説明

洗顔水供給装置

【課題】溶存酸素濃度と温度を調整することができ、洗顔に適した酸素溶解水を生成して供給することのできる洗顔水供給装置を提供すること。
【解決手段】水を供給する給水路2と、水中に酸素を溶解させる溶解タンク3と、給水路から供給される水を加圧して溶解タンクの内部に送り込むポンプ4と、溶解タンクで生成した酸素溶解水を溶解タンクの外部に取り出す吐水路5とを備え、溶解タンクで生成される酸素溶解水中の酸素濃度を測定する酸素濃度測定手段11と、酸素溶解水の温度を調整する温度調整手段12と、酸素溶解水中の酸素濃度を減少させる酸素減少手段13と、酸素濃度測定手段が測定した酸素濃度に基づいて酸素減少手段の作動および停止を制御し、かつ温度調整手段の作動および停止を制御する制御手段16とが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗顔に適した酸素溶解水を生成して供給する洗顔水供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水にある種の機能を付与することが行われており、たとえば、アルカリイオン水や酸性イオン水が提供されている。また、水中の溶存酸素濃度を高めた酸素富化水も提供されている。
【0003】
酸素富化水の生成装置として、下記特許文献1には、空気を送風する送風手段と、送風された空気から酸素および水を分離する気体分離手段と、分離された気体を冷却する冷却手段とを備えたものが記載されている。
【0004】
特許文献1に記載された酸素富化水生成装置では、空気中から酸素と水を分離することで、高濃度の酸素と水蒸気が接した状態となり、冷却して得られる結露水は、溶存酸素濃度が通常よりも高い酸素富化水となる。このため、水に溶けにくい酸素を水に高濃度に溶け込ませることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−93553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された酸素富化水生成装置は、溶存酸素濃度を上げることを主眼として開発されたものであり、この酸素富化水生成装置は、美容に適した溶存酸素濃度と温度に調整された水を生成することはできない。美容のために洗顔する際には、洗顔水の溶存酸素濃度や温度を調整することによって洗浄効果と肌への水分吸収を高めることができる。
【0007】
本発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、溶存酸素濃度と温度を調整することができ、洗顔に適した酸素溶解水を生成して供給することのできる洗顔水供給装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の洗顔水供給装置は、水を供給する給水路と、水中に酸素を溶解させる溶解タンクと、給水路から供給される水を加圧して溶解タンクの内部に送り込むポンプと、溶解タンクで生成した酸素溶解水を溶解タンクの外部に取り出す吐水路とを備えた洗顔水供給装置であって、溶解タンクで生成される酸素溶解水中の酸素濃度を測定する酸素濃度測定手段と、酸素溶解水の温度を調整する温度調整手段と、酸素溶解水中の酸素濃度を減少させる酸素減少手段と、酸素濃度測定手段が測定した酸素濃度に基づいて酸素減少手段の作動および停止を制御し、かつ温度調整手段の作動および停止を制御する制御手段とが設けられていることを特徴とする。
【0009】
この洗顔水供給装置においては、酸素溶解水中にオゾンガスを供給するオゾンガス供給手段が設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の洗顔水供給装置によれば、溶存酸素濃度と温度を調整することができ、洗顔に適した酸素溶解水を生成して供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の洗顔水供給装置の一実施形態を概略的に示した構成図である。
【図2】図1に示した洗顔水供給装置の溶解タンクの一形態をその周辺を含めて示した斜視図である。
