説明

津波シェルター装置

【課題】津波被害に対して、固定しえない方向から来襲する津波の多大な水圧から、人の安全な避難空間を確保できる津波シェルター装置を提供する。
【解決手段】固定基礎21に対して回転軸体23により回動自在に結合された回転基礎22に、防波壁1と防水空間ユニット3が一体的に設置される。防波壁1は、平面形状が二等辺三角形であり、二等辺の二つの辺の先端頂点が、回転軸体23の近傍に位置する。防水空間ユニット3は、防波壁1に囲われる。二等辺三角形の防波壁1は、津波の圧力を受けて、風見鶏の羽のような働きをし、二等辺三角形の先端頂点が津波の向かってくる方向へ向くように、回転軸体23回りに、回転基礎22、防波壁1、及び防水空間ユニット3が、自動的に回転する。津波の圧力を防波壁1の二等辺三角形の2辺に沿って、効率よくそらされることが可能になり、防波壁1に囲われた防水空間ユニット3を保護しうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、本発明は、津波による人、物、家屋への被害を防ぎ、津波の多大な水圧及び漂流物から家屋を守る津波シェルター装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から家屋については、耐震性能や耐火性能は考慮されてきたが、耐津波性能については、まったくと言っていいほど考慮されてこなかった。
【0003】
大津波に対しては唯一「高所に避難する」という方策しかなく、多くの人、物、家屋の被害がもたらされてきた。他方で、下記特許文献1には、三角形の平面形状をなすシェルター防護台と津波シェルターにより、津波によるシェルター本体への衝撃力への揺動緩和効果をもつ津波シェルターがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許公開2008−074385号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の施設では、津波への揺動緩和効果をもつ三角形の平面形状をなすシェルター防護台は、津波の来襲する方向を一方向と設定し、固定された方向に三角形の頂点をむけることによって、津波シェルターへの揺動緩和効果を認めている。
【0006】
しかしながら、津波の来襲方向は一定ではなく、津波を引き起こす地震源の位置、津波シェルターが設置される地形や津波シェルターの周囲の建造物、障害物との位置、さらに津波の高さ、速さ及び地震時の天候、風向きが複雑に関係して、津波シェルターへの津波の来襲する方向が決められ、また刻々と変化して津波が来襲してくるため、津波の方向は一方向として固定されることはない。
【0007】
よって、津波の来襲する方向を一方向と設定された上記特許文献1の施設では、揺動緩和効果をもつとされる三角形の平面形状をなすシェルター防護台の揺動緩和効果は、十分に機能されない。さらに、既存の建物や家財への物的被害に対しては、何ら対応できていない。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、津波被害に対して、固定しえない方向から来襲する津波の多大な水圧から守る防波壁によって人の安全な避難空間を確保し、津波による人的被害を最小限に食い止めることである。
【0009】
さらに、津波の水圧及び津波で流されてくる漂流物、例えば木、車、土砂等による多大な圧力から、家屋倒壊による物的被害を最小限に食い止めることである。
【0010】
さらに、避難された人の最低限のライフライン、すなわち水、食料、衣類、電気を津波後も保持し、非常用として生存可能な空間及び物資を確保することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の課題を解決するため、第1の発明は、地盤に固定された固定基礎と、この固定基礎に対して回転軸体により回動自在に結合された回転基礎と、この回転基礎に設置され平面形状が二等辺三角形であり、この二等辺の二つの辺により形成される先端頂点が前記回転軸体の近傍に位置する防波壁と、この防波壁に囲われ前記回転基礎に設置された避難用としての防水空間ユニットと、を有することを特徴とする津波シェルター装置である。
第2の発明は、さらに、津波が予想される海岸から見て前記津波シェルター装置の後方直近に既存家屋が存在することを特徴とする津波シェルター装置である。
第3の発明は、さらに、前記防水空間ユニットは、上部に発電装置収納空間、中間部に避難用居住空間、下部に貯水装置収納空間を備えることを特徴とする津波シェルター装置である。
