説明

洗濯機

【課題】接続形態を切り換える時の切換接点の信頼性を確保するとともに、脱水工程における低速から高速回転へスムースな切り換えをおこなう。
【解決手段】ドラム11を回転駆動するモータ12と、モータ12を駆動するインバータ回路で構成したモータ駆動手段31と、洗濯シーケンスに応じてモータ12の回転を制御する制御手段20と、モータ12の停止時にモータ12のステータコイルとモータ駆動手段31との接続形態を変更する接続形態制御手段32とを備え、制御手段20は、脱水起動時に受け筒13が共振する回転数で、モータ12の制御電流または回転数の少なくともいずれか1つを検知した値が閾値以下であれば、モータ12を停止してモータ12のステータコイルの抵抗が小さくなるようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣類等の洗濯をおこなう洗濯機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、洗濯機は、洗濯水の撹拌により生じる水流を利用して洗濯物を洗うパルセータ式と、衣類等の洗濯物をドラムの回転により持ち上げ、落下させて洗濯物をたたき洗いするドラム式がある。
【0003】
パルセータ式の洗濯機は、洗濯物の投入口が上面にあり、筐体の上方から洗濯物を出し入れする。洗濯槽の回転軸は鉛直方向で一般的に縦型と呼ばれている。それに対してドラム式の洗濯機は、洗濯物の投入口が前面にあり、洗濯槽としてのドラムの回転軸は水平方向で一般的に横型と呼ばれている。また、洗濯機能を有しない一般的な衣類乾燥機も横型である。
【0004】
これに対して、最近のドラム式洗濯機においては、ユニバーサルデザインの観点からドラムである洗濯槽を前上がりに傾斜させたななめ配置とし、洗濯物の取り出し易さとともに、たたき洗いによる洗浄性能向上と、縦型と比較して乾燥時間の短縮を実現している。
【0005】
従来、このようなドラム式洗濯機のモータは、洗濯時は、高トルクが必要であり、脱水時は、高速回転が必要になる。双方を満足するDCブラシレスモータの特性にすると、形状が大型化することから、弱め磁束制御により高速でもモータが回転できるようにしているものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、洗濯時の高トルクと脱水時の高速回転の双方を満足させるために、ステータコイルの接続形態を切り換えることで、2つのモータ特性を実現するモータの駆動装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−135883号公報
【特許文献2】特開2008−22665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記従来の特許文献1に記載の構成では、弱め磁束制御により高速でモータが回転できるようにしているため、高速時にモータが必要とする電流が増加し、消費電力が増大することでモータ効率が低下してしまうという課題を有していた。
【0009】
また、特許文献2に記載の構成では、ロータが回転中に接続切り換えを行う時、電圧の印加を停止しても、モータの誘起電圧がインバータ回路のDC電源部の電圧以上になるような場合には、回生エネルギーがモータからインバータ回路に流れ込むため、メカニカルリレーなどの有接点になるが、回生エネルギーがDC電源部に流れ込むため、切り換え時の接点にスパークなどが発生し、接点が劣化するという課題を有していた。
【0010】
また、接続切り換えによりモータの小型化によるコスト低減が図れる反面、電流検出装置や切換回路、配線等により、逆にコスト高になるという課題を有していた。特に、洗濯機へ搭載する場合には、脱水工程において、起動時の高トルクの必要な低速から高速回転へのスムースな切り換えが課題であった。
