洗濯機
【課題】ダンパの消費電力を抑えて、省エネ効果の高い洗濯機を提供する。
【解決手段】洗濯機は、水槽と、前記水槽内に配設された洗濯兼脱水用の回転槽と、前記水槽を防振支持するダンパと、前記水槽の振動を検出する振動検出手段と、少なくとも洗濯行程及び脱水行程を実行する制御手段と、を備える。前記ダンパは、シリンダと、このシリンダの内部に収容され、前記制御手段の制御に基づいて通電されて磁界を発生するコイル及びこのコイルの磁界を誘導するヨークと、前記コイル及びヨークを相対的に軸方向往復動可能に貫通して前記シリンダに挿通されたシャフトと、このシャフトと前記ヨークとの間に充填され、磁界が作用されるとその磁界の強さに応じたダンパ力が発生する磁気粘性流体とを備えて構成される。前記制御手段は、前記振動検出手段の検出情報に基づいて前記コイルを通電制御する。
【解決手段】洗濯機は、水槽と、前記水槽内に配設された洗濯兼脱水用の回転槽と、前記水槽を防振支持するダンパと、前記水槽の振動を検出する振動検出手段と、少なくとも洗濯行程及び脱水行程を実行する制御手段と、を備える。前記ダンパは、シリンダと、このシリンダの内部に収容され、前記制御手段の制御に基づいて通電されて磁界を発生するコイル及びこのコイルの磁界を誘導するヨークと、前記コイル及びヨークを相対的に軸方向往復動可能に貫通して前記シリンダに挿通されたシャフトと、このシャフトと前記ヨークとの間に充填され、磁界が作用されるとその磁界の強さに応じたダンパ力が発生する磁気粘性流体とを備えて構成される。前記制御手段は、前記振動検出手段の検出情報に基づいて前記コイルを通電制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばドラム式洗濯機においては、外箱内に、内部にドラムが配設された水槽と、その水槽を防振支持するためのダンパ(サスペンション)を備え、ドラムの回転に伴う水槽の振動を前記ダンパにより低減する構成となっている。そして、そのダンパとしては、防振性能の向上を図るために、磁界の変化に伴い粘性が変化する磁気粘性流体、いわゆるMR流体を用いたものが考えられている。このものでは、例えばシリンダ内に、磁界を発生するためのコイルを配設するとともに、このコイルを軸方向に貫通するシャフトを往復動可能に設け、そのシャフトとコイルとの間に磁気粘性流体を設けた構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−276475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記構成のものでは、例えば水槽が高速回転される脱水時に、ダンパのコイルに通電して大きなダンパ力、即ち、減衰力を得ている。これにより、水槽が最も激しく振動する、即ち、振幅が大きくなる共振回転数(共振ピーク)付近において効果的に振動を抑制することができる。
【0005】
しかし、水槽の振動や共振回転数は、ドラム負荷量や偏荷重、即ち、洗濯負荷量や洗濯物の偏り具合によって変化する。このため、従来では、脱水開始直後から一定のダンパ力、例えば共振回転数時(共振ピーク時)に必要なダンパ力に合せて最大のダンパ力が発生するようにコイルに通電し、共振ピークを通過させていた。このため、洗濯負荷量や偏り具合が少なくて小さなダンパ力で良い場合でも、過剰なダンパ力を得るために電力を無駄に消費するという事情があった。
【0006】
そこで、水槽の振動に対して適切なダンパ力を発生させ、ダンパの消費電力を抑えて省エネ効果の高い洗濯機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態の洗濯機は、水槽と、前記水槽内に配設された洗濯兼脱水用の回転槽と、前記水槽を防振支持するダンパと、前記水槽の振動を検出する振動検出手段と、少なくとも洗濯行程及び脱水行程を実行する制御手段と、を備える。前記ダンパは、シリンダと、このシリンダの内部に収容され、前記制御手段の制御に基づいて通電されて磁界を発生するコイル及びこのコイルの磁界を誘導するヨークと、前記コイル及びヨークを相対的に軸方向往復動可能に貫通して前記シリンダに挿通されたシャフトと、このシャフトと前記ヨークとの間に充填され、磁界が作用されるとその磁界の強さに応じたダンパ力が発生する磁気粘性流体とを備えて構成される。前記制御手段は、前記振動検出手段の検出情報に基づいて前記コイルを通電制御する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1実施形態におけるドラム式洗濯機の概略構成を示す縦断側面図
【図2】制御系の機能ブロック図
【図3】サスペンションの縦断面図
【図4】モールドコイルユニット周辺の拡大縦断面図
【図5】サスペンションの外観斜視図
【図6】モールドコイルユニットの外観斜視図
【図7】制御装置の脱水行程における制御内容を示すフローチャート
【図8】コイルに通電される場合の水槽の振動の変化を示すグラフ
【図9】コイルに通電されない場合の水槽の振動の変化を示すグラフ
【図10】第2実施形態における図7相当図
【図11】図8相当図
【図12】図9相当図
【図13】第3実施形態における図7相当図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、ドラム式洗濯機に適用した複数の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、各実施形態において実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0010】
(第1実施形態)
まず、第1実施形態について、図1〜図9を参照して説明する。ドラム式洗濯機の概略構成を示す図1において、洗濯機の外殻を形成する外箱1の前面部(図1で右側)のほぼ中央部には、洗濯物出入口2が形成されているとともに、この洗濯物出入口2を開閉する扉3が設けられている。外箱1の前面部の上部には操作パネル4が設けられている。この操作パネル4は、洗濯乾燥機の運転に係る操作をユーザがするための操作部4aと、例えば液晶ディスプレイからなる表示部4bとから構成されている(図2参照)。この操作パネル4の裏側、即ち、外箱1内には、運転制御用の制御手段たる制御装置5が設けられている。
【0011】
外箱1の内部には、水槽6が配設されている。この水槽6は、軸方向を前後(図1では右左)とする横軸円筒状をなすものであり、外箱1の底板1a上に左右一対(一方のみ図示)のサスペンション7によって前上がりの傾斜状態に弾性支持されている。サスペンション7の詳細構造については後述する。水槽6の背面部にはモータ8が取り付けられている。このモータ8は、例えば直流のブラシレスモータからなるもので、アウターロータ形であり、そのロータ8aの中心部に取り付けられた図示しない回転軸を、軸受ブラケット9を介して水槽6の内部に挿通している。
【0012】
水槽6の内部には、ドラム10が配設されている。このドラム10も、軸方向が前後の横軸円筒状をなすものであり、その後部の中心部を前記モータ8の回転軸の先端部に連結することにより、水槽6と同軸の前上がりの傾斜状態に支持されている。この結果、ドラム10はモータ8によりダイレクトに回転されるようになっている。したがって、ドラム10は洗濯兼脱水用の回転槽であり、モータ8はドラム10を回転させるドラム駆動装置として機能する。
【0013】
ドラム10の周側部(胴部)には、通水及び通風が可能な小孔11が多数形成されている。これに対し、水槽6は、基本的に無孔状で、貯水可能な構成となっている。これらドラム10及び水槽6は、ともに前面に開口部12、13を有しており、そのうちの水槽6の開口部13と前記洗濯物出入口2との間に、環状のべローズ14が装着されている。これにより、洗濯物出入口2は、ベローズ14、水槽6の開口部13、及びドラム10の開口部12を介して、ドラム10の内部に連なる形態となっている。
【0014】
貯水可能な水槽6の最低部位には、途中に排水弁15を介して排水管16が接続されていて、水槽6内の水は、その排水管16を通して機外へ排出可能となっている。この水槽6の背面側から上方及び前方にわたって、乾燥装置17が配設されている。この乾燥装置17は、除湿器18、送風機19、ヒータ20、及び循環ダクト21から構成されていて、水槽6内(ドラム10内)から排出された空気中の水分を除湿器18において除去し、次いでその空気をヒータ20で加熱して乾燥風を生成し、その乾燥風を水槽6内(ドラム10内)に戻すことを繰り返す循環を行うことにより、ドラム10内に収容された洗濯物を乾燥させるようになっている。
【0015】
図2に制御系の機能ブロック図を示すが、制御装置5は、例えばマイクロコンピュータやメインメモリ等で構成されて、洗濯乾燥機の運転全般を制御する。制御装置5には、操作部4aから各種操作信号が入力される。そして、その操作結果や現在の運転状況、及び異常表示などを含めた各種表示が、表示部4bに表示される。また、制御装置5には、水槽6内の水位を検知するように設けられた水位センサ22から、水位検知信号が入力される。そして、制御装置5には、モータ8の回転を検知するように設けられた回転数検出手段たるモータ回転センサ27から回転数を示す回転検知信号が入力される。
【0016】
制御装置5は、ドラム10内に収容された洗濯物の重量、即ち、洗濯負荷量を測定する負荷量検出手段として機能するようになっており、その洗濯負荷量の検出は種々の方法を用いて行うことができる。例えば、ドラム10の回転の上昇速度や下降速度に基づいて洗濯負荷量を測定するようにしても良いし、ドラム10の回転速度、即ち回転数が所定速度に立ち上がるまでの時間、あるいは、立ち下がるまでの時間に基づいて洗濯負荷量を測定してもよい。この場合、ドラム10の回転速度は、モータ回転センサ27により検知されるモータ8の回転数、即ち、ドラム10の回転数を制御装置5が所要時間で除する演算をすることにより算出される。
【0017】
また、モータ8のモータ電流値、例えばベクトル制御におけるq軸電流値は、ドラム10内に投入された洗濯物の重量と密接な関係にある。したがって、モータ8を所定回転数、例えば75rpmで回転したときの、このようなモータ電流値を、電流センサ49で検知することにより、洗濯負荷量を検知することができる。なお、制御装置5は、ドラム10及びドラム10内の洗濯物を含めた水槽6の重量を検出する槽重量検出手段としても機能するようになっている。即ち、制御装置5は、ドラム10及び水槽6の重量を予め記憶し、これらの重量と前記負荷量検出手段によって検出された洗濯負荷量を加算することによって、ドラム10及び洗濯物を含めた水槽6の重量、即ち、槽重量を検出する。
【0018】
そして、制御装置5は、各種の入力信号並びにあらかじめ記憶された制御プログラムに基づいて、水槽6内(ドラム10内)に給水するように設けた給水弁37と、ドラム10駆動用のモータ8、水槽6内(ドラム10内)から排水するように設けた排水弁15、ヒータ20、及び後述するダンパ23のコイル52、55を、駆動回路48を介して駆動制御する。
