説明

活性剤放出のための粒子状構築物

【課題】in vitro及びin vivoの両方の環境において活性成分の徐放性放出を実現するための構築物。
【解決手段】両親媒性共重合体によって安定化され、且つ、疎水性成分と結合した少なくとも一つの活性成分を含む粒子状構築物。

【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、2004年7月19日に出願された米国特許出願第60/589,164号の利益を享受するものであり、該米国出願の全部を引用により本書に組み込む。
【技術分野】
【0002】
本書は、活性剤の改善された送達及び性能のための組成物及び方法に関する。より具体的には、本発明は、両親媒性化合物によって安定化され、且つ、疎水性成分にリンカーを介して結合した少なくとも一つの活性成分(active)を含む粒子状構築物(但し、該活性成分は、該リンカーの切断により該構築物から放出され得る)に関する。
【背景技術】
【0003】
徐放性放出は、多くの適用分野において、活性剤(医薬品、化粧品、食品、及び、芳香剤を含む)の至適な使用及び有効性を実現するうえで望ましい。マイクロ粒子、ナノ粒子、及び、ポリマー結合(体)(polymer conjugation)の使用を含む、前記物質の可溶化、標的化、安定化、及び、放出制御の試みがなされた。
【0004】
物質をマイクロ粒子又はより大きなマトリックス(基質)に製剤化するためのポリマーカプセル化の使用に基づいたアプロ−チは、それらの放出を遅延させるのに成功している。そのような製剤において、前記カプセル化された物質の放出は、前記ポリマー外への拡散によって又は前記マトリックス自体の浸食によって、制御される。このアプロ−チは、ナノ粒子のようなより小さな粒子においては、有効ではない。ナノ粒子の大きさは、ドラッグデリバリー(とりわけ200nm未満のサイズ範囲の微粒子が癌細胞に集積されるのに対しそれより大きな粒子が集積されないような腫瘍への)、のような多くの適用において、要求され得る。活性剤を含有するナノ粒子の調製のための多くの記述が前記技術により提供されているものの、完全に満足できるものはない。例えば、Mu, L., et al, Journal of Controlled Release (2003) 86:33−48; Fonseca, C, et al, Journal of Controlled Release (2002) 83:273−286を参照されたい。
【0005】
徐放を達成するためのもう一つの戦略は、切断可能な基と活性成分とのポリマー結合を利用するものである(Frerot, E., et al, European Journal of Organic Chemistry (2003) 967−971.)。普通ドラッグデリバリーで使用されるポリマーは、ポリ(エチレングリコール)(PEG)である(Greenwald, R. B., et al, Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems (2000) 17:101−161; Greenwald, R. B., Journal of 'Controlled Release (2001) 74: 159−171)。PEGと薬剤との結合は、生体内での循環時間の増大と疎水性薬剤の溶解度の増大を実現することが示されている。PEGと結合した医薬的に活性なタンパク質はまた、性質の変化、すなわち、増加した生物的利用能、減少した免疫原性、及び、亢進した溶解度をもたらす。この戦略は、試験管内で徐放性の薬物放出プロフィールを示すが、生体内では有意に早い速度での該薬物の放出プロフィールを示す(Greenwald, R. B., et al, Journal of Medicinal Chemistry (1996) 39:424−431)。
【0006】
医薬品及びその他の化合物のための徐放性システム及び微粒子キャリア(particulate carriers)に関する文献は、広範にあり、以下に実例トナーる文書のみを説明する。
【0007】
米国特許第6,429,200号及び第6,673,612号は、細胞内へ核酸又は他の活性成分を輸送する逆ミセルについて記述している。米国特許第6,676,963号は、組織及び臓器を標的としたドラッグデリバリーのためのナノ粒子について記述している。PCT公報WO02/098465は、内部移行ペプチド含有医薬品の送達のための脂質に基づく媒体について記述している。PCT公報WO03/028696は、組み合わされた薬剤の放出を調整するための微粒子送達媒体について記述している。多様なリポソ−ム製剤が、薬剤送達のために、何年もの間、使用されてきた。
【0008】
白金含有制癌剤の放出のための、キレート剤は、例えば、Nishiyama, N., et al, J. Controlled Release (2001) 74:83−94及び Nishiyama, N., et al, J. Cancer Res. (2003) 63:8977−8983に記載されている。
【0009】
薬剤調製物が、水中油型乳濁液を安定化させるためのPEG修飾リン脂質の使用を含む、混合されたミセル及び乳濁液型製剤を用いて、製剤化された(Alkan−Onyuksel, et al., Pharm. Res. (1994) 11:206−212; Lundberg, J Pharm. Pharmacol. (1997) 49:16−21; Wheeler, et al, Pharm. Sciences (1994) 83:1558−1564)。
【0010】
例えば、米国(特許)第4,610,868号は、粒径の範囲で500nm〜100μmの疎水性化合物と両親媒性化合物から成るマトリックス物質について記述している。前記の得られた「脂質マトリックスキャリア」は、生物学的活性剤をカプセル化し、そして、該マトリックスからの放出を行う。米国特許第5,869,103号は、サイズ範囲10nm〜200μmの、生分解性ポリマーと水溶性ポリマーの混合物と活性剤とを組み合わせた乳濁液によって形成された微粒子組成物について記述している。
【0011】
米国特許第5,145,684号は、結晶性薬物質が表面修飾因子でそれ自身が被覆されている微粒子調製物について記述している。同様に、米国特許第5,470,583号は、荷電されたリン脂質と会合した表面修飾因子としての非イオン性界面活性物質を有するナノ粒子について記述している。それ自体400nm未満の粒径の前記生物学的活性物質は、前記ナノ粒子のコアとして使用される。
【0012】
米国特許第5,891,475号は、多糖体から調製されるような親水性コアを含むドラッグデリバリー媒体について記述している。前記粒子は、共有結合によって前記コアの上にグラフトされた脂肪酸の外層を含むように処理される。
【0013】
米国特許第5,188,837号は、コアとして固体疎水性ポリマーを、且つ、外側コーティングとしてホスファチジルコリンのようなリン脂質若しくはレシチンを含有する、一般的にサイズ範囲1〜38μmのマイクロ粒子について記述している。この開示によれば、この系では、ホスファチジルイノシトール及びホスファチジルグリセロールのような他のリン脂質については実行できない。米国特許第5,543,158号は、ポリマーのコアとPEGの表層の1nm〜1μmの粒子(但し、その中に含まれる生物学的活性剤と共有結合的に結合していてもよい)を開示している。
【0014】
Perkins, W. R., et al, Int. J. Pharmaceut. (2000) 200:27−39では、PEG結合脂質に囲まれた難水溶性薬剤のコアから形成された「リポコア(lipocores)」について記述している。
【0015】
Gref, R., et al, Coll and Surf B: Biointerfaces (2000) 18:301−313は、多様なポリマー及び共ポリマー(ポリカプロラクトンを含む)から形成されるPEG被覆ナノ粒子上へのタンパク質吸着の性質について記述している。そのような粒子が製薬用途において有用かもしれないと認識されているものの、該粒子自体についてしか研究がなされていなかった。Lemoine, D., et al, Biomaterials (1996) 17:2191−2197では、他のポリマー、ポリカプロラクトン、の中から、構成される、種々のナノ粒子の研究が報告されている。これらが送達系において有用であると認識されているものの、該粒子そのものについてのみが研究されていた。
【0016】
Lamprecht, A., et al, Int.J.Pharmaceut.(2000) 196:177−182は、多様な疎水性ポリマー及び共ポリマーを用いて得られたナノ粒子の粒径における微小流動化剤(microfluidizer)の使用効果についての研究が報告されている。
【0017】
Kim, S−Y., et al, J.Cont.ReI.(2000) 65:345−358は、ポリカプロラクトン(PCL)とプルロニック(登録商標)の共ポリマーナノ球(nanospheres)について、記述している。平均直径200nm未満のプルロニック(商標登録)/PCLブロック共ポリマーのナノ球が、エンドメチシンを装填され、そして、細胞障害性、薬剤放出、薬剤装填効率、及び、物理的特徴について評価された。前記粒子は、完全に、前記ブロック共ポリマーを形成する。
【0018】
薬剤の送達及び放出のためのリポソ−ム調製物についての文献は多量にある;医薬品をリポソ−ム中にカプセル化する概念は、はっきりと確立され詳細についてもよく検討されている。
【0019】
活性剤の持続的又は制御された送達のための微粒子構築物は、医薬品に限定されるものではない。例えば、米国特許第5,928,832号は、写真複写過程に使用されるトナー含有ラテックス乳濁液について記述している。米国特許第5,766,818号は、加水分解性界面活性物質とトナーを含むラテックス乳濁液について記述している。米国特許公開公報2004/0221989は、その周囲の粘性を減少するように分解するよう設計された界面活性物質組成物について記述している。米国特許公開公報2004/0152913は、疎水性タンパク質のMALDI−MS解析における切断可能な界面活性物質の使用について記述している。米国特許第6,559,243号は、水性媒体との接触において、放出される活性成分と結合したグリオキシル酸化合物について記述している。
【0020】
ドラッグデリバリーやその他の用途のために設計された、マイクロ粒子調製物、マトリックスキレート剤、及び、ナノ粒子製剤が相当数あるにもかかわらず、理想的な組成は樹立されていない。
【0021】
徐放性送達系の一つの重要な適用は、合剤(drug combinations)の投与(但し、そこでは、そのような(複数の)薬剤放出が調整されることが望ましい)に関する。
【0022】
癌、エイズ、感染症、免疫疾患、及び、心血管系障害などの生命を脅かす多くの疾病の進行は、複数の分子機構により影響を受けている。この複雑性のゆえ、単一の薬剤による治療の成功には限界がある。よって、しばしば、疾病との戦い、特に癌の治療においては、薬剤の併用が用いられてきた。投与された薬剤の数とリンパ球白血病及び転移性結腸直腸癌のような癌の治癒率との間には強い相関が見られる。今まで、実質的に癌に対する全ての治療的措置は、合剤カクテルに頼っており、そこでは、異なる毒性の薬剤の至適投薬スケジュ−ルは、広範な市販後臨床試験において決定されていた。
【0023】
遊離薬剤カクテルの投与は、しばしば、腫瘍部位に到達する前に、該薬剤の1又は全ての急速なクリアランスをもたらす。この理由のため、多くの薬剤は、血流からのそれらのクリアランスをもたらすであろう機構からそれらを「遮蔽」するように設計された送達媒体内に取り込まれている。より本発明に関連性のあるもとして、PCT出願 PCT/CA02/01500並びにPCT出願 PCT/CA2004/000507及びPCT/CA2004/000508において、薬剤が、粒子性送達媒体(該媒体が薬物動態学を制御し且つ調整された送達を達成する)にカプセル化されているか又は別の仕方で会合している組成物が、記述されている。本発明の前記製剤は、しばしば、これら合剤について従来とは異なる徐放性機構を提供する。
【発明の開示】
【0024】
本発明は、医薬及び非医薬の双方における種々の様式に有用な活性剤の放出に適応可能な微粒子構築物を提供する。これらの送達系は、活性成分の高い搭載能を、並びに、該活性成分の徐放性放出、関連する毒性の減少、及び、もし望むのであれば標的部位への選択的送達の手段を、提供する。前記活性剤は、白金剤、タキサン及び抗生物質のような多様な治療剤、並びに、ピグメント、色素、芳香剤及び香料のようなその他の適用における重要な活性成分を含んでよく、そして、生体内での治療及び診断の文脈で、農業使用で、及び、産業的使用において、適用され得る。
【0025】
それゆえ、一態様において、本発明は、
両親媒性安定化剤、及び、次式の抱合体を含む微粒子構築物を指向する。
(活性成分−リンカー)−疎水性成分 (1)
但し、nは、1〜100の整数であり;且つ
但し、「活性成分(active)」は、所望の活性を有する化合物を意味し;
「リンカー」は、共有結合、有機分子の二価の残基、又は、キレート剤であり;且つ
「疎水性成分」は、水溶液に難溶性である有機分子の残基である。
【0026】
種々の実施形態において、前記活性成分は、芳香剤、医薬品、診断薬、トナー、又は、所望の活性を有する任意の化合物で有り得る。式(1)に記載されているように、複数の活性成分が、前記の同一の疎水性成分と結合し得る(該疎水性成分は、複数の連結部位がある疎水性ポリマー、又は、ビタミン若しくはステロイドのようなより小さい分子で有り得る)。前記構築物(とりわけ併用療法において有用な)を作成するために、1以上の型の活性成分が含まれていてもよい。任意の場合において、この形状の前記送達媒体を用意することにより、前記活性成分の徐放が、経時的又は所望の部位の何れかにおいて、促進される。
【0027】
それゆえ、もう一つの態様において、本発明は、制御された様式で(徐放的に)、経時的に又は選択された標的に、活性成分を送達する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明は、とりわけ、広範な種類の活性剤の徐放性放出に適した有利な粒子状構築物を提供する。単一の活性剤が単一の粒子状構築物から放出されてもよいし、又は、複数の活性剤が放出されてもよい。このような放出は、複数の活性成分との共有結合又はキレーターに基づく結合を支持可能な疎水性成分との単一結合内で、複数のそのような結合された活性成分から生じ得、及び/又は、複数のそのような結合が単一の粒子性構築物内に収容され得る。
【0029】
本発明の記述において、使用される用語は、以下の意味に従う。
【0030】
別に定義されない限り、本書で使用される全ての技術用語、表記法、及び、その他の科学用語若しくは用語法は、本発明が属する当業者によって一般に理解されているのと同一の意味を有するものとする。幾つかの場合には、一般に理解されている意味の用語が、明瞭さのために、及び/又は、用意された引用文献のために、本書において定義されており、本書へのそのような定義の包含について、前記技術分野で一般に理解されていることとの実質的な相違を表すためのものとは必ずしも解釈されるべきではない。本書で記述された又は参照された技術及び手順の多くは、当業者によって、よく理解され、且つ、常套的な方法論を用いて普通に実施されている。適切なものとして、商業的に入手可能なキット及び試薬の使用を含む手順が、特に断らない限り、製造者が規定したプロトコル及び/又はパラメータに従い、一般に実行されている。
【0031】
