説明

活性エネルギー線硬化型樹脂組成物、それを用いた物品及び成形体

【課題】紫外線などの活性エネルギー線の照射により硬化した際、硬化収縮が小さく、かつ高い硬度、高い耐擦傷性の硬化被膜を得ることができる活性エネルギー線硬化型樹脂組成物、その硬化被膜からなる保護層を有する物品、及び該樹脂組成物の硬化物からなる成形体を提供する。
【解決手段】ポリイソシアネート(a1)と1分子中に1つの水酸基及び2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するアクリレート(a2)との付加反応物であるウレタンアクリレート(A)と、側鎖に反応性官能基を有する(メタ)アクリレート系重合体(b1)に前記反応性官能基と反応が可能な官能基を有するα,β−不飽和化合物(b2)を反応させた(メタ)アクリロイル基を有する重合体(B)とを含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品の保護層として用いることができ、高硬度の硬化被膜を形成する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に関する。さらには、該組成物の硬化被膜を有する物品及び該樹脂組成物の硬化物からなる成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
物品は、その物品同士の接触、他の物品と接触、あるいは、置かれる環境の影響を受け、傷付いたり、変形したりする外的な変化やその物品を構成する材料が劣化する内的な変化を受ける。このような変化を防ぐために、物品の表面に保護層を設けたり、物品そのものを強化したりすることがなされている。
【0003】
プラスチックは、加工性が良い、軽量、安価等の理由で、各種分野で使用されている。しかし、加工性が良い反面、柔らかく、表面に傷が付き易いなどの問題があった。この問題を解消するために、その表面にハードコート材をコーティングして保護層を設ける方法が一般的に用いられている。このハードコート材として、シリコン系樹脂組成物、アクリル系樹脂組成物、メラミン系樹脂組成物等の熱硬化型樹脂組成物が用いられてきたが、加熱して硬化する時間が長いため、熱に弱いプラスチックフィルム等の物品には適用できない問題があった。
【0004】
近年、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、(1)速硬化性であること、(2)エネルギーコストが低いこと、(3)低温で硬化が可能であること等の利点があり、ハードコート材として、急速に採用されている。とりわけ、フィルム用ハードコート材としては、紫外線などの活性エネルギー線の照射により、直ちに硬化し硬い被膜を形成するため、加工処理スピードが速く、硬さ、耐擦傷性、耐汚染性等に優れ、連続加工処理ができるため、主流となっている。
【0005】
ハードコート材を保護層にしたフィルムを表面に設けた液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、タッチパネルディスプレイ等の表示体が、急速に普及している。とりわけ、液晶ディスプレイは大型化し、かつ不特定多数の消費者に使用されるようになったため、それに用いるハードコート材には、より高い硬度、高い耐擦傷性、硬化時の収縮が小さくフィルムのカールが小さいものが要求されている。
【0006】
また、物品に保護層を設ける方法として、予め保護層を設けた転写材を用いて、保護層が転写後に物品の最外層になるようにする転写法がある。家電、自動車等の分野の物品で、この転写法が採用されており、冷蔵庫の外板、携帯電話の筐体等で用いられている。この転写材に設けた保護層にも活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を用いることができるが、不特定多数の消費者が使用するため、より高い硬度、高い耐擦傷性が要求され、かつ転写の際の作業性を高めるため、転写材のカールが小さいことが要求されている。
【0007】
さらに、活性エネルギー線樹脂組成物は、紫外線などの活性エネルギー線の照射により、直ちに硬化して硬い被膜を形成するため、活性エネルギー線樹脂組成物を型に接触させた状態で硬化すると、その型を転写した形状を有する成形体を製造できる。例えば、フレネルレンズシート等の光学シートは、この方法で製造されている。この製法においても、より高い硬度、高い耐擦傷性が要求され、かつ作業性を高めるため、硬化収縮が小さく硬化被膜のカールが小さい活性エネルギー線硬化型樹脂組成物が要求されている。
【0008】
高い硬度、高い耐擦傷性を有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物として、1分子中に少なくとも2個以上の(メタ)アクリロイル基と水酸基を有する放射線硬化型多官能(メタ)アクリレートとポリイソシアネートとを反応させた多官能ウレタンアクリレートを含有する放射線硬化型樹脂組成物(例えば、特許文献1参照。)や縮合多環構造を有するポリオールとポリイソシアネートと水酸基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物とからなるウレタンアクリレート樹脂を必須成分として含有する活性エネルギー線硬化型塗料用組成物(例えば、特許文献2参照。)が提案されている。しかしながら、これらの活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、硬化収縮は小さいが硬度が低かったり、硬度を高めるため、多官能アクリレートのジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等を加えると、硬化収縮が大きくなったりする問題があった。
【0009】
また、(メタ)アクリル当量100〜300g/eq、水酸基価20〜500、重量平均分子量5,000〜50,000のポリマーと多官能イソシアネートとを含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。しかしながら、この活性エネルギー線硬化性樹脂組成物でも硬度が低く、耐擦傷性が不十分であった。
【特許文献1】特開2001−113648号公報
【特許文献2】特開2002−212500号公報
【特許文献3】特開平9−290491号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、紫外線などの活性エネルギー線の照射により硬化した際、硬化収縮が小さく、かつ高い硬度、高い耐擦傷性の硬化被膜を得ることができる活性エネルギー線硬化型樹脂組成物、その硬化被膜からなる保護層を有する物品、及び該樹脂組成物の硬化物からなる成形体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意研究した結果、ポリイソシアネートと1分子中に1つの水酸基及び2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するアクリレートとの付加反応で得られるウレタンアクリレートと、側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート系重合体とを含有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を用いることで、上記の課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、ポリイソシアネート(a1)と1分子中に1つの水酸基及び2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するアクリレート(a2)との付加反応物であるウレタンアクリレート(A)と、側鎖に反応性官能基を有する(メタ)アクリレート系重合体(b1)に前記反応性官能基と反応が可能な官能基を有するα,β−不飽和化合物(b2)を反応させた(メタ)アクリロイル基を有する重合体(B)とを含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型樹脂組成物及びその硬化被膜からなる保護層を有する物品、ならびに該樹脂組成物の硬化物からなる成形体を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、紫外線などの活性エネルギー線の照射により硬化した際、硬化収縮が小さく、かつ高い硬度、高い耐擦傷性を有する硬化被膜を得ることができるので、フィルム用保護層として有用である。