【発明の効果】
【0012】
第1の発明によれば、二等辺三角形の防波壁は、津波の圧力を受けて、あたかも風見鶏の羽のような働きをし、二等辺三角形の先端頂点が津波の向かってくる方向へ向くように、回転軸体回りに、回転基礎、防波壁、及び防水空間ユニットが、自動的に回転する。これにより、津波の圧力を防波壁の二等辺三角形の2辺に沿って、効率よくそらされることが可能になり、防波壁に囲われた防水空間ユニットを保護しうる。よって、津波の多大な水圧から守る防波壁によって人の安全な避難空間を確保し、津波による人的被害を最小限に食い止めることができる。
【0013】
第2の発明によれば、津波は、一度、防波壁に遮られ、さらに防波壁1の二等辺三角形の2辺に沿って効率よくそらされた後に、既存家屋へ向かうので、既存家屋の被害を最小限に食い止めることができる。
第3の発明によれば、防水空間ユニットが、上部に発電装置収納空間、中間部に避難用居住空間、下部に貯水装置収納空間を備えているため、非常用としての生存可能な空間及び物資を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の一実施形態に係る津波シェルター装置の全体平面図である。
【図2】図1の断面図である。
【図3】図1の機能を説明する説明図である。
【図4】図1の機能を説明する説明図である。
【図5】図2の回転体軸付近の拡大図である。
【図6】図1の回転軸体と二等辺三角形の先端頂点との関係を説明する説明図である。
【図7】図1の機能を、船を例にして説明する説明図で、(A)は平面図、(B)は側面図である。
【図8】図1の津波シェルター装置を設置する順序を、ステップ1からステップ7の順に説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態に係る津波シェルター装置について、図1から図8を参照しながら説明する。
[全体概略]
図1及び図2は、防波壁1と、防水空間ユニット3と、津波10の予想される進行方向11と、既存家屋30と、の位置関係を示す平面図及び断面図である。
すなわち、地盤20に固定された固定基礎21に対して回転軸体23により回動自在に結合されて回転基礎22が設けられる。この回転基礎22に、防波壁1と防水空間ユニット3が一体的に設置される。防波壁1は、平面形状が二等辺三角形である。この二等辺の二つの辺により形成される先端頂点2が、回転軸体23の近傍に位置する。防水空間ユニット3は、この防波壁1に囲われ、人の避難用として用いられる。そして、防波壁1と防水空間ユニット3とは、全体として、概略二等辺三角柱状を有する。
【0016】
防波壁1は、二等辺三角形の平面形状で、好ましくは例えば、この実施形態のように正三角形の平面形状で、鉄筋コンクリート製である。津波の圧力12により、この二等辺三角形を構成する二等辺の二つの辺により形成される先端頂点2が、津波10の進行方向11に対向するように、すなわち、津波の向かってくる方向へ向くように、回転軸体23回りに、回転基礎22、防波壁1、及び防水空間ユニット3が、自動的に回転する構造を有する。
さらに、この津波シェルター装置は、津波10の進行方向11に対して既存家屋30の前面に構築される。これにより、津波が予想される海岸から見て津波シェルター装置の後方直近に既存家屋30が存在することになる。この明細書で、この後方「直近」とは、津波が一度、防波壁1に遮られ、そらされたことによる影響が、既存家屋に対して破壊を低減させる効果として後方に残る範囲を言う。
【0017】
津波の圧力により、回転が行なわれる働きを、図3、4,を参照して説明する。
まず、図3で示すように、変化する津波10の進行方向11の圧力12は、防波壁1の壁面1aに対して、斜面圧力13として働く。この壁面1aは、防波壁1の二等辺三角形の平面形状を構成する二等辺のうちの一辺に、相当する壁面である。この壁面1aに働く斜面圧力13の積は、他方の壁面1bに働く斜面圧力の積よりも、大きい。すると、回転軸体23の中心点を中心にして、回転モーメント15が発生し、回転基礎22、防波壁1、及び防水空間ユニット3が、自動的に図中の時計逆回りに回転する。
【0018】
そして、図4で示すとおり回転すると、二等辺三角形の先端頂点2は津波10の進行方向11に対向してくる。そして、津波10の進行方向11に沿って、二等辺三角形の平面形状の防波壁1の先端頂点2及び回転軸体23の中心点と、二等辺三角形の重心点26が同一線上に並ぶと、壁面1aに働く斜面圧力の積は、他方の壁面1bに働く斜面圧力の積と、同一になる。よって、回転モーメントは働かなくなる。このとき、二等辺三角形の先端頂点2は変化する津波10の進行方向11と対向する。
