説明

活性エネルギー線硬化型光学材料用組成物

【課題】得られる硬化物が透明性に優れ、高屈折率かつ高光線透過率を両立できる活性エネルギー線硬化型光学材料用組成物の提供。
【解決手段】下記式(1)で表されるジ(メタ)アクリレート(A)及び下記式(2)で表されるモノ(メタ)アクリレート(B)を含有する活性エネルギー線硬化型光学材料用組成物。当該組成物を、所定の形状を有する型枠に塗布するか又は流し込んだ後、活性エネルギー線を照射する光学材料の製造方法。
【化1】


〔式(1)において、R1及びR2は、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、R3及びR5は、それぞれ独立して、水素原子、メチル基又はエチル基を表わし、R4及びR6は、それぞれ独立して、水素原子、メチル基又は臭素原子を表す。〕
【化2】


〔式(2)において、R9及びR10は、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、R11は、水素原子、フェニル基又はクミル基を表し、nは0〜5の整数を表す。〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化型光学材料用組成物に関するものであり、活性エネルギー線硬化型組成物、並びにレンズシート及びプラスチックレンズ等の光学材料の技術分野に属するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、フレネルレンズ及びレンチキュラーレンズ等のレンズシートは、プレス法及びキャスト法等の方法により、成形して製造されていた。
しかしながら、前者のプレス法は加熱、加圧及び冷却のサイクルで製造するため、生産性が悪いという問題があった。又、後者のキャスト法は、金型にモノマーを流し込んで重合するため製作時間が長くかかるとともに金型が多数個必要なため、製造コストが上がるという問題があった。
【0003】
このような問題を解決するために、活性エネルギー線硬化型組成物を使用することについて種々提案がなされている(例えば、特許文献1〜同6)。
【0004】
しかしながら、従来の活性エネルギー線硬化型組成物は、屈折率及び透明性の点で不十分であり、さらにこの点を改良すべく、ビスフェノール型ジ(メタ)アクリレートと芳香族環を有するモノ(メタ)アクリレートを併用した組成物が検討されている(例えば、特許文献7及び同8)。
【0005】
【特許文献1】特開昭61−177215号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開昭61−248707号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開昭61−248708号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】特開昭63−163330号公報(特許請求の範囲)
【特許文献5】特開昭63−167301号公報(特許請求の範囲)
【特許文献6】特開昭63−199302号公報(特許請求の範囲)
【特許文献7】特開平9−87336号公報(特許請求の範囲)
【特許文献8】特許3397448公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記した活性エネルギー線硬化型組成物は、プロジェクションテレビ等の薄型化で要求される様な、さらに高度の屈折率及び透明性が要求される用途では不十分なものであった。
本発明者は、得られる硬化物が透明性に優れ、高屈折率かつ高光線透過率を両立できる活性エネルギー線硬化型光学材料用組成物を見出すため鋭意検討を行ったのである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記の課題を解決するため種々の研究した結果、特定2種の(メタ)アクリレートを含む組成物が、活性エネルギー線による硬化が速く、又その硬化物が、透明性、屈折率及び光線透過率に優れることを見出し、本発明を完成した。
以下、本発明を詳細に説明する。
尚、本明細書においては、アクリレート又はメタクリレートを(メタ)アクリレートと、アクリロイル又はメタクリロイルを(メタ)アクリロイルと表す。
【0008】
本発明は、後記一般式(1)で表されるジ(メタ)アクリレート(A)〔以下単に(A)成分という〕及び後記一般式(2)で表されるモノ(メタ)アクリレート(B)〔以下単に(B)成分という〕を含有する活性エネルギー線硬化型光学材料用組成物に関する。
以下、それぞれの成分について説明する。
【0009】
1.(A)成分
(A)成分は、下記一般式(1)で表されるジ(メタ)アクリレートであり、組成物の硬化物に高い屈折率を付与する共に、架橋により硬化物の強度を向上させる成分である。
【0010】
【化1】

