説明

活性エネルギー線硬化型水性ウレタン樹脂分散体

【課題】 水性ウレタン樹脂分散体として、貯蔵安定性に極めて優れており、該樹脂分散体を含有する塗料が、乾燥工程、活性エネルギー線照射工程によって、表面硬度、耐久性、特に耐アルカリ性に優れる皮膜を形成することができる新規な活性エネルギー線硬化型水性ウレタン樹脂分散体を提供する。
【解決手段】 ポリアルキレンエーテル鎖をペンダント状に有し、一級水酸基を2つ有するポリアルキレンエーテル鎖含有ジオール化合物(A)、ポリオール(B)、ポリイソシアネート(C)と、α,β−不飽和二重結合とヒドロキシル基とを併有する化合物(D)を反応させることで得られる、活性エネルギー線硬化型水性ウレタン樹脂分散体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアルキレンエーテル鎖をペンダント状に有した、一級の水酸基を2つ有するポリアルキレンエーテル鎖含有ジオール化合物(A)と、ポリオール(B)、ポリイソシアネート(C)、及びα,β−不飽和二重結合とヒドロキシル基とを併有する化合物(D)とを反応させることで得られる活性エネルギー線硬化型水性ウレタン樹脂分散体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、溶剤を含有していないため安全性に優れるほか、硬化性に優れるため生産性、省エネルギーの観点からも特長を有するものとして一般に認識されている。活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、かかる特性に照らし、金属用塗料、各種プラスチックフィルム用オーバーコート剤、木工用塗料、印刷インキなどの各種コーティングや接着剤などの有効成分として採用されている。
【0003】
上記用途において、スプレー塗装、ロールコーターでの数μm単位の塗装等における製品の低粘度化が必要とされる場合には、通常は反応性希釈剤を多量に使用したり、有機溶剤を併用するなどの方法が採られている。しかしながら、反応性希釈剤を多量に使用した場合には、皮膚刺激や硬化性低下の問題が生じ易く、また有機溶剤を併用する場合には大気汚染や火災の危険性が高くなる。
【0004】
そのため近年、大気汚染防止、消防法上の規制、労働安全衛生等の観点より該組成物の水性化がますます切望されている。既に、水系の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物も種々開発されてはいる。アニオンタイプとしてはポリウレタンアクリレートの骨格中にカルボン酸塩やスルホン酸塩を導入しその親水性によって水に溶解、もしくは分散させているものが一般的である。
【0005】
これまでの活性エネルギー線硬化性水性ウレタン樹脂組成物として、水と水に分散した活性エネルギー線硬化性マイクロゲル粒子からなり、前記マイクロゲル粒子が、ポリウレタン樹脂骨格と該骨格相互間をウレタン結合又は尿素結合を介して架橋した架橋構造とからなるゲル状態の皮膜形成性ポリウレタン樹脂粒子であり、前記ポリウレタン樹脂粒子が活性エネルギー線硬化性不飽和二重結合と塩の基とを有することを特徴とする活性エネルギー線硬化性水分散体が知られている(例えば、特許文献1参照)。この中に於いて、活性エネルギー線硬化型マイクロゲル粒子は、活性エネルギー線にて硬化された皮膜の耐アルカリ性が向上し、皮膜の硬化性(耐摩耗性)が向上すると記載されている。該形成皮膜における強アルカリ存在下の耐アルカリ性を向上させるためには、活性エネルギー線硬化型マイクロゲル粒子中のアニオン性官能基の減量が必要である。しかしながら、アニオン性官能基の減量は樹脂分散液の安定性を低下させる。また、皮膜の硬化性を上げるためには分岐型のトリイソシアネートの量を増やす必要があるが、樹脂の凝集力のために同じく樹脂用液の安定性を低下させる。
【0006】
ノニオン性の活性エネルギー線硬化性水性ウレタン樹脂組成物として、1個の水酸基を含有するポリエチレングリコールモノアルキルエーテル類を用いた活性エネルギー線硬化性含水樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、この提案されている合成法で1個の水酸基を含有するポリエチレングリコールモノアルキルエーテル類を導入するとウレタン樹脂の末端にポリエチレングリコール鎖が存在することになり、高分子量の分岐型のウレタン樹脂の場合、組成物の安定性が劣る。
【0007】
【特許文献1】特開平8−259888号公報
【特許文献2】特許第2590682号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、耐アルカリ性とともに、貯蔵安定性に優れる新規な活性エネルギー線硬化型水性ウレタン樹脂分散体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、特定構造のジオール化合物、ポリオール、ポリイソシアネート、α,β−不飽和二重結合とヒドロキシル基とを併有する化合物とを反応させることによって得られるポリアルキレンエーテル鎖がポリウレタンの側鎖にペンダント状に導入された、新規な活性エネルギー線硬化性水性ウレタン樹脂分散体が、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、下記一般式(1)で示されるポリアルキレンエーテル鎖含有ジオ−ル化合物(A)、ポリオール(B)、ポリイソシアネート(C)と、α,β−不飽和二重結合とヒドロキシル基とを併有する化合物(D)を反応させることによって得られる、活性エネルギー線硬化型水性ウレタン樹脂分散体を提供する。
【0011】
【化1】

(式中、R1は、炭素数1〜9のアルキレン基又はジアルキレンエーテル基であり、R2は、炭素数1〜9のアルキル基であり、R3は、−CO−NH−R4−NH−CO−であり、R4は、炭素数2〜18の有機基であり、Aは、分子量200〜10000の2価のポリアルキレンエーテル基である。)
【発明の効果】
【0012】
本発明の、ポリアルキレンエーテル鎖含有ジオール化合物を原料とした活性エネルギー線硬化型水性ウレタン樹脂組成物は、貯蔵安定性に極めて優れており、且つ、乾燥、活性エネルギー線照射によって、硬度、耐久性、特に耐アルカリ性の良好な皮膜を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明を詳細に説明する。始めに、上記した一般式(1)のポリアルキレンエーテル鎖含有ジオール化合物の製法について説明する。
【0014】
【化2】

【0015】
化合物(I)は、R1が炭素数2〜9のアルキレン基又はジアルキレンエーテル基であり、R2が、炭素数1〜9のアルキル基であり、Aは、分子量200〜10000の2価のポリアルキレンエーテル基である、一級アミン、化合物(II)はR1が、炭素数2〜9のアルキル基である、水酸基を有するモノアクリレートをあらわす。
【0016】
