説明

洗濯脱水機、及び洗濯脱水方法

【課題】コンベアプーリ式の洗濯脱水機を改良して、洗濯物の絡み付きを無くし、かつ軽量化と製造コストの低減を図る。
【解決手段】回転ドラム3の中に、回転中心線Xを共用して同心に配置されているスクリュー部材について、その回転中心線Xと同心のコンベア軸を省略する(螺旋区域Sを貫通する中心軸は設けない)。前記無軸スクリュー7の投入側(図において左方)に、X軸に沿った駆動軸8を設けて、該無軸スクリュー7を片持ち形に支持するとともに、該駆動軸8にコンベアプーリ8aを取り付けて回転駆動する。無軸のスクリュー(7)を補強するため、その周囲にX軸方向の桟(選択図において図示省略)を設けることが推奨される。
前記の桟は、洗濯作業時に洗濯液や洗濯物を掻き上げる作用も果たす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として業務用に用いられる洗濯脱水機、及び、これを使用する洗濯脱水方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図6はこの種の洗濯脱水機に関する従来例を示す断面図である。
洗濯物は矢印aのように投入され、矢印bのように排出される。説明の便宜上、洗濯物が投入される側(図において左方)を投入側と呼び、排出される側(図において右方)を排出側と呼ぶ。
ケース2の中に回転ドラム3が収納されている。この回転ドラムは、多孔板製の側板3aの両端それぞれに投入側の端板3bと排出側の端板3cとが装着されており、これらの端板には投入用の開口,排出用の開口が設けられている。
【0003】
前記回転ドラム3の中に、中心線Xを共有してスクリューコンベア4が同心に配置されている。該回転ドラム3の投入側は管状軸3dで支承されるとともにドラムプーリ3eを介して回転駆動される。
前記スクリューコンベア4のコンベア軸4aは、管状軸3dを貫通していて、コンベアプーリ4bを介して回転駆動される。
図示の寸法Lはスクリューコンベア4の全長を表しており、その内の寸法Sは螺旋区域である。寸法Tは駆動軸区域、寸法Tはトラニオン支持区域である。
従来例におけるコンベア軸4aの長さ寸法はLであって、スクリューコンベア4を中心線Xに沿って貫通している。
【0004】
前掲の図6に示した従来例の洗濯脱水機による洗濯の様子は図7のごとくである。
図6について説明したケース(本図7において図示省略)の中に、洗濯液が注入され、回転ドラム3の底部が洗濯液5に浸されている。この回転ドラム3の中に洗濯物6が入れられる。
スクリューコンベア4を矢印a−bのように、約270度往復回動(揺動)させると、
洗濯物は中心線Xの周りに往復円弧を描きながら、中心線方向に揺すられて、洗濯液と良く接触する。
予洗も、本洗も、すすぎ洗いも、このようにして行われる。
【特許文献1】2006−204849号公報
【特許文献2】2004−135396号公報
【特許文献3】2004−81733号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図7の状態で洗濯を行なってから、洗濯液5を排水した後、回転ドラム3を中心線Xの周りに高速回転させて洗濯物の遠心脱水が行われる。
脱水されて未乾燥の洗濯物をスクリューコンベア4で排出する。すなわち(図6参照)スクリューコンベア4を回転させて洗濯物を排出側(図において右方)へ送り、矢印bのように排出する。
この際、洗濯物6がスクリューコンベア4のコンベア軸4aに絡み付くというトラブルを生じる虞れが有る。
洗濯物の絡み付きはケース2の中で発生するから、予洗中に発生しても、本洗中に発生しても、すすぎ洗い中に発生しても、洗濯作業員には分からない。最終工程の排出操作に際して発見される。
【0006】
一口に洗濯物と言っても、小はハンカチから大はシーツやマットまで種々さまざまで、一概には言えないが、洗濯工場の技術者が、洗濯物の種類や汚れ方に応じて洗濯脱水機の運転条件を調節している。
一般的な傾向としては、例えば枕カバーや通常のタオル等のような小物は絡み付きにくく、シーツや帯等のように長い物は絡み付き易い。
