津波シェルター及び構築工法
【課題】津波が押し寄せた際に、多数の避難民を同時に避難させることが出来て、しかも、避難の際に混乱が生じることがなく、収容しきれない避難民の身体に重大な損傷を及ぼしてしまうことがない様な津波シェルターと、その構築工法の提供。
【解決手段】避難塔(10)と収容篭(20)を有しており、前記避難塔(10)は、長円の両端部が尖った楕円形の断面形状を有し、当該長円の尖った形状の両端部の何れか一方が海側を向いて配置されており、楕円形断面の中央部には中空部(11)を形成しており、中央に中空部(11)を有する長円の両端部が尖った楕円形断面の単位部材(U1、U2)が複数積層されており、下方には開口部(12)が形成されている。
【解決手段】避難塔(10)と収容篭(20)を有しており、前記避難塔(10)は、長円の両端部が尖った楕円形の断面形状を有し、当該長円の尖った形状の両端部の何れか一方が海側を向いて配置されており、楕円形断面の中央部には中空部(11)を形成しており、中央に中空部(11)を有する長円の両端部が尖った楕円形断面の単位部材(U1、U2)が複数積層されており、下方には開口部(12)が形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、津波が発生した際に、避難民を収容して津波から避難させるための津波シェルターと、当該津波シェルターの構築工法に関する。
【背景技術】
【0002】
津波による人的被害は、適正な避難設備、すなわち津波シェルターがあれば、最小限に抑制することが可能である。
そのため、従来から、種々の津波シェルターが提案されている。
例えば、可撓性部材によって設置台に繋がれた球形の津波シェルターが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
しかし、係る津波シェルターは、収容人員が少なく、多数の避難民の安全を確保することが出来ないという問題を有している。また、津波が押し寄せた際における膨大な衝撃エネルギーにより、津波シェルターが破損する恐れがあり、収容人員に深刻な損傷をもたらしてしまう可能性が存在する。
【0003】
これに対して、2つの支柱を有する台座と、当該2つの支柱に沿って且つ津波の水位によって浮上可能な避難コンテナを有する津波シェルターが提案されている(特許文献2参照)。
係る津波シェルターは、比較的多人数を避難コンテナ内に収容することは可能であり、津波が押し寄せた際にその衝撃エネルギーを分散することも可能である。
しかし、避難コンテナの出入口が比較的小さいため、多数の避難民が避難してきた際に、当該出入口で混乱が生じ、避難コンテナ内に収容することが困難になってしまう恐れがある。
また、避難コンテナの出入口を閉鎖しないと必要な浮力が得られないため、避難民が収容しきれていない状態でも、当該出入口を無理やり閉鎖しなければならない事態が予想される。その様な事態が生じた際には、出入口を閉鎖した際に、収容しきれない避難民の身体に重要な損傷(例えば、剪断等)を与えてしまう恐れが存在する。
さらに、津波のとき以外の管理が必要であり、適正な管理を怠ると第三者が不法に逗留する恐れがあり、あるいは、子供の遊び場と化してしまう可能性がある。しかし、適正な管理を行うためには、多大な人件費等が必要になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4084408号公報
【特許文献2】特許第4609955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、津波が押し寄せた際に、多数の避難民を同時に避難させることが出来て、しかも、避難の際に混乱が生じることがなく、収容し切れなかった避難民の身体に重大な損傷を及ぼしてしまうことがない様な津波シェルターと、その構築工法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の津波シェルター(100)は、避難塔(10)と(避難民を収容する)収容篭(20)を有しており、
前記避難塔(10)は、長円の両端部が尖った楕円形の断面形状を有し、当該長円の尖った形状の両端部の何れか一方が海側を向いて配置されており、楕円形断面の中央部には中空部(11:断面形状は、例えば円形、正方形)を形成しており、中央に中空部(11:断面形状は、例えば円形、正方形)を有する長円の両端部が尖った楕円形断面の単位部材(避難塔用ユニットU1、U2)が複数積層されており、下方には開口部(12)が形成されており、
前記収容篭(20)は前記避難塔(10)の断面中央部の中空部(11)の断面形状(例えば円形、正方形)と同一の断面形状であり、前記収容篭(20)の断面積は前記避難塔(10)の断面中央部の中空部(11)の断面積よりも小さく、
前記収容篭(20)は上下方向に2つの区画(20a、20b)に仕切られており、下方の区画(20b)は密閉された空間であり、上方の区画(20a)は避難民を収容する収容スペースとして構成されており、
上方の区画(20a)には開口(21)が設けられており、当該開口(21)には上下動可能な格子(22)が設けられており、前記開口(21)は前記避難塔(10)の下方に形成された開口部(12)と整合した位置に形成されていることを特徴としている。
ここで、前記格子(22)は、上方位置(開口が格子で閉鎖されていない状態)と下方位置(開口が格子で閉鎖されている状態)で固定可能であり、前記収容篭(20)を前記避難塔(10)の中空部(11)最下方位置に固定する固定部材(40)が設けられ、当該固定部材(40)は前記格子(22)が下方位置で固定されると解除されて収容篭(20)を避難塔(10)の中空部(11)内を垂直方向に移動可能にする解除装置(42〜47)を備えているのが好ましい。
【0007】
本発明の津波シェルター(100)の構築工法は、基礎(1)に設けたアンカー(2)頭部にカプラー(5)により剛性を有する棒状部材(6:例えば、鋼棒)を接続する工程と、
前記棒状部材(6)を挿入可能な貫通孔(ha)を形成し且つ中央に中空部(11:断面形状は、例えば円形、正方形)を有する長円の両端部が尖った楕円形断面の単位部材(避難塔用ユニットU1、U2)を、前記貫通孔(ha)に前記棒状部材(6)を挿入した状態で複数積層する工程を有し、
下方の単位部材(避難塔用ユニットU2)には開口部(12)が形成されており、
所定数の単位部材(避難塔用ユニットU1、U2)を積層した後、前記棒状部材(6)に張力を付加した状態で最上層の単位部材(避難塔用ユニットU1)に定着する工程と、
単位部材(避難塔用ユニットU1、U2)中央に形成された中空部(11:断面形状は、例えば円形、正方形)に、収容篭(20)を挿入する工程を有し、
前記収容篭(20)は前記避難塔(10)の断面中央部の中空部(11)の断面形状(例えば円形、正方形)と同一の断面形状であり、前記収容篭(20)の断面積は前記避難塔(10)の断面中央部の中空部(11)の断面積よりも小さく、
前記収容篭(20)は上下方向に2つの区画(20a、20b)に仕切られており、下方の区画(20b)は密閉された空間であり、上方の区画(20a)は避難民を収容する収容スペースとして構成されており、
上方の区画(20a)には開口(21)が設けられており、当該開口(21)には上下動可能な格子(22)が設けられており、前記開口(21)は前記避難塔(10)の下方に形成された開口部(11)と整合した位置に形成されていることを特徴としている。
ここで、前記格子(22)は、上方位置(開口が格子で閉鎖されていない状態)と下方位置(開口が格子で閉鎖されている状態)で固定可能であり、前記収容篭(20)を前記避難塔(10)の中空部(11)最下方位置に固定する固定部材(40)が設けられ、当該固定部材(40)は前記格子(22)が下方位置で固定されると解除されて収容篭(20)を避難塔(10)の中空部(11)内を垂直方向に移動可能にする解除装置(42〜47)を備えているのが好ましい。
【0008】
また本発明の津波シェルター(101)は、避難塔(10A)と(避難民を収容する)収容篭(20)を有しており、
前記避難塔(10A)は、傾斜面(例えば、丘陵地帯の法面30)に掘削された垂直方向に延在する溝内(30C)に固定されており、断面円形であり、円形断面の中央部には中空部(11A:断面形状は、例えば円形)を形成しており、中央に中空部(11A:断面形状は、例えば円形)を有する断面円形の単位部材(避難塔用ユニットUA1、UA2)が複数積層されており、下方には開口部(12A)が形成されており、
前記収容篭(20)は前記避難塔(10A)の断面中央部の中空部(11A)の断面形状(例えば円形)と同一の断面形状であり、前記収容篭(20)の断面積は前記避難塔(10A)の断面中央部の中空部(11A)の断面積よりも小さく、
前記収容篭(20)は上下方向に2つの区画(20a、20b)に仕切られており、下方の区画(20b)は密閉された空間であり、上方の区画(20a)は避難民を収容する収容スペースとして構成されており、
上方の区画(20a)には開口(21)が設けられており、当該開口(21)には上下動可能な格子(22)が設けられており、前記開口(21)は前記避難塔(10A)の下方に形成された開口部(12A)と整合した位置に形成されていることを特徴としている。
ここで、前記格子(22)は上方位置(開口が格子で閉鎖されていない状態)と下方位置(開口が格子で閉鎖されている状態)で固定可能であり、前記収容篭(20)を前記避難塔(10A)の中空部最下方位置に固定する固定部材(40)が設けられ、当該固定部材(40)は前記格子(22)が下方位置で固定されると解除されて収容篭(20)を避難塔(10A)の中空部(11A)内を垂直方向に移動可能にする解除装置(42〜47)を備えているのが好ましい。
【0009】
そして、係る津波シェルター(請求項2の津波シェルター101)の構築工法は、
傾斜面(例えば、丘陵地帯の法面30)垂直方向に延在する溝(30C)を掘削する工程と、
前記垂直方向に延在する溝(30C)の最も地中側の領域に基礎(1)を構築し、当該基礎にアンカー(2)を打つ工程と、
基礎(1)に設けたアンカー(2)頭部にカプラー(5)により剛性を有する棒状部材(6:例えば、鋼棒)を接続する工程と、
前記棒状部材(6)を挿入可能な貫通孔を形成し且つ中央に中空部(断面形状は、例えば円形、正方形)を有する断面円形の単位部材(避難塔用ユニットUA1、UA2)を、前記貫通孔に前記棒状部材(6)を挿入した状態で複数積層する工程を有し、
下方の単位部材(避難塔用ユニットUA2)には開口部(12A)が形成されており、
所定数の単位部材(避難塔用ユニットUA1)を積層した後、前記棒状部材(6)に張力を付加した状態で最上層の単位部材(避難塔用ユニットUA1)に定着する工程と、
所定数の単位部材(避難塔用ユニットUA1、UA2)を積層して構成された避難塔(10A)の側方及び後方に固化材(9)を打設して、垂直方向に延在する前記溝(30C)が形成された傾斜面(例えば、丘陵地帯の法面30)に固定する(一体化する)工程と、
単位部材(避難塔用ユニッUA1、UA2)中央に形成された中空部(11A:断面形状は、例えば円形、正方形)に、収容篭(20)を挿入する工程を有し、
前記収容篭(20)は前記避難塔(10A)の断面中央部の中空部(11A)の断面形状(例えば円形、正方形)と同一の断面形状であり、前記収容篭(20)の断面積は前記避難塔(10A)の断面中央部の中空部(11A)の断面積よりも小さく、
前記収容篭(20)は上下方向に2つの区画(20a、20b)に仕切られており、下方の区画(20b)は密閉された空間であり、上方の区画(20a)は避難民を収容する収容スペースとして構成されており、
上方の区画(20a)には開口(21)が設けられており、当該開口(21)には上下動可能な格子(22)が設けられており、前記開口(21)は前記避難塔(10A)の下方に形成された開口部(12A)と整合した位置に形成されていることを特徴としている。
ここで、前記格子(22)は上方位置(開口が格子で閉鎖されていない状態)と下方位置(開口が格子で閉鎖されている状態)で固定可能であり、前記収容篭(20)を前記避難塔(10A)の中空部最下方位置に固定する固定部材(40)が設けられ、当該固定部材(40)は前記格子(22)が下方位置で固定されると解除されて収容篭(20)を避難塔(10A)の中空部(11A)内を垂直方向に移動可能にする解除装置(42〜47)を備えているのが好ましい。
【0010】
本発明の実施に際して、避難塔(10A)における開口部(12A)の下端(12Ab)を、地表(Gf)よりも(寸法Hbだけ)高くして、地表(Gf)と開口部(12A)の下端(12Ab)の間の領域に、階段(15:あるいはスロープ)を設け、開口部(12A)の下端(12Ab)の地表(Gf)からの高さ方向寸法(Hb)が、人が水中を移動可能な限界の水位(D)よりも大きな数値であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
上述する構成を具備する本発明によれば、前記収容篭(20)の内径を例えば4mとすれば、その床面積は10m2以上(12.56m2)となり、収容時の大人一人の占有面積を0.1m2としても、約100人の避難民を収容することが出来る。ここで、例えばヒップ90cm(=0.9m)の人を考慮し、その占有面積が円形に係る面積であると仮定して、円周0.9mの円の断面積を求めると0.07m2となる。係る面積(0.07m2)は、0.1m2よりも小さい数値である。
ここで、前記収容篭(20)は上下方向に2つの区画(20a、20b)に仕切られており、下方の区画(20b)は密閉された空間であるため、当該密閉空間の高さ寸法が約0.8mであれば約10tの浮力を確保することが出来る。すなわち、収容篭(20)の下方区画(20b)によって、約100人の避難民(一人75kgとして、総重量7.5t)の総重量を上回る浮力が確保することが出来る。
そのため、津波が押し寄せた際に、収容篭(20)は津波の水面よりも高い位置まで直ちに浮上することが可能である。
【0012】
そして、収容篭(20)内に水が浸入しても、収容篭(20)が浮上する際に、鉄格子(22)の隙間から当該浸入した水が排出されるので、収容篭(20)に避難した人々が溺れてしまうことはない。
さらに、収容篭(20)内に水が浸入しても、収容篭(20)の開口(21)よりも上方の領域には空気溜りが形成されるので、収容篭(20)内に避難した人々が溺死してしまうことが防止される。
【0013】
本発明によれば、収容篭(20)は避難塔(10)の中空部(11)内に挿入されているため、収容篭(20)の下方区画(20b)の浮力が作用した際には、当該避難塔(10)内の中空部(11)内を垂直方向上方に移動する。換言すれば、収容篭(20)は避難塔(10)外に流出してしまうことはなく、そのため、津波により流されてしまうことが防止される。
ここで、開口部(21)の上縁を収容篭(20)の上方区画(20a)の天井よりも下方に位置されると、津波により開口部(開口21を閉鎖する格子22の隙間)から水が浸入しても、開口部(21)の上縁から収容篭(20)の上方区画(20a)の天井の間の空間に空気溜まりが形成されるので、避難民の呼吸は確保される。
仮に、開口部(21)の上縁が収容篭(20)の上方区画(20a)の天井と同一の(高さ方向)位置であっても、開口部(開口21を閉鎖する格子22の隙間)から水が浸入しても、収容篭(20)は避難塔(10)内で直ちに浮上し、浸入した水は開口部(開口21を閉鎖する格子22の隙間)から収容篭(20)外に排出される。そして、上述した様に、収容篭(20)には十分な浮力が作用し、津波が押し寄せた際に直ちに浮上するので、収容された避難民が浸水により溺れてしまうことが防止される。
【0014】
また、本発明によれば、前記避難塔(10)の下方には開口部(12)が形成され、前記収容篭(20)の上方の区画(20a)には開口(21)が設けられており、収容篭(20)の開口(21)は避難塔(10)の開口部(12)と整合した位置に形成されているので、避難民は、避難塔(10)の開口部(12)及び収容篭(20)の開口(21)を介して、収容篭(20)の内部に避難することが出来る。