【0019】
[回転軸体]
回転軸体23の付近の構造について図2、5を参照して説明する。
津波シェルターの設置場所に、まず地盤20に、回転軸支持体23aが固定されている固定基礎21を設置する。そして、この回転軸支持体23aへ回転軸体23を支持させるようにして、回転軸体23と同一中心上に固定された回転基礎22を設置する。回転軸体23は回転軸支持体23aに敷き並べられたベアリング球24によって支持される。また、固定基礎21と回転基礎22との間には、好ましくは例えばガラスウール材の緩衝材25を設置し、回転基礎22の回動を妨げないようにしている。
【0020】
このように構成することによって、固定基礎21に対し回転基礎22は回動自在に結合されているため、回転基礎22に対して回転モーメント15(図3参照)が働くと回転基礎22は回動することになり(図4参照)、よって固定された防波壁1へ多大な圧力が働かなくなり、構造体の破壊、倒壊を未然に防ぐことが可能となる。
【0021】
[回転軸体と先端頂点との位置関係]
上記の転針の原理を本発明において応用するための構造を、すなわち回転軸体23と二等辺三角形の先端頂点2との位置関係を、図6を参照して説明する。
すなわち、好ましくは例えば、回転軸体23の平面上の設置位置が、防波璧1の先端頂点2と防波璧1の重心点26とを結んだ中心軸線27上の範囲A内に設置され、さらに、最も好ましくは先端頂点2に位置するように回転軸体23が設置されることで、船舶の舵のもつ回転軸と舵面における関係と同一になり、同一の原理である転針作用によって、常に津波の直進圧力12と防波璧1の先端頂点2は対向する。
【0022】
なお、回転軸体23の平面上の設置位置は、必ずしも、範囲A内に設置される必要はなく、範囲Aを越えて、先端よりもさらに先に、設置することも可能である。
この明細書において、「先端頂点が前記回転軸体23の近傍に位置する」の「近傍」とは、範囲Aを越えた、先端よりもさらに先の位置も、含む。
【0023】
さらに、地震による地盤変動に対して、回転軸体23をもつ回転基礎22は変動し回動するため、免震構造体として機能することになり、耐震性能も向上させることが可能となる。
【0024】
[回転による働き−船を例に説明]
津波がいかなる方向から来襲してきても、防波璧1の先端頂点2が常に津波の直進圧力12に対向すること(図4参照)が可能であり、有効であることを、船を例に説明する。
船舶の舵の仕組みを例により説明すると、船舶の舵は水流の流れを変えることで船舶の進行方向を変化させることが可能である。舵の多くは、船舶のスクリューの直後に位置しスクリューが生み出す強い水流の向きを右、または左方向へ変えることで船体の向きを変える。向きを変えられた船体はやがて、自らの船首船尾軸方向へと針路を変える。この原理が転針である。
【0025】
言い換えれば、図4に示すように、船首船尾軸方向である津波の進行方向11が変われば、転針によって防波璧1の二等辺三角形の先端頂点2が、津波の進行方向11の軸線方向に向きを変えることによって、常に津波の直進圧力12と防波璧1の先端頂点2は対向する。
このことは、換言すれば、防波璧1があたかも風見鶏の羽のような働きをして、回転軸体23回りに、回転基礎22、防波壁1、及び防水空間ユニット3が、自動的に回転することを意味する。
【0026】
図7に示すように、周知の如く、船舶40の舳先41の平面形状が二等辺三角形をしていることでも明らかなように、二等辺三角形の先端頂点、すなわち舳先41が、船舶の進行方向42に対しての波の圧力(抵抗力)43を低減させているため、より少ない力で船舶40が前進できる。すなわち、舳先の二等辺三角形の形状が船舶への水圧を低減させている実例であり、本発明の防波壁1の二等辺三角形の平面形状における、水圧に対する原理は同一である。
【0027】
よって、前記の原理の如く、津波10の進行方向11から生じる多大な直進圧力12を防波壁1の平面形状が二等辺三角形であることによって確実に分散、低減させることが可能となり、防波壁1の破壊、倒壊をより不能とし内部の防水空間ユニット3を保護しえる防御壁として機能することが可能となる。
【0028】
また、防波壁1の二等辺三角形の平面形状は、津波による既存家屋30の倒壊を十分に防ぐことが可能になる。
