説明

活性エネルギー線硬化型樹脂組成物及びそれを用いてなる印刷物

【課題】活性エネルギー線硬化型組成物特有の臭気を軽減し、臭気に起因する不快感を取り除き得る活性エネルギー線硬化型樹脂組成物及びそれを用いた印刷物を提供する。
【解決手段】水素引抜き型光重合開始剤を用いてなる活性エネルギー線硬化型樹脂組成物において、香料及び/又はマスキング剤を含むことを特徴とする活性エネルギー線硬化型樹脂組成物及びそれを用いた印刷物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器、容器等を包む包装材、又は容器等に貼着するラベルなどの印刷物に用いられる活性エネルギー線硬化型樹脂組成物、特に活性エネルギー線硬化型インキ又はニスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紙等からなる箱体、ペットボトル、ガラス瓶、金属缶等の容器が、清涼飲料水、乳飲料、ビール、ワイン、調味料、化粧品等の液体容器として広く使用されている。これらの印刷絵柄模様を施したラベル、包装材、容器等の印刷物の意匠性は、清涼飲料水等の商品のもつコンセプトやイメージを表わすものであり、それは消費者の購入意欲を大きく左右する重要な因子である。
上記の印刷物に用いられる印刷用インキ又はニスとして使用される活性エネルギー線硬化型樹脂組成物、特に紫外線硬化型樹脂組成物には、通常、水素引抜き型光重合開始剤又は分子内開裂型光重合開始剤が添加される。
しかしながら、低分子量や低融点の水素引抜き型光重合開始剤や開裂後において低分子量や低融点の分裂化合物を発生する分子内開裂型光重合開始剤を用いると活性エネルギー線硬化型組成物特有の臭気が強くなることがある。(特許文献1参照)
また、文字やロゴマーク等を強調するため、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物をスクリーン印刷法等で厚盛り印刷すると、上記の臭気がより強まることがある。
【0003】
【特許文献1】特開2007−204543号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような状況下で、活性エネルギー線硬化型組成物特有の臭気を軽減し、臭気に起因する不快感を取り除き得る活性エネルギー線硬化型樹脂組成物及びそれを用いた印刷物を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記課題を達成するために鋭意研究を重ねた結果、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に特定の材料を添加することにより、前記課題を解決し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明の要旨は下記のとおりである。
1.水素引抜き型光重合開始剤を用いてなる活性エネルギー線硬化型樹脂組成物において、香料及び/又はマスキング剤を含むことを特徴とする活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
2.香料が柑橘系果実由来の香料である上記1に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
3.香料が針葉樹由来の香料である上記1に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
4.マスキング剤がサルチル酸エステル類である上記1に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
5.サルチル酸エステル類が、サルチル酸フェニル、サルチル酸ベンジル、サルチル酸p−トリルエステル、サルチル酸o−トリルエステル、サルチル酸(2−フェニルエチル)エステル、サルチル酸2−ヒドロキシエチルエステル、サルチル酸5−ヘキセニルエステル及びサルチル酸2−ヘプテニルエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種である上記4に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
6.インキ又はニスである上記1〜5のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
7.上記1〜6のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を用いてなる印刷物。
8.上記1〜6のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物をスクリーン印刷法により厚盛り印刷してなる印刷物。
9.ラベル、包装材又は容器である上記7又は8に記載の印刷物。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、活性エネルギー線硬化型組成物特有の臭気を軽減し、臭気に起因する不快感を取り除き得る活性エネルギー線硬化型樹脂組成物及びそれを用いた印刷物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、水素引抜き型光重合開始剤を用いてなる活性エネルギー線硬化型樹脂組成物において、香料及び/又はマスキング剤を含むことを特徴とする。
【0008】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に含まれる香料としては、柑橘系果実由来の香料、針葉樹由来の香料、又はコーヒー、日本茶、紅茶など飲料系本来の香料が好ましい。
