説明

洗浄装置

【課題】芝刈り車両の洗浄に伴う二次的な作業を極力低減することができる洗浄装置を提供する。
【解決手段】洗浄装置2は、芝の刈り取りを行う芝刈り機(前側芝刈り機M2及び後側芝刈り機M3)と、刈芝を収容するハウジング(前側ハウジングH1,H2及び後側ハウジングH3)とを備える芝刈り車両1の洗浄を行うものであり、芝刈り車両1の下方から芝刈り機に向けて水及び空気を吐出するエアー吐出管31及び洗浄水吐出管32と、芝刈り車両1の下方からハウジングの内部に向けて水及び空気を吐出するエアー吐出管33及び洗浄水吐出管34とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芝刈り車両の刈刃やハウジングの洗浄を行う洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
芝刈り車両は、芝の刈り取りを行う芝刈り機に加えて、芝刈り機によって刈り取られた芝(刈芝)を収容するハウジングを備えるものが殆どであり、芝の刈り取り時には芝刈り機による芝の刈り取りとともに芝刈り機によって刈り取られた刈芝のハウジングへの収容が行われる。このような芝刈り車両においては、芝の刈り取り終了後に、ハウジングに収容された刈芝を除去する除去作業、及び芝刈り機の刈刃やハウジングを洗浄する洗浄作業が作業者によって行われる。
【0003】
従来の洗浄作業は、一般的に高圧の水や空気を刈刃やハウジングに吹き付けることによって行われる。具体的には、水道水の蛇口に取り付けられたホースの先端を絞ることによって勢いのある水を吹き付けたり、高圧洗浄機によって加圧された水を吹き付けたり、或いはエアガンを用いて加圧された空気を吹き付けることにより行われる。このような水や空気の吹きつけによって刈刃やハウジングに付着した刈芝や泥が吹き飛ばされることにより、芝刈り機の刈刃やハウジングが洗浄される。
【0004】
以下の特許文献1には、モーア(芝刈り機)で刈り取った刈芝を吸引ブロアによって吸引してダクトを介して集草容器に回収する乗用芝刈機において、ダクトの先端に清掃用ノズルを着脱可能に構成し、清掃用ノズルから吹き出されるブロアの排風をモーアに吹き付けることによりモーアの清掃を可能とした乗用芝刈機が開示されている。また、以下の特許文献2には、遠心送風機ハウジングのカッターハウジングと反対側の外側面にインペラの出し入れが可能な大きさの開放口を設けることによって、メンテナンスや清掃を容易にした芝草刈機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−294316号公報
【特許文献2】特表平8−242651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した従来の洗浄作業は、高圧の水や空気を刈刃やハウジングに吹き付けることにより行われているため、芝刈り車両の洗浄が行われる洗浄場所に刈芝や粉塵等が飛散してしまう。このため、その飛散した刈芝や粉塵等を回収する二次的な作業が必要になるという問題があった。ゴルフ場のように芝の管理を頻繁に行う必要のある場所では、上記の二次的な作業の頻度も高くなって極めて煩わしいため、このような二次的な作業を省略できることが望ましい。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、芝刈り車両の洗浄に伴う二次的な作業を極力低減することができる洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の洗浄装置は、芝の刈り取りを行う芝刈り機(M1〜M3)と、該芝刈り機に対応して設けられ刈芝を収容するハウジング(H1〜H3)とを備える芝刈り車両(1)の洗浄を行う洗浄装置(2)であって、前記芝刈り車両の下方から前記芝刈り機に向けて水及び空気の少なくとも一方を吐出する第1吐出装置(31、32)と、前記芝刈り車両の下方から前記ハウジングの内部に向けて水及び空気の少なくとも一方を吐出する第2吐出装置(33、34)とを備えることを特徴としている。