すなわち、図4に示すように、二等辺三角形の平面形状で構成された防波壁1は、既存家屋30の津波10の進行方向11に対向する前面に構築されているため、津波10による既存家屋30への進行方向11の水流は、防波壁1の二等辺三角形の2辺の壁面1aに沿って、すなわち斜面に沿って、斜面方向14への水流へと変更が可能になり、よって、津波10の水圧及び津波によって流されてくる漂流物(木、車、土砂等)による多大な圧力から、既存家屋30への直接破壊を低減させることにより、津波による物的被害を最小限に食い止めることが可能となる。
【0029】
[防水空間ユニット]
次に、防水空間ユニット3について図2を参照しながら説明する。
津波の人的被害の最多のものは、突発的に訪れる津波に対して、逃げ遅れることで、津波に巻き込まれ人的被害を招くことである。住む家屋のすぐ近くに避難用の安全な空間を確保できれば、津波による多くの人的被害を最小限に食い止めることが可能となる。
【0030】
防波壁1によって津波からの直接圧力から守られた安全な避難空間である防水空間ユニット3は、上部に発電装置収納空間4、中間部に避難用居住空間5、下部に貯水装置収納空間6で構成されている。さらに好ましくは例えば、鉄骨構造材で組まれた防水空間ユニット3の全面を防水材7、好ましくはウレタン防水吹付け材で覆い、防水空間ユニット3の内部に水の浸入を防止する構造をもつことで、津波による海水の水位上昇に対しても安全な避難空間になっている。防水空間ユニット3へは、後方の水密ドア8から出入りできる。
【0031】
さらに、津波による物的被害の事例によると、社会が成立している条件としてのライフラインである水道、電気、ガス、交通網、情報網等がズタズタに分断、破壊されている。津波の第一波、第二波を避難空間でやり過ごしたとしても、避難された人の最低限のライフラインである水、食糧、電気、衣類を津波後も保持し非常用として生存可能な空間及び物資を確保できなければ、意味がない。
【0032】
すなわち、防水空間ユニット3の上部に設置された発電装置収納空間4に、好ましくは例えば小型自家発電機4aもしくは蓄電バッテリー4bを収納しているため、津波による電力不通被害に対して非常用電源を確保でき、照明、発熱器、電子調理器、携帯電話、テレビ等の電気機器の利用を可能とできる。
【0033】
さらに、防水空間ユニット3の中間部に設置された避難用居住空間5の内部には、非常用食糧5aや衣類、寝具5bさらに非常用照明5c及び給水口5dを収納しているため、ライフラインの復旧までの一定の期間は避難された人の生存を可能にできる。
【0034】
また、防水空間ユニット3の下部に設置された貯水装置収納空間6には、給排水設備6aをもち、大量の水の備蓄が可能であり、避難された人の飲料水は十分に確保できる。さらに、防水空間ユニット3の最下部に大量の水を貯蓄することによって、その水の重量が津波の圧力による防波壁1に及ぼす圧力に対して十分に有利に働くことになり、防波壁1の倒壊防止に寄与する。
【0035】
[設置]
さらに、図8を参照して、本発明の津波シェルター装置の設置について説明する。
防波壁1の構造は好ましくは例えば、プレキャストコンクリート製(PCa工法)の構造部材で構築され、基礎部材、壁部材、屋根部材で構成され、それぞれの部材は簡易に短期間で組立可能であり、さらに各部材は連結鉄筋で強固に結合されるため、津波の多大な圧力に十分に耐える構造を有している。
【0036】
また、防水空間ユニット3は好ましくは例えば鉄骨構造材で構築され、3分割された各空間ユニットは鋼製ボルトで連結され、一体化し簡易に設置可能としている。よって図9で示すステップ1〜7により、津波が予想される多くの地域において簡易かつ迅速に設置できる。
すなわちステップ1で、既存家屋30に対し予想される津波方向を調査し、津波シェルター装置の設置位置を決め、防波壁の向きの初期設定を決定する。
ステップ2で、地盤20を整備し、固定基礎21を固定して設置する。
ステップ3で、固定基礎の上に、プレキャスト(PCa)コンクリート製の回転基礎を設置する。
【0037】
ステップ4で、回転基礎22に防水空間ユニット3を設置する。
ステップ5で、回転基礎22に、防水空間ユニット3を囲んで、防波壁1となるプレキャスト(PCa)コンクリート製の壁板を取付る。
ステップ6で、壁板の上に、プレキャスト(PCa)コンクリート製の屋根を取付る。
ステップ7で、完成した津波シェルターに貯水し、水を備蓄する。
【0038】
「実施形態の効果」