ここで、柑橘系果実由来の香料としては、オレンジ、ライム、レモン(タンジェリン)、蜜柑、マンダリン、柚子、グレープフルーツ、ベルガモット等の果実由来の香料が好適に挙げられる。針葉樹由来の香料としては、ヒノキ由来の香料が好適に挙げられる。
【0009】
また、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に含まれるマスキング剤としては、次のような公知のものを使用しても良い。
具体的には、アンバーコア、アンブロキサン、セドロール、セドリルメチルエーテル、シス−3−ヘキセニルサリシレート、シス−ジャスモン、シトロネロール、ジヒドロミルセノール、エチルリナロール、ゲラニオール、ジヒドロジャスモン酸メチル、ヘリオトロピン、安息香酸ベンジル、ヘキシルシンナミックアルデヒド、ヘキシルサリシレート、イソ・イー・スーパー、リリアール、リラール、メチル−β−ナフチルケトン、パールライド、フェノキシエタノール、テンタローム、α−ダマスコン、ベンジルアルコール、ジメトール、リナロール、リナリルアセテート、酢酸p−t−ブチルシクロヘキシル、酢酸o−t−ブチルシクロヘキシル、フェニルエチルアルコール、サルチル酸エステル類等が挙げられる。
これらの内、サルチル酸エステル類が好ましい。ここで、サルチル酸エステル類としては、サルチル酸フェニル、サルチル酸ベンジル、サルチル酸p−トリルエステル、サルチル酸o−トリルエステル、サルチル酸(2−フェニルエチル)エステル、サルチル酸2−ヒドロキシエチルエステル、サルチル酸5−ヘキセニルエステル又はサルチル酸2−ヘプテニルエステルが好適に挙げられる。
上記の香料及び/又はマスキング剤は、1種単独で用いても良いし、2種以上を併用して用いても良い。
【0010】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に用いられる光重合開始剤としては、残臭気軽減の観点から水素引抜き型光重合開始剤が用いられる。
この水素引抜き型光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル(商品名「Highcure OBM」)、4−フェニルベンゾフェノン(商品名「Speedcure PBZ」)、4,4'−ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4'−メチルジフェニルサルファイド(商品名「Speedcure BMS」)、3,3',4,4'−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3'−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、1−〔4−(4−ベンゾイルフェニルスルファニル)フェニル〕−2−メチル−2−(4−メチルフェニルスルフォニル)プロパン−1−オン(商品名「Esacure 1001M」)等のベンゾフェノン系;2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン等のチオキサントン系;ミヒラーケトン、4,4'−ジエチルアミノベンゾフェノン等のアミノベンゾフェノン系;10−ブチル−2−クロロアクリドン、2−エチルアンスラキノン、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン等が挙げられる。
【0011】
また、所望により、公知の光増感剤を水素引抜き型光重合開始剤と併用して用いても良い。光増感剤としては、4,4'−ジエチルアミノベンゾフェノン、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、トリエチル−n−ブチルホスフィンジエチルアミンエチルメタクリレート、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソブチル、2−ジメチルアミノエチルベンゾエート、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル等が例示される。
【0012】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に用いられる活性エネルギー線硬化型樹脂としては、特に限定されないが、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートオリゴマーと多官能(メタ)アクリレートモノマーとを併用することが好ましい。
これらの組み合わせの内、ウレタン(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートモノマーとの併用が特に好ましい。
【0013】
上記ウレタン(メタ)アクリレートは、ジオール成分とポリイソシアネート成分とヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート化合物の3種を反応させることにより得られる。なお、(メタ)アクリレートは、メタクリレートとアクリレートの双方を包含するものである。
【0014】