本書において使用される場合、不定冠詞“a”又は“an”は、「少なくとも一つ(at least one)」又は「1以上(one or more)」を示す。
【0032】
本書で使用される場合、用語「活性剤(active agent)」又は「活性成分(active)」は、治療又は診断を含む種々の適用において使用される化学的成分を言う。例として、治療剤、イメ−ジング剤、診断剤、放射性核種、金属イオン、インク、芳香剤、粘弾性剤、香味、及び、所望の挙動若しくは活性を有する任意の化学物質がある。前記活性剤の溶解範囲は、水又は緩衝液に「難溶性(insoluble)」から、「若干可溶性(sparingly soluble)」又は「可溶性(soluble)」までである。
【0033】
本書で使用される場合、「水性媒体に難溶性(insoluble in aqueous medium)」とは、前記物質が、生理学的イオン強度の水溶液中において、0.05mg/ml若しくはそれ未満の量しか溶解しないことを意味する。水性媒体に完全に難溶性な物質はほとんどなく、また、該媒体の塩濃度又は浸透圧濃度にも溶解度が影響され得ることが、認識されている。本定義に従えば、「水性媒体に難溶性(Insoluble in aqueous medium)」とは、生理学的に適合性のある溶液の浸透圧濃度、イオン濃度及びpHを仮定している。或いは、そのように特定されたならば、「純水での難溶解性(insolubility in pure water)」は、前記の標準として使用されてもよい。「水に難溶性(Insolubility in water)」とは、純水1mlあたり0.05mg未満を意味する。
【0034】
同様に、「若干可溶性(sparingly soluble)」及び「可溶性(soluble)」は、上に定義された「水性媒体」又は「純水」の何れかを基準にした立場から説明されてもよい。水性媒体に「可溶性」な物質は、生理学的溶液に少なくとも1.0mg/mlと同等であるかそれよりも大きな範囲において、溶解し、;水性媒体に「若干可溶性(sparingly soluble)」な物質は、生理学的溶液に1.0mg/mlよりも小さく0.05mg/mlよりも大きい範囲においてのみ溶解される。
【0035】
「疎水性成分(Hydrophobic moiety)」とは、上に定義したような水性媒体に難溶性な成分として定義される。前記疎水性成分は、ポリカプロラクトンのような疎水性ポリマーであってもよいし、ビタミン若しくはステロイドのような疎水性低分子であってもよい。それは、一価すなわちリンカーを介して単一の活性成分にのみ結合するための好適な基を有するか、又は、多価すなわちリンカーを介して複数の活性成分に結合し得る、であってもよい。前記活性化合物の全てが、同一である必要はない。
【0036】
「両親媒性安定化剤(amphiphilic stabilizer)」は、親水性領域と疎水性領域を有する分子量が凡そ500以上の化合物である。好ましくは、前記分子量は、凡そ1,000以上、又は、凡そ1,500以上、又は、凡そ2,000以上である。より大きな分子量の成分、例えば、25,000g/モル又は50,000gが使用されてもよい。「疎水性」は、上のように定義される。本発明の文脈においては、「親水性」とは、水性媒体(すなわち上で定義されたような生理的溶液)において、少なくとも1.0mg/mlの溶解性を有する成分を言う。典型的な両親媒性安定化剤は、親水性領域と疎水性領域の共ポリマーである。それゆえ、前記両親媒性安定化剤においては、前記疎水性領域は、単独になった場合、0.05mg/ml未満の水性媒体中で可溶性を示すであろうし、また、前記親水性領域は、単独になった場合、1mg/mlより大きい水性媒体中で可溶性を示すであろう。例としては、ポリエチレングリコールとポリカプロラクトンの共ポリマーを含む。
【0037】
「リンカー」とは、前記活性剤が前記疎水性成分に付着すような、任意の共有結合を、分子の二価の残基を、又は、キレート剤を(この場合、前記活性化合物は、金属イオン又は有機金属化合物、例えば、シスプラチンである)、言う。前記リンカーは、予め規定された刺激への暴露により選択的に切断され得、それにより前記活性剤が前記疎水性成分から放出される。前記切断部位は、分子の2価の残基の場合には、該残基内の部位でよく、或いは、該2価の残基と前記活性化合物とを又は前記疎水性成分とをつなぐ結合の何れかで生じてもよい。前記予め規定された刺激には、例えば、pH変化、酵素分解、化学修飾、又は、光曝露を含む。簡便な結合は、しばしば、エステル類、炭酸類、カルバミン酸類、ジスルフィド類、及び、ヒドラゾン類のような、加水分解性又は酵素的に切断可能な結合に基づいている。
【0038】
幾つかの場合には、前記活性化合物がその機能を発揮するような条件は、該リンカーが切断されないが該活性化合物は前記粒子に付着したままこの機能を発揮可能ような条件である。この場合には、実際に幾つかの条件下で任意のリンカーが切断可能であるものの、前記リンカーは、「非切断可能(non−cleavable)」と記載される;それゆえ、「非切断可能(non−cleavable)」とは、前記活性成分がその機能を発揮する際に必ずしも該活性成分が前記粒子から放出される必要がないようなリンカーを言う。
【0039】
模範的な構成要素(Exemplary Components)
前述したように、本発明の粒子性構築物の構成要素には、(1)活性剤; (2)リンカー; (3)疎水性成分;及び、(4)両親媒性安定化剤、が含まれる。これらの各々の例は以下の通りである:
【0040】
活性剤
本発明の前記構築物の一つの適用において、前記構築物は、色素、インク、殺虫剤、除草剤(蛍光プローブを含む)、日焼け止め成分、芳香剤、及び、風味化合物を含むがこれらに限定されない、非医薬又は非診断剤を送達するのに使用される。
【0041】
本発明の前記構築物のもう一つの適用において、前記構築物は、個体において、医薬又は診断薬を送達するのに使用される。これらの場合において、前記活性剤は、治療剤又は診断剤である。
【0042】
広範な種類の治療剤が含まれ得る。これらは、抗悪性腫瘍剤、駆虫剤、抗生物質、抗凝血剤、抗うつ剤、抗糖尿病剤、抗てんかん剤、抗ヒスタミン剤、降圧剤、抗ムスカリン剤、抗放線菌剤、免疫抑制剤、抗甲状腺剤、抗ウイルス剤、抗不安鎮静剤、収斂剤、β−アドレナリン受容体遮断剤、心臓の変力剤、造影剤、副腎皮質ステロイド、咳抑制剤、診断剤、画像診断剤、利尿剤、ド−パミン作動剤、止血剤、免疫学的薬剤、脂質制御剤、筋弛緩剤、副交感神経作動剤、副甲状腺カルシトニン、ビスホスホネ−ト(biphosphonates)、タンパク質分解酵素阻害剤、プロスタグランジン、放射性医薬、性ホルモン、ステロイド、抗アレルギ−剤、刺激剤、交感神経模倣剤、甲状腺剤、血管拡張剤とキサンチン、ジスルフィド化合物、抗菌剤、抗ウイルス剤、非ステロイド性抗炎症剤、鎮痛剤、抗凝血剤、抗痙攣剤、制吐剤、抗真菌剤、降圧剤、抗炎症剤、抗原生動物剤、抗精神病剤、心保護剤、細胞保護剤、抗不整脈剤、ホルモン、免疫刺激剤、脂質低下剤、血小板凝集阻害剤、前立腺過形成治療剤、リウマチ性疾病の治療剤、又は、血管剤であり得る(「医薬品及び専門の概要」第35版、参照により本書に組み込まれる)。
【0043】
「抗悪性腫瘍剤」は、新生物の細胞又は腫瘍についての成長、増殖、浸潤性又は生存に影響を与える成分を言う。抗悪性腫瘍治療剤は、しばしば、ジスルフィド化合物、アルキル化剤、代謝拮抗剤、細胞障害性の抗生物質、薬剤抵抗性修飾因子、及び、種々の植物アルカロイド、並びに、それらの誘導体を含む。その他の抗悪性腫瘍剤が企図されている。
【0044】
抗悪性腫瘍剤は、パクリタキセル(paclitaxel)、エトポシド−化合物、カンプトセシン−化合物、イダルビシン、カルボプラチン、オキサリプラチン、アドリアマイシン、マイトマイシン、アンサミトシン、ブレオマイシン、シトシンアラビノシド、アラビノシルアデニン、mercaptopolylysine、ビンクリスチン、ブスルファン、クロランブシル、メルファラン、メルカプトプリン、ミトタン、プロカルバジン塩酸塩、ダクチノマイシン、マイトマイシン、プリカマイシン、アミノグルテチミド、エストラムスチンリン酸ナトリウム、フルタミド、ロイプロリド酢酸塩、メゲストロール酢酸塩、タモキシフェンクエン酸塩、testolactone、トリロスタン、アムサクリン、アスパラギナ−ゼ、インタ−フェロン、teniposide、ビンブラスチン硫酸塩、ビンクリスチン硫酸塩、ブレオマイシン、メトトレキセ−ト、valrubicin、carzelesin、パクリタキセル、taxotane、カンプトセシン、ドキソルビシン、ダウノマイシン、シスプラチン、5−フルオロウラシル、メトトレキセ−ト; インドメタシン、イブプロフェン、ケトプロフェン、fmbiprofen、dichlofenac、ピロキシカム、テノキシカム、ナプロキセン、アスピリン、及びアセトアミノフェンのような抗炎症剤; テストステロン、エストロゲン、progestone、及びエストラジオールのような性ホルモン; カプトプリル、ramipril、テラゾシン、ミノキシジル、及びparazosinのような降圧剤; オンダンセトロン及びグラニセトロンのような制吐薬; メトロニダゾ−ル及びフシジン酸のような抗生物質; シクロスポリン; プロスタグランジン; ビフェニル ジメチル ジカルボン酸、カルボプラチン; イトラコナゾ−ル、ケトコナゾ−ル、及びアンホテリシンのような抗真菌剤; トリアムシノロンアセトニド、ヒドロコルチゾン、デキサメサゾン、プレドニソロン、及びベタメタゾンのようなステロイド; シクロスポリン、並びに、機能的に等価な類似体、誘導体又はそれらの組み合わせ、を含む。
【0045】
診断剤が活性剤として含まれてもよい。これらは、例えば、MRI画像法のためのキレート化された金属イオン、99Tc若しくは111In又はその他の生体適合性放射性核種のような放射性核種を含んでもよい。これらはまた、治療剤であってもよい。
【0046】
リンカー
前記リンカー構成要素は、上述のように、切断可能な結合であり得るし、又は切断可能な結合を含み得る。
【0047】
前記リンカーは、例えば、加水分解、還元反応、酸化反応、pHの移行、光分解、若しくはそれらの組み合わせによって、又は、酵素反応によって切断され得る。いくつかのリンカーは、細胞内若しくは細胞外酵素、又は微生物感染に起因する酵素、皮膚表面の酵素、又は細胞により分泌される酵素によって、或いは、癌細胞により分泌される酵素によって、癌細胞の表面に局在する酵素によって、慢性炎症性疾患に関連した細胞により分泌される酵素によって、関節リウマチに関連した細胞により分泌される酵素によって、骨関節炎に関連した細胞により分泌される酵素によって、或いは、膜結合型酵素によって、切断され得る。いくつかの場合には、前記リンカーは、標的領域内で有効な酵素により切断され得る。これらの型のリンカーは、前記の特定の酵素又は特定クラスの酵素が標的領域にて増加した濃度で存在し得る場合には、しばしば有用である。前記標的組織は、一般に、対象に存在する疾病型又は障害に基づいて異なる。
【0048】
前記リンカーは、酸化的又は還元的条件下で切断可能な結合をも含み得るし、或いは、酸感受性であってもよい。酸切断可能リンカーは、米国特許第4,569,789号及び米国特許第4,631,190号; 並びに、Blattner, et al, Biochemistry (1984) 24:1517−1524内に見出し得る。そのようなリンカーは、自然な酸性条件により切断され、或いは、代わりに、米国特許第4,171,563号において説明されているように、酸性条件が標的部位にて誘導され得る。
【0049】
酸切断可能な結合を形成し得る、非制限的な分子セットには、シス−ポリカルボン酸アルケン(参照米国特許第4,631,190号)、及び、緩和な酸性条件で切断可能なアミノ−スルフヒドリル橋かけ結合試薬(参照米国特許第4,569,789号)が含まれる。前記リンカーは、エステル、アミド又はウレタン結合のような生分解性及び/又は加水分解性結合のような、時間的に放出される(a time−release)結合を含んでよい。
【0050】
切断可能なジスルフィド結合(還元され得る結合)を含む結合試薬の例には、1,4−ジ−[3’−(2’−ピリジルジチオ)プロピオンアミド]ブタン; N−スクシンイミジル(4−アジドフェニル)1,3’−ジチオプロピオナート; スルホスクシンイミジル(4−アジドフェニルジチオ)プロピオナート; ジチオビス(プロピオン酸スクシンイミジル); 3,3’−ジチオビス(スルホスクシンイミジルプロピオナート); ジメチル 3,3’−ジチオビスプロピオンイミダ−ト−2HCl(ピアス(Pierce Chemicals、ロックフォ−ド、イリノイ州)から入手可能)を含む。
【0051】
酸化感受性結合試薬の例としては、酒石酸ジスクシンイミジル、及び、酒石酸ジスクシンイミジル(ピアスから入手可能)を含むがこれらに限定されない
【0052】
前記リンカーには、ペプチドリンカーのような低分子も含まれ得る。しばしば、そのような実施形態においては、前記リンカーが、還元条件化で塩基により、又は、特異的酵素により、切断され得る。前記リンカーは、常在性酵素により、又は、熟考された組成物の後から若しくはこれに加えて投与された非常在性酵素により、切断され得る。低分子ペプチドリンカーは、pH感受性であり、例えば、該リンカーは、ポリL−グリシン;ポリL−グルタミン; 及び、ポリL−リジン リンカーから成る群より選択されるリンカーを含み得る。
【0053】
例えば、前記リンカーは、疎水性ポリマーとジペプチド即ちL−アラニン−L−バリン(アラニン−バリン)(酵素サ−モリシンにより切断可能)を含み得る。サ−モリシン様酵素が多くの腫瘍部位で発現していることが報告されていることから、このリンカーは有利である。タンパク質分解酵素フュ−リンの認識部位を含むリンカーも、使用され得る(Goyal, et al, Biochem.J.(2000) 2:247−254)。
【0054】
前記の化学的及びペプチドリンカーは、結合体合成のための当業者既知の技術すなわち遺伝子工学又は化学合成を用いて、前記リガンドと前記剤との間に結合され得る。
【0055】
光切断可能なリンカーには、例えば、1−2−(ニトロフェニル)エチルを含む。光切断可能なリンカーは、しばしば、非常に特異的な領域、例えば標的組織の特定部分において、前記活性剤の活性化及び作用を許容する。活性化(光)エネルギ−は、天然若しくは外科的開口部経由での、又は血管経由での、カテ−テル法を含む種々の方法により、局在化させられ得る。
【0056】
前記活性成分の前記疎水性成分への結合をもたらす前記のリンカー及び技術は、本発明におけるそれらの適用に対し、活性剤をより可溶性にするために前に使用されていたリンカー及び技術に類似している。一般に、本発明の前記構築物において、前記活性成分は、しばしば、しかし常にではなく、前記結合体の形成のために、水性溶液への可溶性がいっそう少なくなっている。例えば、PEGを有機低分子に付着させるためのGreenwaldらによって概説された技術は、本発明に適合させ得る。これらの技術の幾つかは、Greenwald, R.B., Journal of Controlled Release (2001) 74:159−171; Greenwald, R.B., et al, Journal of Medicinal Chemistry (1996) 39:424−431; 及び、Greenwald, R.B., et al, Advanced Drug Delivery Reviews (2002) 55:217−250において記述されている。とりわけ、パクリタキセルエステルは、パクリタキセル分子のα位へのPEG酸の結合を介して調整される。前記エステルカルボニル結合の加水分解とこれに続く付着された薬剤の遊離が、試験管内で予想可能な様式で生じることが示されたことから、これらのエステルが、特に有効な連結基であることが実証された(Greenwald, R.B., et al, Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems (2000) 17:101−161)。本発明において適用された前記リンカー化学は、溶解度を増強しないが、本発明の前記粒子性媒体における前記活性成分の封入に適合している。