また、硬化収縮が小さいことから、大型のフィルムでもカールの発生が抑制でき、液晶ディスプレイ等の大画面ディスプレイの光学フィルム用保護層の材料として好適である。
【0014】
さらに、家電製品、携帯電話の筐体等のプラスチック製物品の保護層としても用いることができる。この場合、保護層は転写材として作製した後、プラスチック製物品の最外層となるよう転写する転写法により形成する方法にも適用できる。
【0015】
一方、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を型に接触された状態で硬化することにより、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化物からなる成形体も作製することができる。この成形体は、フレネルレンズ等の光学シートとして用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に本発明を詳細に説明する。本発明に用いるポリイソシアネート(a1)としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート化合物;ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添メチレンビスフェニレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート等の脂環式炭化水素に結合したイソシアネート基を2個有する化合物(以下、脂環式ジイソシアネートと略す。);トリメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族炭化水素に結合したイソシアネート基を2個有する化合物(以下、脂肪族ジイソシアネートと略す。)などが挙げられる。これらのポリイソシアネートは、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0017】
また、これらのポリイソシアネート(a1)のうち、脂肪族ジイソシアネート又は脂環式ジイソシアネートが好ましく、中でも、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添メチレンビスフェニレンジイソシアネート及びヘキサメチレンジイソシアネートが好ましい。とりわけ、ノルボルナンジイソシアネートが最も好ましい。
【0018】
本発明に用いる1分子中に1つの水酸基及び2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するアクリレート(a2)としては、例えば、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の多価水酸基含有化合物のポリアクリレート類が挙げられ、これらのポリアクリレート類とε―カプロラクトンとの付加物、これらのポリアクリレート類とアルキレンオキサイドとの付加物、エポキシアクリレート類などが挙げられる。これらのアクリレート(a2)は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレートとアクリレートの一方又は両方をいい、「(メタ)アクリロイル基」及び「(メタ)アクリル酸」についても同様である。
【0019】
また、これらのアクリレート(a2)のうち、1分子中に1つの水酸基及び3〜5つの(メタ)アクリロイル基を有するアクリレートが好ましい。このようなアクリレートとしては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等が挙げられ、これらは高硬度の硬化被膜が得られるので特に好ましい。
【0020】
本発明に用いるウレタンアクリレート(A)は、前記ポリイソシアネート(a1)と前記アクリレート(a2)の2成分を付加反応させることにより得られる。前記アクリレート(a2)のポリイソシアネート(a1)中のイソシアネート1当量に対する比率は、水酸基当量として、通常、0.1〜50が好ましく、0.1〜10がより好ましく、0.9〜1.2がさらに好ましい。また、前記ポリイソシアネート(a1)と前記アクリレート(a2)との反応温度は、30〜150℃が好ましく、50〜100℃がより好ましい。なお、反応の終点は、例えば、イソシアネート基を示す2250cm−1の赤外線吸収スペクトルの消失や、JIS K 7301−1995に記載の方法でイソシアネート基含有率を求めることで確認することができる。
【0021】
さらに、上記の付加反応では反応時間を短くする目的で、触媒を用いることができる。触媒としては、例えば、塩基性触媒(ピリジン、ピロール、トリエチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、アンモニア等のアミン類、トリブチルフォスフィン、トリフェニルフォシフィン等のフォスフィン類)や酸性触媒(ナフテン酸銅、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸亜鉛、トリブトキシアルミニウム、テトラブトキシトリチタニウム、テトラブトキシジルコニウム等の金属アルコキシド類、塩化アルミニウム等のルイス酸類、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート等の錫化合物)が挙げられる。これらの中でも、酸性触媒が好ましく、さらに錫化合物が最も好ましい。触媒は、ポリイソシアネート100質量部に対し、通常、0.1〜1質量部加える。必要に応じて、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等の溶剤、あるいは、イソシアネートと反応する部位を持たないラジカル重合性単量体、例えば、後述するラジカル重合性単量体類(C)で水酸基又はアミノ基を有しないものを、溶媒として用いても良い。これらの溶剤、単量体は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0022】
前記ウレタンアクリレート(A)の分子量は、500〜1,500の範囲が好ましい。分子量がこの範囲であれば、十分に高い硬度の硬化被膜が得られ、硬化収縮が小さくなるので、この硬化被膜を有するフィルムのカールも小さくすることができる。
【0023】
