗浄水がレシーバーに満たされれば、レシーバー内の洗浄水はミルクポンプにより外部に排出され、廃棄又は洗浄槽に戻されるという基本的な洗浄動作を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−56288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した特許文献1で開示される従来の洗浄装置は、搾乳作業が正常に終了した後に行う洗浄工程で主に用いることを目的とするため、洗浄装置は搾乳ユニットのホームポジションである牛乳処理室に設置され、搾乳ユニットは当該メンテナンスエリアで洗浄される。
【0006】
ところで、搾乳ユニットは、搾乳作業が行われている際中に汚れる場合も少なくない。例えば、作業中に乳牛或いは他の物に接触し、ティートカップに汚れが付着したり、作業者が誤って汚れた手でライナーリップ部を触ったり、或いは誤って乳房炎等の疾病牛に対して搾乳を行ってしまったなどの突発的なアクシデントの発生により汚れる場合もある。この場合、従来の洗浄装置では事実上使用することが困難となり、通常は、布巾等で汚れを拭き取る等の手作業に頼っているのが実状である。結局、搾乳作業中に汚れた場合には、十分に汚れを除去できないとともに、手作業に時間がかかりロス時間が増えてしまうなどの不具合が生じる。
【0007】
なお、他の分野で使用される汎用性を有する移動式の洗浄装置、例えば、先端ノズルから洗浄液を噴射させて洗浄する洗浄装置(例えば、特開平9−175341号公報)を使用することも可能ではあるが、このような洗浄装置では、ミルククローから吊り下げた四本のティートカップを含む搾乳ユニットを十分かつ確実に洗浄するには、洗浄に伴う作業労力が大変になるとともに、洗浄後の洗浄液が飛散して他の部位を二次的に汚してしまうなど、汎用的な洗浄装置では、特殊な形態を備える搾乳ユニットを洗浄するには不適となる。
【0008】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決した洗浄装置の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る洗浄装置1は、上述した課題を解決するため、搾乳システム50の搾乳ユニット51を洗浄可能な洗浄機能を備える洗浄装置であって、外部への洗浄液Wの飛散を防止する飛散防止用のキャビネット部2,このキャビネット部2の内部に搾乳ユニット51をセットするためのセッティング部3.及びこのセッティング部3にセットされた搾乳ユニット51の複数の部位に洗浄液Wを噴射することにより当該搾乳ユニット51の洗浄を行う複数のノズルn…を有する洗浄液噴射部4とを有する搾乳ユニット洗浄手段Fwと、洗浄液噴射部4に対して洗浄液Wを供給する洗浄液供給手段Fsと、少なくとも使用時における搾乳ユニット51をセット可能な位置まで搾乳ユニット洗浄手段Fwを移動可能な移動手段Fmとを備えることを特徴とする。
【0010】
この場合、発明の好適な実施態様により、キャビネット部2は、上端を開放した容器部2h及びこの容器部2hの上端開口2hoを開閉可能な蓋部2cを備えて構成できる。また、洗浄液噴射部4には、洗浄液Wが流通可能なパイプ部材Pの複数の所定位置にそれぞれノズルn…を付設し、かつパイプ部材Pの複数個所を湾曲させるとともに、セッティング部3にセットされた搾乳ユニット51の周りの少なくとも一部を囲むことにより搾乳ユニット51の外側を洗浄可能に構成する外側洗浄部4eを設けることができるとともに、セッティング部3にセットされた搾乳ユニット51におけるティートカップ52…の先端開口52o…に対向させて配することにより、当該ティートカップ52…の内側を洗浄可能に構成する内側洗浄部4iを設けることができる。一方、洗浄液供給手段Fsは、搾乳ユニット51の移動範囲に配設し、かつ洗浄液供給源6sから洗浄液Wが供給される給液管部6と、洗浄液噴射部4を給液管部6の所定位置に接続又は接続解除可能な着脱機構部7とを備えて構成してもよいし、或いは洗浄液Wを収容した貯留タンク8及びこの貯留タンク8の洗浄液Wを送出する送出ポンプ9を備えるとともに、搾乳ユニット洗浄手段Fwと共に移動可能に構成してもよい。他方、移動手段Fmには、搾乳ユニット51を搬送する際に用いる搬送レール55に装填し、かつ少なくとも搾乳ユニット洗浄手段Fwを吊り下げることにより、搬送レール55に沿って移動可能なレール移動部10を用いてもよいし、或いは少なくとも搾乳ユニット洗浄手段Fwを搭載して移動可能な台車部11を用いてもよい。
