説明

活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物、粘着剤、粘着シート及び粘着剤層付き光学部材

【課題】良好な粘着力及び透明性を有すると共に、カーナビゲーションなどの車載用途などに適した、特に耐久性に優れる粘着剤を与えるDual−cure型粘着剤組成物を提供する。
【解決手段】水酸基含有(メタ)アクリレート系共重合体(A)、カルボキシル基含有(メタ)アクリレート系共重合体(B)、活性エネルギー線硬化型化合物(C)、及び架橋剤(D)を含有する粘着剤組成物であって、前記(メタ)アクリレート系共重合体(A)100質量部に対して、活性エネルギー線硬化型化合物(C)を15質量部よりも多く含み、かつ前記架橋剤(D)を0.5〜2.5質量部含むことを特徴とする活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物、粘着剤、粘着シート及び粘着剤層付き光学部材に関する。さらに詳しくは、本発明は、長期保管後にあっても、良好な粘着力及び透明性を有すると共に、カーナビゲーションなどの車載用途などに適した特に耐久性に優れる粘着剤を与えるDual−cure型粘着剤組成物、それから得られた上記性状を有する粘着剤、該粘着剤を2枚の剥離シートで挟持してなる粘着シート及び粘着剤層付き光学部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
前記のDual−cure型粘着剤組成物とは、活性エネルギー線による架橋と、熱架橋の両方により二つの架橋ネットワークを形成させることのできる粘着剤組成物である。該Dual−cure型粘着剤組成物は、高い耐久性能を有する粘着剤を形成することができるという特徴を有する。
【0003】
このようなDual−cure型粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤として、例えば、(A)水酸基を含有するモノマーがモノマー組成比で10質量%以下である重量平均分子量100万以上のアクリル系重合体、(B)カルボキシル基を含有するモノマーがモノマー組成比で10質量%以下である重量平均分子量100万以上のアクリル系重合体及び(C)活性エネルギー線硬化型化合物を含む粘着性材料に、活性エネルギー線を照射してなる偏光板用粘着剤であって、成分(A)と成分(B)の質量比が100:1〜100:50であり、かつ、23℃における貯蔵弾性率(G')が、0.3MPa以上である偏光板用粘着剤(例えば、特許文献1参照)が開示されている。
【0004】
この偏光板用粘着剤は、偏光板を液晶セルに耐久性よく接着し得ると共に、得られた液晶表示装置が、高温高湿環境下でも光漏れが生じにくいなどの特性を有している。しかし、近年需要の高まりつつあるカーナビゲーションなどの車載用途においては、従来の室内テレビ用途などと比較し、格段の耐久性が求められるようになってきている。これは、車載用のディスプレイの場合、日中、車内においてかなりの高温に長時間曝される上、反対に、夜間はかなりの低温状態にもなるからである。このために、室内テレビ用途の偏光板用粘着剤では、必ずしも耐久性が充分であるとは言えず、車載用の偏光板用粘着剤のために新たに設定された厳しい各種耐久条件で、剥がれなどが生じる場合があった。
また、大画面テレビ用途の偏光板用粘着剤の場合に比較して、車載用の偏光板用粘着剤は生産ロールに対するディスプレイ1台当たりの使用面積が小さいため、消費速度が遅く、長期保管への対応を必要とする。そのため、車載用の偏光板用粘着剤においては、これまでにない長期保管後の粘着物性等の各種物性の経時安定性が強く求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−212995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような状況下になされたもので、長期保管後においても、良好な粘着力及び透明性を有すると共に、カーナビゲーションなどの車載用途などに適した、特に耐久性に優れる粘着剤を与えるDual−cure型粘着剤組成物、及びそれから得られた上記性状を有する粘着剤を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、水酸基含有(メタ)アクリレート系共重合体と、カルボキシル基含有(メタ)アクリレート系共重合体と、活性エネルギー線硬化型化合物と、架橋剤とを含み、かつ前記の活性エネルギー線硬化型化合物及び架橋剤を、それぞれ所定の割合で含有する活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物が、Dual−cure型粘着剤組成物として、その目的に適合し得ることを見出した。
本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0008】
すなわち、本発明は、
(1)水酸基含有(メタ)アクリレート系共重合体(A)、カルボキシル基含有(メタ)アクリレート系共重合体(B)、活性エネルギー線硬化型化合物(C)、及び架橋剤(D)を含有する粘着剤組成物であって、前記(メタ)アクリレート系共重合体(A)100質量部に対して、活性エネルギー線硬化型化合物(C)を15質量部よりも多く含み、かつ前記架橋剤(D)を0.5〜2.5質量部含むことを特徴とする活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物、