樹脂組成物中の樹脂成分の合計100質量部中の前記ウレタンアクリレート(A)の配合量は、5〜90質量部が好ましく、10〜70質量部がより好ましく、10〜60質量部がさらに好ましい。ウレタンアクリレート(A)の配合量がこの範囲であれば、十分に高い硬度の硬化被膜が得られ、硬化収縮が小さくなるので、この硬化被膜を有するフィルムのカールも小さくすることができる。
【0024】
本発明に用いる側鎖に反応性官能基を有する(メタ)アクリレート系重合体(b1)の反応性官能基としては、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基等が好ましい。また、これらの反応性官能基と反応が可能なα,β−不飽和化合物(b2)が有する官能基としては、イソシアネート基、カルボキシル基、酸ハライド基、水酸基、エポキシ基等が好ましい。なお、側鎖に反応性官能基を有する(メタ)アクリレート系重合体(b1)に前記反応性官能基と反応が可能な官能基を有するα,β−不飽和化合物(b2)を反応させた(メタ)アクリロイル基を有する重合体(B)の製造方法は、特に限定はなく、従来の公知の方法で製造することができるが、例えば、下記の製造方法(1)〜(3)が挙げられる。
【0025】
製造方法(1)
前記(メタ)アクリレート系重合体(b1)として、側鎖に反応性官能基として水酸基を有する(メタ)アクリレート系重合体又は共重合体を用いて、その水酸基の一部あるいは全部に、α,β−不飽和化合物(b2)として、(メタ)アクリロイルエチルイソシアネート、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸クロライド等を反応させ、(メタ)アクリロイル基を導入する方法。
【0026】
製造方法(2)
前記(メタ)アクリレート系重合体(b1)として、側鎖に反応性官能基としてカルボキシル基を有する(メタ)アクリレート系重合体又は共重合体を用いて、そのカルボキシル基の一部あるいは全部に、α,β−不飽和化合物(b2)として、水酸基及び(メタ)アクリロイル基を含有するアクリレート、又はエポキシ基及び(メタ)アクリロイル基を有するアクリレートを反応させ、(メタ)アクリロイル基を導入する方法。
【0027】
製造方法(3)
前記(メタ)アクリレート系重合体(b1)として、側鎖に反応性官能基としてエポキシ基を有する(メタ)アクリレート系重合体又は共重合体を用いて、そのエポキシ基の一部あるいは全部に、α,β−不飽和化合物(b2)として、(メタ)アクリル酸又はカルボキシル基とアクリロイル基とを有するアクリレートを反応させ、(メタ)アクリロイル基を導入する方法。
【0028】
上記の製造方法(3)を例に、重合体(B)の製造方法を、より具体的に説明する。製造方法(3)では、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート系重合体又は共重合体に、α,β−不飽和カルボン酸を反応させることにより、重合体(B)を容易に得ることができる。ここで、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート系重合体は、原料としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、脂環式エポキシ基を有する(メタ)アクリレート(例えば、ダイセル化学工業株式会社製「CYCLOMER M100」、「CYCLOMER A200」)、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル等のエポキシ基を有する(メタ)アクリレートを用いて、これらを単独重合することにより得られる。
【0029】
また、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート系共重合体は、前記エポキシ基を有する(メタ)アクリレートに加え、(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、酢酸ビニル、アクリロニトリル等のカルボキシル基を有しないα,β−不飽和単量体を原料として、2種以上の単量体を共重合することにより得られる。なお、前記カルボキシル基を有しないα,β−不飽和単量体の代わりにカルボキシル基を有するα,β−不飽和単量体を用いた場合は、グリシジル(メタ)アクリレートとの共重合反応の際、架橋反応を生じ、高粘度化やゲル化を起こすため好ましくない。
【0030】
前記エポキシ基を有する(メタ)アクリレート系重合体又は共重合体と反応するα,β−不飽和カルボン酸としては、例えば、(メタ)アクリル酸、カルボキシル基とアクリロイル基とを有する化合物(例えば、大阪有機化学株式会社製「ビスコート2100」)等が挙げられる。
【0031】
上記の製造方法で得られる重合体(B)の重量平均分子量は、5,000〜80,000が好ましく、5,000〜50,000がより好ましく、8,000〜35,000がさらに好ましい。重量平均分子量が、5,000以上で硬化収縮を小さくする効果が大きく、80,000以下で硬度が十分に高いものとなる。
【0032】
また、重合体(B)の(メタ)アクリロイル基当量は、100〜300g/eqが好ましく、さらに好ましくは、200〜300g/eqである。重合体(B)の(メタ)アクリロイル基当量がこの範囲であれば、硬化収縮を小さくでき、硬度も十分に高くすることができる。
【0033】
上記の製造方法(1)〜(3)で重合体(B)を製造する際には、上記の重合体(B)の重量平均分子量や(メタ)アクリロイル基当量を満たすように、使用する単量体や重合体の種類、これらの使用量等を適宜選択すると良い。
【0034】
樹脂組成物中の樹脂成分の合計100質量部中の前記重合体(B)の配合量は、5〜90質量部配合することが好ましく、10〜70質量部がより好ましく、15〜50質量部がさらに好ましい。重合体(B)の配合量がこの範囲であれば、十分に高い硬度の硬化被膜が得られ、硬化収縮が小さくなるので、この硬化被膜を有するフィルムのカールも小さくすることができる。
【0035】
前記ウレタンアクリレート(A)と前記重合体(B)との配合比率は、質量基準で(A):(B)=10:90〜90:10の範囲が好ましく、(A):(B)=20:80〜80:20の範囲がより好ましく、(A):(B)=25:75〜75:25の範囲がさらに好ましい。前記ウレタンアクリレート(A)と前記重合体(B)との配合比率がこの範囲であれば、十分に高い硬度の硬化被膜が得られ、硬化収縮が小さくなるので、この硬化被膜を有するフィルムのカールも小さくすることができる。
【0036】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物には、前記ウレタンアクリレート(A)及び重合体(B)に加え、ラジカル重合性単量体類(C)を加えても良い。ラジカル重合性単量体類(C)としては、例えば、以下のものが挙げられる。
【0037】
N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール、ビニルピリジン、アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、t−オクチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、7−アミノ−3,7−ジメチルオクチル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、ラウリル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、エチレンジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、メチルトリエチレンジグリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等のモノアクリレート類;