【発明の効果】
【0011】
このような構成を有する本発明に係る洗浄装置1によれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0012】
(1) 搾乳作業の際に搾乳ユニット51が汚れた場合であっても、本発明に係る洗浄装置1を用いることにより、汚れが発生した場所で搾乳ユニット51に対する洗浄を行うことができるとともに、洗浄する際には、搾乳ユニット51を、キャビネット部2内のセッティング部3にセット(載置)すれば足り、手作業を伴うことなく容易に洗浄することができる。これにより、十分な汚れの除去(洗浄)を行うことができるとともに、洗浄処理の時間短縮を図れるため、ロス時間の低減による作業能率向上、更には疾病の接触感染防止にも寄与できる。
【0013】
(2) 特殊な形態を備える搾乳ユニット51であっても、この搾乳ユニット51の形態にマッチングした洗浄を行うことができるとともに、汚れが発生した場所で搾乳ユニット51に対する洗浄を行った場合でも洗浄後の洗浄液が飛散して他の部位を二次的に汚してしまうなどの不具合を回避できるなど、搾乳ユニット51にとって的確かつ最適な洗浄を行うことができる。
【0014】
(3) 好適な態様により、キャビネット部2を、上端を開放した容器部2h及びこの容器部2hの上端開口2hoを開閉可能な蓋部2cを備えて構成すれば、搾乳ユニット51の洗浄時における洗浄液Wの確実な飛散防止を図れるとともに、蓋部2cを開けた状態にすれば、作業者の手洗いや他の器具等の洗浄にも使用できるなど、洗浄装置1の多様性を高めることができる。
【0015】
(4) 好適な態様により、洗浄液噴射部4に、洗浄液Wが流通可能なパイプ部材Pの複数の所定位置にそれぞれノズルn…を付設し、かつパイプ部材Pの複数個所を湾曲させるとともに、セッティング部3にセットされた搾乳ユニット51の周りの少なくとも一部を囲むことにより搾乳ユニット51の外側を洗浄可能に構成する外側洗浄部4eを設ければ、搾乳ユニット51に対して様々な位置から様々な角度で洗浄液Wを噴射させることができる。したがって、搾乳ユニット51の外面全体に洗浄液Wを満遍なく噴射させることができ、複雑な形態を有する搾乳ユニット51であっても十分かつ確実な洗浄を行うことができる。また、容易かつ低コストに製作できるとともに、搾乳ユニット51に対する洗浄液Wの噴射位置及び噴射角度を容易に最適化させることができる。
【0016】
(5) 好適な態様により、洗浄液噴射部4に、セッティング部3にセットされた搾乳ユニット51における各ティートカップ52…の先端開口52o…に対向させることにより、各ティートカップ52…の内側をそれぞれ洗浄可能に構成する内側洗浄部4iを設ければ、各ティートカップ52…の内側に対して洗浄液Wを的確に噴射できるため、各ティートカップ52…における内側の洗浄も十分かつ確実に行うことができる。
【0017】
(6) 好適な態様により、洗浄液供給手段Fsを、搾乳ユニット51の移動範囲に配設し、かつ洗浄液供給源6sから洗浄液Wが供給される給液管部6と、洗浄液噴射部4を給液管部6の所定位置に接続又は接続解除可能な着脱機構部7とを備えて構成すれば、基本的には搾乳ユニット洗浄手段Fwのみの移動で足りるため、小型軽量化による移動の容易化、更には移動時の労力軽減を図ることができる。
【0018】
(7) 好適な態様により、洗浄液供給手段Fsを、洗浄液Wを収容した貯留タンク8及びこの貯留タンク8の洗浄液Wを送出する送出ポンプ9を備えるとともに、搾乳ユニット洗浄手段Fwと共に移動可能に構成すれば、洗浄装置1単体で洗浄可能となり、給液配管等の他の設備が不要になるため、実施の容易化及び低コスト化に寄与できる。
【0019】