(2)水酸基含有(メタ)アクリレート系共重合体(A)100質量部に対して、カルボキシル基含有(メタ)アクリレート系共重合体(B)を、3〜30質量部の割合で含む上記(1)項に記載の粘着剤組成物、
(3)水酸基含有(メタ)アクリレート系共重合体(A)を構成する水酸基含有モノマー単位の含有量が1〜5質量%であり、かつカルボキシル基含有(メタ)アクリレート系共重合体(B)を構成するカルボキシル基含有モノマー単位の含有量が3〜10質量%である上記(1)又は(2)項に記載の粘着剤組成物、
(4)上記(1)〜(3)項のいずれかに記載の粘着剤組成物に、活性エネルギー線を照射してなることを特徴とする粘着剤、
(5)2枚の剥離シートの剥離層側に接するように、上記(4)項に記載の粘着剤を挟持してなる粘着シート、及び
(6)光学部材上に、上記(4)項に記載の粘着剤を層状に積層してなる、粘着剤層付き光学部材、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、良好な粘着力及び透明性を有すると共に、カーナビゲーションなどの車載用途などに適した特に耐久性に優れる粘着剤を与えるDual−cure型粘着剤組成物、それから得られた上記性状を有する粘着剤、該粘着剤を2枚の剥離シートで挟持してなる粘着シート及び粘着剤層付き光学部材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
まず、本発明の活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物について説明する。
[活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物]
本発明の活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物(以下、単に「粘着剤組成物」と称することがある。)は、水酸基含有(メタ)アクリレート系共重合体(A)、カルボキシル基含有(メタ)アクリレート系共重合体(B)、活性エネルギー線硬化型化合物(C)、及び架橋剤(D)を含有する粘着剤組成物であって、前記(メタ)アクリレート系共重合体(A)100質量部に対して、活性エネルギー線硬化型化合物(C)を15質量部よりも多く含み、かつ前記架橋剤(D)を0.5〜2.5質量部含むことを特徴とする。
【0011】
(水酸基含有(メタ)アクリレート系共重合体(A))
本発明の粘着剤組成物において、成分(A)として用いられる水酸基含有(メタ)アクリレート系共重合体は、水酸基含有アクリレート系モノマー単位を有するものであって、架橋点となる官能基を有しない(メタ)アクレート系モノマーと、水酸基含有(メタ)アクリレート系モノマーとを共重合させることにより、得ることができる。なお、本発明において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートの両方を意味する。他の類似用語も同様である。
通常、(メタ)アクリレート系共重合体を架橋して粘着剤に耐久性を付与するために、架橋点となる官能基を有する(メタ)アクリレート系モノマーを、架橋点となる官能基を有しない(メタ)アクリレート系モノマーと共重合させて(メタ)アクリレート系共重合体を得、これを粘着剤の主剤とすることが行われる。この成分(A)においては、水酸基が架橋点となる。
【0012】
成分(A)における水酸基含有(メタ)アクリレート系モノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、これらのうち特に(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルが、重量平均分子量100万以上の(メタ)アクリレート系共重合体を容易に製造できる点から好ましい。
【0013】
架橋点となる官能基を有しない(メタ)アクリレート系モノマーとしては特に制限はなく、例えば、エステル部分のアルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸エステルを好ましく挙げることができる。ここで、エステル部分のアルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸エステルの例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの化合物のうち、特に、(メタ)アクリル酸ブチルが、適度な粘着性能を得ることができ、かつ、重量平均分子量100万以上の(メタ)アクリレート系共重合体を容易に製造できる点で好ましい。
【0014】
当該水酸基含有(メタ)アクリレート系共重合体(A)を構成する水酸基含有モノマー単位の含有量は、1〜5質量%であることが好ましい。この含有量が1質量%以上であれば、水酸基が架橋点として充分に機能を発揮することができ、一方5質量%以下であれば、高温・高湿下での耐久性が充分となる。この水酸基含有モノマー単位の含有量は1.2〜2.0質量%の範囲にあることがより好ましい。
