説明

洗濯機

【課題】吊り棒に取り付けられた駆動ネジ部とその駆動ネジ部に螺合して上下動させる部品の摩耗や経年変化による劣化を抑えることのできる洗濯機を提供する。
【解決手段】水槽5を傾斜させる際、乱数発生部40を起動して所定タイミングで乱数を抽出し、かつ、抽出した乱数に対応付けられた角度を選択して水槽5の目標傾斜角度とする水槽傾斜角度設定部31と、水槽傾斜角度設定部31により設定された目標傾斜角度まで水槽5が傾斜するように吊り棒駆動回路50を制御する制御部32とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水槽が傾斜可能な洗濯機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の洗濯機には、水平軸あるいは傾斜軸を中心に洗濯兼脱水槽が回転するドラム式洗濯機や、鉛直軸を中心に洗濯兼脱水槽が回転する縦型洗濯機がある。このうち縦型洗濯機には、洗濯兼脱水槽が収納された水槽を本体の四隅に配置された4本の吊り棒によって吊り下げているものがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−237491号公報(図1および図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前述した縦型洗濯槽は、攪拌翼により発生した渦流が中央部に集中することから布同士が絡んだり、鉛直方向の流れや動きが形成され難いことから効果的な洗濯がなされないことがあった。
【0004】
そこで、洗濯の各工程において、前述した4本の吊り棒のうち、奧に配設された2本の吊り棒を駆動部(モーターとギア)によって上方に移動させ、水槽を前方に傾かせる洗濯機が提案されている。前述した2本の吊り棒には、駆動部の回転方向に応じて軸方向に上下動する駆動ネジ部が取り付けられている。その駆動ネジ部と、駆動ネジ部に螺合して上下動させる部品とにより水槽を傾けるだけでなく水槽を支えており、停止時には同じ位置で停止している。そのため、軸方向に移動する際や、停止しているときには、ネジに負担がかかって摩耗したり、ネジが経年変化により劣化し、駆動部分の寿命が短くなる恐れがあった。
【0005】
本発明は、前述のような課題を解決するためになされたもので、吊り棒に取り付けられた駆動ネジ部とその駆動ネジ部に螺合して上下動させる部品の摩耗や経年変化による劣化を抑えることのできる洗濯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る洗濯機は、筐体内に配設された水槽と、水槽を吊り下げる吊り棒と、吊り棒を軸方向に移動させて水槽を傾斜させる吊り棒駆動部と、水槽を傾斜させる際、予め設定された水槽の傾斜角度を中間値とする所定の角度範囲から前回と異なる角度を選択して目標傾斜角度とする水槽傾斜角度設定部と、水槽傾斜角度設定部により設定された目標傾斜角度まで水槽が傾斜するように吊り棒駆動部を制御する制御部とを備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明においては、水槽を傾斜させる際、予め設定された水槽の傾斜角度を中間値とする所定の角度範囲から前回と異なる角度を選択して目標傾斜角度とし、この目標傾斜角度まで水槽が傾斜するように吊り棒駆動部を制御するようにしたので、吊り棒駆動部にかかる吊り棒を介しての水槽の重量負担の位置がずれることになり、このため、吊り棒を軸方向に上下動させるときの摩耗が軽減され、経年変化による劣化を抑えることが可能になり、駆動部分の寿命を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1に係る洗濯機を示す側面側の説明図、図2は実施の形態1の洗濯機に設けられた吊り棒駆動部の拡大図、図3は吊り棒駆動部の駆動ネジ部を示す斜視図である。