(8) 好適な態様により、移動手段Fmに、搾乳ユニット51を搬送する際に用いる搬送レール55に装填し、かつ少なくとも搾乳ユニット洗浄手段Fwを吊り下げることにより、搬送レール55に沿って移動可能なレール移動部10を設ければ、既設の搬送レール55をそのまま利用して移動できるため、洗浄対象の搾乳ユニット51の近傍まで搾乳ユニット洗浄手段Fwを容易かつ確実に移動させることができる。
【0020】
(9) 好適な態様により、移動手段Fmに、少なくとも搾乳ユニット洗浄手段Fwを搭載して移動可能な台車部11を設ければ、台車部11を任意の経路で移動できるため、使用される複数台の搾乳ユニット51…の位置等に影響されることなく、洗浄対象の搾乳ユニット51まで自由かつ迅速に移動できる。また、搾乳ユニット洗浄手段Fwを任意の位置及び角度で使用できるとともに、保管場所等も任意に選定できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の好適実施形態に係る洗浄装置の全体を示す外観側面図、
【図2】同洗浄装置を装填した搬送レールの平面図、
【図3】同洗浄装置の主要部の一部断面側面図、
【図4】同洗浄装置に備える洗浄液噴射部の斜視図、
【図5】同洗浄装置の正面から見た噴射イメージを示す作用説明図、
【図6】同洗浄装置の平面から見た噴射イメージを示す作用説明図、
【図7】同洗浄装置の他の使用態様を示す主要部の一部断面側面図、
【図8】本発明の変更実施形態に係る洗浄装置の外観側面図、
【図9】本発明の他の変更実施形態に係る洗浄装置の外観側面図、
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明に係る好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0023】
最初に、本実施形態に係る洗浄装置1の洗浄対象となる搾乳ユニット51を含む搾乳システム50の概要について、図1〜図3を参照して説明する。
【0024】
図2において、Bは繋ぎ飼い牛舎を示し、作業者用通路Rの両側には、配列した多数のストールA…を備える。なお、Cは各ストールA…に係留された乳牛を示す。そして、このストールA…に対して搾乳システム50を付設する。搾乳システム50は、各ストールA…に対応して設置した搬送レール55を備える。搬送レール55は、作業者用通路Rに沿って配した主搬送レール55m,55mと、各主搬送レール55m…から分岐部55j…を介して直角方向に分岐し、各ストールA…間に配した副搬送レール55s…を備えるとともに、主搬送レール55m…とホームポジションXh間を接続する転送用搬送レール55tを備える。ホームポジションXhには、搾乳システム50を洗浄する主洗浄装置が設置される。
【0025】
また、搬送レール55は、図1に示すように、断面矩形の内部中空に形成するとともに、底面の中央部位に長手方向に沿ったスリット56を有する。そして、搬送レール55には、例示の場合、図2に示すように、四台の搾乳機61…を装填する。即ち、各搾乳機61…に備える移動用ローラを搬送レール55内に装填する。これにより、各搾乳機61…は移動用ローラにより搬送レール55に沿って移動させることができる。この搾乳機61には搾乳ユニット51を搭載する。搾乳ユニット51は、図3に示すように、ミルククロー53とこのミルククロー53から吊り下がる四つのティートカップ52…を備え、ミルククロー53からはミルクチューブ53m及び真空チューブ53vが導出する。
【0026】
次に、本実施形態に係る洗浄装置1の構成について、図1〜図7を参照して具体的に説明する。
【0027】
図1は、洗浄装置1の外観全体構成を示す。洗浄装置1は、大別して、搾乳ユニット洗浄手段Fw,洗浄液供給手段Fs及び移動手段Fmを備えるとともに、さらに、搾乳ユニット洗浄手段Fwは、図3に示すように、キャビネット部2,セッティング部3及び洗浄液噴射部4を備える。
【0028】