【0015】
当該(メタ)アクリレート系共重合体(A)は、重量平均分子量が100万以上であることが好ましい。この重量平均分子量が100万未満であると、高温・高湿下での接着耐久性が不十分となり、浮きや剥がれなどが生じる場合がある。接着耐久性などを考慮すると、この重量平均分子量は、120万〜220万のものがより好ましく、特に150万〜200万のものが好ましい。
なお、上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定したポリスチレン換算の値である。
本発明の粘着剤組成物においては、成分(A)の(メタ)アクリレート系共重合体は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
(カルボキシル基含有(メタ)アクリレート系共重合体(B))
本発明の粘着剤組成物において、成分(B)として用いられるカルボキシル基含有(メタ)アクリレート系共重合体は、カルボキシル基含有(メタ)アクリレート系モノマー単位を有するものであって、架橋点となる官能基を有しない(メタ)アクリレート系モノマーと、カルボキシル基含有(メタ)アクリレート系モノマーとを共重合させることにより、得ることができる。
この成分(B)のカルボキシル基含有(メタ)アクリレート系共重合体においても、前記成分(A)と同様に、粘着剤に耐久性を付与するために、架橋点となるカルボキシル基を有する(メタ)アクリレート系モノマーと、架橋点となる官能基を有しない(メタ)アクリレート系モノマーとの共重合体を用いる。この成分(B)においては、カルボキシル基が架橋点となる。
成分(B)におけるカルボキシル基含有(メタ)アクリレート系モノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、これらの中で重量平均分子量100万以上の(メタ)アクリレート系共重合体を容易に製造できる点から、(メタ)アクリル酸が好ましい。
【0017】
成分(B)における架橋点となる官能基を有しない(メタ)アクリレート系モノマーとしては特に制限はなく、前記成分(A)で用いるのと同様のもの、すなわち、エステル部分のアルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸エステルを好ましく挙げることができる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの化合物のうち成分(A)の場合と同様に、特に(メタ)アクリル酸ブチルが、適度な粘着性能を得ることができ、かつ重量平均分子量100万以上の(メタ)アクリレート系共重合体を容易に製造できる点で好ましい。
【0018】
当該成分(B)においては、カルボキシル基含有(メタ)アクリレート系モノマー単位の含有量は、3〜10質量%であることが好ましい。
この含有量が3質量%以上であれば、高温・高湿下における耐久性を充分に満足させることができ、一方、10質量%を超えると、リワーク性低下の傾向が見られる。さらに、前記含有量は5〜8質量%の範囲にあることがより好ましい。この含有量が5質量%以上であれば、前記耐久性がより良くなり、8質量%以下であれば、得られる粘着剤のヘーズ値を1.5%未満に抑えるのに特に有効だからである。
【0019】
この成分(B)であるカルボキシル基含有(メタ)アクリレート系共重合体は、重量平均分子量が100万以上であることが好ましい。重量平均分子量が100万未満であると、前記成分(A)の重量平均分子量が100万未満である場合と同様に、高温・高湿下での接着耐久性が不十分となり、浮きや剥がれなどが生じる場合がある。接着耐久性などを考慮すると、この重量平均分子量は、成分(A)の場合と同様に、120万〜220万のものがより好ましく、特に150万〜200万のものが好ましい。
なお、上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定したポリスチレン換算の値である。
本発明の粘着剤組成物においては、成分(B)の(メタ)アクリレート系共重合体は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
本発明の粘着剤組成物においては、前記の水酸基含有(メタ)アクリレート系共重合体(A)100質量部に対して、前記のカルボキシル基含有(メタ)アクリレート系共重合体(B)を、3〜30質量部の割合で含有することが好ましい。前記成分(B)を上記の割合で含有することにより、高温・高湿下での接着耐久性が充分なものとなる。該成分(B)のより好ましい含有量は5〜20質量部である。同様の観点から該成分(B)の含有量は、10〜20質量部であることが特に好ましい。
【0021】
(活性エネルギー線硬化型化合物(C))
本発明の粘着剤組成物においては、成分(C)として、活性エネルギー線硬化型化合物が用いられる。該成分(C)は、活性エネルギー線照射により、互いに反応し三次元網目構造を形成する。そして、前記共重合体(A)及び(B)を該三次元網目構造内に、ある程度の自由度を確保しながら固定することにより、得られる粘着剤の凝集力を上げる役割を果たす。