【0038】
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリエチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリプロピレンオキシド変性グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリエチレンオキシド変性グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリエピクロロヒドリン変性グリセリントリ(メタ)アクリレート、1,3,5−トリアクロイルヘキサヒドロ−s−トリアジン、トリス(アクリロイロオキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、テトラエチレンオキシド変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジエチレンオキシド変性ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(例えば、日本化薬株式会社製「カヤラッドD−310」)、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラアクリレート(例えば、日本化薬株式会社製「カヤラッドD−320」)、ε−カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(例えば、日本化薬株式会社製「カヤラッドDPCA−20」)、ジペンタエリスリトールペンタメタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ヘキサエチレンオキサイド変性ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、ヘキサキス(メタクリロイルオキシエチル)シクロトリフォスファゼン(例えば、共栄社化学株式会社製「PPZ」)等の多官能アクリレート類などがある。
【0039】
また、前記ラジカル重合性単量体類(C)の中でも、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートは、硬度を高める効果があるため好ましい。このような多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げられる。これらは、単独で用いても、2種以上を併用しても良い。
【0040】
さらに、前記ラジカル重合性単量体類(C)として、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基等の酸基を有する単量体、アミノ基を有する単量体、アルコキシシリル基、アルコキシチタニル基を有する単量体を用いると、基材との密着性を高めることができるので好ましい。一方、フルオロカーボン鎖、ジメチルシロキサン鎖、炭素原子数12以上のハイドロカーボン鎖を有する単量体は、保護層の表面滑り性、耐汚染性、耐指紋付着性等の表面性を高めることができるので好ましい。
【0041】
前記ラジカル重合性単量体類(C)を樹脂組成物中に配合する際の配合量は、前記ウレタンアクリレート(A)と重合体(B)との合計量100質量部に対して、10〜300質量部が好ましい。また、硬化収縮を小さくし、かつ硬化被膜の表面硬度を高めるには、20〜200質量部がより好ましく、20〜100質量部がさらに好ましい。
【0042】
また、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物には、前記ウレタンアクリレート(A)、重合体(B)に加え、前記ウレタンアクリレート(A)以外のウレタンアクリレート(D)を加えても良い。ウレタンアクリレート(D)としては、ポリオールと前記ポリイソシアネート(a1)とを付加反応させた後、さらに前記の1分子中に1つの水酸基及び2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するアクリレート(a2)を付加反応させたものが挙げられる。このウレタンアクリレート(D)を樹脂組成物中に配合する際の配合量は、前記ウレタンアクリレート(A)と重合体(B)との合計量100質量部に対して、5〜100質量部が好ましく、10〜50質量部がより好ましい。
【0043】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、活性エネルギー線を照射すると硬化する樹脂組成物をいう。また、活性エネルギー線とは、紫外線、電子線、α線、β線、γ線のような電離放射線をいう。紫外線を用いる場合には、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物中に光重合開始剤を添加する。また、必要であればさらに光増感剤を添加する。一方、電子線、α線、β線、γ線のような電離放射線を用いる場合には、光重合開始剤や光増感剤を用いなくても速やかに硬化するので、特にこれらを添加する必要はない。
【0044】
紫外線で硬化する場合、有効な光重合開始剤としては、分子内開裂型光重合開始剤と水素引き抜き型光重合開始剤に大別できる。分子内開裂型光重合開始剤としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ−(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタノン等のアセトフェノン系化合物;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾイン系化合物;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド等のアシルホスフィンオキシド系化合物;ベンジル、メチルフェニルグリオキシエステル等の化合物が挙げられる。
【0045】
一方、水素引き抜き型光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル−4−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルサルファイド、アクリル化ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン等のチオキサントン系化合物;ミヒラ−ケトン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン等のアミノベンゾフェノン系化合物;10−ブチル−2−クロロアクリドン、2−エチルアンスラキノン、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン等の化合物が挙げられる。
【0046】
また、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に好適に用いられる光増感剤としては、特に限定されないが、例えば、脂肪族アミン、芳香族アミン等のアミン類、o−トリルチオ尿素等の尿素類、ナトリウムジエチルジチオホスフェート、s−ベンジルイソチウロニウム−p−トルエンスルホネート等の硫黄化合物等が挙げられる。