搾乳ユニット洗浄手段Fwにおいて、キャビネット部2は、外部への洗浄液Wの飛散を防止する飛散防止機能を有し、上端を開放した容器部2h及びこの容器部2hの上端開口2hoを開閉可能な蓋部2cを備える。蓋部2cは、図1に示すように、後端部をヒンジ部21により容器部2hの後上端部に回動可能に結合する。これにより、蓋部2cの前側(正面側)を上下に開閉することができる。なお、蓋部2cはクリック機構等により開位置で停止可能に構成するとともに、容器部2h及び蓋部2cはいずれも透明素材で形成することが望ましい。蓋部2cにおいて、22は上面に形成した把手部を示すとともに、2csは蓋部2cの前面部に形成した切欠部を示し、蓋部2cを閉じた際には、ミルククロー53に接続されるミルクチューブ53m及び真空チューブ53vを、この切欠部2csを通して外部に導出させることができる。また、容器部2hは、底面部に排液部23を設け、この排液部23には排液チューブ23tを接続する。これにより、底面部上の洗浄液(洗浄廃液)Wを外部に排出できる。このように、キャビネット部2を、上端を開放した容器部2h及びこの容器部2hの上端開口2hoを開閉可能な蓋部2cにより構成すれば、搾乳ユニット51の洗浄時における洗浄液Wの確実な飛散防止を図れるとともに、蓋部2cを開けた状態にすれば、作業者の手洗いや他の器具等の洗浄にも使用できるなど、洗浄装置1の多様性を高めることができる。
【0029】
洗浄液噴射部4は、基本的に、搾乳ユニット51の洗浄を行う複数のノズルn…を備えて構成し、望ましくは、搾乳ユニット51の外側を洗浄可能な外側洗浄部4eと、各ティートカップ52…の内側をそれぞれ洗浄可能な内側洗浄部4iにより構成する。
【0030】
外側洗浄部4eは、洗浄液Wが流通可能なパイプ部材Pを使用し、このパイプ部材Pの複数の所定位置にそれぞれノズルn…を付設するとともに、パイプ部材Pの複数個所を直角方向に湾曲させて構成する。この際、後述するセッティング部3にセットされた搾乳ユニット51の周りの一部又は全部を囲むことにより搾乳ユニット51の外側を洗浄できるように、全体の形状を考慮して構成する。例示の場合、図4に示すように、二つのノズルn…をそれぞれ設けた前右垂直部Pfp及び前左垂直部Pfq,一つのノズルnをそれぞれ設けた上右水平部Pup及び上左水平部Puq,三つのノズルn…をそれぞれ設けた下右水平部Pdp及び下左水平部Pdq,二つのノズルn…をそれぞれ設けた後上水平部Pru及び後下水平部Prdが含まれる形状に連続形成し、全体を無端の閉回路とした。これにより、前方が開放される形態となるとともに、各ノズルn…から噴射される洗浄液Wに着目した場合には、搾乳ユニット51の外面全体に満遍なく噴射される(図5及び図6参照)。また、下右水平部Pdpと下左水平部Pdqは上連結パイプ部24により連通可能に接続するとともに、この上連結パイプ部24の中間位置から直角に分岐させた接続管24sは、容器部2hの背面部を貫通させて外部に至らせる。なお、搾乳ユニット51の形態に対応させて、各ノズルn…の数量,位置及び角度を最適となるように設定(選定)する。このような外側洗浄部4eを設ければ、搾乳ユニット51に対して様々な位置から様々な角度で洗浄液Wを噴射させることができる。したがって、搾乳ユニット51の外面全体に洗浄液Wを満遍なく噴射させることができ、複雑な形態を有する搾乳ユニット51であっても十分かつ確実な洗浄を行うことができる。また、容易かつ低コストに製作できるとともに、搾乳ユニット51に対する洗浄液Wの噴射位置及び噴射角度を容易に最適化させることができる。
【0031】
内側洗浄部4iは、後述するセッティング部3にセットされた搾乳ユニット51における各ティートカップ52…の先端開口52o…に対向させることにより、各ティートカップ52…の内側をそれぞれ洗浄可能に構成する。例示の場合、図4に示すように、上面から上方に向けた四つのノズルn…を有するノズルユニット25を使用し、このノズルユニット25は下連結パイプ部26を介して上述した後下水平部Prdに連通可能に接続する。したがって、下連結パイプ部26はノズルユニット25の支持機能を兼ねる。ノズルユニット25における四つのノズルn…は、各ティートカップ52…の先端開口52o…にそれぞれ対向させて配する。また、図3に示すように、下連結パイプ部26の中途には、コック式の開閉バルブ27を接続し、下連結パイプ部26の流通路を開閉可能にすることが望ましい。このような内側洗浄部4iを設ければ、各ティートカップ52…の内側に対して洗浄液Wを的確に噴射できるため、各ティートカップ52…における内側の洗浄も十分かつ確実に行うことができる。なお、内側洗浄部4i及び外側洗浄部4eは、複数のステー28…を介して容器部2hの背面部に固定する。