この活性エネルギー線硬化型化合物としては、分子量1000未満の多官能(メタ)アクリレート系モノマーを好ましく挙げることができる。
この分子量1000未満の多官能(メタ)アクリレート系モノマーとしては、例えば1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリロキシエチルイソシアヌレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ヘキサヒドロフタル酸ジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、アダマンタンジ(メタ)アクリレート、9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレンなどの2官能型;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロキシエチルイソシアヌレートなどの3官能型;ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどの4官能型;プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどの5官能型;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの6官能型などが挙げられる。
【0022】
本発明において、これらの多官能(メタ)アクリレート系モノマーは、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、これらの中で、骨格構造に環状構造を有するものを含有することが好ましい。環状構造は、炭素環式構造でも、複素環式構造でもよく、また、単環式構造でも多環式構造でもよい。このような多官能(メタ)アクリレート系モノマーとしては、例えばジ(メタ)アクリロキシエチルイソシアヌレート、トリス(メタ)アクリロキシエチルイソシアヌレートなどのイソシアヌレート構造を有するもの、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ヘキサヒドロフタル酸ジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、アダマンタンジ(メタ)アクリレートなどが好適であり、特にイソシアヌレート構造を有するものが好ましい。
【0023】
本発明の粘着剤組成物においては、成分(C)の活性エネルギー線硬化型化合物として、前述した多官能(メタ)アクリレート系モノマーと共に、活性エネルギー線硬化型の多官能プレポリマーを併用することができる。
この活性エネルギー線硬化型の多官能プレポリマーは、重量平均分子量50,000以下のものが好ましい。このようなプレポリマーの例としては、ポリエステルアクリレート系、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエーテルアクリレート系、ポリブタジエンアクリレート系、シリコーンアクリレート系などが挙げられる。
【0024】
本発明の粘着剤組成物においては、前述した成分(C)の活性エネルギー線硬化型化合物の含有量は、前記(メタ)アクリレート系共重合体(A)100質量部に対して、15質量部超であることを要し、20質量部以上であることが特に好ましい。この成分(C)の含有量が15質量部以下であると、Dual−cure型粘着剤組成物として、活性エネルギー線による架橋と、熱架橋の両方により、二つの架橋ネットワークを充分に形成させることができず、高い耐久性能を有する粘着剤を形成することができない。
当該成分(C)の含有量の上限については、粘着剤層の硬化しすぎによる粘着力低下により、耐久性を悪化させるのを防止する観点から、30質量部程度、好ましくは24質量部である。
【0025】
(架橋剤(D))
本発明の粘着剤組成物においては、成分(D)として架橋剤を含有する。
この架橋剤としては、前述した水酸基含有(メタ)アクリレート系共重合体(A)の架橋点である水酸基、及びカルボキシル基含有(メタ)アクリレート系共重合体(B)の架橋点であるカルボキシル基の両方と反応して、前記成分(A)の(メタ)アクリレート系共重合体及び前記成分(B)の(メタ)アクリレート系共重合体を熱架橋し得るものであればよく、特に制限されず、例えばポリイソシアネート化合物、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ジアルデヒド類、メチロールポリマー、アジリジン系化合物、金属キレート化合物、金属アルコキシド、金属塩などが挙げられるが、該成分(A)及び(B)との相溶性及び反応時の副反応が少ないことからポリイソシアネート化合物が好ましく用いられる。
ここで、ポリイソシアネート化合物の例としては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネートなどの脂環式ポリイソシアネートなど、及びそれらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油などの低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体などを挙げることができる。
【0026】