そして、避難塔(10)の開口部(12)及び収容篭(20)の開口(21)を、津波等の心配がない日常時には開放したままにしておくことにより、収容篭(20)の内部は外部から常時視認可能な状態にすることが出来る。そして、常時視認可能な状態にすることにより、収容篭(20)の内部を浮浪者等が不法占拠、不法逗留することが出来なくなり、また、収容篭(20)の内部が子供達の遊び場となってしまうことも防止することが出来る。
【0015】
本発明において、傾斜面(30:例えば、丘陵地帯の法面)垂直方向に延在する溝(30C)を掘削し、単位部材(避難塔用ユニットUA1、UA2)を積層して構成された避難塔(10A)の側方及び後方に固化材(9)を打設して、垂直方向に延在する前記溝(30C)を形成された傾斜面(例えば、丘陵地帯の法面30)に固定(一体化)すれば、津波による浮遊物のみならず、津波に対しても耐性が向上し、防災塔の倒壊や破損を防止することが出来る。
【0016】
ここで、収容篭(20)の開口(21)で人が倒れている状態(転んだ等の理由により、横たわっている状態)で、収容篭(20)が避難塔(10)の中空部(11)内を垂直方向上方に浮上すると、避難塔(10)の開口部(12)と収容篭(20)の開口(21)で挟まれ、剪断されて、重大な損傷を受ける可能性が存在する。
しかし、本発明において、前記収容篭(20)に固定部材(40)を設け、前記格子(22)が下方位置で固定されると収容篭(20)の固定部材(40)は解除装置(42〜47)により解除されて、収容篭(20)は避難塔(10)の中空部(11)内を垂直方向上方に移動(浮上)する様に構成すれば、換言すれば、前記収容篭(20)は、前記格子(22)が下方位置で固定されない限りは、避難塔(10)の中空部(11)内を垂直方向上方に移動(浮上)しない様に構成すれば、収容篭(20)の開口(21)で人が倒れている状態では、格子(22)を下方位置まで降ろすことが出来ないので、格子(22)を下方位置で固定することが出来ず、収容篭(20)は垂直方向上方に移動(浮上)することができない。そのため、収容篭(20)の開口(21)で倒れている人が、避難塔(10)の開口部(12)と収容篭(20)の開口(21)で挟まれ、剪断されることはなく、剪断により重大な損傷を受ける恐れもない。
【0017】
また本発明において、避難塔(10A)における開口部(12A)の下端(12Ab)を地表(Gf)よりも(寸法Hbだけ)高くして、地表(Gf)と開口部(12A)の下端(12Ab)の間の領域に、階段(15:あるいはスロープ)を設け、開口部12Aの下端12Abの地表Gfからの高さ方向寸法Hbの値を、人が水中を移動可能な限界の水位(D)よりも大きくすれば、当該水位(D)を超えると、避難民は水に脚を取られてしまい、避難塔10内に近接することが出来なくなる。
収容篭(20)内の避難民は、開口部(12A)の下端(12Ab)に浸水レベルが到達した段階で格子(22)を閉鎖し、例えば移動解除装置(400:図7参照)によって収容篭(20)を浮上可能な状態にせしめることにより、津波の難から逃れることができる。そして、避難塔(10A)の直近に到達しながら、収容篭(20)内にたどり着けない避難民を待って、収容篭(20)内に避難した避難民の安全が脅かされる事態を防止することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態の斜視図である。
【図2】第1実施形態における避難塔の縦断面図である。
【図3】第1実施形態の避難塔を構成する避難塔用ユニットの平面図である。
【図4】第1実施形態の避難塔において、最下段に配置する避難塔用ユニットの平面図である。
【図5】第1実施形態における収容篭の斜視図である。
【図6】第1実施形態において、避難塔のレールと収容篭の車輪との係合状態を示した平面図である。
【図7】第1実施形態において、収容篭を避難塔に係止するロック機構の参考例を示す説明図である。
【図8】第1実施形態の第1変形例に係る避難塔および収容篭を示す水平断面図である。
【図9】第1実施形態の第2変形例に係る避難塔の水平断面図である。
【図10】第1実施形態の第3変形例に係る収容篭の縦断面図である。
【図11】図10のX−X矢視断面図である。
【図12】第1実施形態の第4変形例に係る避難塔の縦断面図である。
【図13】第1実施形態の避難塔の基礎及びアンカーを打設する工程を示す工程図である。
【図14】図13の工程に続く工程を示す工程図である。
【図15】図14の工程に続く工程を示す工程図である。
【図16】図15の工程に続く工程を示す工程図である。
【図17】第1実施形態の避難塔の設置箇所を説明する平面図である。
【図18】本発明の第2実施形態の斜視図である。
【図19】図18の矢印Y-Y方向からの斜視部分断面図である。
【図20】第2実施形態に係る避難塔を築造するために溝を掘削する工程を示す工程図である。
【図21】図20のY-Y矢視断面図である。
【図22】図20、図21で示す工程に続く工程を示す工程図である。
【図23】図22のY-Y矢視断面図である。
【図24】図22、図23で示す工程に続く工程を示す工程図である。
【図25】図24のY-Y矢視断面図である。
【図26】図24、図25で示す工程に続く工程を示す工程図である。
【図27】図26のY-Y矢視断面図である。
【図28】図25、図27で示す工程に続く工程を示す工程図である。
【図29】図28のY-Y矢視断面図である。
【図30】図28、図29で示す工程に続く工程を示す工程図である。
【図31】図30のY-Y矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
先ず、図1〜図7に基づいて本発明の第1実施形態を説明する。
図1において、全体を符号100で示す津波シェルターは、避難塔10と、避難民を収容する収容篭20を備えている。
【0020】
避難塔10は、全体が楕円形状の水平断面形状を有している。ここで、避難塔10の断面形状は、より正確には、長軸の両端部が尖った楕円形(あるいは、2つの円弧を繋ぎ合わせた形状)である。
図1、図2において、避難塔10は、中央に円形中空部11を有する避難塔用ユニットU1、U2(ユニットU2は、最下層の1層のみ)が複数積層されて構成されている。ユニットU1、U2の平面形状あるいは水平断面形状は、長軸の両端部が尖った楕円形状である。
複数の避難塔用ユニットU1の形状は共通しており、図示の例では、6個用いられている。以下で述べる様に、最下層のユニットU2は、避難塔用ユニットU1とは若干異なっている。
【0021】
避難塔用ユニットU1の平面(上面)を示す図3において、避難塔用ユニットU1は、その中央部に、ユニットU1の表裏面を貫通する中空部11uが形成されている。ユニットU1が積層されることにより、中空部11uも積層されて、避難塔10の中空部11を形成している。
図3で示す避難塔用ユニットU1の平面(上面)において、中空部11uを挟んで相互に対称な位置には、1対の貫通孔haが形成されている。この貫通孔haには、後述する鋼棒6が挿通される。
【0022】
最下層の避難塔用ユニットU2の平面(上面)を示す図4において、最下層の避難塔用ユニットU2には、一方の部分円弧側に投影面が矩形の開口部12(図1参照)が形成されている。係る開口部12が形成されている点で、最下層の避難塔用ユニットU2は、その他の避難塔用ユニットU1に対して異なっている。
避難塔用ユニットU2には、1対の貫通孔haと、1対の逃げ穴hbが形成されている。1対の逃げ穴hbは図4では点線で示されており、1対の貫通孔ha(図4では実線で示されている)と同心位置に形成されている。
図2、図15で示す様に、避難塔用ユニットU2の逃げ穴hbは、アンカー2と鋼棒6を接続するカプラー5(接続部材)と干渉することを避けるために形成されている。
【0023】
図5において、収容篭20は、全体が円筒状に形成され、避難民を収容する収容スペース(上方区画:以下、「避難民収容スペース」と言う)20aと、密閉された空間(下方区画:以下、「密閉空間」と言う)20bとを設けており、上下方向について二分されている。
図示の実施形態においては、例えば、収容篭20の内径を4m、密閉空間20bの高さH20bを0.8mに設定している。その様な数値に設定すると、収容篭20の床面積は10m2以上(12.56m2)となり、避難民一人が占有するスペースが0.1m2としても、約100人の避難民を収容することが出来る。
また、密閉空間20bの高さH20bが約0.8mであれば、約10tの浮力を確保することが出来る。約100人の避難民の総重量を7.5t(一人75kgと推定)とすれば、収容篭20の密閉空間20bによって、約100人の避難民の総重量を上回る浮力が確保出来るのである。そのため、津波が押し寄せた際に、収容篭20が約100人の避難民を収容していても、密閉空間20bの浮力により、収容篭20は津波の水面よりも高い位置まで直ちに浮上することが出来る。
【0024】
図2で示すように、避難塔10は、地表Gf近傍に打設された基礎1に固定されている。
地表Gf近傍に打設された基礎1には、地中に打設した1対のアンカー2の頭部が、公知の手段(例えば、アンカープレート)によって固定されている。アンカー2の頭部は、カプラー5により、鋼棒6の下端と接続されている。
明確には図示させていないが、例えば、アンカー2の頭部には雄ねじが形成されており、カプラー5の内壁面にはアンカー2の頭部の雄ねじと螺合する雌ねじが形成されており、鋼棒6の下端にもカプラー5内壁面の雌ねじと螺合する雄ねじが形成されている。そして、アンカー2頭部の雄ねじと鋼棒6下端の雄ねじが、共に、カプラー5内壁面の雌ねじに螺合することによって、アンカー2頭部と鋼棒6下端が接続される。
【0025】
図2において、避難塔用ユニットU1(図示の例では6個)及び最下層の避難塔用ユニットU2に形成されている貫通孔ha(図3、図4参照)には、ユニットU1、U2が基礎1の上面に積層された状態において、鋼棒6が挿通される。
そして、鋼棒6の上端を、アンカー2の頭部と同様に、従来公知の態様で鋼棒6に張力を付加しつつ、プレート7、アンカーヘッド8により固定することで、基礎1の上面とプレート7とによって挟まれた全てのユニットU2、U1は一体的に結合され、基礎1の上面に堅固に固定される。
図2において、2点鎖線で示すのは開口部12(図1参照)である。開口部12は、避難塔用ユニットU2に設けられており、投影面が矩形である。
【0026】
図1において、避難塔10(最下層の避難塔用ユニットU2)に設けた開口部12は、水平方向寸法が符号W12で示されており、垂直方向寸法が符号H12で示されている。
図5において、収容篭20は矩形の開口21を有しており、開口21は密閉空間20bの上端から上方(避難民収容スペース側)に延在している。収容篭20の開口21における水平方向寸法を符号W21、垂直寸法を符号H21で示す。図示の実施形態では、収容篭20の開口21における水平方向寸法W21、垂直寸法H21は、避難塔用ユニットU2に形成された開口部12における投影面の水平方向寸法W12、垂直方向寸法H12と同値である。
また、図示の実施形態では、開口21の上端は、収容篭20の天蓋20tよりも下方に位置している。しかし、開口21の上端を、収容篭20の天蓋20tと面一にしても良い。
【0027】
図6において、避難塔10中央に形成された中空部11の内周面11fには、1対のガイドレール13が取り付けられている。図6では、1対のガイドレール13の一方のみを図示している。
図6では図示されていないが、1対のガイドレール13は、中空部11における垂直軸(避難塔10の中心)に対して対称な位置に取り付けられており、中空部11の上端から下端に亘って、垂直方向に延在している。
【0028】
また図6において、収容篭20の外周面20fには1対のブラケット25が取り付けられている。図6では、1対のブラケット25の一方のみを図示している。
図6では明示されていないが、一対のブラケット25は、収容篭20の垂直軸(中心)に中心に対して対称な位置に取り付けられている。そして、図6で示すように、ブラケット25には、車輪(ころ:ローラー)26が回転自在に軸支されている。
図示の実施形態では、ガイドレール13及び車輪(ころ:ローラー)26を取り付けるために、避難塔10中央に形成された中空部11の内径寸法(4.5m)を、収容篭20の外径(4.0m)よりも若干(0.5m)大きく設定している。
【0029】
収容篭20と中空部11の断面形状が円形であるため、ガイドレール13及び車輪(ころ:ローラー)26を有していなければ、収容篭20が中空部11内を浮上して、再び地上側に降下する間に、中空部11の円周方向位置と収容篭20の円周方向位置とが相対移動してしまい、収容篭20の開口21と避難塔10の開口部12が整合せず、津波が収まった後、収容篭20が地上まで降下した際に、収容篭20内の避難民が避難塔10から出られなくなる恐れがある。
ガイドレール13及び車輪(ころ:ローラー)26を有することにより、収容篭20が中空部11内を浮上して、再び地上側に降下する際に、中空部11の円周方向位置と収容篭20の円周方向位置とが相対移動せず、収容篭20が地上側に降下した場合に、開口21と避難塔10の開口部12が整合することが保証される。
【0030】
図5で示すように、収容篭20には、開口21に格子22が設けられている。
第1実施形態に係る津波シェルター100では、収容篭20は、避難塔10の中空部11内の下方位置(避難塔10の開口部12と収容篭20の開口21とが整合する位置)に固定されており、その状態では避難塔10の中空部11内を浮上しない様になっている。
そして、格子22で開口21を閉鎖すると(格子22が開口21の下方位置で固定されると)、収容篭20の固定状態が解除されて、避難塔10の中空部11内を浮上する様に構成されている。
【0031】
図7は移動解除装置400の参考例を示しており、移動解除装置400は、収容篭20を避難塔10の中空部11内の下方位置(避難塔10の開口部12と収容篭20の開口21とが整合する位置)に固定し、格子22で開口21を閉鎖すると(格子22が開口21の下方位置で固定されると)固定を解除して、垂直方向に移動可能にせしめる機能を有している。移動解除装置400は、収容篭20の上端近傍に設けられている。
以下、図7を参照して、移動解除装置400の参考例について説明する。
なお、図7において、符号7Hで示す領域は平面を示しており、符号7Vで示す領域は立面を示している。
【0032】
移動解除装置400は、収容篭20の側縁部において、解除レバー40と、ピン41と、フック42と、リターンスプリング43と、第1のワイヤー44と、プーリー45と、ワイヤー緊張用錘46と、第2のワイヤー47を備えている。
解除レバー40は、収容篭20の外縁部(外周)近傍でピン41回りに回動自在に軸支されており、ピン41は、収容篭20の垂直中心軸と平行に延在して配置されている。解除レバー40は全体がL字状であり、第1のアーム40aと、第2のアーム40bを有している。
第1のアーム40aと第2のアーム40bとの接続部には、ピン41の挿通孔(図示せず)が形成されている。そして、第2のアーム40bの先端近傍には、長孔40cが形成されている。
【0033】
避難塔10側の中央空間11の内周面11fには、ロック溝11cが形成されている。ロック溝11cの断面は矩形であり、その輪郭は円弧状である。
収容篭20を避難塔10の中空部11内の下方位置(避難塔10の開口部12と収容篭20の開口21とが整合する位置)に固定する際(ロック時)には、ロック溝11cに解除レバー40の第1のアーム40aが係合して、第1のアーム40aとロック溝11cの垂直方向(図7の領域7Hでは紙面に垂直な方向)の相対移動を抑止する。その結果、収容篭20は、避難塔10の中空部11内を垂直方向に移動しない。
【0034】