洗濯機の筐体1は、外観がほぼ矩形状に形成され、上部にトップカバー2が取り付けられている。トップカバー2には、外蓋3が開閉自在に設けられている。筺体1内に収納された水槽5は、上部に開口部が設けられた有底円筒状に形成され、その中に洗濯兼脱水槽(図示せず)が回転自在に配設されている。また、水槽5の開口部側には内蓋(図示せず)が設けられており、その内蓋は、機械的または電気的に外蓋3の開閉に連動して開いたり閉じたりするようになっている。水槽5内に配設された洗濯兼脱水槽の側板には脱水のための複数の通水孔(図示せず)が形成されている。また、洗濯兼脱水槽の内側底部には、投入された衣類および注水された水を攪拌する攪拌翼(図示せず)が回動自在に配置されている。水槽5の下方に配設されたモータ4は、ギア、クラッチなどの機構を介して攪拌翼や洗濯兼脱水槽と連結される。
【0009】
吊り下げ手段6、10は、上部側が筐体1の四隅に固定された吊り板13に、下部側が水槽5の外周に取り付けられたフランジ14にそれぞれ揺動可能に取り付けられ、4カ所から水槽5を懸架している。手前の吊り下げ手段6は、吊り棒7と、吊り棒7の上部に取り付けられた支持部8と、吊り棒7の下部に取り付けられた防振部9とをそれぞれ備え、奧に設けられた吊り下げ手段10は、吊り棒11と、吊り棒11の上部に取り付けられた吊り棒駆動部20と、吊り棒11の下部に取り付けられた防振部12とをそれぞれ備えている。
【0010】
前述した吊り棒駆動部20は、図2に示すように、軸方向にネジにより挿通された吊り棒11が取り付けられ、外周面に雄ネジ21aが切られた駆動ネジ部21(図3参照)と、内周面に駆動ネジ部21の雄ネジ21aと螺合する雌ネジ22aが形成され、外周面に周方向に歯22bが切られた嵌合歯車部22と、図示していないがDCモータおよびDCモータの回転を伝達する複数の歯車よりなり、DCモータの回転を複数の歯車を介して嵌合歯車部22に伝達する駆動機構部23と、嵌合歯車部22および駆動機構部23を覆うように設けられた駆動部ケース24と、駆動部ケース24の上部に設けられた上部防塵ケース25と、駆動部ケース24の下部に設けられた下部防塵ケース26と、嵌合歯車部22の上面に取り付けられたマグネット27と、このマグネット27に対向するように上方に配置され、マグネット27が通過する毎に1パルスの信号を出力するホールIC28とを備えている。
【0011】
嵌合歯車部22が回転したとき、駆動ネジ部21がその回転方向に応じて軸方向に上下動する。これは、駆動ネジ部21の上端部側面に取り付けられたピン(図示せず)を上下方向に案内する案内溝(図示せず)が上部防塵ケース25と駆動部ケース24とに設けられているためである。
【0012】
次に、実施の形態1における回路構成について図4を用いて説明する。図4は吊り棒駆動部の回路構成を示すブロック図である。
吊り棒駆動部20の回路は、例えばマイクロコンピュータ(以下、単に「マイコン」という)30と、予め設定された乱数を発生する乱数発生部40と、2台の吊り棒駆動部20にそれぞれ設けられた駆動機構部23のDCモータ60をマイコン30の制御に基づいて駆動する吊り棒駆動回路50と、2台の吊り棒駆動部20にそれぞれ設けられた嵌合歯車部22の上方に配置された2つのホールIC28とで構成されている。
【0013】
マイコン30は、予め設定された水槽5の傾斜角度を中間値とする所定の角度範囲の各角度が前記乱数と対応付けられて設定され、水槽5を傾斜させる際、乱数発生部40を起動して所定タイミングで乱数を抽出し、かつ、抽出した乱数に対応付けられた角度を選択して水槽5の目標傾斜角度とする水槽傾斜角度設定部31と、水槽傾斜角度設定部31により設定された目標傾斜角度まで水槽5が傾斜するように吊り棒駆動回路50を制御する制御部32とを備えている。対応付けられた所定の角度範囲の各角度と乱数は、角度選択のためのデータとしてメモリ(図示せず)に格納されている。
【0014】
予め設定された水槽5の傾斜角度は、直立状態の水槽5を手前側に傾ける角度で、例えば15°と20°である。その傾斜角度を中間値とする所定の角度範囲は、中間値が15°の場合、例えば14.5°〜15.5°を角度範囲とし、中間値が20°の場合は、例えば19.5°〜20.5°を角度範囲としている。また、14.5°〜15.5°の角度範囲の各角度は、14.5°を最小値として0.1°ずつ増やして得られる値で、15.5°を最大値としている。19.5°〜20.5°を角度範囲の各角度は、19.5°を最小値として0.1°ずつ増やして得られる値で、20.5°を最大値としている。
