説明

活動量測定支援システム

【課題】日々の活動量を目標値を越える量とするまで高めることを支援する。
【解決手段】被験者が身につけることで被験者の活動量を測定する活動量計1と、被験者によって開閉動作される扉の開閉を制限するための電気錠3と、活動量計で測定した被験者の活動量データに応じて上記電気錠の開閉制御を行う制御手段2とからなる。測定される活動量が少なければ扉の開閉が制限される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験者の活動量の測定を支援する活動量測定支援システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
活動量計を被験者が身につけて活動量の測定を行うにあたり、例えば減量を目的とする場合には、1日の活動量の目標値を予め設定し、1日の活動量が上記目標値に達したかどうかという使い方をする場合がある。また、特開2007−89699号公報には1日の活動量が標準活動量に達したかどうかを判別することができるようにした活動量計が示されている。
【0003】
しかし、被験者にしてみれば、1日の活動量が目標値(標準活動量である場合を含む)に達していなくても、翌日の活動量を多くすればいいというような安易な気持ちでその日の活動をやめてしまう場合が多く、この場合、本来の目的を達することができないことが多くなる。
【特許文献1】特開2007−89699号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記の従来の問題点に鑑みて発明したものであって、日々の活動量を目標値を越える量とするまで高めることを支援する活動量測定支援システムを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために本発明に係る活動量測定支援システムは、被験者が身につけることで被験者の活動量を測定する活動量計と、被験者によって開閉動作される扉の開閉を制限するための電気錠と、活動量計で測定した被験者の活動量データに応じて上記電気錠の開閉制御を行う制御手段とからなることに特徴を有している。測定される活動量が少なければ扉の開閉を制限してしまうようにしたものである。
【0006】
特に、上記制御手段は、活動量計で測定した被験者の活動量データが予め定めた所定値に達していない場合、電気錠をロック状態に保つものであることが効果的である。
【0007】
また、上記活動量計は、測定した活動量データと予め定めた所定値との差を表示する表示部を備えたものであることが望ましい。
【0008】
なお、ここにおける扉は、例えば冷蔵庫やビールサーバの扉、フィットネスセンター等の施設や家の出入り口の扉が好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、被験者が身につけた活動量計で測定される活動量が少なければ、被験者が開閉する扉の開閉が制限されてしまうために、被験者にすれば活動量を多くすることについてのモチベーションを高めることができるものであり、このために日々の活動量をより高くすることについて効果的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明すると、図1において、図中1は被験者が身につけることになる活動量計であって、3軸の加速度センサ11と、この加速度センサ11の出力信号をA/D変換して得た測定データを基に被験者の運動状態(活動量)を演算する演算部12と、予め設定した所定値(目標値)等を記憶する記憶部13と、活動量に関するデータを表示する表示部14と、無線通信機能を有する通信部15と、時刻データを演算部12に与える計時部17と、入力操作部18とを備えている。
【0011】
上記入力操作部18は、目標値や個人の属性データなどのデータ入力、活動量計1の動作モードの切替、表示部14に表示するデータの切替等に用いられる。
【0012】
演算部12は、活動量計1に予め組み込まれたプログラムに基づいて、運動強度(METs)や使用者が歩いた歩数や消費カロリーなどを算出するためのデータ処理を行うものであり、入力操作部18を用いてデータ設定モードに切り替えられると、表示部14の表示を制御してデータ入力画面を表示させ、当該データ入力画面において、上記属性データ(例えば年齢、性別、身長、体重、目的、健康状態(既往症歴)、地域)、目標値などが入力されると、入力データを記憶部13に書き込み、以後の演算処理では記憶部12から読み込んだ属性データを運動強度などの活動量の演算に使用するようになっている。