図7で示すように、フック42は、第1のフック42a、スプリングシート42b、軸部42c、第2のフック42dを有している。第1のフック42a、スプリングシート42b、軸部42c、第2のフック42dは、一体に形成されている。
第1のフック42aは、解除レバー40の第2のアーム40bにおける長孔40cと係合している。そして第2のフック42dには、第1のワイヤー44の一端が係止されている。
【0035】
解除レバー40近傍には壁面20sが形成されており、壁面20sはリターンスプリング43の座面である。リターンスプリング43は、ロック状態(図7の実線で示す状態)において、解除レバー40の第2のアーム40bと対向する位置に配置されている。
壁面20sとフック42のスプリングシート42bの間には、リターンスプリング43が介装されている。リターンスプリング43は、フック42の軸部42cを包囲する態様で配置されている。
【0036】
第1のワイヤー44はプーリー45に掛け回され、ワイヤー緊張用錘46の上端に接続されている。
ワイヤー緊張用錘46は、第1のワイヤー44に張力を付与する程度の質量を有している。ただし、ワイヤー緊張用錘46の質量は、リターンスプリング43の反撥力に抗して収縮するには至らない。
ここで、ワイヤー緊張用錘46は、収容篭20に形成されたガイド孔20g内を移動し、ワイヤー緊張用錘46により第1のワイヤー44は緊張した状態に保持されるので、第1のワイヤー44がプーリー45から外れてしまうことはない。
【0037】
ワイヤー緊張用錘46の下端には第2のワイヤー47が接続され、ワイヤー47は格子22に接続されている。換言すると、格子22は、第2のワイヤー47、ワイヤー緊張用錘46、第1のワイヤー44、フック42を介して、解除レバー40に接続している。
格子22が、収容篭20の開口21を閉鎖しておらず、格子22は開口21の下方位置よりも上方の位置にあり、開口21は開放された状態(開いた状態)となっている。
【0038】
格子22が上方の位置にあり、開口21が開いた状態では、第2のワイヤー47は緊張されておらず、いわゆる「ゆるんだ」状態となっている。
この状態では、図7の実線で示すように、解除レバー40の第1のアーム40aがロック溝11cに係合して、第1のアーム40aとロック溝11cの垂直方向(図7の領域7Hでは紙面に垂直な方向)の相対移動を抑止して、収容篭20が避難塔10の中空部11内を垂直方向に移動するのを規制する。
【0039】
津波の警報が出され、避難民が収容篭20内に避難して、格子22を開口21の下方まで下ろして、開口21を閉鎖すると、格子22を下降する動作が、第2のワイヤー47、ワイヤー緊張用錘46を介して、第1のワイヤー44に伝達され、プーリー45により、第1のワイヤー44は図7の右方向に引っ張られる。
第1のワイヤー44が図7の右方向に引っ張られることにより、リターンスプリング43は弾性反撥力に抗して収縮され、解除レバー40は図7において時計回りに回動して、図7において破線で示す状態となり、ロック溝11cと契合した状態(ロック状態)が解除される。
その結果、第1のアーム40aとロック溝11cの垂直方向(図7の領域7Hでは紙面に垂直な方向)の相対移動が可能となり、収容篭20は避難塔10の中空部11内を垂直方向に移動することが出来る。
【0040】
図1〜図7で説明した第1実施形態によれば、避難塔10の下方には開口部12が形成され、収容篭20の避難民収容(上方区画)スペース20aには開口21が設けられており、収容篭20の開口21は避難塔10の開口部12と整合した位置に形成されているので、避難民は、避難塔10の開口部12及び収容篭20の開口21を介して、収容篭20の内部に避難することが出来る。
収容篭20の内径を例えば4mとすれば、その床面積は10m2以上(12.56m2)となり、収容篭20内には、約100人の避難民を収容することが出来る。
【0041】
ここで、収容篭20は上下方向に、避難民収容(上方区画)スペース20aと、密閉空間(下方区画)20bとに仕切られており、下方区画である密閉空間20bは密閉された空間であるため、当該密閉空間の高さ寸法が約0.8mであれば約10tの浮力を確保することが出来る。そして、収容篭20の密閉空間(下方区画)20bによって、約100人の避難民(一人75kgとして、総重量7.5t)の総重量を上回る浮力を確保することが出来る。
そのため、津波が押し寄せた際に、収容篭20は津波の水面よりも高い位置まで直ちに浮上することが可能であり、収容篭20内に避難した避難民の安全が確保される。
【0042】
その際に、収容篭20内に水が浸入しても、収容篭20が浮上する際に、鉄格子22の隙間から当該浸入した水が排出されるので、収容篭20に避難した人々が溺れてしまうことはない。
また、開口21の上縁は収容篭20の避難民収容(上方区画)スペース20aの天井よりも下方に位置しているため、津波により開口部(開口21を閉鎖する格子22の隙間)21から水が浸入しても、開口21の上縁から避難民収容(上方区画)スペース20aの天井の間の空間に空気溜まりが形成されるので、避難民の呼吸は確保され、収容篭20内に避難した人々が溺死してしまうことが防止される。
ここで、収容篭20の開口21の上端を、収容篭20の天蓋20tと面一にした場合には、収容篭20の上方の領域に空気溜りは形成されない。しかし、津波が押し寄せた際に、収容篭20の密閉空間(下方区画)20bによって、収容篭20は津波の水面よりも高い位置まで直ちに浮上する。そして、収容篭20が浮上すると共に、収容篭20内に浸入した水は、開口21あるいは格子22の隙間から排出されるので、収容篭20に収容された避難民が溺れてしまうことはない。
【0043】
図1〜図7の第1実施形態によれば、収容篭20は避難塔10の中空部11内に挿入されているため、収容篭20の密閉空間(下方区画)20bの浮力が作用した際には、避難塔10内の中空部11内を垂直方向上方に移動する。
すなわち、収容篭20は避難塔10により包囲された状態に保持されている。そのため、津波により流されてしまうことが防止される。また、津波により押し流された浮遊物が避難塔10に衝突しても、収容篭20内の避難民は避難塔10により保護され、当該衝突により損傷を受ける恐れが少ない。
【0044】
図1〜図7の第1実施形態では、津波等の心配がない日常時には、避難塔10の開口部12及び収容篭20の開口21を、開放した状態にしておくことにより、収容篭20の内部を、外部から常時視認可能な状態にすることが出来る。
常時視認可能な状態にすることにより、収容篭20の内部を浮浪者等が不法占拠することが出来なくなり、また、収容篭20の内部が子供達の遊び場となってしまうことも防止することが出来る。
そのため、避難塔10あるいは収容篭20の内部を管理するために常駐の人員を配置しておく必要がなく、津波等の心配がない日常時における管理コストを低く抑えることが出来る。
【0045】
津波の警報が出され、収容篭20内に避難する際に、収容篭20の開口21で人が横たわっている状態(倒れている状態)で、収容篭20が避難塔10の中空部11内を垂直方向上方に浮上すると、避難塔10の開口部12と収容篭20の開口21で人体が挟まれ、押圧あるいは剪断されて、重大な損傷を受ける可能性が存在する。
しかし、図示の第1実施形態によれば、収容篭20には固定及び解除機構400が設けられており、前記格子22が下方位置で固定されると収容篭20の固定及び解除レバー40は解除部材(42〜47)により解除されて、収容篭20は避難塔10の中空部11内を垂直方向上方に移動(浮上)する様に構成されている。
換言すれば、前記収容篭20は、格子22が下方位置で固定されない限りは、避難塔10の中空部11内を垂直方向上方に移動(浮上)することはない。そのため、収容篭20の開口21で人が横たわっている状態(倒れている状態)では、格子22を下方位置で固定することは出来ず、収容篭20は垂直方向上方に移動(浮上)することができない。そして、収容篭20の開口21で横たわっている人(倒れている人)が、避難塔10の開口部12と収容篭20の開口21で挟まれて、押圧・剪断されることはなく、押圧により重大な損傷を受ける恐れもない。
【0046】
図8は、第1実施形態の第1変形例を示している。
図1〜図7で説明した第1実施形態では、避難塔用ユニットUAの中空部11u及び収容篭20の水平断面は円形である。
図8の第1変形例では、避難塔用ユニットUAの中空部11u及び収容篭20Aの水平断面形状が、楕円形となっている。中空部11u及び収容篭20Aの断面形状を楕円に形成することにより、避難塔用ユニットUAの円周方向位置と、収容篭20Aの円周方向位置とは、その相対位置が常に一定になる。
そのため、ガイドレール13及び案内車輪26を省略しても、収容篭20Aが中空部11uを浮上して、津波が引いた後に下降した際に、収容篭20Aの開口21と、避難塔10の開口部12が整合した位置になる。
第1変形例におけるその他の構成及び作用効果は、図1〜図7の第1実施形態と同様である。
【0047】
図9は、第1実施形態の第2変形例を示している。
図9の第2変形例では、避難塔用ユニットUBが複数の分割片(図示の例では6個の分割片)に分割して構成されている。
6個に分割されたた避難塔用ユニットUBの分割片は、施工現場において、図9で示す様に接合することが出来る。例えば、公知のトンネル用ライニング組立技術を適用して、6個の分割片を図9で示す状態に接合する。
【0048】
図1〜図8で示す避難塔用ユニットU1、U2、UAは寸法が大きいため、貨物自動車で運搬する際には、交通法規上、1台の貨物自動車当たり1個の避難塔用ユニット(U1、U2、UA)しか積載することが出来ない。そのため、運搬コストが高騰する恐れがある。
これに対して、図9の第2実施形態では、避難塔用ユニットUBを複数の分割片に分割して貨物自動車に積載することが出来る。個々の分割片の寸法は、避難塔用ユニットU1、U2、UAに比較して小さいので、避難塔用ユニットU1、U2、UAを運搬する際の交通法規上の制限は適用されない。そのため、複数の避難塔用ユニットUBに相当する数量の分割片を、1台の貨物自動車に積載することが出来る。その結果、運送コストを大幅に抑制することが出来る。
図9の第2変形例におけるその他の構成及び作用効果は、図1〜図8の実施形態と同様である。
【0049】
図10、図11は、第1実施形態の第3変形例を示している。
第1実施形態の第3変形例は、収容篭20の上方の区画である避難民収容スペース20Aaを、仕切壁(2階の床)202fによって、上下の区画に2分している。
図10において、第3変形例に係る収容篭20Aは、1階の床201fによって避難民収容スペース20Aaと密閉空間20Abに二分されている。そして、避難民収容スペース20Aaは、2階の床(仕切壁)202fによって、1階部201Afと、2階部202Afに(上下方向に)二分されている。
【0050】
図11で示す様に、2階の床202fは、円弧の一部が弓状に欠損した円形であり、その欠損箇所の中央に、鉄梯子20Arが掛けられている。この鉄梯子20Arにより、1階の床201fと2階の床202fとの往来が保証される。
2階の床202fにおける弓状に欠損した箇所の近傍には、2階に上がった避難民の転落を防止する手摺り20Adが設けられている。
【0051】
避難民収容スペース20Aaの外周部には、避難民が避難民収容スペース20Aaに駆け込むための開口21Aが設けられている。
図10において開口21Aの高さ寸法はH21Aで示され、図11において開口21Aの間口寸法はW21Aで示されている。
図示の例では、開口21Aの位置は、鉄梯子20Arを正面中央に見据える位置となっている。なお、開口21Aの下端は、1階の床201fと面一になっている。
【0052】
収容篭20Aの直径を第1実施形態の収容篭20の直径と同一に設定して、収容される避難民の総数を第1実施形態のN倍(例えば1.7倍)とすれば、図10下方の密閉空間20Abの高さ寸法H20bは、第1実施形態における密閉空間20bの高さH21の少なくともN倍(例えば1.7倍)以上とするべきである。
また、避難民収容スペース20Aaの高さ方向寸法は、大人の身長(例えば1.7m)の2倍以上の数値、例えば4mとするのが好ましい。
【0053】
図12は、第1実施形態の第4変形例を示している。
図1〜図7の第1実施形態では、避難塔10における開口部12の下端は地表Gfと面一であった。
それに対して、図12の第4変形例では、避難塔10Aにおける開口部12Aの下端12Abを、地表GfよりもHbだけ高くして、地表Gfと開口部12Aの下端12Abの間の領域には、階段(あるいはスロープ)15が設けられている。
【0054】
図12において、符号Dは、人が水中を移動可能な限界の水位であり、水位がDの値を超えると、避難民は水に脚を取られてしまい、避難塔10内に近接することが困難になってしまう値である。
津波により浸水の水位が水位Hbを超えれば、海水は避難塔10A内に侵入し、収容篭20に浮力が作用して、避難民を収容した収容篭20は、避難塔10A内の中空部11内を上方に移動(浮上)して、収容された避難民は津波の難から逃れることができる。
【0055】
図12で示すように、開口部12Aの下端12Abの地表Gfからの高さ方向寸法Hbの値を、水位Dよりも大きく設定すれば、浸水のレベルが収容篭20が避難塔10A内の中空部11内を上方に移動(浮上)する水位(水位Hb)に到達したならば、避難民は避難塔10Aに近接することが出来なくなる。
収容篭20内の避難民は、開口部12Aの下端12Abに浸水レベルが到達した段階で格子22を閉鎖し、移動解除装置400(図7参照)によって収容篭20を浮上可能な状態にせしめることにより、収容篭20に作用する浮力によって、避難民を収容した収容篭20が避難塔10A内の中空部11内を上方に移動(浮上)して、津波の難から逃れることができる。
【0056】
浸水レベルが水位Hbに到達した段階で、避難塔10Aに到達出来ていない避難民は、避難塔10Aに到達することが既に不可能である。図12の第4変形例では、浸水レベルが開口部12Aの下端12Abに到達した段階で、収容篭20内の避難民は開口21を格子で閉鎖して、移動解除装置400により収容篭20を浮上可能な状態にせしめることにより、避難塔10Aの直近に到達しながら、収容篭20内にたどり着けない避難民を待つことなく、収容篭20を浮上させることが出来る。これにより、避難塔10Aの直近に到達しながら、収容篭20内にたどり着けない避難民を待って、収容篭20内に避難した避難民の安全が脅かされる事態を、避けることが出来る。
【0057】
図示はされていないが、図7で示す移動解除装置400とは別の態様の移動解除装置を設け、津波の浸水レベルが開口部12Aの下端12Abに到達したことを感知するセンサ(図示せず)を設け、図示しない移動解除装置は、前記センサ(津波の浸水レベルが開口部12Aの下端12Abに到達したことを感知する図示しないセンサ)により津波の浸水レベル(が開口部12Aの下端12Abに到達したこと)を感知した場合に、収容篭20の固定を解除して、避難塔10Aの中空部11内を浮上可能な状態にする機能を有する様に構成することが可能である。
【0058】
次に、図13〜図16を参照して、第1実施形態の津波シェルター100の構築方法を説明する。
先ず、図13で示す工程では、津波シェルター100を構築する現場において、地表Gf下にコンクリートの基礎1を打設し、複数(図示の例では2本)のアンカー2を打設する。
基礎1の上面に突出したアンカー2の頭部には、雄ねじ2aが形成されている。アンカー2の頭部はプレート3を貫通し、公知の態様にて、例えばジャッキ(図示せず)によって張力が付加され、複数のヘッド4で固定されている。図示しないジャッキは、ヘッド4でアンカー2の頭部を固定した後に撤去される。これにより、複数のアンカー2は、張力が作用した状態で打設される。
【0059】
図13に続く図14の工程では、基礎1に設けた複数のアンカー2頭部に、複数のカプラー5により、剛性を有する複数の鋼棒6を接続している。