【0057】
PEGへのタンパク質、ワクチン、又は、ペプチドの前記共有結合性付着は、また、本結合体を形成するのに適合し得る。そのような技術は、Katre, N. V., Advanced Drug Delivery Reviews (1993) 10:91−114; Roberts, M. J., et al, Journal of Pharmaceutical Sciences (1998) 87:1440−1445; Garman, A. J., et al, Fehs Letters (1987) 223:361−365; 及び、Daly, S. M., et al, Langmuir (2005) 21:1328−1337 において概説されている。タンパク質のアミノ基と求電子性官能基を備えたmPEGとの間の結合反応は、PEG−タンパク質結合体のほとんどの場合に使用されている。最も一般的に使用されているmPEGに基づく求電子試薬は、「活性化PEGs」と呼ばれ、Zalipsky, S., Advanced Drug Delivery Reviews (1995) 16:157−182; 及び Zalipsky, S., Bioconjugate Chem. (1995) 6:150−165において記述されているように、反応性塩化アリール、アシル化剤及びアルキル化官能基に基づくものである。前記リンカー内のエチレン基の数の調整は、週一度の投与にとって、薬剤連結エステル結合の加水分解の速度を適切な値に調整するために、更に使用し得る。例えば、Schoenmakersらは、チオールとアクリルアミドの間の反応に基づく加水分解性リンカーを用いて、PEGへのモデルパクリタキセル分子の結合を証明した。前記リンカーの長さを変化させることにより、薬剤放出時間が4日と14日の間で変化させられた。(Schoenmakers, R.G., et al, Journal of Controlled Release (2004) 95:291−300)。更に、Frerotらは、マレイン酸及びコハク酸の一連のカルバモイルエステルを調製し、そして、アルカリ性エステル加水分解を補助する隣接基についての速度定数について研究した。加水分解の速度は、エステル官能基を攻撃する隣接求核試薬の構造に依存することを見出した(de Saint Laumer, J.Y., et al, Helvetica ChimicaActa (2003) 86:2871−2899)。エステル加水分解速度における構造上のパラメータの影響を考慮に入れることにより、加水分解速度を幾つかの大きさのオーダーの間で変化させ得、且つ、所望の放出プロフィールを得る前駆体が設計され得る。
【0058】
エステル結合に加え、前記活性剤を前記疎水性成分に結合させるのに、酵素学的に切断可能な結合が使用し得る。酵素学的に切断可能なリンカーは、一般に、アミノ酸、糖、核酸、又は、他の化合物(酵素的分解を介して破壊され得る1以上の化学結合を有する)を含むであろう。最近の研究では、種々のアミノ酸スペーサーが、抗腫瘍薬であるカンプトセシンへのPEGの結合に役立っていた。アミノ酸リンカーの加水分解の速度は、利用されるアミノ酸スペーサーのタイプに従って異なることが判明している。(Conover, C O., et al, Anti−Cancer Drug Design (1999) 14:499−506)。
【0059】
光分解可能なリンカーも、活性成分の放出のための結合体の合成のために、広範に使用されてきた。例えば、ケト−エステルは、香料アルデヒド及びケトンの徐放性放出のための送達システムとして使用されていた。1級又は2級アルコ−ルのアルキル又はアリールα−ケトエステルは、350−370nmの照射(放射)で分解され、活性化アルデヒドを放出する。(Rochat, S., et al, Helvetica ChimicaActa (2000) 83:1645−1671)。この機構により首尾よく活性剤の徐放性放出がなされることが示されきた。ドラッグデリバリーの目的のために、光エネルギ−は、天然若しくは外科的開口部経由での、又は血管経由での、カテ−テル法を含む種々の方法により、局在化させられ得る。
【0060】
上述したように、前記リンカーが二価有機分子の残基である場合、「前記リンカーの」切断は、その残基それ自体の内部であり得るか、又は、リンカーと前記結合体の残り(すなわち前記活性成分又は前記疎水性成分の何れか)とをつなぐ結合の一つにおいてあり得る。
【0061】
幾つかの実施形態においては、前記リンカーが切断可能である必要はない。とりわけ、前記活性成分がリンカーと結合したままで機能的である場合、前記粒子性成分からの該活性成分の放出は必要ない。一つのそのような例として、前記活性成分がプリンターのインク(該インクは、使用の際に粒子のままでよい)である事例がある。
【0062】
リンカーが切断可能である必要がない場合には、代わりの有機成分が二価残基を創出するのに使用されてもよく、或いは、疎水性成分に前記活性成分を直接的に結合させる共有結合が、使用における熟慮された条件下で切断の支配を受けなくてもよい。(「非切断可能(non−cleavable)」によって、前記リンカーが、前記活性成分の機能が果たされる条件下で、該活性成分を放出しないであろうことを意味する。)例えば、非切断可能なリンカーには、スルホスクシンイミジル−6−[α−メチル−α−(2−ピリジルチオ)トルアミド]ヘキサン酸; アジドベンゾイル ヒドラジド; N−ヒドロキシスクシンイミジル−4−アジドサリシクル酸; スルホスクシンイミジル−2−(p−アジドサリチルアミド)エチル−1,3−ジチオプロピオナート; N−[4−(p−アジドサリチルアミド)ブチ]−3’(2’−ピイジルジチオ)プロピオンアミド;ビス−[β−(4−アジドサリチルアミド)エチル]ジスルフィド; N−ヒドロキシスクシンイミジル−4アジドベンゾア−ト;
p−アジドフェニル グリオキサ−ル 一水和物; N−スッシミニジル−6(4’−アジド−2’−ミトロフェニル−アミノ)ヘキサノア−ト; スルホスクシンイミジル−6−(4’−アジド−2’−ニトロフェニルアミノ)ヘキサノア−ト; N−5−アジド−2−ニトロベンジオイルオキシスクシンイミド; スルホスクシンイミジル−2−(m−アジド−o−ミトロベンズアミド)−エチル−1,3’−ジチオプロピオナート; p−ニトロフェニル−2−ジアゾ−3,3,3−トリフルオロプロピオナート; スクシンイミジル−4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシラート; スルホスクシンイミジル−4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシラート; m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミド エステル; m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスルホスクシンイミド エステル; N−スクシンイミジル(4−ヨ−ドアセチル)アミノベンゾア−ト; N−スルホスクシンイミジル(4−ヨ−ドアセチル)アミノベンゾア−ト; スクシンイミジル−4−(p−マレンイミドフェニル)ブチラート; スルホスクシンイミジル−4−(p−マレンイミドフェニル)ブチラート; ジスクシンイミジル スベラート; ビス(スルホスクシンイミジル)スベラート; ビス マレイミドヘキサン; 1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼン; ジメチル アジプイミダ−ト 2HCl; ジメチル ピメルイミダ−ト−2HCl; ジメチル スベルイミダ−ト−2−HCl; “SPDP”−N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルチオ)プロピオナート; スルホスクシンイミジル−4−(p−アジドフェニル)ブチラート; スルホスクシンイミジル−4−(p−アジドフェニルブチラート); 1−(p−アジドサリチルアミド)−4−(ヨ−ドアセトアミド)ブタン; 4−(p−アジドサリチルアミド)ブチルアミン (ピアスから入手可能)、を含むがこれらに限定されない。
【0063】
疎水性成分
本発明の前記構築物の第三の構成要素は、疎水性成分である。前記疎水性成分は、ポリマー又は天然産物を含み得る。好適な疎水性ポリマー成分の例としては、以下のポリマーを含むがこれらに限定されるものではない: アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル(BA)、アクリル酸イソブチル、アクリル酸2−エチル、及び、アクリル酸t−ブチルを含むアクリル酸(塩)類(polyacrylates); メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、及びメタクリル酸イソブチルを含むメタクリル酸類;アクリロニトリル類; メタクリロニトリル; 酢酸ビニル、ベルサトタート、ビニルプロピオナート、ビニルホルムアミド、ビニルアセトアミド、ビニルピリジン類、及びビニルイミダゾ−ルを含むビニル類; アミノアルキルアクリラート類、アミノアルキルメタクリラート類、及びアミノアルキル(メト)アクリルアミド類を含むアミノアルキル類; スチレン類; セルロ−スアセタートフタラート、セルロ−スアセタートスクシナート、ヒドロキシプロピルメチルセルロ−スフタラート、 ポリ(D,L−ラクチド)、ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ(グリコリド)、ポリ(ヒドロキシブチラート)、ポリ(アルキルカルボナート)及び ポリ(オルトエステル)、ポリエステル類、ポリ(ヒドロキシ吉草酸)、ポリジオキサノン、ポリ(エチレンテレフタラート)、ポリ(リンゴ酸)、ポリ(タルトロン酸)、ポリ無水物類、ポリホスファゼン類、ポリ(アミノ酸) 及びそれらの共ポリマー(一般的には、Ilium, L., Davids, S. S. (eds.) Polymers in Controlled Drug Delivery, Wright, Bristol, 1987; Arshady, J. Controlled Release (1991) 17:1−22; Pitt, Int. J. Phar. (1990) 59:173−196; Holland, et al, J. Controlled Release (1986) 4:155−180 を参照); 疎水性ペプチドに基づくポリマー及びポリ(L−アミノ酸)に基づく共ポリマー(Lavasanifar, A., et al., Advanced Drug Delivery Reviews (2002) 54:169−190)、 ポリ(エチレン−ビニルアセテート)(“EVA”)共ポリマー類、シリコンゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリジエン類(ポリブタジエン、ポリイソプレン及びこれらポリマーの水素付加された型)、ビニル−メチルエ−テル及び他のビニルエ−テル類の無水マレイン酸共ポリマー類、ポリアミド(ナイロン 6,6)、ポリウレタン、ポリ(エステルウレタン)、ポリ(エ−テルウレタン)、ポリ(エステル−尿素)。特に好適なポリマー性疎水性成分には、ポリ(酢酸エチレンビニル)、ポリ(D,L−乳酸)オリゴマ−及びポリマー、ポリ(L−乳酸)オリゴマ−及びポリマー、ポリ(グリコール酸)、乳酸及びグリコール酸の共ポリマー類、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(バレロラクトン)、ポリ無水物類、ポリ(カプロラクトン)若しくはポリ(乳酸)の共ポリマー類、を含む。非生物学的関連の適用において、特に好適なポリマー性担体には、ポリスチレン、ポリアクリル酸塩類(polyacrylates)、及び、ブタジエン類を含む。前記ポリマーは、1以上の官能基に成り得る基(functionizable group)を含まなければならない(該基は、該ポリマーに組み込まれていてもよく、又は、ポリマー化学において元々備わっていてもよい)。疎水性成分としてのポリマーは、分子量が800と200,000の間にあるべきである。分子量の好適な範囲は、1価又は2価の官能基部位(functional sites)を有する1,000から10,000のポリマーである。誘導のための複数の官能基部位を有するポリマーについては、結合された活性成分あたりのポリマーの好適な分子量が1,000から10,000である。
【0064】
結合のための官能基又は官能基に変換され得る基を有する天然産物には以下が含まれる:疎水性ビタミン類(例えば、ビタミンE、ビタミンK及びビタミンA)、カロテノイド類及びレチノール類(例えば、βカロチン、アスタキサンチン、トランス及びシスレチナ−ル、レチノイン酸、葉酸、ジヒドロホラート、レチニル アセテート、レチニル パルミタート)、コレカルシフェロール、カルシトリオール、ヒドロキシコレカルシフェロール、エルゴカルシフェロール、α−トコフェロール、α−トコフェロールアセテート、α−トコフェロールニコチナート、及び、エストラジオール。好ましい天然産物は、ビタミンEコハク酸塩として容易に入手し得るビタミンEであり、それは、前記活性成分化学種(active species)におけるアミン類及びヒドロキシル類への機能付与を促進する。
【0065】
疎水性で非ポリマー性の成分は、0.1mg/ml未満の溶解度の炭化水素分子を含み、結合のための官能基を取り込むために誘導体化され得る。このクラスの分子には、疎水性色素及び可塑剤が含まれる。例としては、クマリン、ジアミノナフタレン及び他のナフタレン誘導体、アントラセン及びその誘導体、ナイルレッド(nile red)が含むがこれらに限定されない。更なる例については、「Handbook of Dyes and pH Indicators」中に見出し得る。疎水性可塑剤の例としては、ジオクチルフタル酸、ジブチルフタル酸、及びその誘導体を含む。
【0066】
前記疎水性成分の性質に依存して、複数の連結部位を介して実質的に2以上の活性成分を含む、2以上のものが適合可能であってもよい。ポリマー成分は、それにより活性成分が連結し得る100部位ほどを有していてもよい。ビタミンEのようなより単純な疎水性成分は、一つの部位のみを供給する。それゆえ、単一の疎水性成分に結合した活性成分の数は、1のみであり得るし、又は、2、5、10、25、100及びそれ以上、並びにその間の全ての整数であり得る。例えば、上述した前記ポリマーは、前記活性成分に結合するための複数の官能基を容易に提供し得る。2機能性疎水性成分は、二つの末端 OH、COOH、又はNH基を含む上に列挙された疎水性ポリマー鎖を含むであろう。多機能性疎水性成分は、前記ポリマーバックボ−ン上の単量体ユニットの幾つか又は全てにおいて複数のOH、COOH、又はNH基を有する上に列挙された全てのものを含む。これらの官能基は、単に説明のためのものである;連結のための官能基を形成し得るその他の成分には、フェニル置換基、及び、ハロ基などを含む。典型的には、前記疎水性成分が疎水性ポリマーである場合には、連結のための複数部位を有し得る。前記疎水性成分が相対的に低分子である場合には、有効な官能基のためのリンカーの数のみが収容されるであろう。