ポリアルキレンエーテル鎖含有ジオール化合物の製法は以下の通りである。先ず、化合物(I)と化合物(II)をいわゆるマイケル付加反応し、分子の末端に一級水酸基を有する二級アミン化合物(III)とする。
【0017】
【化3】

【0018】
次いで、二級アミン化合物(III)を2モルと、(IV)で示されるジイソシアネート1モルとの間で、ヒドロキシル基を残してNH基とジイソシアネートのNCO基とを反応させポリアルキレンエーテル鎖含有ジオ−ル化合物を製造する。
【0019】
化合物(I)のポリアルキレンエーテル基を有する一級アミンとしては、例えば片末端がメトキシ基エトキシ基などのアルキルオキシ基で封鎖された、エチレンオキサイド(EOと略す)、1,2−及び1,3−プロピレンオキサイド(POと略す)、1,2−、2,3−及び1,4−ブチレンオキサイド、アルキルテトラヒドロフラン等の分子内環状エーテル化合物の単独重合又は2種類以上のランダム共重合、ブロック共重合等で得られる、数平均分子量200〜10,000、好ましくは400〜4,000のポリアルキレンオキサイド基が炭素数2〜9のアルキレン基又はジアルキレンエーテル基を介してアミノ基と結合しているモノアミン化合物が挙げられる。
【0020】
また、上記(II)の水酸基を有するモノアクリレートとしては、例えば2−ヒドロキシエチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ジエチレングリコールモノアクリレート、ジプロピレングリコールモノアクリレート、トリエチレングリコールモノアクリレート、トリプロピレングリコールモノアクリレート等が挙げられる。
【0021】
二級アミン化合物(III)の二級アミノ基をイソシアネート基と反応させ、二級アミノ化合物(III)を尿素結合で2量化する目的で、ジイソシアネートが使用されるが、それらの例としては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートやヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネートなどの脂肪族或は脂環族ジイソシアネートが挙げられるが、反応性の大きい芳香族ジイソシアネートより脂肪族、脂環族ジイソシアネートの方が好ましく、具体的にはヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)がより好ましく用いられる。
【0022】
次に、一般式(1)のポリアルキレンエーテル鎖含有ジオール化合物(A)をポリオール(B)、ポリイソシアネート(C)と、α,β−不飽和二重結合と水酸基とを併有する化合物(D)と反応させる、本発明の活性エネルギー線硬化型水性ウレタン樹脂分散体の製法について説明する。
【0023】
ポリイソシアネートと反応するポリオール(B)としては、本発明の一般式(1)のポリアルキレンエーテル鎖含有ジオール化合物(A)以外の、通常ポリウレタン樹脂の原料として使用されるポリオール、低分子ポリオール等を使用することができる。
【0024】
かかるポリオールの例としては、末端にヒドロキシル基を有する、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエステルカーボネート、ポリエーテル、ポリエーテルカーボネート、ポリアクリル酸エステル、ポリオレフィン系化合物およびポリエステルアミド等があるが、これらのうちポリエステル、ポリカーボネート、ポリエーテル、ポリアクリル酸エステル及びポリオレフィン系化合物が好適である。
【0025】
上記した末端にヒドロキシル基を有するポリエステルとしては、二価アルコールと二塩基性カルボン酸との反応生成物が挙げられる。遊離ジカルボン酸の代わりに、対応の無水物又は低級アルコールのジエステル或いはその混合物もポリエステルの製造に使用することができる。
【0026】
二価アルコールとしては、特に限定はしないが、エチレングリコ−ル、1,3−及び1,2−プロピレングリコール、1,4−及び1,3−及び2,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサングリコール、1,8−オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、1,4−ビス−(ヒドロキシメチル)−シクロヘキサン、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、ジブチレングリコール等が挙げられる。
【0027】
二塩基性カルボン酸としては、脂肪族、脂環族、芳香族及び/又は複素環式とすることができ、不飽和であっても或いは例えばハロゲン原子で置換されても良い。これらカルボン酸としては、限定はしないが、例えばコハク酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメチン酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、ダイマー脂肪酸、ジメチルテレフタレート及び混合テレフタレートが挙げられる。
【0028】
これら末端にヒドロキシル基を有するポリエステルは、カルボキシ末端基の一部を有することもできる。例えば、ε−カプロラクトンの様なラクトン、又はε−ヒドロキシカプロン酸の様なヒドロキシカルボン酸のポリエステルも使用することができる。
【0029】
末端にヒドロキシル基を有するポリカーボネートとしては、例えば、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及び/又はポリテトラメチレングリコールの様なジオールとホスゲン、ジアリルカーボネート(例えばジフェニルカーボネート)もしくは環式カーボネート(例えばプロピレンカーボネート)との反応生成物が挙げられる。
【0030】
末端にヒドロキシル基を有するポリエーテルとしては、反応性水素原子を有する出発化合物と、例えば酸化エチレン、酸化プロピレン、酸化ブチレン、酸化スチレン、テトラヒドロフラン、エピクロルヒドリンの様な酸化アルキレン又はこれら酸化アルキレンの混合物との反応生成物が挙げられる。
【0031】
かかる反応性水素原子を有する出発化合物としては、水、ビスフェノールA並びにポリエステルポリオールを製造するべく上記した二価アルコールが挙げられる。
【0032】
上記した低分子ポリオールとしては、例えば前述した二価アルコールが挙げられる。
【0033】
末端にヒドロキシ基を有するポリアクリル酸エステルの代表例は、α,ω−ポリアクリル酸エステルジオール(例えば、Tego Chemei製のTego Diol BD1000等)が挙げられる。
【0034】
末端にヒドロキシ基を有するポリオレフィン化合物としては、水酸基末端液状ポリブタジエン、水酸基末端ポリオレフィン系ポリオール(各々、出光石油化学製、Poly Bd R−15H、エポール)等が挙げられる。
【0035】