【0015】
前記水槽5は、洗濯量の少ない衣類を洗濯するとき、14.5°〜15.5°の角度範囲内で傾けられ、脱水のときだけ直立状態にされる。洗濯量の多い衣類を洗濯するときは、直立状態で行われ、乾燥時のみ14.5°〜15.5°の角度範囲内で傾けられる。また、水槽5は、洗濯兼脱水槽に洗濯物が投入されるとき、洗濯量をセンシングするとき、さらに洗濯終了時に、19.5°〜20.5°の角度範囲内で傾けられる。
【0016】
次に、水槽を傾けるときの動作について図5のフローチャートに基づいて説明する。図5は実施の形態1における水槽傾斜時の動作を示すフローチャートである。なお、この図は水槽の傾斜角度が20°の場合のフローチャートであるが、傾斜角度が15°の場合、角度範囲が異なるだけで動作は同じであるため説明を割愛する。
【0017】
水槽5の傾斜角度が20°の場合、マイコン30の水槽傾斜角度設定部31が、乱数発生部40を起動して、予め設定された乱数を発生させ、所定タイミングで乱数を抽出する(S1)。そして、抽出した乱数に対応付けられた角度をメモリ(図示せず)から選択する(S2)。例えば、乱数から19.5°〜20.5°のうち20.1°を選択したときは、これを水槽5の目標傾斜角度(20.1°)として制御部32に設定する(S3)。制御部32は、目標傾斜角度が設定されると、吊り棒11が連結された駆動ネジ部21が上方に移動するように吊り棒駆動回路50を制御する(S4)。
【0018】
吊り棒駆動回路50は、制御部32からの制御に基づいて2台の吊り棒駆動部20のDCモータ60を駆動し、複数のギアを介して嵌合歯車部22をそれぞれ回転させる。この時、嵌合歯車部22の雌ネジ22aに雄ネジ21aが螺合して回動自在に取り付けられた駆動ネジ部21がそれぞれ上方に移動する。この駆動ネジ部21の上方への移動により2本の吊り棒11も上がっていくので、水槽5の後部側が引き上げられて手前側に傾いていく。
【0019】
一方、マイコン30の制御部32は、2つのホールIC28からのパルス信号をそれぞれカウントして、そのカウント値から水槽5の傾斜角度を算出し、算出した傾斜角度が目標傾斜角度の20.1°に到達したか否かを判定する(S5)。その傾斜角度が20.1°に到達していないときは、S4に戻って同じ動作を繰り返し、算出した傾斜角度が20.1°に到達したときは、水槽5が20.1°まで傾斜したと判断して、2台のDCモータ60の駆動を停止させ、前述した一連の動作を終了する。
【0020】
また、水槽5を再び傾けるときは、前述したように、乱数を抽出して、その乱数に対応付けられた角度を選択し、その角度を水槽5の新たな目標傾斜角度として吊り棒駆動部20を制御する。つまり、水槽5の傾斜角度が20°の場合においては、水槽を傾斜させる毎に、乱数を基に19.5°〜20.5°の角度範囲から角度を選択して、水槽5の目標傾斜角度とする。なお、水槽5の傾斜角度が15°の場合も、その都度、乱数を基に14.5°〜15.5°の角度範囲から角度を選択して、水槽5の目標傾斜角度とする。
【0021】
以上のように実施の形態1によれば、水槽5を傾斜させる際、乱数発生部40を起動して所定タイミングで乱数を抽出し、抽出した乱数に対応付けられた角度を選択して水槽5の目標傾斜角度とするようにしたので、嵌合歯車部22の雌ネジ22aに螺合する駆動ネジ部21の雄ネジ21aが同じ位置で停止する確率が少なくなり、このため、駆動ネジ部21の雄ネジ21aと嵌合歯車部22の雌ネジ22aへの重量負担や回転開始時の摩耗が軽減され、経年変化による劣化を抑えることが可能になり、吊り棒駆動部20の寿命を向上させることができる。
【0022】
なお、実施の形態1では、角度範囲を14.5°〜15.5°と19.5°〜20.5°として説明したが、これに限定されるものではない。
【0023】
実施の形態2.