【0011】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、接続形態を切り換える時の切換接点の信頼性を確保するとともに、脱水工程における低速から高速回転へスムースな切り換えがおこなえる洗濯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記従来の課題を解決するために、本発明の洗濯機は、ドラムを回転駆動するモータと、前記モータを駆動するインバータ回路で構成したモータ駆動手段と、洗濯シーケンスに応じて前記モータの回転を制御する制御手段と、前記モータの停止時に前記モータのステータコイルと前記モータ駆動手段との接続形態を変更する接続形態制御手段とを備え、前記制御手段は、脱水起動時に前記受け筒が共振する回転数で、前記モータの制御電流または回転数の少なくともいずれか1つを検知した値が閾値以下であれば、前記モータを停止して前記モータのステータコイルの抵抗が小さくなるようにしたものである。
【0013】
これによって、接続形態を切り換える時の切換接点の信頼性を確保し、脱水工程における低速から高速回転へスムースな切り換えがおこなえるとともに、消費電力を低減することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の洗濯機は、低速高トルクと高速回転の切換えを実現し、大容量洗濯と高速脱水を可能にするとともに、消費電力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態1における洗濯機の制御装置のブロック図
【図2】(a)(b)同洗濯機のモータ結線切換図
【図3】同洗濯機のモータの特性図
【図4】同洗濯機の動作を示すフローチャート
【図5】同洗濯機の動作を示すフローチャート
【図6】本発明の実施の形態2における洗濯機の制御装置のブロック図
【図7】同洗濯機の動作を示すフローチャート
【図8】本発明の実施の形態3における洗濯機の制御装置のブロック図
【図9】同洗濯機の動作を示すフローチャート
【図10】(a)(b)本発明の洗濯機の他の例のモータ結線切換図
【発明を実施するための形態】
【0016】
第1の発明は、洗濯物を撹拌するドラムと、前記ドラムを回転可能に収容する受け筒と、前記受け筒を弾性支持する筐体と、前記ドラムを回転駆動するモータと、前記モータを駆動するインバータ回路で構成したモータ駆動手段と、洗濯シーケンスに応じて前記モータの回転を制御する制御手段と、前記モータの停止時に前記モータのステータコイルと前記モータ駆動手段との接続形態を変更する接続形態制御手段とを備え、前記制御手段は、脱水起動時に前記受け筒が共振する回転数で、前記モータの制御電流または回転数の少なくともいずれか1つを検知した値が閾値以下であれば、前記モータを停止して前記モータのステータコイルの抵抗が小さくなるようにしたことにより、低速高トルクかつ高速回転可能な洗濯機のモータ駆動装置を実現することが可能となり、大容量洗濯と高速脱水、さらには消費電力の低減による省エネ性を向上することができる。
【0017】
第2の発明は、特に、第1の発明の制御手段は、接続形態制御手段にモータのステータコイルの抵抗が大きくなる第1の接続形態から小さくなる第2の接続形態へ、または、第2の接続形態から第1の接続形態への切換えを指令する接続切換指令手段を設けたことにより、低速高トルクかつ高速回転可能な洗濯機のモータ駆動装置を実現することが可能となり、低コストかつ大容量洗濯と高速脱水、さらには消費電力の低減による省エネ性を向上することができる。
【0018】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明の接続切換指令手段は、給水後は、モータを停止して接続形態制御手段が、モータのステータコイルを低速回転に対応した抵抗が大きくなる第1の接続形態に接続するようにしたことにより、モータのトルク不足による停止を回避することができるとともに、モータへの過電流を防止して信頼性を向上することができる。
【0019】
第4の発明は、特に、第1〜第3のいずれか1つの発明の接続切換指令手段は、洗濯開始時は、接続形態制御手段が、モータのステータコイルを低速回転に対応した抵抗が大きくなる第1の接続形態に接続するようにしたことにより、モータのトルク不足による停止を回避することができるとともに、モータへの過電流を防止して信頼性を向上することができる。
