説明

津波シェルター

【課題】大地震発生時の津波から避難できる津波シェルターを提供する。
【解決手段】津波シェルター本体1の入り口2の天井最下部15より避難室3の床12を高くすることにより被災時の内部に侵入した海水面13が避難室3に入り込まず、酸素ボンベ又はエアーボンベの放出14により避難者16を保護する。避難室3の気密性が入り口扉8の開閉に左右されないので避難時に扉8を閉める必要がなく、脱出時に入り口2が塞がれる恐れがない。外壁に傾斜を付けることと津波シェルター1自体の十分な自重と地盤への固定5より津波の圧力や津波に押し流された瓦礫などの衝突18に耐える機能を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は津波から人命を守る避難施設に関するものである。
【背景技術】
【0002】
東日本大震災において津波の高さは場所によっては20メートルを越し、地震とそれに続く津波により木造、鉄骨造や鉄筋コンクリート造の建物の多くが倒壊し、残った建物の屋上に避難した多数の方々も屋上を遙かに超える津波に流された。確実に逃げるためには津波の到達地点より高い場所への避難が必要であるが、周りに高台がない場所や、子供、お年寄り、障害者の単独での避難は困難である。この為、確実に人命を保護できる施設が身近に必要である。従来のシェルターは地下室式のものと、地上に設けられ避難室が浮上式の物(特許文献1及び2参照)がある。
【特許文献1】特開3541197号
【特許文献2】特開2006−226099号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
地下室にシェルターにおいては、入り口の扉を閉め水の侵入を防ぐ事になるが、逃げ遅れた人の避難を考えると閉めるタイミングが難しく、閉め遅れたり隙間があると浸水してしまい、また、入り口が水や瓦礫や土砂に塞がれると脱出も困難になる。上記特許文献1及び2では浮遊式の避難室にて津波を避ける構造であるが、この構造では津波に流された家や船舶や無数の瓦礫の衝突が予想される。更に引き波にもさらされる為、この場合浮遊式ではシェルター自体の破損は避けられず、運良く衝突が避けられた場合しか生き残れない。本発明の津波シェルターは、上記問題点を解消する為に、津波の下で水が引くまでの安全を確保し、津波の潮位や威力に関係なく効果的な避難施設を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
津波シェルターの入り口からの連通路天井部の最下部よりも避難室の最低部位を高くし、開口部を入り口のみとすることにより空気を閉じ込め水の侵入を防ぎ、被災時には酸素ボンベ又はエアーボンベにより内部に酸素を供給し、内部の空気の量を必要に応じて増加させることで避難者の生命を保護する。
【0005】
津波シェルター本体の外壁に傾斜を付けることと、津波シェルター自体の十分な自重と地盤への固定により被災時の津波の圧力や津波に押し流された瓦礫、建築物、船舶の衝突に耐える。
【0006】
津波シェルター本体を地上に設け、入り口を開放状態にすることで、瓦礫が入り口の扉を塞ぎ水が引いた後の脱出の妨げになることを防ぐ。
【発明の効果】
【0007】
津波シェルター内部に空気を閉じ込め、被災時に中に逃げこむだけの構造なので、体力の無い高齢者や子供でも簡単に活用でき、内部の酸素ボンベ又はエアーボンベと非常食により長期間の避難に活用できる。
【0008】
津波シェルター本体を浸水時の浮力より重くし、強固に地盤へ固定し、外壁に傾斜を設けることで津波シェルター本体が津波の圧力により流されるのを防ぎ、瓦礫や船舶の衝突で津波シェルターが破損されることに耐えることが出来る。
【0009】
津波シェルターを地上に設けることと入り口を開放しておくことで、被災後瓦礫や水などが入り口を塞ぎ脱出を妨げることを防ぐ。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明のシェルター外観天面図である。
【図2】図1記載の外観側面図である。
【図3】図1記載の平面図である。
【図4】図1記載の断面図である。
【図5】図1記載の被災時に避難した場合の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本シェルターの本体1は、人命を保護する避難室3を強固な外壁17で覆い、入り口2の連通路天井最下部15より避難室3の内部の床12を高くすることで避難室3をエアーポケットとする構造であり、避難時に酸素ボンベ又はエアーボンベ10により内部の空気量を増加させ人命を保護する。また、シェルター本体1は基礎杭5により強固に地面に固定される。入り口2に続く連通路には扉6又はシャッターが取り付けられ、内側に開く7ことにより、避難者16が素早く内部に入れ、内側に開放状態8にすることで脱出を妨げない効果がある。また、入り口及び連通路2にはスロープ4が設けられ、お年寄りや車椅子、ベビーカーでの迅速な避難を可能にする効果がある。設置場所を地図に記載し内部に発信機9を設置することにより、被災後の人命を容易に救助出来る効果がある。
【実施例】
【0012】
被災時には津波シェルター本体1が津波の水面11より下に水没する形になるが、内部に侵入した海水面13が入り口連通路2の天井最下部15までの高さとなり、避難室3の床面12より常に下に位置する。そして、内部の空気を逃がさない気密性の構造と酸素ボンベ又はエアーボンベによる空気の放出14で避難室3の避難者16を保護する。津波により流れて衝突する瓦礫18などは強固な外壁17に傾斜を付けることで耐えることが出来る。
【0013】
本シェルターの本体1は、設置する土地の利用形態によってシェルター底面及び避難室の形を四角形や多角形、円、楕円に変えることができる。シェルター本体1は内部に収容する予定の人数に応じて大きさを変えるが、常に避難室の浮力よりもシェルターの自重が大きくなるようにする。入り口2の高さを低くすることによりシェルター本体1を小型化することが出来る。多人数を収容する大型の場合は内部に天井を支える支柱を有する。
【0014】
海に面し避難できる高台が近くにない場所や海岸線付近の家屋、港湾施設に隣接して設置し付近に明示する。建築物自体にシェルター本体1を組み込み、シェルター本体1の上部に住居部分を建てることが可能である。
【符号の説明】
【0015】
1 シェルター本体
2 入り口及び連通路
3 避難室
4 スロープ
5 基礎杭
6 扉又はシャッター
7 開閉方向
8 跳ね上げられた扉
9 発信機、非常食、防災用品収納スペース
10 酸素ボンベ又はエアーボンベ
11 被災時の津波の水面
12 避難室床面
13 シェルター内部に侵入した海水の水面
14 酸素ボンベ又はエアーボンベによる放出
15 連通路天井部最下部
16 避難者
17 外壁
18 衝突する瓦礫など