【0019】
次に上記サスペンション7の構造について図3〜図6も参照して説明する。サスペンション7は、図3及び図5に示すように、ダンパ23と、圧縮コイルスプリングからなるコイルばね24を備えている。このうち、ダンパ23は、上下方向に延びる円筒状をなすシリンダ25と、このシリンダ25に沿って上下方向に延びるシャフト26を備えていて、シャフト26の下部がシリンダ25内に上下方向に往復動可能に挿入されている。
【0020】
シリンダ25の軸方向の一端部である下端部には連結部材28が設けられている。この連結部材28は、蓋部28aと、この蓋部28aから下方へ突出する連結軸部28bとを一体に有していて、そのうちの蓋部28aをシリンダ25の下端開口部に嵌合するとともに、その蓋部28aの外周部をシリンダ25の内周部に溶接、例えばTIG溶接することによりシリンダ25に固着されている。その連結部材28の連結軸部28bを、外箱1の底板1aに固定された取付部材29(図1参照)にゴムなどの弾性座板30等を介してナット31で締結することにより、シリンダ25は、底板1a側の取付部材29に連結されている。
【0021】
前記シャフト26の上端部には、上部連結部材32が連結されている。この上部連結部材32の連結軸部32aを、水槽6の取付部材33(図1参照)に、前記連結軸部28bと同様に、ゴムなどの弾性座板34等を介してナット35で締結することにより、シャフト26は、水槽6側の取付部材33に連結されている。上部連結部材32の下端部にはばね受け座36が嵌合固定されていて、このばね受け座36とシリンダ25の上端部との間に、前記コイルばね24がシャフト26を囲繞する状態で装着されている。
【0022】
シリンダ25内の上下方向の中間部には、環状をなす下部軸受ケース38が収容されている。この下部軸受ケース38の外周部には周方向に延びる溝部39が形成されていて、シリンダ25の周壁部のうちの前記溝部39に対応する部分を内方へかしめることにより、下部軸受ケース38をシリンダ25内に固定している。かしめた部分をかしめ部40としている。なお、下部軸受ケース38の外周部の一箇所には、軸方向に開通した溝部39a(図3参照)が形成されている。下部軸受ケース38の内周部には、シャフト26を軸方向、即ち、上下方向へ往復動可能に支持する環状の軸受41が収納固定されている。軸受41は、例えば焼結含油メタルから構成されている。シャフト26の下端部には抜止め部材26aが装着されていて、その抜止め部材26aが下部軸受ケース38の下面に当接することにより、シャフト26の上方への移動が規制されている。
【0023】
シリンダ25において、軸方向の他端部となる上端部の内部にも、環状をなす上部軸受ケース42が収容されている。この上部軸受ケース42は、これの上部に下部42aより外径寸法が小さな筒部42bを有していて、その下部42aと筒部42bとの間に段部42cが形成されている。筒部42bは、シリンダ25から上方へ突出している。この上部軸受ケース42における下部42aの外周部には、図4にも示すように溝部43が全周にわたって形成されていて、シリンダ25の周壁部のうちの前記溝部43に対応する部分を内方へかしめることにより、上部軸受ケース42をシリンダ25の上端部に固定している。かしめた部分をかしめ部44としている。この場合、かしめ部44は、ローリングかしめにより全周に設けている。溝部43にはOリング45が装着されていて、そのOリング45は、上部軸受ケース42の溝部43とシリンダ25のかしめ部44との間に挟まれて押し付けられている。
【0024】
コイルばね24の下端部は、上部軸受ケース42の段部42cにて受けられている。上部軸受ケース42の内周部の上部には、シャフト26を軸方向、即ち、上下方向へ往復動可能に支持する環状の軸受46が収納固定されている。この軸受46も、下部の軸受41と同様に、例えば焼結含油メタルから構成されている。上部軸受ケース42の内周部において、軸受46の下側には、環状をなす摩擦部材47が圧入状態で収納されていて、この摩擦部材47の内周部が、シャフト26の外周面に摺動可能に圧接している。
【0025】
シリンダ25内において、下部軸受ケース38と上部軸受ケース42との間の部分には、モールドコイルユニット50が収容されている。このモールドコイルユニット50は、それら下部軸受ケース38と上部軸受ケース42により挟み付けられた状態で固定されている。モールドコイルユニット50は、図3、図6に示すように、下部ヨーク51と、第1のコイル52を巻装した第1のボビン53と、中間部ヨーク54と、第2のコイル55を巻装した第2のボビン56と、上部ヨーク57と、これらを一体化するための成形用の樹脂58とを備えている。樹脂58としては、例えば、ナイロン、PBT、PET、PPなどの熱可塑性樹脂を用いる。モールドコイルユニット50の軸方向の両端部となる下部ヨーク51と上部ヨーク57に、環状をなすシール部材59が圧入状態で装着されている。これらシール部材59は、摩擦部材47と同じものを用いていて、内周部がシャフト26の外周面に摺動可能に圧接している。
【0026】
モールドコイルユニット50は、中央部に軸方向に貫通した貫通孔61を有し、全体として円筒状をなしていて、その貫通孔61に、シャフト26が軸方向に往復動可能に挿入されている。図6に示すように、モールドコイルユニット50の外周部には、軸方向に延びる溝部62が形成されているとともに、その溝部62にあって中間部ヨーク54と対応する部位に位置させて円形の凹部63と、この凹部63から周方向に連なって矩形状の凹部64が形成されている。このうちの矩形状の凹部64から、第1のコイル52と第2のコイル55の、2本のリード線65が外部に導出されている。各リード線65の基端部は、対応するボビン53、56の端板を貫通して各コイル52、55の端部に接続されていて、樹脂58で覆われている(図4参照)。各リード線65は、導線の周りが樹脂製のチューブ65aで覆われている(図5参照)。
【0027】
2本のリード線65は、基端部が樹脂58により覆われた状態で、図6に示すように、凹部64からモールドコイルユニット50の外部に導出されている。モールドコイルユニット50において、2本のリード線65の導出部分である凹部64に、例えばシリコーンからなる防湿材77(図3、図4、図6参照)をポッティングして凹部64内全体を埋めることにより、リード線65の位置を外力に対しても安定させながら防水処理している。
【0028】
ここで、モールドコイルユニット50の貫通孔61の内径寸法について説明する。図3に示すように、下部、中間部及び上部の3個のヨーク51、54、57の内径寸法は同じ寸法に設定されており、シャフト26の外周面との間に例えば0.4mm程度の隙間が形成されるように構成されている。第1及び第2の2個のボビン53、56の内径寸法は同じ寸法に設定され、かつ3個のヨーク51、54、57の内径寸法より若干大きい寸法に設定されており、シャフト26の外周面との間に例えば1.0mm程度の隙間が形成されるように構成されている。そして、シャフト26の外周面と前記3個のヨーク51、54、57の内周面との間の隙間、及びシャフト26の外周面と前記2個のボビン53、56の内周面との間の隙間には、磁気粘性流体80が注入されている。なお、磁気粘性流体80は、上下のシール部材59の内側まで注入されている(図4参照)。この磁気粘性流体80は、モールドコイルユニット50の前記注入口69から注入され、その注入口69はねじ70によって閉鎖されている。
【0029】
磁気粘性流体80は、例えばポリアルファオレフィンなどのベース液の中に、例えば鉄粉などの強磁性粒子及び該鉄の表面を覆う界面活性剤を混合した磁性コロイド溶液である。この磁気粘性流体80は、磁界が作用されると、強磁性粒子が磁力線に沿って鎖状に凝集してクラスタを形成することで粘度が一時的に上昇する特性を有するものである。この場合、磁気粘性流体80の粘度は、作用させる磁界の強さに応じて上昇する。このため、ダンパ23における磁気粘性流体80の粘性による摩擦抗力、即ち、ダンパ力は、磁気粘性流体80に作用させる磁界の強さ、即ち、コイル52、55に通電する電流の大きさに応じて発生する。
【0030】
ここで、モールドコイルユニット50の下部及び上部のシール部材59、ならびに上部軸受ケース42の摩擦部材47は、磁気粘性流体80が外部へ漏れ出ることを防止する作用と、シャフト26との間に生ずる摩擦を利用した摩擦ダンパの作用を発揮する。また、図1に示すように、下部ヨーク51と第1のボビン53との間、第1のボビン53と中間部ヨーク54との間、中間部ヨーク54と第2のボビン56との間、ならびに第2のボビン56と上部ヨーク57との間には、それぞれシール用のOリング81が設けられている。これらOリング81も、磁気粘性流体80が外部へ漏れ出ることを防止する機能がある。
【0031】
シリンダ25の周壁部における軸方向の中間部には、前記円形の凹部63に対応する位置に、円形の孔からなるリード線引出口82(図3、図4参照)が形成されている。このリード線引出口82には、リード線挿通孔83aを有するブシュ83が嵌合されていて、前記2本のリード線65が、そのブシュ83のリード線挿通孔83aを通して外部に引き出されている。この場合ブシュ83は、樹脂、例えばナイロン製のものを用いている。
【0032】
シリンダ25の外周部には、ブシュ83の上方、即ち、リード線引出口82の上方に位置させて、山形状の庇部84が設けられている。この庇部84は、この場合シリンダ25の外面に接着材により接着されている。この庇部84は、上からの水が、リード線引出口82、即ち、リード線挿通孔83aからシリンダ25内に浸入することを防止する。
また、シリンダ25の外周部には、配線固定部材85(図5参照)を装着していて、この配線固定部材85に設けられた配線保持具86により、シリンダ25の外部に引き出されたリード線65を保持するようにしている。なお、シリンダ25内において連結部材28の蓋部28aと下部軸受ケース38との間には、空間部88(図3参照)が形成されている。
【0033】
このようなサスペンション7は、水槽6の左右両側に配設される。また、各サスペンション7から導出されたリード線65は駆動回路48に接続される。第1及び第2のコイル52、55は、制御装置5により駆動回路48を介して通断電制御される。
なお、図1に示すように、水槽6を前方側から視て、左側壁の後側上部外面には、振動検出手段としての振動センサ90が配設され、右側壁の前側下部外面には、振動検出手段としての振動センサ91が配設されている。これらの振動センサ90、91は、例えば2軸又は3軸の検出が可能な半導体式の加速度センサなどで構成され、水槽6の振動を検出情報として制御装置5に与えるようになっている。
【0034】
上記構成において、洗濯運転時におけるサスペンション7の動作について説明する。まず、第1のコイル52及び第2のコイル55が通電されない場合を説明する。