図6は実施の形態2における吊り棒駆動部の回路構成を示すブロック図である。なお、実施の形態2では、洗濯機の構造および吊り棒駆動部の構造が実施の形態1と同じであるため、図1と図2を用いて説明する。
吊り棒駆動部20の回路は、例えばマイクロコンピュータ(以下、単に「マイコン」という)30と、2台の吊り棒駆動部20にそれぞれ設けられた駆動機構部23のDCモータ60をマイコン30の制御に基づいて駆動する吊り棒駆動回路50と、2台の吊り棒駆動部20にそれぞれ設けられた嵌合歯車部22の上方に配置された2つのホールIC28とで構成されている。
【0024】
マイコン30は、前回の目標傾斜角度を記録するためのメモリ33と、水槽5を傾斜させる際、前回の目標傾斜角度をメモリ33から読み込んで所定角度の例えば0.1°を加算する角度加算部34と、角度加算部34により加算された角度が、予め設定された水槽5の傾斜角度を中間値とする所定の角度範囲の最大値以下か否かを判定し、角度が最大値以下のときその角度を目標傾斜角度とし、角度が最大値より大きいときは前記の角度範囲の最小値を目標傾斜角度とする水槽傾斜角度設定部31と、水槽傾斜角度設定部31により設定された目標傾斜角度まで水槽5が傾斜するように吊り棒駆動回路50を制御する制御部32とを備えている。
【0025】
予め設定された水槽5の傾斜角度は、実施の形態1と同様に、直立状態の水槽5を手前側に傾ける角度で、例えば15°と20°である。その傾斜角度を中間値とする所定の角度範囲は、中間値が15°の場合、例えば、最小値を14.5°とし、最大値を15.5°とする角度範囲である。また、中間値が20°の場合は、例えば、最小値を19.5°とし、最大値を20.5°とする角度範囲である。
【0026】
前記水槽5は、洗濯量の少ない衣類を洗濯するとき、14.5°〜15.5°の角度範囲内で傾けられ、脱水のときだけ直立状態にされる。洗濯量の多い衣類を洗濯するときは、直立状態で行われ、乾燥時のみ14.5°〜15.5°の角度範囲内で傾けられる。また、水槽5は、洗濯兼脱水槽に洗濯物が投入されるとき、洗濯量をセンシングするとき、さらに洗濯終了時に、19.5°〜20.5°の角度範囲内で傾けられる。
【0027】
次に、水槽を傾けるときの動作について図7のフローチャートに基づいて説明する。図7は実施の形態2における水槽傾斜時の動作を示すフローチャートである。なお、この図は水槽の傾斜角度が20°の場合のフローチャートであるが、傾斜角度が15°の場合、角度範囲が異なるだけで動作は同じであるため説明を割愛する。
【0028】
水槽5の傾斜角度が20°の場合、マイコン30の角度加算部34が、メモリ33に記録された前回の目標傾斜角度を読み出し(S11)、その目標傾斜角度に0.1°を加算し(S12)、その値の角度を水槽傾斜角度設定部31に設定する。水槽傾斜角度設定部31は、角度が設定されると、その角度が最大値の20.5°以下か否かを判定する(S13)。角度が20.5°以下の場合は、その角度(前回の目標傾斜角度に0.1°加算した値)を今回の目標傾斜角度として制御部32に設定する(S14)。制御部32は、目標傾斜角度が設定されると、吊り棒11が連結された駆動ネジ部21が上方に移動するように吊り棒駆動回路50を制御する(S16)。
【0029】