【0047】
これらの光重合開始剤及び光増感剤の使用量は、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物中の樹脂成分100質量部に対し、各々0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜10質量%がより好ましい。
【0048】
また、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物には、必要に応じて各種添加剤を配合してもよく、所望により溶剤で希釈しても良い。添加剤としては、例えば、重合禁止剤、酸化防止剤、レベリング剤、消泡剤、塗面改良剤(ぬれ性、スリップ性改良剤等)、可塑剤、着色剤等が挙げられる。
【0049】
希釈に用いる溶剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;酢酸エチル、エチルソルブアセテート等のエステル類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類などが挙げられる。これらの溶剤は、単独で用いても、2種以上を併用しても良い。
【0050】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化被膜は、発生する硬化収縮が小さく、かつ高い硬度、高い耐擦傷性を有するため、硬化収縮に起因する影響を物品に与えることなく保護できる。このため、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化被膜は各種物品の保護層を形成するハードコート材として有用である。この物品としては、例えば、プラスチック、紙、木材等のセルロース、ガラス等のセラミックス、鉄、アルミニウム等の金属からなる物品が挙げられ、特に、プラスチックからなる物品の保護に有用であり、とりわけ、プラスチックフィルム表面の保護に本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を用いた場合、硬化収縮が小さくフィルムのカールが小さくなるため格段の効果を発揮する。なお、物品の表面には、柄や易接着層を設けたものであっても良い。また、硬化被膜の厚さは、通常0.5〜500μmであり、3〜50μmが好ましく、4〜30μmが特に好ましい。硬化被膜の厚さがこの範囲であれば、高い硬度、高い耐擦傷性が得られる。
【0051】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化被膜を有するプラスチックフィルムは、上記の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物をフィルム基材上に、該樹脂組成物の乾燥後の質量が、0.5〜500g/m、好ましくは、3〜50g/m、特に好ましくは、4〜30g/m(膜厚にすると、通常0.5〜500μm、好ましくは、3〜50μm、特に好ましくは、4〜30μm)になるように塗布し、乾燥後、活性エネルギー線を照射し、硬化被膜を形成させることにより得ることができる。フィルム基材上の硬化被膜の形成量が0.5g/m未満では、フィルム基材そのものの硬度の影響を受け、十分に高い硬度が得られない場合がある。また、500g/m以上では、硬化時の重合熱で基材の変形等が起きる不具合が発生するため、硬化時に冷却等の工夫が必要となる。
【0052】
前記フィルム基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム;ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン−1等のポリオレフィンフィルム;トリアセチルセルロース等のセルロース系フィルム;ポリスチレンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ノルボルネン系樹脂フィルム(例えば、日本ゼオン株式会社製「ゼオノア」)、変性ノルボルネン系樹脂フィルム(例えば、(JSR株式会社製「アートン」)、環状オレフィン共重合体フィルム(例えば、三井化学株式会社製「アペル」)等が挙げられる。これらのフィルムは2種以上貼り合わせて用いても良い。これらのフィルムは、シート状であっても良い。フィルム基材の厚さは、20〜500μmが好ましい。使用するフィルムは、柄や易接着層を設けたものであっても良い。
【0053】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物をフィルム基材に塗布する方法としては、例えば、グラビアコート、ロールコート、コンマコート、エアナイフコート、キスコート、スプレーコート、かけ渡しコート、ディップコート、スピンナーコート、ホイーラーコート、刷毛塗り、シルクスクリーンによるベタコート、ワイヤーバーコート、フローコート等が挙げられる。また、オフセット印刷、活版印刷等の印刷方式でも良い。これらの中でも、グラビアコート、ロールコート、コンマコート、エアナイフコート、キスコート、ワイヤーバーコート、フローコートは、より厚さが一定な塗膜が得られるため好ましい。なお、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を前記フィルム基材以外のフィルム又はシート状の物品に塗布する場合も、フィルム基材と同様の塗布方法を用いることができる。
【0054】
また、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、プラスチック成形体用ハードコート材としても好適に用いることができる。該樹脂組成物の硬化被膜は、硬化収縮が小さいため、基材であるプラスチック成形体表面との密着が良く、保護層に外部から衝撃が加わった場合でも、基材から硬化被膜が剥離せず、かつ高い硬度、高い耐擦傷性を有する保護層となるので非常に有用である。
【0055】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化被膜を有するプラスチック成形体は、該樹脂組成物をプラスチック成形体表面に、例えば、スプレー塗装、ディップ塗装によって塗布し、乾燥後、活性エネルギー線を照射し、硬化被膜を形成させることにより得ることができる。プラスチック成形体の材質としては、例えば、ポリアクリル系樹脂、ポリフェニレンオキシド・ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチレン共重合体系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ABS樹脂等が挙げられる。これらのプラスチック成形体は、柄、金属薄層又は易接着層を設けたものであって良い。なお、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を、材質がプラスチック以外の成形された物品に塗布する場合も、プラスチック成形体と同様の塗布方法を用いることができる。
【0056】
また、プラスチック成形体を本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化被膜によって保護する方法として、上記の硬化被膜を形成させたフィルムを、プラスチックの賦型前に、硬化被膜が最表面になるようにプラスチック表面に貼り付け、その後、プラスチックを該フィルムとともに賦型する方法もある。プラスチック表面への該フィルムの貼り付けは、フィルムとプラスチックを高温で溶融接着しても、接着剤を用いて接着しても構わない。また、プラスチックを賦型した成形体に、硬化被膜を形成させたフィルムを該成形体の外形に合わせて二次成形したものを貼り付けても良い。