洗濯行程や乾燥行程では、ドラム10はモータ8により低速度(例えば50〜60rpm)で回転駆動される。これに伴い、水槽6は上下方向を主体に振動する。この水槽6の上下振動に応動して、サスペンション7では、外箱1の底板1a側に固定されたシリンダ25に対して、水槽6側に連結されたシャフト26がコイルばね24を伸縮させながら上下動する。この洗濯行程や乾燥行程では、ドラム10の回転速度は、共振ピーク及びその付近、例えば100〜300rpmの共振帯域は通過しない。このため、サスペンション7の第1のコイル52及び第2のコイル55に通電してダンパ23のダンパ力を増大させる必要はない。この場合、サスペンション7は、コイルばね24による振動低減作用に加え、摩擦部材47、及びシール部材59がシャフト26に対して摩擦抵抗で減衰力を常時作用させるとともに、シャフト26と3個のヨーク51、54、57、及び2個のボビン53、56との間に充填された磁気粘性流体80が、その粘性による摩擦抵抗(ダンパ力)で減衰力を作用させ、水槽6の振幅を減衰させる。なお、共振ピークとは、いわゆる共振振幅値又は共振回転数と同義であり、例えば、ドラム10の回転速度がドラム10を含めた水槽6の固有振動数と重なって水槽6の振動が激しくなる、即ち、振動振幅がピークとなる回転速度(回転数)、又はその振幅値そのものを示す。
【0035】
次に、脱水行程におけるサスペンション7の動作について、図7〜図9も用いて説明する。なお、第1のコイル52及び第2のコイル55の通電の可否を判断する閾値K、脱水の実行時間を示す脱水時間T、及びドラム10の回転速度が共振帯域(100〜300rpm)を通過する時間を示す共振帯域通過時間T1は、脱水開始前に予め設定されているものとする。
【0036】
この脱水行程では、ドラム10がモータ8により高速度(例えば1300rpm)で回転駆動される。そして、ドラム10の回転速度は、最終到達速度(例えば1300rpm)に到達するまで徐々に上がっていく。この場合、ドラム10の回転速度は、振動が最も激しい共振帯域を通過するため、第1のコイル52及び第2のコイル55は通電制御されて、ダンパ23のダンパ力が所定のダンパ力に増加される。
【0037】
具体的には、図7に示すように、制御装置5により脱水行程が実行される。脱水行程が開始されると(スタート)、モータ8が駆動されてドラム10が回転駆動される(ステップS1)とともに、制御装置5のタイマが開始されて脱水開始からの経過時間T0がカウントされる(ステップS2)。次に、脱水完了か否かが判断される(ステップS3)。ここでは、例えばステップS2でカウント開始された経過時間T0が、脱水行程実行前に設定された脱水時間Tを経過していれば脱水完了とし(ステップS3でYES)、経過していなければ脱水が続行される(ステップS3でNO)。
【0038】
ステップS3で脱水が続行されると、振動センサ90、91により、水槽6の振動K0が検出される(ステップS4)。その後、ドラム10の回転速度が共振帯域(例えば100〜300rpm)を通過したかが判断される(ステップS5)。この場合、ドラム10の回転速度は、最終到達速度が1300rpmの場合ではモータ8が駆動されてから約3分で共振帯域を通過するように設定されている。このため、共振帯域の通過を経過時間T0によって判断する。つまり、経過時間T0が共振帯域通過時間T1(例えば3分)を経過していればドラム10の回転速度は共振帯域を通過したと判断され(ステップS5でYES)、経過していなければ共振帯域を通過していないと判断される(ステップS5でNO)。なお、ドラム10の回転速度が共振帯域を通過したか否かは、実際にドラム10の回転速度を検出して判断しても良い(第2実施形態で具体例を示す)。
【0039】
ドラム10の回転速度が共振帯域を通過していない場合(ステップS5でNO)、次に、ダンパ23のコイル52、55に通電されているか否かが判断される(ステップS6)。そして、これらコイル52、55に通電されていなければ(ステップS6でNO)、水槽6の振動K0が閾値K以上であるかが判断される(ステップS7)。ここで、振動K0が閾値K以上であれば(ステップS7でYES)、コイル52、55は制御装置5により通電(ON)される(ステップ8)。この場合、コイル52、55が通電されると、特にヨーク51、54、57を介して磁気粘性流体80に磁界が与えられ、磁気粘性流体80の粘度が高まる。これにより、磁気粘性流体80の摩擦抵抗が大きくなるように増加して、所定のダンパ力を得ることができるようになる。かくして、シャフト26に対する摩擦抵抗(ダンパ力)が、第1のコイル52及び第2のコイル55の非通電の場合よりさらに増加することにより、減衰力が大きくなる。これにより、水槽6の振動を効果的に減衰することができる。
【0040】
コイル52、55が通電されると(ステップ8)、その後はステップS3〜ステップS6が繰り返される。そして、経過時間T0が共振帯域通過時間T1を経過してドラム10の回転速度が共振帯域を通過すると(ステップS5でYES)、コイル52、55の通電は遮断(OFF)されて(ステップS9)、ダンパ23のダンパ力は初期状態に戻る。その後、ステップS3、S4、S5、S9が繰り返えされ、ドラム10の回転速度が最終到達速度まで上げられて脱水が行われる。その後、経過時間T0が脱水時間Tを経過して脱水完了と判断されると(ステップS3でYES)、モータ8が停止されて(ステップS10)、脱水行程が終了する(エンド)。なお、脱水行程中は、排水弁15は開放されている。
【0041】
ここで、水槽6の振動K0が閾値K以上とならない場合(ステップS7でNO)は、ステップS3〜ステップS7が繰り返される。そして、経過時間T0が共振帯域通過時間T1を経過してドラム10の回転速度が共振帯域を通過すると(ステップS5でYES)、次はステップS3、S4、S5、S9が繰り返えされ、ドラム10の回転速度が最終到達速度まで上げられて脱水が行われる。その後、経過時間T0が脱水時間Tを経過して脱水完了と判断されると(ステップS3でYES)、モータ8が停止されて(ステップS10)、脱水行程が終了する(エンド)。このように、水槽6の振動K0が閾値K以上とならない場合は、コイル52、55には通電されない。
【0042】
上記構成の作用について、サスペンション7のコイル52、55が通電される場合とされない場合について、図8及び図9も参照して説明する。なお、図8及び図9において、振動センサ90、91により検出される水槽6の振動K0を実線で示し、コイル52、55が非通電の場合の水槽6の振動Kaを二点鎖線で示している。
【0043】
図8は、例えばドラム10内の洗濯物の負荷量や偏りが大きく、大きな振動が発生する場合であり、コイル52、55が通電される場合を示している。この場合では、脱水行程が実行されてドラム10の回転速度が上がると、共振ピークの回転速度Fpに近づくにつれて、水槽6の振動K0も大きくなっていく。そして、ドラム10の回転速度が共振帯域に入ったある回転速度Faで、振動K0は閾値K以上(ステップS7でYES)となる。すると、コイル52、55は制御装置5により通電され(ステップS8)、ダンパ23には大きな所定のダンパ力が作用される。この後は、水槽6の振動K0は抑制された状態となり、閾値Kよりも小さい状態を推移する。そして、ドラム10の回転速度が共振帯域(例えば300rpm)を通過すると、水槽6の振動が閾値Kを超える虞はほとんどなくなる。このため、ドラム10の回転速度が共振帯域を超えた状態、即ち、脱水開始からの経過時間T0が共振帯域通過時間T1を経過していれば、ドラム10の回転速度は共振帯域を通過したと判断され(ステップS5でYES)、コイル52、55の通電は遮断されて(ステップS9)非通電状態となり、ダンパ23のダンパ力は初期状態に戻される。
【0044】
図9は、ドラム10内の洗濯物の負荷量や偏りが小さく、大きな振動が発生しない場合であり、コイル52、55が通電されない場合を示している。この場合では、ドラム10の回転速度が共振帯域を通過中、即ち、ドラム10の回転速度が共振ピークの回転速度Fp及びその付近であっても、水槽6の振動K0は閾値K以上にはならない(ステップS7でNO)。このため、コイル52、55が通電されることもなく、したがって、ダンパ23のダンパ力も増大されない。
【0045】
なお、上記脱水行程中において、振動センサ90、91が異常振動E以上となった水槽6の振動を検出すると、振動センサ90、91が異常振動信号を制御装置5に与えるようになっている。そして、制御装置5は、振動センサ90、91から異常振動信号が与えられると、モータ8を断電してドラム10の回転を停止させるとともにコイル52、55も断電させ、その後、モータ8に通電してドラム10を低速度(例えば50〜60rpm)で回転させて洗濯物の偏荷重を是正させる。そして、所定時間後、制御装置5は、上述したような脱水行程を再開させる。なお、異常振動Eは、水槽6の振動が洗濯機の機能に影響を及ぼさない上限の振動として設定されている。つまり、異常振動Eを超えた振動が水槽6に生じると、洗濯機が正常に機能しなくなる虞がある。また、この場合、閾値Kは、異常振動Eよりも低い値に設定されている。
【0046】
上記した第1実施形態によれば次のような作用効果を得ることができる。
本実施形態の構成によれば、サスペンション7のダンパ23は、磁気粘性流体80を有している。制御装置5によりコイル52、55に通電されて磁気粘性流体80に磁界が作用されると、ダンパ23にはその磁界の強さに応じたダンパ力が発生する。そして、制御装置5は、振動センサ90、91により検出される振動K0に基づいてコイル52、55を通電制御する。この構成によれば、振動K0に基づいてコイル52、55が通電制御されるため、水槽6の振動状態に応じたコイル52、55の通電制御を行うことができる。即ち、水槽6の振動が激しく、サスペンション7のダンパ23に強いダンパ力が必要な場合はコイル52、55を通電状態にすることができ、また、水槽6の振動が小さく強いダンパ力を必要としない場合には、コイル52、55を非通電状態とすることができる。このように、ダンパ23に大きいダンパ力が必要な場合に合せてコイル52、55を通電制御することができる。これにより、不必要に大きいダンパ力を得ることがなく、したがって、ダンパ23の消費電力を抑えて、省エネ効果の高い洗濯機を提供することができる。
【0047】
また、上記実施形態では、制御装置5は、水槽6の振動K0が閾値K以上となったことを振動センサ90、91が検出したときに、ダンパ23の磁気粘性流体80が所定のダンパ力を生じるようにコイル52、55に通電する構成としている。この構成によれば、閾値Kの設定により、水槽6の振動K0が激しく強いダンパ力が必要なときに、確実にコイル52、55に通電することができ、安全性が向上する。
【0048】
(第2実施形態)