ジオール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ポリブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA、ポリカプロラクトン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ポリトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ポリペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、アラビトール、キシリトール、ガラクチトール、グリセリン、ポリグリセリン、ポリテトラメチレングリコール等の多価アルコールや、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイドのブロック又はランダム共重合の少なくとも1種の構造を有するポリエーテルポリオール、該多価アルコール又はポリエーテルポリオールと無水マレイン酸、マレイン酸、フマール酸、無水イタコン酸、イタコン酸、アジピン酸、イソフタル酸等の多塩基酸との縮合物であるポリエステルポリオール、カプロラクトン変性ポリテトラメチレンポリオール等のカプロラクトン変性ポリオール等が例示される。ジオール成分としては、ポリオレフィン系ポリオール及びその水素添加物が好ましく、特に1,2−ポリブタジエンジオール、1,4−ポリブタジエンジオール、又はこれらの水素添加物が好ましい。
【0015】
ポリイソシアネート成分としては、例えば芳香族系、脂肪族系、脂環式系等のポリイソシアネートが挙げられ、中でもトリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添化ジフェニルメタンジイソシアネート、変性ジフェニルメタンジイソシアネート、水添化キシリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン等のジイソシアネート等が挙げられる。
【0016】
ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート、4−ブチルヒドロキシ(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−ヒドロキシ−3アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0017】
反応に際しては、ジオールとポリイソシアネートをk:k+1(モル比)(kは1以上の整数)の反応モル比で反応させた後、更に、反応物における未反応イソシアート基に対してヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートを1:2の反応モル比として反応させると良い。反応においては、ジブチル錫ジラウレート等の触媒を用いることが好ましい。
【0018】
上記エポキシ(メタ)アクリレートは、エポキシ樹脂のエポキシ基を(メタ)アクリル酸でエステル化した(メタ)アクリロイル基を有するビスフェノール型、ノボラック型、脂環系等のエポキシ(メタ)アクリレートが挙げられ、重量平均分子量が400〜1,000ものが例示され、好ましくは重量平均分子量400〜1,000のビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレートである。
上記ポリエステル(メタ)アクリレートとしては、油類、変性アルキド、変性ポリエステル等をベースとして(メタ)アクロイル基を導入したものが挙げられ、さらにウレタン化したものも含まれる。
【0019】
上記多官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、2官能以上の(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。
2官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート、及びイソシアヌル酸エチレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートプロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0020】
3官能以上の(メタ)アクリレートモノマーとしては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、テトラトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、グリセリンテトラ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0021】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、無着色もしくは着色であって透明又は半透明であるニス及び着色不透明のインキの双方を包含するものである。
本発明組成物に用いられる着色材としては、カーボンブラック、有機顔料、無機顔料、染料等、汎用のものが用いられる。
カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、アセチレンブラック、チャネルブラック等の公知のカーボンブラックが用いられる。
有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、アントラキノン顔料、キクナドリン顔料、ジオキサジン顔料等の多環式顔料;ニトロ顔料、ニトロソ顔料等が用いられる。
無機顔料としては、例えば、二酸化チタン、硫化亜鉛、チタンブラック、群青、紺青、モリブデン赤、チタニウムイエロー等が挙げられる。
また、赤、緑、茶等の特定色顔料や、金、銀色等の金属光沢顔料、プラスチックピグメント等を使用しても良い。
これらの着色材は単独で用いても良いが、2種類以上組み合わせて用いても良い。
【0022】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、上述以外に、所望により種々の添加剤が含まれても良い。