【0057】
さらに、材質がプラスチックや金属等の成形された物品に保護層を設ける方法として、予め本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化被膜からなる保護層を設けた転写材を用いる方法がある。この場合、転写材の保護層が転写後に物品の最外層になるように、水圧転写法等の転写方法を用いて、物品の表面に貼り付ける。この転写材に柄や金属薄層を設けた場合には、物品に意匠性を付与すると同時に、その表面に高い硬度、高い耐擦傷性を付与することができる。また、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、硬化収縮が小さいので、該樹脂組成物を用いた転写材のカールが小さく、転写の際の作業性も高い。
【0058】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化物からなる成形体の作製方法としては、例えば、下記の方法が挙げられる。
【0059】
形状を有する基材の上に、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を塗布し、活性エネルギー線を照射して硬化物を形成し、その硬化物を基材から剥がして成形体を作製する方法。
【0060】
活性エネルギー線を透過し、形状を有する基材の上に、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を塗布し、その上から金型等の型を押しつけ、基材側から活性エネルギー線を照射して硬化物を形成し、その硬化物を型と基材から剥がして成形体を作製する方法。
【0061】
金型等の型の表面に、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を塗布し、その上から活性エネルギー線を照射して硬化物を形成し、その硬化物を型から剥がして成形体を作製する方法。
【0062】
上記の方法で得られた本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化物からなる成形体は、硬化収縮が小さく、かつ高い硬度、高い耐擦傷性を有するため、他物品との接触で傷が付くことがないため、非常に有用なものである。
【0063】
活性エネルギー線を照射する装置として、紫外線を用いる場合には、光発生源として、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、水銀−キセノンランプ、ショートアーク灯、ヘリウム・カドミニウムレーザー、アルゴンレーザー、太陽光、LED等が挙げられる。また、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物をフィルム基材に塗布し、硬化被膜を形成する際には、閃光的に照射するキセノン−フラッシュランプを使用すると、フィルム基材への熱の影響を小さくできるので好ましい。
【0064】
一方、電子線を用いる場合、30〜300kVの加速電圧の電子線加速装置が好ましい。なお、保護層を形成する物品がセルロース系フィルム、ポリエステルフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリカーボネートフィルム等のフィルム基材の場合、電子線の照射により、黄変や劣化を生じるため、加速電圧を30〜150kVにすることで、フィルム基材の黄変や劣化が防止できる。
【実施例】
【0065】
以下に、実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。
【0066】
(合成例1)ウレタンアクリレート(A1)の合成
攪拌機、ガス導入管、冷却管、及び温度計を備えたフラスコに、酢酸ブチル250質量部、ノルボルナンジイソシアネート(以下、「NBDI」という。)206質量部、p−メトキシフェノール0.5質量部、ジブチル錫ジアセテート0.5質量部を仕込み、空気を吹き込みながら、70℃に昇温した後、ペンタエリスリトールトリアクリレート(以下、「PE3A」という。)/ペンタエリスリトールテトラアクリレート(以下、「PE4A」という。)混合物(質量比75/25の混合物)795質量部を1時間かけて滴下した。滴下終了後、70℃で3時間反応させ、さらにイソシアネート基を示す2250cm−1の赤外線吸収スペクトルが消失するまで反応を行い、ウレタンアクリレート(A1)/ペンタエリスリトールテトラアクリレート混合物(質量比80/20の混合物、不揮発分80質量%の酢酸ブチル溶液)を得た。なお、ウレタンアクリレート(A1)の分子量(計算値)は802である。
【0067】
(合成例2)ウレタンアクリレート(A2)の合成
攪拌機、ガス導入管、冷却管、及び温度計を備えたフラスコに、酢酸ブチル568質量部、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、「HDI」という。)168質量部、p−メトキシフェノール1.2質量部、ジブチル錫ジアセテート1.2質量部を仕込み、70℃に昇温した後、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(以下、「DPPA」という。)/ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(以下、「DPHA」という。)混合物(質量比50/50の混合物)2096質量部を1時間かけて滴下した。滴下終了後、70℃で3時間反応させ、さらにイソシアネート基を示す2250cm−1の赤外線吸収スペクトルが消失するまで反応を行い、ウレタンアクリレート(A2)/DPHA混合物(質量比54/56の混合物、不揮発分80質量%の酢酸ブチル溶液)を得た。なお、ウレタンアクリレート(A2)の分子量(計算値)は1,216である。
【0068】
(合成例3)ウレタンアクリレート(A3)の合成
攪拌機、ガス導入管、冷却管、及び温度計を備えたフラスコに、酢酸ブチル254質量部、イソホロンジイソシアネート(以下、「IPDI」という。)222質量部、p−メトキシフェノール0.5質量部、ジブチル錫ジアセテート0.5質量部を仕込み、70℃に昇温した後、PE3A/PE4A混合物(質量比75/25の混合物)795質量部を1時間かけて滴下した。滴下終了後、70℃で3時間反応させ、さらにイソシアネート基を示す2250cm−1の赤外線吸収スペクトルが消失するまで反応を行い、ウレタンアクリレート(A3)/PE4A混合物(質量比80/20の混合物、不揮発分80質量%の酢酸ブチル溶液)を得た。なお、ウレタンアクリレート(A3)の分子量(計算値)は818である。
【0069】
(合成例4)重合体(B1)の合成