【0011】
〔式(1)において、R1及びR2は、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、R3及びR5は、それぞれ独立して、水素原子、メチル基又はエチル基を表わし、R4及びR6は、それぞれ独立して、水素原子、メチル基又は臭素原子を表す。〕
【0012】
1及びR2としては、組成物が硬化性に優れるものとなるため、いずれも水素原子が好ましい。R3〜R6としては、R3〜R6の全てが水素原子のもの、R3及びR5が水素原子で、かつR4及びR6がメチル基のもの、並びにR3及びR5が水素原子で、かつR4及びR6が臭素原子のものが、高屈折率のものが得られ、さらにはこれら化合物を合成する際の収率が高くなることからも好ましい。嵩高い置換基を多く有するものは、(A)成分を合成するときの反応時間が長くなったり、反応後の収率が低下する場合がある。
【0013】
(A)成分の具体例としては、ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシフェニル)スルフィド、ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシ−3−メチルフェニル)スルフィド、及びビス(4−(メタ)アクリロイルオキシ−3−ブロモフェニル)スルフィド等が挙げられる。
【0014】
これらの中でも、硬化性に優れることから、ビス(4−アクリロキシフェニル)スルフィド及びビス(4−アクリロキシ−3−メチルフェニル)スルフィドがより好ましい。
(A)成分は、単独で使用しても、2種以上を併用しても良い。
【0015】
2.(B)成分
(B)成分は、下記一般式(2)で表される(メタ)アクリレートであり、組成物の硬化物に高屈折率を付与し、組成物の結晶化を防ぐ成分である。
【0016】
【化2】