【0032】
セッティング部3は、キャビネット部2の内部に搾乳ユニット51をセットする機能を備え、図3〜図7に示すように、連結パイプ部24の外面に固定して設ける。これにより、セッティング部3の後端が連結パイプ部24により片持ち状に支持され、水平方向前方に延出する。この場合、セッティング部3の後寄りの位置には、ヒンジ部29を設け、図7に示すように、ヒンジ部29の前側に位置するセッティング部3の部分を跳ね上げ可能に構成する。これにより、セッティング部3を水平位置にした際には、図1に示すように、搾乳ユニット51のミルククロー53を、セッティング部3の上に載せるのみで容易にセットすることができる。
【0033】
一方、移動手段Fmは、使用時における搾乳ユニット51をセット可能な位置(場所)まで搾乳ユニット洗浄手段Fwを移動できるように構成する。例示の移動手段Fmは、図1に示すように、搾乳ユニット51を搬送する際に用いる搬送レール55に装填し、かつ搾乳ユニット洗浄手段Fwを吊下げることにより搬送レール55に沿って移動可能なレール移動部10を設けて構成する。レール移動部10は、搬送レール55の内部に収容することにより搬送レール55に沿って移動できる複数のローラ31r…を有する移動部31と、上端を移動部31に固定し、下端側を搬送レール55のスリット56を通して下方に突出させた支持部32と、この支持部32の下端から吊下げた内部中空の吊下シャフト部33を備える。そして、吊下シャフト部33の下端部に容器部2hの背面側を取付ける。これにより、搾乳ユニット洗浄手段Fwは、移動手段Fmにより吊下げ状態に支持される。なお、容器部2hが前後方向において水平に安定(バランス)するように、吊下シャフト部33の中間位置には折曲部33m,33mを設けることにより、吊下シャフト部33の下部側を後方へ所定幅だけオフセットさせている。このような移動手段Fmを用いれば、既設の搬送レール55をそのまま利用して移動させることができる。したがって、洗浄対象の搾乳ユニット51の近傍まで搾乳ユニット洗浄手段Fwを容易かつ確実に移動させることができる。
【0034】
他方、洗浄液供給手段Fsは、洗浄液噴射部4に対して洗浄液Wを供給可能に構成する。例示の洗浄液供給手段Fsは、図1に示すように、搾乳ユニット51の移動範囲に配設し、かつ洗浄液供給源6sから洗浄液Wが供給される給液管部6と、洗浄液噴射部4を給液管部6の所定位置に接続又は接続解除可能な着脱機構部7とを備える。洗浄液供給源6sは、例えば、洗浄液Wを貯留した洗浄液タンクとこの洗浄液タンクに貯留した洗浄液を給液管部6に供給する送液ポンプを備えて構成する。したがって、給液管部6は、不図示のミルクパイプ(ミルクライン)と同様に構成可能であり、当該ミルクパイプに沿って配設することができる。このため、着脱機構部7は、給液管部6における複数の所定位置に設けたタップ部41…と、このタップ部41…に対して接続又は接続解除可能なディストリビュータ42により構成でき、タップ部41は、ミルクパイプに設けるミルクタップと同様に構成できる。したがって、タップ部41は、ディストリビュータ42を離脱した際には自動で閉じるとともに、ディストリビュータ42を装着した際には自動で開き、ディストリビュータ42側と連通する。また、ディストリビュータ42には給液チューブ43の一端を接続し、給液チューブ43の他側は、吊下シャフト部33の内部を通した後、吊下シャフト部33の下端から導出する。そして、給液チューブ43の他側は、接続管24sの先端に接続する。さらに、給液チューブ43の他端には、流量調整可能な流量調整バルブ44を付設し、操作ハンドル44hを回し操作することにより、流量を任意に調整できるように構成する。このような洗浄液供給手段Fsを設ければ、基本的には搾乳ユニット洗浄手段Fwのみの移動で足りるため、小型軽量化による移動の容易化、更には移動時の労力軽減を図ることができる。なお、洗浄液供給源6sに送液ポンプを設けない場合には、図1に仮想線で示すように、ディストリビュータ42と容器部2hの内部を連通させる真空チューブ45を設けるとともに、さらに、ディストリビュータ42と真空パイプ(真空ライン)46を接続することにより、余剰の洗浄液W又は洗浄に使用した洗浄液Wを真空圧により回収可能である。