【0067】
両親媒性安定化剤(Amphophilic Stabilizers)
第四の成分は、両親媒性安定化剤である。典型的には、前記両親媒性安定剤は、疎水性ブロックと結合した親水性ブロックの共ポリマーである。本発明のプロセスにより形成されるナノ粒子は、グラフト、ブロック、又は、無作為両親媒性共ポリマーで形成され得る。これらの共ポリマーは、分子量で1,000g/モルと50,000g/モルの間か又はそれ以上、或いは、凡そ3,000g/モルと凡そ25,000g/モルの間、或いは、少なくとも2,000g/モルであり得る。或いは、本発明で使用される前記両親媒性共ポリマーは、0.1wt%の濃度で少なくとも50ダイン/cmの水表面張力を示す。
【0068】
両親媒性共ポリマー中の好適な疎水性ブロックの例としては、以下を含むがこれらに限定されるものではない: アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル(BA)、アクリル酸イソブチル、アクリル酸2−エチル、及び、アクリル酸t−ブチルを含むアクリル酸(塩)類(polyacrylates); メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、及びメタクリル酸イソブチルを含むメタクリル酸類;アクリロニトリル類; メタクリロニトリル; 酢酸ビニル、ベルサトタート、ビニルプロピオナート、ビニルホルムアミド、ビニルアセトアミド、ビニルピリジン類、及びビニルイミダゾ−ルを含むビニル類; アミノアルキルアクリラート類、アミノアルキルメタクリラート類、及びアミノアルキル(メト)アクリルアミド類を含むアミノアルキル類; スチレン類; セルロ−スアセタートフタラート、セルロ−スアセタートスクシナート、ヒドロキシプロピルメチルセルロ−スフタラート、 ポリ(D,L−ラクチド)、ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ(グリコリド)、ポリ(ヒドロキシブチラート)、ポリ(アルキルカルボナート)及び ポリ(オルトエステル)、ポリエステル類、ポリ(ヒドロキシ吉草酸)、ポリジオキサノン、ポリ(エチレンテレフタラート)、ポリ(リンゴ酸)、ポリ(タルトロン酸)、ポリ無水物類、ポリホスファゼン類、ポリ(アミノ酸) 及びそれらの共ポリマー(一般的には、Ilium, L., Davids, S. S. (eds.) Polymers in Controlled Drug Delivery, Wright, Bristol, 1987; Arshady, J. Controlled Release (1991) 17:1−22; Pitt, Int. J. Phar. (1990) 59:173−196; Holland, et al, J. Controlled Release (1986) 4:155−180 を参照); 疎水性ペプチドに基づくポリマー及びポリ(L−アミノ酸)に基づく共ポリマー(Lavasanifar, A., et al., Advanced Drug Delivery Reviews (2002) 54:169−190)、 ポリ(エチレン−ビニルアセテート)(“EVA”)共ポリマー類、シリコンゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリジエン類(ポリブタジエン、ポリイソプレン及びこれらポリマーの水素付加された型)、ビニル−メチルエ−テル及び他のビニルエ−テル類の無水マレイン酸共ポリマー類、ポリアミド(ナイロン 6,6)、ポリウレタン、ポリ(エステルウレタン)、ポリ(エ−テルウレタン)、ポリ(エステル−尿素)。特に好適なポリマー性疎水性成分には、ポリ(酢酸エチレンビニル)、ポリ(D,L−乳酸)オリゴマ−及びポリマー、ポリ(L−乳酸)オリゴマ−及びポリマー、ポリ(グリコール酸)、乳酸及びグリコール酸の共ポリマー類、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(バレロラクトン)、ポリ無水物類、ポリ(カプロラクトン)若しくはポリ(乳酸)の共ポリマー類、を含む。非生物学的関連の適用において、特に好適なポリマー性ブロックには、ポリスチレン、ポリアクリル酸塩類(polyacrylates)、及び、ブタジエン類を含む。
【0069】
両親媒性共ポリマー中の好適な親水性ブロックの例としては、以下を含むがこれらに限定されるものではない:アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸を含むカルボン酸類; ポリオキシエチレン類若しくはポリエチレンオキシド; ポリアクリルアミド類及びジメチルアミノエチルメタクリラートとそれらの共ポリマー、ジアリールジメチルアンモニウムクロライド、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、アクリル酸、メタクリル酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びスチレンスルホナート、ポリビニルピロリドン、デンプン類及びデンプン誘導体、デキストラン及びデキストラン誘導体; ポリリシン類、ポリアルギニン類、ポリグルタミン酸類のようなポリペプチド類; ポリヒアルロン酸類、アルギン酸類、ポリラクチド類、ポリエチレンイミン類、ポリイオネン類、ポリアクリル酸類、ポリイミノカルボキシラート類、ゼラチン、及び非飽和エチレン酸モノ若しくはジカルボン酸類。
【0070】
好ましくは、前記ブロックは、二元ブロック(diblock)又は三元ブロック(triblock)リピ−トの何れかである。好ましくは、本発明のブロック共ポリマーには、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリブチルアクリラート、ポリブチルメタクリラート、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリアクリル酸、ポリオキシエチレン、及び、ポリアクリルアミドのブロックを含む。好適な親水性ポリマーのリストについて、「Handbook of Water−Soluble Gums and Resins」, R. Davidson, McGraw−Hill (1980) の中に見出し得る。
【0071】
グラフト共重合体においては、グラフトされた成分の長さは変化し得る。好ましくは、前記グラフトされたセグメントは12から32炭素のアルキル鎖か、又は、6から16のエチレンユニットと長さが等価なものである。それに加えて、前記ポリマーバックボ−ンのグラフトは、溶媒和又はナノ粒子安定化特性を高めるのに、有用であり得る。ポリエチレン及びポリエチレングリコールの2ブロック共ポリマーの前記疎水性バックボ−ンにおけるグラフトされたブチル基は、該ポリエチレンブロックの溶解度を高めるはずだ。前記共ポリマーの前記ブロックユニットにグラフトされる好適な化学的成分には、アミド、イミド、フェニル、カルボキシ、アルデヒド、又は、アルコ−ル基のような種を含むアルキル鎖を含む。商業的に利用可能な安定化剤の一つの例としては、ユニケマ(Uniqema Co.)によって市販されているハイパマーファミリー(Hypermer family)がある。前記両親媒性安定化剤はまた、動物又は魚のコラーゲン由来のゼラチンのようなゼラチンファミリーからも構成され得る。
【0072】
前記粒子性構築物の形成
多数の方法が、本発明の前記粒子性構築物の形成のために使用し得る。一つの特に有用な方法が、Johnson, B.K., et al, AlChE Journal (2003) 49:2264−2282及び米国特許公開公報2004/0091546によって記述された「ナノ沈殿(Nano Precipitation)」と呼ばれる方法であり、引用により本書に組み込まれる。この方法は、大きさが制御され、ポリマーが安定化され且つ保護された、疎水性有機物のナノ粒子を高い積載と収率で産生し得る。前記ナノ沈殿技術は、疎水性有機物の核形成と成長が静止した両親媒性二元ブロック共ポリマーに基づく。適した溶媒に溶解された両親媒性二元ブロック共ポリマーは、一つのブロックについての前記溶媒の質が低下した場合に、ミセルを形成し得る。そのような溶媒の質の変化を達成するために、接線方向流混合セル(tangential flow mixing cell)(ボルテックスミキサー)が使用される。前記ボルテックスミキサーは、水混和性溶媒中に溶解された前記二元ブロック共ポリマーと活性剤とを含む一つの噴射流が、該活性剤と該共ポリマーの疎水性ブロックに対し抗溶媒である水を含むもう一つの噴射流で、高速で混合される限定された容量のチャンバ−から成る。この方法に関わる前記の急速混合と高エネルギ−消失は、粒子の核形成と成長の時間尺度よりも短い時間尺度を供給し、それが、他の技術によっては実現できない含量積載とサイズ分布の活性剤付随ナノ粒子の形成に導く。ナノ沈殿を介してナノ粒子形成がなされる場合、凝集の開始に先立ち、全ての成分が高い過飽和レベルへの到達を許容するのに十分急速に、混合が生じる。それゆえ、前記活性剤とポリマーが同時に沈降し、そして、緩徐な溶媒交換に基づく広範に使用されている技術(例えば、透析)で見られる低い活性剤取り込みと凝集の制限を克服する。前記ナノ沈殿法は、前記成分の化学的特異性に対し非感受性であり、普遍的なナノ粒子形成技術トナーる。
【0073】
模範的な手順において、前記活性剤結合ポリマーとメトキシポリ(エチレングリコール)−b−ポリ(ε−カプロラクトン)(mPEG−PCL、5,000−2,900g/モル、各々)の安定化二元ブロック共ポリマーを、各成分について0.3wt%溶液になるように、1:1:1の重量比でTHF中に溶解した。得られた溶液を100mlガスタイトシリンジに装填し、それを電子制御シリンジポンプに固定する。300mMショ糖溶液を調製し、100mlガスタイトシリンジに装填し、それを第二のシリンジポンプに固定する。それらのシリンジを、前記のボルテックスミキサー入り口に接続し、そして、前記活性剤と前記ショ糖溶液を各々流速12及び120ml/分で、ポンピングする。ミキサーの出口にて、二つの試料を収集する。第一の試料はシンチレ−ションバイアル中に収集され、動的光散乱(DLS)によって粒径が分析され、そして、第二の試料は低温フリ−ザ−バイアル中に収集され、凍結乾燥される。前記凍結乾燥サイクルは、以下の通りである:−40℃で終夜、−10℃で1日、4℃で1日、それから室温で1日。安定性を調べるために、1、2、8、16 時間、及び、1日毎に、各試料について、DLS測定を繰り返す。前記試料は、結晶/凝集形成について、視覚的に調べる。前記凍結乾燥品は、残った溶媒(THF)の存在について調べる。凍結乾燥試料は、前記ナノ粒子を解離するために、メタノール中に溶解し、そして、CGCを用いてTHFの存在をテストする。
【0074】
本発明の前記粒子性構築物の形成のために使用し得る他の方法には、粉砕(milling)、乳化−拡散(emulsification−diffusion)、及び、乳化−蒸発(emulsification−evaporation)が含まれる。これらは、当業者によって実行されているよく知られた方法である。粉砕は、巨視的に大きな粒径の微粒子中に結合させられた活性種の沈殿に関わる。前記沈殿物は、それから粉砕媒体と安定化ポリマー若しくは界面活性剤の存在下で機械的方法により微粉砕する。前記方法は、米国特許第4,726,955号; 第5,518,738号及び第5145,684号において記述されている。
【0075】
この方法においては、前記結合体と前記両親媒性安定化剤に加えて、幾らかの過剰な遊離活性成分が補足可能なように、リンカーと結合した過剰な活性型前記疎水性成分を含むことが有益であり得、生じた粒子に更なる安定性が与えられ得る。
【0076】
マイクロカプセル化産物を形成するための薬剤のマイクロカプセル化についての一つの常套的な乳化方法が、米国特許第5,407,609号において開示されている。この方法は、マイクロカプセル又は微粒子のようなマイクロカプセル化産物を形成するために、溶解された壁形成物質を含む溶媒中に、薬剤、液体若しくは固体を、溶解又はさもなければ分散させる事、乳濁液を形成させるために前記薬剤/高分子−溶媒混合物をプロセシング媒体中に分散させる事、及び、該乳濁液中にある該微小滴から該溶媒を即時に抽出するために、すぐに大きな容量のプロセシング媒体中若しくは好適な抽出媒体中に該乳濁液の全てを移す事、に関する。ポリマー送達媒体製剤の調製に使用される最も一般的な方法は、前記の溶媒乳化−蒸発方法である。この方法は、水に完全に非混和性の有機溶媒(例えば、ジクロロメタン)中に前記ポリマーと薬剤とを溶解することに関わる。前記有機混合物は、安定化剤、最も頻繁にはポリ(ビニルアルコ−ル)(PVA)を含む水に添加され、そしてそれから、典型的には超音波処理される。
【0077】
上に示したように、得られた前記粒子性構築物は、記述された一つの前記結合体の他にも1以上のものを含み得る。典型的には、ナノ粒子サイズ構築物は、10〜10の結合体を含むであろう;より大きなマイクロ粒子は、10〜10の結合体を含むかもしれない。
【0078】
得られた粒子は、前記の構成成分の性質とそれを形成するのに使用した方法に依存して、様々なサイズを有していてよい。典型的には、前記粒子は、50nmから5μm程度までのサイズ範囲である。生体内での適用のためには、ナノメートルサイズ粒子、典型的には、200nm又はそれ未満のオーダーが、好ましい。その他の適用のためには、より大きな粒子が、望ましいかもしれない。それ故、前記粒子の寸法は、50nm程度の小ささから、100nm、200nm、500nm、1μm若しくは5μm、及び、それらの間の整数、までの範囲であり得る。これらの組成の構築物は、種々のサイズを含み得、そして、平均又は中央値の直径の観点から記述が可能である。
【0079】
前記粒子性構築物が形成された後、活性剤積載含有量、サイズ、及び、試験管内での活性剤放出について、評価されてよい。ポリマー活性成分相互作用又は適合性の程度を評価するのに利用可能な方法には、DSC、粉体X線回折、及び、FTIRが含まれる。
【0080】
前記活性剤含有量の測定方法の一つの例として、ナノ粒子内にカプセル化されたパクリタキセルが、以下の通りに評価される。凍結乾燥品の試料を秤量し、そして前記粒子を可溶化するためにTHFに溶解し、それから、前記試料をセミマイクロの分光光度計セル内に置き、そして261nmでUV分光光度計を用いて、前記パクリタキセル濃度を定量する。さらに、その吸光度を350nmで測定し、対照として溶液だけのポリマーを261nmで行う。そのUV分析で得られた結果を、C18カラム、移動相として容積当たり10から100%メタノール範囲のメタノールと水、1ml/分の流速、及び、261nmの検出波長での高速液体クロマトグラフィ(HPLC)を用いて、確認する。前記のナノ粒子内にカプセル化されたシスプラチン量は、原子吸光分析を用いて測定する。
【0081】
粒径は、DLSによって測定され得る。例えば、一つの実例において、測定は、532nm波長、散乱角90°でのNd−YAGレ−ザを用いて遂行される。前記ミキサー流出液からシンチレーションバイアル内に収集された前記試料は、デリカンシンチレーション溶液(温度槽を用いて250℃に維持されている)を含む前記DLS試料セル内に入れられ、そして、セルの温度と平衡になるようにしておく。その実施持続時間は、60秒で、3回繰り返す。流体力学的直径として表される前記粒径は、ALV5000相関器と二次累積フィットを用いて得る。
【0082】