【0020】
第5の発明は、特に、第1〜第4のいずれか1つの発明の接続切換指令手段は、脱水定常時に高速回転に対応したモータのステータコイルの抵抗が小さくなる第2の接続形態の場合で、前記モータの制御電流または回転数の少なくともいずれか1つを検知した値が閾値以上であれば、前記モータを停止して前記ステータコイルの抵抗が大きくなる第1の接続形態に接続するようにしたことにより、負荷の大きさを検知して接続形態を精度よく切換えることができるようになり、脱水工程での消費電力を少なくして省エネ性を向上することができる。
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0022】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における洗濯機の制御装置のブロック図、図2は、同洗濯機のモータ結線切換図、図3は、同洗濯機のモータの特性説明図、図4および図5は、同モータ結線切換のフローチャートである。
【0023】
図1において、10は洗濯機機構部、11は洗濯物を収容し回転させる洗濯槽としてのドラム、12はドラム11を速度制御しながら回転させるモータで、ブラシレスモータにより構成している。13はドラム11を内包し洗濯物と水が入る受け筒、18は洗濯物をドラム11に出し入れする投入口(図示せず)を開閉する扉、17は投入口を前面に設けた筐体、14は受け筒13と筐体17との隙間をなくして接続するためのシールパッキンである。
【0024】
15は受け筒13を筐体17内で姿勢を支持するための支持ばね、16は洗濯時(モータ回転時)に発生する振動を低減し、筐体17や床への振動伝達を小さくするための、ばね要素とダンパ要素で構成されるダンパ機構で、受け筒13の下部を前後で支持して前上がりに傾斜させている。19は洗濯機を床に設置する防振ゴムである。
【0025】
20はモータ12の制御手段、21はモータ12の回転速度を検出するホールICおよびコイルに流れる電流を検出する速度電流検出手段、22は速度電流検出手段21の出力であるモータ12の回転速度をもとに目標回転速度との誤差を演算して制御量を演算するとともに、モータ電流をもとに制御量を演算する制御回路のモータ制御手段、31はモータ12へ駆動電流を印加するインバータ回路で構成したモータ駆動手段である。
【0026】
23は洗濯機の工程に応じて目標回転数をモータ制御手段22に指令するとともに、モータ12とモータ駆動手段31の接続状態を指令する接続切換指令手段、32は接続切換指令手段23の指令を受けてモータ12とモータ駆動手段31の結線状態を切り換える、リレー回路の接続形態制御手段である。24は洗濯機制御手段で、モータ12等を制御し設定された洗濯シーケンスにより、洗濯工程、すすぎ工程、脱水工程、乾燥工程等を逐次制御する。
【0027】
図2は、モータ12のコイルと、洗濯機の工程に応じてモータ12とモータ駆動手段31の接続状態を指令する接続切換指令手段23と、モータ12とモータ駆動手段31の接続状態を切り換えるリレー回路の接続形態制御手段32の構成を示したものである。
【0028】
モータ12を駆動するモータ駆動手段31は、接続切換指令手段23からの指令によってモータ駆動手段31からモータ12のステータコイルへと接続するモータ線123がリレー124の端子に接続されている。
【0029】
リレー124は、一方の端子125と他方の端子126で配線を切換え、1つは1相のステータコイル129の一端と接続されている。1相のステータコイルは2つのコイル129、130が直列に接続された構成で、2つのコイル129と130がつながる中間から、引き出し線127を設けて他方の端子126に接続されている。また、1相のステータコイル130は中性点128に接続され、3相のステータコイルが中性点128で接続されるスター結線で構成されている。
【0030】