攪拌機、ガス導入管、冷却管、及び温度計を備えたフラスコに、グリシジルメタクリレート(以下、「GMA」という。)250質量部、ラウリルメルカプタン1.6質量部、メチルイソブチルケトン(以下、「MIBK」という。)1000質量部及び2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(以下、「AIBN」という。)7.5質量部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら、1時間かけて90℃に昇温し、90℃で1時間反応させた。次いで、90℃で攪拌しながら、GMA750質量部、ラウリルメルカプタン4.4質量部、AIBN22.5質量部からなる混合液を2時間かけて滴下した後、100℃で3時間反応させた。その後、AIBN10質量部を仕込み、さらに100℃で1時間反応させた後、120℃付近に昇温し、2時間反応させた。60℃まで冷却し、窒素導入管を、空気導入管に付け替え、アクリル酸(以下、「AA」という。)507質量部、p−メトキシフェノール2質量部、トリフェニルホスフィン5.4質量部を加えて混合した後、空気で反応液をバブリングしながら、110℃まで昇温し、8時間反応させた。その後、p−メトキシフェノール1.4質量部を加え、室温まで冷却後、不揮発分が50質量%になるように、MIBKを加え、重合体(B1)(不揮発分50質量%のMIBK溶液)を得た。なお、得られた重合体(B1)の重量平均分子量は11,000(GPCによるポリスチレン換算による)で、(メタ)アクリロイル基当量は300g/eqであった。
【0070】
(合成例5)重合体(B2)の合成
攪拌機、ガス導入管、冷却管、及び温度計を備えたフラスコに、GMA200質量部、n−ブチルメタクリレート(以下、「nBMA」という。)50質量部、ラウリルメルカプタン1.8質量部、「MIBK」1000質量部及びAIBN7.5質量部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら、1時間かけて90℃に昇温し、90℃で1時間反応させた。次いで、90℃で攪拌しながら、GMA600質量部、nBMA150質量部、ラウリルメルカプタン4.8質量部、AIBN22.5質量部からなる混合液を2時間かけて滴下した後、100℃で3時間反応させた。その後、AIBN10質量部を仕込み、さらに100℃で1時間反応させた後、120℃付近に昇温し、2時間反応させた。60℃まで冷却し、窒素導入管を、空気導入管に付け替え、AA406質量部、p−メトキシフェノール2質量部、トリフェニルホスフィン5.4質量部を加えて混合した後、空気で反応液をバブリングしながら、110℃まで昇温し、8時間反応させた。その後、p−メトキシフェノール1.4質量部を加え、室温まで冷却後、不揮発分が50質量%になるように、MIBKを加え、重合体(B2)(不揮発分50質量%のMIBK溶液)を得た。なお、得られた重合体(B2)の重量平均分子量は8,800(GPCによるポリスチレン換算による)で、(メタ)アクリロイル基当量は240g/eqであった。
【0071】
(合成例6)重合体(B3)の合成
合成例4において、最初に仕込んだラウリルメルカプタンを1.3質量部、次に滴下するラウリルメルカプタンを3.7質量部に変更した以外は、合成例4と同様にして、重合体(B3)(不揮発分50質量%のMIBK溶液)を得た。なお、得られた重合体(B3)の重量平均分子量は31,000(GPCによるポリスチレン換算による)で、(メタ)アクリロイル基当量は300g/eqであった。
【0072】
上記で得られたウレタンアクリレート(A1)〜(A3)及び重合体(B1)〜(B3)を用いて、下記のように本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を調製した。
【0073】
(実施例1)
酢酸ブチル7.7質量部、メチルエチルケトン(以下、「MEK」という。)50質量部、合成例1で得られたウレタンアクリレート(A1)/PE4A混合物(質量比80/20の混合物)の酢酸ブチル溶液(不揮発分80質量%)42.5質量部、合成例4で得られた重合体(B1)のMIBK溶液(不揮発分50質量%)74質量部、PE3A/PE4A混合物(質量比75/25の混合物)29質量部、シリコンヘキサアクリレート(ダイセル・ユーシービー株式会社製「Ebecryl 1360」;以下、「SiA」という。)0.2質量部及び光重合開始剤(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン;以下、「HCPK」という。)3質量部を均一に混合し、樹脂組成物(1)を得た。
【0074】
(実施例2)
酢酸ブチル16.2質量部、MEK50質量部、合成例1で得られたウレタンアクリレート(A1)/PE4A混合物(質量比80/20の混合物)の酢酸ブチル溶液(不揮発分80質量%)70質量部、合成例4で得られた重合体(B1)のMIBK溶液(不揮発分50質量%)46質量部、PE3A/PE4A混合物(質量比75/25の混合物)21質量部、SiA0.2質量部及びHCPK3質量部を均一に混合し、樹脂組成物(2)を得た。
【0075】
(実施例3)
酢酸ブチル9.4質量部、MEK50質量部、合成例2で得られたウレタンアクリレート(A2)/DPHA混合物(質量比54/46の混合物)の酢酸ブチル溶液(不揮発分80質量%)28.8質量部、合成例5で得られた重合体(B2)のMIBK溶液(不揮発分50質量%)76質量部、DPHA39質量部、SiA0.2質量部及びHCPK3質量部を均一に混合し、樹脂組成物(3)を得た。
【0076】
(実施例4)
酢酸ブチル15.2質量部、MEK50質量部、合成例3で得られたウレタンアクリレート(A3)/PE4A混合物(質量比80/20の混合物)の酢酸ブチル溶液(不揮発分80質量%)60質量部、合成例5で得られた重合体(B3)のMIBK溶液(不揮発分50質量%)52質量部、DPHA26質量部、SiA0.2質量部及びHCPK3質量部を均一に混合し、樹脂組成物(4)を得た。
【0077】
(実施例5)
酢酸ブチル14.4質量部、MEK50質量部、合成例1で得られたウレタンアクリレート(A1)/PE4A混合物(質量比80/20の混合物)の酢酸ブチル溶液(不揮発分80質量%)53.8質量部、合成例4で得られた重合体(B1)のMIBK溶液(不揮発分50質量%)56質量部、DPHA29質量部、SiA0.2質量部及びHCPK3質量部を均一に混合し、樹脂組成物(5)を得た。
【0078】
(実施例6)
酢酸ブチル28.2質量部、MEK50質量部、合成例1で得られたウレタンアクリレート(A1)/PE4A混合物(質量比80/20の混合物)の酢酸ブチル溶液(不揮発分80質量%)25質量部、合成例4で得られた重合体(B1)のMIBK溶液(不揮発分50質量%)40質量部、DPHA60質量部、SiA0.2質量部及びHCPK3質量部を均一に混合し、樹脂組成物(6)を得た。
【0079】
(実施例7)
酢酸ブチル23.2質量部、MEK50質量部、合成例1で得られたウレタンアクリレート(A1)/PE4A混合物(質量比80/20の混合物)の酢酸ブチル溶液(不揮発分80質量%)50質量部、合成例4で得られた重合体(B1)のMIBK溶液(不揮発分50質量%)40質量部、PE3A/PE4A混合物(質量比75/25の混合物)20質量部、DPHA20質量部、SiA0.2質量部及びHCPK3質量部を均一に混合し、樹脂組成物(7)を得た。
【0080】
(比較例1)
酢酸ブチル39.2質量部、MEK50質量部、合成例4で得られた重合体(B1)のMIBK溶液(不揮発分50質量%)28質量部、DPHA86質量部、SiA0.2質量部及びHCPK3質量部を均一に混合し、樹脂組成物(C1)を得た。
【0081】
(比較例2)
酢酸ブチル40.7質量部、MEK50質量部、合成例1で得られたウレタンアクリレート(A1)/PE4A混合物(質量比80/20の混合物)の酢酸ブチル溶液(不揮発分80質量%)62.5質量部、DPHA50質量部、SiA0.2質量部及びHCPK3.0質量部を均一に混合し、樹脂組成物(C2)を得た。