【0035】
次に、本実施形態に係る洗浄装置1の使用方法及び各部の機能について、図1〜図7を参照して説明する。
【0036】
今、搾乳作業が行われている際中に、ティートカップ52…が乳牛C或いは他の物に接触するなどにより当該ティートカップ52…に汚れが付着し、この状態ではティートカップ52…を使用できない場合を想定する。この場合、作業者は、ホームポジションXhにある洗浄装置1を、搬送レール55に沿って洗浄対象のティートカップ52…を有する搾乳機61の近傍まで移動させる。
【0037】
そして、移動させたなら洗浄装置1におけるキャビネット部2の蓋部2cを開け、洗浄対象のティートカップ52…を有する搾乳ユニット51を、セッティング部3にセットする。搾乳ユニット51をセットしたなら蓋部2cを閉じる。この状態を図3に示す。また、排液チューブ23tの先端は近くの排水路に臨ませるとともに、開閉バルブ27は開位置に切換え、流量調整バルブ44は標準位置(設定位置)にセットする。この後、ディストリビュータ42をタップ部41に装着する。装着によりタップ部41は自動で開き、給液管部6の洗浄液Wは、タップ部41及びディストリビュータ42を通して給液チューブ43に流入する。そして、洗浄液Wは、洗浄液噴射部4に供給され、外側洗浄部4e及び内側洗浄部4iにおける各ノズルn…から噴射される。
【0038】
図5及び図6に、各ノズルn…から噴射される洗浄液Wの噴射イメージを示す。洗浄時には、外側洗浄部4eにより、搾乳ユニット51の外側が洗浄される。この場合、搾乳ユニット51に対して、様々な位置から様々な角度で洗浄液Wが噴射されるため、搾乳ユニット51の外面全体に対して洗浄液Wが満遍なく噴射される。したがって、複雑な形態を有する搾乳ユニット51であっても十分かつ確実な洗浄を行うことができる。また、内側洗浄部4iにより、各ティートカップ52…の内側がそれぞれ洗浄される。この場合、各ティートカップ52…の内側に対しても洗浄液Wが的確に噴射されるため、各ティートカップ52…の内側における十分かつ確実な洗浄を行うことができる。
【0039】
そして、所定の洗浄処理時間が経過したなら洗浄処理を終了させる。この場合、開閉バルブ27及び流量調整バルブ44をそれぞれ閉位置に切換えた後、タップ部41からディストリビュータ42を離脱させる。これにより、タップ部41は自動で閉じられる。この後、蓋部2cを開け、搾乳ユニット51を容器部2hから取り出すとともに、搾乳ユニット51を本来の位置に戻す。また、洗浄装置1は、蓋部2cを閉じ、排液チューブ23tを戻した後、搬送レール55に沿ってホームポジションXhまで移動させる。なお、洗浄装置1は必ずしもホームポジションXhまで戻す必要はなく、任意の場所に停止させ、保管することができる。
【0040】
他方、図7には、他の使用例を示す。本実施形態に係る洗浄装置1は搾乳ユニット51の洗浄に用いて好適であるが、洗浄対象は限定されるものではない。例えば、図7に示すように、作業者が汚れた手Hを洗うことも可能である。この場合、蓋部2cは開けた状態にし、開閉バルブ27は閉位置に切換えるとともに、セッティング部3は、図7のように跳ね上げ位置にする。これにより、ノズルユニット25からの上方への洗浄液Wの噴射は解除されるため、作業者は外側洗浄部4eの中で手Hを洗うことができる。
【0041】
よって、このような本実施形態に係る洗浄装置1によれば、搾乳作業の際に搾乳ユニット51が汚れた場合であっても、汚れが発生した場所で搾乳ユニット51に対する洗浄を行うことができるとともに、洗浄する際には、搾乳ユニット51を、キャビネット部2内のセッティング部3にセット(載置)すれば足り、手作業を伴うことなく容易に洗浄することができる。これにより、十分な汚れの除去(洗浄)を行うことができるとともに、洗浄処理の時間短縮を図れるため、ロス時間の低減による作業能率向上にも寄与できる。また、特殊な形態を備える搾乳ユニット51であっても、この搾乳ユニット51の形態にマッチングした洗浄を行うことができるとともに、汚れが発生した場所で搾乳ユニット51に対する洗浄を行った場合でも洗浄後の洗浄液が飛散して他の部位を二次的に汚してしまうなどの不具合を回避できるなど、搾乳ユニット51にとって的確かつ最適な洗浄を行うことができる。