図3は、横軸がモータ回転数、縦軸がモータ出力トルクを表すモータ特性図である。端子125でステータコイルが接続される場合は、ステータコイルの巻数が増加するため、図3におけるイの特性となり、一般に図3中Aの低速で高トルクが出力可能となる。逆に端子126でステータコイルが接続される場合は、図3におけるロの特性となり、低速での出力は低トルクになるが、図3中Bの高速回転が可能となる。この2つの結線状態は、接続切換指令手段23の指令に基づき、接続形態制御手段32のリレー124によって切換えられる。
【0031】
以上のような構成において、まず、洗濯工程での動作を説明する。洗濯工程では、ドラム式洗濯機の場合、洗濯機制御手段24からの洗い工程の指令によりモータ制御手段22は、たたき洗いを行うため回転数を約45r/minで制御し、ドラム11を正逆反転駆動する。受け筒13内に溜められた水を含んだ衣類等の洗濯物を攪拌し、持ち上げて落下させるたたき洗いを行うため、低速回転で大トルクが必要であり、図2の状態(a)の結線のように、ステータコイルのターン数が多い接続状態となるように、接続切換指令手段23の指令で接続形態制御手段32がリレー124の端子125で接続を行う。この低速高トルクの接続状態(第1の接続状態)で、洗濯工程とすすぎ工程を所定時間実行する。
【0032】
次に、脱水工程での動作を説明する。脱水工程では、洗濯機制御手段24からの脱水工程の指令により、モータ制御手段22は、ドラム11を800r/min以上の高速で回転制御する。遠心力で衣類をドラム11の内周壁面に張り付ける遠心力脱水を行うため、高速回転が必要であり、図2の状態(b)の結線のように、ステータコイルのターン数が少ない接続状態となるように、接続切換指令手段23の指令で接続形態制御手段32がリレー124の端子126で接続を行う。この高速回転の接続状態(第2の接続状態)で、脱水工程を所定時間実行する。
【0033】
次に、乾燥工程での動作を説明する。乾燥工程では、洗濯機制御手段24からの乾燥工程の指令により、モータ制御手段22は、脱水された洗濯物を攪拌し、ドラム11内で衣類を浮かせるように、ドラム11の回転数を50r/minから80r/minで制御する。低速で高効率回転が必要であり、図2の状態(a)の結線のように、ステータコイルのターン数が多い接続状態となるように、接続切換指令手段23の指令で接続形態制御手段32がリレー124の端子125で接続を行う。
【0034】
以上の動作を図4および図5のフローチャートで説明する。1で洗濯機制御手段24がモータ制御手段22にモータ12の回転制御の実行を指令する。2で洗濯機制御手段24が接続切換指令手段23に洗濯工程を指令する。3で洗濯の工程によって3つに分岐させる。4は洗いの場合で、接続切換指令手段23が接続形態制御手段32に図2の接続(a)を指令する。5で接続切換指令手段23がモータ制御手段22にモータ12の目標回転数を指令する。その後、8でモータ制御手段22が制御信号をモータ駆動手段31に出力し、9でモータ駆動手段31が制御電流をモータ12に出力してモータ12の回転数制御を行う。
【0035】
また、脱水工程の場合、6で接続切換指令手段23が接続形態制御手段32に図2の接続(a)を指令し、モータ12の回転数と電流または回転数変動に応じて7で接続を切換え、その後は洗濯工程と同じである。
【0036】
図5は、図4中のブロック7の詳細なシーケンスを示すフローチャートである。脱水の起動時は、7−1で図2の接続(a)を指令し、共振の回転数280r/minにおいて、7−3で駆動電流または回転数変動を検知し、閾値以下であれば、7−6で一旦モータ12を停止後、図2の接続(b)を指令し、回転数を400r/min以上に上昇させる。
【0037】
また、共振の回転数680r/minにおいて、7−7で再度駆動電流または回転数変動を検知し、閾値以下であれば、そのまま回転数を上昇させて脱水をおこなう。閾値以下の場合、モータ12を一旦停止して7−1に戻る。また、7−3で閾値以上の場合、モータ12を一旦停止して布ほぐしをおこなう。
【0038】
脱水の初めは、洗濯物が多くの水分を含んでいるため、ドラム11を回転させるために大きなトルク(例えば、15Nm以上)が必要となる。さらに、衣類がドラム11内で偏りが生じるとトルクは大きくなる。この場合、高速回転特性の結線ではトルクが不足するという問題が生じる。そのため、脱水の初めは低速回転の高トルク特性の結線に設定し、回転数を徐々に上昇させながら、トルクすなわち起動電流、あるいは目標回転数との差をみて、結線を接続形態制御手段32のリレー124で切換えている。