本発明の活性エネルギー線硬化型水性ウレタン樹脂分散体に於いて、ポリオール(B)中に占めるトリオール以上の成分の割合を10〜40モル%にすることにより、樹脂の分岐を高めることにより凝集力を高め、且つ、α,β−不飽和二重結合として1.0〜6.0モル/kgにすることにより、皮膜の硬化性が向上し、該樹脂の耐アルカリ性及び優れた耐摩耗性を示す皮膜を得ることが可能である。トリオール以上のポリオールとして、ひまし油、トリメチロールプロパン、トリメチロールプロパンEO付加物、トリメチロールエタン、グリセリン、ペンタエリストリオール等を例示することができる。
【0036】
また、樹脂溶液の貯蔵安定性を向上させるために、2個以上のヒドロキシル基と塩を形成し得る基を併有する化合物(E)をポリオールとして用いることにより、塩を形成し得る基を樹脂分子中に導入することもできる。
【0037】
前記した、塩の基、すなわち、塩を形成し得る基を有する化合物類としては、例えば、塩の基として、リン酸エステル基、スルホン酸基、置換アミノ基、カルボキシル基;或いは、中和されたリン酸エステル基、中和されたスルホン酸基、中和された置換アミノ基、中和されたカルボキシル基等の何れかを有するジオール類、及びジアミン類が適する。具体的例としては、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシエチレンジアミノプロピルエーテル、トリメチロールプロパンモノリン酸エステル、トリメチロールプロパンモノ硫酸エステル、二塩基酸成分の少なくとも一部がナトリウムスルホ琥珀酸、或いはナトリウムスルホイソフタル酸であるポリエステルジオール、Nーメチルジエタノールアミン、ジアミノカルボン酸類、例えばリシン、シスチン及び3,5−ジアミノカルボン酸、2,6−ジヒドロキシ安息香酸ならびに3,5ジヒドロキシ安息香酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシエチル)プロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシプロピル)プロピオン酸、ビス(ヒドロキシメチル)酢酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ブタン酸等のジヒドロキシアルキルアルカン酸、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン酸、酒石酸、N,N−ジヒドロキシエチルグリシン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−カルボキシ−プロピオンアミド、或いは、ジヒドロキシアルキルアルカン酸にε−カプロラクトン等のラクトン化合物を付加させたカルボキシル基含有ポリカプロラクトンジオール等が挙げられる。又、相溶性向上のため、オキシエチレンの繰り返し単位が3以上の親水性分子鎖を有するポリエチレングリコールを塩の基を有する化合物と併用することが出来る。
【0038】
前記した塩の基の必要量は種類、組合せで決まる。中でも塩の基を有するものとして特に好ましいものは、分子中にカルボキシル基、スルホン酸塩基を何れか一種或いは二種を併せ有し、且つトリエチルアミン等のアミン類にて中和された塩の基、またはこれらを有するものの混合物である。とりわけ中和カルボキシル基を導入するのが種々の点でバランスが取り易く、操作しやすい。この場合の固形分酸価は5〜30(KOHmg/g)の範囲が好ましく、10〜25(KOHmg/g)の範囲がより好ましい。
【0039】
本発明において用いられるポリイソシアネート(C)としては、特に限定はしないが、テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,3−及び1,4−ジイソシアネート、1−イソシアナト−3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン(=イソホロンジイソシアネート)、ビス−(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン(=ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート)、2−及び4−イソシアナトシクロヘキシル−2’−イソシアナトシクロヘキシルメタン、1,3−及び1,4−ビス−(イソシアナトメチル)−シクロヘキサン、ビス−(4−イソシアナト−3−メチルシクロヘキシル)メタン、1,3−及び1,4−テトラメチルキシリデンジイソシアネート、2,4−及び/または2,6−ジイソシアナトトルエン、2,2’−、2,4’−及び/または4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、p−及びm−フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニル−4,4’−ジイソシネート等のジイソシアネート類、及び1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体等のトリイソシアネートが挙げられる。
【0040】
上記ポリイソシアネート化合物の一部乃至は全部をジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(以下、水添MDI)を使用することで、水添MDIを用いた水性ポリウレタン樹脂が得られ、特に、耐溶剤性に優れる点で好ましく用いられる。水添MDIの全ポリイソシアネートに対する配合比率は25質量%以上であることが好ましい。
【0041】
α,β−不飽和二重結合とヒドロキシル基とを併有する化合物(D)は、水酸基1〜2個とエチレン性不飽和二重結合を1個以上有することが望ましい。この例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド等のモノヒドロキシモノ(メタ)アクリレート或いは、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ライトエステルG−201P(共栄社化学製)の如きモノヒドロキシアクリルメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等のモノヒドロキシトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等のモノヒドロキシペンタアクリレート類や、グリセリンモノ(メタ)アクリレート等のジヒドロキシモノ(メタ)アクリレート、及びこれらにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン或いはεカプロラクトンを付加重合した化合物等が挙げられる。
【0042】