【0042】
次に、本発明の変更実施形態に係る洗浄装置1について、図8及び図9を参照して説明する。
【0043】
図8に示す変更実施形態に係る洗浄装置1は、移動手段Fmを変更した例を示す。即ち、移動手段Fmとして、少なくとも搾乳ユニット洗浄手段Fwを搭載して移動可能な台車部11を用いて構成したものである。例示の台車部11は、基台部81と、この基台部81の後端から上方に起立したハンドル部82と、基台部81の底面に設けた複数のキャスタ部83…を備える。そして、搾乳ユニット洗浄手段Fwにおけるキャビネット部2を基台部81の上面に搭載する。この場合、基台部81の上面にはキャビネット部2の位置ズレを防止する位置ズレ防止部84を設けるとともに、前述した吊下シャフト部33は短く切断し、下側部分のみを残して給液チューブ43のガイドポスト33pとして用いる。これにより、ガイドポスト33pの上端開口33peからは給液チューブ43が導出するため、導出した給液チューブ43は、ガイドポスト33pの上端付近に取付けたフック部85に巻付けるなどにより保持する。
【0044】
図8に示す移動手段Fmを設ければ、台車部11を任意の経路で移動できるため、使用される複数台の搾乳ユニット51…の位置等に影響されることなく、洗浄対象の搾乳ユニット51まで自由かつ迅速に移動できる。また、搾乳ユニット洗浄手段Fwを任意の位置及び角度で使用できるとともに、保管場所等も任意に選定できる。なお、図8において、図1と同一部分には同一符号を付してその構成を明確にするとともに、その詳細な説明は省略する。
【0045】
一方、図9に示す変更実施形態に係る洗浄装置1は、洗浄液供給手段Fsを変更した例を示す。即ち、洗浄液供給手段Fsとして、洗浄液Wを収容した貯留タンク8及びこの貯留タンク8の洗浄液Wを送出する送出ポンプ9を備えるとともに、搾乳ユニット洗浄手段Fwと共に移動可能に構成したものである。したがって、図1に示した洗浄装置1と比較した場合、図9の洗浄装置1では、吊下シャフト部33の上部に、貯留タンク8及び送出ポンプ9を取付けて構成する。図中、91は貯留タンク8の上面に設けた着脱キャップを有する給液部、92はバッテリをそれぞれ示す。また、キャビネット部2における容器部2hの底面部は開放する。これにより、容器部2hには下端開口2hdが設けられるため、容器部2hの下端には排液回収タンク93を装着する。例示の排液回収タンク93は、容器部2hに対して着脱部94,94を介して着脱可能である。図中、95は着脱キャップを有するドレン部を示す。
【0046】
図9に示す洗浄液供給手段Fsを設ければ、洗浄装置1単体で洗浄可能となり、給液配管等の他の設備が不要になるため、実施の容易化及び低コスト化を図ることができる。なお、図9において、図1と同一部分には同一符号を付してその構成を明確にするとともに、その詳細な説明は省略する。
【0047】
以上、好適実施形態(変更実施形態)について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,数量,手法等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。例えば、洗浄液Wは、特に種類を限定するものではなく、水道水及びこの水道水に各種洗浄剤を添加した洗浄液を利用できる。この洗浄剤には、殺菌剤,酸性リンス剤,アルカリ洗浄剤等の各種溶液が含まれる。また、キャビネット部2は、上端を開放した容器部2h及びこの容器部2hの上端開口2hoを開閉可能な蓋部2cを備えて構成した場合を示したが、蓋部2cは必ずしも必須の要素ではなく、例えば、箱状のキャビネット部2の前面に開口を設けた形態であってもよい。さらに、外側洗浄部4e及び内側洗浄部4iの構成は例示であり、同様の機能を有する各種形態により実施可能である。一方、移動手段Fmには、例えば、作業者が手で持って携帯できるタイプも含めることができるとともに、いずれの移動手段Fmも電動により自走可能に構成することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明に係る洗浄装置は、搾乳システムにおける搾乳ユニットの洗浄をはじめ、作業者の手洗いや搾乳システム及び牛舎における各種器具等の洗浄に利用できる。