添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤等の光安定剤、帯電防止剤、熱安定剤、滑剤、界面活性剤、分散安定剤等が挙げられる。
紫外線吸収剤は、無機系、有機系のいずれでも良く、無機系紫外線吸収剤としては、平均粒径が5〜120nm程度の二酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛等を好ましく用いることができる。また、有機系紫外線吸収剤としては、例えばベンゾトリアゾール系、具体的には、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、ポリエチレングリコールの3−[3−(ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル]プロピオン酸エステル等が挙げられる。一方、光安定剤としては、例えばヒンダードアミン系、具体的には2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2'−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート等が挙げられる。また、紫外線吸収剤として、分子内に(メタ)アクリロイル基等の重合性基を有する反応性の紫外線吸収剤や光安定剤を用いることもできる。
【0023】
上述の活性エネルギー線硬化型樹脂、光重合開始剤、香料及び/又はマスキング剤、並びに、所望により添加される着色材、その他の添加剤を、例えば、特開2000−086950号公報記載の方法その他の方法で混合して、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物がニス又はインキとして製造される。
ニスにおいては、固形分として、活性エネルギー線硬化型樹脂50〜95質量%、水素引抜き型光重合開始剤1〜10質量%、香料及び/又はマスキング剤0.1〜10質量%及びその他の添加剤0〜10質量%が配合されることが好ましい。
また、インキにおいては、固形分として、活性エネルギー線硬化型樹脂50〜95質量%、水素引抜き型光重合開始剤1〜10質量%、香料及び/又はマスキング剤0.1〜10質量%、着色材5〜50質量%及びその他の添加剤0〜10質量%が配合されることが好ましい。
【0024】
本発明のニスは、必要に応じてゲル化剤を添加してゲルニスとすることができる。ゲル化剤としては、例えば、アルミニウムエチルアセトアセテートジイソプロピレート(川研ファインケミカル製、ALCH)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムイソプロピレート、ステアリン酸アルミニウム、オクチル酸アルミニウム等、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0025】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、ニス又はインキとして用いて、印刷法や塗工法等の公知の層形成法で、印刷物を形成することが出来る。具体的には、スクリーン印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷等の印刷法、又はロールコート、コンマコート、ダイコート等の塗工法により形成すれば良い。印刷法は任意形状での部分形成が容易であるが、塗工法でも間欠塗工で部分形成可能である。
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、特に、スクリーン印刷法により厚盛り印刷して印刷物を形成する場合に発生する臭気を好適に軽減し、臭気に起因する不快感を取り除くことができる。
【0026】
本発明において、活性エネルギー線は、可視光、紫外線、電子線、α線、β線、γ線のような電離放射線をいう。但し、電子線、α線、β線、γ線のような電離放射線を用いる場合には、光重合開始剤や光増感剤を用いなくても速やかに硬化するが、配合上の理由により活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に水素引抜き型光重合開始剤を配合する場合は、本発明に包含される。
上述の活性エネルギー線の内、反応性、安全性、コストなどの観点から、紫外線を用いることが好ましい。用いられる紫外線の波長は200〜400nmが好ましく、好ましい照射条件としては、例えば、照射量10〜1000mJ/cm2であることが望ましい。活性エネルギー線の照射装置としては、例えば、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、エキシマランプ、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、水銀−キセノンランプ等のランプ光源、アルゴンイオンレーザーやヘリウムネオンレーザー等のパルス、連続のレーザー光源等を用いることが可能である。また、電子線照射の場合は、30〜1,000KeVの範囲のエネルギーを持つ電子線を用い、20〜50kGyの照射量とすることが好ましい。
通常、ランプ出力80〜300W/cm程度の照射源が用いられる。
【0027】
本発明における印刷物は、ラベル、包装材又は容器を包含するものである。ラベル又は包装材は、紙、プラスチックフィルム等の原反である基材の上に本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を印刷してなる。ラベル又は包装材に用いられる基材としての紙は、板紙、合成紙、あるいはそれらにプラスチックフィルムをラミネーション等により積層したものでも良い。また、基材としてのプラスチックフィルムには、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル{例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」という。)}等の樹脂フィルムが用いられる。