以上の実施形態によれば、津波10の進行方向11から生じる多大な直進圧力12を、防波壁1の二等辺三角形の2辺の壁面1aに沿った斜面圧力13として、分散させ、減少させることが可能になる。すなわち、津波を、効率よくそらすことが可能になる。よって、防波壁1に対しての津波10からの多大な圧力を、低減せしめることで、防波壁1の倒壊をより不能とし、防波壁1に囲われた内部の避難用としての防水空間ユニット3を、保護しうる防護壁として機能することが可能となる。したがって、津波に対して安全な避難空間の確保が可能になり、人的被害を最小限に食い止めることができる。
【0039】
さらに、二等辺三角形の平面形状で構成された防波壁1を、既存家屋30へ向かう津波10の進行方向11に対向する前面に構築することで、津波10による既存家屋30へ向かう水流が、一度、防波壁1に遮られ、防波壁1の二等辺三角形の2辺の壁面1aに沿った斜面方向14へ、そらされることが可能になる。よって、津波10による水圧及び津波によって流されてくる漂流物(木、車、土砂等)による多大な圧力から、既存家屋30を守り、既存家屋30への直接破壊を低減させることが可能となるため、物的被害を最小限に食い止めることができる。
さらに、避難用としての防水空間ユニット3が、上部に発電装置収納空間4、中間部に避難用居住空間5、下部に貯水装置収納空間6を備え、かつ防水空間ユニット3の内部に水の浸入を防止する機能をもっているため、非常用として生存可能な空間及び物資を確保することができる。
【0040】
「他の実施形態」
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
例えば、以上の実施形態では、防波壁1の平面形状は、二等辺三角形のうちの正三角形であり、二等辺のなす角度は60度であったが、他の実施形態では、正三角形以外の二等辺三角形でもよく、二等辺のなす角度は60度以下、あるいは60度以上でもよい。60度以下にすると、津波の圧力を受けて回転を生じる機能は強くなる。60度以上にすると、津波の圧力を受けて回転を生じる機能は弱くなるが、例えば、回転軸体23の平面上の設置位置を、図6の範囲Aを越えて、先端よりもさらに先に設置することにより、その機能を強く維持することができる。
【0041】
以上の実施形態では、防波壁1は正三角形の平面形状であり、よって、防波壁1と防水空間ユニット3とは全体として、正三角柱状であったが、他の実施形態では、正三角柱状以外の二等辺三角柱状であってもよい。さらに、柱状ではなく、全体として、三角錐状でも良い。
【符号の説明】
【0042】
1 防波壁
1a 壁面
2 先端頂点
3 防水空間ユニット
4 発電装置収納空間
4a 小型自家発電機
4b 蓄電バッテリー
5 避難用居住空間
5a 非常用食糧
5b 衣類、寝具
5c 非常用照明
5d 給水口
6 貯水装置収納空間
6a 給排水設備
7 防水材
8 水密ドア
10 津波
11 進行方向
12 直進圧力
13 斜面圧力
14 斜面方向
20 地盤
21 固定基礎
22 回転基礎
23 回転軸体
23a 回転軸支持体
24 ベアリング球
25 緩衝材
26 重心点
27 中心軸線
30 既存家屋
40 船舶
41 舳先
42 船舶の進行方向
43 波の圧力(抵抗力)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に固定された固定基礎と、この固定基礎に対して回転軸体により回動自在に結合された回転基礎と、この回転基礎に設置され平面形状が二等辺三角形であり、この二等辺の二つの辺により形成される先端頂点が前記回転軸体の近傍に位置する防波壁と、この防波壁に囲われ前記回転基礎に設置された避難用としての防水空間ユニットと、を有することを特徴とする津波シェルター装置。
【請求項2】
津波が予想される海岸から見て前記津波シェルター装置の後方直近に既存家屋が存在することを特徴とする請求項1に記載の津波シェルター装置。
【請求項3】
前記防水空間ユニットは、上部に発電装置収納空間、中間部に避難用居住空間、下部に貯水装置収納空間を備えることを特徴とする請求項1、または2に記載の津波シェルター装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−2188(P2013−2188A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−135825(P2011−135825)
【出願日】平成23年6月18日(2011.6.18)
【出願人】(503470827)
【Fターム(参考)】