複数のアンカー2頭部には雄ねじ2aが形成され、複数の鋼棒6には雄ねじ6aが形成されている。そして、カプラー5の内壁面には、雄ねじ2aおよび雄ねじ6aと螺合する雌ねじ(図示せず)が形成されている。
カプラー5内壁面の雌ねじ(図示せず)を、複数のアンカー2頭部には雄ねじ2aと、鋼棒6には雄ねじ6aに螺合することにより、アンカー2頭部と鋼棒6が接続される。
【0060】
図14に続く図15の工程では、先ず、避難塔用ユニットU2(最下層のユニット)の貫通孔haに鋼棒6を挿通させ、避難塔用ユニットU2を基礎1の上方に設置する。
次いで、複数の避難塔用ユニットU1の貫通孔ha(図示を省略)に、鋼棒6を順次挿通させ、6枚の避難塔用ユニットU1をユニットU2の上に順次積層する。
図15では、避難塔用ユニットU2と5枚の避難塔用ユニットU1が積層された状態が示されている。
【0061】
図16の工程では、最後の避難塔用ユニットU1を積層した後、最後の避難塔用ユニットU1の上面に突出した鋼棒6上端の雄ねじ6aにプレート7を介装し、アンカー頭部と同様に、例えばジャッキ(図示せず)を用いて鋼棒6に張力を付与する。そして、図示しないジャッキを撤去して、締結アンカーヘッド8により鋼棒6の上端を固定する。
図示は省略しているが、この後、全ての避難塔用ユニットU2、U1が積層された状態の中空部11の所定位置に、1対のガイドレール13(図6参照)を敷設する。
これにより、避難塔10の構築が完了する。
【0062】
図16で示す工程において、避難塔10の構築が完了したならば、収容篭20を、例えば図示しないクレーン等を用いて、避難塔10の上方まで吊り上げる。そして、収容篭20に取り付けた1対の車輪26(ころ、ローラー:図5、図6参照)を、避難塔10の1対のガイドレール13に嵌合させる。1対の車輪26を1対のガイドレール13に嵌合させたならば、避難塔10の中空部11内に収容篭20を挿入する。
収容篭20を避難塔10の中空部11内に挿入するに際して、収容篭20の格子22で開口21を閉鎖した状態(格子22が開口21の下方位置まで降ろされた状態)にしておく。そのようにすれば、図7で示す解除装置400の解除レバー40は、図7の破線で示した位置となり、解除レバー40が中空部11の内周面11f(図7参照)と干渉することなく、収容篭20を避難塔10の中空部11内に挿入することが出来る。
【0063】
収容篭20を避難塔10の中空部11内の最下部まで降下させたならば、格子22を上方に移動させて(開口21を開放して)、解除装置400の解除レバー40をロック位置(図7の実線の位置)に戻し、レバー40の先端を避難塔10の中空部11の内周面11fに形成されたロック溝11cに係合させる。
これにより、収容篭20が避難塔10の中空部11内の最下部に固定される(ロック状態となる)。
これにより、津波シェルターが完成する。
【0064】
図17を参照して、第1実施形態の津波シェルター100の設置場所を説明する。
第1実施形態の津波シェルター100は、海浜に面した箇所に設けられる。図17では、3基の津波シェルター100が示されている。
図17において、水平断面が楕円の各津波シェルター100は、長軸中心線Lcが海岸線Lsと直交する様に構築されている。
【0065】
長軸中心線Lcが海岸線Lsと直交する様に配置することにより、津波は津波シェルター100の尖った先端100tに到達すると、図17において矢印で示すように、津波の押し寄せる力が先端100tにより2方向に分岐され、津波の押し寄せる力が津波シェルター100に直接作用することがない。
そのため、津波シェルター100に直接作用する力が減衰して、津波シェルター100の破損、破壊を防止することができる。換言すれば、津波シェルター100に直接作用する力が減衰する分だけ、設計強度や材料使用量を低減することが可能となる。
【0066】
次に、図18〜図31を参照して、第2実施形態を説明する。
図1〜図17を参照して説明した第1実施形態(第1変形例〜の第4変形例を含む)は、平坦な海浜領域に設置されることが前提となっている。
それに対して、図18〜図31で示す第2実施形態は、背後に傾斜面(法面)を有する地形に構築される。
【0067】
図18において、全体を符号101で示す津波シェルターは、避難塔10Aと、避難塔10A内の収容篭20を備えている。
収容篭20は、図1〜図17の第1実施形態における収容篭20と同様である。
【0068】
避難塔10Aは、複数の避難塔ユニット(最下層のユニット以外のユニット)UA1と、1個の避難塔ユニット(最下層のユニット)UA2を備えている。
避難塔ユニットUA1、UA2は全て外形(水平断面)が円形である。そして、最下層の避難塔ユニットUA2には開口部12Aが形成されている。
避難塔10Aの中心には、避難塔10Aを上下方向に延在する中空部11Aが形成されている。この中空部11Aは、図1〜図17の第1実施形態における中空部11と同様である。
【0069】
図示では明確ではないが、避難塔10Aにおける開口部12Aの位置と、収容篭20における開口21の位置とは、整合している。従って、避難民は、避難塔10Aにおける開口部12Aおよび収容篭20における開口21を介して、収容篭20内に避難することが出来る。
第2実施形態の避難塔10A、あるいは避難塔ユニットUA1、UA2は、図1〜図17の第1実施形態とは異なり、その水平断面形状が円形に構成されている。
【0070】
図18、図19において、避難塔10Aは、傾斜面30に掘削された所定幅Bの溝30Cに囲まれるように構築されている。ここで、所定幅Bの値は、傾斜面の土質や、避難塔10Aの直径によって設定される。
溝30Cは、垂直方向に延在して掘削されており、図19において、溝30C上端部における水平断面形状は半円形であり、曲率半径はB/2である。
図18、図19において、溝30Cの底部は、符号30Cbで示している。
図示は省略しているが、溝30Cの底部30Cbの直下には、コンクリートの基礎1が打設されている。
【0071】
図19において、避難塔10Aの左右方向位置は、避難塔10Aの中心線をLcとすれば、溝30Cの奥行き方向端部(図19における右端)から中心線Lcまでの距離は、溝30C上端部の水平断面形状の曲率半径「B/2」である。
図18、図19においてハッチングを付して示すように、溝30Cと避難塔10Aとで形成される隙間の内、溝30Cにおける奥行き方向端部(図19における右端)側の領域を、固化材(例えば、コンクリート)9で固定している。ここで、固化材9で固定されている領域は、水平断面が半円形である。
【0072】
図18、図19で示す第2実施形態によれば、津波シェルター101(避難塔10A)は、固化材9を介して、溝30Cに固定されており、傾斜面30を有する地山(あるいは、丘陵地)に包囲されている。
そのため、津波が押し寄せたとしても、津波シェルター101は地山によって包囲され、保護されているので、津波シェルター101の避難塔10Aが津波の力によって破損、破壊することが防止される。
換言すれば、地山(あるいは、丘陵地)に包囲され、保護されている津波シェルター101は、図1〜図17の津波シェルター100に比較して、津波に対する耐性が強く、破損、倒壊し難い。そのため、図1〜図17の津波シェルター100の様に、避難塔の水平断面形状を長軸端部が尖った楕円形にして津波の力を分散する必要はない。
係る理由により、図18、図19で示す第2実施形態によれば、津波シェルター101の避難塔10Aの水平断面形状を円形にしても、津波により破損、倒壊することはない。
【0073】
次に、図20〜図31を参照して、第2実施形態の津波シェルター101の構築方法を説明する。
先ず、図20、図21の工程では、傾斜地30の法面に、幅B(図18参照)の溝30Cを掘削する。図18、図19で説明したように、溝30の上端における水平方向断面は、半円形となっている。
図20、図21において、符号30Cbは溝30Cの底部を示している。
【0074】
図20、図21に続く図22、図23の工程では、溝底部30Cbにコンクリートの基礎1を打設する。
そして、複数(図示の例では2本)のアンカー2を打設する。
基礎1の上面に突出した複数のアンカー2の頭部には、雄ねじが形成されている。アンカー2の頭部は、プレート3を貫通しており、アンカーヘッド4で固定されている。公知の態様で(例えば、図示しないジャッキにより)アンカー2に張力を付与しつつ、プレート3、ヘッド4でアンカー2を固定する。
【0075】
図22、図23に続く図24、図25の工程では、基礎1に設けた複数のアンカー2頭部を、複数のカプラー5により、剛性を有する複数の鋼棒6と接続する。
複数の鋼棒6には雄ねじ(図示せず)が形成されている。
カプラー5により、アンカー2頭部を鋼棒6に接続する態様は、図1〜図17の第1実施形態と同様である。
【0076】
図24、図25に続く図26、図27の工程では、先ず、最下層の避難塔用ユニットUA2の図示しない貫通孔に鋼棒6を挿通させ、避難塔用ユニットUA2を基礎1の上面に設置する。
次いで、複数の避難塔用ユニットUA1の図示しない貫通孔に、鋼棒6を、順次挿通させ、6枚の避難塔用ユニットUA1をユニットUA2の上に積層する。
図26、図27では、最下層の避難塔用ユニットUA2と、3層の避難塔用ユニットUA1が積層された状態が示されている。
【0077】
図26、図27に続く図28、図29の工程では、6層の避難塔用ユニットUA1が積層された後、最後の避難塔用ユニットUA1の上面に突出した鋼棒6に張力を付加して、最上層の避難塔用ユニットUA1に固定する。
アンカーに張力を付加して頭部を固定する公知の態様と同様に、鋼棒6の上端をプレート7を貫通させて、図示しないジャッキを用いて鋼棒6に張力を付加し、図示しないジャッキを撤去した後にアンカーヘッド8で固定している。
【0078】
図28、図29に続く図30、図31の工程では、明確には図示されていないが、避難塔用ユニットUA2、UA1が積層された状態の避難塔10Aにおける中空部11Aの所定位置に、1対のガイドレール13(図6参照)を敷設する。
これにより、避難塔10Aの構築が完了する。
【0079】
避難塔10Aの構築が完了したならば、図30、図31の工程において、収容篭20を、例えば図示しないクレーン等により、避難塔10Aの上方まで吊り上げる。
そして、収容篭20に取り付けた1対の車輪26(ころ、ローラー:図6参照)を、1対のガイドレール13に嵌合して、収容篭20を避難塔10の中空部11A内に挿入する。
その際に、解除装置400(図7参照)による操作に関しては、図16を参照して説明したのと同様である。
【0080】
図18〜図31の第2実施形態におけるその他の構成及び作用効果は、図1〜図17の実施形態と同様である。
そして、図示はされていないが、図18〜図31の第2実施形態は、図8〜図12の第1実施形態の変形例と組み合わせることが出来る。
【0081】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではないことを付記する。
【符号の説明】
【0082】
1・・・基礎
2・・・アンカー
5・・・カプラー
6・・・棒状部材/鋼棒
10・・・避難塔
11・・・中空部
12・・・開口部
13・・・ガイドレール
20・・・収容篭
21・・・開口
22・・・格子
40・・・固定及び解除レバー
100・・・津波シェルター
400・・・固定及び解除機構
【技術分野】
【0001】
本発明は、津波が発生した際に、避難民を収容して津波から避難させるための津波シェルターと、当該津波シェルターの構築工法に関する。
【背景技術】
【0002】
津波による人的被害は、適正な避難設備、すなわち津波シェルターがあれば、最小限に抑制することが可能である。
そのため、従来から、種々の津波シェルターが提案されている。
例えば、可撓性部材によって設置台に繋がれた球形の津波シェルターが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
しかし、係る津波シェルターは、収容人員が少なく、多数の避難民の安全を確保することが出来ないという問題を有している。また、津波が押し寄せた際における膨大な衝撃エネルギーにより、津波シェルターが破損する恐れがあり、収容人員に深刻な損傷をもたらしてしまう可能性が存在する。
【0003】
これに対して、2つの支柱を有する台座と、当該2つの支柱に沿って且つ津波の水位によって浮上可能な避難コンテナを有する津波シェルターが提案されている(特許文献2参照)。
係る津波シェルターは、比較的多人数を避難コンテナ内に収容することは可能であり、津波が押し寄せた際にその衝撃エネルギーを分散することも可能である。
しかし、避難コンテナの出入口が比較的小さいため、多数の避難民が避難してきた際に、当該出入口で混乱が生じ、避難コンテナ内に収容することが困難になってしまう恐れがある。
また、避難コンテナの出入口を閉鎖しないと必要な浮力が得られないため、避難民が収容しきれていない状態でも、当該出入口を無理やり閉鎖しなければならない事態が予想される。その様な事態が生じた際には、出入口を閉鎖した際に、収容しきれない避難民の身体に重要な損傷(例えば、剪断等)を与えてしまう恐れが存在する。
さらに、津波のとき以外の管理が必要であり、適正な管理を怠ると第三者が不法に逗留する恐れがあり、あるいは、子供の遊び場と化してしまう可能性がある。しかし、適正な管理を行うためには、多大な人件費等が必要になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4084408号公報
【特許文献2】特許第4609955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、津波が押し寄せた際に、多数の避難民を同時に避難させることが出来て、しかも、避難の際に混乱が生じることがなく、収容し切れなかった避難民の身体に重大な損傷を及ぼしてしまうことがない様な津波シェルターと、その構築工法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の津波シェルター(100)は、避難塔(10)と(避難民を収容する)収容篭(20)を有しており、
前記避難塔(10)は、長円の両端部が尖った楕円形の断面形状を有し、当該長円の尖った形状の両端部の何れか一方が海側を向いて配置されており、楕円形断面の中央部には中空部(11:断面形状は、例えば円形、正方形)を形成しており、中央に中空部(11:断面形状は、例えば円形、正方形)を有する長円の両端部が尖った楕円形断面の単位部材(避難塔用ユニットU1、U2)が複数積層されており、下方には開口部(12)が形成されており、
前記収容篭(20)は前記避難塔(10)の断面中央部の中空部(11)の断面形状(例えば円形、正方形)と同一の断面形状であり、前記収容篭(20)の断面積は前記避難塔(10)の断面中央部の中空部(11)の断面積よりも小さく、
前記収容篭(20)は上下方向に2つの区画(20a、20b)に仕切られており、下方の区画(20b)は密閉された空間であり、上方の区画(20a)は避難民を収容する収容スペースとして構成されており、
上方の区画(20a)には開口(21)が設けられており、当該開口(21)には上下動可能な格子(22)が設けられており、前記開口(21)は前記避難塔(10)の下方に形成された開口部(12)と整合した位置に形成されていることを特徴としている。
ここで、前記格子(22)は、上方位置(開口が格子で閉鎖されていない状態)と下方位置(開口が格子で閉鎖されている状態)で固定可能であり、前記収容篭(20)を前記避難塔(10)の中空部(11)最下方位置に固定する固定部材(40)が設けられ、当該固定部材(40)は前記格子(22)が下方位置で固定されると解除されて収容篭(20)を避難塔(10)の中空部(11)内を垂直方向に移動可能にする解除装置(42〜47)を備えているのが好ましい。
【0007】
本発明の津波シェルター(100)の構築工法は、基礎(1)に設けたアンカー(2)頭部にカプラー(5)により剛性を有する棒状部材(6:例えば、鋼棒)を接続する工程と、