吊り棒駆動回路50は、制御部32からの制御に基づいて2台の吊り棒駆動部20のDCモータ60を駆動し、複数のギアを介して嵌合歯車部22をそれぞれ回転させる。この時、実施の形態1で述べたように、嵌合歯車部22の雌ネジ22aに雄ネジ21aが螺合した駆動ネジ部21がそれぞれ上方に移動する。この駆動ネジ部21の上方への移動により2本の吊り棒11も上がっていくので、水槽5の後部側が引き上げられて手前側に傾いていく。
【0030】
一方、マイコン30の制御部32は、2つのホールIC28からのパルス信号をそれぞれカウントして、そのカウント値から水槽5の傾斜角度を算出し、算出した傾斜角度が目標傾斜角度に到達したか否かを判定する(S17)。その傾斜角度が目標傾斜角度に到達していないときは、S16に戻って同じ動作を繰り返し、算出した傾斜角度が目標傾斜角度に到達したときは、水槽5が目標傾斜角度まで傾斜したと判断して、2台のDCモータの駆動を停止させ、目標傾斜角度をメモリ33に記録して更新し(S18)、前述した一連の動作を終了する。
【0031】
また、水槽傾斜角度設定部31は、S13において、0.1°加算された角度が最大値の20.5°を超えていると判断したときは、角度範囲の最小値19.5°を今回の目標傾斜角度として制御部32に設定する(S15)。制御部32は、目標傾斜角度が設定されると、吊り棒11が連結された駆動ネジ部21がそれぞれ上方に移動するように吊り棒駆動回路50を制御し(S16)、この制御により、2つのホールIC28からのパルス信号が入力されるとパルス信号をカウントして、そのカウント値から水槽5の傾斜角度を算出し、算出した傾斜角度が目標傾斜角度に到達したか否かを判定する(S17)。その傾斜角度が目標傾斜角度に到達していないときは、S16に戻って同じ動作を繰り返し、算出した傾斜角度が目標傾斜角度に到達したときは、水槽5が目標傾斜角度まで傾斜したと判断して、2台のDCモータの駆動を停止させ、目標傾斜角度(19.5°)をメモリ33に記録して更新し(S18)、前述した一連の動作を終了する。
【0032】
なお、水槽5の傾斜角度が15°の場合は、S13において、0.1°加算した角度が最大値の15.5°以下か否かを判定し、加算した角度が15.5°以下のときは、その角度を水槽5の目標傾斜角度とし、また、15.5°を超えていたときは、最小値の14.5°を水槽5の目標傾斜角度とする。
【0033】
以上のように実施の形態2によれば、水槽5を傾斜させる際、メモリ33に記録された前回の目標傾斜角度を読み出して0.1°を加算し、この加算された角度が、予め設定された水槽5の傾斜角度を中間値とする所定の角度範囲の最大値以下か否かを判定し、角度が最大値以下のときその角度を水槽5の目標傾斜角度とし、角度が最大値より大きいときは前記の角度範囲の最小値を水槽5の目標傾斜角度とするようにしたので、嵌合歯車部22の雌ネジ22aに螺合する駆動ネジ部21の雄ネジ21aが同じ位置で停止する確率が少なくなり、このため、駆動ネジ部21の雄ネジ21aと嵌合歯車部22の雌ネジ22aへの重量負担や回転開始時の摩耗が軽減され、経年変化による劣化を抑えることが可能になり、吊り棒駆動部20の寿命を向上させることができる。
【0034】
なお、実施の形態2では、前回の目標傾斜角度に加算する角度を0.1°としたが、これに限定されるものではない。また、水槽5の傾斜角度が20°の場合の最大値を20.5°、最小値を19.5°とし、傾斜角度が15°の場合の最大値を15.5°、最小値を14.5°としたが、それぞれの傾斜角度の最大値と最小値は限定されるものではない。
【0035】
実施の形態3.