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部からの水の侵入を防止するシェルターであって、入り口以外に開口部がなく機密性を有するシェルター本体と、このシェルター本体の側面に開口された前記入り口と、前記シェルター本体の内部に設けられた避難室と、前記入り口から前記避難室へ連通する連通路と、この連通路の天井部のうち侵入する水がくぐらなければならない最下位部と、この最下位部よりも高い位置に設けられた前記避難室の床面と、前記最下位部の働きで前記避難室に閉じこめられることにより前記水の侵入を防ぐ空気の量を、必要に応じて増加できる酸素ボンベ又はエアーボンベと、を有することを特徴とする津波シェルター。
【請求項2】
前記シェルター本体は、コンクリート素材又は金属素材又は樹脂素材を複合した素材で構築され、強固に地盤に固定され、浸水時の避難室による浮力以上の重量を有し、外壁に傾斜を付けることにより、津波の圧力や津波に押し流された瓦礫、建築物、船舶の衝突に耐える事を特徴とする請求項1に記載の津波シェルター。
【請求項3】
前記入り口は、ストッパー付きの内部への跳ね上げ式扉又はシャッターにより、避難時に開けた扉は開放状態になる機能を有することを特徴とする請求項1、又は請求項2に記載の津波シェルター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−233385(P2012−233385A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−114143(P2011−114143)
【出願日】平成23年4月30日(2011.4.30)
【特許番号】特許第4822087号(P4822087)
【特許公報発行日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(511124714)
【Fターム(参考)】