【0017】
〔式(2)において、R9及びR10は、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、R11は、水素原子、フェニル基又はクミル基を表し、nは0〜5の整数を表す。〕
【0018】
(B)成分の具体例としては、例えば、フェニル(メタ)アクリレート、p−クミルフェニル(メタ)アクリレート、o−フェニルフェニル(メタ)アクリレート、m−フェニルフェニル(メタ)アクリレート、p−フェニルフェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、p−クミルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、o−フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、m−フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート及びp−フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0019】
(B)成分としては、良好な硬化性が得られるということから、R9は水素原子であることが好ましい。又、得られる硬化物の屈折率がより高いものとなるため、nは0〜2であることが好ましく、nは0であることがより好ましい。
【0020】
これらの中でも、室温で液状であり扱いやすく、屈折率が高く、入手しやすい点で、o−フェニルフェニル(メタ)アクリレート、p−クミルフェニル(メタ)アクリレート、p−クミルフェノキシエチル(メタ)アクリレート及びo−フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
(B)成分は、単独で使用しても、2種以上を併用しても良い。
【0021】
3.その他の成分
本発明の組成物は、前記(A)及び(B)成分を必須とするものであるが、必要に応じてその他の成分を配合することができる。
【0022】
本発明の組成物を可視光線又は紫外線硬化型組成物とする場合、組成物に光重合開始剤を配合する。尚、電子線硬化型組成物とする場合は、光重合開始剤を必ずしも配合する必要はない。
光重合開始剤〔以下(C)成分という〕の具体例としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル及びベンゾインプロピルエーテル等のベンゾイン;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン及びN,N−ジメチルアミノアセトフェノン等のアセトフェノン;2−メチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン及び2−アミルアントラキノン等のアントラキノン;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン及び2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン;アセトフェノンジメチルケタール及びベンジルジメチルケタール等のケタール;ベンゾフェノン、メチルベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーズケトン及び4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド等のベンゾフェノン;並びに2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等が挙げられる。
(C)成分は、単独で使用しても、2種以上を併用しても良い。
【0023】
(C)成分には、必要に応じて光増感剤を併用することができる。光増感剤としては、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、トリエチルアミン及びトリエタノールアミン等が挙げられる。
【0024】
(C)成分の好ましい配合割合としては、(A)成分及び(B)成分との合計量100質量部に対して、後記する不飽和基含有化合物を配合する場合には(A)成分、(B)成分及び不飽和基含有化合物の合計量100質量部に対して、0.05〜12質量部が好ましく、より好ましくは0.1〜5質量部である。この割合が0.05質量部に満たないと、硬化性が不十分となることがあり、一方12質量部を超えると、硬化物が着色してしまい、光学用材料に不適なものとなることがある。
【0025】
本発明の組成物には、必要に応じて、(A)及び(B)成分以外の不飽和基含有化合物を配合することができる。
当該不飽和基含有化合物としては、例えば、N−ビニルカプロラクトン等のビニル化合物;カルビトール(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルホリン、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート及びトリブロモフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート等のモノ(メタ)アクリレート;1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート及びポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のジオールのジ(メタ)アクリレート;2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)−プロパン及び2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシトリエトキシフェニル)−プロパン等の2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシアルコキシフェニル)−プロパン;ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)スルフィド、ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)スルフィド、ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシトリエトキシフェニル)スルフィド、ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシ−3−メチルフェニル)スルフィド、ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ−3−ブロモフェニル)スルフィド、及びビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシ−3−ブロモフェニル)スルフィド等のビス(4−(メタ)アクリロイルオキシアルコキシフェニル)スルフィド;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート及びペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートの3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート;並びに、ビスフェノールA型エポキシ樹脂のジ(メタ)アクリレート、各種ポリウレタンポリ(メタ)アクリレート及びポリエステルポリ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートオリゴマー等が挙げられる。
不飽和基含有化合物の好ましい配合割合は、組成物中に0〜50質量%の範囲である。
【0026】
前記成分以外にも、必要に応じて、顔料、染料、消泡剤、レベリング剤、無機フィラー、有機フィラー及び光安定剤、酸化防止剤及び紫外線吸収剤等を配合することもできる。又、必要に応じて、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤及び重合禁止剤等を少量添加してもよい。
【0027】
本発明の組成物は、さらに硬化を進行させる目的で、組成物に熱重合開始剤を配合し、活性エネルギー線照射後に、加熱させることもできる。
熱重合開始剤としては、種々の化合物を使用することができ、有機過酸化物及びアゾ系開始剤が好ましい。
【0028】
有機過酸化物の具体例としては、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)2−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(4,4−ジ−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(m−トルオイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジーメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、α、α‘−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、t−ブチルトリメチルシリルパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ヘキシルハイドロパーオキサイド及びt−ブチルハイドロパーオキサイド等が挙げられる。
【0029】
アゾ系化合物の具体例としては、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、2−フェニルアゾ−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾジ−t−オクタン及びアゾジ−t−ブタン等が挙げられる。
【0030】
これらは単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。又、有機過酸化物は還元剤と組み合わせることによりレドックス反応とすることも可能である。
【0031】
4.活性エネルギー線硬化型光学材料用組成物
本発明の組成物は、前記(A)及び(B)成分、必要に応じてその他の成分を、常法に従い、攪拌・混合して製造することができる。
(A)成分は通常固体であるため、組成物が室温で液状にならない場合は、組成物を攪拌・混合した後加熱しても良い。加熱温度としては、50〜100℃が好ましい。
【0032】
(A)成分及び(B)成分の配合割合は、(A)成分と(B)成分の合計量を基準として、(A)成分が10〜90質量部及び(B)成分が90〜10質量部が好ましく、より好ましくは(A)成分が30〜80質量部及び(B)成分が70〜20質量部である。(A)成分の割合が10質量部より少ないと、所望の屈折率が得られなくなることがあり、一方(A)の割合が90質量部を超えると、(A)成分は結晶化しやすいために、活性エネルギー線硬化の過程で硬化と結晶化とが同時に進行し、硬化物が透明性が不十分な濁ったものになってしまうことがある。
【0033】
本発明の組成物の使用方法としては、常法に従い、組成物に活性エネルギー線を照射し硬化させれば良い。
活性エネルギー線としては、電子線、可視光線及び紫外線等が挙げられる。これらの中でも、特別な装置を必要とせず、簡便であるため、可視光線又は紫外線が好ましい。紫外線照射装置としては、高圧水銀灯等が挙げられる。
活性エネルギー線の照射量及び照射時間等は、使用する組成物及び用途に応じて、適宜設定すれば良い。
【0034】
本発明の組成物は、屈折率(25℃)が通常1.60以上、好ましくは1.61以上を有するという高屈折率の硬化物を得ることができる。さらに、当該硬化物は、透明性にも優れる。
【0035】
この様に、本発明の組成物の硬化物は、高屈折率かつ透明性を有するため、フレネルレンズ及びレンチキュラーレンズ、プリズムシート等のレンズシート並びにプラスチックレンズ等の種々の光学材料に使用できる。
レンズシートとしては、更に詳細には、ビデオプロビェクター、プロジェクションテレビ及び液晶ディスプレイ等用途が挙げられる。
【0036】
本発明の組成物を使用してレンズシートを製造する例について説明する。
比較的膜厚の薄いレンズシートを製造する場合は、本発明の組成物を、目的のレンズの形状を有するスタンパーと称される型枠に塗布し、該組成物の層を設け、その層の上に透明基板を接着させる。
次いで、透明基板側から活性エネルギー線を照射して、組成物を硬化させ、この後、金型枠から剥離させる。
【0037】
一方、比較的膜厚の厚いレンズシートを製造する場合は、目的のレンズの形状を有する型枠と透明基板の間に、本発明の組成物を流し込む。
次いで、透明基板側から活性エネルギー線を照射して、組成物を硬化させ、この後、型枠から脱型させる。
【0038】
前記透明基板としては、樹脂基板が好ましく、具体例としては、メタクリル樹脂、ポリカ−ボネ−ト樹脂、メタクリル酸メチル−スチレン樹脂及びスチレン樹脂等のシ−ト状のものが使用できる。
前記型枠としては、その材質は特に限定されないが、例えば真鍮及びニッケル等の金属、並びにエポキシ樹脂等の樹脂が挙げられる。型枠の寿命が長い点で、金属製である金型が好ましい。
【0039】
次に、本発明の組成物を使用して、プラスチックレンズを製造する例について説明する。
例えば、本発明の組成物を、少なくとも片面が透明である鏡面研磨した型枠に注入し、活性エネルギー線を照射して硬化させ、離型することにより得る方法等が挙げられる。
この場合の型枠としては、ガラス、プラスチック、又はこれらを組み合わせた2枚の鏡面研磨したモールド型と、可塑化塩化ビニル及びエチレン−酢酸ビニル共重合体等の熱可塑性樹脂製のガスケットの他、2枚のモールド型を型締め具等とを組み合わせて構成されたもの等が挙げられる。
この場合の活性エネルギー線の照射は、型枠の片面又は両面に行えば良い。又、活性エネルギー線の照射と加熱とを組み合わせることもできる。
【発明の効果】
【0040】
本発明の組成物は、室温での作業性に優れたものであり、得られる硬化物は、透明性に優れ、高屈折率でかつ光線透過率も良好であり、透明性、高屈折率及び高光線透過率が要求されるレンズシート及びプラスチックレンズ等の光学部材に好適に使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
本発明の組成物は、(A)及び(B)成分を必須とするもので、これらの割合としては、(A)成分が10〜90質量部及び(B)成分が90〜10質量部のものが好ましい。
(A)成分としては、組成物が硬化性に優れるものとなり、その硬化物が高屈折率となるため、R1及びR2がいずれも水素原子が好ましい。
(B)成分としては、組成物が硬化性に優れるものとなり、その硬化物が高屈折率となるため、nが0であり、R11がフェニル基又はクミル基であるものが好ましい。
組成物としては、硬化性に優れるものとなるため、さらに(C)成分を含むものが好ましい。
又、本発明は、前記の組成物を、所定の形状を有する型枠に塗布するか又は流し込んだ後、活性エネルギー線を照射する光学材料の製造方法である。
【実施例】
【0042】
以下に、実施例及び比較例を挙げ、本発明をさらに具体的に説明する。
尚、以下において、「部」とは質量部を意味する。
○実施例及び比較例
表1に示す各成分を、常法に従い攪拌・混合し、あらかじめ80℃に保った乾燥機中で、固体状の光重合開始剤を15分かけて加熱溶解させ、紫外線硬化型組成物を調整した。
得られた組成物を、バーコーターを用いて、室温にて厚さ50μmの透明OPPフィルム〔日本ポリエース(株)製二軸延伸ポリプロピレンフィルムTK〕上に膜厚30μmに塗布した。これを、コンベアスピード10m/分、ランプ高さ10cm、出力160W/cmの高圧水銀ランプにて、紫外線照射を2回行い、硬化させた。
得られた硬化物を、以下の方法に従い評価した。それらの結果を表2に示す。
【0043】
(1)外観
得られた硬化物に濁りがないかを目視で判定した。濁りのないものを○、濁りや着色があるものを×とした。
【0044】
(2)屈折率
硬化物の屈折率(ナトリウムD線、25℃における値)を、(株)アタゴ製アッベ屈折計DR−M2により測定した。
【0045】
(3)光線透過率
硬化物の光線透過率(以下単に透過率という)を、日本分光(株)製V−550により測定し、400nmでの透過率を評価した。
【0046】
【表1】