図8は実施の形態3における吊り棒駆動部の回路構成を示すブロック図である。なお、実施の形態3では、洗濯機の構造および吊り棒駆動部の構造が実施の形態1と同じであるため、図1と図2を用いて説明する。
吊り棒駆動部20の回路は、例えばマイクロコンピュータ(以下、単に「マイコン」という)30と、乱数を発生する乱数発生部40と、2台の吊り棒駆動部20にそれぞれ設けられた駆動機構部23のDCモータ60をマイコン30の制御に基づいて駆動する吊り棒駆動回路50と、2台の吊り棒駆動部20にそれぞれ設けられた嵌合歯車部22の上方に配置された2つのホールIC28とで構成されている。マイコン30は、水槽5を傾斜させる際、何れか一方の吊り棒駆動部20から駆動し、所定時間経過後にもう一方の吊り棒駆動部5を駆動して、水槽5が所定の目標傾斜角度まで傾斜するように吊り棒駆動部5を制御する制御部32を備えている。
【0036】
水槽5の後部側に設けられた2台の吊り棒駆動部20のうち何れを先に駆動するかの選択は、乱数発生部40の乱数が偶数か否かで行っており、その乱数が偶数のときは、洗濯機の前方から見て右側の吊り棒駆動部20のDCモータ60を先に駆動し、乱数が奇数のときは、洗濯機の前方から見て左側の吊り棒駆動部20のDCモータ60を先に駆動するようにしている。前述した所定時間は例えば0.5秒であり、所定の目標傾斜角度は、前述したように、直立状態の水槽5を手前側に傾ける角度で、例えば15°と20°である。
【0037】
前記の水槽5は、洗濯量の少ない衣類を洗濯するとき、15°の目標傾斜角度に傾けられ、脱水のときだけ直立状態にされる。洗濯量の多い衣類を洗濯するときは、直立状態で行われ、乾燥時のみ15°に傾けられる。また、水槽5は、洗濯兼脱水槽に洗濯物が投入されるとき、洗濯量をセンシングするとき、さらに洗濯終了時に、20°の目標傾斜角度に傾けられる。
【0038】
次に、水槽を傾けるときの動作について図9のフローチャートに基づいて説明する。図9は実施の形態3における水槽傾斜時の動作を示すフローチャートである。なお、この図は水槽の傾斜角度が20°の場合のフローチャートであるが、傾斜角度が15°の場合でも動作は同じであるため説明を割愛する。
【0039】
水槽5を20°に傾ける際、マイコン30の制御部32は、乱数発生部40を起動して乱数を発生させ、所定タイミングで乱数を抽出する(S21)。そして、その乱数が偶数か否かを判定し(S22)、乱数が偶数のときは、右側の吊り棒駆動部20が駆動するように吊り棒駆動回路50を制御すると共に、時間のカウントを開始して0.5秒経過するまで待機する(S23,S24)。カウント値が0.5秒を経過したときは、左側の吊り棒駆動部20が駆動するように吊り棒駆動回路50を制御する(S25)。
【0040】
吊り棒駆動回路50は、制御部32からの制御に基づいて右側の吊り棒駆動部20のDCモータ60を駆動し、複数のギアを介して嵌合歯車部22の回転を開始させる。そして、0.5秒を経過したときに左側の吊り棒駆動部20のDCモータ60を駆動し、嵌合歯車部22の回転を開始させる。この時、それぞれの嵌合歯車部22の回転によって、駆動ネジ部21が上方に移動する。この0.5秒の差は、水槽5の左側への傾きが殆どない時間差である。
【0041】
一方、制御部32は、2つのホールIC28からのパルス数から水槽5の傾斜角度を算出し、算出した傾斜角度が共に目標傾斜角度の20°に到達したか否かを判定する(S26)。それぞれの傾斜角度が目標傾斜角度に到達していないときは、S25に戻って同じ動作を繰り返し、算出した傾斜角度がそれぞれ目標傾斜角度に到達したときは、水槽5が目標傾斜角度まで傾斜したと判断して、2台のDCモータ60の駆動を停止させ、前述した一連の動作を終了する。