更には、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエルスリトールテトラアクリレート、ジペンタエルスリトールヘキサアクリレート等の多官能アクリレートと、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、ジブタノールアミン等のジアルカノールアミン或いは、メチルエタノールアミン、エチルエタノールアミン、メチルプロパノールアミン等のモノアルキルモノアルカノールアミンとをマイケル付加反応した生成物、或いはイソホロンンジイソシアネート、トリレンジジイソシアネート等の反応性の異なる二つのイソシアネート基を持つジイソシアネート類と、モノヒドロキシモノアクリレート、モノヒドロキシジ(メタ)アクリレート等との反応によって得られるハーフウレタン、或いはメタクリルイソシアネートと、上記ジアルカノールアミン類或いは、上記モノアルキルモノアルカノールアミン類とを反応させて得られる生成物も挙げることが出来る。
【0043】
上記した活性エネルギー線硬化性水性ウレタン樹脂分散体の製造条件としては、特に限定はないが、その代表的な製造方法として、まず、ポリアルキレンエーテル鎖含有ジオール化合物(A)と、ポリオール(B)と、ポリイソシアネート(C)とをイソシアネート基が過剰になるように配合してイソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマーを得る。次いで、このイソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマーに、α、β−不飽和二重結合とヒドロキシル基を併有する化合物(D)を反応させて、末端が不飽和二重結合乃至はイソシアネート基である、エチレン性不飽和二重結合を有するポリウレタンプレポリマーを得ることが出来る。次いで、このエチレン性不飽和二重結合を有するポリウレタンプレポリマーを水中に分散し、水・有機溶媒混合溶液を調製する。その後、必要に応じて、水或いは有機溶媒に溶解した架橋剤を40℃以下で添加する。架橋剤を用いて架橋或いは鎖延長させる別の方法としては、架橋剤を予め水相に溶解し、次いでプレポリマー中和溶液を水中に分散し、水・有機溶媒混合溶液を調製する。最後に、水・有機溶媒混合溶液から溶媒を減圧留去することによって、本発明の活性エネルギー線硬化型水性ウレタン樹脂分散体を得ることが出来る。
【0044】
上記した2個以上のヒドロキシル基と塩を形成し得る基を併有する化合物(E)を含む活性エネルギー線硬化性水性ウレタン樹脂分散体の製造条件としては、特に限定はないが、その代表的な製造方法として、まず、ポリアルキレンエーテル鎖含有ジオール化合物(A)と、ポリオール(B)と、2官能以上のポリイソシアネート(C)と、2個以上のヒドロキシル基と塩を形成し得る基を併有する化合物(E)とをイソシアネート基が過剰になるように配合してイソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマーを得る。次いで、このイソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマーに、α、β−不飽和二重結合とヒドロキシル基を併有する化合物(D)を反応させて、末端が不飽和二重結合乃至はイソシアネート基である、エチレン性不飽和二重結合と塩の基を有するポリウレタンプレポリマーを得ることが出来る。次いで、このエチレン性不飽和二重結合と塩の基を有するポリウレタンプレポリマー中の塩の基を50℃以下で中和し、イオン化した中和溶液を水中に分散し、水・有機溶媒混合溶液を調製する。その後、必要に応じて、水或いは有機溶媒に溶解した架橋剤を40℃以下で添加する。架橋剤を用いて架橋或いは鎖延長させる別の方法としては、架橋剤を予め水相に溶解し、次いでイオン化したプレポリマー中和溶液を水中に分散し、水・有機溶媒混合溶液を調製する。最後に、水・有機溶媒混合溶液から溶媒を減圧留去することによって、本発明の活性エネルギー線硬化型水性ウレタン樹脂水分散体を得ることが出来る。
【0045】
前記において、エチレン性不飽和二重結合をポリウレタンプレポリマー導入する反応、及びエチレン性不飽和二重結合導入後の反応工程においては、ハイドロキノン、ターシャリーブチルハイドロキン、ハイドロキノンモノメチルエーテル等の重合禁止剤を用いることが望ましい。
【0046】
水酸基とイソシアネート基の反応は、無溶媒で、或いはイソシアネート基と反応しない有機溶媒中で、20〜120℃の範囲内に於いて行うことが出来る。又この時、公知の重合禁止剤、反応触媒を適当量任意に添加することが出来る。水酸基とイソシアネート基の反応終了後、必要に応じて、公知の樹脂化合物、アミノプラスト、希釈剤、界面活性剤、可塑剤、ワックス、加水分解防止剤、乳化剤、レベリング剤、消泡剤、抗酸化剤、抗菌剤等の各種樹脂、添加剤、助剤等を混合することが出来る。
【0047】
また、分子当り3以上のα,β−不飽和二重結合を有する上記活性エネルギー線硬化モノマー及び又はオリゴマー、5〜40質量%を、水に転相する前の段階で導入することにより、硬化皮膜の優れた耐摩耗性を得られる。該水分散体の安定を確保するためには、ヒドロキシル基と塩を形成し得る基を併有する化合物をポリオールとして用いることにより、塩を形成し得る基を樹脂分子中に導入することが望ましい。
【0048】
かかるウレタン化反応の有機溶媒の例としては、イソシアネート基に対して不活性な有機溶剤中で反応させることが好ましく、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、ジオキサン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン、キシレン、モノグライム、ジグライム、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。これらの有機溶媒は、ウレタン化反応の最初に全量用いても、その一部を分割して反応の途中に用いても良い。
【0049】
また、ウレタン化触媒としてはジブチルスズジイソシアネート、オクチル酸第一スズのようなスズ化合物、ジアザビシクロウンデセンのような三級アミン、あるいは、そのカルボン酸塩等が使用でき、使用量はウレタン樹脂の固形分に対して10ppm〜1,000ppmが適当である。
【0050】
反応遅延剤としては通常リン酸等の酸が使用される。使用量はウレタン樹脂の固形分に対して10ppm〜1,000ppmが適当である。
【0051】
上記の製法によれば、得られるウレタン樹脂の数平均分子量は限定されないが、好ましいポリウレタン樹脂としては数平均分子量が好ましくは5,000〜500,000であり、より好ましくは5,000〜10,000のものである。またウレタンプレポリマーとしては、数平均分子量1,000〜2,000のものが好ましい。
【0052】
一方、本発明においては、上記ウレタンプレポリマーに対して、場合により鎖伸長剤として有機ジアミンが使用される。
【0053】