また、本発明の洗浄装置は、前記芝刈り機及び前記ハウジングが、前記芝刈り車両に複数対設けられており、前記第1,第2吐出装置が、前記芝刈り機及び前記ハウジングの対毎に設けられていることを特徴としている。
また、本発明の洗浄装置は、前記第1,第2吐出装置が、水又は空気の吐出口を上方に向けた状態で、床面に形成された洗浄溝(D1〜D3)内に配設されていることを特徴としている。
また、本発明の洗浄装置は、前記芝刈り機が、回転軸が前記芝刈り車両の進行方向に対して左右方向に設定された回転刃(22)を備えており、前記第1,第2吐出装置の吐出口が、前記回転刃の回転軸方向に沿って配列されていることを特徴としている。
また、本発明の洗浄装置は、前記第1,第2吐出装置から前記芝刈り機及び前記ハウジングに向けてそれぞれ吐出される水又は空気を妨げることなく前記洗浄溝の上部を覆う網部材(40、41)を備えることを特徴としている。
また、本発明の洗浄装置は、前記網部材が、一部に穴部(41a)が形成されており、前記網部材の前記穴部を介して昇降可能に構成されたブラシ(42)を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ハウジングを芝刈り機に取り付けた状態で、芝刈り機に向けて水及び空気の少なくとも一方を吐出するとともに、ハウジングの内部に向けて水及び空気の少なくとも一方を吐出しているため、洗浄時の刈芝や粉塵等の飛散が少なくなり、芝刈り車両1の洗浄に伴う二次的な作業を低減することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態による洗浄装置の洗浄対象である芝刈り車両の外観を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態による洗浄装置の洗浄対象である芝刈り車両のハウジングを取り外した状態を示す斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態による洗浄装置を模式的に示す斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態による洗浄装置と芝刈り機及びハウジングとの位置関係を示す側断面図である。
【図5】本発明の一実施形態による洗浄装置の変形例を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態による洗浄装置について詳細に説明する。尚、以下では、まず洗浄装置の洗浄対象である芝刈り車両について説明し、次いで芝刈り車両の刈刃やハウジングの洗浄を行う洗浄装置について説明する。
【0012】
〔芝刈り車両〕
図1は、本発明の一実施形態による洗浄装置の洗浄対象である芝刈り車両の外観を示す斜視図である。また、図2は、同芝刈り車両のハウジングを取り外した状態を示す斜視図である。図1に示す通り、芝刈り車両1は、2つの前側芝刈り機M1,M2(芝刈り機)及び1つの後側芝刈り機M3(芝刈り機)と、2つの前側ハウジングH1,H2(ハウジング)及び1つの後側ハウジングH3(ハウジング)とを備えており、前側芝刈り機M1,M2及び後側芝刈り機M3により芝の刈り取りを行いつつ、刈り取られた刈芝を前側ハウジングH1,H2及び後側ハウジングH3にそれぞれ収容する。尚、この芝刈り車両1は、エンジンの動力を用いて走行し、モータ等の動力を用いて芝を刈るハイブリッド式の芝刈り車両である。
【0013】