試験管内放出についても測定し得る。上述のパクリタキセル含有粒子については、10mMリン酸、150mM NaCl緩衝液を調製し、そして活性剤ナノ粒子を1mg/mlから5mg/ml 溶液を形成するように2ml緩衝液に懸濁する。その溶液を12〜14K透析膜バックに導入し、そして、室温の緩衝液1リットル中に置く。0.05mlの一定分量を透析バックから収集し、そして、ナノ粒子を解離させるために1mlのTHFを添加する。得られた溶液をセミマイクロ分光光度計セルに置き、そして前記パクリタキセル濃度UV分光光度計を用いて261nmで測定する。さらに、その吸光度を350nmで測定し、対照として溶液だけのポリマーを261nmで行う。前記のシスプラチン量は、原子吸光分析を用いて測定する。前記測定は、1、2、4、8、16、24、48、及び72時間の間隔で繰り返す。
【0083】
前記活性剤の物理的状態は、DSCによっても調べられ得る。純粋な活性剤、空のポリマーナノ粒子若しくはフィルム、及び、活性剤積載ポリマーナノ粒子若しくはフィルムのDSC温度記録が、記録される。前記活性剤の濃度は、10〜75%(w/w)の範囲である。各活性剤濃度における融解熱の値(活性剤のΔH、J/g)が記録され、そして、ΔH対濃度のプロットを作成する。前記ナノ粒子又はフィルム中の前記活性剤の前記固体溶解度(飽和溶解度)が、前記プロットのy切片により判定される(Puttipipatkhachorn, et al, J.Controlled Release (2001) 10:75(1−2):143−153)。前記固体溶解度が下方では、前記活性剤は溶解状態にある一方、前記固体溶解度が上方では、該活性剤は溶解状態又は結晶状態にある。
【0084】
前記活性剤の前記固体溶解度は、前記ポリマーの分子量に依存する。より大きな分子量のポリマーでは、前記媒体の微小粘性がより高く、そして、前記活性剤の結晶化がより困難になる。それ故、ポリマー分子量の増加が、前記活性剤の飽和溶解度が増加するように働くべきである。
【0085】
活性剤−ポリマー相互作用又は適合性は、DSCにより頻繁に評価される。前記活性剤は、前記ポリマーのTの減少を引き起こす可塑剤として作用してもよく、或いは、前記ポリマーのTの増加の結果としてなる強化性賦形剤として作用してもよい。ポリマー活性剤混和性の判定基準には、しばしば、前記の個々の構成成分のT'sの間にある単一濃度依存的Tgの存在を含む。
【0086】
前記ポリマー混合物の混和性は、しばしばDSCを用いて評価される。各ポリマー及び前記ポリマー混合物のDSC熱記録が記録される。各構成成分単独の前記ガラス転移点(T)を、前記ポリマー混合物におけるT値と比較する。ポリマーポリマー混和性の判定基準は、ポリマー活性剤混和性について上述した判定基準と同じである。
【0087】
ポリマーフィルム又はナノ粒子中の前記活性剤の状態は、前記の純粋な活性剤、物理的混合物、及び、前記の活性剤−ポリマー混合物の粉体X線回折(PXRD)パターンから得られたディフラクトグラムより決定される。前記ディフラクトグラムにおける鋭いピークの存在は、前記活性剤が結晶性の状態で存在していることを表している;一方、ハロ−パターンは無定形性状態を示している。
【0088】
ポリマー活性剤相互作用は、FTIR分光法を用いて測定し得る。純粋な活性剤、純粋な活性剤とポリマーの物理的混合物、並びに、前記活性剤−ポリマー混合物のフィルムについての前記透過赤外スペクトルが、得られる。前記混合物における相互作用は、前記の純粋なポリマーと活性剤についてのスペクトルと比較した場合、FTIRスペクトルにおけるバンドシフトと広幅化をもたらすであろう。
【0089】
本発明の粒子性構築物の適用及び使用
前記活性成分が生体内で有用な治療剤又は診断剤である場合には、前記粒子性構築物は、適当な獣医学的又は医薬的な組成物中に製剤化され、そして適切に対象に投与される。前記対象には、ヒト、家禽類、及び魚類などを含む、温血動物が含まれる。ヒトの病気の治療については、有資格の医師が、確立されたプロトコ−ルを使用し、用量、スケジュ−ル及び経路に関して、本発明の前記組成物がどのように用いられるべきかを決定するであろう。そのような適用はまた、本発明の送達媒体組成物中にカプセル化された薬剤が、前記対象の健康な組織では減少した有毒性を示すように、用量段階的増大を頻繁に利用する。
【0090】
本発明の前記医薬的又は獣医学的組成物は、非経口的に、すなわち、動脈内に、静脈内に、腹腔内に、皮下に、又は筋肉内に、投与され得、前記医薬的組成物は、例えば、大量瞬時投与又は注入的インジェクションによって投与される。例えば、Rahmanらの米国特許第3,993,754号; Searsの米国特許第4,145,410号; Papahadjopoulosらの米国特許第4,235,871号; Schneiderの米国特許第4,224,179号; Lenkらの米国特許第4,522,803号; 及び、Fountainらの米国特許第4,588,578号を参照されたい。
【0091】
他の方法においては、本発明の製剤は、標的組織への該調製物の直接適用により、該標本組織と接触させることが可能である。前記適用は、「局所的」、「開放的」、又は、「閉鎖的」方法により成され得る。「局所的」とは、皮膚、中咽頭及び外耳道などのような環境に露出された組織へのマルチ−活性剤調製物の直接適用を意味する。「開放的」方法は、患者の皮膚の切開とそこに医薬調製物が適用される下にある組織の直接的な可視化を含む方法である。一般に、これは、肺にアクセスするための開胸術、腹腔の内臓にアクセスするための腹腔開腹術、又は、標的組織にアクセスするための他の直接的な外科的アプロ−チなどのような外科的方法によって遂行される。「閉鎖的」方法は、内部の標的組織が直接的に可視化しないが皮膚の小さな創傷を介して器具を挿入してアクセスする侵襲性の方法である。例えば、前記調製物は、針洗浄液によって腹膜に投与され得る。或いは、前記調製物は、内視鏡装置、ポンピング装置、ステント、オブラート、リザーバー、糊状剤、又は、フィルムを介して投与され得る。
【0092】
本発明の送達媒体を含有する医薬的又は獣医学的組成物は、標準的技術に従って調製され、そして、アルブミン、リポタンパク質、及びグロブリンなどのような安定性を増強するための糖タンパク質を含む、水、緩衝水、0.9%生理食塩水、0.3%グリシン、5%ブドウ糖、及びイソ−浸透圧性ショ糖溶液などが含まれ得る。これらの組成物は、通常のよく知られた滅菌法により無菌化され得る。その得られた水溶液は、使用のために包装されるか、又は、無菌的条件下で濾過され、そして凍結乾燥され、該凍結乾燥調製品は投与前に無菌水溶液と混ぜられてもよい。前記組成物は、近似的な生理学的条件が必要とされる場合には、pH調整及び緩衝化剤、及び緊張度調整剤などのような医薬的に許容し得る補助物質(例えば、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、及び塩化カルシウムなど)を含み得る。
【0093】
前記活性剤の性質に依存して、上述のものに類似した製剤が、美容目的のためにも適用されてもよく、それに従って前記賦形剤も変更される。
【0094】
組み合わせ治療
本技術の特に有意な適用は、多剤耐性修飾剤、及びイメ−ジング剤を含む治療剤の組み合わせを送達するための使用である。生物学的な活性成分の組み合わせが使用される場合、それらを送達するのに使用される粒子性構築物と使用される切断可能なリンカーによって前記送達の薬物動態学が制御される。標的組織又は臓器へのそのような薬剤の協調的送達は、これらのパラメータによって保証される。非−拮抗性、特に広範囲の濃度にわたって非−拮抗性である比率で、そのような薬剤を送達するのに、特に有利である。PCT公報PCT/CA02/01500において、記述されているように、試験管内テストの結果に基づくアルゴリズムが利用でき、そのような非−拮抗性比率が決定され得る。この公報で記されているように、特定比率での協調的送達は、一つの粒子性構築物中に単一よりも多くの活性成分を含むことによって効果的であり得るし、或いは、別々の粒子性構築物が使用され得る。この場合において別々の粒子性構築物が使用されるならば、各構築物の前記薬物動態学と放出が、所望の比率が維持されるように設計される。
【0095】
これらの技術は、前述の公報で詳細に記述されているが、簡潔に説明すると、好ましい方法はChou−Talalay中央値−効果法であり、該方法は特定の効果であるfを惹起する用量を与える次式を利用する:

D=D[f/(1−f)]1/m

ここで、Dは使用される活性剤の用量、fはその用量により影響を受ける細胞の割合、Dは効力を示す中央値効果のための用量、及び、又、mは用量−効果曲線の形を表す係数(mは、一次反応については1である)。
【0096】
この式は、Chou and Talalay, Adv. Enzyme Reg. (1984) 22:27−55; and by Chou, et al, in: Synergism and Antagonism in Chemotherapy (1991) 223−244, Chou and Rideout, eds., Academic Press: New York.によって記述されているように、複数活性剤効果式に基づいて、組み合わせ指数(CI)を計算するために更に操作可能である。この計算のためのコンピュ−タプログラム(CalcuSyn)が、Chou and Chouによって見出された("Dose−effect analysis with microcomputers: quantitation of ED50, LD50, synergism, antagonism, low−dose risk, receptor ligand binding and enzyme kinetics": CalcuSyn Manual and Software; Cambridge: Biosoft 1987)。
【0097】
二つの活性剤の組み合わせが更に、単独の医薬的ユニットとして、第三の薬剤との相乗的又は相加的相互作用を判定するために、使用されてもよい。更に、3つの薬剤組み合わせが、第四の薬剤などとの非拮抗性相互作用を判定するために、使用されてもよい。
【0098】
基礎をなす実験データは、一般的には、培養系の細胞又は無細胞系を用いてインビトロで決定する。組み合わせ指数(CI)は、図1Aに示されているように、上に説明した通りに濃度範囲の代用パラメータである影響を受けた細胞の割合(f)の関数としてプロットすることが好ましい。好ましい薬剤の組み合わせは、f値の相当範囲にわたって相乗作用または相加作用を示すものである。細胞の1%超が影響を受ける濃度範囲(すなわちfが0.01を上回る範囲)の少なくとも5%にわたって相乗作用を示す薬剤の組み合わせを選択する。全濃度のうちより多くの割合、例えば、fが0.2〜0.8である範囲の5%が、好都合なCIを示すことが好ましい。より好ましくは、この範囲の10%が好都合なCIを示す。さらにより好ましくは、fが0.2〜0.8である範囲の、20%のf範囲が、好ましくは50%超が、最も好ましくは少なくとも70%超が、組成物において用いられる。f値のかなりの範囲にわたって相乗作用を示す組み合わせについて、非拮抗的相互作用の強度を高め相乗作用が観察されるfの範囲を拡大させる最適な比を定めるために、種々の薬剤比において再評価してもよい。
【0099】
細胞が影響を受ける濃度範囲全体にわたって相乗性を有することが望ましいであろうが、多くの事例では、0.2〜0.8のf範囲において結果の信頼性が極めて大きいことが観察されている。従って、本発明の組み合わせによって示される相乗性は0.01又はそれ以上の広い範囲内で存在することは説明しておくが、相乗性は0.2〜0.8のf範囲で確立されることが好ましい。しかしながら、他のより高感度なアッセイ例えば生物発光又はクロ−ン原性アッセイを、0.8より大きなf値において相乗性を評価するのに使用可能である。
【0100】
最適の組み合わせ比率は、更に、3番目の薬剤との相乗的又は相加的相互作用を決定するために単一の医薬単位として用いてもよい。さらに、三薬剤の組み合わせを4番目の薬剤などとの非拮抗的相互作用を決定するために一つの単位として使用してもよい。
【0101】
上で説明したように、細胞培養系におけるインビトロ研究は、「適切な(relevant)」細胞で行う。細胞の選択は、薬剤の意図される医薬的使用法に依存する。最適の一つの適切な細胞株又は細胞培養型が、組成の基礎が本発明の範囲に入るために要求される非拮抗的効果を示す必要がある。
【0102】
例えば、本発明の頻度の高い実施形態においては、前記薬剤の組み合わせは、抗新生物法で利用されるものである。前記薬剤の組み合わせは、しばしば、白血病又はリンパ腫治療において意図される。そして、適切な選択は、試験される細胞と試験の性質から成る。とりわけ癌細胞株は、好適な対象であり、細胞死又は細胞分裂停止の測定は適切なエンドポイントである。以下に更に議論するように、好適な組み合わせを発見するための試みにおいては、細胞障害性又は細胞分裂停止とは違う徴候、標的細胞、及び、判定基準について、用いることが出来る。
【0103】
抗癌剤に関する判定のために、細胞株は、標準的な細胞株貯蔵所(例えばNCI又はATCC)から、学術的機関又は商業的供給源を含むその他の組織から、得てもよい。好ましい細胞株は、NCI/NIHのDevelopmental Therapeuticsプログラムによって同定された細胞株から選択される1又はそれ以上を含む。このプログラムによって使用される癌細胞株スクリ−ンは、現在、白血病、黒色腫、並びに、肺、大腸、脳、卵巣、乳房、前立腺及び腎臓の癌を代表する60の異なる癌細胞株を同定している。所望の濃度範囲における要求される非拮抗的効果は最適の一つの細胞型で示される必要があるが、好ましくはこの効果を少なくとも二つの細胞株で、より好ましくは三つの細胞株で、より好ましくは五つの細胞株で、及び、より好ましくは十の細胞株で示されることである。前記細胞株は、確立された癌細胞株又は患者試料から得られた初代培養でよい。前記細胞株は任意の種からのものでよいが、好ましい供給源は哺乳類とりわけヒトである。前記細胞株は、種々の実験条件下での選別により、及び/又は、外来性遺伝物質の付加又は欠失により、遺伝的に改変されてもよい。細胞株は、任意の遺伝子移入技法−ウイルス又はプラスミドに基づく形質移入法を含むがこれに限定されない−により形質移入されてもよい。この修飾は、特異的タンパク質若しくはペプチドの発現をコ−ド化するcDNA、プロモ−タ−若しくはエンハンサ−配列のような調節エレメント、又は、アンチセンスDNA若しくはRNAの移入を含んでもよい。遺伝的に操作された組織培養細胞株は、癌抑制遺伝子すなわちp53、pTEN及びp16を有する又は有しない細胞株、並びに、ドミナントネガティブ法、遺伝子挿入法、及び、他の選別法を用いて創製した細胞株を含んでよい。細胞の生存率を定量するために、好ましい組織細胞株を−例えば、抗癌剤の試験のために、P388、L1210、HL−60、MOLT−4、KBM−3、WeHi−3、H460、MCF−7、SF−268、HT29、HCT−116、LS180、B16−F10、A549、Capan−1、CAOV−3、IGROVl、PC−3、MX−I、及び、MDA−MB−231が含まれるがこれに制限されない−を使用してもよい。
【0104】
一つの好ましい実施形態において、所定の影響(f)とは、細胞培養物に対する細胞障害性物質の適用後の細胞死又は細胞分裂停止のことを言う。細胞の死又は生存率は、既知の方法を用いて測定してよい。
【0105】