【0013】
また演算部12の動作モードが、入力操作部18を用いて運動強度測定モードに切り替えられると、演算部12は加速度センサ11から測定データを取り込む取り込み周期が経過する毎に、加速度センサ11から取り込んだ加速度の検出データに基づいて、運動強度(METs)の算出処理や歩数を求める処理などを行うとともに、活動量(運動強度や歩数など)の算出結果を記憶部13に書き込む処理を行い、更に算出結果を表示部14にリアルタイムに表示する。なお、METsとは、進退活動の「強さ」を安静時の何倍に相当するかで表す単位であり、アメリカスポーツ医学界で用いられている。
【0014】
上記演算部12は所定の周期毎に取り込んだ加速度センサ11の検出能と、この変動平均から運動強度wiを求める演算機能とを備えたものであるが、運動強度を変化させた状態で呼気ガス計測装置により測定した酸素消費量と、加速度分散値との関係式が予め求められて演算部12に組み込まれており、その演算方法を図3を用いて説明すると、図3(a)は3軸の加速度センサ11による各軸(X軸、Y軸、Z軸)の検出データを示し、演算部12は一定時間twが経過する毎に、一定時間tw内に取り込んだ加速度の検出データから、各軸の加速度変動分の合成値を算出する。ここで、加速度変動分の合成値の時間平均(標準偏差)をSwとすると、合成値Swは次の式(1)で求めることができる。
【0015】
【数1】

【0016】
なお、axk,ayk,azkは、ある時間tw(秒)内でk番目にサンプリングした加速度サンプル値を示し、bx,by,bzは一定時間tw(秒)における平均値を示している。
【0017】
また図3(b)は加速度変動値の測定結果と運動強度(METs)の測定結果との関係を示す散布図であり、散布図上にプロットされた点を最小二乗近似して得た直線式は次の式(2)で示される。ただし、Yは加速度変動値、Xは運動強度である。
Y=axX+b,相関関数R=0.92 …(2)
従って、演算部12では上述の式(1)を用いて加速度変動分の合成値Swを求めた後、上述の式(2)を変形して得られる次の式(3)
wi=α×Sw+β …(3)
を用いて、ある期間twの運動強度wiを求め、記憶部13に記憶する。ここでα,βは運動強度を変化させた状態で呼気ガス検出装置により測定した酸素消費量と、加速度分散値との間に得られた関係式における係数を示す。なお、加速度変動値を求める期間twとしては、4秒から15秒が適当な値であり、本例ではtw=12秒としている。
【0018】
また、演算部12の動作モードが入力操作部18によってデータ表示モードに切り替えられると、演算部12は記憶部13に記憶されているデータや演算処理結果に基づいて個人の属性データや活動量の測定結果などを表示部14に表示する処理を行う。
【0019】
一方、被験者が開閉動作する扉には電気錠3を取り付けてある。この電気錠3は、活動量計1の上記通信部15との間で活動量に関するデータの送受を行う通信部を備えた制御回路2の制御下にあり、常時は上記扉をロック状態として開閉操作を不能としている。
【0020】
今、被験者が身につける活動量計1に入力操作部18から目標値を設定すれば、この目標値を演算部12は記憶部12に記憶する。そして活動量の測定を開始すれば、活動量計1の演算部12は加速度センサ11の出力から活動量を前述のように演算積算していくとともに、得られた累積活動量データを記憶部13に記憶した目標値と比較する。そして累積活動量が目標値を超えたならば、演算部12は扉ロック解除許可フラッグを立てる。
【0021】
扉の電気錠3を制御する制御回路2は、活動量計1との間で定期的に無線通信が成立するかどうかのチェックを行っており、被験者が身につけた活動量計1が近辺にあって無線通信が成立したならば、扉ロック解除許可に関する問い合わせを活動量計1に対して行って、活動量計1側から扉ロック解除許可フラッグが既に立っていることを示す扉ロック解除信号が通知されたならば、制御回路2は電気錠3による扉のロック状態を解除するために、被験者は扉を開閉することが可能となる。
【0022】