前記棒状部材(6)を挿入可能な貫通孔(ha)を形成し且つ中央に中空部(11:断面形状は、例えば円形、正方形)を有する長円の両端部が尖った楕円形断面の単位部材(避難塔用ユニットU1、U2)を、前記貫通孔(ha)に前記棒状部材(6)を挿入した状態で複数積層する工程を有し、
下方の単位部材(避難塔用ユニットU2)には開口部(12)が形成されており、
所定数の単位部材(避難塔用ユニットU1、U2)を積層した後、前記棒状部材(6)に張力を付加した状態で最上層の単位部材(避難塔用ユニットU1)に定着する工程と、
単位部材(避難塔用ユニットU1、U2)中央に形成された中空部(11:断面形状は、例えば円形、正方形)に、収容篭(20)を挿入する工程を有し、
前記収容篭(20)は前記避難塔(10)の断面中央部の中空部(11)の断面形状(例えば円形、正方形)と同一の断面形状であり、前記収容篭(20)の断面積は前記避難塔(10)の断面中央部の中空部(11)の断面積よりも小さく、
前記収容篭(20)は上下方向に2つの区画(20a、20b)に仕切られており、下方の区画(20b)は密閉された空間であり、上方の区画(20a)は避難民を収容する収容スペースとして構成されており、
上方の区画(20a)には開口(21)が設けられており、当該開口(21)には上下動可能な格子(22)が設けられており、前記開口(21)は前記避難塔(10)の下方に形成された開口部(11)と整合した位置に形成されていることを特徴としている。
ここで、前記格子(22)は、上方位置(開口が格子で閉鎖されていない状態)と下方位置(開口が格子で閉鎖されている状態)で固定可能であり、前記収容篭(20)を前記避難塔(10)の中空部(11)最下方位置に固定する固定部材(40)が設けられ、当該固定部材(40)は前記格子(22)が下方位置で固定されると解除されて収容篭(20)を避難塔(10)の中空部(11)内を垂直方向に移動可能にする解除装置(42〜47)を備えているのが好ましい。
【0008】
また本発明の津波シェルター(101)は、避難塔(10A)と(避難民を収容する)収容篭(20)を有しており、
前記避難塔(10A)は、傾斜面(例えば、丘陵地帯の法面30)に掘削された垂直方向に延在する溝内(30C)に固定されており、断面円形であり、円形断面の中央部には中空部(11A:断面形状は、例えば円形)を形成しており、中央に中空部(11A:断面形状は、例えば円形)を有する断面円形の単位部材(避難塔用ユニットUA1、UA2)が複数積層されており、下方には開口部(12A)が形成されており、
前記収容篭(20)は前記避難塔(10A)の断面中央部の中空部(11A)の断面形状(例えば円形)と同一の断面形状であり、前記収容篭(20)の断面積は前記避難塔(10A)の断面中央部の中空部(11A)の断面積よりも小さく、
前記収容篭(20)は上下方向に2つの区画(20a、20b)に仕切られており、下方の区画(20b)は密閉された空間であり、上方の区画(20a)は避難民を収容する収容スペースとして構成されており、
上方の区画(20a)には開口(21)が設けられており、当該開口(21)には上下動可能な格子(22)が設けられており、前記開口(21)は前記避難塔(10A)の下方に形成された開口部(12A)と整合した位置に形成されていることを特徴としている。
ここで、前記格子(22)は上方位置(開口が格子で閉鎖されていない状態)と下方位置(開口が格子で閉鎖されている状態)で固定可能であり、前記収容篭(20)を前記避難塔(10A)の中空部最下方位置に固定する固定部材(40)が設けられ、当該固定部材(40)は前記格子(22)が下方位置で固定されると解除されて収容篭(20)を避難塔(10A)の中空部(11A)内を垂直方向に移動可能にする解除装置(42〜47)を備えているのが好ましい。
【0009】
そして、係る津波シェルター(請求項2の津波シェルター101)の構築工法は、
傾斜面(例えば、丘陵地帯の法面30)垂直方向に延在する溝(30C)を掘削する工程と、
前記垂直方向に延在する溝(30C)の最も地中側の領域に基礎(1)を構築し、当該基礎にアンカー(2)を打つ工程と、
基礎(1)に設けたアンカー(2)頭部にカプラー(5)により剛性を有する棒状部材(6:例えば、鋼棒)を接続する工程と、
前記棒状部材(6)を挿入可能な貫通孔を形成し且つ中央に中空部(断面形状は、例えば円形、正方形)を有する断面円形の単位部材(避難塔用ユニットUA1、UA2)を、前記貫通孔に前記棒状部材(6)を挿入した状態で複数積層する工程を有し、
下方の単位部材(避難塔用ユニットUA2)には開口部(12A)が形成されており、
所定数の単位部材(避難塔用ユニットUA1)を積層した後、前記棒状部材(6)に張力を付加した状態で最上層の単位部材(避難塔用ユニットUA1)に定着する工程と、
所定数の単位部材(避難塔用ユニットUA1、UA2)を積層して構成された避難塔(10A)の側方及び後方に固化材(9)を打設して、垂直方向に延在する前記溝(30C)が形成された傾斜面(例えば、丘陵地帯の法面30)に固定する(一体化する)工程と、
単位部材(避難塔用ユニッUA1、UA2)中央に形成された中空部(11A:断面形状は、例えば円形、正方形)に、収容篭(20)を挿入する工程を有し、
前記収容篭(20)は前記避難塔(10A)の断面中央部の中空部(11A)の断面形状(例えば円形、正方形)と同一の断面形状であり、前記収容篭(20)の断面積は前記避難塔(10A)の断面中央部の中空部(11A)の断面積よりも小さく、
前記収容篭(20)は上下方向に2つの区画(20a、20b)に仕切られており、下方の区画(20b)は密閉された空間であり、上方の区画(20a)は避難民を収容する収容スペースとして構成されており、
上方の区画(20a)には開口(21)が設けられており、当該開口(21)には上下動可能な格子(22)が設けられており、前記開口(21)は前記避難塔(10A)の下方に形成された開口部(12A)と整合した位置に形成されていることを特徴としている。
ここで、前記格子(22)は上方位置(開口が格子で閉鎖されていない状態)と下方位置(開口が格子で閉鎖されている状態)で固定可能であり、前記収容篭(20)を前記避難塔(10A)の中空部最下方位置に固定する固定部材(40)が設けられ、当該固定部材(40)は前記格子(22)が下方位置で固定されると解除されて収容篭(20)を避難塔(10A)の中空部(11A)内を垂直方向に移動可能にする解除装置(42〜47)を備えているのが好ましい。
【0010】
本発明の実施に際して、避難塔(10A)における開口部(12A)の下端(12Ab)を、地表(Gf)よりも(寸法Hbだけ)高くして、地表(Gf)と開口部(12A)の下端(12Ab)の間の領域に、階段(15:あるいはスロープ)を設け、開口部(12A)の下端(12Ab)の地表(Gf)からの高さ方向寸法(Hb)が、人が水中を移動可能な限界の水位(D)よりも大きな数値であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
上述する構成を具備する本発明によれば、前記収容篭(20)の内径を例えば4mとすれば、その床面積は10m2以上(12.56m2)となり、収容時の大人一人の占有面積を0.1m2としても、約100人の避難民を収容することが出来る。ここで、例えばヒップ90cm(=0.9m)の人を考慮し、その占有面積が円形に係る面積であると仮定して、円周0.9mの円の断面積を求めると0.07m2となる。係る面積(0.07m2)は、0.1m2よりも小さい数値である。
ここで、前記収容篭(20)は上下方向に2つの区画(20a、20b)に仕切られており、下方の区画(20b)は密閉された空間であるため、当該密閉空間の高さ寸法が約0.8mであれば約10tの浮力を確保することが出来る。すなわち、収容篭(20)の下方区画(20b)によって、約100人の避難民(一人75kgとして、総重量7.5t)の総重量を上回る浮力が確保することが出来る。
そのため、津波が押し寄せた際に、収容篭(20)は津波の水面よりも高い位置まで直ちに浮上することが可能である。
【0012】
そして、収容篭(20)内に水が浸入しても、収容篭(20)が浮上する際に、鉄格子(22)の隙間から当該浸入した水が排出されるので、収容篭(20)に避難した人々が溺れてしまうことはない。
さらに、収容篭(20)内に水が浸入しても、収容篭(20)の開口(21)よりも上方の領域には空気溜りが形成されるので、収容篭(20)内に避難した人々が溺死してしまうことが防止される。
【0013】
本発明によれば、収容篭(20)は避難塔(10)の中空部(11)内に挿入されているため、収容篭(20)の下方区画(20b)の浮力が作用した際には、当該避難塔(10)内の中空部(11)内を垂直方向上方に移動する。換言すれば、収容篭(20)は避難塔(10)外に流出してしまうことはなく、そのため、津波により流されてしまうことが防止される。
ここで、開口部(21)の上縁を収容篭(20)の上方区画(20a)の天井よりも下方に位置されると、津波により開口部(開口21を閉鎖する格子22の隙間)から水が浸入しても、開口部(21)の上縁から収容篭(20)の上方区画(20a)の天井の間の空間に空気溜まりが形成されるので、避難民の呼吸は確保される。
仮に、開口部(21)の上縁が収容篭(20)の上方区画(20a)の天井と同一の(高さ方向)位置であっても、開口部(開口21を閉鎖する格子22の隙間)から水が浸入しても、収容篭(20)は避難塔(10)内で直ちに浮上し、浸入した水は開口部(開口21を閉鎖する格子22の隙間)から収容篭(20)外に排出される。そして、上述した様に、収容篭(20)には十分な浮力が作用し、津波が押し寄せた際に直ちに浮上するので、収容された避難民が浸水により溺れてしまうことが防止される。
【0014】
また、本発明によれば、前記避難塔(10)の下方には開口部(12)が形成され、前記収容篭(20)の上方の区画(20a)には開口(21)が設けられており、収容篭(20)の開口(21)は避難塔(10)の開口部(12)と整合した位置に形成されているので、避難民は、避難塔(10)の開口部(12)及び収容篭(20)の開口(21)を介して、収容篭(20)の内部に避難することが出来る。
そして、避難塔(10)の開口部(12)及び収容篭(20)の開口(21)を、津波等の心配がない日常時には開放したままにしておくことにより、収容篭(20)の内部は外部から常時視認可能な状態にすることが出来る。そして、常時視認可能な状態にすることにより、収容篭(20)の内部を浮浪者等が不法占拠、不法逗留することが出来なくなり、また、収容篭(20)の内部が子供達の遊び場となってしまうことも防止することが出来る。
【0015】
本発明において、傾斜面(30:例えば、丘陵地帯の法面)垂直方向に延在する溝(30C)を掘削し、単位部材(避難塔用ユニットUA1、UA2)を積層して構成された避難塔(10A)の側方及び後方に固化材(9)を打設して、垂直方向に延在する前記溝(30C)を形成された傾斜面(例えば、丘陵地帯の法面30)に固定(一体化)すれば、津波による浮遊物のみならず、津波に対しても耐性が向上し、防災塔の倒壊や破損を防止することが出来る。
【0016】
ここで、収容篭(20)の開口(21)で人が倒れている状態(転んだ等の理由により、横たわっている状態)で、収容篭(20)が避難塔(10)の中空部(11)内を垂直方向上方に浮上すると、避難塔(10)の開口部(12)と収容篭(20)の開口(21)で挟まれ、剪断されて、重大な損傷を受ける可能性が存在する。
しかし、本発明において、前記収容篭(20)に固定部材(40)を設け、前記格子(22)が下方位置で固定されると収容篭(20)の固定部材(40)は解除装置(42〜47)により解除されて、収容篭(20)は避難塔(10)の中空部(11)内を垂直方向上方に移動(浮上)する様に構成すれば、換言すれば、前記収容篭(20)は、前記格子(22)が下方位置で固定されない限りは、避難塔(10)の中空部(11)内を垂直方向上方に移動(浮上)しない様に構成すれば、収容篭(20)の開口(21)で人が倒れている状態では、格子(22)を下方位置まで降ろすことが出来ないので、格子(22)を下方位置で固定することが出来ず、収容篭(20)は垂直方向上方に移動(浮上)することができない。そのため、収容篭(20)の開口(21)で倒れている人が、避難塔(10)の開口部(12)と収容篭(20)の開口(21)で挟まれ、剪断されることはなく、剪断により重大な損傷を受ける恐れもない。
【0017】
また本発明において、避難塔(10A)における開口部(12A)の下端(12Ab)を地表(Gf)よりも(寸法Hbだけ)高くして、地表(Gf)と開口部(12A)の下端(12Ab)の間の領域に、階段(15:あるいはスロープ)を設け、開口部12Aの下端12Abの地表Gfからの高さ方向寸法Hbの値を、人が水中を移動可能な限界の水位(D)よりも大きくすれば、当該水位(D)を超えると、避難民は水に脚を取られてしまい、避難塔10内に近接することが出来なくなる。
収容篭(20)内の避難民は、開口部(12A)の下端(12Ab)に浸水レベルが到達した段階で格子(22)を閉鎖し、例えば移動解除装置(400:図7参照)によって収容篭(20)を浮上可能な状態にせしめることにより、津波の難から逃れることができる。そして、避難塔(10A)の直近に到達しながら、収容篭(20)内にたどり着けない避難民を待って、収容篭(20)内に避難した避難民の安全が脅かされる事態を防止することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態の斜視図である。
【図2】第1実施形態における避難塔の縦断面図である。
【図3】第1実施形態の避難塔を構成する避難塔用ユニットの平面図である。
【図4】第1実施形態の避難塔において、最下段に配置する避難塔用ユニットの平面図である。
【図5】第1実施形態における収容篭の斜視図である。
【図6】第1実施形態において、避難塔のレールと収容篭の車輪との係合状態を示した平面図である。
【図7】第1実施形態において、収容篭を避難塔に係止するロック機構の参考例を示す説明図である。
【図8】第1実施形態の第1変形例に係る避難塔および収容篭を示す水平断面図である。
【図9】第1実施形態の第2変形例に係る避難塔の水平断面図である。
【図10】第1実施形態の第3変形例に係る収容篭の縦断面図である。
【図11】図10のX−X矢視断面図である。
【図12】第1実施形態の第4変形例に係る避難塔の縦断面図である。
【図13】第1実施形態の避難塔の基礎及びアンカーを打設する工程を示す工程図である。
【図14】図13の工程に続く工程を示す工程図である。
【図15】図14の工程に続く工程を示す工程図である。
【図16】図15の工程に続く工程を示す工程図である。
【図17】第1実施形態の避難塔の設置箇所を説明する平面図である。
【図18】本発明の第2実施形態の斜視図である。
【図19】図18の矢印Y-Y方向からの斜視部分断面図である。
【図20】第2実施形態に係る避難塔を築造するために溝を掘削する工程を示す工程図である。
【図21】図20のY-Y矢視断面図である。
【図22】図20、図21で示す工程に続く工程を示す工程図である。
【図23】図22のY-Y矢視断面図である。
【図24】図22、図23で示す工程に続く工程を示す工程図である。
【図25】図24のY-Y矢視断面図である。
【図26】図24、図25で示す工程に続く工程を示す工程図である。
【図27】図26のY-Y矢視断面図である。
【図28】図25、図27で示す工程に続く工程を示す工程図である。
【図29】図28のY-Y矢視断面図である。
【図30】図28、図29で示す工程に続く工程を示す工程図である。
【図31】図30のY-Y矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
先ず、図1〜図7に基づいて本発明の第1実施形態を説明する。