【0039】
受け筒13の姿勢を支持するための支持ばね15と、振動を低減して筐体17や床への振動伝達を小さくするためのダンパ機構16が共振する回転数、例えば350r/min以上にモータ12の回転数を高くする場合、回転数を上昇させるときにモータ12の駆動電流を検知する。そこで、水を含んだ衣類の重さ、あるいは衣類の偏りによりモータ12に負荷となるが、所定の閾値、例えば5A以上にならなければ、接続切換指令手段23がモータ12を一旦停止させ、接続形態制御手段32により高速回転特性となるように結線が切換えられた後、回転数を上昇させる。
【0040】
その場合も同様にモータ12の駆動電流を検知していて、モータ12への負荷が大きく例えば筐体17の共振する回転数680r/minにおいて、駆動電流が3Aの閾値以上になれば、再度モータ12を停止後、高トルクとなるように結線を切り換える。
【0041】
そのため、すすぎ工程や脱水工程で、モータ12の回転数を700r/min以上にする場合、事前に衣類がドラム11に張り付く回転数120r/min以上、ダンパ機構16の共振回転数以下の回転数での予備動作、あるいは、ダンパ機構16の共振回転数以上で、筐体17の共振回転数、例えば600r/min以下の予備動作をおこなう。予備動作とは、一気に高速回転の脱水をおこなうのではなく、トルク不足にならないように回転数を上昇させていくことである。
【0042】
さらに、乾燥の場合は、図4の10で接続切換指令手段23が接続形態制御手段32に図2の接続(a)を指令し、11で接続切換指令手段23がモータ制御手段22に50〜80r/minのモータ12の目標回転数を指令する。
【0043】
以上のように、洗濯シーケンスの脱水工程において、起動時に受け筒13が共振する回転数で、モータ12の制御電流または回転数の少なくともいずれか1つを検知した値が閾値以上であれば、モータ12を一旦停止して、モータ12のステータコイルの抵抗を大きく、そして、閾値以下であれば、モータ12を一旦停止して、モータ12のステータコイルの抵抗が小さくなるように、接続切換指令手段23により、接続形態制御手段32に切換えを指令し、接続形態制御手段32のリレー回路によって、モータ12のステータコイルとモータ駆動手段31との接続形態を切換えることにより、低速高トルクかつ高速回転可能な洗濯機のモータ駆動装置を実現することが可能となり、低コストかつ大容量洗濯と高速脱水、さらには消費電力低減による省エネ性向上を実現することができる。
【0044】
(実施の形態2)
図6は、本発明の第2の実施の形態における洗濯機の制御装置のブロック図である。本実施の形態の特徴は、速度電流検出手段21で検出したモータ電流に応じて接続切換指令手段23が、接続形態制御手段32でモータ12とインバータ回路であるモータ駆動手段31の結線状態を切換制御しているところである。他の構成は実施の形態1と同じであり、同一の符号を付して詳細な説明は実施の形態1のものを援用する。
【0045】
脱水工程では、ドラム式洗濯機の場合、洗濯機制御手段24からのすすぎ工程の指令により、モータ制御手段22は、給排水を行うとともに受け筒13内に洗濯物の量に応じた新たなすすぎ水を給水し、ドラム11の回転数を約50r/minから1600r/minで制御する。
【0046】
水を含んだ洗濯物を攪拌するためには、低速回転で大トルクが必要であり、図2の状態(a)の結線のように、ステータコイルのターン数が多い接続状態(第1の接続状態)となるように、接続切換指令手段23の指令で接続形態制御手段32がリレー124の端子125で接続を行う。
【0047】
また、遠心力で洗濯物をドラム11の内周側面に張り付けるとき、あるいは、洗濯物に含まれる洗剤を含む水を遠心力ですすぎを行うためには高速回転が必要であり、図2の状態(b)の結線のようにステータコイルのターン数が少ない接続状態(第2の接続状態)となるように、接続切換指令手段23の指令で接続形態制御手段32がリレー124の端子126で接続を行う。
