説明

活性成分を局所塗布するための包装装置

製剤を粘膜上に局所塗布するための包装装置の使用方法において、前記製剤は勃起不全の処置のための血管拡張活性源を有し、前記包装装置は、少なくとも1つの指先を収容する開放基部(2)を有する本体(1)と、少なくとも1つの開口部を有する塗布ヘッド(3)と、を備えている。前記本体は、前記製剤(7)が充填された空洞部(6)を形成する可動手段(5)を更に有し、前記可動手段(5)は、前記可動手段に圧力が加えられた際、前記開口部(4)を経由して前記製剤を放出させるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤活性成分の製剤を粘膜上に塗布するのに用いられ、更に詳細には、勃起不全処置のために陰茎の粘膜上に血管拡張活性成分を塗布する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
勃起不全またはインポテンスは、満足のいく性交渉ができる十分な勃起を得ることおよび/または勃起を維持することができないという特徴がある。
【0003】
インポテンスの原因は複合的であり、生理的または心理的な要因に起因する。
【0004】
このような原因のうち、一方では中枢神経系または会陰部の障害が挙げられる。他方、血管の問題、神経変性疾患、または外傷性障害が、一時的または永続的なインポテンスの原因となる場合もある。
【0005】
勃起不全治療の分野において、様々な治療処置が存在する。
【0006】
1つの可能な解決手段は内部人工器官であるが、しかしながら、このような外科的処置が必要な埋込体は高価であり、また常に満足が得られるものではない。
【0007】
勃起不全の初期の処置法は、薬物の投与である。勃起は陰茎動脈の血管拡張を含むことが知られているので、インポテンスの生理的要因に対しては、しばしば血管拡張活性成分を塗布することにより対処される。
【0008】
血管拡張活性成分の投与経路には特有の問題がある。実際、可能な最短の待ち時間を経て、活性成分の投与後できるだけ早く血管拡張効果が達成されることが必要である。したがって、勃起不全処置のために、尿道内投与のシステムあるいは血管拡張活性成分の海綿体注射が開発されてきている。しかしながら、尿道内投与は、患者にとってしはしば複雑かつ不快な医療用具の使用を伴う。海綿体注射に関して、このような投与方法は言うまでもなく、とりわけ繊細でありかつ患者にとって通常我慢しづらいものである。塗布時の快適さに関するこのような問題により、クリーム状、ジェル状、または軟膏状のものを直接陰茎および/または陰茎包皮上に経粘膜的に局所塗布するための製剤が開発されている。
【0009】
局所経粘膜的な投与方法は、これに関係する用途に適しており、1つ以上の浸透剤または吸収促進体を組合わせた血管拡張剤を処方した様々な製品を市場で見つけることができ、この浸透剤または吸収促進体は、内部で血管拡張剤がその生理的役割を果たす海綿体内へ血管拡張活性成分が移動することを促進かつ加速するのに役立つ。
【0010】
勃起不全に対して一般に用いられる血管拡張活性成分の中で、プロスタグランジン、とりわけプロスタグランジンE1(PGE1)またはプロスタグランジンE2(PGE2)を例として挙げることができる。
【0011】
勃起不全に対応する局所経粘膜製剤の塗布は、このような調合を含むチューブから出した適量の製品を患者が手で拡げることにより行われる。このような手による塗布はある種の問題を引き起こす。まず第1に、手または指と製品とが繰り返し接触することは、このような接触により製品の汚染を引き起こすため、衛生的な観点からは必ずしも望ましくない。他の重要な問題は、血管拡張剤を手で塗布することにより、指の肌に製品の残りが留まることである。したがって、仮に手袋を着用しないかまたは塗布後速やかに手を洗わない場合、手に血管拡張剤が存在することにより、局所的な血液の流入を生じ得る。さらに、局所経粘膜製剤は活性成分の移動を促進する1以上の物質を含むことが知られているので、手の内部を含めて前記活性成分は短時間に吸収される。したがって、手の内部で血液の流入が生じ、このような製品を塗布する際、使用者は指に不快感、場合によっては痛みさえ伴う。陰茎粘膜上へ局所塗布するために、「ウエハー」タイプ、すなわち亀頭用の非常に薄い速分解性フィルムを用いる器具が存在する。前記フィルムは、前記フィルムが陰茎粘膜に一度塗布されると吸収される血管拡張活性成分を有している。しかしながら、このような「ウエハー」を製造するのは複雑である。
【0012】