容器は、清涼飲料水や液体調味料等を充填する容器としてのPET製ボトル(ペットボトル等)あるいは円筒体又は箱体等のプラスチック製容器に限られず、清涼飲料水やアルコール飲料等を充填するアルミ缶やスチール缶等の金属性缶体、ガラス瓶及び紙を基本材料とする箱体等の容器をも含む容器全般をいう。これらの容器の基材の上に本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物が印刷されて本発明の印刷物となる。
【0028】
以下、本発明の印刷物を、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の印刷物の一実施態様の断面を示す模式図である。
図1において、本発明の印刷物1の第一の実施態様は、基材2表面に、所望により積層される隠蔽層3及び/又は絵柄層4及び本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を硬化してなるニス層5(以下、「ニス層5」と略称する。)を、その順に積層している。ニス層5は、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物をスクリーン印刷法により厚盛り印刷して形成されている。図1に示すように、所望により、基材2裏面に粘着剤層7を介してセパレート紙8を貼着したシートを用いても良い。
図2は、本発明の印刷物の他の実施態様の断面を示す模式図である。
図2において、本発明の印刷物1の他の実施態様は、基材2表面に、所望により積層される隠蔽層3及び本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を硬化してなる絵柄層6(以下、「本発明組成物絵柄層6」と略称する。)を、その順に積層している。本発明組成物絵柄層6は、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物をスクリーン印刷法(例えば、ロータリースクリーン印刷法)等により、必要に応じ厚盛り印刷して形成されている。図2に示すように、所望により、基材2裏面に粘着剤層7を介してセパレート紙8を貼着したシートを用いても良い。
なお、図1において、所望により積層される絵柄層4の代わりに本発明組成物絵柄層6を積層しても良い。
上述のように、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物をスクリーン印刷法により厚盛り印刷することにより、さらに臭気を軽減し、臭気に起因する不快感を取り除く効果を高めることができる。
本発明における厚盛り印刷の厚さは、好ましくは50〜500μm であり、特に好ましくは100〜300μm である。
【0029】
本発明に係る所望により設けられる隠蔽層3及び/又は絵柄層4に用いるインキとしては、バインダーの樹脂に本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物と同様の樹脂を使用しても良いし、他の樹脂を用いても良い。他の樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル・ウレタン系樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル樹脂、塩素化ポリオレフィン、セルロース系樹脂(例えば、ニトロセルロース)等を用いる。また、着色材としては、例えば、上述の本発明組成物に用いられるものを用いれば良い。
特に、隠蔽層3は隠蔽性の高い無機顔料を含むことが望ましい。
絵柄層4の絵柄模様は、例えば、木目模様、竹目模様、石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形、文字、記号又は各種抽象模様等であり、隠蔽層3では、通常、全面ベタである。
【0030】
本発明においては、隠蔽層3は必須ではなく、基材2に隠蔽性がある場合であっても、ない場合であっても設けなくても良い。しかしながら、基材2に隠蔽性がない場合において、容器に起因する色等を隠蔽すると共に絵柄層4又は本発明組成物絵柄層6の色彩を鮮やかにするためには、隠蔽層3を基材2と絵柄層4又は本発明組成物絵柄層6との間に設けることが望ましい。また、基材2に隠蔽性がある場合であっても、絵柄層4又は本発明組成物絵柄層6の色彩をさらに鮮やかにするために隠蔽層3を設けることが好ましい。隠蔽層3は、隠蔽する目的に応じ、印刷層又は塗工層を一層のみ有していても良いし、複数の印刷層又は塗工層を有していても良い。
【0031】
本発明に係る所望により設けられる隠蔽層3及び/又は絵柄層4は、フレキソ印刷、オフセット印刷、レタープレス印刷、グラビア印刷等の公知の印刷又はグラビア塗工等の塗工法により形成すれば良い。各層の厚さは、通常0.5〜10μm 程度である。
【実施例】
【0032】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、臭気強度官能評価及び快感/不快感官能評価は、下記の方法に従って評価した。
<臭気強度官能評価>
28名(男性16名及び女性12名)に印刷物サンプルを嗅いでもらい、比較例1を標準として下記の第1表に示す基準により評価した。
<快感/不快感強度官能評価>
28名(男性16名及び女性12名)に印刷物サンプルを嗅いでもらい、比較例1を標準として下記の第1表に示す基準により評価した。
【0033】
【表1】

【0034】