上記扉が冷蔵庫やビールサーバの扉であれば、活動量が目標値に達しないことには中の飲み物を取り出すことができず、上記扉がフィットネスセンター等の施設や家の出入り口の扉であれば、出入りができないために、被験者はその動作に大きな制限を受けるものであり、このために被験者にしてみれば、活動量が目標値に達するまで活動を行うことについてのモチベーションを高いレベルに維持することができる。図2に上記動作のフローを示す。なお、図2中の強制解除ボタンは、非常時に電気錠3よる扉のロックを解除するためのもので、扉付近に設置するのが好ましいが、活動量計1にも上記ロック解除のための強制解除操作を行うことができるようにしておくとよい。
【0023】
活動量が目標値に達したかどうかを被験者が容易に判別することができるように、活動量計1に設けた表示部14には積算活動量の表示のほか、目標値と積算活動量との差を表示することができるようにしておくことが望ましい。被験者は更にどのぐらい運動を行わなければならないかを容易に把握することができる。
【0024】
なお、目標値は1日で達成できる活動量の範囲に留まらず、たとえば1週間や1ヶ月で達成することができる活動量であってもよい。たとえば健康管理のために飲酒を週に1日に制限している場合など、ビールサーバの扉に上記電気錠3を設置するとともに、1週間の目標値を設定すれば、たとえ1週間が経過しても活動量が目標値より低ければ、飲酒を行うことができないために、その1週間の活動量を高めることになる。
【0025】
目標値の設定は電気錠3を制御する制御回路2側に対して行うようにしたものであってもよい。この場合、活動量計1は積算した活動量データを制御回路2側に送り、制御回路2側で活動量が目標値に達しているか否かを判断して電気錠3の開閉制御を行う。
【0026】
また、活動量計1と制御回路2とのデータの授受は、活動量計1に設けたRFID(無線ICタグ)を用いるようにしてもよい。この場合、活動量計1の演算部12は、活動量が目標値に達すればRFIDの記録データの一部を書き換え、制御回路2はRFIDから読み取った記録データから目標値をクリアしたことを判別して電気錠3のロックを解除する。
【0027】
活動量計1と制御回路2との間の通信は有線で行うものであってもよく、この場合、活動量計1のUSBポートと制御回路2のUSBポートとの間で信号のやりとりを行うようにするとよい。
【0028】
活動量が目標値に達したならば、活動量計に付属する物理的な鍵が使用できるようになり、この鍵で電気錠3のロック解除を行えるようにしたものであってもよい。たとえば活動量計1にUSBポートの挿し込み機能が付属しており、目標値に達していない状態では、そのUSBポートが活動量計1の内部に引っ込んでいて、物理的に接続することができない状態になっているが、活動量が目標値に達すれば、そのUSBポートが飛び出して接続可能となり、このUSBポートを電気錠に差し込むことでロック解除がなされるようにするのである。
【0029】
なお、活動量計1としては歩数計のようなものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の形態の一例のブロック回路図である。
【図2】同上の動作を示すフローチャートである。
【図3】(a)は加速度センサの出力例を示すタイムチャート、(b)は加速度変動値と運動強度(METs)との散布図である。
【符号の説明】
【0031】
1 活動量計
2 制御回路
3 電気錠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者が身につけることで被験者の活動量を測定する活動量計と、被験者によって開閉動作される扉の開閉を制限するための電気錠と、活動量計で測定した被験者の活動量データに応じて上記電気錠の開閉制御を行う制御手段とからなることを特徴とする活動量測定支援システム。
【請求項2】
上記制御手段は、活動量計で測定した被験者の活動量データが予め定めた所定値に達していない場合、電気錠をロック状態に保つものであることを特徴とする請求項1記載の活動量測定支援システム。
【請求項3】
上記活動量計は、測定した活動量データと予め定めた所定値との差を表示する表示部を備えていることを特徴とする請求項1または2記載の活動量測定支援システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−127382(P2009−127382A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−306580(P2007−306580)
【出願日】平成19年11月27日(2007.11.27)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】