本発明においては、この架橋剤は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その使用量は、前記(メタ)アクリレート系共重合体(A)100質量部に対して、0.5〜2.5質量部の範囲であることを要する。この使用量が、0.5質量部未満では熱架橋が不充分となり、耐久性に優れる粘着剤が得られない。一方、2.5質量部を超えると、長期保管により粘着剤中の架橋が過度に進行し共重合体(A)、(B)の自由度が低下しすぎたり、粘着剤中に未反応で残存した架橋剤が長期保管の間に副生成物になり、粘着剤の吸湿性を増大させたりするものと推定される。
したがって、長期保管後の耐久性評価が悪化することとなる。このような観点から、当該架橋剤の使用量は、好ましくは0.8〜2.2質量部、より好ましくは1.2〜1.6質量部である。
【0027】
(シラン系カップリング剤)
本発明の粘着剤組成物には、さらにシラン系カップリング剤を含有させることができる。
このシラン系カップリング剤は、例えば本発明の粘着剤を介して、偏光板などの光学部材を液晶セルのガラス基板に、湿熱条件下でも接着性よく貼着するために用いられる。
このシラン系カップリング剤としては、例えば、トリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0028】
さらに、3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアナトプロピル(メチル)ジエトキシシラン、2−イソシアナトエチルトリエトキシシラン、2−イソシアナトエチル(メチル)ジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピル(メチル)ジエトキシシラン、2−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、2−グリシドキシエチル(メチル)ジエトキシシラン、3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリエトキシシラン、3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピル(メチル)ジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル(メチル)ジエトキシシランなど、及びこれらのシラン化合物のエトキシ基をメトキシ基に置き換えたシラン化合物を用いることもできる。
これらのシラン系カップリング剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。またその添加量は、本発明の粘着剤組成物の固形分100質量部に対し、通常0.001〜10質量部程度、好ましくは0.1〜4質量部である。
【0029】
(光重合開始剤)
当該粘着剤組成物には、所望により光重合開始剤を含有させることができる。
該光重合開始剤は、後述の活性エネルギー線の照射によりラジカル等を発生させ、前記成分(C)の(メタ)アクリレート部位の重合を開始させる。
この光重合開始剤としては、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2−(ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリ−ブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p−ジメチルアミノ安息香酸エステル、オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン]、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイドなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、また、その配合量は、活性エネルギー線硬化型化合物(C)100質量部に対して、通常0.2〜20質量部、好ましくは1〜15質量部である。
【0030】
(粘着剤組成物を含む塗工液の調製)
本発明の粘着剤組成物を含む塗工液の調製方法に特に制限はなく、例えば溶媒中に、前述した(メタ)アクリレート系共重合体(A)、(メタ)アクリレート系共重合体(B)、活性エネルギー線硬化型化合物(C)、架橋剤(D)及び必要に応じて用いられるシラン系カップリング剤や光重合開始剤、さらには各種添加剤、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、レベリング剤、消泡剤、帯電防止剤、屈折率調整剤などを加え、撹拌混合することにより、本発明の粘着剤組成物を含む塗工液を調製することができる。
前記溶媒としては、例えばヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、塩化メチレン、塩化エチレンなどのハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、イソホロン、シクロヘキサノンなどのケトン、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル、エチルセロソルブなどのセロソルブ系溶媒、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル系溶媒などが挙げられる。これらの溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