【0048】
脱水工程において、衣類の偏りが大きい場合、一部給水して撹拌を行う。このような場合、受け筒13への給水および排水直後は、図2の状態(a)の結線として、ドラム11の回転数を再度上昇させていく途中で、速度電流検出手段21所定の電流以下で回転起動できた場合、ドラム11の回転を一旦停止した後、図2の状態(b)の結線に切り換え、高速回転を行う。
【0049】
以上の動作を図7のフローチャートで説明する。1で給水工程がONなり、ドラム11内に給水される。2で給水後のモータ12停止状態で、接続切換指令手段23が接続形態制御手段32に図2の状態(a)の接続を指令する。排水後、3で接続切換指令手段23がモータ制御手段22にモータ12の目標回転数を600r/min以下で指令する。
【0050】
その後、4で制御電流の大きさに応じて、例えば5A以下であれば、図2の接続(a)のまま、5でモータ制御手段22が制御信号をモータ駆動手段31に出力し、6でモータ駆動手段31が制御電流をモータ12に出力してモータ12の回転数制御を行う。4で制御電流が、例えば5A以上であれば、7でモータ12を停止後、図2の接続(b)に切換え、8で接続切換指令手段23がモータ制御手段22に600r/min以上のモータ12の目標回転数を指令する。
【0051】
以上より、洗濯シーケンスに応じて接続形態制御手段32に切換えを指令する接続切換指令手段23で、接続形態制御手段32であるリレー回路でモータ12のステータコイルとモータ駆動手段31の接続形態を切換えることによって、低速高トルクかつ高速回転可能な洗濯機のモータ駆動装置を実現することが可能となり、低コストかつ大容量洗濯と高速脱水、さらには、消費電力低減による省エネ性向上を実現することができる。
【0052】
(実施の形態3)
図8は、本発明の第3の実施の形態における洗濯機の制御装置のブロック図である。本実施の形態の特徴は、洗濯機電源手段40の入力に応じて接続切換指令手段23が接続形態制御手段32でモータ12とモータ駆動手段31であるインバータ回路の結線状態を切換制御しているところである。他の構成は実施の形態1と同じであり、同一の符号を付して詳細な説明は実施の形態1のものを援用する。
【0053】
洗濯機への電源入力を洗濯機電源手段40が検知すると、通常、洗濯機制御手段24からの衣類重量検知で、ドラム11の回転数を約45r/minで制御する。その後、受け筒13内に洗濯物の量に応じた洗濯水を給水し、水を含んだ洗濯物を攪拌してたたき洗いを行うため、低速回転で大トルクが必要であり、図2の状態(a)の結線のようにステータコイルのターン数が多い接続状態(第1の接続状態)となるように、接続切換指令手段23の指令で接続形態制御手段32がリレー124の端子125で接続を行う。
【0054】
以上の動作を図9のフローチャートで説明する。1で洗濯機電源手段40がONになる。2で電源ON後のモータ12の停止時に、接続切換指令手段23が接続形態制御手段32に図2の(a)の接続を指令する。3で接続切換指令手段23がモータ制御手段22にモータ12の目標回転数を600r/min以下で指令する。その後、4で制御電流の大きさに応じて、例えば5A以下であれば、図2の(a)の接続状態を維持する。
【0055】
5でモータ制御手段22が制御信号をモータ駆動手段31に出力し、6でモータ駆動手段31が制御電流をモータ12に出力してモータ12の回転数制御を行う。4で制御電流が、例えば5A以上であれば、7でモータ12を停止後、図2の状態(b)の接続状態(第2の接続状態)に切り換え、8で接続切換指令手段23がモータ制御手段22に600r/min以上のモータ12の目標回転数を指令する。
【0056】
以上により、電源入力に応じて接続形態制御手段32に切換を指令する接続切換指令手段23で、接続形態制御手段32であるリレー回路でモータ12のステータコイルとモータ駆動手段31の接続状態を変更することによって、低速高トルクかつ高速回転可能な洗濯機のモータ駆動装置を実現することが可能となり、低コストかつ大容量洗濯と高速脱水、さらには、消費電力低減による省エネ性向上を実現することができる。