上述したクリーム、ジェル、ポマード、および軟膏を対象とする包装および塗布システムは通常容器の形状からなり、任意的に圧力が加えられ、更に任意的に、製品を処置領域に向けて導く機能を有する通常チューブ形状の塗布器が結合される。このような種類の包装および塗布装置は、活性成分を満足に吸収させるためには一定期間のマッサージが効果的であるという血管拡張剤の局所塗布の特性に対して最適に対応せず、そしてこれは貫通剤が存在したとしても当てはまる。粘膜上への塗布という点について言えば、従来技術に記載された上述の装置は、衛生上の明らかな理由により、直接接触して塗布することは許されない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
結果として、包装されかつ粘膜上へ活性成分、とりわけ血管拡張活性成分を更にとりわけ陰茎粘膜上に、即時に局所塗布することを意図する適当な装置が必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的のため、本発明は、粘膜上に活性成分を有する製剤を局所塗布するための包装装置に関するものであり、上述した装置は、少なくとも1つの指先を収容可能な開放基部(2)を有する本体(1)と、少なくとも1つの開口部(4)を有する塗布ヘッド(3)と、を備え、前記本体は、製剤(7)が充填された空洞部(6)を形成する可動手段(5)を更に有し、可動手段(5)は、可動手段に圧力が加えられた際、開口部(4)を経由して製剤を放出させるようになっている。
【発明の効果】
【0015】
このような装置を使用することは多くの利点を有する。粘膜上において、塗布しようとする箇所を除き活性成分と使用者の皮膚との間に接触がない。したがって、望まない場所に活性成分が供給されることによる副作用がない。特定の使用方法において、このような装置を実施することにより、患者以外の人が上述した活性成分を塗布することにも適する。
【0016】
一の図面は、本発明による装置の特定の実施の形態における長手方向断面を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本体(1)上に位置する開放基部(2)は、1以上の指先を塗布器内に配置するのに適した寸法と形状とを有し、これにより活性成分の局所塗布を促進する。したがって、開放基部(2)は、使用者の指に適するよう環状断面を優先的に有している。この開口の直径は大きな意味を持つものではなく、一般的な課題にあわせて選択されても良い。
【0018】
前記装置の空洞部(6)内に収納された活性成分を有する製剤(7)を投与するため、塗布ヘッド(3)に少なくとも1つの密封可能な開口部(4)が設けられている。開口部(4)の大きさや形状は大きな意味を持たず、これらは例えば活性成分を有する上述した製剤の粘度に基づいて選択されてよい。前記開口部(4)は、例えば円形または卵形の形状からなる、単一の開口または複数の開口からなっていてもよい。この開口の密封は当業者に知られている任意のシール手段(8)を介してなされるが、塗布時に怪我をする危険を避けるため、一切の残留物が塗布ヘッドから突出したまま残ることがないように留意すべきである。実際、本発明の用途は、とりわけ敏感で傷付きやすい組織である粘膜への塗布であると意図している。したがって、開口を密封する粘着方式、ねじ方式、または溶着方式のキャップが、シール手段(8)、すなわち塗布器が使用される際に引張られるキャップとして考えられる。単一の開口の場合、ねじまたはクリップにより適所に保持されうるキャッププラグが考えられるであろう。
【0019】
塗布ヘッド(3)は、塗布の際の正確さと快適さを保証するため、好ましくは半球形状からなっている。しかしながら、平坦な塗布ヘッド、若干凸状となった塗布ヘッド、またはそれらの組合せも考えられる。とりわけ、面取りされた半球形状が好ましく、このような形状により、より良く開口を密封することができる。しかしながら、留意しなければならないことは、このような形状が過度に突出する角度を有すると塗布時に使用者または患者を傷付けやすく、したがって避けなければならないことである。
【0020】
一般に、本発明による装置は、塗布の際粘膜に接触することが意図される場所に関して鋭角部または突出する残余部を有さない。実際、本発明による用途は粘膜用であることが意図されるので、これによりあらゆる怪我を避けることができる。本発明による塗布は、健康または負傷した粘膜、好ましくは健康な粘膜に関する。
【0021】
可動手段(5)は、装置本体内に設けられ、かつ活性成分を有する製剤(7)を含む空洞部(6)を形成し、また使用の際、活性成分を放出するためのピストンとして作動する。使用者は、本体の開放基部内に1以上の指を収納するとともに長手軸に沿って圧力を及ぼし、これにより一旦シールが取り除かれた開口を通じて活性成分を含む製剤を放出する。
