説明

活性成分を空気中に送達するための組成物およびその利用

【課題】空気中への分散による空気処理に適切な組成物、定量送出によって、毒性及び危険性が低く、望ましくない構成成分の使用を回避できる組成物、透明で単相中に存在する組成物、並びに揮発性有機化合物(VOC)が少量で空気処理に適切な組成物の提供、組成物をスプレーした際の任意の活性成分の安定供給。
【解決手段】活性成分を空気中へ送達するためのスプレー組成物であって、活性成分を、グリコールエーテルを含有しているキャリア組成物と混合して含有しており、上記グリコールエーテルは、一般式(I)
【化1】


(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基であり、nは2または3であり、nが2の場合、Rはメチル基でない。)で表され、キャリア組成物の20℃における蒸気圧が14Pa未満であるスプレー組成物、ならびにその利用を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性成分を空気中に送達するための組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
日常には、空気を処理することが望ましい、数多くの機会が存在する。例えば、悪臭を遮蔽又は排除するには、空気中に香料を送出することが有益と考えられる。また、空気中の微生物を排除して衛生的にするためには、少量の殺微生物活性成分を空気中に送出することが有益と考えられる。
【0003】
空気処理では、空気中に活性成分を送出するのに、液体のスプレーが好適な手段である。しばしば、液体のスプレーは、塵埃、花粉、空中浮遊アレルゲン及び煙粒子などの化学種との凝集によって、空気中からの空中浮遊汚染物質の除去を加速させるというさらなる利点を有する。
【0004】
空気処理製剤のその他の望ましい性質は、揮発性有機化合物(Volatile Organic Compounds、以下、VOCと略記することがある)を含有する製品に関する規則に適合することである。例えば、米国カリフォルニア州における一般消費者製品規則(第2項)(規則)は、販売又は製造時に指定限界を超えてVOCを含有する消費者製品の販売、供給、販売の申込み、又は製造を取り締まる。
【0005】
VOCという用語は、当業者に公知であり、VOC含量を測定するための方法は、上記規則及びその他に記載されているもの(例えば、Air Resource Board Method 310「Determination of Volatile Organic Compounds(VOC) in Consumer Products(消費者製品中の揮発性有機化合物の測定)」(CARB法310)を使用する)を含む。VOCは、標準圧力で約260℃までの範囲内で沸騰する有機化合物である。
【0006】
エアロゾル、圧電素子デバイス、液体蚊取り、及び静電スプレー装置に適切な液体スプレー空気処理用の組成物におけるVOC含量は、組成物の非水性溶媒によって実質的に決定される。非水性溶媒の相対的な寄与を低減させるため、しばしば、組成物の含水量を増加させる方法がとられるが、この方法は、組成物中に含まれる可能性があり且つ上述のようなスプレー装置の性能に悪影響も及ぼす可能性がある、活性成分の種類及び範囲に厳しい制約を課す。
【0007】
空気処理用の液体の組成物は、当技術分野で公知であり、特に静電スプレーを使用することによって空気を処理する組成物が公知であるが、一般的に、規則が組成物のVOC含量を制限する場合には、空気中に分散させるのには不適切であったり、低容量スプレー分散には不適切な物理的性質(不適切な粘度及び/又は抵抗率)を有していたり、構成成分(例えば、植物油)が予測不可能な純度を有していたり、例えば単相を維持するために界面活性剤を含有することによって、望ましくない毒性を有していたり、その他の理由でヒト及び環境に有害であったりする。
【0008】
特許文献1及び2は、静電スプレーによって送出される製剤を対象とし、組成物は、「Exxsol」D180/220、「Solvesso」150、Aromasol H、ケロセン(典型的には不適切なVOC含量を有する)、落花生油、及び大豆油(典型的には、物理的性質が不適切である、及び/又は、純度にばらつきがある)を溶媒として含む。
【0009】
特許文献3は、その蒸気圧がVOC規則により組成物を不適切なものにし得る、オレイン酸を含む組成物を開示する。
【0010】
特許文献4は、20℃で不適切な蒸気圧を有するジメチルイソソルビド及びプロピレングリコールと、高粘度を克服するための機械的ポンプによる送出がない場合には、低容量静電スプレーに望ましくない物理的性質を有するグリセロール及びポリエチレングリコールとを含む、静電スプレー用の溶媒を開示する。
【0011】
特許文献5は、エタノール、パーフルオロオクタノール及びパーフルオロデカリン(高い蒸気圧を有する)、又は水(高い表面張力を有する)を含む、静電スプレー用の製剤を開示する。
【0012】
特許文献6は、イソプロピルアルコール、フェニルエチルグリコール、1,3−ブタンジオール、1,2−プロパンジオール等の、高過ぎる蒸気圧、不適切な物理的性質、望ましくない毒性を有し、無臭ではないもの、又はこれらの性質の組合せを有するものを含む、静電スプレー用の組成物を開示する。
【0013】
特許文献7は、静電スプレーによって分散させるための液体の組成物に関し、シクロヘキサノンを含むバルク溶媒と、少なくとも1種の低級アルカノール(不適切な蒸気圧を有する)を含むグリコール溶媒の組合せを開示する。
【0014】
特許文献2は、超低容量静電スプレーに特に適切な組成物を開示する。開示されたバルク溶媒には、「Solvesso」150、「Isopar」L、及び「Exxsol」D180/220が含まれ、その抵抗率は高く、アルコール及びケトン系溶媒と混合することによって低下することが開示されており、このことは、安全上の理由により不適切になり得る。
【0015】
特許文献8は、グリコールエーテル、3−メトキシ−3−メチルブタノール、イソドデカン、ジエチルフタレート及びミリスチン酸イソプロピル(不適切な蒸気圧を有する)を含む静電スプレーに適切な組成物を開示するが、VOC規制に適切と考えられる溶媒を明らかにしていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0066946号明細書(1982年12月15日公開)
【特許文献2】欧州特許出願公開第0003251号明細書(1979年8月8日公開)
【特許文献3】欧州特許出願公開第0006293号明細書(1980年1月9日公開)
【特許文献4】欧州特許出願公開第0224352号明細書(1987年6月3日公開)
【特許文献5】国際公開第00/066206号パンフレット(2000年11月9日国際公開)
【特許文献6】欧州特許出願公開第0523960号明細書(1993年1月20日公開)
【特許文献7】オーストラリア特許第592970号明細書(1990年2月1日公開)
【特許文献8】国際公開第03/000431号パンフレット(2003年1月3日国際公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、VOC規制に適合し、任意の活性成分を安定して空気中に送出でき、特に静電スプレー装置によるスプレーに好適な空気処理用の液体の組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の第1の態様は、活性成分を空気中へ送達するためのスプレー組成物であって、
一般式(I)
【0019】
【化1】