この芝刈り車両1のフレーム10の右側前方下部及び左側前方下部には前輪11a,11bがそれぞれ配設されており、フレーム10の中央後方下部には後輪12が配設されている。また、フレーム10の略中央上部には、作業者が着席するシート13が配設されている。このシート13の前方上部にはステアリングホイール14が設けられており、前方下部には後進アクセルペダル15、前進アクセルペダル16、及びブレーキペダル17が設けられている。シート13に着席した作業者によってステアリングホイール14が操作されることで芝刈り車両1の進行方向が定められ、後進アクセルペダル15、前進アクセルペダル16、及びブレーキペダル17が操作されることにより、芝刈り車両1の後退、前進、停止、及び走行速度が定められる。
【0014】
前輪11a,11bは、エンジンEに直結される油圧モータの動力によって駆動され、車両の左右方向に沿う回転軸の周りで回転可能にフレーム10に支持されている。後輪12は、3輪駆動時は前輪11a,11bと同様に油圧モータの動力によって駆動され、2輪駆動時はフリー回転する。但し、後輪12は、前輪11a,11bとは異なり、ステアリングホイール14の回転量に応じて左右方向に揺動可能に構成されている。後輪12の左右方向への揺動に合わせて後輪12の回転軸も揺動するため、ステアリングホイール14を回転させることにより芝刈り車両1の進行方向が変更される。
【0015】
前側芝刈り機M1,M2は、前輪11a,11bの各々の前方において昇降可能に支持されており、下降して前輪11a,11bの前方で地面に接している状態で芝の刈り取りを行う。これら前側芝刈り機M1,M2の各々は、図2に示す通り、前側ローラ21、電動リール22(回転刃)、後側ローラ23(図1,図2では図示省略:図4,図5参照)、及びモータ24を備える。前側ローラ21は、回転軸が車両の左右方向に設定されて、周方向に沿う溝が軸方向に複数形成された略円柱形状の部材であり、電動リール22の前方に配設される。この前側ローラ21は、下降した状態にある前側芝刈り機M1,M2を地面上に支持するために設けられている。
【0016】
電動リール22は、芝を刈るための螺旋状の刃が側面に複数形成された略円柱形状の部材であって、回転軸が車両の左右方向に設定されており、モータ24によって駆動される。この電動リール22は、前側ローラ21と不図示の後側ローラ23との間に配設され、刈り取った後の芝の高さの分だけ前側ローラ21及び後側ローラ23よりも上方に配置されている。尚、前側ローラ21及び後側ローラ23に対する電動リール22の高さ位置は、例えば数mm〜十数mm程度の範囲で微調整が可能である。後側ローラ23は、前側ローラ21の様な溝が形成されていない略円柱形状の部材であり、上述した前側ローラ21と同様に、下降した状態にある前側芝刈り機M1,M2を地面上に支持するために設けられている。
【0017】
フレーム10の前部には、中央部から右方向に延びる支持アーム25aと、中央部から左方向に延びる支持アーム25bとが設けられている。支持アーム25aは、その右端部において車両の前後方向における回転軸の周りで前側芝刈り機M1を揺動可能に支持しており、支持アーム25bは、その左端部において車両の前後方向における回転軸の周りで前側芝刈り機M2を揺動可能に支持している。このため、車両の左右方向に地面が傾斜していても、その傾斜に合わせて前側芝刈り機M1,M2を傾斜させることができる。
【0018】
支持アーム25a,25bには、アクチュエータとしての電動シリンダ26a,26bが取り付けられている。電動シリンダ26aが伸縮すると支持アーム25aの右端部が上下方向に移動し、これにより前側芝刈り機M1が昇降する。同様に、電動シリンダ26bが伸縮すると支持アーム25bの左端部が上下方向に移動し、これにより前側芝刈り機M2が昇降する。尚、図1では、前側芝刈り機M1が上昇しており、前側芝刈り機M2が下降している状態を図示している。
【0019】