【符号の説明】
【0049】
1:洗浄装置,2:キャビネット部,2h:容器部,2ho:上端開口,2c:蓋部,3:セッティング部,4:洗浄液噴射部,4e:外側洗浄部,4i:内側洗浄部,6:給液管部,6s:洗浄液供給源,7:着脱機構部,8:貯留タンク,9:送出ポンプ,10:レール移動部,11:台車部,50:搾乳システム,51:搾乳ユニット,52…:ティートカップ,52o…:先端開口,55:搬送レール,W:洗浄液,n…:ノズル,Fw:搾乳ユニット洗浄手段,Fs:洗浄液供給手段,Fm:移動手段,P:パイプ部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搾乳システムの搾乳ユニットを洗浄可能な洗浄機能を備える洗浄装置であって、外部への洗浄液の飛散を防止する飛散防止用のキャビネット部,このキャビネット部の内部に前記搾乳ユニットをセットするためのセッティング部.及びこのセッティング部にセットされた前記搾乳ユニットの複数の部位に洗浄液を噴射することにより当該搾乳ユニットを洗浄する複数のノズルを有する洗浄液噴射部とを有する搾乳ユニット洗浄手段と、前記洗浄液噴射部に対して洗浄液を供給する洗浄液供給手段と、少なくとも使用時における前記搾乳ユニットをセットできる位置まで前記搾乳ユニット洗浄手段を移動可能な移動手段とを備えることを特徴とする洗浄装置。
【請求項2】
前記キャビネット部は、上端を開放した容器部及びこの容器部の上端開口を開閉可能な蓋部を備えることを特徴とする請求項1記載の洗浄装置。
【請求項3】
前記洗浄液噴射部は、洗浄液が流通可能なパイプ部材の複数の所定位置にそれぞれ前記ノズルを付設し、かつ前記パイプ部材の複数個所を湾曲させるとともに、前記セッティング部にセットされた前記搾乳ユニットの周りの少なくとも一部を囲むことにより当該搾乳ユニットの外側を洗浄可能に構成する外側洗浄部を備えることを特徴とする請求項1又は2記載の洗浄装置。
【請求項4】
前記洗浄液噴射部は、前記セッティング部にセットされた前記搾乳ユニットにおける各ティートカップの先端開口に対向させることにより、各ティートカップの内側をそれぞれ洗浄可能に構成する内側洗浄部を備えることを特徴とする請求項1,2又は3記載の洗浄装置。
【請求項5】
前記洗浄液供給手段は、前記搾乳ユニットの移動範囲に配設し、かつ洗浄液供給源から洗浄液が供給される給液管部と、前記洗浄液噴射部を前記給液管部の所定位置に接続又は接続解除可能な着脱機構部とを備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の洗浄装置。
【請求項6】
前記洗浄液供給手段は、洗浄液を収容した貯留タンク及びこの貯留タンクの洗浄液を送出する送出ポンプを備えるとともに、前記搾乳ユニット洗浄手段と共に移動可能にしたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の洗浄装置。
【請求項7】
前記移動手段は、前記搾乳ユニットを搬送する際に用いる搬送レールに装填し、かつ少なくとも前記搾乳ユニット洗浄手段を吊り下げることにより、前記搬送レールに沿って移動可能なレール移動部を備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の洗浄装置。
【請求項8】
前記移動手段は、少なくとも前記搾乳ユニット洗浄手段を搭載して移動可能な台車部を備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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