図1において、全体を符号100で示す津波シェルターは、避難塔10と、避難民を収容する収容篭20を備えている。
【0020】
避難塔10は、全体が楕円形状の水平断面形状を有している。ここで、避難塔10の断面形状は、より正確には、長軸の両端部が尖った楕円形(あるいは、2つの円弧を繋ぎ合わせた形状)である。
図1、図2において、避難塔10は、中央に円形中空部11を有する避難塔用ユニットU1、U2(ユニットU2は、最下層の1層のみ)が複数積層されて構成されている。ユニットU1、U2の平面形状あるいは水平断面形状は、長軸の両端部が尖った楕円形状である。
複数の避難塔用ユニットU1の形状は共通しており、図示の例では、6個用いられている。以下で述べる様に、最下層のユニットU2は、避難塔用ユニットU1とは若干異なっている。
【0021】
避難塔用ユニットU1の平面(上面)を示す図3において、避難塔用ユニットU1は、その中央部に、ユニットU1の表裏面を貫通する中空部11uが形成されている。ユニットU1が積層されることにより、中空部11uも積層されて、避難塔10の中空部11を形成している。
図3で示す避難塔用ユニットU1の平面(上面)において、中空部11uを挟んで相互に対称な位置には、1対の貫通孔haが形成されている。この貫通孔haには、後述する鋼棒6が挿通される。
【0022】
最下層の避難塔用ユニットU2の平面(上面)を示す図4において、最下層の避難塔用ユニットU2には、一方の部分円弧側に投影面が矩形の開口部12(図1参照)が形成されている。係る開口部12が形成されている点で、最下層の避難塔用ユニットU2は、その他の避難塔用ユニットU1に対して異なっている。
避難塔用ユニットU2には、1対の貫通孔haと、1対の逃げ穴hbが形成されている。1対の逃げ穴hbは図4では点線で示されており、1対の貫通孔ha(図4では実線で示されている)と同心位置に形成されている。
図2、図15で示す様に、避難塔用ユニットU2の逃げ穴hbは、アンカー2と鋼棒6を接続するカプラー5(接続部材)と干渉することを避けるために形成されている。
【0023】
図5において、収容篭20は、全体が円筒状に形成され、避難民を収容する収容スペース(上方区画:以下、「避難民収容スペース」と言う)20aと、密閉された空間(下方区画:以下、「密閉空間」と言う)20bとを設けており、上下方向について二分されている。
図示の実施形態においては、例えば、収容篭20の内径を4m、密閉空間20bの高さH20bを0.8mに設定している。その様な数値に設定すると、収容篭20の床面積は10m2以上(12.56m2)となり、避難民一人が占有するスペースが0.1m2としても、約100人の避難民を収容することが出来る。
また、密閉空間20bの高さH20bが約0.8mであれば、約10tの浮力を確保することが出来る。約100人の避難民の総重量を7.5t(一人75kgと推定)とすれば、収容篭20の密閉空間20bによって、約100人の避難民の総重量を上回る浮力が確保出来るのである。そのため、津波が押し寄せた際に、収容篭20が約100人の避難民を収容していても、密閉空間20bの浮力により、収容篭20は津波の水面よりも高い位置まで直ちに浮上することが出来る。
【0024】
図2で示すように、避難塔10は、地表Gf近傍に打設された基礎1に固定されている。
地表Gf近傍に打設された基礎1には、地中に打設した1対のアンカー2の頭部が、公知の手段(例えば、アンカープレート)によって固定されている。アンカー2の頭部は、カプラー5により、鋼棒6の下端と接続されている。
明確には図示させていないが、例えば、アンカー2の頭部には雄ねじが形成されており、カプラー5の内壁面にはアンカー2の頭部の雄ねじと螺合する雌ねじが形成されており、鋼棒6の下端にもカプラー5内壁面の雌ねじと螺合する雄ねじが形成されている。そして、アンカー2頭部の雄ねじと鋼棒6下端の雄ねじが、共に、カプラー5内壁面の雌ねじに螺合することによって、アンカー2頭部と鋼棒6下端が接続される。
【0025】
図2において、避難塔用ユニットU1(図示の例では6個)及び最下層の避難塔用ユニットU2に形成されている貫通孔ha(図3、図4参照)には、ユニットU1、U2が基礎1の上面に積層された状態において、鋼棒6が挿通される。
そして、鋼棒6の上端を、アンカー2の頭部と同様に、従来公知の態様で鋼棒6に張力を付加しつつ、プレート7、アンカーヘッド8により固定することで、基礎1の上面とプレート7とによって挟まれた全てのユニットU2、U1は一体的に結合され、基礎1の上面に堅固に固定される。
図2において、2点鎖線で示すのは開口部12(図1参照)である。開口部12は、避難塔用ユニットU2に設けられており、投影面が矩形である。
【0026】
図1において、避難塔10(最下層の避難塔用ユニットU2)に設けた開口部12は、水平方向寸法が符号W12で示されており、垂直方向寸法が符号H12で示されている。
図5において、収容篭20は矩形の開口21を有しており、開口21は密閉空間20bの上端から上方(避難民収容スペース側)に延在している。収容篭20の開口21における水平方向寸法を符号W21、垂直寸法を符号H21で示す。図示の実施形態では、収容篭20の開口21における水平方向寸法W21、垂直寸法H21は、避難塔用ユニットU2に形成された開口部12における投影面の水平方向寸法W12、垂直方向寸法H12と同値である。
また、図示の実施形態では、開口21の上端は、収容篭20の天蓋20tよりも下方に位置している。しかし、開口21の上端を、収容篭20の天蓋20tと面一にしても良い。
【0027】
図6において、避難塔10中央に形成された中空部11の内周面11fには、1対のガイドレール13が取り付けられている。図6では、1対のガイドレール13の一方のみを図示している。
図6では図示されていないが、1対のガイドレール13は、中空部11における垂直軸(避難塔10の中心)に対して対称な位置に取り付けられており、中空部11の上端から下端に亘って、垂直方向に延在している。
【0028】
また図6において、収容篭20の外周面20fには1対のブラケット25が取り付けられている。図6では、1対のブラケット25の一方のみを図示している。
図6では明示されていないが、一対のブラケット25は、収容篭20の垂直軸(中心)に中心に対して対称な位置に取り付けられている。そして、図6で示すように、ブラケット25には、車輪(ころ:ローラー)26が回転自在に軸支されている。
図示の実施形態では、ガイドレール13及び車輪(ころ:ローラー)26を取り付けるために、避難塔10中央に形成された中空部11の内径寸法(4.5m)を、収容篭20の外径(4.0m)よりも若干(0.5m)大きく設定している。
【0029】
収容篭20と中空部11の断面形状が円形であるため、ガイドレール13及び車輪(ころ:ローラー)26を有していなければ、収容篭20が中空部11内を浮上して、再び地上側に降下する間に、中空部11の円周方向位置と収容篭20の円周方向位置とが相対移動してしまい、収容篭20の開口21と避難塔10の開口部12が整合せず、津波が収まった後、収容篭20が地上まで降下した際に、収容篭20内の避難民が避難塔10から出られなくなる恐れがある。
ガイドレール13及び車輪(ころ:ローラー)26を有することにより、収容篭20が中空部11内を浮上して、再び地上側に降下する際に、中空部11の円周方向位置と収容篭20の円周方向位置とが相対移動せず、収容篭20が地上側に降下した場合に、開口21と避難塔10の開口部12が整合することが保証される。
【0030】
図5で示すように、収容篭20には、開口21に格子22が設けられている。
第1実施形態に係る津波シェルター100では、収容篭20は、避難塔10の中空部11内の下方位置(避難塔10の開口部12と収容篭20の開口21とが整合する位置)に固定されており、その状態では避難塔10の中空部11内を浮上しない様になっている。
そして、格子22で開口21を閉鎖すると(格子22が開口21の下方位置で固定されると)、収容篭20の固定状態が解除されて、避難塔10の中空部11内を浮上する様に構成されている。
【0031】
図7は移動解除装置400の参考例を示しており、移動解除装置400は、収容篭20を避難塔10の中空部11内の下方位置(避難塔10の開口部12と収容篭20の開口21とが整合する位置)に固定し、格子22で開口21を閉鎖すると(格子22が開口21の下方位置で固定されると)固定を解除して、垂直方向に移動可能にせしめる機能を有している。移動解除装置400は、収容篭20の上端近傍に設けられている。
以下、図7を参照して、移動解除装置400の参考例について説明する。
なお、図7において、符号7Hで示す領域は平面を示しており、符号7Vで示す領域は立面を示している。
【0032】
移動解除装置400は、収容篭20の側縁部において、解除レバー40と、ピン41と、フック42と、リターンスプリング43と、第1のワイヤー44と、プーリー45と、ワイヤー緊張用錘46と、第2のワイヤー47を備えている。
解除レバー40は、収容篭20の外縁部(外周)近傍でピン41回りに回動自在に軸支されており、ピン41は、収容篭20の垂直中心軸と平行に延在して配置されている。解除レバー40は全体がL字状であり、第1のアーム40aと、第2のアーム40bを有している。
第1のアーム40aと第2のアーム40bとの接続部には、ピン41の挿通孔(図示せず)が形成されている。そして、第2のアーム40bの先端近傍には、長孔40cが形成されている。
【0033】
避難塔10側の中央空間11の内周面11fには、ロック溝11cが形成されている。ロック溝11cの断面は矩形であり、その輪郭は円弧状である。
収容篭20を避難塔10の中空部11内の下方位置(避難塔10の開口部12と収容篭20の開口21とが整合する位置)に固定する際(ロック時)には、ロック溝11cに解除レバー40の第1のアーム40aが係合して、第1のアーム40aとロック溝11cの垂直方向(図7の領域7Hでは紙面に垂直な方向)の相対移動を抑止する。その結果、収容篭20は、避難塔10の中空部11内を垂直方向に移動しない。
【0034】
図7で示すように、フック42は、第1のフック42a、スプリングシート42b、軸部42c、第2のフック42dを有している。第1のフック42a、スプリングシート42b、軸部42c、第2のフック42dは、一体に形成されている。
第1のフック42aは、解除レバー40の第2のアーム40bにおける長孔40cと係合している。そして第2のフック42dには、第1のワイヤー44の一端が係止されている。
【0035】
解除レバー40近傍には壁面20sが形成されており、壁面20sはリターンスプリング43の座面である。リターンスプリング43は、ロック状態(図7の実線で示す状態)において、解除レバー40の第2のアーム40bと対向する位置に配置されている。
壁面20sとフック42のスプリングシート42bの間には、リターンスプリング43が介装されている。リターンスプリング43は、フック42の軸部42cを包囲する態様で配置されている。
【0036】
第1のワイヤー44はプーリー45に掛け回され、ワイヤー緊張用錘46の上端に接続されている。
ワイヤー緊張用錘46は、第1のワイヤー44に張力を付与する程度の質量を有している。ただし、ワイヤー緊張用錘46の質量は、リターンスプリング43の反撥力に抗して収縮するには至らない。
ここで、ワイヤー緊張用錘46は、収容篭20に形成されたガイド孔20g内を移動し、ワイヤー緊張用錘46により第1のワイヤー44は緊張した状態に保持されるので、第1のワイヤー44がプーリー45から外れてしまうことはない。
【0037】
ワイヤー緊張用錘46の下端には第2のワイヤー47が接続され、ワイヤー47は格子22に接続されている。換言すると、格子22は、第2のワイヤー47、ワイヤー緊張用錘46、第1のワイヤー44、フック42を介して、解除レバー40に接続している。
格子22が、収容篭20の開口21を閉鎖しておらず、格子22は開口21の下方位置よりも上方の位置にあり、開口21は開放された状態(開いた状態)となっている。
【0038】
格子22が上方の位置にあり、開口21が開いた状態では、第2のワイヤー47は緊張されておらず、いわゆる「ゆるんだ」状態となっている。
この状態では、図7の実線で示すように、解除レバー40の第1のアーム40aがロック溝11cに係合して、第1のアーム40aとロック溝11cの垂直方向(図7の領域7Hでは紙面に垂直な方向)の相対移動を抑止して、収容篭20が避難塔10の中空部11内を垂直方向に移動するのを規制する。
【0039】
津波の警報が出され、避難民が収容篭20内に避難して、格子22を開口21の下方まで下ろして、開口21を閉鎖すると、格子22を下降する動作が、第2のワイヤー47、ワイヤー緊張用錘46を介して、第1のワイヤー44に伝達され、プーリー45により、第1のワイヤー44は図7の右方向に引っ張られる。
第1のワイヤー44が図7の右方向に引っ張られることにより、リターンスプリング43は弾性反撥力に抗して収縮され、解除レバー40は図7において時計回りに回動して、図7において破線で示す状態となり、ロック溝11cと契合した状態(ロック状態)が解除される。
その結果、第1のアーム40aとロック溝11cの垂直方向(図7の領域7Hでは紙面に垂直な方向)の相対移動が可能となり、収容篭20は避難塔10の中空部11内を垂直方向に移動することが出来る。
【0040】
図1〜図7で説明した第1実施形態によれば、避難塔10の下方には開口部12が形成され、収容篭20の避難民収容(上方区画)スペース20aには開口21が設けられており、収容篭20の開口21は避難塔10の開口部12と整合した位置に形成されているので、避難民は、避難塔10の開口部12及び収容篭20の開口21を介して、収容篭20の内部に避難することが出来る。
収容篭20の内径を例えば4mとすれば、その床面積は10m2以上(12.56m2)となり、収容篭20内には、約100人の避難民を収容することが出来る。
【0041】
ここで、収容篭20は上下方向に、避難民収容(上方区画)スペース20aと、密閉空間(下方区画)20bとに仕切られており、下方区画である密閉空間20bは密閉された空間であるため、当該密閉空間の高さ寸法が約0.8mであれば約10tの浮力を確保することが出来る。そして、収容篭20の密閉空間(下方区画)20bによって、約100人の避難民(一人75kgとして、総重量7.5t)の総重量を上回る浮力を確保することが出来る。
そのため、津波が押し寄せた際に、収容篭20は津波の水面よりも高い位置まで直ちに浮上することが可能であり、収容篭20内に避難した避難民の安全が確保される。
【0042】
その際に、収容篭20内に水が浸入しても、収容篭20が浮上する際に、鉄格子22の隙間から当該浸入した水が排出されるので、収容篭20に避難した人々が溺れてしまうことはない。
また、開口21の上縁は収容篭20の避難民収容(上方区画)スペース20aの天井よりも下方に位置しているため、津波により開口部(開口21を閉鎖する格子22の隙間)21から水が浸入しても、開口21の上縁から避難民収容(上方区画)スペース20aの天井の間の空間に空気溜まりが形成されるので、避難民の呼吸は確保され、収容篭20内に避難した人々が溺死してしまうことが防止される。
ここで、収容篭20の開口21の上端を、収容篭20の天蓋20tと面一にした場合には、収容篭20の上方の領域に空気溜りは形成されない。しかし、津波が押し寄せた際に、収容篭20の密閉空間(下方区画)20bによって、収容篭20は津波の水面よりも高い位置まで直ちに浮上する。そして、収容篭20が浮上すると共に、収容篭20内に浸入した水は、開口21あるいは格子22の隙間から排出されるので、収容篭20に収容された避難民が溺れてしまうことはない。
【0043】
図1〜図7の第1実施形態によれば、収容篭20は避難塔10の中空部11内に挿入されているため、収容篭20の密閉空間(下方区画)20bの浮力が作用した際には、避難塔10内の中空部11内を垂直方向上方に移動する。