【0007】
本発明は以上に述べた事情に鑑みて為されたものであって、その目的とするところは、洗濯物がスクリューコンベアに絡み付く虞れの無い洗濯脱水機を提供すること、
及び、この洗濯脱水機を使用して効率的に洗濯を行ない得る洗濯脱水方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の基本的な原理について、その1実施形態に対応する添付図面を参照して説明すると次の通りである。この[課題を解決するための手段]の欄は、図面との対照が容易なように括弧書きで図面符号を付記してあるが、この括弧付き符号は本発明の構成を図面のとおりに限定するものではない。
請求項1に係る洗濯脱水機の構成は、
(図6参照) 回転ドラム(3)の中に、回転中心線Xを共有してスクリューコンベア(4)が同心に配置され、
(図7参照)回転ドラム(3)の中に洗濯液(5)と洗濯物(6)とを入れた状態で、スクリューコンベアを中心線の周りに往復回動(矢印c−d)させて洗濯を行ない、
回転ドラム(3)を中心線(X)の周りに回転させて遠心脱水を行ない、
スクリューコンベア(4)を高速回転させて、脱水済みの洗濯物を回転ドラムから排出(矢印b)する方式の洗濯脱水機において、
前記スクリューコンベアの螺旋区域(S)の少なくとも一部分には、中心線(X)に沿ったスクリューコンベア軸(略称・コンベア軸)が設けられていないことを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明に係る洗濯脱水機の構成は、前記請求項1の発明の構成要件に加えて、 (図1参照) 中心線(X)に沿ったスクリュー軸を設けられていない無軸スクリュー(7)が、中心線(X)と同心の駆動軸(8)によって片持ち形に支持されていることを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明に係る洗濯脱水機の構成は、前記請求項2の発明の構成要件に加えて、
(図3参照)前記無軸スクリュー(7)に外接する仮想の円筒に沿って、中心線(X)と平行な複数本の桟(7c)が、前記中心線(X)に関して対称に設けられていることを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明に係る洗濯脱水方法は、
(図6参照) 回転ドラム(3)の中に、回転中心線Xを共有するスクリューコンベア(4)を同心に配置し、
(図7参照)回転ドラム(3)の中に洗濯液(5)と洗濯物(6)とを入れた状態で、スクリューコンベア(4)を中心線(X)の周りに往復回動(矢印c−d)させて洗濯を行ない、
回転ドラム(3)を中心線(X)の周りに回転させて遠心脱水を行ない、
スクリューコンベア(4)を回転させて洗濯物を回転ドラムから排出(矢印b)する洗濯脱水方法おいて、
(図1参照)前記のスクリューコンベアを、螺旋区域(S)の少なくとも一部分に、中心線(X)に沿ったコンベア軸が設けられていない無軸スクリュー(7)によって構成し(注)コンベア軸については、従来例を描いた図7の符号4aの部材を参照。
(図4参照)無軸スクリュー(7)に外接する仮想の円筒に沿って、中心線Xと平行な複数本の桟(7c)を設け、
(図7参照)「回転ドラムの中に洗濯液と洗濯物とを入れた状態で、スクリューコンベアを中心線Xの周りに往復回動させる洗濯工程」で、
前記の桟によって洗濯物を掻き上げることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明を適用すると、スクリューコンベアにコンベア軸が設けられていないので、洗濯物がコンベア軸に絡み付く虞れが無く、正常な洗濯作業が円滑に遂行される。
さらに洗濯槽内の実効容積が、コンベア軸に相当する分だけ増加し、その上装置全体が軽量化し製造コストが低減される。
【0013】
請求項2の発明を前記請求項1の発明に併せて実施すると、スクリューコンベアが片持ち形に支持される構造であるから、従来例の両持形に比して構造が簡単で、装置全体が小形軽量化し、製造コストが低減される。