後側芝刈り機M3は、前輪11a,11bと後輪12との間において昇降可能に支持されており、下降して後輪12の前方で地面に接している状態で芝の刈り取りを行う。この後側芝刈り機M3は、図2に示す通り、前側芝刈り機M1,M2と同様に、前側ローラ21、電動リール22(回転刃)、後側ローラ23、及びモータ24を備えており、電動シリンダ26a,26bと同様の電動シリンダ等を備える不図示の昇降機構によって昇降される。尚、後側芝刈り機M3も、前側芝刈り機M1,M2と同様に、車両の前後方向における回転軸の周りで揺動可能に支持されており、車両の左右方向における地面の傾斜に合わせて傾斜が可能である。
【0020】
前側ハウジングH1,H2は、前側芝刈り機M1,M2に対してそれぞれ着脱可能な箱状の部材であって、前側芝刈り機M1,M2で刈り取られた刈芝をそれぞれ収容するものである。具体的に、前側ハウジングH1,H2は、前側芝刈り機M1,M2に取り付けられた状態で前輪11a,11bに対向する後端部が開口しており、前側芝刈り機M1,M2で刈り取られた芝が前側ハウジングH1,H2の後端部から前側ハウジングH1,H2内にそれぞれ収容される。また、前側ハウジングH1,H2は、前側芝刈り機M1,M2が下降して平坦な地面に接している状態で、その底面が地面に接しないように前側芝刈り機M1,M2にそれぞれ取り付けられる。
【0021】
これら前側ハウジングH1,H2には、その上部に空気穴Q1と把持穴Q2とが形成されている。空気穴Q1は、金網が設けられた穴であって、前側ハウジングH1,H2内を対流する空気を抜くための穴である。尚、作業者が空気穴Q1から前側ハウジングH1,H2の内部を参照すれば、前側ハウジングH1,H2内に収容された刈芝の量を確認することも可能である。把持穴Q2は、前側芝刈り機M1,M2に対して前側ハウジングH1,H2を着脱する際に、前側ハウジングH1,H2を把持するために作業者の手が介挿される穴である。
【0022】
後側ハウジングH3は、後側芝刈り機M3に対して着脱可能な箱状の部材であって、後側芝刈り機M3で刈り取られた刈芝を収容するものである。この後側ハウジングH3は、上記の前側ハウジングH1,H2と同様の形状であり、前側ハウジングH1,H2と同様に後側芝刈り機M3が下降して平坦な地面に接している状態で、その底面が地面に接しないように後側芝刈り機M3に取り付けられる。また、後側ハウジングH3にも、前側ハウジングH1,H2に形成された空気穴Q1及び把持穴Q2と同様の穴が形成されている。
【0023】
尚、シート13の右側前方(ステアリングホイール14の右側)には、タッチパネル式の表示装置(例えば、液晶表示装置)18が設けられている。この表示装置18は、作業者の指示を入力するとともに、芝刈り車両1の現在の状態を示す情報等の各種情報を表示するものである。前側芝刈り機M1,M2及び後側芝刈り機M3の昇降、及びこれらに設けられた電動リール22の始動・停止は、作業者が表示装置18を操作することによって入力される指示に応じて制御される。表示装置18に表示される情報としては、芝刈り車両1の走行速度、前側芝刈り機M1,M2及び後側芝刈り機M3の各々に設けられた電動リール22の回転速度、及び芝の育成状況を示す情報等の情報である。尚、ステアリングホイール14の下方であって、前進アクセルペダル16とブレーキペダル17との間には、芝刈り車両1の前方を照明する照明装置19が設けられている。
【0024】
〔洗浄装置〕
図3は、本発明の一実施形態による洗浄装置を模式的に示す斜視図である。本実施形態の洗浄装置2は、例えば芝刈り車両1が格納される格納庫内、又は芝刈り車両1の洗浄が行われる洗浄場所の床面に設置される。この洗浄装置2は、図3に示す通り、芝刈り車両1が備える前側芝刈り機M1,M2及び後側芝刈り機M3の平面的な位置関係と同じ位置関係をもって形成された洗浄溝D1〜D3内に配設されるエアー吐出管31及び洗浄水吐出管32(第1吐出装置)と、エアー吐出管33及び洗浄水吐出管34(第2吐出装置)とを備える。
【0025】