第2実施形態について、図10〜図12を参照して説明する。この第2実施形態は、共振ピークの回転速度Fpの手前の時点での水槽6の振動K0を基に、ダンパ23のダンパ力を強める必要があるか否かを判断し、その結果に応じて段階的に設定されたダンパ力を選択して発生させる点で、第1実施形態とは異なっている。
【0049】
第2実施形態では、脱水行程の開始に先立って検出点Fbが設定される。この検出点Fbで検出される水槽6の振動K0(振動K0´)を基に、ダンパ23のダンパ力の増大の必要の有無を判断する。この場合、図11及び図12に示すように、検出点Fbは、共振ピークの回転速度Fpの手前、さらには、共振帯域(100〜300rpm)の手前となる、例えば90rpmに設定されている。ここで、ドラム10の回転速度と、その回転速度での振動の大きさがわかれば、共振ピークの回転速度Fpでの振動の大きさを経験的に予想することができる。つまり、予め設定した検出点Fbにおいて水槽6の振動K0を検出することにより、共振ピークの回転速度Fpでの水槽6の振動を推定することができる。なお、この検出点Fbでは、ドラム10の回転速度は共振帯域から外れているため、水槽6は異常振動Eを超えて激しく振動することはほとんどない。
【0050】
制御装置5による具体的な制御内容を図10に示すが、ステップS21では、モータ回転センサ27により現在のモータ8の回転速度、即ち、ドラム10の回転速度F0が検出される。そして、この回転速度F0が共振帯域の上限F(例えば300rpm)を超えていれば、ドラム10の回転速度は共振帯域を通過したと判断され(ステップS22でYES)、回転速度F0が共振帯域の上限F以下であれば、ドラム10の回転速度は共振帯域を通過していないと判断される(ステップS22でNO)。
【0051】
ドラム10の回転速度が共振帯域を通過していない場合(ステップS22でNO)、次に、ダンパ23のコイル52、55に通電されているか否かが判断される(ステップS6)。そして、これらコイル52、55に通電されていなければ(ステップS6でNO)、ドラム10の回転速度F0が検出点Fbに達したかが判断される(ステップS23)。ドラム10の回転速度F0が検出点Fbに達していれば(ステップS23でYES)、その時の水槽6の振動K0が検出される(ステップS4)。そして、振動K0が閾値K以上であれば(ステップS24でYES)、振動K0に基づいてダンパ23の磁気粘性流体80に発生させるダンパ力を設定する(ステップS25)。そして、制御装置5は、設定されたダンパ力を発生するようにコイル52、55に通電(ON)する(ステップS26)。これにより、水槽6の振動は効果的に抑制される。
【0052】
第2実施形態の構成の作用について、図11及び図12を参照して説明する。なお、図11及び図12において、水槽6の振動K0を実線で示し、推定振動K1〜K3を二点鎖線で示す。この推定振動K1〜K3は、例えばドラム10内の洗濯負荷量や偏心状態などの条件を変えて、段階的に振動の大きさを変化させた場合を示している。この場合、推定振動K1は、共振ピークの回転速度Fpにおいて水槽6の振動が異常振動E以上とならないような上限の場合を示す。なお、推定振動K1は、検出点Fb以降では振動K0に重なって示されている。また、推定振動K2、K3は、共振ピークの回転速度Fpにおいて水槽6の振動が異常振動E以上となるような場合を示す。この場合、推定振動K1〜K3は、検出点Fbと共振ピークの回転速度Fpでの振動の大きさに相間関係を有する。このため、共振ピークの回転速度Fpの手前の検出点Fbで水槽6の振動K0を検出することにより、共振ピークの回転速度Fpでの振動の大きさをある程度予想することができる。
【0053】
具体的には、図11に示すように、検出点Fbにおける推定振動K1〜K3の振動の大きさを、それぞれ振動K1´〜K3´としている。この場合、推定振動K1は、共振ピークの回転速度Fpにおいても異常振動E以上とならない上限の条件であるため、振動K1´を閾値Kとして、ダンパ23のダンパ力を増大するか否かを判断する。つまり、検出点Fbでの水槽6の振動K0が、振動K1´、即ち閾値K以上であれば(ステップS24でYES)、共振ピークの回転速度Fpにおいて水槽6の振動K0が異常振動Eを超えると推定される。このため、検出された振動K0に応じてダンパ23のダンパ力が設定され(ステップS25)、コイル52、55に通電(ON)される(ステップS26)。この場合、ダンパ23の磁気粘性流体80に発生させるダンパ力は、検出点Fbで検出された振動K0に基づいて、例えば、大、中、小の3段階に設定された中から選択される(ステップS25)。具体的には、検出点Fbで検出された振動K0が、振動K1´以上K2´未満であれば小ダンパ力が選択され、振動K2´以上K3´未満であれば中ダンパ力が選択され、振動K3´以上であれば大ダンパ力が選択される。
【0054】
逆に、図12に示すように、検出点Fbでの水槽6の振動K0が、振動K1´、即ち閾値K未満であれば(ステップS24でNO)、共振ピークの回転速度Fpにおいて水槽6の振動K0が異常振動Eを超えないと推定される。この場合、ダンパ23に初期状態のダンパ力以上のダンパ力を作用させる必要がなく、したがって、コイル52、55は通電されない。
【0055】
この構成によれば、段階的にコイル52、55に通電して必要なダンパ力を得るため、水槽6の振動状態に合ったダンパ力を得ることができる。これにより、ダンパ23の消費電力を抑えてより省エネ効果の高い洗濯機を提供することができる。さらに、共振ピークの回転速度Fp、さらには、共振帯域の手前でダンパ23にダンパ力を発生させるため、水槽6の振動が激しくなる前に振動を抑制することができ、安全性をさらに向上することができる。
【0056】
(第3実施形態)
第3実施形態では、図13に示すように、脱水行程が開始されると(スタート)、まず、制御装置5が槽重量検出手段として機能し、ドラム10及びドラム10内の洗濯物を含めた水槽6の重量、即ち槽重量が検出される(ステップS31)。次に、検出された槽重量に基づき、共振ピークの回転速度Fpが算出される(ステップS32)。この場合、共振ピークの回転速度Fpは、槽重量の平方根に反比例する。そして、算出された共振ピークの回転速度Fpに基づき検出点Fbを設定する(ステップS33)。具体的には、例えば、検出点Fbを、共振ピークの回転速度Fpよりも100rpm低い値に設定する。つまり、槽重量に基づいて共振ピークの回転速度Fpが250rpmと算出されれば、検出点Fbは150rpmに設定される。その後は、第2実施形態と同様に、検出点Fbで検出された振動K0に応じてダンパ23にダンパ力が発生するように、コイル52、55に通電するのであるが、この場合、検出点Fbは槽重量によって変化することになる。ここで、振動K1´〜K3´は、検出点Fbにおける推定振動K1〜K3から導出されるため、振動K1´(閾値K)、及び振動K2´、K3´は、検出点Fbによって変化することになる。つまり、槽重量によって変化する検出点Fbに対応して振動K1´〜K3´が導出される。そして、検出点Fbで検出された振動K0に基づいて、例えば、大、中、小の3段階に設定されたダンパ力の中から適切なダンパ力が選択され(ステップS25)、コイル52、55に通電(ON)される(ステップS26)。
【0057】
この構成によれば、検出点Fbを、実際の共振ピークにより近い値に設定できるため、水槽6の振動を効果的に抑制しながらコイル52、55の通電時間をより短時間にすることができる。これにより、ダンパ23の消費電力を抑えてより省エネ効果の高い洗濯機を提供することができる。
【0058】
なお、上記各実施形態のモールドコイルユニット50において、コイルは1個のみでも3個以上でもよく、また、ヨークは2個でもそれ以上でもよい。
また、洗濯機は少なくとも洗濯行程及び脱水行程を実行すれば良く、乾燥機能を有さないものでも良い。
そして、洗濯機の実施形態としては横軸型のドラム式洗濯機に限られず、縦軸型で水槽の内部に回転槽を備えるとともに、この回転槽内に撹拌体を備えたいわゆる縦型の洗濯機でも良い。
【0059】
以上のように、上記各実施形態の洗濯機によれば、水槽を防振支持するダンパは、磁界が作用されるとその磁界の強さに応じたダンパ力が発生する磁気粘性流体がシャフトとヨークとの間に充填されて構成されている。そして、制御手段によって、振動検出手段の検出情報に基づいてコイルが通電制御される。この構成によれば、水槽に発生する振動の大小に合せて適切なダンパ力が得られるようコイルを通電制御することができる。これにより、不必要に大きいダンパ力を発生させることなく、したがって、ダンパの消費電力を無駄に生じることなく、電力消費を抑えて省エネ効果の高い洗濯機を提供することができる。
【0060】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0061】
図面中、5は制御装置(制御手段、槽重量検出手段)、6は水槽、10はドラム(回転槽)、23はダンパ、25はシリンダ、26はシャフト、27はモータ回転センサ(回転数検出手段)、51は下部ヨーク(ヨーク)、52は第1のコイル(コイル)、54は中間部ヨーク(ヨーク)、55は第2のコイル(コイル)、57は上部ヨーク(ヨーク)、80は磁気粘性流体、90、91は振動センサ(振動検出手段)を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばドラム式洗濯機においては、外箱内に、内部にドラムが配設された水槽と、その水槽を防振支持するためのダンパ(サスペンション)を備え、ドラムの回転に伴う水槽の振動を前記ダンパにより低減する構成となっている。そして、そのダンパとしては、防振性能の向上を図るために、磁界の変化に伴い粘性が変化する磁気粘性流体、いわゆるMR流体を用いたものが考えられている。このものでは、例えばシリンダ内に、磁界を発生するためのコイルを配設するとともに、このコイルを軸方向に貫通するシャフトを往復動可能に設け、そのシャフトとコイルとの間に磁気粘性流体を設けた構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−276475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記構成のものでは、例えば水槽が高速回転される脱水時に、ダンパのコイルに通電して大きなダンパ力、即ち、減衰力を得ている。これにより、水槽が最も激しく振動する、即ち、振幅が大きくなる共振回転数(共振ピーク)付近において効果的に振動を抑制することができる。
【0005】
しかし、水槽の振動や共振回転数は、ドラム負荷量や偏荷重、即ち、洗濯負荷量や洗濯物の偏り具合によって変化する。このため、従来では、脱水開始直後から一定のダンパ力、例えば共振回転数時(共振ピーク時)に必要なダンパ力に合せて最大のダンパ力が発生するようにコイルに通電し、共振ピークを通過させていた。このため、洗濯負荷量や偏り具合が少なくて小さなダンパ力で良い場合でも、過剰なダンパ力を得るために電力を無駄に消費するという事情があった。