スクリューコンベアを片持ち形に支持すると、該スクリューコンベアが回転ドラムに接触するが、スクリューコンベアと回転ドラムとの相対的な回転速度は低いので、実用上の不具合を生じない。
【0014】
請求項3の発明を前記請求項2の発明に併せて実施すると、コンベア軸を省略された無軸スクリューを桟で補強し、特に中心線X方向の耐圧力が向上せしめられる。
さらに、無軸スクリューコンベアを往復回動させて(図7参照)洗濯作業を行うとき、洗濯物はスクリューによって中心線X方向に往復せしめられながら、桟によって繰り返し掻き上げられるので、洗濯液と良く接触して撹拌され、効率良く洗われる。
【0015】
請求項4の発明方法を適用すると、無軸スクリューに設けられた桟がスクリューを補強し、かつ、この桟が洗濯物を掻き上げるので、洗濯の効率が良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は本発明に係る洗濯脱水機の1実施形態を示す断面図である。この実施形態は、前掲の図6に示した従来例の洗濯脱水機に本発明を適用して構成した1例である。
次に、本図1が図6と異なる点、すなわち本発明を適用して改良した構成を抜粋して説明する。
本実施形態の無軸スクリュー7は、従来例におけるスクリューコンベア4に対応する構成部材であるが、スクリューコンベアの全長に亙るコンベア軸を有していない。
すなわち、螺旋区域Sには、中心線Xに沿った中心軸が無い。
本発明を実施する際、この区域に中心軸を設けることもできるが、螺旋区域Sの少なくとも一部分に無軸の箇所を形成する(螺旋区域Sを一貫する中心軸は設けない)。
【0017】
前記無軸スクリュー7の投入側に、中心軸Xと同心の駆動軸8を一体的に連設して、無軸スクリュー7を片持ち形に支持する。
該駆動軸8にコンベアプーリ8aを取り付け、ベルトを介して回転駆動し得るようになっている。
回転ドラム3は従来例におけると類似の構成部材であり、投入側の面板7aには投入用の開口7dが、排出側の面板7bに排出用の開口7eが、それぞれ形成されている。
ケース2、及びドラムプーリ3eは従来例におけると類似の構成部材である。
図1に描かれている無軸スクリュー7の単品を抽出して描いた2面図は図2のごとくである。
本実施形態においては、無軸スクリュー7の螺旋区域Sに中心軸が無いので、中心軸に洗濯物が絡み付くトラブルは発生し得ない。
また、中心軸の省略により、回転ドラム3内部の実効容積が増え、洗濯脱水機の容量が
増大する。
その上、洗濯脱水機全体として軽量化され、製造コストが低減される。
【0018】
図3は、前掲の図1に示した実施形態の改良例である。図1に比して異なる構造は、無軸スクリュー7に桟7cが設けられていることである。
桟を設けた無軸スクリューの単品を抽出して描くと図4の通りである。
無軸スクリュー7に外嵌する円筒を想定する。上記仮想の円筒に沿わしめて、中心線Xと平行な複数本の桟7cを、投入側の面板7aと排出側の面板7bとの間に配設する。
桟7cの設置個数は限定されないが、遠心脱水のために高速回転させるので、中心線Xに関する偏心モーメントを生じないように、該中心線Xに対して対称に配置することが望ましい。
斯うした作用効果から理解されるように、桟を対称に配置するとは、複数本の桟の総合重心を中心線上に位置せしめる意である。総合重心を中心線上に位置せしめながら故意に対称をずらせても本発明の技術的範囲に属する。
【0019】
前記の桟を設けると、実体の中心軸を省略した無軸スクリューが補強され、特に中心線X方向の耐圧力が充分になる。
従来例の洗濯脱水機による洗濯作業は前掲の図7のようにして行なわれたが、本実施形態においては図5のようになる。
前述の桟7cが設けられているので、無軸スクリュー7が矢印c−dのように約270度の往復回動(揺動)をすると、桟7cが洗濯物6と一緒に洗濯液5を掻き上げるので、良く撹拌されて洗濯効果が向上する。