すなわち、収容篭20は避難塔10により包囲された状態に保持されている。そのため、津波により流されてしまうことが防止される。また、津波により押し流された浮遊物が避難塔10に衝突しても、収容篭20内の避難民は避難塔10により保護され、当該衝突により損傷を受ける恐れが少ない。
【0044】
図1〜図7の第1実施形態では、津波等の心配がない日常時には、避難塔10の開口部12及び収容篭20の開口21を、開放した状態にしておくことにより、収容篭20の内部を、外部から常時視認可能な状態にすることが出来る。
常時視認可能な状態にすることにより、収容篭20の内部を浮浪者等が不法占拠することが出来なくなり、また、収容篭20の内部が子供達の遊び場となってしまうことも防止することが出来る。
そのため、避難塔10あるいは収容篭20の内部を管理するために常駐の人員を配置しておく必要がなく、津波等の心配がない日常時における管理コストを低く抑えることが出来る。
【0045】
津波の警報が出され、収容篭20内に避難する際に、収容篭20の開口21で人が横たわっている状態(倒れている状態)で、収容篭20が避難塔10の中空部11内を垂直方向上方に浮上すると、避難塔10の開口部12と収容篭20の開口21で人体が挟まれ、押圧あるいは剪断されて、重大な損傷を受ける可能性が存在する。
しかし、図示の第1実施形態によれば、収容篭20には固定及び解除機構400が設けられており、前記格子22が下方位置で固定されると収容篭20の固定及び解除レバー40は解除部材(42〜47)により解除されて、収容篭20は避難塔10の中空部11内を垂直方向上方に移動(浮上)する様に構成されている。
換言すれば、前記収容篭20は、格子22が下方位置で固定されない限りは、避難塔10の中空部11内を垂直方向上方に移動(浮上)することはない。そのため、収容篭20の開口21で人が横たわっている状態(倒れている状態)では、格子22を下方位置で固定することは出来ず、収容篭20は垂直方向上方に移動(浮上)することができない。そして、収容篭20の開口21で横たわっている人(倒れている人)が、避難塔10の開口部12と収容篭20の開口21で挟まれて、押圧・剪断されることはなく、押圧により重大な損傷を受ける恐れもない。
【0046】
図8は、第1実施形態の第1変形例を示している。
図1〜図7で説明した第1実施形態では、避難塔用ユニットUAの中空部11u及び収容篭20の水平断面は円形である。
図8の第1変形例では、避難塔用ユニットUAの中空部11u及び収容篭20Aの水平断面形状が、楕円形となっている。中空部11u及び収容篭20Aの断面形状を楕円に形成することにより、避難塔用ユニットUAの円周方向位置と、収容篭20Aの円周方向位置とは、その相対位置が常に一定になる。
そのため、ガイドレール13及び案内車輪26を省略しても、収容篭20Aが中空部11uを浮上して、津波が引いた後に下降した際に、収容篭20Aの開口21と、避難塔10の開口部12が整合した位置になる。
第1変形例におけるその他の構成及び作用効果は、図1〜図7の第1実施形態と同様である。
【0047】
図9は、第1実施形態の第2変形例を示している。
図9の第2変形例では、避難塔用ユニットUBが複数の分割片(図示の例では6個の分割片)に分割して構成されている。
6個に分割されたた避難塔用ユニットUBの分割片は、施工現場において、図9で示す様に接合することが出来る。例えば、公知のトンネル用ライニング組立技術を適用して、6個の分割片を図9で示す状態に接合する。
【0048】
図1〜図8で示す避難塔用ユニットU1、U2、UAは寸法が大きいため、貨物自動車で運搬する際には、交通法規上、1台の貨物自動車当たり1個の避難塔用ユニット(U1、U2、UA)しか積載することが出来ない。そのため、運搬コストが高騰する恐れがある。
これに対して、図9の第2実施形態では、避難塔用ユニットUBを複数の分割片に分割して貨物自動車に積載することが出来る。個々の分割片の寸法は、避難塔用ユニットU1、U2、UAに比較して小さいので、避難塔用ユニットU1、U2、UAを運搬する際の交通法規上の制限は適用されない。そのため、複数の避難塔用ユニットUBに相当する数量の分割片を、1台の貨物自動車に積載することが出来る。その結果、運送コストを大幅に抑制することが出来る。
図9の第2変形例におけるその他の構成及び作用効果は、図1〜図8の実施形態と同様である。
【0049】
図10、図11は、第1実施形態の第3変形例を示している。
第1実施形態の第3変形例は、収容篭20の上方の区画である避難民収容スペース20Aaを、仕切壁(2階の床)202fによって、上下の区画に2分している。
図10において、第3変形例に係る収容篭20Aは、1階の床201fによって避難民収容スペース20Aaと密閉空間20Abに二分されている。そして、避難民収容スペース20Aaは、2階の床(仕切壁)202fによって、1階部201Afと、2階部202Afに(上下方向に)二分されている。
【0050】
図11で示す様に、2階の床202fは、円弧の一部が弓状に欠損した円形であり、その欠損箇所の中央に、鉄梯子20Arが掛けられている。この鉄梯子20Arにより、1階の床201fと2階の床202fとの往来が保証される。
2階の床202fにおける弓状に欠損した箇所の近傍には、2階に上がった避難民の転落を防止する手摺り20Adが設けられている。
【0051】
避難民収容スペース20Aaの外周部には、避難民が避難民収容スペース20Aaに駆け込むための開口21Aが設けられている。
図10において開口21Aの高さ寸法はH21Aで示され、図11において開口21Aの間口寸法はW21Aで示されている。
図示の例では、開口21Aの位置は、鉄梯子20Arを正面中央に見据える位置となっている。なお、開口21Aの下端は、1階の床201fと面一になっている。
【0052】
収容篭20Aの直径を第1実施形態の収容篭20の直径と同一に設定して、収容される避難民の総数を第1実施形態のN倍(例えば1.7倍)とすれば、図10下方の密閉空間20Abの高さ寸法H20bは、第1実施形態における密閉空間20bの高さH21の少なくともN倍(例えば1.7倍)以上とするべきである。
また、避難民収容スペース20Aaの高さ方向寸法は、大人の身長(例えば1.7m)の2倍以上の数値、例えば4mとするのが好ましい。
【0053】
図12は、第1実施形態の第4変形例を示している。
図1〜図7の第1実施形態では、避難塔10における開口部12の下端は地表Gfと面一であった。
それに対して、図12の第4変形例では、避難塔10Aにおける開口部12Aの下端12Abを、地表GfよりもHbだけ高くして、地表Gfと開口部12Aの下端12Abの間の領域には、階段(あるいはスロープ)15が設けられている。
【0054】
図12において、符号Dは、人が水中を移動可能な限界の水位であり、水位がDの値を超えると、避難民は水に脚を取られてしまい、避難塔10内に近接することが困難になってしまう値である。
津波により浸水の水位が水位Hbを超えれば、海水は避難塔10A内に侵入し、収容篭20に浮力が作用して、避難民を収容した収容篭20は、避難塔10A内の中空部11内を上方に移動(浮上)して、収容された避難民は津波の難から逃れることができる。
【0055】
図12で示すように、開口部12Aの下端12Abの地表Gfからの高さ方向寸法Hbの値を、水位Dよりも大きく設定すれば、浸水のレベルが収容篭20が避難塔10A内の中空部11内を上方に移動(浮上)する水位(水位Hb)に到達したならば、避難民は避難塔10Aに近接することが出来なくなる。
収容篭20内の避難民は、開口部12Aの下端12Abに浸水レベルが到達した段階で格子22を閉鎖し、移動解除装置400(図7参照)によって収容篭20を浮上可能な状態にせしめることにより、収容篭20に作用する浮力によって、避難民を収容した収容篭20が避難塔10A内の中空部11内を上方に移動(浮上)して、津波の難から逃れることができる。
【0056】
浸水レベルが水位Hbに到達した段階で、避難塔10Aに到達出来ていない避難民は、避難塔10Aに到達することが既に不可能である。図12の第4変形例では、浸水レベルが開口部12Aの下端12Abに到達した段階で、収容篭20内の避難民は開口21を格子で閉鎖して、移動解除装置400により収容篭20を浮上可能な状態にせしめることにより、避難塔10Aの直近に到達しながら、収容篭20内にたどり着けない避難民を待つことなく、収容篭20を浮上させることが出来る。これにより、避難塔10Aの直近に到達しながら、収容篭20内にたどり着けない避難民を待って、収容篭20内に避難した避難民の安全が脅かされる事態を、避けることが出来る。
【0057】
図示はされていないが、図7で示す移動解除装置400とは別の態様の移動解除装置を設け、津波の浸水レベルが開口部12Aの下端12Abに到達したことを感知するセンサ(図示せず)を設け、図示しない移動解除装置は、前記センサ(津波の浸水レベルが開口部12Aの下端12Abに到達したことを感知する図示しないセンサ)により津波の浸水レベル(が開口部12Aの下端12Abに到達したこと)を感知した場合に、収容篭20の固定を解除して、避難塔10Aの中空部11内を浮上可能な状態にする機能を有する様に構成することが可能である。
【0058】
次に、図13〜図16を参照して、第1実施形態の津波シェルター100の構築方法を説明する。
先ず、図13で示す工程では、津波シェルター100を構築する現場において、地表Gf下にコンクリートの基礎1を打設し、複数(図示の例では2本)のアンカー2を打設する。
基礎1の上面に突出したアンカー2の頭部には、雄ねじ2aが形成されている。アンカー2の頭部はプレート3を貫通し、公知の態様にて、例えばジャッキ(図示せず)によって張力が付加され、複数のヘッド4で固定されている。図示しないジャッキは、ヘッド4でアンカー2の頭部を固定した後に撤去される。これにより、複数のアンカー2は、張力が作用した状態で打設される。
【0059】
図13に続く図14の工程では、基礎1に設けた複数のアンカー2頭部に、複数のカプラー5により、剛性を有する複数の鋼棒6を接続している。
複数のアンカー2頭部には雄ねじ2aが形成され、複数の鋼棒6には雄ねじ6aが形成されている。そして、カプラー5の内壁面には、雄ねじ2aおよび雄ねじ6aと螺合する雌ねじ(図示せず)が形成されている。
カプラー5内壁面の雌ねじ(図示せず)を、複数のアンカー2頭部には雄ねじ2aと、鋼棒6には雄ねじ6aに螺合することにより、アンカー2頭部と鋼棒6が接続される。
【0060】
図14に続く図15の工程では、先ず、避難塔用ユニットU2(最下層のユニット)の貫通孔haに鋼棒6を挿通させ、避難塔用ユニットU2を基礎1の上方に設置する。
次いで、複数の避難塔用ユニットU1の貫通孔ha(図示を省略)に、鋼棒6を順次挿通させ、6枚の避難塔用ユニットU1をユニットU2の上に順次積層する。
図15では、避難塔用ユニットU2と5枚の避難塔用ユニットU1が積層された状態が示されている。
【0061】
図16の工程では、最後の避難塔用ユニットU1を積層した後、最後の避難塔用ユニットU1の上面に突出した鋼棒6上端の雄ねじ6aにプレート7を介装し、アンカー頭部と同様に、例えばジャッキ(図示せず)を用いて鋼棒6に張力を付与する。そして、図示しないジャッキを撤去して、締結アンカーヘッド8により鋼棒6の上端を固定する。
図示は省略しているが、この後、全ての避難塔用ユニットU2、U1が積層された状態の中空部11の所定位置に、1対のガイドレール13(図6参照)を敷設する。
これにより、避難塔10の構築が完了する。
【0062】
図16で示す工程において、避難塔10の構築が完了したならば、収容篭20を、例えば図示しないクレーン等を用いて、避難塔10の上方まで吊り上げる。そして、収容篭20に取り付けた1対の車輪26(ころ、ローラー:図5、図6参照)を、避難塔10の1対のガイドレール13に嵌合させる。1対の車輪26を1対のガイドレール13に嵌合させたならば、避難塔10の中空部11内に収容篭20を挿入する。
収容篭20を避難塔10の中空部11内に挿入するに際して、収容篭20の格子22で開口21を閉鎖した状態(格子22が開口21の下方位置まで降ろされた状態)にしておく。そのようにすれば、図7で示す解除装置400の解除レバー40は、図7の破線で示した位置となり、解除レバー40が中空部11の内周面11f(図7参照)と干渉することなく、収容篭20を避難塔10の中空部11内に挿入することが出来る。
【0063】
収容篭20を避難塔10の中空部11内の最下部まで降下させたならば、格子22を上方に移動させて(開口21を開放して)、解除装置400の解除レバー40をロック位置(図7の実線の位置)に戻し、レバー40の先端を避難塔10の中空部11の内周面11fに形成されたロック溝11cに係合させる。
これにより、収容篭20が避難塔10の中空部11内の最下部に固定される(ロック状態となる)。
これにより、津波シェルターが完成する。
【0064】
図17を参照して、第1実施形態の津波シェルター100の設置場所を説明する。
第1実施形態の津波シェルター100は、海浜に面した箇所に設けられる。図17では、3基の津波シェルター100が示されている。
図17において、水平断面が楕円の各津波シェルター100は、長軸中心線Lcが海岸線Lsと直交する様に構築されている。
【0065】
長軸中心線Lcが海岸線Lsと直交する様に配置することにより、津波は津波シェルター100の尖った先端100tに到達すると、図17において矢印で示すように、津波の押し寄せる力が先端100tにより2方向に分岐され、津波の押し寄せる力が津波シェルター100に直接作用することがない。
そのため、津波シェルター100に直接作用する力が減衰して、津波シェルター100の破損、破壊を防止することができる。換言すれば、津波シェルター100に直接作用する力が減衰する分だけ、設計強度や材料使用量を低減することが可能となる。
【0066】
次に、図18〜図31を参照して、第2実施形態を説明する。
図1〜図17を参照して説明した第1実施形態(第1変形例〜の第4変形例を含む)は、平坦な海浜領域に設置されることが前提となっている。
それに対して、図18〜図31で示す第2実施形態は、背後に傾斜面(法面)を有する地形に構築される。
【0067】
図18において、全体を符号101で示す津波シェルターは、避難塔10Aと、避難塔10A内の収容篭20を備えている。
収容篭20は、図1〜図17の第1実施形態における収容篭20と同様である。
【0068】
避難塔10Aは、複数の避難塔ユニット(最下層のユニット以外のユニット)UA1と、1個の避難塔ユニット(最下層のユニット)UA2を備えている。
避難塔ユニットUA1、UA2は全て外形(水平断面)が円形である。そして、最下層の避難塔ユニットUA2には開口部12Aが形成されている。
避難塔10Aの中心には、避難塔10Aを上下方向に延在する中空部11Aが形成されている。この中空部11Aは、図1〜図17の第1実施形態における中空部11と同様である。
【0069】
図示では明確ではないが、避難塔10Aにおける開口部12Aの位置と、収容篭20における開口21の位置とは、整合している。従って、避難民は、避難塔10Aにおける開口部12Aおよび収容篭20における開口21を介して、収容篭20内に避難することが出来る。
第2実施形態の避難塔10A、あるいは避難塔ユニットUA1、UA2は、図1〜図17の第1実施形態とは異なり、その水平断面形状が円形に構成されている。
【0070】
図18、図19において、避難塔10Aは、傾斜面30に掘削された所定幅Bの溝30Cに囲まれるように構築されている。ここで、所定幅Bの値は、傾斜面の土質や、避難塔10Aの直径によって設定される。
溝30Cは、垂直方向に延在して掘削されており、図19において、溝30C上端部における水平断面形状は半円形であり、曲率半径はB/2である。
図18、図19において、溝30Cの底部は、符号30Cbで示している。
図示は省略しているが、溝30Cの底部30Cbの直下には、コンクリートの基礎1が打設されている。
【0071】