【図3】図2に示した洗顔水供給装置の溶解タンクを示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明の洗顔水供給装置の一実施形態を概略的に示した構成図である。
【0013】
洗顔水供給装置1は、水を供給する給水路2と、水中に酸素を溶解させる溶解タンク3と、給水路2から供給される水を加圧して溶解タンク3の内部に送り込むポンプ4と、溶解タンク3で生成した酸素溶解水を溶解タンク3の外部に取り出す吐水路5とを備えている。
【0014】
給水路2は、ポンプ4の吸込側に接続され、溶解タンク3は、ポンプ4の吐出側に接続されている。給水路2は、水道管に接続したり、水道水を貯蔵した貯水タンクに接続したりして水の供給を可能にしている。ポンプ4は、その作動により給水路2を通じて供給される水を加圧し、加圧した水を溶解タンク3の内部に送り込む。このとき、空気が、給水路2のポンプ4側などにおいて吸引され、水中に気泡として混入し、気液混合流体として溶解タンク3の内部に送り込むこともできる。
【0015】
溶解タンク3は、ポンプ4の上方に配置されている。溶解タンク3では、水または上記気液混合流体が溶解タンク3の底部から上方に向かって噴出し、溶解タンク3の内部にあらかじめ充填されている空気や水中に混入している空気と水が混合され、撹拌される。このときの混合および撹拌によって空気中の酸素が水中に加圧下で溶解して酸素溶解水が生成する。このようにして溶解タンク3で生成した酸素溶解水は、吐水路5を通じて溶解タンク3の外部に取り出され、酸素溶解水が必要とされる供給先へと送り出される。
【0016】
図2は、図1に示した洗顔水供給装置の溶解タンクの一形態をその周辺を含めて示した斜視図である。また、図3は、図2に示した洗顔水供給装置の溶解タンクを示した断面図である。
【0017】
洗顔水供給装置1では、溶解タンク3には、図2および図3に示したものが好ましく用いられる。図2および図3に示した溶解タンク3には、その内部に連通した気体循環経路6が設けられている。気体循環経路6は、縦長箱状の溶解タンク3の上端部に形成された取出口7に一端において接続し、溶解タンク3の底部に設けられた急拡大部8に形成された取込口9に他端において接続している。急拡大部8は、断面積が上流端において最小とされ、下流側に向かって急拡大した形状を有するものであり、たとえばエジェクタなどによって形成することができる。
【0018】
酸素溶解水の生成時には、溶解タンク3では、取出口7付近と取込口9付近に圧力差が生じる。取出口7付近の圧力Pは取込口9付近の圧力Pよりも大きい(P>P)。このときの圧力差ΔP(=P−P)にしたがって、溶解タンク3内の上部などに貯留している未溶解の空気10が吸引され、取出口7から引き抜かれた後、取込口9から送り出され、急拡大部8において水または気液混合流体に導入される。
【0019】
このように、溶解タンク3は、その内部に貯留している未溶解の空気10を急拡大部8に循環させることができ、未溶解の空気10を循環させながら水中に酸素を溶解させることができる。上記圧力差ΔPが大きいほど空気10の循環量が多くなり、気液接触面積が拡大する。また、水中に導入される未溶解の空気10は気泡として取り込まれるので、水との気液接触面積はより大きくなる。このように、気体循環経路6によって、溶解タンク3の内部に貯留している未溶解の空気10を循環させながら水中に気泡として送り込むことができるので、水中への酸素の溶解効率が高くなる。
【0020】
また、取出口7が溶解タンク3の上端部に形成されているので、未溶解の空気10がなくなるまで長時間の循環運転が可能となる。しかも、未溶解の空気10を水に混合させる分、水の体積流量が増加し、流速が速くなり、気液の撹拌がさらに良好に行われることになる。
【0021】
また、取込口9が溶解タンク3の底部に配置されているので、溶解タンク3の内部における水と空気の接触距離が比較的長くなり、接触時間も長くなるため、水中への酸素の溶解効率がさらに高くなる。
【0022】