【0047】
尚、表1における略号は、以下を意味する。
・BAPS:ビス(4−アクリロイルオキシフェニル)スルフィド、前記式(1)において、R1〜R6が水素原子である化合物
・p−CPA:p−クミルフェニルアクリレート、前記式(2)において、R9が水素原子、R11がp−クミル基、n=0である化合物
・o−PPA:o−フェニルフェニルアクリレート、前記式(2)において、R9が水素原子、R11がo−フェニル基、n=0である化合物
・M−110:p−クミルフェノールエチレンオキサイド1モル変性アクリレート、東亞合成(株)製アロニックスM−110、前記式(2)において、R9及びR10が水素原子、R11がp−クミル基、n=1である化合物
・TO−1463:o−フェニルフェノールエチレンオキサイド1モル変性アクリレート、東亞合成(株)製TO−1463、前記式(2)において、R9及びR10が水素原子、R11がo−フェニル基、n=1である化合物
・POA:フェノキシエチルアクリレート、前記式(2)において、R9〜R11が水素原子、n=1である化合物
・M−400:ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレートの混合物、東亞合成(株)製アロニックスM−400
・M−211B:ビスフェノールAエチレンオキサイド4モル変性ジアクリレート、東亞合成(株)製アロニックスM−211B
・BAEPS:ビス(4−アクリロイルオキシエトキシフェニル)スルフィド
・Irg184:1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製イルガキュア184
【0048】
【表2】