実施例1〜3及び比較例1
第2表に示す配合処方により実施例1〜3及び比較例1の活性エネルギー線硬化型ニスを調製した後、各活性エネルギー線硬化型ニスをそれぞれバーコーター#12を用いて易接着ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに硬化後の厚さが10μmになるように塗布した。
次に、それらをUVランプとして高圧水銀灯を用い、120w/cmにて10m/分の移行速度で硬化処理を行った。
得られた実施例1〜3及び比較例1の印刷物サンプル(大きさ:10cm×20cm)をアルミニウム製ジップ袋(大きさ:15cm×24cm)に入れた後、3日後、臭気強度官能評価、快感/不快感官能評価及び臭気測定を行った。結果を第2表に示す。
【0035】
【表2】

[注]
*1:ウレタンアクリレート(ダイセル・サイテック(株)製、商品名「EBECRYL254」)
*2:トリプロピレングリコールジアクリレート(ダイセル・サイテック(株)製、商品名「TPGDA」)
*3:o−メチルベンゾイルベンゾエート(ダイセル・サイテック(株)製、商品名「OBM100」)
*4:オレンジ(マイクロカプセル入り香料、三木理研工業(株)製、商品名「リケンレチンRMC−FO」)
*5:ヒノキ(マイクロカプセル入り香料、三木理研工業(株)製、商品名「リケンレチンRMC−HOL」)
*6:サルチル酸イソアミル(三木理研工業(株)製)
【0036】
第2表から明らかなように、実施例1〜3の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を用いた印刷物は、比較例1の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を用いた印刷物と比較して、臭気強さが大幅に軽減され、臭気に起因する不快感が著しく取り除かれることとなった。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の印刷物は、清涼飲料水や液体調味料等の液体、蜂蜜等の粘性流動体、粉状調味料や粒状食品等の粉粒体を充填する、PET製ボトル(ペットボトル等)、円筒体もしくは箱体等のプラスチック製容器、アルミ缶やスチール缶等の金属性缶体、ガラス瓶及び紙を基本材料とする箱体等の各種容器のラベル又は包装材、あるいは本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物が印刷された容器として好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の印刷物の一実施態様の断面を示す模式図である。
【図2】本発明の印刷物の他の実施態様の断面を示す模式図である。
【符号の説明】
【0039】
1 印刷物
2 基材
3 隠蔽層
4 絵柄層
5 本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を硬化してなるニス層
6 本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を硬化してなる絵柄層
7 粘着剤層
8 セパレート紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素引抜き型光重合開始剤を用いてなる活性エネルギー線硬化型樹脂組成物において、香料及び/又はマスキング剤を含むことを特徴とする活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項2】
香料が柑橘系果実由来の香料である請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項3】
香料が針葉樹由来の香料である請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項4】
マスキング剤がサルチル酸エステル類である請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項5】
サルチル酸エステル類が、サルチル酸フェニル、サルチル酸ベンジル、サルチル酸p−トリルエステル、サルチル酸o−トリルエステル、サルチル酸(2−フェニルエチル)エステル、サルチル酸2−ヒドロキシエチルエステル、サルチル酸5−ヘキセニルエステル及びサルチル酸2−ヘプテニルエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項4に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項6】
インキ又はニスである請求項1〜5のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を用いてなる印刷物。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物をスクリーン印刷法により厚盛り印刷してなる印刷物。
【請求項9】
ラベル、包装材又は容器である請求項7又は8に記載の印刷物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−83918(P2010−83918A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−251254(P2008−251254)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(000183923)株式会社DNPファインケミカル (268)
【出願人】(307027577)麒麟麦酒株式会社 (350)
【Fターム(参考)】