それらの有機ジアミンに特に限定はないが、例えばジアミノエタン、1,2−又は1,3−ジアミノプロパン、1,2−又は1,3−又は1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、ピペラジン、N,N’−ビス−(2−アミノエチル)ピペラジン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチル−シクロヘキサン(=イソホロンジアミン)、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス−(4−アミノ−3−ブチルシクロヘキシル)メタン、1,2−、1,3−及び1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノプロパン、ノルボルネンジイソシアネート等があり、ヒドラジン、アミノ酸ヒドラジド、セミ−カルバジドカルボン酸のヒドラジド、ビス(ヒドラジド)及びビス(セミカルバジド)等も使用することができる。好ましくはα、β不飽和二重結合とアミンの活性水素によるマイケル付加反応を防止するために、ピペラジン等の二級アミンを使用することが好ましい。有機ジアミンを用いた鎖伸長反応条件としては、特に限定はしないが、通常80℃以下、好ましくは0〜70℃の温度で良好な撹拌条件下で実施される。
【0054】
本発明の活性エネルギー線硬化型水性ウレタン樹脂分散体における一般式(1)のポリアルキレンエーテル鎖含有ジオール化合物(A)は、水中への安定性を考慮して、ウレタン樹脂分散体100部に対して1〜50部配合することが好ましく、より好ましくは1〜30部配合することが好ましい。
【0055】
本発明により、ポリアルキレンエーテル鎖をウレタン樹脂の側鎖にペンダント状にグラフト導入したいわゆるクシ型ウレタン、すなわちポリアルキレンエーテル鎖がクシの歯状にウレタン樹脂の側鎖に導入されたウレタン樹脂が製造できる。さらに側鎖にペンダント状に導入されたポリアルキレンエーテル鎖はウレタン樹脂の表面、又は界面の機能を改良する効果がある。例えばポリエチレングリコール鎖を側鎖に有するウレタン樹脂は、水中でポリエチレングリコール鎖をウレタン樹脂粒子の表面に配向させやすく、水に対する分散安定性が改良される。
【0056】
水に対する分散性が向上することにより、分子の凝集力が大きいトリオール以上のポリオール(B)にて分岐したウレタン樹脂の導入が可能になり、樹脂の硬化皮膜の耐アルカリ性及び耐摩耗性が向上することになる。また、該水分散体に、一分子当り3以上のα、β−不飽和結合を含有するモノマー及びオリゴマーを水分散体に内包することにより、硬化皮膜の耐アルカリ性及び耐摩耗性が向上する。更なる水分散性安定性を向上するためには塩の基を有する化合物を樹脂に併有することにより改善することができる。
【0057】
本発明による活性エネルギー線硬化性水性塗料組成物は、活性エネルギー線によって組成物の硬化反応が進む。活性エネルギー線による硬化は、紫外線、可視光、電子線、X線等のエネルギー線を公知の方法、例えば、それぞれのエネルギー線を発生するランプ或いは機器によって照射する方法によることができる。その中でも特に、設備費やランニングコストの比較的安価な、紫外線を照射することによって硬化が進行するように該塗料組成物を設計することができる。
【0058】
例えば、電子線により硬化させる場合は、特に重合開始剤は必要せず、加速電圧20〜2000KeV、好ましくは150〜300KeVの電子線照射装置を用いて、少量の酸素を含む、又は不活性ガス雰囲気中で、全照射量が5〜200kGy、好ましくは10〜100kGyとなるように照射することによって、硬化塗膜を得ることが出来る。
【0059】
他の硬化手段としては、例えば水銀灯、キセノンランプ等から得られる紫外線により空気中または不活性ガス雰囲気中で硬化する方法、或いは加熱硬化する方法等があり、これらの場合は、光重合開始剤或いは熱重合開始剤を添加する。光重合開始剤或いは熱重合開始剤の種類は公知の材料を任意に選ぶことが出来る。その添加量も任意に選ぶことが出来るが、例えば、該塗料組成物の固形分に対して、0.2〜20%程度、好ましくは、0.5〜10%の範囲である。
【0060】
次に、本発明の活性エネルギー線硬化型水性ウレタン樹脂分散体の用途について説明する。例えばポリエチレングリコール鎖を側鎖に有する活性エネルギー線硬化型水性ウレタン樹脂分散体は、水分散型や水溶解型に使用でき、従来の溶剤型、無溶剤型活性エネルギー線硬化型ウレタン樹脂の、環境対応製品としての用途が期待できる。該樹脂組成物は低粘度化が可能であるために、スプレー塗装、ロールコーターでの数μm単位の塗装等における製品、例えば金属用塗料、各種プラスチックフィルム用オーバーコート剤、木工用塗料、印刷インキなどの各種コーティングや接着剤などの有効成分として有用である。
【実施例】
【0061】
次に、ポリアルキレンエーテル鎖含有ジオール化合物及びそれを使用した本発明の活性エネルギー線硬化型水性ウレタン樹脂分散体について、その合成例、及び応用例を示し、本発明を更に具体的に説明する。本発明はこれら合成例、応用例に限定されるものではない。尚、合成例、応用例中の部及び%は断りのない限り質量に関するものである。又、分子量とは水酸基価から計算した数平均分子量を指すものとする。
【0062】
[調製例1]ポリエチレングリコール鎖をペンダント状に有するジオール化合物
窒素導入管、冷却用コンデンサー、温度計、攪拌機を備えた1リットル4つ口丸底フラスコに、あらかじめ50℃に加温して融解しておいたメトキシポリオキシエチレン−2−プロピルアミン(分子量=1000),500g(0.5モル)を入れ攪拌した。ついで、2−ヒドロキシエチルアクリレート 58g(0.5モル)を、内温を45〜50℃に保ちながら約30分で投入した。その後内温を30〜40℃に保ちながら5時間攪拌した。次に、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)42g(0.25モル)を、内温を30〜40℃に保ちながら約30分かけて投入した。投入後内温を30〜40℃に保ちながら1時間攪拌した。赤外分光光度計でイソシアネート基のピークが無いことを確認して、取り出した。得られたジオール化合物は50℃で、ほとんど無色で、室温でワックス状に固化した。高速液体クロマトグラフィー(東ソー 8020)でピ−クが1本で高純度品であることが確認できた。水酸基価の計算値46.8に対して水酸基価の実測値は46.9でほぼ一致し、HDIでの2量化の際、水酸基とHDIは反応していないことが確認された。
重クロロホルムを溶媒としたH−NMRの測定結果
3.4ppm:−OCH
3.7ppm:(OCHCH)n
5.8ppm:尿素結合(−NH−CO−N)
尚、H−NMRではアクリル2重結合及びウレタン結合は検出されなかった。
【0063】
[調製例2]EO/PO共重合鎖をペンダント状に有するジオール化合物