エアー吐出管31は、芝刈り車両1の下方から芝刈り機が備える電動リール22に向けて、電動リール22に張り付いた刈芝や粉塵等を乾燥させて吹き飛ばすためのエアー(空気)を吐出する。洗浄水吐出管32は、芝刈り車両1の下方から芝刈り機が備える電動リール22に向けて、電動リール22を洗浄するための水を吐出する。尚、エアー吐出管31は、洗浄水吐出管32から吐出される水によって濡れた電動リール22を乾燥するためにも用いられる。
【0026】
具体的に、洗浄溝D1に設けられたエアー吐出管31及び洗浄水吐出管32からは、洗浄溝D1の上方に配置される前側芝刈り機M1に設けられた電動リール22に向けてエアー及び水がそれぞれ吐出される。また、洗浄溝D2に設けられたエアー吐出管31及び洗浄水吐出管32からは、洗浄溝D2の上方に配置される前側芝刈り機M2に設けられた電動リール22に向けてエアー及び水がそれぞれ吐出される。同様に、洗浄溝D3に設けられたエアー吐出管31及び洗浄水吐出管32からは、洗浄溝D3の上方に配置される後側芝刈り機M3に設けられた電動リール22に向けてエアー及び水がそれぞれ吐出される。
【0027】
エアー吐出管33は、芝刈り車両1の下方からハウジングの内部に向けて、ハウジングの内壁に張り付いた刈芝や粉塵等を乾燥させて吹き飛ばすためのエアー(空気)を吐出する。洗浄水吐出管34は、芝刈り車両1の下方からハウジングの内部に向けて、ハウジングの内部を洗浄するための水を吐出する。尚、エアー吐出管33は、洗浄水吐出管34から吐出される水によって濡れたハウジングの内部を乾燥するためにも用いられる。
【0028】
具体的に、洗浄溝D1に設けられたエアー吐出管33及び洗浄水吐出管34からは、洗浄溝D1の上方に配置される前側芝刈り機M1に取り付けられる前側ハウジングH1の内部に向けてエアー及び水がそれぞれ吐出される。また、洗浄溝D2に設けられたエアー吐出管33及び洗浄水吐出管34からは、洗浄溝D2の上方に配置される前側芝刈り機M2に取り付けられる前側ハウジングH2の内部に向けてエアー及び水がそれぞれ吐出される。同様に、洗浄溝D3に設けられたエアー吐出管31及び洗浄水吐出管32からは、洗浄溝D3の上方に配置される後側芝刈り機M3に取り付けられる後側ハウジングH3の内部に向けてエアー及び水がそれぞれ吐出される。
【0029】
このように、本実施形態では、芝刈り車両1が備える前側芝刈り機M1,M2及び後側芝刈り機M3の各々に対応して、各種吐出管(エアー吐出管31及び洗浄水吐出管32並びにエアー吐出管33及び洗浄水吐出管34)がそれぞれ設けられている。ここで、前側芝刈り機M1,M2及び後側芝刈り機M3には前側ハウジングH1,H2及び後側ハウジングH3がそれぞれ取り付けられるため、上記の各種吐出管は、前側芝刈り機M1,M2及び後側芝刈り機M3と前側ハウジングH1,H2及び後側ハウジングH3との対毎に設けられているということができる。
【0030】
エアー吐出管31及び洗浄水吐出管32、並びに、エアー吐出管33及び洗浄水吐出管34は何れも、長手方向に沿って一定の間隔をもって複数の吐出口が一側面に形成された円環状の部材である。これらエアー吐出管31,33及び洗浄水吐出管32,34は、その軸方向が上方に配置される電動リール22の回転軸の方向に沿い、且つ、吐出口を上方に向けた状態で洗浄溝D1〜D3の各々に配設されている。従って、エアー吐出管31,33及び洗浄水吐出管32,34の各々に形成される吐出口は、電動リール22の回転軸方向に沿って配列されている。
【0031】
尚、エアー吐出管31,33は、例えばコンプレッサ等の空気を圧縮する圧縮機に接続され、洗浄水吐出管32,34は、例えば水道水の蛇口或いは水の加圧を行う高圧洗浄機等に接続される。エアー吐出管31,33に対するエアーの供給は、例えば圧縮機を動作状態にするか非動作状態にするかを制御し、或いはエアー吐出管31,33と圧縮機との間のエアー供給路に設けられたバルブの開度を制御することにより行われる。尚、洗浄水吐出管32,34に対する水の供給もエアーの供給と同様に制御される。