また、取込口9は急拡大部8に接続されているので、急拡大部8で発生する渦流によって空気10の吸引圧が高まり、空気10の循環量が増加する。しかも、急拡大部8における圧力勾配が剪断力として働き、水に混入させる空気10の気泡が微細化される。したがって、気液接触面積はさらに大きくなり、水中への酸素の溶解効率がさらに高くなる。
【0023】
そして、図1に示した洗顔水供給装置1では、溶解タンク3の内部で生成される酸素溶解水中の酸素濃度を測定する酸素濃度測定手段11と、酸素溶解水の温度を調整する温度調整手段12が設けられている。酸素濃度測定手段11として酸素濃度センサー11aが、溶解タンク3の内部に設けられ、また、温度調整手段12としてヒーター12aが、溶解タンク3の内部に設けられている。ヒーター12aは、通電により溶解タンク3の内部において酸素溶解水を加温することができる。
【0024】
さらに、洗顔水供給装置1では、酸素溶解水中の酸素濃度を減少させる酸素減少手段13が設けられている。酸素減少手段13は、バブリングを行って酸素溶解水中の酸素濃度を減少させるエアーポンプ14と、エアーポンプ14に一端が接続され、他端が吐水路5の下流側に接続されたエアー配管15とから形成されている。これらの酸素濃度センサー11a、ヒーター12aおよびエアーポンプ14は、制御手段16と電気的に接続されている。
【0025】
洗顔水供給装置1では、制御手段16が設けられ、制御手段16は、酸素濃度測定手段11としての酸素濃度センサー11aが測定した酸素濃度に基づいて酸素減少手段13の作動および停止を制御する。また、制御手段16は、温度調整手段12としてのヒーター12aの作動および停止を制御する。制御手段16には、このような酸素減少手段13および温度調整手段12の動作制御を行う、あらかじめプログラミングされたマイクロコンピューターが組み込まれている。
【0026】
肌に対しては洗顔水中の溶存酸素濃度が高すぎても低すぎても浸透しにくいため、肌の水分を高く維持することのできる溶存酸素濃度に酸素溶解水を調整してすすぎや、シート状のものなどに吸収させて接触させることが肝要である。そこで、洗顔水供給装置1では、酸素濃度センサー11aによって溶解タンク3で生成される酸素溶解水中の酸素濃度を測定し、その測定データを制御手段16に送信する。制御手段16では、洗顔水として有効とされる酸素溶解水の溶存酸素濃度と水温があらかじめ設定されている。好ましい溶存酸素濃度は、7〜12mg/L程度、また、水温は常温から40℃の間である。制御手段16は、酸素濃度センサー11aから送信された溶存酸素濃度に関する測定データが好ましい上限を超えたときは、エアーポンプ14を作動させ、エアー配管15を通じて空気を吐水路5を流れる酸素溶解水に送り込ませる。エアーポンプ14から供給される空気によるバブリングにより酸素溶解水の溶存酸素濃度が減少する。
【0027】
水温は、必ずしも溶解タンク3内の酸素溶解水の温度でなくともよく、酸素溶解水の原料となる水道水または貯水タンク内の原水の温度を測定し、その測定データに基づいて制御手段16は、ヒーター12aを作動させることができる。もちろん、酸素濃度センサー11aと同様に、溶解タンク3内の酸素溶解水の水温を測定する温度センサーを溶解タンク3の内部に設け、測定データを制御手段16に送信するようにすることも可能である。たとえば、原水の温度が冬場のときのように低く、1℃程度のときには、ヒーター12aを作動させ、溶解タンク3の内部に供給される水を適温まで加温することができる。また、原水の温度が低い場合は、溶存酸素濃度が高くなるので、酸素濃度センサー11aが測定する酸素濃度に基づいてエアーポンプ14を作動させ、バブリングにより溶存酸素濃度を低下させる。一方、夏場のように、原水の溶存酸素濃度が7mg/L未満に低くなる場合には、エアーポンプ14を停止させ、水中への酸素の溶解を促進させ、溶存酸素濃度を高くする。
【0028】