【0049】
表2の結果から明らかなように、本発明の組成物の硬化物は、濁りがなく透明性に優れ外観が良好であり、屈折率は、1.61以上の高屈折率であり、光線透過率も良好であった。
一方、(B)成分を含有するが、(A)成分を含有しない組成物(比較例1及び同2)、(A)成分のみで(B)成分を含有しない組成物(比較例3)及び(B)成分を含有するが、(A)成分とは異なるアルキレンオキシド単位を有するジアクリレートを含有する組成物(比較例4)は、高屈折率の硬化物が得られなかった。又、(A)成分のみで(B)成分及びその他エチレン性不飽和を含有しない組成物(比較例5)は、硬化物が高屈折率を有するものであったが、濁りを有し、光線透過率も不十分なものであった。
【0050】
○応用例(レンズシートの製造)
実施例及び比較例で得られた組成物を使用し、レンズ形状を有する金型へ流し込み、その上から透明基板のメタクリル樹脂フィルム〔厚さ0.1mm、カネカ(株)製サンデュレン〕で挟みこんだ。
透明基板側から上記と同様の条件で紫外線を照射して組成物を硬化させた。
硬化後の硬化物を金型から剥離したところ、実施例1〜19の組成物及び比較例1、同2及び同4の組成物は、剥離が容易であり、目的の形状を有するレンズシートを得ることができた。しかも、実施例1〜19の組成物では、上記した通りの光学物性等に優れたレンズシートであった。
一方、比較例3の組成物は、硬化物を金型から剥離中に硬化物が破損してしまい、良好なレンズ形状を得ることができなかった。又、比較例5の組成物では、紫外線照射前に型枠上で結晶化が起こってしまい、良好なレンズ形状を得ることができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の組成物は、活性エネルギー線硬化型光学材料用組成物として、ビデオプロジェクター、プロジェクションテレビ及び液晶ディスプレイ等に使用するフレネルレンズ及びレンチキュラーレンズ、プリズムシート等のレンズシート、並びにプラスチックレンズ等に代表される、高屈折率及び高光線透過率を要求される光学部材に好適に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるジ(メタ)アクリレート(A)及び下記一般式(2)で表されるモノ(メタ)アクリレート(B)を含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型光学材料用組成物。
【化1】

〔式(1)において、R1及びR2は、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、R3及びR5は、それぞれ独立して、水素原子、メチル基又はエチル基を表わし、R4及びR6は、それぞれ独立して、水素原子、メチル基又は臭素原子を表す。〕
【化2】

〔式(2)において、R9及びR10は、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、R11は、水素原子、フェニル基又はクミル基を表し、nは0〜5の整数を表す。〕
【請求項2】
前記(A)成分の10〜90質量部及び前記(B)成分の90〜10質量部を含有する請求項1記載の活性エネルギー線硬化型光学材料用組成物。
【請求項3】
前記一般式(1)において、R1及びR2が、いずれも水素原子を有する化合物である請求項1又は請求項2記載の活性エネルギー線硬化型光学材料用組成物。
【請求項4】
前記一般式(2)において、nが0であり、R11がフェニル基又はクミル基である請求項1〜請求項3のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型光学材料用組成物。
【請求項5】
さらに光重合開始剤(C)を含有することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型光学材料用組成物。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれかに記載の組成物を、所定の形状を有する型枠に塗布するか又は流し込んだ後、活性エネルギー線を照射する光学材料の製造方法。

【国際公開番号】WO2005/077997
【国際公開日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【発行日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−518027(P2005−518027)
【国際出願番号】PCT/JP2005/002311
【国際出願日】平成17年2月16日(2005.2.16)
【出願人】(000003034)東亞合成株式会社 (548)
【Fターム(参考)】