組み合わせ療法が癌治療の場合に特に有用であるので、前記標的疾患又は状態が癌の場合には特定の活性剤が組み合わされて使用されることが支持される。例としての非制限的なセットには、以下が含まれる:癌細胞を増殖又は分裂させるシグナルを妨げる又は阻止する「シグナル伝達阻害剤(Signal transduction inhibitors)」;「細胞傷害剤(Cytotoxic agents)」;細胞が娘細胞に分裂する有糸分裂を伴う現象への発端を細胞に与える有糸分裂から、正常な細胞周期による細胞の発達、細胞の寿命を妨げる「細胞周期阻害剤(Cell cycle inhibitors)」又は「細胞周期調節阻害剤(Cell cycle control inhibitors)」;細胞周期のチェックポイント、例えば、S/G2チェックポイント、G2/Mチェックポイント及びG1/Sチェックポイントの正常な機能を妨げる「チェックポイント阻害剤(Checkpoint inhibitors)」;DNA複製及び転写に必要な酵素、トポイソメラーゼI又はII活性を妨げる、カンプトテシン等の「トポイソメラーゼ阻害剤(Topoisomerase inhibitors)」;チロシンキナーゼ活性を有する増殖因子レセプタ−の活性を妨げる「レセプタ−チロシンキナーゼ阻害剤(Receptor tyrosine kinase inhibitors)」;プログラム細胞死を促進する「アポトーシス誘発剤(Apoptosis inducing agents)」;必須代謝物(essential metabolite)によく似ており、そのためそれを含む生理反応を妨げる、ゲムシタビン又はヒドロキシ尿素等の「代謝拮抗剤(Antimetabolites)」;テロメア長を延ばし並びに細胞及びその複製能力の寿命を延ばす酵素、テロメラ−ゼの活性を妨げる「テロメラーゼ阻害剤(Telomerase inhibitors)」;ヒストン、細胞骨格タンパク質、転写調節因子、及び癌抑制遺伝子等の細胞タンパク質のリン酸化により細胞周期の異なる相間の主要な段階を制御するサイクリン依存性キナーゼを妨げる「サイクリン依存性キナーゼ阻害剤(Cyclin−dependent kinase inhibitors)」;「DNA損傷剤(DNA damaging agents)」;「DNA修復阻害剤(DNA repair inhibitors)」;腫瘍の増殖中に生ずる新たな血管の生成又は現存する血管の増殖を妨げる「抗血管新生剤(Anti−angiogenetic agents)」;並びに、ミトコンドリアの呼吸鎖機能を直接的又は間接的に破壊する「ミトコンドリア毒(Mitochondrial poisons)」。
【0106】
腫瘍の治療用の組み合わせ(併用)として特に好ましいのは、上記示した臨床上承認された組み合わせである。これらの組み合わせは、ヒトでの使用について既に承認されているので、適切な送達を保証するための再製剤化が特に重要である。
【0107】
組み合わせて使用され得る薬剤として好ましいものには、カルボプラチン、シスプラチン、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、マイトマイシンC、ミトキサントロン等のDNA損傷剤;5−フルオロウラシル(5−fluorouracil)(5−FU)又はFUDR、ゲムシタビン及びメトトレキセ−トを含むDNA修復阻害剤;カンプトテシン、イリノテカン及びトポテカン等のトポイソメラーゼI阻害剤;ブレオマイシン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エトポシド、パクリタキセル、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン及びビノレルビン等のS/G2又はG2/Mチェックポイント阻害剤;G1/初期Sチェックポイント阻害剤;G2/Mチェックポイント阻害剤;ゲニステイン、トラスツズマブ、ZD1839等のレセプタ−チロシンキナーゼ阻害剤;細胞傷害剤;アポトーシス誘発剤並びに細胞周期調節阻害剤が、含まれる。
【0108】
前記薬剤のうち一又はそれ以上の作用メカニズムは、公知でないかもしれないし、誤認されているかもしれない。薬剤の全ての相乗的又は相加的な組み合わせが、本発明の目的の範囲内にある。好ましくは、腫瘍の治療のため、細胞増殖が制御されないようにする一を越えるメカニズムを阻害する組み合わせが、本発明による使用のため選択される。例えば、本発明には、細胞周期中に特定の点(ポイント)を生ずる組み合わせを選択し、それによって非拮抗的な効果をもたらすことが含まれる。例えば、DNA損傷をもたらす活性剤を、代謝拮抗剤等のDNA修復を阻害する薬剤と組み合わせることができる。また、本発明には、他のことで細胞増殖をもたらすであろう多種多様な経路を遮断する組み合わせを選択することも含まれる。
【0109】
特に好ましい組み合わせは、DNA損傷剤とDNA修復阻害剤との組み合わせ、DNA損傷剤とトポイソメラーゼI又はポイソメラ−ゼII阻害剤との組み合わせ、トポイソメラーゼI又はトポイソメラーゼII阻害剤とS/G2又はG2/Mチェックポイント阻害剤との組み合わせ、G1/Sチェックポイント阻害剤又はCDK阻害剤とG2/Mチェックポイント阻害剤との組み合わせ、レセプタ−チロシンキナーゼ阻害剤と細胞傷害剤との組み合わせ、アポトーシス誘発剤と細胞傷害剤との組み合わせ、アポトーシス誘発剤と細胞周期調節阻害剤との組み合わせ、G1/S又はG2/Mチェックポイント阻害剤と細胞傷害剤との組み合わせ、トポイソメラーゼI又はII阻害剤とDNA修復阻害剤との組み合わせ、トポイソメラーゼI又はII阻害剤或いはテロメラーゼ阻害剤と細胞周期調節阻害剤との組み合わせ、トポイソメラーゼI阻害剤とトポイソメラーゼII阻害剤との組み合わせ、並びに、二つの細胞傷害剤の組み合わせである。
【0110】
組み合わせて使用されうる特定の薬剤には、シスプラチン(又はカルボプラチン)及び5−FU(又はFUDR)、シスプラチン(又はカルボプラチン)及びイリノテカン、イリノテカン及び5−FU(又はFUDR)、ビノレルビン及びシスプラチン(又はカルボプラチン)、メトトレキセ−ト及び5−FU(又はFUDR)、イダルビシン及びアラC(araC)、シスプラチン(又はカルボプラチン)及びタキソール、シスプラチン(又はカルボプラチン)及びエトポシド、シスプラチン(又はカルボプラチン)及びトポテカン、シスプラチン(又はカルボプラチン)及びダウノルビシン、シスプラチン(又はカルボプラチン)及びドキソルビシン、シスプラチン(又はカルボプラチン)及びゲムシタビン、オキサリプラチン及び5−FU(又はFUDR)、ゲムシタビン及び5−FU(又はFUDR)、アドリアマイシン及びビノレルビン、タキソール及びドキソルビシン、フラボプリド−ル(flavopuridol)及びドキソルビシン、UCN01及びドキソルビシン、ブレオマイシン及びトリクロールペラジン(trichlorperazine)、ビノレルビン及びエデルホシン、ビノレルビン及びスフィンゴシン(及びスフィンゴシン類似物)、ビノレルビン及びホスファチジルセリン、ビノレルビン及びカンプトテシン、シスプラチン(又はカルボプラチン)及びスフィンゴシン(及びスフィンゴシン類似物)、スフィンゴシン(及びスフィンゴシン類似物)及びダウノルビシン、並びに、スフィンゴシン(及びスフィンゴシン類似物)及びドキソルビシンが含まれる。
【0111】
一般に好ましい組み合わせには、FDAによって認可され臨床上有効であることが既に明らかにされている上に示した組み合わせ、及び、文献報告に基づいて更に提案される組み合わせが含まれる。本発明の方法において使用される候補薬剤は、これら特定の組み合わせに限定されないが、上に示した組み合わせは、適当な併用療法として開示されており、したがって、本発明の方法及び組成物において使用するのに好ましい。
【0112】
キット
本発明の組成物における治療剤は、個々の組成物中に別個に製剤化してもよく、その各々の治療剤は適切な送達媒体と安定に会合する。投与される治療剤の比率が治療標的において維持されるように、送達媒体の薬物動態が協調的である限りにおいて、これらの組成物を別々に被検体に投与することが可能である。よって、別々の容器に、一番目の治療剤と安定に会合した送達媒体を含む少なくとも一つの一番目の組成物、及び、二番目の容器に二番目の治療剤と安定に会合した送達媒体を含む少なくとも一つの二番目の組成物とを、含むキットを構築するのは有用である。それからキットの中に、容器をパッケージすることも可能である。
【0113】
前記キットは、少なくとも投与されるべき各組成物量の比率の記載を含む、組成物の被検体への投与の様式に関する使用説明書も含む。あるいは、又は付加的に、前記キットは、組み合わせにおける一つの容器の含量が他の容器のそれと正しい比率になるように、各容器内の組成物量が予め測定されるように構築される。あるいは、又は付加的に、前記容器は、目に見えるはかりにより適当量の分配が可能なように測定はかりで標識してもよい。前記容器それ自体を投与において使用出来るようにしていても良く、例えば、前記キットは別個のシリンジ中に各組成物の適当量を含んでいてもよい。予め製剤化された正しい比率の治療剤を含む製剤は、キット中に予めパッケージされたシリンジから直接、該製剤を投与するような方法で、パッケージされていてもよい。
【0114】
2以上の活性剤を含む送達媒体組成物の治療活性は、動物モデルにおいて投与後に、測定され得る。送達媒体組成物は他の疾患の動物モデルにも投与され得るが、好ましくは、前記動物モデルには癌を含む。免疫適格性及び免疫無防備状態、並びに、ノックアウト若しくはトランスジェニックモデルを含む、近交系、非近交系又は雑種由来の何れかのマウス及びラットのような齧歯類が、使用し得る。
【0115】
腫瘍を含む種々の状態の治療における効果を評価するための方法が、当業者に周知されている。
【0116】
非医薬的適用
多くのインクジェットプリンターのインクは、可溶性色素に基づいている。これらには、現在、二つの問題がある。第一に、前記可溶性色素は、「流出(bleeding)」する傾向があり、所望の水耐性ではなく、そして、第二に、紙の中に色素芯が乾燥する前に、それに対応して色強度における損失が生じる。この問題を克服する一つの戦略が不溶性ピグメント粒子の使用である。しかしながら、可溶性色素から得られた色範囲は、微粒子型内の前記ピグメントによるものに対応しない。本発明は、ナノ粒子型の中に取り込まれるであろう疎水性リンカーへの色素の結合を許容するであろう。本技術の特に好ましい実施形態では、別のやり方で可溶性色素を取り込むための結合スキ−ムで、200nmの範囲にある狭いサイズ分布の粒子を形成するためのフラッシュナノ沈殿(Flash Nano Precipitation)と連関する。前記フラッシュナノ沈殿は、色混合を効果的にする単一粒子中への複数色の取り込みを可能とする。
【0117】
多くの産業的及び生物学的適用においては、50nmから2,000nmのサイズ範囲の蛍光標識された粒子を有することが望ましい。これらは、ほとんど一般的に、色素が吸収された格子が重合したポリマー性乳濁液から、作成される。或いは、蛍光種が、前記粒子の表面上で反応する。代表的粒子が収載されたPolysciences, Inc.の粒子カタログ(ウェッブサイト:polysciences.com)を、参照されたい。前記吸収経路は、前記球内に保持されるのに十分な程度に疎水性である色素に関しては制限があり、そして、化学的反応経路は、単一の球に付着可能な蛍光性分子の数に関して制限がある。その上、これラートレ−サ粒子の産物は、粒子形成の独立したステップと、それから前記蛍光性種を導入するためのポストプロセシングを要求する。本発明においては、広範囲の蛍光色素をそれが疎水性になるように結合させることが可能である。それから、フラッシュナノ沈殿法を用いることにより、高濃度の蛍光、狭い粒径分布、制御された粒径、及び、調整された表面機能性の、蛍光性粒子を産生することが可能である。
【0118】
多くの適用において、時間の経過につれて放出される芳香剤が望ましい。例えば、洗濯用布柔軟剤、噴霧脱臭剤、及び、芳香剤。本発明において、芳香剤の結合及びそれらを高度に分散した形で微粒子内に保持することが、可能である。前記芳香剤は、結合の加水分解性切断により、又は、光切断結合の光切断により、時間をかけての放出が可能である。
【0119】
個人用途の日焼け止めは、UV吸収種を適用することにより、実施される。例えば、Chemical and Engineering News (2005) 83:18−22 を参照されたい。微粒子システムが、UV光の吸収及び散乱についての付加的利点を有し、それゆえ、これらの製剤の性能を高めることが、見出されている。幾つかの効率的なUV吸収体は、水への曝露後、皮膚に残存するには、易溶性が高過ぎる。本発明においては、UV吸収体は、持続性製剤内で、ナノ粒子内に取り込み可能なように疎水性成分と結合され得る。前記粒子表面上への適切な親水性ブロックの取り込みにより、陽イオン及び水素結合モノマ−を含み、前記ナノ粒子製剤が皮膚に時間的に延長されて接着することが可能であろう。
【0120】
以下の実施例は、本発明を説明するために提供されるものであり、本発明を限定するものではない。
【実施例1】
【0121】
ビタミンEコハク酸(VitES)へのパクリタキセルの結合
280mgのVitESを20mlのジクロロメタン中に溶解し、0℃にした。それから、27μLのジイソプロピルカルボジイミドを添加し、次いで、150mgのパクリタキセルと33mgのジメチルアミノピリジンを添加した。その反応容器を室温まで暖め、そして16時間反応させておいた。その反応溶液を0.1N塩酸で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、そして、減圧中で乾燥させた。その産物を、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)と核磁気共鳴(NMR)解析により、特徴付けし、パクリタキセル−VitESであることを確認した。
【実施例2】
【0122】
末端カルボン酸を有するポリカプロラクトン へのパクリタキセルの結合
A.79mgの末端がカルボン酸基であるPCL(MW2.2kg/モル、PCL2.2)を、20mlのジクロロメタン中に溶解し、0℃にした。26μLのジイソプロピルカルボジイミドを添加し、次いで、146mgのパクリタキセルと32mgのジメチルアミノピリジンを添加した。その反応容器を室温まで暖め、そして16時間反応させておいた。その反応溶液を0.1N塩酸で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、そして、減圧中で乾燥させた。その反応産物中の過剰量のパクリタキセルを、酢酸アミルからの再結晶により、減少させる。その産物を、HPLCとNMR解析により、特徴付けし、PCL−パクリタキセルであることを確認した。
【0123】
B.段落Aの前記手順はまた、PCL1.45及びPCL3.5を用いて実行された。
【実施例3】
【0124】
メトキシポリエチレングリコールポリカプロラクトン(mPEG−PCL)及びパクリタキセル−VitEのナノ粒子
対照として、THF中に15mgのメトキシポリエチレングリコールポリカプロラクトン(メトキシポリエチレグリコール分子量5kg/モル、PCL分子量7kg/モル)(mPEG5−PCL7)を加え、mPEG5−PCL7の1wt%溶液(w:w)を作成した。それから、その溶液に8mgのパクリタキセルと10mgのVitESを添加し、そして、120ml/分の水に対し12ml/分の流速でボルテックスミキサーを用いて混合した。凡そ20分間の混合後、結晶が可視化され、そして動的光散乱(DLS)により粒子が検出されなかった。
【0125】
20mgのmPEG5−PCL7をTHFに溶解し、0.5wt%溶液を作成した。それから、実施例1に記述されたように調製された17.4mgのVitESを加えた23mgのパクリタキセル−VitESを、添加し、0.58wt%パクリタキセル−VitES溶液を作成し、そして120ml/分の水に対し12ml/分の流速でボルテックスミキサーを用いて混合した。DLSによって測定されたように、126nmの平均直径のナノ粒子が形成された。17時間後の前記ナノ粒子サイズは、134nmであった。可視性の結晶又は凝集は、前記試料中に観察されなかった。