この塗工液中の固形分濃度としては、該塗工液が塗工に適した粘度であればよく、特に制限はない。
【0031】
次に、本発明の粘着剤について説明する。
[粘着剤]
本発明の粘着剤は、前記のようにして得られた粘着剤組成物を含む塗工液を用いて得られた粘着剤組成物に、熱架橋及び活性エネルギー線を照射してなるものである。
なお、活性エネルギー線とは、電磁波又は荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するもの、すなわち、紫外線や電子線などを指す。上記紫外線は、高圧水銀ランプ、無電極ランプ、キセノンランプなどで得られ、一方、電子線は電子線加速器などによって得られる。この活性エネルギー線の中では、特に紫外線が好適である。なお、電子線を使用する場合は、光重合開始剤を添加することなく、粘着剤を形成することができる。
当該粘着剤組成物に対する活性エネルギー線の照射量としては、好適な貯蔵弾性率、無アルカリガラスに対する所望の粘着力を有する粘着剤が得られるように、適宜選定されるが、紫外線の場合は照度50〜1000mW/cm2、光量50〜1000mJ/cm2、電子線の場合は10〜1000kradの範囲が好ましい。なお、熱架橋は後述の乾燥工程や養生期間を通して行われる。
【0032】
本発明の粘着剤においては、23℃における貯蔵弾性率(G')が0.5〜3.0MPaの範囲にあることが好ましい。23℃におけるG'が上記範囲にあれば、該粘着剤を介して、偏光板を液晶セルに貼着する場合に、耐久性よく接着することができる。より好ましい23℃の貯蔵弾性率(G')は、1.0〜2.0MPaであり、さらに好ましくは1.1〜1.5MPaである。
なお、上記貯蔵弾性率(G')の測定方法については後で説明する。
【0033】
また、本発明の粘着剤は、40℃、乾燥下3ヶ月放置後を起点とし、貼合後24時間経過後の無アルカリガラスに対する粘着力が1〜20N/25mmの範囲にあることが好ましく、2〜10N/25mmの範囲にあることがより好ましい。
さらに、本発明の粘着剤は、厚さ25μmにおけるヘーズ値が、通常0.5〜4.0%、好ましくは0.8〜2.0%である。
なお、上記の無アルカリガラスに対する粘着力及びヘーズ値の測定方法については、後で説明する。
【0034】
次に、本発明の粘着シートについて説明する。
[粘着シート]
本発明はまた、2枚の剥離シートの剥離層側に接するように、前述した本発明の粘着剤を挟持してなる粘着シートをも提供する。この粘着シートは、例えば以下のようにして製造することができる。
まず、剥離シートの剥離層上に、前述した粘着剤組成物を含む塗工液を、例えばバーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法などを用いて塗工し、乾燥して粘着剤組成物層を形成させる。乾燥条件としては、40〜150℃程度、10秒〜10分程度であることが好ましい。次いで、この粘着剤組成物層上に、前記剥離シートとは剥離強度の異なる別の剥離シートを、その剥離層が接するように貼付したのち、活性エネルギー線を照射することにより、本発明の粘着シートを作製する。あるいは、一方の剥離シートの剥離層上に粘着剤組成物層を設け、活性エネルギー線を照射したのち、この上に他の剥離シートを剥離層面が接するように貼付することにより、本発明の粘着シートを作製する。なお、活性エネルギー線照射後、熱架橋を十分に行うため1〜2週間程度の養生期間をとることが好ましい。但し、本実施態様において、養生期間以上の長期保管を行う場合には、養生期間を別途設ける必要はない。
なお、この粘着シートの厚さ(剥離シートは含まず)は、通常5〜100μm程度、好ましくは10〜50μmである。
【0035】
前記剥離シートとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィンフィルムなどのプラスチックフィルムに、シリコーン樹脂などの剥離剤を塗布し剥離層を設けたものなどが挙げられる。この剥離シートの厚さについては特に制限はないが、通常20〜150μm程度である。
【0036】
次に、本発明の粘着剤層付き光学部材について説明する。
[粘着剤層付き光学部材]
さらに、本発明は、光学部材上に、前述した本発明の粘着剤からなる層を有する、粘着剤層付き光学部材を提供する。
前記光学部材としては、例えば偏光板、位相差板、光学補償フィルム、反射シート、輝度向上フィルムなどを挙げることができるが、これらの中で偏光板及び位相差板が好ましく用いられる。また、本発明の粘着剤からなる粘着剤層の厚さは、通常5〜100μm程度、好ましくは10〜50μm、より好ましくは10〜30μmである。
この粘着剤層付き光学部材は、例えば以下のような方法を用いて作製することができる。
剥離シートの剥離層上に、前述した方法に従って、粘着剤組成物層を設け、この上に光学部材を貼合したのち、該剥離シートを除去し、粘着剤組成物層の露出した面側から、もしくは、該剥離シートを除去せずに該剥離シート側から活性エネルギー線を照射することにより、粘着剤層付き光学部材を作製することができる。