また、化粧を洗い流す際の洗顔では、化粧品の脂質や皮脂は、酸化により親水化すると洗い流しやすくなるので、洗顔水供給装置1では、ポンプ4による水または気液混合流体の送給量を高めて溶存酸素濃度が高い酸素溶解水を供給する。一方、すすぎの際には、制御手段16がヒーター12aを作動させ、水温を体温程度に上げ、また、溶存酸素濃度が飽和濃度よりも10〜20%程度高くなるように、制御手段16が酸素減少手段13を作動させて溶存酸素濃度を調整し、酸素溶解水を供給する。このとき、酸素溶解水の溶存酸素濃度が低い場合には、ポンプ4による水または気液混合流体の送給量を高めて酸素溶解水を生成し、必要に応じて酸素減少手段13を作動させて溶存酸素濃度を調整して酸素溶解水を供給する。このようにすることによって、肌に浸透しやすく、洗顔後の肌の水分を高く維持することが可能となる。このために、制御手段16では、化粧を洗い流す際の洗顔とすすぎとに分けて溶存酸素濃度および温度の調整を行うことができるように設定することができる。また、制御手段16では、ポンプ4の動作を、酸素濃度センサー11aが測定した酸素溶解水の溶存酸素濃度に基づいて制御するように設定することもできる。
【0029】
このように、洗顔水供給装置1は、溶存酸素濃度と温度を調整することができ、洗顔に適した酸素溶解水を生成して供給することができる。
【0030】
なお、洗顔水供給装置1では、図1に示したように、酸素溶解水中にオゾンガスを供給するオゾンガス供給手段17を設けることもできる。オゾンガス供給手段17は、たとえばオゾンガスの発生源に連通するオゾンガス供給配管18の一端を吐水路5のエアー配管15よりも上流側に接続し、接続部にバルブ19を設けたものが例示される。もちろん、オゾンガス供給手段17は、吐水路5に接続するのではなく、溶解タンク3に接続することもできる。オゾンガス供給手段17によって、酸素溶解水中にオゾンガスを供給することができ、殺菌などの機能を酸素溶解水に付与することができる。
【0031】
実際に、洗顔水供給装置1を用いて洗顔のすすぎを行い、溶存酸素濃度の違いによる肌の水分量を比較した。すすぎには、水温38℃で溶存酸素濃度が10mg/Lの酸素溶解水と、同じ水温で溶存酸素濃度が6mg/Lの酸素溶解水を使った。溶存酸素濃度が10mg/Lの酸素溶解水では肌の水分量が34%となり、溶存酸素濃度が6mg/Lのときは27%であった。肌の水分量が1.25倍上昇した。
【0032】
もちろん、本発明は、以上の実施形態によって限定されるものではない。溶解タンクの構成や構造、酸素濃度測定手段および温度調整手段の種類、そして、制御手段の構成や構造などの細部については様々な態様が可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 洗顔水供給装置
2 給水路
3 溶解タンク
4 ポンプ
5 吐水路
11 酸素濃度測定手段
12 温度調整手段
13 酸素減少手段
16 制御手段
17 オゾンガス供給手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を供給する給水路と、水中に酸素を溶解させる溶解タンクと、前記給水路から供給される水を加圧して前記溶解タンクの内部に送り込むポンプと、前記溶解タンクで生成した酸素溶解水を前記溶解タンクの外部に取り出す吐水路とを備えた洗顔水供給装置であって、
前記溶解タンクで生成される酸素溶解水中の酸素濃度を測定する酸素濃度測定手段と、酸素溶解水の温度を調整する温度調整手段と、酸素溶解水中の酸素濃度を減少させる酸素減少手段と、前記酸素濃度測定手段が測定した酸素濃度に基づいて前記酸素減少手段の作動および停止を制御し、かつ前記温度調整手段の作動および停止を制御する制御手段とが設けられている
ことを特徴とする洗顔水供給装置。
【請求項2】
酸素溶解水中にオゾンガスを供給するオゾンガス供給手段が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の洗顔水供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−22496(P2013−22496A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158278(P2011−158278)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】