【0006】
そこで、水槽の振動に対して適切なダンパ力を発生させ、ダンパの消費電力を抑えて省エネ効果の高い洗濯機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態の洗濯機は、水槽と、前記水槽内に配設された洗濯兼脱水用の回転槽と、前記水槽を防振支持するダンパと、前記水槽の振動を検出する振動検出手段と、少なくとも洗濯行程及び脱水行程を実行する制御手段と、を備える。前記ダンパは、シリンダと、このシリンダの内部に収容され、前記制御手段の制御に基づいて通電されて磁界を発生するコイル及びこのコイルの磁界を誘導するヨークと、前記コイル及びヨークを相対的に軸方向往復動可能に貫通して前記シリンダに挿通されたシャフトと、このシャフトと前記ヨークとの間に充填され、磁界が作用されるとその磁界の強さに応じたダンパ力が発生する磁気粘性流体とを備えて構成される。前記制御手段は、前記振動検出手段の検出情報に基づいて前記コイルを通電制御する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1実施形態におけるドラム式洗濯機の概略構成を示す縦断側面図
【図2】制御系の機能ブロック図
【図3】サスペンションの縦断面図
【図4】モールドコイルユニット周辺の拡大縦断面図
【図5】サスペンションの外観斜視図
【図6】モールドコイルユニットの外観斜視図
【図7】制御装置の脱水行程における制御内容を示すフローチャート
【図8】コイルに通電される場合の水槽の振動の変化を示すグラフ
【図9】コイルに通電されない場合の水槽の振動の変化を示すグラフ
【図10】第2実施形態における図7相当図
【図11】図8相当図
【図12】図9相当図
【図13】第3実施形態における図7相当図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、ドラム式洗濯機に適用した複数の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、各実施形態において実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0010】
(第1実施形態)
まず、第1実施形態について、図1〜図9を参照して説明する。ドラム式洗濯機の概略構成を示す図1において、洗濯機の外殻を形成する外箱1の前面部(図1で右側)のほぼ中央部には、洗濯物出入口2が形成されているとともに、この洗濯物出入口2を開閉する扉3が設けられている。外箱1の前面部の上部には操作パネル4が設けられている。この操作パネル4は、洗濯乾燥機の運転に係る操作をユーザがするための操作部4aと、例えば液晶ディスプレイからなる表示部4bとから構成されている(図2参照)。この操作パネル4の裏側、即ち、外箱1内には、運転制御用の制御手段たる制御装置5が設けられている。
【0011】
外箱1の内部には、水槽6が配設されている。この水槽6は、軸方向を前後(図1では右左)とする横軸円筒状をなすものであり、外箱1の底板1a上に左右一対(一方のみ図示)のサスペンション7によって前上がりの傾斜状態に弾性支持されている。サスペンション7の詳細構造については後述する。水槽6の背面部にはモータ8が取り付けられている。このモータ8は、例えば直流のブラシレスモータからなるもので、アウターロータ形であり、そのロータ8aの中心部に取り付けられた図示しない回転軸を、軸受ブラケット9を介して水槽6の内部に挿通している。
【0012】
水槽6の内部には、ドラム10が配設されている。このドラム10も、軸方向が前後の横軸円筒状をなすものであり、その後部の中心部を前記モータ8の回転軸の先端部に連結することにより、水槽6と同軸の前上がりの傾斜状態に支持されている。この結果、ドラム10はモータ8によりダイレクトに回転されるようになっている。したがって、ドラム10は洗濯兼脱水用の回転槽であり、モータ8はドラム10を回転させるドラム駆動装置として機能する。
【0013】
ドラム10の周側部(胴部)には、通水及び通風が可能な小孔11が多数形成されている。これに対し、水槽6は、基本的に無孔状で、貯水可能な構成となっている。これらドラム10及び水槽6は、ともに前面に開口部12、13を有しており、そのうちの水槽6の開口部13と前記洗濯物出入口2との間に、環状のべローズ14が装着されている。これにより、洗濯物出入口2は、ベローズ14、水槽6の開口部13、及びドラム10の開口部12を介して、ドラム10の内部に連なる形態となっている。
【0014】
貯水可能な水槽6の最低部位には、途中に排水弁15を介して排水管16が接続されていて、水槽6内の水は、その排水管16を通して機外へ排出可能となっている。この水槽6の背面側から上方及び前方にわたって、乾燥装置17が配設されている。この乾燥装置17は、除湿器18、送風機19、ヒータ20、及び循環ダクト21から構成されていて、水槽6内(ドラム10内)から排出された空気中の水分を除湿器18において除去し、次いでその空気をヒータ20で加熱して乾燥風を生成し、その乾燥風を水槽6内(ドラム10内)に戻すことを繰り返す循環を行うことにより、ドラム10内に収容された洗濯物を乾燥させるようになっている。
【0015】
図2に制御系の機能ブロック図を示すが、制御装置5は、例えばマイクロコンピュータやメインメモリ等で構成されて、洗濯乾燥機の運転全般を制御する。制御装置5には、操作部4aから各種操作信号が入力される。そして、その操作結果や現在の運転状況、及び異常表示などを含めた各種表示が、表示部4bに表示される。また、制御装置5には、水槽6内の水位を検知するように設けられた水位センサ22から、水位検知信号が入力される。そして、制御装置5には、モータ8の回転を検知するように設けられた回転数検出手段たるモータ回転センサ27から回転数を示す回転検知信号が入力される。
【0016】
制御装置5は、ドラム10内に収容された洗濯物の重量、即ち、洗濯負荷量を測定する負荷量検出手段として機能するようになっており、その洗濯負荷量の検出は種々の方法を用いて行うことができる。例えば、ドラム10の回転の上昇速度や下降速度に基づいて洗濯負荷量を測定するようにしても良いし、ドラム10の回転速度、即ち回転数が所定速度に立ち上がるまでの時間、あるいは、立ち下がるまでの時間に基づいて洗濯負荷量を測定してもよい。この場合、ドラム10の回転速度は、モータ回転センサ27により検知されるモータ8の回転数、即ち、ドラム10の回転数を制御装置5が所要時間で除する演算をすることにより算出される。
【0017】
また、モータ8のモータ電流値、例えばベクトル制御におけるq軸電流値は、ドラム10内に投入された洗濯物の重量と密接な関係にある。したがって、モータ8を所定回転数、例えば75rpmで回転したときの、このようなモータ電流値を、電流センサ49で検知することにより、洗濯負荷量を検知することができる。なお、制御装置5は、ドラム10及びドラム10内の洗濯物を含めた水槽6の重量を検出する槽重量検出手段としても機能するようになっている。即ち、制御装置5は、ドラム10及び水槽6の重量を予め記憶し、これらの重量と前記負荷量検出手段によって検出された洗濯負荷量を加算することによって、ドラム10及び洗濯物を含めた水槽6の重量、即ち、槽重量を検出する。
【0018】
そして、制御装置5は、各種の入力信号並びにあらかじめ記憶された制御プログラムに基づいて、水槽6内(ドラム10内)に給水するように設けた給水弁37と、ドラム10駆動用のモータ8、水槽6内(ドラム10内)から排水するように設けた排水弁15、ヒータ20、及び後述するダンパ23のコイル52、55を、駆動回路48を介して駆動制御する。
【0019】
次に上記サスペンション7の構造について図3〜図6も参照して説明する。サスペンション7は、図3及び図5に示すように、ダンパ23と、圧縮コイルスプリングからなるコイルばね24を備えている。このうち、ダンパ23は、上下方向に延びる円筒状をなすシリンダ25と、このシリンダ25に沿って上下方向に延びるシャフト26を備えていて、シャフト26の下部がシリンダ25内に上下方向に往復動可能に挿入されている。
【0020】
シリンダ25の軸方向の一端部である下端部には連結部材28が設けられている。この連結部材28は、蓋部28aと、この蓋部28aから下方へ突出する連結軸部28bとを一体に有していて、そのうちの蓋部28aをシリンダ25の下端開口部に嵌合するとともに、その蓋部28aの外周部をシリンダ25の内周部に溶接、例えばTIG溶接することによりシリンダ25に固着されている。その連結部材28の連結軸部28bを、外箱1の底板1aに固定された取付部材29(図1参照)にゴムなどの弾性座板30等を介してナット31で締結することにより、シリンダ25は、底板1a側の取付部材29に連結されている。
【0021】
前記シャフト26の上端部には、上部連結部材32が連結されている。この上部連結部材32の連結軸部32aを、水槽6の取付部材33(図1参照)に、前記連結軸部28bと同様に、ゴムなどの弾性座板34等を介してナット35で締結することにより、シャフト26は、水槽6側の取付部材33に連結されている。上部連結部材32の下端部にはばね受け座36が嵌合固定されていて、このばね受け座36とシリンダ25の上端部との間に、前記コイルばね24がシャフト26を囲繞する状態で装着されている。
【0022】
シリンダ25内の上下方向の中間部には、環状をなす下部軸受ケース38が収容されている。この下部軸受ケース38の外周部には周方向に延びる溝部39が形成されていて、シリンダ25の周壁部のうちの前記溝部39に対応する部分を内方へかしめることにより、下部軸受ケース38をシリンダ25内に固定している。かしめた部分をかしめ部40としている。なお、下部軸受ケース38の外周部の一箇所には、軸方向に開通した溝部39a(図3参照)が形成されている。下部軸受ケース38の内周部には、シャフト26を軸方向、即ち、上下方向へ往復動可能に支持する環状の軸受41が収納固定されている。軸受41は、例えば焼結含油メタルから構成されている。シャフト26の下端部には抜止め部材26aが装着されていて、その抜止め部材26aが下部軸受ケース38の下面に当接することにより、シャフト26の上方への移動が規制されている。
【0023】
シリンダ25において、軸方向の他端部となる上端部の内部にも、環状をなす上部軸受ケース42が収容されている。この上部軸受ケース42は、これの上部に下部42aより外径寸法が小さな筒部42bを有していて、その下部42aと筒部42bとの間に段部42cが形成されている。筒部42bは、シリンダ25から上方へ突出している。この上部軸受ケース42における下部42aの外周部には、図4にも示すように溝部43が全周にわたって形成されていて、シリンダ25の周壁部のうちの前記溝部43に対応する部分を内方へかしめることにより、上部軸受ケース42をシリンダ25の上端部に固定している。かしめた部分をかしめ部44としている。この場合、かしめ部44は、ローリングかしめにより全周に設けている。溝部43にはOリング45が装着されていて、そのOリング45は、上部軸受ケース42の溝部43とシリンダ25のかしめ部44との間に挟まれて押し付けられている。