図19において、避難塔10Aの左右方向位置は、避難塔10Aの中心線をLcとすれば、溝30Cの奥行き方向端部(図19における右端)から中心線Lcまでの距離は、溝30C上端部の水平断面形状の曲率半径「B/2」である。
図18、図19においてハッチングを付して示すように、溝30Cと避難塔10Aとで形成される隙間の内、溝30Cにおける奥行き方向端部(図19における右端)側の領域を、固化材(例えば、コンクリート)9で固定している。ここで、固化材9で固定されている領域は、水平断面が半円形である。
【0072】
図18、図19で示す第2実施形態によれば、津波シェルター101(避難塔10A)は、固化材9を介して、溝30Cに固定されており、傾斜面30を有する地山(あるいは、丘陵地)に包囲されている。
そのため、津波が押し寄せたとしても、津波シェルター101は地山によって包囲され、保護されているので、津波シェルター101の避難塔10Aが津波の力によって破損、破壊することが防止される。
換言すれば、地山(あるいは、丘陵地)に包囲され、保護されている津波シェルター101は、図1〜図17の津波シェルター100に比較して、津波に対する耐性が強く、破損、倒壊し難い。そのため、図1〜図17の津波シェルター100の様に、避難塔の水平断面形状を長軸端部が尖った楕円形にして津波の力を分散する必要はない。
係る理由により、図18、図19で示す第2実施形態によれば、津波シェルター101の避難塔10Aの水平断面形状を円形にしても、津波により破損、倒壊することはない。
【0073】
次に、図20〜図31を参照して、第2実施形態の津波シェルター101の構築方法を説明する。
先ず、図20、図21の工程では、傾斜地30の法面に、幅B(図18参照)の溝30Cを掘削する。図18、図19で説明したように、溝30の上端における水平方向断面は、半円形となっている。
図20、図21において、符号30Cbは溝30Cの底部を示している。
【0074】
図20、図21に続く図22、図23の工程では、溝底部30Cbにコンクリートの基礎1を打設する。
そして、複数(図示の例では2本)のアンカー2を打設する。
基礎1の上面に突出した複数のアンカー2の頭部には、雄ねじが形成されている。アンカー2の頭部は、プレート3を貫通しており、アンカーヘッド4で固定されている。公知の態様で(例えば、図示しないジャッキにより)アンカー2に張力を付与しつつ、プレート3、ヘッド4でアンカー2を固定する。
【0075】
図22、図23に続く図24、図25の工程では、基礎1に設けた複数のアンカー2頭部を、複数のカプラー5により、剛性を有する複数の鋼棒6と接続する。
複数の鋼棒6には雄ねじ(図示せず)が形成されている。
カプラー5により、アンカー2頭部を鋼棒6に接続する態様は、図1〜図17の第1実施形態と同様である。
【0076】
図24、図25に続く図26、図27の工程では、先ず、最下層の避難塔用ユニットUA2の図示しない貫通孔に鋼棒6を挿通させ、避難塔用ユニットUA2を基礎1の上面に設置する。
次いで、複数の避難塔用ユニットUA1の図示しない貫通孔に、鋼棒6を、順次挿通させ、6枚の避難塔用ユニットUA1をユニットUA2の上に積層する。
図26、図27では、最下層の避難塔用ユニットUA2と、3層の避難塔用ユニットUA1が積層された状態が示されている。
【0077】
図26、図27に続く図28、図29の工程では、6層の避難塔用ユニットUA1が積層された後、最後の避難塔用ユニットUA1の上面に突出した鋼棒6に張力を付加して、最上層の避難塔用ユニットUA1に固定する。
アンカーに張力を付加して頭部を固定する公知の態様と同様に、鋼棒6の上端をプレート7を貫通させて、図示しないジャッキを用いて鋼棒6に張力を付加し、図示しないジャッキを撤去した後にアンカーヘッド8で固定している。
【0078】
図28、図29に続く図30、図31の工程では、明確には図示されていないが、避難塔用ユニットUA2、UA1が積層された状態の避難塔10Aにおける中空部11Aの所定位置に、1対のガイドレール13(図6参照)を敷設する。
これにより、避難塔10Aの構築が完了する。
【0079】
避難塔10Aの構築が完了したならば、図30、図31の工程において、収容篭20を、例えば図示しないクレーン等により、避難塔10Aの上方まで吊り上げる。
そして、収容篭20に取り付けた1対の車輪26(ころ、ローラー:図6参照)を、1対のガイドレール13に嵌合して、収容篭20を避難塔10の中空部11A内に挿入する。
その際に、解除装置400(図7参照)による操作に関しては、図16を参照して説明したのと同様である。
【0080】
図18〜図31の第2実施形態におけるその他の構成及び作用効果は、図1〜図17の実施形態と同様である。
そして、図示はされていないが、図18〜図31の第2実施形態は、図8〜図12の第1実施形態の変形例と組み合わせることが出来る。
【0081】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではないことを付記する。
【符号の説明】
【0082】
1・・・基礎
2・・・アンカー
5・・・カプラー
6・・・棒状部材/鋼棒
10・・・避難塔
11・・・中空部
12・・・開口部
13・・・ガイドレール
20・・・収容篭
21・・・開口
22・・・格子
40・・・固定及び解除レバー
100・・・津波シェルター
400・・・固定及び解除機構
【特許請求の範囲】
【請求項1】
避難塔と収容篭を有しており、
前記避難塔は、長円の両端部が尖った楕円形の断面形状を有し、当該長円の尖った形状の両端部の何れか一方が海側を向いて配置されており、楕円形断面の中央部には中空部を形成しており、中央に中空部を有する長円の両端部が尖った楕円形断面の単位部材が複数積層されており、下方には開口部が形成されており、
前記収容篭は前記避難塔の断面中央部の中空部の断面形状と同一の断面形状であり、前記収容篭の断面積は前記避難塔の断面中央部の中空部の断面積よりも小さく、
前記収容篭は上下方向に2つの区画に仕切られており、下方の区画は密閉された空間であり、上方の区画は避難民を収容する収容スペースとして構成されており、
上方の区画には開口が設けられており、当該開口には上下動可能で且つ上方位置と下方位置で固定可能な格子が設けられており、前記開口は前記避難塔の下方に形成された開口部と整合した位置に形成されていることを特徴とする津波シェルター。
【請求項2】
避難塔と収容篭を有しており、
前記避難塔は、傾斜面に掘削された垂直方向に延在する溝内に固定されており、断面円形であり、円形断面の中央部には中空部を形成しており、中央に中空部を有する断面円形の単位部材が複数積層されており、下方には開口部が形成されており、
前記収容篭は前記避難塔の断面中央部の中空部の断面形状と同一の断面形状であり、前記収容篭の断面積は前記避難塔の断面中央部の中空部の断面積よりも小さく、
前記収容篭は上下方向に2つの区画に仕切られており、下方の区画は密閉された空間であり、上方の区画は避難民を収容する収容スペースとして構成されており、
上方の区画には開口が設けられており、当該開口には上下動可能な格子が設けられており、前記開口は前記避難塔の下方に形成された開口部と整合した位置に形成されていることを特徴とする津波シェルター。
【請求項3】
避難塔における開口部の下端を、地表よりも高くして、地表と開口部の下端の間の領域に階段を設け、開口部の下端の地表からの高さ方向寸法が、人が水中を移動可能な限界の水位よりも大きな数値である請求項1または請求項2の津波シェルター。
【請求項4】
基礎に設けたアンカー頭部にカプラーにより剛性を有する棒状部材を接続する工程と、
前記棒状部材を挿入可能な貫通孔を形成し且つ中央に中空部を有する長円の両端部が尖った楕円形断面の単位部材を、前記貫通孔に前記棒状部材を挿入した状態で複数積層する工程を有し、
下方の単位部材には開口部が形成されており、
所定数の単位部材を積層した後、前記棒状部材に張力を付加した状態で最上層の単位部材に定着する工程と、
単位部材中央に形成された中空部に、収容篭を挿入する工程を有し、
前記収容篭は前記避難塔の断面中央部の中空部の断面形状(例えば円形、正方形)と同一の断面形状であり、前記収容篭の断面積は前記避難塔の断面中央部の中空部の断面積よりも小さく、
前記収容篭は上下方向に2つの区画に仕切られており、下方の区画は密閉された空間であり、上方の区画は避難民を収容する収容スペースとして構成されており、
上方の区画には開口が設けられており、当該開口には上下動可能な格子が設けられており、前記開口は前記避難塔の下方に形成された開口部と整合した位置に形成されていることを特徴とする津波シェルターの構築工法。
【請求項5】
傾斜面の垂直方向に延在する溝を掘削する工程と、
前記垂直方向に延在する溝の最も地中側の領域に基礎を構築し、当該基礎にアンカーを打つ工程と、
基礎に設けたアンカー頭部にカプラーにより剛性を有する棒状部材を接続する工程と、
前記棒状部材を挿入可能な貫通孔を形成し且つ中央に中空部を有する長円の両端部が尖った楕円形断面の単位部材を、前記貫通孔に前記棒状部材を挿入した状態で複数積層する工程を有し、
下方の単位部材には開口部が形成されており、
所定数の単位部材を積層した後、前記棒状部材に張力を付加した状態で最上層の単位部材に定着する工程と、
所定数の単位部材を積層して構成された避難塔の側方及び工法に固化材を打設して、垂直方向に延在する前記溝を形成された傾斜面に固定する工程と、
単位部材中央に形成された中空部に、収容篭を挿入する工程を有し、
前記収容篭は前記避難塔の断面中央部の中空部の断面形状と同一の断面形状であり、前記収容篭の断面積は前記避難塔の断面中央部の中空部の断面積よりも小さく、
前記収容篭は上下方向に2つの区画に仕切られており、下方の区画は密閉された空間であり、上方の区画は避難民を収容する収容スペースとして構成されており、
上方の区画には開口が設けられており、当該開口には上下動可能な格子が設けられており、前記開口は前記避難塔の下方に形成された開口部と整合した位置に形成されていることを特徴とする津波シェルターの構築工法。
【請求項1】
避難塔と収容篭を有しており、
前記避難塔は、長円の両端部が尖った楕円形の断面形状を有し、当該長円の尖った形状の両端部の何れか一方が海側を向いて配置されており、楕円形断面の中央部には中空部を形成しており、中央に中空部を有する長円の両端部が尖った楕円形断面の単位部材が複数積層されており、下方には開口部が形成されており、
前記収容篭は前記避難塔の断面中央部の中空部の断面形状と同一の断面形状であり、前記収容篭の断面積は前記避難塔の断面中央部の中空部の断面積よりも小さく、
前記収容篭は上下方向に2つの区画に仕切られており、下方の区画は密閉された空間であり、上方の区画は避難民を収容する収容スペースとして構成されており、
上方の区画には開口が設けられており、当該開口には上下動可能で且つ上方位置と下方位置で固定可能な格子が設けられており、前記開口は前記避難塔の下方に形成された開口部と整合した位置に形成されていることを特徴とする津波シェルター。
【請求項2】
避難塔と収容篭を有しており、
前記避難塔は、傾斜面に掘削された垂直方向に延在する溝内に固定されており、断面円形であり、円形断面の中央部には中空部を形成しており、中央に中空部を有する断面円形の単位部材が複数積層されており、下方には開口部が形成されており、
前記収容篭は前記避難塔の断面中央部の中空部の断面形状と同一の断面形状であり、前記収容篭の断面積は前記避難塔の断面中央部の中空部の断面積よりも小さく、
前記収容篭は上下方向に2つの区画に仕切られており、下方の区画は密閉された空間であり、上方の区画は避難民を収容する収容スペースとして構成されており、
上方の区画には開口が設けられており、当該開口には上下動可能な格子が設けられており、前記開口は前記避難塔の下方に形成された開口部と整合した位置に形成されていることを特徴とする津波シェルター。
【請求項3】
避難塔における開口部の下端を、地表よりも高くして、地表と開口部の下端の間の領域に階段を設け、開口部の下端の地表からの高さ方向寸法が、人が水中を移動可能な限界の水位よりも大きな数値である請求項1または請求項2の津波シェルター。
【請求項4】
基礎に設けたアンカー頭部にカプラーにより剛性を有する棒状部材を接続する工程と、
前記棒状部材を挿入可能な貫通孔を形成し且つ中央に中空部を有する長円の両端部が尖った楕円形断面の単位部材を、前記貫通孔に前記棒状部材を挿入した状態で複数積層する工程を有し、
下方の単位部材には開口部が形成されており、
所定数の単位部材を積層した後、前記棒状部材に張力を付加した状態で最上層の単位部材に定着する工程と、
単位部材中央に形成された中空部に、収容篭を挿入する工程を有し、
前記収容篭は前記避難塔の断面中央部の中空部の断面形状(例えば円形、正方形)と同一の断面形状であり、前記収容篭の断面積は前記避難塔の断面中央部の中空部の断面積よりも小さく、
前記収容篭は上下方向に2つの区画に仕切られており、下方の区画は密閉された空間であり、上方の区画は避難民を収容する収容スペースとして構成されており、
上方の区画には開口が設けられており、当該開口には上下動可能な格子が設けられており、前記開口は前記避難塔の下方に形成された開口部と整合した位置に形成されていることを特徴とする津波シェルターの構築工法。
【請求項5】
傾斜面の垂直方向に延在する溝を掘削する工程と、
前記垂直方向に延在する溝の最も地中側の領域に基礎を構築し、当該基礎にアンカーを打つ工程と、
基礎に設けたアンカー頭部にカプラーにより剛性を有する棒状部材を接続する工程と、
前記棒状部材を挿入可能な貫通孔を形成し且つ中央に中空部を有する長円の両端部が尖った楕円形断面の単位部材を、前記貫通孔に前記棒状部材を挿入した状態で複数積層する工程を有し、
下方の単位部材には開口部が形成されており、
所定数の単位部材を積層した後、前記棒状部材に張力を付加した状態で最上層の単位部材に定着する工程と、
所定数の単位部材を積層して構成された避難塔の側方及び工法に固化材を打設して、垂直方向に延在する前記溝を形成された傾斜面に固定する工程と、
単位部材中央に形成された中空部に、収容篭を挿入する工程を有し、
前記収容篭は前記避難塔の断面中央部の中空部の断面形状と同一の断面形状であり、前記収容篭の断面積は前記避難塔の断面中央部の中空部の断面積よりも小さく、
前記収容篭は上下方向に2つの区画に仕切られており、下方の区画は密閉された空間であり、上方の区画は避難民を収容する収容スペースとして構成されており、
上方の区画には開口が設けられており、当該開口には上下動可能な格子が設けられており、前記開口は前記避難塔の下方に形成された開口部と整合した位置に形成されていることを特徴とする津波シェルターの構築工法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
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【図20】
【図21】
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【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【公開番号】特開2013−67952(P2013−67952A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205454(P2011−205454)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(510037215)KJSエンジニアリング株式会社 (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(510037215)KJSエンジニアリング株式会社 (3)
【Fターム(参考)】
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