【0032】
図4は、本発明の一実施形態による洗浄装置と芝刈り機及びハウジングとの位置関係を示す側断面図である。尚、図4では、図示を簡略化するために、洗浄溝D1に配設されたエアー吐出管31,33及び洗浄水吐出管32,34と前側芝刈り機M1及び前側ハウジングH1との位置関係を図示している。洗浄溝D2に配設されたエアー吐出管31,33及び洗浄水吐出管32,34と前側芝刈り機M2及び前側ハウジングH2との位置関係、洗浄溝D3に配設されたエアー吐出管31,33及び洗浄水吐出管32,34と後側芝刈り機M3及び後側ハウジングH3との位置関係は、図4に示す位置関係と同様である。
【0033】
洗浄溝D1には、洗浄溝D1への脱輪を防止すべく、その上部を覆う網部材40が設けられている。この網部材40は、エアー吐出管31及び洗浄水吐出管32から電動リール22に向けて吐出されるエアー及び水、並びに、エアー吐出管33及び洗浄水吐出管34から前側ハウジングH1の内部に向けて吐出されるエアー及び水を妨げることがないように、洗浄溝D1の上部を覆っている。つまり、網部材40の網目及びエアー吐出管31,33及び洗浄水吐出管32,34の吐出口は、吐出されるエアー及び水が妨げられることがないように間隔及び相対的な位置関係が設定されている。尚、洗浄溝D1に設けられた網部材40と同様の網部材が洗浄溝D2,D3にも設けられている。
【0034】
洗浄装置2によって芝刈り車両1の洗浄を行う場合には、図3に示す通り、作業者が芝刈り車両1を運転して、芝刈り車両1を洗浄溝D1,D2に向かって移動させ、洗浄溝D1,D2の上方に前側芝刈り機M1,M2をそれぞれ配置するとともに、洗浄溝D3の上方に後側芝刈り機M3を配置する。このとき、図4に示す通り、洗浄溝D1の略中央部の上方に前側芝刈り機M1の電動リール22が位置するように前側芝刈り機M1を配置する。これは、洗浄溝D2上の前側芝刈り機M2、洗浄溝D3上の後側芝刈り機M3についても同様である。
【0035】
芝刈り車両1の移動が完了すると、作業者が把持孔Q2に手を介挿して前側ハウジングH1,H2及び後側ハウジングH3を把持して順に取り外し、これら前側ハウジングH1,H2及び後側ハウジングH3に収容された刈芝を回収して廃棄する。尚、刈芝が回収された前側ハウジングH1,H2及び後側ハウジングH3は作業者によって再び前側芝刈り機M1,M2及び後側芝刈り機M3にそれぞれ取り付けられる。
【0036】
以上の作業が完了すると、作業者の操作によって前側芝刈り機M1,M2及び後側芝刈り機M3に設けられた電動リール22の回転、及び洗浄溝D1〜D3に配設されたエアー吐出管31に対するエアーの供給が開始される。これにより、エアー吐出管31から回転している電動リール22に向けてエアーの吹きつけが行われ、電動リール22に張り付いた刈芝や粉塵等が乾燥されて吹き飛ばされる。尚、吹き飛ばされた刈芝や粉塵等は、前側ハウジングH1,H2及び後側ハウジングH3にそれぞれ収容される。
【0037】
次に、作業者の操作によって洗浄溝D1〜D3に配設された洗浄水吐出管32,34に対する水の供給が行われる。これにより、洗浄水吐出管32から回転している電動リール22に向けて水の吹きつけが行われるとともに、洗浄水吐出管34からハウジング内に向けて水の吹きつけが行われ、電動リール22の洗浄とともにハウジング内の洗浄が行われる。
【0038】
洗浄が終了すると、作業者の操作によって洗浄溝D1〜D3に配設されたエアー吐出管31,33に対するエアーの供給が開始される。これにより、エアー吐出管31から回転している電動リール22に向けてエアーの吹きつけが行われるとともに、エアー吐出管33からハウジング内に向けたエアーの吹きつけが行われ、電動リール22及びハウジング内が乾燥される。
【0039】