【0037】
本発明の粘着剤は、偏光フィルム単独からなる偏光板に適用して、該偏光板を、例えば液晶ガラスセルに接着させるのに用いることができるが、特に偏光フィルムと視野角拡大フィルムとが一体化してなる偏光板に適用し、この偏光板を、例えば液晶ガラスセルに接着させるのに、好ましく用いることができる。
前記偏光フィルムと視野角拡大フィルムとが一体化してなる偏光板としては、例えばポリビニルアルコール系偏光子の両面に、それぞれトリアセチルセルロース(TAC)フィルムを貼り合わせてなる偏光フィルムの片面に、例えばディスコティック液晶からなる視野角拡大機能層を塗布により設けたもの、あるいは視野角拡大フィルムを接着剤で貼り合わせたものなどを挙げることができる。この場合、本発明の粘着剤は、前記視野角拡大機能層又は視野角拡大フィルム側に設ける。
本発明の粘着剤を用いて、前記のようにして液晶ガラスセルに偏光板を接着させることにより作製した液晶表示装置は、高温高湿環境下でも光漏れが生じにくい上、偏光板と液晶ガラスセルとの接着耐久性に優れている。
【0038】
また、本発明の粘着剤は、視野角特性の改善を図るため、偏光板と液晶セルの間に粘着剤を介して位相差板が配置される場合においても好適に使用し得る。すなわち、偏光フィルム単独からなる偏光板と位相差板を本発明の粘着剤で貼合して光学フィルムを製造し、該光学フィルムの位相差板と液晶ガラスセルを粘着剤で貼合すればよい。ここで位相差板と液晶ガラスセルを貼合する粘着剤としては特に限定されず、通常偏光板と液晶ガラスセルの貼合に用いられる粘着剤を使用することができる。
【実施例】
【0039】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、実施例1〜8及び比較例1〜4で得られた粘着剤の性能を、以下に示す要領で求めた。
(1)粘着剤の貯蔵弾性率
貯蔵弾性率(G')は、基材を有しない粘着シートを作製し、その粘着剤を積層し、8mmφ×3mm厚の円柱状の試験片を作製し、JIS K 7244−6に基づき、ねじり剪断法により、レオメトリック社製動的粘弾性測定装置「DYNAMIC ANALYZER RDAII」を用いて、周波数:1Hz、温度:23℃、80℃の条件で測定して得た値である。
(2)粘着力(無アルカリガラスに対する粘着力)
無アルカリガラスに対する粘着力として、40℃、乾燥下3ヶ月放置後を起点とし、以下に示す方法により、貼合24時間後及び168時間後の粘着力を測定した。
裁断装置[荻野製作所社製、「スーパーカッター」]を用いて下記各例で得られた粘着剤層付き偏光板を幅25mm×長さ100mmの大きさに裁断することによりサンプルを調製した。該サンプルは、粘着剤層に積層されている剥離フィルムを剥離して粘着剤層の面を無アルカリガラス[コーニング社製、商品名「イーグルXG」]に貼付した。貼付後、オートクレーブ[栗原製作所社製]に投入して0.5MPa、50℃、20分間の条件で加圧した。
その後23℃、50%RH環境下で24時間放置し、引っ張り試験機[オリエンテック社製、商品名「テンシロン」]を用いて以下の条件で粘着力を測定した。
剥離速度:300mm/分
剥離角度:180°
【0040】
(3)耐久性
下記各例で得られた粘着剤層付き偏光板を、乾燥下、40℃にて紫外線照射後から3ヶ月間保管した。
保管後、裁断装置[荻野製作所社製、商品名「スーパーカッター」]を用いて、その粘着剤層付き偏光板を233mm×309mmサイズに裁断した。
次いで、剥離フィルムを剥離して粘着剤層を無アルカリガラス[コーニング社製、「イーグルXG」]に貼合後、オートクレーブ[栗原製作所社製]に投入して5kg/cm2、50℃、20分間の条件で加圧した。
その後、下記(a)〜(d)の各耐久性条件下に投入を行った。
(a)105℃ dry、1000時間
(b)95℃ dry、1000時間
(c)65℃ 相対湿度95%、1000時間
(d)HS:−40℃⇔80℃、乾燥下、各30分のヒートショック試験を400サイクル繰り返した。ヒートショック試験機はエスペック社製、「サーマル ショック チャンバー TSA-101S」を使用した。
ここで、各耐久性の評価は、10倍率ルーペを用いて観察を行ない、以下の外観変化で評価した。
5:欠点が発生していないもの。
4:4辺において外周端部0.2mm以上に欠点がないもの。
3:4辺において外周端部0.4mm以上に欠点がないもの。
2:4辺において外周端部0.6mm以上に欠点がないもの。
1:粘着剤の外周4辺のいずれか1辺に外周端部から0.6mm以上に浮き、剥がれ、発泡、スジ等0.1mm以上の異常な欠点があるもの。
(4)ヘーズ値
下記各例で得られた、ポリエチレンテレフタレート製剥離シート[リンテック社製、「SP−PET382050」]の剥離層上に形成された粘着剤組成物層の露出面側に、偏光フィルムに替えて、ポリエチレンテレフタレート製剥離シート[リンテック社製、「SP−PET381130」]の剥離層側が接するように積層した。
得られた剥離シート/粘着剤組成物層/剥離シートからなる積層体について、粘着剤層付き偏光板を得た場合と同様に紫外線を照射することにより、1対の剥離シートに挟持されてなる厚さ25μmの粘着剤層を有する粘着シートを得た。