【0022】
可動手段(5)は、装置本体との接合部における最善の密封を確保するように構成されており、これによりあらゆる活性成分を含む製剤の漏出を避けることができる。この可動手段は、展開可能な環状膜が任意的に装着されている環状ピストンであっても良い。このピストンには、本体の壁に沿って滑動する2つのへり部(lips)が更に取付けられていても良い。ピストンの場合、凸状ピストンが考えられ、これは塗布ヘッドの形状に適合し、これにより、上述したピストンが一旦停止位置に到達すれば、空間に含まれる製剤を可能な限り完全に放出することができる。また、膜または変形可能な壁であって、活性成分を含む製剤が充填された空間を形成するとともに、一旦上述した膜または変形可能な壁に圧力が及ぼされて変形された場合、開口を通じて活性成分を含む製剤を放出できるものも考えられる。上述したピストンに用いることができる材料は、空間内に含まれる製剤を構成する薬剤活性成分と共存する必要がある。したがって、この材料は、例えば、ポリオレフィンまたはエラストマーの群から選択されて良い。とりわけ、ポリエチレン(PE)は特に適しており、更に優先的には高密度ポリエチレン(HDPE)が適している。
【0023】
またこのような装置の使用は、またとりわけ活性成分を粘膜上に塗布するのに適していることが理解される。とりわけ、勃起不全処置のために血管拡張活性成分を塗布する際、このような装置を使用することにより上述した不都合を回避することができる。したがって、このような活性成分を塗布することを意図する陰茎粘膜の皮膚を除き、活性成分がいかなる皮膚にも接触することなく塗布を完了することができる。
【0024】
また本発明は、勃起不全の局所治療のための製剤処方内に含まれる活性成分を陰茎粘膜に以下の装置を用いて塗布する勃起不全処置方法に関し、この装置は、少なくとも1つの指先を収容可能な開放基部(2)を有する本体(1)と、少なくとも1つの開口部(4)を有する塗布ヘッド(3)と、を備え、前記本体は、製剤(7)が充填された空洞部(6)を形成する可動手段(5)を更に有し、可動手段(5)は、可動手段に圧力が加えられた際、開口部(4)を経由して製剤を放出させるようになっている。
【0025】
本発明の枠組み内において、「陰茎粘膜」とは陰茎亀頭の表面を意味する。これは、内側粘膜とともに外側粘膜、すなわち尿道口に関係してもよい。本発明による使用法により、手または指を直接接触させることが望ましくないかまたは実用的でない他の粘膜に、活性成分を局所投与することも考えられる。したがって、本発明の使用法により、口、肛門、または膣の粘膜が関係してもよい。膣粘膜に関して、このような装置を使用することにより、抗生物質または抗真菌剤を局所塗布するのにとりわけ良く役立つ。また、本発明による上述した装置を使用することにより、例えば口内炎および/または歯肉炎の処置のため、活性成分を経口使用することも考えられる。
【0026】
本発明に関係する活性成分は、少なくとも潜在的に粘膜上に局所塗布できれば、どのような活性成分であっても良い。活性成分は、優先的には血管拡張剤からなっている。適当な血管拡張活性成分の中で、フェントラミンまたはモキシシリトのようなα1ブロッカーおよび/またはα2ブロッカーおよびPDE−5(ホスホジエステラーゼ)阻害薬を挙げることができる。さらに、より優先的には、活性成分は少なくとも1つのプロスタグランジン、好ましくはプロスタグランジンE1アルプロスタジルを有している。上述した装置を勃起不全に対して使用する場合、本発明の枠組内で、局所経路により血管拡張作用を生じさせるあらゆる活性成分が考えられる。したがって、血管拡張成分は、アルプロスタジル、ミソプロストール、パパベリン、およびフェントラミンからなる群から選択されても良い。血管拡張成分は、また例えばEP980245に記載されているようなミソプロストールであっても良い。前に示したように、膣粘膜上へ塗布する場合、供給される活性成分は、抗生物質または抗真菌剤からなる群から選択されても良い。
【0027】
本発明による使用法に用いられる血管拡張活性成分は、当業者に知られた標準的な合成物により構成されても良い。適当な製剤としては、ジェルまたはクリーム形状からなる製剤であっても良く、これは周辺温度が約20℃で粘度が45,000cPに達し、血管拡張成分を効果的な量含んでいる。本発明による使用法は、活性成分を含む合成物を放出するとともに粘膜上に局所塗布するのに適切な粘度となることが、前記製剤により確実にされる観点から、あらゆる血管拡張成分の製剤に適している。適切な製剤は、特許EP980245に記載されたミソプロストールのような血管拡張活性成分を含んでいる。