【0024】
コイルばね24の下端部は、上部軸受ケース42の段部42cにて受けられている。上部軸受ケース42の内周部の上部には、シャフト26を軸方向、即ち、上下方向へ往復動可能に支持する環状の軸受46が収納固定されている。この軸受46も、下部の軸受41と同様に、例えば焼結含油メタルから構成されている。上部軸受ケース42の内周部において、軸受46の下側には、環状をなす摩擦部材47が圧入状態で収納されていて、この摩擦部材47の内周部が、シャフト26の外周面に摺動可能に圧接している。
【0025】
シリンダ25内において、下部軸受ケース38と上部軸受ケース42との間の部分には、モールドコイルユニット50が収容されている。このモールドコイルユニット50は、それら下部軸受ケース38と上部軸受ケース42により挟み付けられた状態で固定されている。モールドコイルユニット50は、図3、図6に示すように、下部ヨーク51と、第1のコイル52を巻装した第1のボビン53と、中間部ヨーク54と、第2のコイル55を巻装した第2のボビン56と、上部ヨーク57と、これらを一体化するための成形用の樹脂58とを備えている。樹脂58としては、例えば、ナイロン、PBT、PET、PPなどの熱可塑性樹脂を用いる。モールドコイルユニット50の軸方向の両端部となる下部ヨーク51と上部ヨーク57に、環状をなすシール部材59が圧入状態で装着されている。これらシール部材59は、摩擦部材47と同じものを用いていて、内周部がシャフト26の外周面に摺動可能に圧接している。
【0026】
モールドコイルユニット50は、中央部に軸方向に貫通した貫通孔61を有し、全体として円筒状をなしていて、その貫通孔61に、シャフト26が軸方向に往復動可能に挿入されている。図6に示すように、モールドコイルユニット50の外周部には、軸方向に延びる溝部62が形成されているとともに、その溝部62にあって中間部ヨーク54と対応する部位に位置させて円形の凹部63と、この凹部63から周方向に連なって矩形状の凹部64が形成されている。このうちの矩形状の凹部64から、第1のコイル52と第2のコイル55の、2本のリード線65が外部に導出されている。各リード線65の基端部は、対応するボビン53、56の端板を貫通して各コイル52、55の端部に接続されていて、樹脂58で覆われている(図4参照)。各リード線65は、導線の周りが樹脂製のチューブ65aで覆われている(図5参照)。
【0027】
2本のリード線65は、基端部が樹脂58により覆われた状態で、図6に示すように、凹部64からモールドコイルユニット50の外部に導出されている。モールドコイルユニット50において、2本のリード線65の導出部分である凹部64に、例えばシリコーンからなる防湿材77(図3、図4、図6参照)をポッティングして凹部64内全体を埋めることにより、リード線65の位置を外力に対しても安定させながら防水処理している。
【0028】
ここで、モールドコイルユニット50の貫通孔61の内径寸法について説明する。図3に示すように、下部、中間部及び上部の3個のヨーク51、54、57の内径寸法は同じ寸法に設定されており、シャフト26の外周面との間に例えば0.4mm程度の隙間が形成されるように構成されている。第1及び第2の2個のボビン53、56の内径寸法は同じ寸法に設定され、かつ3個のヨーク51、54、57の内径寸法より若干大きい寸法に設定されており、シャフト26の外周面との間に例えば1.0mm程度の隙間が形成されるように構成されている。そして、シャフト26の外周面と前記3個のヨーク51、54、57の内周面との間の隙間、及びシャフト26の外周面と前記2個のボビン53、56の内周面との間の隙間には、磁気粘性流体80が注入されている。なお、磁気粘性流体80は、上下のシール部材59の内側まで注入されている(図4参照)。この磁気粘性流体80は、モールドコイルユニット50の前記注入口69から注入され、その注入口69はねじ70によって閉鎖されている。
【0029】
磁気粘性流体80は、例えばポリアルファオレフィンなどのベース液の中に、例えば鉄粉などの強磁性粒子及び該鉄の表面を覆う界面活性剤を混合した磁性コロイド溶液である。この磁気粘性流体80は、磁界が作用されると、強磁性粒子が磁力線に沿って鎖状に凝集してクラスタを形成することで粘度が一時的に上昇する特性を有するものである。この場合、磁気粘性流体80の粘度は、作用させる磁界の強さに応じて上昇する。このため、ダンパ23における磁気粘性流体80の粘性による摩擦抗力、即ち、ダンパ力は、磁気粘性流体80に作用させる磁界の強さ、即ち、コイル52、55に通電する電流の大きさに応じて発生する。
【0030】
ここで、モールドコイルユニット50の下部及び上部のシール部材59、ならびに上部軸受ケース42の摩擦部材47は、磁気粘性流体80が外部へ漏れ出ることを防止する作用と、シャフト26との間に生ずる摩擦を利用した摩擦ダンパの作用を発揮する。また、図1に示すように、下部ヨーク51と第1のボビン53との間、第1のボビン53と中間部ヨーク54との間、中間部ヨーク54と第2のボビン56との間、ならびに第2のボビン56と上部ヨーク57との間には、それぞれシール用のOリング81が設けられている。これらOリング81も、磁気粘性流体80が外部へ漏れ出ることを防止する機能がある。
【0031】
シリンダ25の周壁部における軸方向の中間部には、前記円形の凹部63に対応する位置に、円形の孔からなるリード線引出口82(図3、図4参照)が形成されている。このリード線引出口82には、リード線挿通孔83aを有するブシュ83が嵌合されていて、前記2本のリード線65が、そのブシュ83のリード線挿通孔83aを通して外部に引き出されている。この場合ブシュ83は、樹脂、例えばナイロン製のものを用いている。
【0032】
シリンダ25の外周部には、ブシュ83の上方、即ち、リード線引出口82の上方に位置させて、山形状の庇部84が設けられている。この庇部84は、この場合シリンダ25の外面に接着材により接着されている。この庇部84は、上からの水が、リード線引出口82、即ち、リード線挿通孔83aからシリンダ25内に浸入することを防止する。
また、シリンダ25の外周部には、配線固定部材85(図5参照)を装着していて、この配線固定部材85に設けられた配線保持具86により、シリンダ25の外部に引き出されたリード線65を保持するようにしている。なお、シリンダ25内において連結部材28の蓋部28aと下部軸受ケース38との間には、空間部88(図3参照)が形成されている。
【0033】
このようなサスペンション7は、水槽6の左右両側に配設される。また、各サスペンション7から導出されたリード線65は駆動回路48に接続される。第1及び第2のコイル52、55は、制御装置5により駆動回路48を介して通断電制御される。
なお、図1に示すように、水槽6を前方側から視て、左側壁の後側上部外面には、振動検出手段としての振動センサ90が配設され、右側壁の前側下部外面には、振動検出手段としての振動センサ91が配設されている。これらの振動センサ90、91は、例えば2軸又は3軸の検出が可能な半導体式の加速度センサなどで構成され、水槽6の振動を検出情報として制御装置5に与えるようになっている。
【0034】
上記構成において、洗濯運転時におけるサスペンション7の動作について説明する。まず、第1のコイル52及び第2のコイル55が通電されない場合を説明する。
洗濯行程や乾燥行程では、ドラム10はモータ8により低速度(例えば50〜60rpm)で回転駆動される。これに伴い、水槽6は上下方向を主体に振動する。この水槽6の上下振動に応動して、サスペンション7では、外箱1の底板1a側に固定されたシリンダ25に対して、水槽6側に連結されたシャフト26がコイルばね24を伸縮させながら上下動する。この洗濯行程や乾燥行程では、ドラム10の回転速度は、共振ピーク及びその付近、例えば100〜300rpmの共振帯域は通過しない。このため、サスペンション7の第1のコイル52及び第2のコイル55に通電してダンパ23のダンパ力を増大させる必要はない。この場合、サスペンション7は、コイルばね24による振動低減作用に加え、摩擦部材47、及びシール部材59がシャフト26に対して摩擦抵抗で減衰力を常時作用させるとともに、シャフト26と3個のヨーク51、54、57、及び2個のボビン53、56との間に充填された磁気粘性流体80が、その粘性による摩擦抵抗(ダンパ力)で減衰力を作用させ、水槽6の振幅を減衰させる。なお、共振ピークとは、いわゆる共振振幅値又は共振回転数と同義であり、例えば、ドラム10の回転速度がドラム10を含めた水槽6の固有振動数と重なって水槽6の振動が激しくなる、即ち、振動振幅がピークとなる回転速度(回転数)、又はその振幅値そのものを示す。
【0035】
次に、脱水行程におけるサスペンション7の動作について、図7〜図9も用いて説明する。なお、第1のコイル52及び第2のコイル55の通電の可否を判断する閾値K、脱水の実行時間を示す脱水時間T、及びドラム10の回転速度が共振帯域(100〜300rpm)を通過する時間を示す共振帯域通過時間T1は、脱水開始前に予め設定されているものとする。
【0036】
この脱水行程では、ドラム10がモータ8により高速度(例えば1300rpm)で回転駆動される。そして、ドラム10の回転速度は、最終到達速度(例えば1300rpm)に到達するまで徐々に上がっていく。この場合、ドラム10の回転速度は、振動が最も激しい共振帯域を通過するため、第1のコイル52及び第2のコイル55は通電制御されて、ダンパ23のダンパ力が所定のダンパ力に増加される。
【0037】
具体的には、図7に示すように、制御装置5により脱水行程が実行される。脱水行程が開始されると(スタート)、モータ8が駆動されてドラム10が回転駆動される(ステップS1)とともに、制御装置5のタイマが開始されて脱水開始からの経過時間T0がカウントされる(ステップS2)。次に、脱水完了か否かが判断される(ステップS3)。ここでは、例えばステップS2でカウント開始された経過時間T0が、脱水行程実行前に設定された脱水時間Tを経過していれば脱水完了とし(ステップS3でYES)、経過していなければ脱水が続行される(ステップS3でNO)。
【0038】
ステップS3で脱水が続行されると、振動センサ90、91により、水槽6の振動K0が検出される(ステップS4)。その後、ドラム10の回転速度が共振帯域(例えば100〜300rpm)を通過したかが判断される(ステップS5)。この場合、ドラム10の回転速度は、最終到達速度が1300rpmの場合ではモータ8が駆動されてから約3分で共振帯域を通過するように設定されている。このため、共振帯域の通過を経過時間T0によって判断する。つまり、経過時間T0が共振帯域通過時間T1(例えば3分)を経過していればドラム10の回転速度は共振帯域を通過したと判断され(ステップS5でYES)、経過していなければ共振帯域を通過していないと判断される(ステップS5でNO)。なお、ドラム10の回転速度が共振帯域を通過したか否かは、実際にドラム10の回転速度を検出して判断しても良い(第2実施形態で具体例を示す)。