該粘着シートは、50mm×50mmに裁断し、両面の剥離シートを剥がし、ソーダガラスに貼付した。このソーダガラスに粘着剤層が積層された構造体について、日本電色工業(株)ヘーズメーター「NDH−2000」を用いて、JIS K 7136に準拠してヘーズ値を測定した。なお、ソーダガラス単体のヘーズ値は0であった。
【0041】
実施例1〜8及び比較例1〜4
第1表に示す組成(固形分換算)の粘着剤組成物を調製し、さらに溶媒としてトルエンを加えて固形分を20質量%に調整した塗工液を得た。該塗工液を用いて、剥離シートとしての厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート製剥離シート[リンテック社製、「SP−PET382050」]の剥離層上に、乾燥後の厚さが25μmになるように、ナイフ式塗工機で塗布したのち、90℃で1分間乾燥処理して粘着剤組成物層を形成した。
次いで、ディスコティック液晶層(視野角拡大機能層)付偏光フィルムからなる偏光板を、粘着剤組成物層とディスコティック液晶層が接するように貼合した。貼合してから30分後に剥離シート側から、紫外線(UV)を下記の条件で照射し、粘着剤付き偏光板を作製した。粘着剤層の厚さは25μmであった。
<UV照射条件>
・フュージョン社製無電極ランプ Hバルブ使用
・照度600mW/cm2、光量150mJ/cm2
UV照度・光量計は、アイグラフィックス社製「UVPF−36」を使用した。
粘着剤の性能の評価結果を第2表に示す。
【0042】
【表1】

【0043】
[注]
1)BA/HEA:アクリル酸ブチル(BA)とアクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEA)の共重合体、各共重合体(A)のMw=200万
2)BA/AA:アクリル酸ブチル(BA)とアクリル酸(AA)の共重合体、各共重合体(B)のMw=200万
3)光重合開始剤:ベンゾフェノンと1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンとの質量比1:1の混合物
4)熱架橋剤(D):トリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート[日本ポリウレタン社製、「コローネートL」]
5)M−315:トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、分子量423、3官能型[東亞合成社製、「アロニックスM−315」]
6)KBM−403:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン[信越化学工業社製、「KBM−403」]
【0044】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の粘着剤組成物は、良好な粘着力及び透明性を有すると共に、カーナビゲーションなどの車載用途などに適した特に耐久性に優れる粘着剤を与えるDual−cure型粘着剤組成物である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基含有(メタ)アクリレート系共重合体(A)、カルボキシル基含有(メタ)アクリレート系共重合体(B)、活性エネルギー線硬化型化合物(C)、及び架橋剤(D)を含有する粘着剤組成物であって、前記(メタ)アクリレート系共重合体(A)100質量部に対して、活性エネルギー線硬化型化合物(C)を15質量部よりも多く含み、かつ前記架橋剤(D)を0.5〜2.5質量部含むことを特徴とする活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物。
【請求項2】
水酸基含有(メタ)アクリレート系共重合体(A)100質量部に対して、カルボキシル基含有(メタ)アクリレート系共重合体(B)を、3〜30質量部の割合で含む請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
水酸基含有(メタ)アクリレート系共重合体(A)を構成する水酸基含有モノマー単位の含有量が1〜5質量%であり、かつカルボキシル基含有(メタ)アクリレート系共重合体(B)を構成するカルボキシル基含有モノマー単位の含有量が3〜10質量%である請求項1又は2に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の粘着剤組成物に、活性エネルギー線を照射してなることを特徴とする粘着剤。
【請求項5】
2枚の剥離シートの剥離層側に接するように、請求項4に記載の粘着剤を挟持してなる粘着シート。
【請求項6】
光学部材上に、請求項4に記載の粘着剤を層状に積層してなる、粘着剤層付き光学部材。

【公開番号】特開2012−107093(P2012−107093A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−255811(P2010−255811)
【出願日】平成22年11月16日(2010.11.16)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】