【0028】
本体および可動手段により形成される空洞部内に含まれる活性成分を有する製剤の体積は、対応する治療法により選択されて良い。勃起不全処置の場合、この製品の量は約0.1ml乃至3mlであり、優先的には約0.2ml乃至2mlであり、さらに優先的には約0.5ml乃至1mlである。しかしながら、この量は包装システムの大きさにより限定され、前記システムは指で操作される装置として使用されるように作られているため、それ自体が1以上の指の大きさに適合する。
【0029】
勃起不全の治療のため、局所的に供給される製剤の体積は、患者の使用の際における快適さおよび便利さを確保するように選択されて良いが、一方で十分な勃起を確保するため、効果的な量の血管拡張活性成分を供給することを確保する。この場合、処置される粘膜表面は相対的に制限されるが、製剤の分量、すなわち活性成分の分量を失いやすいことから、血管拡張活性成分を有する製剤の体積があまりに大きくなることは不適切である。
【0030】
有利には、本発明による包装および塗布システムの本体は、前記システムを不透明なものとするために、薬剤により色付けがなされていても良く、これにより紫外線により活性成分が劣化する危険性を避けることができる。前記システムの本体は、ポリオレフィン、ポリエステル、およびスチレン化合物の群から選択される高分子化合物のような硬い材料からなっている。有利には、前記本体はポリプロピレンからなっている。
【0031】
勃起不全の治療のために使用される枠組み内で、包装および塗布システムは、その内部の量と同様に、ユニット塗布するような大きさを有していても良い。このような単回投与により、固有の利点とこの適用される治療に必要なものとが結び付けられる。したがって、活性成分は外部の劣化因子から保護され、その場で形成される開口部により患者にとって最適な衛生状態が確保される。
【0032】
本発明による包装および塗布システムは、ブリスター包装内または袋内に個々に包装されても良く、例えば保護ガス中で、任意的にアルミめっきを施されても良い。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明による装置の特定の実施の形態を示す長手方向断面図。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
勃起不全の処置のための血管拡張活性成分を有する製剤を粘膜上に局所塗布するのに用いられる包装装置の使用方法において、
前記包装装置は、
少なくとも1つの指先を収容可能な開放基部(2)を有する本体(1)と、
少なくとも1つの開口部(4)を有する塗布ヘッド(3)と、を備え、
前記本体は、前記製剤(7)が充填された空洞部(6)を形成する可動手段(5)を更に有し、前記可動手段(5)は、前記可動手段に圧力が加えられた際、前記開口部(4)を経由して前記製剤を放出させるようになっている、方法。
【請求項2】
前記開放基部は環状断面を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記塗布ヘッドは凸形状、好ましくは半球形状を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記可動手段はピストンである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記開口部は複数の開口部からなる、請求項1乃至4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記開口部は、粘着方式、ねじ方式、またはクリップによる支持方式のキャップのようなシール手段(8)を用いることにより覆われている、請求項1乃至5のいずれかに記載の方法。

【公表番号】特表2008−514326(P2008−514326A)
【公表日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−534017(P2007−534017)
【出願日】平成17年9月27日(2005.9.27)
【国際出願番号】PCT/EP2005/054857
【国際公開番号】WO2006/035032
【国際公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【出願人】(500033483)ピエール、ファーブル、メディカマン (73)
【Fターム(参考)】