【実施例4】
【0126】
メトキシポリエチレングリコールポリカプロラクトン及びパクリタキセル−PCLのナノ粒子
mPEG5−PCL6をTHFに溶解し、0.5wt%溶液(w:w)を作成した。それから、実施例2に記述されているように調製されたパクリタキセル−PCLを、前記溶液に添加すると、0.5wt%(w:w)の結合体が作成された。その得られた溶液を120ml/分の水に対し12ml/分の流速でボルテックスミキサーを用いて混合すると、平均直径75nmのナノ粒子が生じた。60時間後の前記ナノ粒子サイズは、93nmであった。
【実施例5】
【0127】
リファンピシン−VitES
ビタミンEコハク酸(1210国際単位/g)(2273.0mg、4.28mMol)を、20mlの無水塩化メチレン中に溶解した。0℃で、この溶液に対し、20mlの無水塩化メチレン中に溶解されたDIPC(654.9μl,4.28mMol)、リファンピシン(1762.1mg,2.14mMol)、及びDMAP(806.1mg,6.55mMol)を添加した。得られた溶液を室温まで加温し、そして、16時間放置した。その反応混合物を0.1N HClで洗浄し、乾燥させ、減圧下で蒸発させると、赤色の粉末として目的産物が得られた。13CとH NMR及びHPLCで、その機能又はリファンピシン−VitESを確認した。
【実施例6】
【0128】
比較例
非抱合型のリファンピシンと、ブロック共ポリマーポリ(エチレングリコール)−b−ポリ(カプロラクトン)(PEG−b−PCL)(5k−5k)をボルテックス混合することによりナノ粒子を獲得することを試みた。溶媒(ジメチルホルムアミド)中のリファンピシンの初期濃度が12wt%を上回る時のみ、リファンピシンが沈殿した。この濃度の下で、最終産物の明瞭な赤色溶液が産生された。動的光散乱によっては、凡そ10nm(自動相関検出器の分解能の下方限界)のサイズを上回るナノ粒子は見られなかった。
【0129】
12wt%を上回る濃度の非抱合型のリファンピシンについては、4つのストリ−ムのミキサーを用いて、ナノ粒子を作成可能である。前記実験の条件は、以下の通りである。

薬剤:リファンピシン
ポリマー:PS−b−PEO(1k−3k)
溶媒:DMF

ストリ−ム1:3ml DMF中に、341mgリファンピシン(12wt%)及び56.9mgPW−b−PEO(2wt%)
ストリ−ム2:pH5.5バッファ−溶液
ストリ−ム3:pH5.5バッファ−溶液
ストリ−ム4:pH5.5バッファ−溶液

混合条件:
ストリ−ム1:12ml/分
ストリ−ム2、3、4:36ml/分

DLS結果:
混合後2時間:
平均半径=170.69nm
幅=108.09nm
多分散指数=0.402


混合後4時間:
平均半径=532.68nm
幅=335.68nm
多分散指数=0.397
【0130】
2時間後の170nmから4時間後の532nmへの前記粒子の成長は、前記薬剤が、非抱合型においては、安定的なナノ粒子を形成できないことを示している。
【実施例7】
【0131】
リファンピシン−VitES粒子
実施例6に記述したように、実施例5からの結合型リファンピシンを、ブロック共ポリマーポリ(エチレングリコール)−b−ポリ(カプロラクトン)(PEG−b−PCL)(5k−5k)を混合した。DMF中の結合型リファンピシンの初期濃度が4wt%の時、安定型の粒子が形成された。そして、前記粒子は、DLSで示されるように安定であった。その結果を以下の表に示す。

【実施例8】
【0132】
ジカルボキシルPCLへのリファンピシンの結合
ジカルボキシルPCL(5kDa)(10700mg、2.14mMol)を、20mlの無水塩化メチレンに溶解した。0℃で、この溶液に対し、20mlの無水塩化メチレン中に溶解されたDIPC(654.9μl,4.28mMol)、リファンピシン(1762.1mg,2.14mMol)、及びDMAP(806.1mg,6.55mMol)を添加した。得られた溶液を室温まで加温するために氷層から取り出し、そして、16時間放置した。その反応混合物を0.1N HClで洗浄し、乾燥させ、減圧下で蒸発させると、赤色の粉末として目的産物が得られた。13CとH NMR及びHPLCで、リファンピシン−PCLとしての構造を確認した。
【実施例9】
【0133】
(エチレングリコール)−b−ポリ(caprolactone)及びリファンピシン−PCLからのナノ粒子
実施例6に記載されたように、上の実施例8からのリファンピシンを、ブロック共ポリマー ポリ(エチレングリコール)−b−ポリ(カプロラクトン)(PEG−b−PCL)(5k−5k)と混合した。DMF中のリファンピシン−PCLの初期濃度が4wt%の時、安定したナノ粒子が形成された。そして、前記粒子は、DLSにより、安定であることが示された。
【実施例10】
【0134】
エストラジオール−VitES結合体
α−トコフェロールスクシナート(530.8g/mol)を、0度で、無水ジクロロメタン中に溶解した。1,3−ジイソプロピルカルボジイミド(DIPC,152.9g/mol)、エストラジオール(272.39g/mol)、及び、4−(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP,123.1g/mol)を、α−トコフェロールスクシナートとの関係で1.5:0.25:1.5のモル比で、前記溶液に添加した。その反応混合物を室温まで加温し、そして、前記結合体へのほぼ完全な転換を達成するために、70時間おいておいた。残渣のDMAPを除去するための反応終結に引き続き、0.1N HCl洗浄を実施した。前記溶液を乾燥させて蒸発させ、そして固体産物、エストラジオール−VitESを単離した。その産物エストラジオール−VitEを、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)と核磁気共鳴(NMR)解析により、特徴付けした。
【実施例11】
【0135】
エストラジオール−VitESナノ粒子の形成
対照:エストラジオール及びメトキシ−ポリ(エチレングリコール)−b−ポリ(ε−カプロラクトン)(mPEG−PCL、5,000−2,900g/モル、各々)を、各成分が0.3wt%溶液になるように、重量比1:1でTHF中に溶解した。得られた溶液を、ガスタイトシリンジに装填し、そして、拘束衝突ジェット(CIJ)撹拌機を用いて、抗−溶媒(水)でTHFと水の各々について注入速度12ml/分と120ml/分で、衝突撹拌する。エストラジオール積載ナノ粒子は、凝集についての視覚的知見が示すように、粒子形成後すぐに(<30分間)、不安定になった。DLS解析は、これらの凝集の存在のため、実行できなかった。
【0136】
エストラジオール−VitES積載ナノ粒子を産生するために、拘束衝突ジェット(CIJ)撹拌機での、標準的撹拌法を行った。前記ブロック共ポリマーを加えた前記エストラジオール−VitESを、前述の重量比でTHF中に溶解し、そして、DI水と衝突撹拌させた。動的光散乱(DLS)解析で示されるように、得られたナノ粒子は、48時間の時間経過の間で、半径の増加が10%未満であることが証明された。反応混合物が、30日以上安定性のあるエストラジオール−VitESに対するVitESのモル比が3:1で構成される場合、粒子において付加的安定性が観察された。
【実施例12】
【0137】
エストラジオール−VitES及びパクリタキセル−VitESを含有するナノ粒子
エストラジオール−VitES結合体を、実施例10のように調製する。パクリタキセル−VitESの結合体を、実施例1に従って調製する。エストラジオール−VitES及びパクリタキセル−VitESを含有するナノ粒子を作成するのに、まず、30mgのメトキシポリエチレングリコールポリカプロラクトン(5kg/モルのメトキシポリエチレングリコール分子量、7kg/モルのPCL分子量)(mPEG5−PCL7)を、3mlのTHF中に溶解し、1wt%溶液(w:w)のmPEG5−PCL7を得た。それから、前の実施例で記述したように調製された8.5mgのパクリタキセル−VitESと6.5mgのエストラジオール−VitESを、15mgVitESの存在するTHF中にあるmPEG5−PCL7溶液に添加した。エストラジオール−VitESに対するパクリタキセル−VitESの重量比は、1.27である。得られた溶液を、前記ボルテックスミキサーを用いて、120ml/分での水に対し12ml/分の流速で混合しすると、DLSによって測定されるような、平均直径107nmのナノ粒子が産出された(下のプロットを参照)。前記試料中には、可視性の結晶又は凝集は観察されなかった。

【実施例13】
【0138】
新生物(腫瘍)薬剤含有ナノ粒子
疎水性ポリマーパクリタキセル結合体が、Greenwaldらの上掲(1996)において説明された方法(ここでは、水溶性タキソール−ポリ(エチレングリコール)プロドラッグの形成に取り組んでいる)に従って調製される。ポリ(エチレングリコール)を使用する代わりに、我々は、活性剤結合体を形成するために、カルボン酸末端基のあるポリ(カプロラクトン)を使用する。Greenwaldによって使用された前記の反応を図1に示した。
【0139】
図1に描かれている複合体2は、Greenwaldの研究で観察されているように、ヒトの全血中で2時間の加水分解半減期を実現した。前記のGreenwaldの研究での加水分解動力学は、pH5.7のDI水中でのt1/2>72時間から、pH7.4のPBS緩衝液中でのt1/2>5.5時間まで、変化した。本発明では、前記プロドラッグが、前記ナノ粒子中の前記疎水性コア中にカプセル化されており、そして、それゆえ、前記水活性が前記ナノ粒子中の前記疎水性コア中では、より低くなるため、異なる加水分解速度(例えば、より緩徐な)及び半減期(例えば、より長い)が実現される。前記ナノ粒子コアにおいて単独重合体へのパクリタキセル結合が存在することは、遊離パクリタキセルの結晶化部位として作用し、活性剤保持の増加をもたらす。
【0140】
同一の理論的根拠を、シスプラチン−ポリマー複合体を形成するのに使用する。まず、シスプラチン−ポリマー複合体を形成するために、シスプラチンを疎水性単独ポリマーの単一酸又は二酸末端基と反応させ、それから、前記安定化2ブロック共ポリマーを添加し、そして、最終的にPEG−保護粒子を前記ボルテックス撹拌機を用いて形成する。前記シスプラチン複合体は、Ohyaらの上掲(2000)の研究に基づいて、調製される(ここでは、図2に示されるように、ポリ(エチレングリコール)シスプラチン複合体が、6員キレート型ジカルボン酸の配位結合に基づいて調製され得る)。
【実施例14】
【0141】
ポリマーに基づく担体内の相乗的組み合わせの製剤;1以上の前記薬剤が水及び脂質の溶解性の双方に不向きである場合
本実施例の目的のために、24の活性剤の組み合わせを同定した。これらには、パクリタキセルとシスプラチン, エトポシドとシスプラチン, タキソテ−ルとドキソルビシン、及び、パクリタキセルとドキソルビシンを含有する組み合わせが含まれる。これらは非−拮抗性であることが示されている特定の比率で製剤化される。
【0142】
疎水性ポリマー活性剤結合体に基づくカプセル化
疎水性生分解性ポリマーを用いた疎水性活性剤−ポリマー結合体の形成は、拡散よりもむしろ化学的加水分解の速度によって決定される活性剤遊離速度が実現されるであろう、という仮定がなされる。それに加えて、前記ポリマーの前記疎水性ブロックへの前記活性剤の共有結合性付着は、前記ナノ粒子のオストワルド成熟を阻害し、且つ、前記製剤の安定性を改善するであろう。それゆえ、選択されるリンカーが下に説明されるようなものであっタートしても、前記活性剤と前記ポリマーとの間の種々の他の化学的リンカーが、ここで説明されるように熟考される。種々のこれらリンカーの任意のものを用いたポリマーへの活性剤の結合は、本書に記述された方法や当業者に既知で利用可能な他の方法に従って、達成される。
【0143】
パクリタキセル−疎水性ポリマー結合形成
新規なパクリタキセル−高分子結合体を、疎水性ポリマーを用いて調製する。本書で説明するアプローチは、前記の2ブロック共ポリマーを用いたカプセル化の前に、単独ポリマーバックボーンへのパクリタキセルの結合に基づく。まず、パクリタキセル−ポリマー結合体を形成するために、パクリタキセルを疎水性単独ポリマーと反応させ、それから、前記安定化2ブロック共ポリマーを添加し、そして、最後に、PEG−保護ナノ粒子を前記ボルテックス撹拌機を用いて形成する。PCLと末端カルボン酸基を有するポリ(ラクチド)(PLA−COOH)について特に調べたが、好適な他のポリマーとしては、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)−COOH;ポリ(ラクチド)−COOH;ポリ(ε−カプロラクトン)−COOH、及び、ポリ(β−ベンジル−アスパルタート)−COOHがある。
【0144】
mPEG−パクリタキセルプロドラッグを作成するために、Greenwald法に従って、パクリタキセル−PLA結合体を調製する。PLA−COOH(16,000g/モル)をジクロロメタン中に溶解し、3wt%溶液を作成する。その得られた溶液を0℃にし、そして、ジイソプロピルカルボジイミド(DIPC)を、DIPC:PLA−COOHのモル比を1.36:1で添加する。それから、パクリタキセルを、パクリタキセル:DIPCのモル比を1:1で添加する。その反応混合物をそれから室温まで加温し、そして16時間反応させておく。0.1N塩酸を用いて洗浄し、その溶液を乾燥させ、そして、減圧中で蒸発させる。その得られた固体を2−プロパノ−ルから結晶化し、そして、該産物をNMRを用いて解析する。それから、前記の純粋な活性剤の代わりに前記活性剤結合体を用いて、前記の製剤化及び特徴付けのセクションにおいて概説された前記方法に従って、前記活性剤結合体のナノ粒子を形成する。この実験は、パクリタキセル−ポリマー:ブロック共ポリマー重量比1:1、1:3及び1:10についても繰り返す。その得られたナノ粒子は、前記の製剤化及び特徴付けのセクションにおいて概説されたように、サイズ、活性剤含有量、及び、試験管内での放出速度について分析する。
【0145】
シスプラチン−疎水性ポリマー複合体形成
カタオカは、ポリ(α,β−アスパラギン酸)の単独重合体、及び、ポリ(エチレングリコール)−ポリ(グルタミン酸)ブロック共ポリマーとの、水中でのシスプラチン複合体の形成を実証し、凡そ14時間のシスプラチン放出時間のナノ粒子が得られた。Nishiyama, N., et ah, J. of Controlled Release (2001) 74:83−94を参照; Nishiyama, N., et al, Cancer Research (2003) 63:8977−8983についても参照されたい。
【0146】
もう一つの実施形態においては、疎水性ポリマーを用いて、シスプラチン−ポリマー結合体を製剤化する。この実施形態においては、シスプラチンは、前記二ブロック共ポリマーを用いたカプセル化の前に、単独ポリマー末端基に結合する。PCLと末端に二酸基を有するポリ(ラクチド)単独ポリマーは、下に、記述されている。本方法は、ポリ(エチレングリコール)シスプラチン複合体を形成するために、Ohya, Y., et al, (2000)(上掲)に基づくものである。
【0147】
二酸のジエチルエステル末端のポリ(ラクチド)(PLA−Da(Et)):0.5mMoleのポリ(ラクチド)を、10mlの無水THF中に溶解し、そして、ナトリウム及びナフタレン(1.5mMole)と混合する。Arガス下で4時間の還流後、その反応混合物中に、10mlのTHF中のジエチルクロロプロピルマロン酸エステル(3mMole)を添加し、そして、Ar下で4時間還流する。濃縮とジエチルエ−テルを用いた再沈殿により、その最終産物を得る。その構造を確認するために、H−NMRを用いた。