【0057】
なお、図10は、モータ結線の切換えの他の例を示したものである。本実施の形態において、モータ結線の切換えを図2のように直列並列切換えとしたが、図10のスターデルタ切換えでも同様の効果が得られる。図10において、モータ12を駆動するモータ駆動手段31のインバータ回路は、接続切換指令手段23からの指令によって、インバータ回路からモータ12のステータコイルへと接続するモータ線123がリレー124の端子に接続される。
【0058】
リレー124は、一方の端子125と他方の端子126で配線を切換え、一方の端子125はスター結線、他方の端子126は配線127と接続されてデルタ結線となる。図2の構成による切換えと同様に、スター結線とデルタ結線では電気抵抗が異なり、同様の効果が得られる。なお、モータ結線の切換えは、タップ切換でも同様の効果が可能である。
【0059】
また、本実施の形態において、切換回転数を400r/min、600r/minとしたが、洗濯機の振動特性が変化した場合は、それに見合ったものであればよい。さらに、本実施の形態では、電流の閾値を5A、回転数変動を目標の10%としたが、他の閾値でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
以上のように、本発明にかかる洗濯機は、低速高トルクと高速回転の切換えを実現し、大容量洗濯と高速脱水を可能にするとともに、消費電力を低減することができるので、洗濯機として有用である。
【符号の説明】
【0061】
11 ドラム
12 モータ
13 受け筒
17 筐体
20 制御手段
21 速度電流検出手段
22 モータ制御手段
23 接続切換指令手段
24 洗濯機制御手段
31 モータ駆動手段
32 接続形態制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗濯物を撹拌するドラムと、前記ドラムを回転可能に収容する受け筒と、前記受け筒を弾性支持する筐体と、前記ドラムを回転駆動するモータと、前記モータを駆動するインバータ回路で構成したモータ駆動手段と、洗濯シーケンスに応じて前記モータの回転を制御する制御手段と、前記モータの停止時に前記モータのステータコイルと前記モータ駆動手段との接続形態を変更する接続形態制御手段とを備え、前記制御手段は、脱水起動時に前記受け筒が共振する回転数で、前記モータの制御電流または回転数の少なくともいずれか1つを検知した値が閾値以下であれば、前記モータを停止して前記モータのステータコイルの抵抗が小さくなるようにした洗濯機。
【請求項2】
制御手段は、接続形態制御手段にモータのステータコイルの抵抗が大きくなる第1の接続形態から小さくなる第2の接続形態へ、または、第2の接続形態から第1の接続形態への切換えを指令する接続切換指令手段を設けた請求項1記載の洗濯機。
【請求項3】
接続切換指令手段は、給水後は、モータを停止して接続形態制御手段が、モータのステータコイルを低速回転に対応した抵抗が大きくなる第1の接続形態に接続するようにした請求項1または2記載の洗濯機。
【請求項4】
接続切換指令手段は、洗濯開始時は、接続形態制御手段が、モータのステータコイルを低速回転に対応した抵抗が大きくなる第1の接続形態に接続するようにした請求項1〜3のいずれか1項に記載の洗濯機。
【請求項5】
接続切換指令手段は、脱水定常時に高速回転に対応したモータのステータコイルの抵抗が小さくなる第2の接続形態の場合で、前記モータの制御電流または回転数の少なくともいずれか1つを検知した値が閾値以上であれば、前記モータを停止して前記ステータコイルの抵抗が大きくなる第1の接続形態に接続するようにした請求項1〜4のいずれか1項に記載の洗濯機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−206134(P2011−206134A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−74700(P2010−74700)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】