【0042】
また、制御部32は、S22において乱数が奇数と判断したときは、左側の吊り棒駆動部20が駆動するように吊り棒駆動回路50を制御すると共に、時間のカウントを開始して0.5秒経過するまで待機する(S27,S28)。カウント値が0.5秒を経過したときは、右側の吊り棒駆動部20が駆動するように吊り棒駆動回路50を制御する(S29)。そして、この制御により入力される2つのホールIC28からのパルス数から水槽5の傾斜角度を算出し、算出した傾斜角度が共に目標傾斜角度の20°に到達したか否かを判定する(S30)。それぞれの傾斜角度が目標傾斜角度に到達していないときは、S29に戻って同じ動作を繰り返し、算出した傾斜角度が共に目標傾斜角度に到達したときは、水槽5が目標傾斜角度まで傾斜したと判断して、2台のDCモータ60の駆動を停止させ、前述した一連の動作を終了する。
なお、水槽5を15°傾斜させるときは、S26、S30において、水槽5が目標傾斜角度の15°まで傾斜したか否かを判定する。
【0043】
以上のように実施の形態3によれば、左右の吊り棒駆動部20を駆動するとき、乱数発生部から乱数を発生させて所定タイミングで乱数を抽出し、その乱数が偶数のとき右側の吊り棒駆動部20を先に駆動し、0.5秒後に左側の吊り棒駆動部20を駆動し、乱数が奇数のときは左右の吊り棒駆動部20の駆動順位を前記と逆にするようにしたので、駆動ネジ部21の雄ネジ21aと嵌合歯車部22の雌ネジ22aへの負担が軽減され、このため、経年変化による劣化を抑えることが可能になり、吊り棒駆動部20の寿命を向上させることができる。
【0044】
なお、実施の形態3では、左右の吊り棒駆動部20のうち何れか一方を先に駆動し、もう一方を0.5秒後に駆動するようにしたが、その遅延時間は限定されるものではない。
【0045】
実施の形態4.
実施の形態4は、吊り棒駆動部を駆動させる際に、DCモータの回転の立ち上がり時および立ち下がり時の回転速度を低速にしたものである。以下、実施の形態3で説明した図8を用いて説明する。なお、図中に示す乱数発生部40は無いものとし、洗濯機の構造および吊り棒駆動部の構造が実施の形態1と同じであるため、図1と図2を用いて説明する。
【0046】
マイコン30に備えられた制御部32は、吊り棒11の軸方向の移動開始時および軸方向の移動を停止させるときに、移動速度が低速となるように吊り棒駆動部20のDCモータ60を制御する。この制御により、駆動ネジ部21の雄ネジ21aと嵌合歯車部22の雌ネジ22aへの衝撃を和らげることができ、このため、経年変化による劣化を抑えることが可能になり、吊り棒駆動部20の寿命を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施の形態1に係る洗濯機を示す側面側の説明図である。
【図2】実施の形態1の洗濯機に設けられた吊り棒駆動部の拡大図である。
【図3】吊り棒駆動部の駆動ネジ部を示す斜視図である。
【図4】吊り棒駆動部の回路構成を示すブロック図である。
【図5】実施の形態1における水槽傾斜時の動作を示すフローチャートである。
【図6】実施の形態2における吊り棒駆動部の回路構成を示すブロック図である。
【図7】実施の形態2における水槽傾斜時の動作を示すフローチャートである。
【図8】実施の形態3における吊り棒駆動部の回路構成を示すブロック図である。
【図9】実施の形態3における水槽傾斜時の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0048】