【0082】
(比較例3)
酢酸ブチル33.2質量部、MEK50質量部、合成例1で得られたウレタンアクリレート(A1)/PE4A混合物(質量比80/20の混合物)の酢酸ブチル溶液(不揮発分80質量%)100質量部、DPHA20質量部、SiA0.2質量部及びHCPK3質量部を均一に混合し、樹脂組成物(C3)を得た。
【0083】
(比較例4)
酢酸ブチル28.2質量部、MEK50質量部、合成例1で得られたウレタンアクリレート(A1)/PE4A混合物(質量比80/20の混合物)の酢酸ブチル溶液(不揮発分80質量%)125質量部、SiA0.2質量部及びHCPK3質量部を均一に混合し、樹脂組成物(C4)を得た。
【0084】
(比較例5)
MEK3.2質量部、合成例4で得られた重合体(B1)のMIBK溶液(不揮発分50質量%)200質量部、SiA0.2質量部及びHCPK3質量部を均一に混合し、樹脂組成物(C5)を得た。
【0085】
実施例1〜7で得られた樹脂組成物(1)〜(7)及び比較例1〜5で得られた樹脂組成物(C1)〜(C5)の配合組成比率を表1及び2に示す。
【0086】
(評価用フィルムの作製)
上記で得られた樹脂組成物(1)〜(7)及び樹脂組成物(C1)〜(C5)をポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」という。)製フィルム基材(東洋紡績株式会社製「コスモシャインA4100 #100」、厚さ:100μm)上に、ワイヤーバー(#4)を用いて塗布し、60℃で1分間加熱後、空気雰囲気下で紫外線照射装置(日本電池株式会社製「GS30型UV照射装置」、ランプ:120W/cmメタルハライドランプ2灯、ランプ高さ:20cm、照射光量:0.5J/cm)を用いて紫外線を照射し、膜厚5〜6μmの硬化被膜を有するフィルムを得た。
【0087】
(評価用フィルムの表面硬度評価)
上記で得られた評価用フィルムの硬化被膜の表面について、JIS K5600−5−4:1999に準拠し、500g荷重で鉛筆硬度を測定し、下記の基準により表面硬度を評価した。
○:鉛筆硬度が3H以上である。
×:鉛筆硬度が2H以下である。
【0088】
(評価用フィルムのカール性評価)
上記で得られた評価用フィルムから、10cm×10cm試験片を切り出し、23℃、65%RHの雰囲気下に24時間放置後、試験片の4端について、隣接する2点間の長さを測定し、隣接する2点間で最も小さい長さと他2点間の長さとを測定し、下式によってカール値を算出した。
カール値(mm)=10−(最小隣接2点間の長さ+他の隣接2点間の長さ)/2
【0089】
上記で得られたカール値から、下記の基準によりカール性の評価を行った。
◎:カール値が8mm未満である。
○:カール値が8mm以上、10mm以下である。
×:カール値が10mmを超える。
【0090】
(評価用フィルムの透明性評価)
上記で得られた評価用フィルムのヘイズ値をヘイズメータNDH2000(日本電色株式会社製)で測定した。得られたヘイズ値から、下記の基準により透明性を評価した。
○:ヘイズ値が0.1%以下である。
×:ヘイズ値が0.1%を超える。
【0091】
(硬化被膜の基材に対する密着性評価)
上記で得られた基材がPETの評価用フィルムと、上記の評価用フィルムの作製においてPET製フィルム基材をトリアセチルセルロース(以下、「TAC」という。)製フィルム基材(富士写真フィルム株式会社製「TAC」、厚さ:80μm)に代えた以外は同様にして作製した基材がTACの評価用フィルムを用意した。これらの評価用フィルムを、JIS K5400に準拠し、フィルムの表面に1mm間隔で縦、横11本の切れ目を入れて100個の碁盤目を作った。次に、市販のセロハンテープをその表面に密着させた後、一気に剥がしたとき、剥離せずに残ったマス目の個数を数え、下記の基準により密着性を評価した。
○:残ったマス目が100個である。
×:残ったマス目が100個未満。
【0092】
上記の評価結果を表1及び2に示す。
【0093】
【表1】

【0094】
【表2】

【0095】
表1に示した評価結果から、実施例1〜7の本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化被膜を有するフィルムは、十分に高い表面硬度及び透明性を有し、フィルムのカールも小さいことが分かった。
【0096】
表2に示した評価結果から、ウレタンアクリレート(A)又は重合体(B)を含有しない比較例1〜5の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化被膜を有するフィルムは、表面硬度が不十分であるか又はカールが大きいことが分かった。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソシアネート(a1)と1分子中に1つの水酸基及び2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するアクリレート(a2)との付加反応物であるウレタンアクリレート(A)と、側鎖に反応性官能基を有する(メタ)アクリレート系重合体(b1)に前記反応性官能基と反応が可能な官能基を有するα,β−不飽和化合物(b2)を反応させた(メタ)アクリロイル基を有する重合体(B)とを含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリイソシアネート(a1)が、脂肪族ジイソシアネート及び/又は脂環式ジイソシアネートである請求項1記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項3】
前記アクリレート(a2)が、1分子中に1つの水酸基及び3〜5つの(メタ)アクリロイル基を有するアクリレートである請求項1又は2項記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項4】
前記重合体(B)が、グリシジル(メタ)アクリレート系重合体に、α,β−不飽和カルボン酸を反応させた反応生成物である請求項1〜3のいずれか1項記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項5】
前記重合体(B)の重量平均分子量が5,000〜80,000であり、かつ(メタ)アクリロイル基当量が100〜300g/eqである請求項1〜4のいずれか1項記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に、さらにラジカル重合性単量体類(C)を含有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化被膜からなる保護層を有することを特徴とする物品。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化物からなることを特徴とする成形体。



【公開番号】特開2006−328364(P2006−328364A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−108652(P2006−108652)
【出願日】平成18年4月11日(2006.4.11)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】