窒素導入管、冷却用コンデンサー、温度計、攪拌機を備えた1リットル4つ口丸底フラスコに、あらかじめ50℃に加温して融解しておいたメトキシポリ(オキシエチレン/オキシプロピレン)−2−プロピルアミン(EO/PO=9/1モル比 分子量=1000),500g(0.5モル)を入れ攪拌した。ついで、内温を45〜50℃に保ちながら4−ヒドロキシブチルアクリレート 72g(0.5モル)を約30分で投入した。その後内温を30〜40℃に保ちながら5時間攪拌した。次に、水添MDI65.5g(0.25モル)を内温を30〜40℃に保ちながら約30分かけて投入した。投入後内温を30〜40℃に保ちながら1時間攪拌する。赤外分光光度計でイソシアネート基のピークが無いことを確認して、取りだした。得られたジオール化合物は50℃で、ほとんど無色で、室温でワックス状に固化した。高速液体クロマトグラフィー(東ソー 8020)でピ−クが1本で高純度品であることが確認できた。水酸基価の計算値44.0に対して水酸基価の実測値は44.2でほぼ一致し、水添MDIでの2量化の際、水酸基と水添MDIは反応していないことが確認された。
重クロロホルムを溶媒としたH−NMRの測定結果
3.4ppm:−OCH
3.7ppm:EO/PO
5.8ppm:尿素結合(−NH−CO−N)
尚、H−NMRではアクリル2重結合及びウレタン結合は検出されなかった。
【0064】
[実施例1]ポリエチレングリコール鎖をペンダント状に有する活性エネルギー線硬化型ウレタン樹脂の合成(a)
窒素導入管、冷却用コンデンサー、温度計、攪拌機を備えた1リットル4つ口丸底フラスコに、分子量1000のポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)133部、調製例1で得られたジオール化合物53部、トリメチロールプロパン38部、溶剤としてメチルエチルケトン(MEK)717部、4,4’−水添MDI392部を仕込み、70〜75℃において2時間反応させた後、ウレタン化触媒としてオクチル酸第一スズを1.5部加えて更に2時間反応させた。反応物中のヒドロキシル基が全てNCOに置き換わった後に、窒素導入管を空気導入管に替えて、ライトエステルG−201P(共栄社化学製)245部、MEK460部、メトキシキノン0.42部及びtert−ブチルハイドロキノン0.42部を添加した。再び70〜75℃に昇温して1時間反応させた後にオクチル酸第一スズ1.5部加え、更に8時間反応させてポリウレタン樹脂溶液を得た。この溶液に、純水3005部及び無水ピペラジン39部から成る溶液を30分かけて徐々に加え、40℃で1時間攪拌混合した。サーフィノールAK02(日信化学工業(株)製)2部を加えた後50℃にてメチルエチルケトンを減圧留去して、不揮発分:29.0%、粘度:17cps、不飽和基濃度が2.0当量/kg、数平均分子量5000の活性エネルギー線硬化型ポリウレタン樹脂の水性分散液(a)を得た。
【0065】
[実施例2]ポリエチレングリコール鎖をペンダント状に有する活性エネルギー線硬化型ウレタン樹脂の合成(b)
窒素導入管、冷却用コンデンサー、温度計、攪拌機を備えた1リットル4つ口丸底フラスコに、分子量1000のポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)135部、調製例1で得られたジオール化合物52部、トリメチロールプロパン34部、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸49部、溶剤としてメチルエチルケトン(MEK)726部、4,4’−水添MDI454部を仕込み、70〜75℃において2時間反応させた後、ウレタン化触媒としてオクチル酸第一スズを1.5部加えて更に3時間反応させた。反応溶液中のヒドロキシル基が全てNCOに置き換わった後に、窒素導入管を空気導入管に替えて、ライトエステルG−201P(共栄社化学製)237部、MEK451部、メトキシキノン0.42部及びtert−ブチルハイドロキノン0.42部を添加した。再び70〜75℃に昇温し1時間反応させた後にオクチル酸第一スズ1.5部を加え、更に8時間反応させてポリウレタン樹脂溶液を得た。この溶液に、トリエチルアミン34部加え中和した後に、純水2975部及び無水ピペラジン39部から成る溶液を30分かけて徐々に加え、40℃で1時間攪拌混合した。サーフィノールAK02(日信化学工業(株)製)2部を加えた後50℃にてメチルエチルケトンを減圧留去して、不揮発分:29.3%、固形分酸価24(KOHmg/g)、粘度:19cps、不飽和基濃度が2.0当量/kg、数平均分子量5000の活性エネルギー線硬化型ポリウレタン樹脂の水性分散液((b)を得た。
【0066】
[実施例3]ポリエチレングリコール鎖をペンダント状に有する活性エネルギー線硬化型ウレタン樹脂の合成(c)
窒素導入管、冷却用コンデンサー、温度計、攪拌機を備えた1リットル4つ口丸底フラスコに、分子量1000のポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)135部、調製例2で得られたジオール化合物52部、トリメチロールプロパン34部、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸49部、溶剤としてメチルエチルケトン(MEK)726部、4,4’−水添MDI454部を仕込み、70〜75℃において2時間反応させた後、ウレタン化触媒としてオクチル酸第一スズを1.5部加えて更に3時間反応させた。反応溶液中のヒドロキシル基が全てNCOに置き換わった後に、窒素導入管を空気導入管に替えて、ライトエステルG−201P(共栄社化学製)237部、MEK451部、メトキシキノン0.42部及びtert−ブチルハイドロキノン0.42部を添加した。再び70〜75℃に昇温し1時間反応させた後にオクチル酸第一スズ1.5部を加え8時間反応させてポリウレタン樹脂溶液を得た。この溶液に、トリエチルアミン34部加え中和した後に、純水2975部及び無水ピペラジン39部から成る溶液を30分かけて徐々に加え、40℃で1時間攪拌混合した。サーフィノールAK02(日信化学工業(株)製)2部を加えた後50℃にてメチルエチルケトンを減圧留去して、不揮発分:28.5%、固形分酸価23(KOHmg/g)、粘度:19cps、不飽和基濃度が2.0当量/kg、数平均分子量5000の活性エネルギー線硬化型ポリウレタン樹脂の水性分散液(c)を得た。
【0067】
[実施例4]ポリエチレングリコール鎖をペンダント状に有する活性エネルギー線硬化型ウレタン樹脂の合成(d)