1 筐体、2 トップカバー、3 外蓋、4 モータ、5 水槽、6 吊り下げ手段、7 吊り棒、8 支持部、9 防振部、10 吊り下げ手段、11 吊り棒、12 防振部、13 吊り板、14 フランジ、20 吊り棒駆動部、21 駆動ネジ部、22 嵌合歯車部、23 駆動機構部、27 マグネット、28 ホールIC、30 マイコン、31 水槽傾斜角度設定部、32 制御部、33 メモリ、34 角度加算部、40 乱数発生部、50 吊り棒駆動回路、60 DCモータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内に配設された水槽と、
該水槽を吊り下げる吊り棒と、
該吊り棒を軸方向に移動させて前記水槽を傾斜させる吊り棒駆動部と、
前記水槽を傾斜させる際、予め設定された水槽の傾斜角度を中間値とする所定の角度範囲から前回と異なる角度を選択して目標傾斜角度とする水槽傾斜角度設定部と、
該水槽傾斜角度設定部により設定された目標傾斜角度まで前記水槽が傾斜するように前記吊り棒駆動部を制御する制御部と
を備えたことを特徴とする洗濯機。
【請求項2】
予め設定された乱数を発生する乱数発生部を備え、
前記水槽傾斜角度設定部は、前記の所定の角度範囲の各角度が前記乱数と対応付けられて設定され、前記水槽を傾斜させる際、前記乱数発生部を起動して所定タイミングで乱数を抽出し、かつ、抽出した乱数に対応付けられた角度を選択して目標傾斜角度とすることを特徴とする請求項1記載の洗濯機。
【請求項3】
前記水槽を傾斜させる際、前回の目標傾斜角度に所定角度を加算する角度加算部を備え、
前記水槽傾斜角度設定部は、前記角度加算部により加算された角度が前記の所定の角度範囲の最大値以下か否かを判定し、前記角度が最大値以下のときその角度を目標傾斜角度とし、前記角度が最大値より大きいときは前記の所定の角度範囲の最小値を目標傾斜角度とすることを特徴とする請求項1記載の洗濯機。
【請求項4】
筐体内に配設された水槽と、
該水槽を吊り下げる吊り棒と、
前記吊り棒のうち水槽の後部側の一対の吊り棒をそれぞれ軸方向に移動させて前記水槽を傾斜させる吊り棒駆動部と、
前記水槽を傾斜させる際、何れか一方の吊り棒駆動部から駆動し、所定時間経過後にもう一方の吊り棒駆動部を駆動して、前記水槽が所定の目標傾斜角度まで傾斜するようにそれぞれの吊り棒駆動部を制御する制御部と
を備えたことを特徴とする洗濯機。
【請求項5】
乱数発生部を備え、
前記制御部は、前記水槽を傾斜させる際、前記乱数発生部から所定タイミングで乱数を抽出し、その乱数が偶数のときは一方の吊り棒駆動部を先に駆動し、前記乱数が奇数のときはもう一方の吊り棒駆動部を先に駆動することを特徴とする請求項4記載の洗濯機。
【請求項6】
筐体内に配設された水槽と、
該水槽を吊り下げる吊り棒と、
該吊り棒を軸方向に移動させて前記水槽を傾斜させる吊り棒駆動部と、
前記吊り棒の軸方向の移動開始時および軸方向の移動を停止させるとき低速となるように前記吊り棒駆動部を制御する制御部と
を備えたことを特徴とする洗濯機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−200149(P2008−200149A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−37198(P2007−37198)
【出願日】平成19年2月16日(2007.2.16)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000004422)日本建鐵株式会社 (152)
【Fターム(参考)】