以上の作業が終了すると、作業者が把持孔Q2に手を介挿して前側ハウジングH1,H2及び後側ハウジングH3を把持して順に取り外し、これら前側ハウジングH1,H2及び後側ハウジングH3に収容された刈芝や粉塵等を回収して廃棄する。刈芝や粉塵等が回収された前側ハウジングH1,H2及び後側ハウジングH3は作業者によって再び前側芝刈り機M1,M2及び後側芝刈り機M3にそれぞれ取り付けられる。以上の作業によって芝刈り車両1が備える前側芝刈り機M1,M2及び後側芝刈り機M3並びに前側ハウジングH1,H2及び後側ハウジングH3の洗浄が完了する。
【0040】
次に、洗浄装置2の変形例について説明する。図5は、本発明の一実施形態による洗浄装置の変形例を示す側断面図である。図5に示す通り、本変形例は、一部に穴部41aが形成された網部材41と、網部材41に形成された穴部41aを介して昇降可能に構成されたブラシ42とを洗浄溝D1に備える。尚、洗浄溝D2,D3にも網部材41及びブラシ42と同様のものが設けられる。
【0041】
網部材41は、図4に示す網部材40と同様に、洗浄溝D1への脱輪を防止するためのものであって、エアー吐出管31及び洗浄水吐出管32から電動リール22に向けて吐出されるエアー及び水、並びに、エアー吐出管33及び洗浄水吐出管34から前側ハウジングH1の内部に向けて吐出されるエアー及び水を妨げることがないように洗浄溝D1の上部を覆っている。この網部材41に形成された穴部41aは、例えば電動リール22の回転軸の方向に延びる平面形状が矩形形状の穴である。
【0042】
ブラシ42は、網部材41の穴部41aを介して昇降可能に構成されており、回転している電動リール22に接触することにより、電動リール22に付着した刈芝や泥を取り除くものである。尚、電動リール22が正転している状態でブラシ42を電動リール22に接触させると、電動リール22に形成された螺旋状の刃によってブラシ42が刈り取られることが考えられるため、電動リール22が逆転しているときにブラシ42を電動リール22に接触させるのが望ましい。
【0043】
また、ブラシ42は、電動リール22の回転軸に沿う方向の軸の周りに回転可能に構成されていても良い。かかる構成にすることで、その軸の周りにおけるブラシ42の減り具合を均一化することができる。また、ブラシ42は、電動リール22の回転軸に沿う方向で移動可能に構成されていても良い。かかる構成にすることで、ブラシ42を小型化することができる。
【0044】
以上説明した通り、本実施形態の洗浄装置2は、芝刈り車両1の下方から前側芝刈り機M1,M2及び後側芝刈り機M3が備える電動リール22に向けてエアー及び水をそれぞれ吐出するエアー吐出管31及び洗浄水吐出管32と、芝刈り車両1の下方から前側ハウジングH1,H2及び後側ハウジングH3の内部に向けてエアー及び水をそれぞれ吐出するエアー吐出管33及び洗浄水吐出管34とを備えている。そして、前側ハウジングH1,H2及び後側ハウジングH3が前側芝刈り機M1,M2及び後側芝刈り機M3の各々に取り付けられた状態で、前側芝刈り機M1,M2及び後側芝刈り機M3の各々に設けられた電動リール22を回転させながら洗浄を行うことができる。これにより、洗浄時の刈芝や粉塵等の飛散が少なくなり、芝刈り車両1の洗浄に伴う二次的な作業を低減することができる。
【0045】
以上、本発明の一実施形態による洗浄装置について説明したが、本発明は上記実施形態に制限されず、本発明の範囲内で自由に変更が可能である。例えば、上記実施形態では、芝刈り車両1の下方から芝刈り機が備える電動リール22に向けて、エアー及び水をそれぞれ吐出するエアー吐出管31及び洗浄水吐出管32備えるとともに、芝刈り車両1の下方からハウジングに向けて、エアー及び水をそれぞれ吐出するエアー吐出管33及び洗浄水吐出管34備える例について説明した。しかしながら、エアー吐出管31及び洗浄水吐出管32の何れか一方、エアー吐出管33及び洗浄水吐出管34の何れか一方が省略された構成であっても良い。