【0039】
ドラム10の回転速度が共振帯域を通過していない場合(ステップS5でNO)、次に、ダンパ23のコイル52、55に通電されているか否かが判断される(ステップS6)。そして、これらコイル52、55に通電されていなければ(ステップS6でNO)、水槽6の振動K0が閾値K以上であるかが判断される(ステップS7)。ここで、振動K0が閾値K以上であれば(ステップS7でYES)、コイル52、55は制御装置5により通電(ON)される(ステップ8)。この場合、コイル52、55が通電されると、特にヨーク51、54、57を介して磁気粘性流体80に磁界が与えられ、磁気粘性流体80の粘度が高まる。これにより、磁気粘性流体80の摩擦抵抗が大きくなるように増加して、所定のダンパ力を得ることができるようになる。かくして、シャフト26に対する摩擦抵抗(ダンパ力)が、第1のコイル52及び第2のコイル55の非通電の場合よりさらに増加することにより、減衰力が大きくなる。これにより、水槽6の振動を効果的に減衰することができる。
【0040】
コイル52、55が通電されると(ステップ8)、その後はステップS3〜ステップS6が繰り返される。そして、経過時間T0が共振帯域通過時間T1を経過してドラム10の回転速度が共振帯域を通過すると(ステップS5でYES)、コイル52、55の通電は遮断(OFF)されて(ステップS9)、ダンパ23のダンパ力は初期状態に戻る。その後、ステップS3、S4、S5、S9が繰り返えされ、ドラム10の回転速度が最終到達速度まで上げられて脱水が行われる。その後、経過時間T0が脱水時間Tを経過して脱水完了と判断されると(ステップS3でYES)、モータ8が停止されて(ステップS10)、脱水行程が終了する(エンド)。なお、脱水行程中は、排水弁15は開放されている。
【0041】
ここで、水槽6の振動K0が閾値K以上とならない場合(ステップS7でNO)は、ステップS3〜ステップS7が繰り返される。そして、経過時間T0が共振帯域通過時間T1を経過してドラム10の回転速度が共振帯域を通過すると(ステップS5でYES)、次はステップS3、S4、S5、S9が繰り返えされ、ドラム10の回転速度が最終到達速度まで上げられて脱水が行われる。その後、経過時間T0が脱水時間Tを経過して脱水完了と判断されると(ステップS3でYES)、モータ8が停止されて(ステップS10)、脱水行程が終了する(エンド)。このように、水槽6の振動K0が閾値K以上とならない場合は、コイル52、55には通電されない。
【0042】
上記構成の作用について、サスペンション7のコイル52、55が通電される場合とされない場合について、図8及び図9も参照して説明する。なお、図8及び図9において、振動センサ90、91により検出される水槽6の振動K0を実線で示し、コイル52、55が非通電の場合の水槽6の振動Kaを二点鎖線で示している。
【0043】
図8は、例えばドラム10内の洗濯物の負荷量や偏りが大きく、大きな振動が発生する場合であり、コイル52、55が通電される場合を示している。この場合では、脱水行程が実行されてドラム10の回転速度が上がると、共振ピークの回転速度Fpに近づくにつれて、水槽6の振動K0も大きくなっていく。そして、ドラム10の回転速度が共振帯域に入ったある回転速度Faで、振動K0は閾値K以上(ステップS7でYES)となる。すると、コイル52、55は制御装置5により通電され(ステップS8)、ダンパ23には大きな所定のダンパ力が作用される。この後は、水槽6の振動K0は抑制された状態となり、閾値Kよりも小さい状態を推移する。そして、ドラム10の回転速度が共振帯域(例えば300rpm)を通過すると、水槽6の振動が閾値Kを超える虞はほとんどなくなる。このため、ドラム10の回転速度が共振帯域を超えた状態、即ち、脱水開始からの経過時間T0が共振帯域通過時間T1を経過していれば、ドラム10の回転速度は共振帯域を通過したと判断され(ステップS5でYES)、コイル52、55の通電は遮断されて(ステップS9)非通電状態となり、ダンパ23のダンパ力は初期状態に戻される。
【0044】
図9は、ドラム10内の洗濯物の負荷量や偏りが小さく、大きな振動が発生しない場合であり、コイル52、55が通電されない場合を示している。この場合では、ドラム10の回転速度が共振帯域を通過中、即ち、ドラム10の回転速度が共振ピークの回転速度Fp及びその付近であっても、水槽6の振動K0は閾値K以上にはならない(ステップS7でNO)。このため、コイル52、55が通電されることもなく、したがって、ダンパ23のダンパ力も増大されない。
【0045】
なお、上記脱水行程中において、振動センサ90、91が異常振動E以上となった水槽6の振動を検出すると、振動センサ90、91が異常振動信号を制御装置5に与えるようになっている。そして、制御装置5は、振動センサ90、91から異常振動信号が与えられると、モータ8を断電してドラム10の回転を停止させるとともにコイル52、55も断電させ、その後、モータ8に通電してドラム10を低速度(例えば50〜60rpm)で回転させて洗濯物の偏荷重を是正させる。そして、所定時間後、制御装置5は、上述したような脱水行程を再開させる。なお、異常振動Eは、水槽6の振動が洗濯機の機能に影響を及ぼさない上限の振動として設定されている。つまり、異常振動Eを超えた振動が水槽6に生じると、洗濯機が正常に機能しなくなる虞がある。また、この場合、閾値Kは、異常振動Eよりも低い値に設定されている。
【0046】
上記した第1実施形態によれば次のような作用効果を得ることができる。
本実施形態の構成によれば、サスペンション7のダンパ23は、磁気粘性流体80を有している。制御装置5によりコイル52、55に通電されて磁気粘性流体80に磁界が作用されると、ダンパ23にはその磁界の強さに応じたダンパ力が発生する。そして、制御装置5は、振動センサ90、91により検出される振動K0に基づいてコイル52、55を通電制御する。この構成によれば、振動K0に基づいてコイル52、55が通電制御されるため、水槽6の振動状態に応じたコイル52、55の通電制御を行うことができる。即ち、水槽6の振動が激しく、サスペンション7のダンパ23に強いダンパ力が必要な場合はコイル52、55を通電状態にすることができ、また、水槽6の振動が小さく強いダンパ力を必要としない場合には、コイル52、55を非通電状態とすることができる。このように、ダンパ23に大きいダンパ力が必要な場合に合せてコイル52、55を通電制御することができる。これにより、不必要に大きいダンパ力を得ることがなく、したがって、ダンパ23の消費電力を抑えて、省エネ効果の高い洗濯機を提供することができる。
【0047】
また、上記実施形態では、制御装置5は、水槽6の振動K0が閾値K以上となったことを振動センサ90、91が検出したときに、ダンパ23の磁気粘性流体80が所定のダンパ力を生じるようにコイル52、55に通電する構成としている。この構成によれば、閾値Kの設定により、水槽6の振動K0が激しく強いダンパ力が必要なときに、確実にコイル52、55に通電することができ、安全性が向上する。
【0048】
(第2実施形態)
第2実施形態について、図10〜図12を参照して説明する。この第2実施形態は、共振ピークの回転速度Fpの手前の時点での水槽6の振動K0を基に、ダンパ23のダンパ力を強める必要があるか否かを判断し、その結果に応じて段階的に設定されたダンパ力を選択して発生させる点で、第1実施形態とは異なっている。
【0049】
第2実施形態では、脱水行程の開始に先立って検出点Fbが設定される。この検出点Fbで検出される水槽6の振動K0(振動K0´)を基に、ダンパ23のダンパ力の増大の必要の有無を判断する。この場合、図11及び図12に示すように、検出点Fbは、共振ピークの回転速度Fpの手前、さらには、共振帯域(100〜300rpm)の手前となる、例えば90rpmに設定されている。ここで、ドラム10の回転速度と、その回転速度での振動の大きさがわかれば、共振ピークの回転速度Fpでの振動の大きさを経験的に予想することができる。つまり、予め設定した検出点Fbにおいて水槽6の振動K0を検出することにより、共振ピークの回転速度Fpでの水槽6の振動を推定することができる。なお、この検出点Fbでは、ドラム10の回転速度は共振帯域から外れているため、水槽6は異常振動Eを超えて激しく振動することはほとんどない。
【0050】
制御装置5による具体的な制御内容を図10に示すが、ステップS21では、モータ回転センサ27により現在のモータ8の回転速度、即ち、ドラム10の回転速度F0が検出される。そして、この回転速度F0が共振帯域の上限F(例えば300rpm)を超えていれば、ドラム10の回転速度は共振帯域を通過したと判断され(ステップS22でYES)、回転速度F0が共振帯域の上限F以下であれば、ドラム10の回転速度は共振帯域を通過していないと判断される(ステップS22でNO)。
【0051】
ドラム10の回転速度が共振帯域を通過していない場合(ステップS22でNO)、次に、ダンパ23のコイル52、55に通電されているか否かが判断される(ステップS6)。そして、これらコイル52、55に通電されていなければ(ステップS6でNO)、ドラム10の回転速度F0が検出点Fbに達したかが判断される(ステップS23)。ドラム10の回転速度F0が検出点Fbに達していれば(ステップS23でYES)、その時の水槽6の振動K0が検出される(ステップS4)。そして、振動K0が閾値K以上であれば(ステップS24でYES)、振動K0に基づいてダンパ23の磁気粘性流体80に発生させるダンパ力を設定する(ステップS25)。そして、制御装置5は、設定されたダンパ力を発生するようにコイル52、55に通電(ON)する(ステップS26)。これにより、水槽6の振動は効果的に抑制される。
【0052】
第2実施形態の構成の作用について、図11及び図12を参照して説明する。なお、図11及び図12において、水槽6の振動K0を実線で示し、推定振動K1〜K3を二点鎖線で示す。この推定振動K1〜K3は、例えばドラム10内の洗濯負荷量や偏心状態などの条件を変えて、段階的に振動の大きさを変化させた場合を示している。この場合、推定振動K1は、共振ピークの回転速度Fpにおいて水槽6の振動が異常振動E以上とならないような上限の場合を示す。なお、推定振動K1は、検出点Fb以降では振動K0に重なって示されている。また、推定振動K2、K3は、共振ピークの回転速度Fpにおいて水槽6の振動が異常振動E以上となるような場合を示す。この場合、推定振動K1〜K3は、検出点Fbと共振ピークの回転速度Fpでの振動の大きさに相間関係を有する。このため、共振ピークの回転速度Fpの手前の検出点Fbで水槽6の振動K0を検出することにより、共振ピークの回転速度Fpでの振動の大きさをある程度予想することができる。