窒素導入管、冷却用コンデンサー、温度計、攪拌機を備えた1リットル4つ口丸底フラスコに、分子量1000のポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)53部、調製例2で得られたジオール化合物22部、トリメチロールプロパン23部、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸43部、溶剤としてメチルエチルケトン(MEK)726部、4,4’−水添MDI301部を仕込み、70〜75℃において2時間反応させた後、ウレタン化触媒としてオクチル酸第一スズ1.5部を加えて更に3時間反応、させた。反応溶液中のヒドロキシル基が全てNCOに置き換わった後に、窒素導入管を空気導入管に替えて、ペンタエリスリトールヘプタアクリレート436部、MEK451部、メトキシキノン0.42部及びtert−ブチルハイドロキノン0.42部を添加した。再び70〜75℃に昇温し1時間反応させた後にオクチル酸第一スズ1.5部を加え8時間反応させてポリウレタン樹脂溶液を得た。この溶液に、トリエチルアミン32部加え中和した後に、純水2978部及び無水ピペラジン26部から成る溶液を30分かけて徐々に加え、40℃で1時間攪拌混合した。サーフィノールAK02(日信化学工業(株)製)2部を加えた後50℃にてメチルエチルケトンを減圧留去して、不揮発分:29.5%、固形分酸価18(KOHmg/g)、粘度:18cps、不飽和基濃度が4.4当量/kg、数平均分子量5000の活性エネルギー線硬化型ポリウレタン樹脂の水性分散液(d)を得た。
【0068】
[実施例5]ポリエチレングリコール鎖をペンダント状に有しかつ1分子当たり6のα,β−不飽和二重結合基を有するオリゴマーを内包した活性エネルギー線硬化型ウレタン樹脂の合成(e)
窒素導入管、冷却用コンデンサー、温度計、攪拌機を備えた1リットル4つ口丸底フラスコに、分子量1000のポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)53部、調製例2で得られたジオール化合物22部、トリメチロールプロパン23部、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸43部、溶剤としてメチルエチルケトン(MEK)726部、4,4’−水添MDI301部を仕込み、70〜75℃において2時間反応させた後、ウレタン化触媒としてオクチル酸第一スズを1.5部加えて更に3時間反応、させた。反応溶液中のヒドロキシル基が全てNCOに置き換わった後に、窒素導入管を空気導入管に替えて、ジペンタエリスリトールヘプタアクリレート436部、MEK451部、メトキシキノン0.42部及びtert−ブチルハイドロキノン0.42部を添加した。再び70〜75℃に昇温し1時間反応させた後にオクチル酸第一スズ1.5部を加え8時間反応させてポリウレタン樹脂溶液を得た。この溶液に、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート100部投入し、更にトリエチルアミン32部加え中和した後に、純水3268部及び無水ピペラジン26部から成る溶液を30分かけて徐々に加え、40℃で1時間攪拌混合した。サーフィノールAK02(日信化学工業(株)製)2部を加えた後50℃にてメチルエチルケトンを減圧留去して、不揮発分:28.9%、固形分酸価16(KOHmg/g)、粘度:19cps、不飽和基濃度が5.1当量/kg、数平均分子量5000の活性エネルギー線硬化型ポリウレタン樹脂の水性分散液(e)を得た。
【0069】
[比較例1]主鎖にポリエチレングリコール鎖を有する活性エネルギー線硬化型ウレタン樹脂の合成(f)
窒素導入管、冷却用コンデンサー、温度計、攪拌機を備えた1リットル4つ口丸底フラスコに、分子量1000のポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)124部、分子量 1000のポリエチレングリコール(PEG)52部、トリメチロールプロパン35部、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸50部、溶剤としてメチルエチルケトン(MEK)726部、4,4’−水添MDI465部を仕込み、70〜75℃において2時間反応させた後、ウレタン化触媒としてオクチル酸第一スズ1.5部を加えて更に3時間反応させた。反応溶液中のヒドロキシル基が全てNCOに置き換わった後に、窒素導入管を空気導入管に替えて、ライトエステルG−201P(共栄社化学製)237部、MEK451部、メトキシキノン0.42部及びtert−ブチルハイドロキノン0.42部を添加した。再び70〜75℃に昇温し1時間反応した後にオクチル酸第一スズ1.5部を加え7時間反応させてポリウレタン樹脂溶液を得た。この溶液に、トリエチルアミン34部加え中和した後に、純水2975部及び無水ピペラジン31部から成る溶液を30分かけて徐々に加え、40℃で1時間攪拌混合した。サーフィノールAK02(日信化学工業(株)製)2部を加えた後50℃にてメチルエチルケトンを減圧留去して、不揮発分:28.8%、固形分酸価23(KOHmg/g)、粘度:20cps、不飽和基濃度が2.0当量/kg、数平均分子量5000の活性エネルギー線硬化型ポリウレタン樹脂の水性分散液(f)を得た。
【0070】
[比較例2]モノメトキシポリエチレングリコールを導入したウレタン樹脂の合成(g)
窒素導入管、冷却用コンデンサー、温度計、攪拌機を備えた1リットル4つ口丸底フラスコに、分子量1000のポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)136部、トリメチロールプロパン35部、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸50部、溶剤としてメチルエチルケトン(MEK)679部、4,4’−水添MDI459部を仕込み、70〜75℃において2時間反応させた後、ウレタン化触媒としてオクチル酸第一スズ1.5部を加えて更に2時間反応させた。反応溶液中のヒドロキシル基が全てNCOに置き換わった後に、窒素導入管を空気導入管に替えて、ライトエステルG−201P(共栄社化学製)239部、分子量1000のモノメトキシポリエチレングリコール42部、MEK495部、メトキシキノン0.42部及びtert−ブチルハイドロキノン0.42部を添加した。再び70〜75℃に昇温し1時間反応した後にオクチル酸第一スズを1.5部加え7時間反応させてポリウレタン樹脂溶液を得た。この溶液に、トリエチルアミン34部加え中和した後に、純水2975部及び無水ピペラジン31部から成る溶液を30分かけて徐々に加え、40℃で1時間攪拌混合した。サーフィノールAK02(日信化学工業(株)製)2部を加えて50℃にてメチルエチルケトンを減圧留去して、不揮発分:29.6%、固形分酸価23(KOHmg/g)、粘度:18cps、不飽和基濃度が2.0当量/kg、数平均分子量5000の活性エネルギー線硬化型ポリウレタン樹脂の水性分散液(g)を得た。
【0071】
[比較例3]カルボキシル基のみで分散したウレタン樹脂の合成(h)