さらに、最終工程で無軸スクリュー7により洗濯物6を排出方向に送り、排出用の開口7eから矢印bのように排出するとき、該無軸スクリュー7がX軸方向の圧縮を受ける。しかし前記の桟7cが圧縮力を支承して無軸スクリューの変形を防止する。
このように、桟7cは無軸スクリュー7の補強効果と洗濯促進効果とを果たす。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る洗濯脱水機の1実施形態を示し、模式的に描いた正面垂直断面図である。
【図2】前掲の図1に示した実施形態における無軸スクリューを抽出して描いた単品2面図である。
【図3】前掲の図1に示した実施形態の改良例を示し、模式的に描いた正面垂直断面図である。
【図4】前掲の図3に示した改良例における桟付き無軸スクリューを抽出して描いた単品2面図である。
【図5】前掲の図3に示した改良例の洗濯脱水機によって洗濯作業を行なっている状態を模式的に描いた斜視図である。
【図6】従来例の洗濯脱水機の正面断面図に、スクリューコンベアの区分符号を付記した図である。
【図7】従来例の洗濯脱水機によって洗濯作業を行なっている状態を模式的に描いた斜視図である。
【符号の説明】
【0021】
2…ケース
3…回転ドラム
3a…多孔の側板
3b…投入側の端板
3c…排出側の端板
4a…コンベア軸
4b…コンベアプーリ
4c…投入側の面板
4d…排出側の面板
5…洗濯液
6…洗濯物
7…無軸スクリュー
7a…投入側の面板
7b…排出側の面板
7c…桟
7d…投入用の開口
7e…排出用の開口
8…駆動軸
8a…コンベアプーリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転ドラムの中に、回転中心線Xを共有してスクリューコンベアが同心に配置され、
前記回転ドラムの中に洗濯液と洗濯物とを入れた状態で、スクリューコンベアを中心線の周りに往復回動させて洗濯を行ない、回転ドラムを中心線の周りに回転させて遠心脱水を行ない、スクリューコンベアを回転させて脱水済み洗濯物を回転ドラムから排出する方式の洗濯脱水機において、
前記スクリューコンベアの螺旋区域の少なくとも一部分には、中心線に沿ったスクリュー軸が設けられていないことを特徴とする洗濯脱水機。
【請求項2】
中心線に沿ったスクリュー軸を設けられていない無軸スクリューが、中心線Xと同心の駆動軸によって、片持ち形に支持されていることを特徴とする、請求項1に記載した洗濯脱水機。
【請求項3】
前記無軸スクリューに外接する仮想の円筒に沿って、中心線と平行な複数本の桟が、前記中心線に関して対称に設けられていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載した洗濯脱水機。
【請求項4】
回転ドラムの中に、回転中心線Xを共有するスクリューコンベアを同心に配置し、
回転ドラムの中に洗濯液と洗濯物とを入れた状態で、スクリューコンベアを中心線の周りに往復回動させて洗濯を行なう工程と、
回転ドラムを中心線の周りに回転させて遠心脱水を行なう工程と、
スクリューコンベアを回転させて、脱水済み洗濯物を回転ドラムから排出する工程と、を有する洗濯脱水方法おいて、
前記のスクリューコンベアを、螺旋区域の少なくとも一部分に、中心線に沿ったスクリューコンベア軸が設けられていない無軸スクリューによって構成するとともに、
該無軸スクリューに外接する仮想の円筒に沿って、中心線と平行な複数本の桟を設け、
前記の「回転ドラムの中に洗濯液と洗濯物とを入れた状態で、スクリューコンベアを中心線の周りに往復回動させる洗濯工程」で、前記の桟によって洗濯物を掻き上げることを特徴とする洗濯脱水方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−297338(P2009−297338A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−156588(P2008−156588)
【出願日】平成20年6月16日(2008.6.16)
【出願人】(390027421)株式会社東京洗染機械製作所 (47)
【Fターム(参考)】