【0148】
上記方法から得られたPLA−Da(Et):PLA−Da(Et)に付着したシスプラチンを、10mlのエタノ−ル(水溶液、95%)及び243mgのNaOH中に溶解し、そして90分間還流する。その得られた溶液を、90分間の還流とジエチルエ−テルを用いた再沈殿の後、陰イオン交換樹脂カラム(QAE−セファデックスA−25、1ml/分の流出で水の後に2M−NaCl)にかける。その溶液をそれから、前記の製剤化及び特徴付けのセクションにおいて記述されたように凍結乾燥させ、PLA−Da(Na塩)を得た。H−NMRを用いて、前記反応を確認する。シスプラチン(50mg)を水に溶解し、60℃で3時間撹拌し、その後に、0.1M硝酸銀溶液0.22mlを0.22mlを添加し、60℃で6時間混合する。沈殿した塩化銀を除去するために、その溶液を濾過し、そして、その濾液を減圧下で乾燥させる。その産物をTHF中に溶解し、そして、PLA−Da(Na塩)を添加し、60℃で24時間反応させておく。その試料を精製するためにゲル濾過クロマトグラフィを用い、そして、前記の製剤化及び特徴付けのセクションにおいて記述されたように、より高い分子量画分を凍結乾燥させる。前記複合体中の白金量を測定するために、原子吸光分析を使用する。
【0149】
パクリタキセルとシスプラチンの共製剤化
パクリタキセル(若しくはパクリタキセル−ポリマー結合体)及びシスプラチン−ポリマー結合体の各々をカプセル化の成功に続き、両薬剤を一つの担体にカプセル化する。
【0150】
パクリタキセル(若しくはそれに相当するポリマー結合体)及び前記シスプラチン複合体の両方をカプセル化する前記ナノ粒子を、以下の手順により形成する。各成分(活性剤又は複合体型中の)THF中に溶解し、各活性剤について0.3wt%溶液を作成する。mPEG−PCL:活性剤の重量比が1:1で、mPEG−PCLを添加する。一つの活性剤の代わりに、前記シスプラチン−ポリマー複合体と前記パクリタキセル(若しくはパクリタキセル−ポリマー結合体)を用いて、前記の製剤化及び特徴付けのセクションにおいて概説したように、前記ナノ粒子をそれから形成する。前記実験は、シスプラチン:パクリタキセルのモル比1:5及び5:1について、並びに、活性剤:ブロック共ポリマーの重量比1:1、1:5、及び、1:10について、繰り返す。その得られたナノ粒子は、前記の製剤化及び特徴付けのセクションにおいて概説されたように、サイズ、活性剤含有量、及び、試験管内での放出速度について分析する。
【実施例15】
【0151】
安定性ポリマーに基づく製剤を用いたパクリタキセルの制御された送達
本実施例は、本書に記載された方法を介して形成されたポリマーに基づくナノ粒子からのパクリタキセルの安定で制御された放出を、証明する。
【0152】
物質貯蔵と安定性
パクリタキセル製剤を調製し、凍結乾燥し、そして、ショ糖:ナノ粒子の重量比60:1でショ糖を用いて、最初の粒径(凍結乾燥させる前に測定する)で水に再分散させる。
【0153】
前記凍結乾燥物質の長期貯蔵を証明するために、1ヶ月間にわたり、凍結乾燥型の前記パクリタキセルナノ粒子の安定性を評価する。
【0154】
前記の製剤化及び特徴付けのセクションにおいて記述されたように前記ナノ粒子形成法を介して得た凍結乾燥物質を、4℃で貯蔵する。試料を最初の1ヶ月の間に1週間毎に収集し、それから、月毎に、前記の製剤化及び特徴付けのセクションにおいて概説されたように、サイズ、活性剤含有量、及び、試験管内での放出速度について分析する。これと同一の手順を、室温で貯蔵された試料についても繰り返す。
【0155】
インビトロの活性剤放出テスト
4時間を上回る半減期を実現するために、前記ナノ粒子からのインビトロのパクリタキセル放出を制御する。
【0156】
パクリタキセル含有凍結乾燥ナノ粒子を、水に、標的活性剤濃度が1〜5mg/mlになるように溶解する。前記溶液を、血清中に2〜10倍希釈し、そして、37℃でインキュベ−トする。一定分量を、1、2、4、8、16及び24時間の間隔で収集し、そして、パクリタキセルについてアッセイする。ポリマー結合活性剤から、タンパク質と遊離活性剤を分離するために、バイオゲルA−0.5Mゲル濾過カラムを用いる。前記パクリタキセル濃度を、前記の製剤化及び特徴付けのセクションに記述されているるように、測定する。
【0157】
生体内での活性剤放出テスト
生体内でのパクリタキセル放出速度は、マウスに10mg/kgのパクリタキセル用量で前記活性剤ナノ粒子を静脈内注射して評価する。前記標的パクリタキセルの半減期は、4時間又はそれ以上である。前記ポリマー製剤の血漿活性剤除去特性は、活性剤/ポリマー比、並びに、疎水性/ブロック共ポリマー比の関数として、決定される。
【0158】
パクリタキセル含有凍結乾燥ナノ粒子を、水に、標的活性剤濃度1〜5mg/mlで溶解する。前記溶液を、0.2ml容積にパクリタキセル用量10mg/kgを実現するのに必要とされる生理食塩水で希釈する。用量20 mg/kgでのマウスへの静脈内投与に続いて、血漿試料を、1、2、4、8、16及び24時間の間隔で収集し、そして、パクリタキセルについてアッセイする。前記パクリタキセル濃度を、溶媒抽出試料のHPLC分析により測定する。
【実施例16】
【0159】
マウスへの静脈内注射後も維持されてるポリマー製剤についての調整されたPK(薬物動態)
シスプラチン及びパクリタキセルを含有するナノ粒子の生体内での放出速度について調べる。前記ナノ粒子内での前記活性剤比は、試験管内での放出速度の結果により影響を受けている。
【0160】
パクリタキセル及びシスプラチン含有凍結乾燥ナノ粒子を、水に、標的活性剤濃度1〜5mg/mlで溶解する。前記溶液を、0.2ml容積にパクリタキセル用量10mg/kgを実現するのに必要とされる生理食塩水で希釈する。マウスへの静脈内投与に続いて、血漿試料を、1、2、4、8、16及び24時間の間隔で収集し、そして、パクリタキセルについてアッセイする。前記パクリタキセルとシスプラチン濃度を、HPLC分析と原子吸光分析により各々測定する。静脈内注射後に前記相乗的比が維持されるまで、前記実験を、種々のパクリタキセル:シスプラチン比率で、及び、種々のポリマー組成物について、繰り返した。
【実施例17】
【0161】
パイロット効力研究における固形腫瘍モデルでの有意な抗腫瘍活性の証拠
この実施形態においては、遊離活性剤カクテルと比較してポリマー結合CombiPlex(商標)製剤について、ヒト固形腫瘍異種移植片モデルにおいて、改善された抗腫瘍活性を評価する。
【0162】
二つの活性剤について試験管内で非−拮抗性を示し且つ調和した放出速度をも示すモル比のポリマー結合パクリタキセル及びシスプラチン含有CombiPlex(商標)製剤を、100−200mgの固形腫瘍を保持するマウスに静脈内投与する。前記の選択された腫瘍は、有意な非−拮抗作用と好ましくは比率依存性が観察される試験管内スクリ−ニングデータに基づく。用量範囲を見出すための研究(各群3マウス)を、最大耐用量を確立するために、非−腫瘍保持マウスでまず行う。効力研究については、最小限の二つの異なる用量レベルのCombiPlex(商標)及び遊離活性剤カクテルを、凡そ最大耐用量で且つ該CombiPlex(商標)製剤中における活性剤の調和した用量で、マウス(各群6マウス)に、静脈内投与する。二つの治療スケジュ−ルを評価する(毎週×3及びQ4D×3)。動物について、毒性の徴候(体重減少及びストレスの物理的徴候)をモニタ−する。
【実施例18】
【0163】
更なるポリマー性ナノ粒子製剤
上述の方法に従い、更なるCombiPlex(商標)製剤を、種々の抗悪性腫瘍剤の組み合わせを利用して、調製する。パクリタキセルとエトポシド、パクリタキセルとタキソテ−ル、パクリタキセルとドキソルビシン、シスプラチンとエトポシド、シスプラチンとタキソテ−ル、シスプラチンとドキソルビシン、エトポシドとタキソテ−ル、エトポシドとドキソルビシン、ドキソルビシンとタキソテ−ルのような薬剤組み合わせを、調製し、そして評価する。所望の放出速度を実現するために、前記化学的結合の変更及び調整を行う。
【0164】
上記の実施例で説明した活性剤を別の活性剤と置換し得ることを、当業者は理解するであろう。例えば、とりわけカルボプラチン、オキサリプラチン、テトラプラチン、白金−DACH、オルマプラチンのような他の白金類似体を、シスプラチンと置換し得る。上に述べたように、活性剤は、頻繁に、同じクラスの他の活性剤で置換される。しかしながら、しばしば、本書で説明した種々の前記活性剤のうち幾つかは、本書の材料及び方法に従ってナノ粒子製剤内で組み合わされる。頻繁に、これらのナノ粒子製剤は、1又は2又は3又はそれ以上の活性剤の組み合わせを含む。
【図面の簡単な説明】
【0165】
【図1】Greenwald, et al, J. Med. Chem. (1996) 39:424−431 の方法によって調製された、ポリ(エチレングリコール)に基づくパクリタキセル プロドラッグの描画。
【図2】Ohya, et al, Polymers for Adv. Tech (2000) 11 :635−641 の方法によって調製された、ポリ(エチレングリコール)に基づくシスプラチン複合体の描画。
【図3】活性剤/薬の組み合わせを含む本開示の模範的な送達媒体の描画。(1)ポリマーの調製、(2)該ポリマーの混合、及び(3)該送達媒体の投与、を含む3つのステップの描画。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両親媒性安定化剤、及び、
以下の式の抱合体を含む微粒子構築物
(活性成分−リンカー)−疎水性成分 (1)
但し、nは、1〜100の整数であり;及び、
但し、「活性成分(active)」は、所望の活性を有する化合物を意味し;
「リンカー」は、共有結合、有機分子の二価の残基、又は、キレート剤であり;且つ
「疎水性成分」は、水溶液に難溶性である有機分子の残基である。
【請求項2】
少なくとも二つの異なる活性成分を含むことを特徴とする請求項1に記載の構築物。
【請求項3】
前記活性成分が、治療剤又は診断剤であることを特徴とする請求項1に記載の構築物。
【請求項4】
前記活性成分が、色素、インク、殺虫薬、除草剤、蛍光プローブ、日焼け止め、芳香剤、又は、香味化合物であることを特徴とする請求項1の構築物。
【請求項5】
前記疎水性成分が、疎水性ポリマーであることを特徴とする請求項1の構築物。
【請求項6】
前記疎水性成分が、親油性の生物製剤であることを特徴とする請求項1の構築物。
【請求項7】
前記疎水性成分が、ビタミンE、ビタミンA、ビタミンK、又は、レチノールであることを特徴とする請求項6の構築物。
【請求項8】
前記疎水性ポリマーが、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリカプロン酸、又は、ポリメチルベンジラートであることを特徴とする請求項5の構築物。
【請求項9】
前記両親媒性安定化剤が、共ポリマー、又は、ゼラチンであることを特徴とする請求項1の構築物。
【請求項10】
前記共ポリマーが、メトキシポリエチレングリコール(mPEG)−ポリカプロラクトン(PCL)、mPEG−ポリスチレン、mPEG−ポリブタジエン、ポリアクリル酸−ポリブチルアクリラート、又は、mPEG−ポリラクタートであることを特徴とする請求項9の構築物。
【請求項11】
前記リンカーが、加水分解によって、pHの変化によって、温度変化によって、放射によって、又は、酵素反応によって、切断されることを特徴とする請求項1の構築物。
【請求項12】
前記リンカーが、加水分解によって切断されることを特徴とする請求項11の構築物。
【請求項13】
前記リンカーが、pHの変化によって切断されることを特徴とする請求項11の構築物。
【請求項14】
前記リンカーが、温度変化によって切断されることを特徴とする請求項11の構築物。
【請求項15】
前記リンカーが、放射によって切断されることを特徴とする請求項11の構築物。
【請求項16】
前記リンカーが、酵素反応によって切断されることを特徴とする請求項11の構築物。
【請求項17】
前記リンカーが、共有結合であることを特徴とする請求項11〜16の何れかの構築物。
【請求項18】
前記結合が、エステル又はアミド結合であることを特徴とする請求項17の構築物。
【請求項19】
前記リンカーが、有機分子の二価の残基であることを特徴とする請求項11〜16の何れかの構築物。
【請求項20】
前記分子が、酵素的切断部位、又は、光分解部位を含むことを特徴とする請求項19の構築物。
【請求項21】
前記リンカーが、キレーターであることを特徴とする請求項1の構築物。
【請求項22】
前記二つの異なる活性成分が、治療剤であることを特徴とする請求項2の構築物。
【請求項23】
前記治療剤(複数)が、非拮抗的比率で存在することを特徴とする請求項22の構築物。
【請求項24】
5μm未満の直径であることを特徴とする請求項1〜10の何れかの構築物。
【請求項25】
50〜700nmの範囲の直径であることを特徴とする請求項24の構築物。
【請求項26】
50〜500nmの範囲の直径であることを特徴とする請求項25の構築物。
【請求項27】
50〜200nmの範囲の直径であることを特徴とする請求項26の構築物。
【請求項28】
ナノ沈殿(Nano Precipitation)によって調製されることを特徴とする請求項1の構築物。
【請求項29】
乳化−拡散(emulsification-diffusion)によって調製されることを特徴とする請求項1の構築物。
【請求項30】
乳化−蒸発(emulsification-evaporation)によって調製されることを特徴とする請求項1の構築物。
【請求項31】
粉砕(milling)によって調製されることを特徴とする請求項1の構築物。
【請求項32】
請求項11の前記構築物から活性成分を放出するための方法であって、前記リンカーを切断することを含む方法。
【請求項33】
前記構築物が少なくとも二つの活性成分を含み、且つ、該活性成分の放出が前記切断の制御によって調整されることを特徴とする請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記活性成分が、治療剤であることを特徴とする請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記治療剤(複数)が、非拮抗的比率で放出されることを特徴とする請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記活性成分が、1又はそれ以上の、蛍光プローブ、芳香、香味化合物、除草剤、殺虫薬、又は、殺菌剤(fungicides)であることを特徴とする請求項32に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−506780(P2008−506780A)
【公表日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−522647(P2007−522647)
【出願日】平成17年7月19日(2005.7.19)
【国際出願番号】PCT/US2005/025549
【国際公開番号】WO2006/014626
【国際公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(506356221)セレーター ファーマスーティカルズ、インク. (4)
【出願人】(507020808)ザ トラスティーズ オブ プリンストン ユニバーシティ (1)
【Fターム(参考)】