窒素導入管、冷却用コンデンサー、温度計、攪拌機を備えた1リットル4つ口丸底フラスコに、分子量500のポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)327部、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸105部、ライトエステルG−201P(共栄社化学製)33部、トリメチロールプロパン5部、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン412部、tert−ブチルハイドロキノン0.3部、オクチル酸第一スズ0.3部、メチルエチルケトン1222部、を入れて攪拌しながら70℃まで0.5時間で昇温し、70℃で5時間反応後、tert−ブチルハイドロキノン0.2部、ビスコート#214HP(大阪有機化学(株)製)119部、を加え、窒素導入管を空気導入管に替えて、再び70℃で6時間反応させて、ポリエステルウレタン樹脂骨格(a2)の溶液を得た。50℃に冷却して、この溶液を、予め用意した還流冷却管、及び窒素導入管、温度計を備えた攪拌機付きの別の反応器に調製したトリエチルアミン72部、純水2411部、イソホロンジアミン15部、アセトン75部、の混合溶液中に、液温35〜40℃に保ちながら、30分間で加えた。サーフィノールAK02(日信化学工業(株)製)2部を加えた後、50℃、減圧下にてメチルエチルケトンを留去して不揮発分:30.5%、固形分酸価44(KOHmg/g)、粘度:100cps、不飽和基濃度が2.4当量/kg、の活性エネルギー線硬化型水ポリウレタン樹脂の水性分散液(h)を調製した。
【0072】
実施例1〜5、比較例1〜3で試作した活性エネルギー線硬化型水性ウレタン樹脂分散体について下記の方法で平均粒子径、粘度の測定を行った。
(平均粒子径の測定方法):島津製作所の粒子径測定器 SALD−2000を使用して測定した。
(粘度の測定方法):東機産業の回転粘度型(BII型)を使用して測定した。
(樹脂分散体の安定性):室温で72時間静置後の分散液の状態を目視で観察した。
分散体の粘度測定結果、安定性評価結果を表1に示す。
【0073】
[応用例1]実施例1で試作した活性エネルギー線硬化型水性ウレタン樹脂分散体の固形分100部に対し、イルガキュア184(チバスペシャリティケミカル製)4部及びエタノール4部を加え均一になるまで撹拌混合した。混合溶液は、各基材(PET板、ガラス板、アルミ板)上に、#14のバーコーターによって約5μmの膜厚になるように塗布し、80℃5分間熱風乾燥した後(PETのみ60℃)に、FUSION社製紫外線照射装置(F−600)、240W/cmのHランプで紫外線を照射した。照射エネルギー量は500mJ/cmとした。
【0074】
[応用例2〜8]実施例1〜5、比較例1〜3で試作した活性エネルギー線硬化型水性ウレタン樹脂分散体を用い、応用例1と同様の方法で塗料の調製及び塗装板の作製を行った。尚、応用例の末尾−1、−2、−3は各々試験下地PET板、ガラス板、アルミ板を表す。
【0075】
各応用例で得た塗装板について、硬化皮膜の鉛筆硬度、耐溶剤性、耐水性、耐アルカリ性、耐摩耗性を以下の方法で評価した。
(鉛筆硬度):JIS−K−5400による。
(耐溶剤性):ラビングテスター(MEKを用いて500g荷重)にて、10回ラビングし、目視により外観変化を観察。
(耐水性):イオン交換水中に24時間浸漬後、外観変化を目視観察。
(耐アルカリ性):5%NaOH水を硬化皮膜に1.5cc滴下し、24hr静置後、外観変化を目視観察。
(耐摩耗性):#0000のスチールウールを100g荷重/cmの条件下、10回往復摺動し、目視により皮膜の外観を観察した。
【0076】
硬化塗膜の測定、評価結果を表2〜4に示す。
【0077】
【表1】

【0078】
【表2】

【0079】
【表3】

【0080】
【表4】

【0081】
表1〜4に示したように本発明のポリエチレングリコール鎖を側鎖に導入したウレタン樹脂は水分散させると粒子径が小さく安定な水分散液が得られた。また、活性エネルギー線にて硬化した塗膜の耐アルカリ性及び耐摩耗性についても良好な結果が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明のポリアルキレンエーテル鎖含有ジオ−ル化合物を原料とした活性エネルギー線硬化型水性ウレタン樹脂分散体は、貯蔵安定性に極めて優れており、乾燥、活性エネルギー線照射によって、硬度、耐久性、特に耐アルカリ性の良好な皮膜を形成することができる。従って、環境調和型の金属用塗料、各種プラスチックフィルム用オーバーコート剤、木工用塗料、印刷インキ等の素材として極めて有用である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示されるポリアルキレンエーテル鎖含有ジオ−ル化合物(A)、ポリオール(B)、ポリイソシアネート(C)と、α,β−不飽和二重結合とヒドロキシル基とを併有する化合物(D)を反応させることで得られる、活性エネルギー線硬化型水性ウレタン樹脂分散体。
【化1】

(式中、R1は、炭素数1〜9のアルキレン基又はジアルキレンエーテル基であり、R2は、炭素数1〜9のアルキル基であり、R3は、−CO−NH−R4−NH−CO−であり、R4は、炭素数2〜18の有機基であり、Aは、分子量200〜10000の2価のポリアルキレンエーテル基である。)
【請求項2】
前記した一般式(1)中のR4が、アルキレン基、フェニレン基、シクロヘキシレン基、ビフェニレン基の何れかを含むジイソシアネート残基である請求項1記載の活性エネルギー線硬化型水性ウレタン樹脂分散体。
【請求項3】
前記した一般式(1)中のAが、下式の繰り返し単位、又はこれらの組み合わせである請求項1又は2に記載の活性エネルギー線硬化型水性ウレタン樹脂分散体。
【化2】

(式中、mは、2〜4の整数である。)
【請求項4】
前記したポリオール(B)が、2個以上のヒドロキシル基と塩を形成しうる基とを併有する化合物(E)を含有する請求項1〜3の何れかに記載の活性エネルギー線硬化型水性ウレタン樹脂分散体。
【請求項5】
前記したポリオール(B)が、トリオール以上の成分を10〜40モル%含有し、且つ、α,β−不飽和二重結合量が1.0〜6.0モル/kg、且つ数平均分子量が5000以上である請求項1〜4の何れかに記載の活性エネルギー線硬化型水性ウレタン樹脂分散体。
【請求項6】
一分子当たり3以上のα,β−不飽和二重結合を有するモノマー及び又はオリゴマー(F)を5〜40質量%内包した請求項1〜6の何れかに記載の活性エネルギー線硬化型水性ウレタン樹脂分散体。


【公開番号】特開2007−23177(P2007−23177A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−208458(P2005−208458)
【出願日】平成17年7月19日(2005.7.19)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】