【0053】
具体的には、図11に示すように、検出点Fbにおける推定振動K1〜K3の振動の大きさを、それぞれ振動K1´〜K3´としている。この場合、推定振動K1は、共振ピークの回転速度Fpにおいても異常振動E以上とならない上限の条件であるため、振動K1´を閾値Kとして、ダンパ23のダンパ力を増大するか否かを判断する。つまり、検出点Fbでの水槽6の振動K0が、振動K1´、即ち閾値K以上であれば(ステップS24でYES)、共振ピークの回転速度Fpにおいて水槽6の振動K0が異常振動Eを超えると推定される。このため、検出された振動K0に応じてダンパ23のダンパ力が設定され(ステップS25)、コイル52、55に通電(ON)される(ステップS26)。この場合、ダンパ23の磁気粘性流体80に発生させるダンパ力は、検出点Fbで検出された振動K0に基づいて、例えば、大、中、小の3段階に設定された中から選択される(ステップS25)。具体的には、検出点Fbで検出された振動K0が、振動K1´以上K2´未満であれば小ダンパ力が選択され、振動K2´以上K3´未満であれば中ダンパ力が選択され、振動K3´以上であれば大ダンパ力が選択される。
【0054】
逆に、図12に示すように、検出点Fbでの水槽6の振動K0が、振動K1´、即ち閾値K未満であれば(ステップS24でNO)、共振ピークの回転速度Fpにおいて水槽6の振動K0が異常振動Eを超えないと推定される。この場合、ダンパ23に初期状態のダンパ力以上のダンパ力を作用させる必要がなく、したがって、コイル52、55は通電されない。
【0055】
この構成によれば、段階的にコイル52、55に通電して必要なダンパ力を得るため、水槽6の振動状態に合ったダンパ力を得ることができる。これにより、ダンパ23の消費電力を抑えてより省エネ効果の高い洗濯機を提供することができる。さらに、共振ピークの回転速度Fp、さらには、共振帯域の手前でダンパ23にダンパ力を発生させるため、水槽6の振動が激しくなる前に振動を抑制することができ、安全性をさらに向上することができる。
【0056】
(第3実施形態)
第3実施形態では、図13に示すように、脱水行程が開始されると(スタート)、まず、制御装置5が槽重量検出手段として機能し、ドラム10及びドラム10内の洗濯物を含めた水槽6の重量、即ち槽重量が検出される(ステップS31)。次に、検出された槽重量に基づき、共振ピークの回転速度Fpが算出される(ステップS32)。この場合、共振ピークの回転速度Fpは、槽重量の平方根に反比例する。そして、算出された共振ピークの回転速度Fpに基づき検出点Fbを設定する(ステップS33)。具体的には、例えば、検出点Fbを、共振ピークの回転速度Fpよりも100rpm低い値に設定する。つまり、槽重量に基づいて共振ピークの回転速度Fpが250rpmと算出されれば、検出点Fbは150rpmに設定される。その後は、第2実施形態と同様に、検出点Fbで検出された振動K0に応じてダンパ23にダンパ力が発生するように、コイル52、55に通電するのであるが、この場合、検出点Fbは槽重量によって変化することになる。ここで、振動K1´〜K3´は、検出点Fbにおける推定振動K1〜K3から導出されるため、振動K1´(閾値K)、及び振動K2´、K3´は、検出点Fbによって変化することになる。つまり、槽重量によって変化する検出点Fbに対応して振動K1´〜K3´が導出される。そして、検出点Fbで検出された振動K0に基づいて、例えば、大、中、小の3段階に設定されたダンパ力の中から適切なダンパ力が選択され(ステップS25)、コイル52、55に通電(ON)される(ステップS26)。
【0057】
この構成によれば、検出点Fbを、実際の共振ピークにより近い値に設定できるため、水槽6の振動を効果的に抑制しながらコイル52、55の通電時間をより短時間にすることができる。これにより、ダンパ23の消費電力を抑えてより省エネ効果の高い洗濯機を提供することができる。
【0058】
なお、上記各実施形態のモールドコイルユニット50において、コイルは1個のみでも3個以上でもよく、また、ヨークは2個でもそれ以上でもよい。
また、洗濯機は少なくとも洗濯行程及び脱水行程を実行すれば良く、乾燥機能を有さないものでも良い。
そして、洗濯機の実施形態としては横軸型のドラム式洗濯機に限られず、縦軸型で水槽の内部に回転槽を備えるとともに、この回転槽内に撹拌体を備えたいわゆる縦型の洗濯機でも良い。
【0059】
以上のように、上記各実施形態の洗濯機によれば、水槽を防振支持するダンパは、磁界が作用されるとその磁界の強さに応じたダンパ力が発生する磁気粘性流体がシャフトとヨークとの間に充填されて構成されている。そして、制御手段によって、振動検出手段の検出情報に基づいてコイルが通電制御される。この構成によれば、水槽に発生する振動の大小に合せて適切なダンパ力が得られるようコイルを通電制御することができる。これにより、不必要に大きいダンパ力を発生させることなく、したがって、ダンパの消費電力を無駄に生じることなく、電力消費を抑えて省エネ効果の高い洗濯機を提供することができる。
【0060】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0061】
図面中、5は制御装置(制御手段、槽重量検出手段)、6は水槽、10はドラム(回転槽)、23はダンパ、25はシリンダ、26はシャフト、27はモータ回転センサ(回転数検出手段)、51は下部ヨーク(ヨーク)、52は第1のコイル(コイル)、54は中間部ヨーク(ヨーク)、55は第2のコイル(コイル)、57は上部ヨーク(ヨーク)、80は磁気粘性流体、90、91は振動センサ(振動検出手段)を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水槽と、
前記水槽内に配設された洗濯兼脱水用の回転槽と、
前記水槽を防振支持するダンパと、
前記水槽の振動を検出する振動検出手段と、
少なくとも洗濯行程及び脱水行程を実行する制御手段と、を備え、
前記ダンパは、
シリンダと、
このシリンダの内部に収容され、前記制御手段の制御の基に通電されて磁界を発生するコイル及びこのコイルの磁界を誘導するヨークと、
前記コイル及びヨークを相対的に軸方向往復動可能に貫通して前記シリンダに挿通されたシャフトと、
このシャフトと前記ヨークとの間に充填され、磁界が作用されるとその磁界の強さに応じたダンパ力が発生する磁気粘性流体とを備えて構成され、
前記制御手段は、前記振動検出手段の検出情報に基づいて前記コイルを通電制御することを特徴とする洗濯機。
【請求項2】
前記制御手段は、前記水槽の振動が設定された閾値以上となったことを前記振動検出手段が検出したときに、前記磁気粘性流体が所定のダンパ力を発生するように前記コイルに通電することを特徴とする請求項1記載の洗濯機。
【請求項3】
前記制御手段は、前記振動検出手段を介して前記水槽の共振ピークより手前の振動を検出してその検出値に応じた大きさのダンパ力を設定し、前記水槽の共振域で前記磁気粘性流体が該ダンパ力を発生するように前記コイルに通電することを特徴とする請求項1記載の洗濯機。
【請求項4】
前記回転槽の回転数を検出する回転数検出手段と、
前記水槽の重量を検出する槽重量検出手段と、を備え、
前記制御手段は、前記槽重量検出手段の検出した槽重量に基づいて前記水槽の共振ピーク時の回転槽の回転数を算出し、前記回転数検出手段を介して前記共振ピーク時の回転数より手前の回転数を検出してそのときの振動を振動検出手段を介してその検出値に応じた大きさのダンパ力を設定し、前記水槽の共振域で前記磁気粘性流体が該ダンパ力を発生するように前記コイルを通電制御することを特徴とする請求項1記載の洗濯機。
【請求項1】
水槽と、
前記水槽内に配設された洗濯兼脱水用の回転槽と、
前記水槽を防振支持するダンパと、
前記水槽の振動を検出する振動検出手段と、
少なくとも洗濯行程及び脱水行程を実行する制御手段と、を備え、
前記ダンパは、
シリンダと、
このシリンダの内部に収容され、前記制御手段の制御の基に通電されて磁界を発生するコイル及びこのコイルの磁界を誘導するヨークと、
前記コイル及びヨークを相対的に軸方向往復動可能に貫通して前記シリンダに挿通されたシャフトと、
このシャフトと前記ヨークとの間に充填され、磁界が作用されるとその磁界の強さに応じたダンパ力が発生する磁気粘性流体とを備えて構成され、
前記制御手段は、前記振動検出手段の検出情報に基づいて前記コイルを通電制御することを特徴とする洗濯機。
【請求項2】
前記制御手段は、前記水槽の振動が設定された閾値以上となったことを前記振動検出手段が検出したときに、前記磁気粘性流体が所定のダンパ力を発生するように前記コイルに通電することを特徴とする請求項1記載の洗濯機。
【請求項3】
前記制御手段は、前記振動検出手段を介して前記水槽の共振ピークより手前の振動を検出してその検出値に応じた大きさのダンパ力を設定し、前記水槽の共振域で前記磁気粘性流体が該ダンパ力を発生するように前記コイルに通電することを特徴とする請求項1記載の洗濯機。
【請求項4】
前記回転槽の回転数を検出する回転数検出手段と、
前記水槽の重量を検出する槽重量検出手段と、を備え、
前記制御手段は、前記槽重量検出手段の検出した槽重量に基づいて前記水槽の共振ピーク時の回転槽の回転数を算出し、前記回転数検出手段を介して前記共振ピーク時の回転数より手前の回転数を検出してそのときの振動を振動検出手段を介してその検出値に応じた大きさのダンパ力を設定し、前記水槽の共振域で前記磁気粘性流体が該ダンパ力を発生するように前記コイルを通電制御することを特徴とする請求項1記載の洗濯機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−70985(P2012−70985A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−218871(P2010−218871)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(502285664)東芝コンシューマエレクトロニクス・ホールディングス株式会社 (2,480)
【出願人】(503376518)東芝ホームアプライアンス株式会社 (2,436)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(502285664)東芝コンシューマエレクトロニクス・ホールディングス株式会社 (2,480)
【出願人】(503376518)東芝ホームアプライアンス株式会社 (2,436)
【Fターム(参考)】
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