【0046】
また、上記実施形態では、洗浄溝D1〜D3への脱輪を防止するために洗浄溝D1〜D3の上部を覆う網部材40が設けられている例について説明したが、脱輪が生ずる心配がない場合には網部材40を省略しても良い。また、エアー吐出管31,33及び洗浄水吐出管32,34の強度が芝刈り車両1の重量に十分に耐え得る場合にも網部材40を省略することができる。
【0047】
また、電動リール22に対するエアーや水の吹き付けは、電動リール22の正転及び逆転を切り替えながら行っても良い。これにより、電動リール22に張り付いた刈芝や粉塵等を効率良く除去することができる。また、エアー吐出管31,33及び洗浄水吐出管32,34は、軸方向に沿って往復運動可能に構成されていても良く、また、軸方向の周りで回動可能に構成されていても良い。
【0048】
更に、前述した実施形態では、洗浄対象の芝刈り車両1がエンジンの動力を用いて走行し、モータ等の動力を用いて芝を刈るハイブリッド式の芝刈り車両である場合を例に挙げて説明した。しかしながら、本発明の洗浄装置は、モータ等の動力を用いて走行するとともに芝を刈る電動式の芝刈り車両や、エンジンの動力を用いて走行するとともに芝を刈る芝刈り車両を洗浄することも可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 芝刈り車両
2 洗浄装置
22 電動リール
31,33 エアー吐出管
32.34 洗浄水吐出管
40,41 網部材
41a 穴部
42 ブラシ
D1〜D3 洗浄溝
H1,H2 前側ハウジング
H3 後側ハウジング
M1,M2 前側芝刈り機
M3 後側芝刈り機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芝の刈り取りを行う芝刈り機と、該芝刈り機に対応して設けられ刈芝を収容するハウジングとを備える芝刈り車両の洗浄を行う洗浄装置であって、
前記芝刈り車両の下方から前記芝刈り機に向けて水及び空気の少なくとも一方を吐出する第1吐出装置と、
前記芝刈り車両の下方から前記ハウジングの内部に向けて水及び空気の少なくとも一方を吐出する第2吐出装置と
を備えることを特徴とする洗浄装置。
【請求項2】
前記芝刈り機及び前記ハウジングは、前記芝刈り車両に複数対設けられており、
前記第1,第2吐出装置は、前記芝刈り機及び前記ハウジングの対毎に設けられている
ことを特徴とする請求項1記載の洗浄装置。
【請求項3】
前記第1,第2吐出装置は、水又は空気の吐出口を上方に向けた状態で、床面に形成された洗浄溝内に配設されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の洗浄装置。
【請求項4】
前記芝刈り機は、回転軸が前記芝刈り車両の進行方向に対して左右方向に設定された回転刃を備えており、
前記第1,第2吐出装置の吐出口は、前記回転刃の回転軸方向に沿って配列されている
ことを特徴とする請求項3記載の洗浄装置。
【請求項5】
前記第1,第2吐出装置から前記芝刈り機及び前記ハウジングに向けてそれぞれ吐出される水又は空気を妨げることなく前記洗浄溝の上部を覆う網部材を備えることを特徴とする請求項3又は請求項4記載の洗浄装置。
【請求項6】
前記網部材は、一部に穴部が形成されており、
前記網部材の前記穴部を介して昇降可能に構成されたブラシを備える
ことを特徴とする請求項5記載の洗浄装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−55290(P2012−55290A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−204531(P2010−204531)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】