【0020】
(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基であり、nは2又は3であり、但し、nが2の場合にはRはメチル基ではない。)
で表されるグリコールエーテルを含有しているキャリア組成物に混合された活性成分を含有し、該キャリア組成物の20℃における蒸気圧が14Pa未満であるスプレー組成物を提供する。上記キャリア組成物は、二塩基エステルおよび/またはジプロピレングリコールをさらに含有してもよい。さらに、上記スプレー組成物は、抵抗率調節成分、および必要に応じて表面張力調節成分をさらに含有してもよい。
【0021】
また、本発明の第2の態様は、スプレー組成物を、空気中へ噴霧する工程を包含する、活性成分を空気中へ送達するための方法を提供する。
【0022】
また、本発明の第3の態様は、活性成分を空気中へ送達するための、一般式(I)で表されるグリコールエーテルの使用を提供する。
【0023】
また、本発明の第4の態様は、上記スプレー組成物が封入されているリザバを提供する。
【0024】
また、本発明の第5の態様は、上記スプレー組成物が封入されているリザバ、上記スプレー組成物を受容するように該リザバと連結したスプレー電極、該スプレー電極の近傍に配置された放電電極、および、該スプレー電極と該放電電極との間に電界を印加する印加部を備えたスプレー装置を提供し、該スプレー電極と該放電電極との間に電界が印加されることによって、該リザバから供給された該組成物が該スプレー電極にて空気中へ液滴形態にてスプレーされる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、VOC規制に適合し、任意の活性成分を安定して空気中に送出でき、特に静電スプレー装置によるスプレーに好適な、空気処理用の方法および組成物を提供できる。より具体的には、噴射剤やエタノールなどのような望ましくない構成成分の使用を回避でき、ヒトや環境にもたらす毒性及び危険性が低く、空気処理に適切な方法および組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
<組成物>
本発明の組成物は、活性成分を空気中へ送達するための組成物であって、
一般式(I)
【0027】
【化2】

【0028】
(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基であり、nは2又は3であり、但し、nが2の場合にはRはメチル基ではない。)
で表されるグリコールエーテルを含有しているキャリア組成物に混合された活性成分を含有しているスプレー組成物である。
【0029】
本発明のスプレー組成物は、抵抗率調節成分、および必要に応じて表面張力調節成分をさらに含有してもよい。また、上記キャリア組成物は、二塩基エステルおよび/またはジプロピレングリコールをさらに含有してもよい。
【0030】
本明細書及び特許請求の範囲において、「蒸気圧」とは、「CARB法310(Air Resource Board Method 310)による、任意の水性成分を除外した組成物に関して計算された蒸気圧」を意味する。
【0031】
また、本明細書で言及される特許文献を含めた全ての文献は、可能な限り最も十分な範囲まで、参照により本明細書に組み込まれる。
【0032】
本発明の好ましい組成物の一例としては、a)低蒸気圧成分、b)抵抗率調節成分、c)活性成分及びd)表面張力調節成分の含有量が、以下に示す範囲であるものが挙げられる。
【0033】
【表1】

【0034】
本明細書中において、用語「低蒸気圧成分」は、本発明を実現し得ることが本発明者らによって見出された成分をいい、上述したキャリア組成物の必須成分である。
【0035】
本発明の組成物において、a)低蒸気圧成分は、一般式(I)で表されるグリコールエーテルと、さらに任意選択で二塩基エステルおよび/またはジプロピレングリコールとを含む。
【0036】
すなわち、a)低蒸気圧成分は、一般式(I)で表されるグリコールエーテルを必須成分として含み、必要に応じて、二塩基エステルを含み、これら以外にさらに、任意成分としてジプロピレングリコールを含んでいてもよい。
【0037】
グリコールエーテルを表す前記一般式(I)において、Rは炭素数1〜4のアルキル基であり、該アルキル基は直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよいが、直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基が例示できる。
【0038】
また、前記一般式(I)において、nは2又は3である。但し、nが2の場合にはRはメチル基ではない。
【0039】
一般式(I)で表されるグリコールエーテルとしては、ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコールn−プロピルエーテル(以下、DPnPと略記することがある)、ジプロピレングリコールn−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールエチルエーテル、トリプロピレングリコールn−プロピルエーテル、トリプロピレングリコールn−ブチルエーテル等が例示でき、ジプロピレングリコールn−プロピルエーテルが好ましい。
【0040】
一般式(I)で表されるグリコールエーテルは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0041】
上記二塩基性エステル(以下、DBEと略記することがある)としては、グルタル酸ジメチル、アジピン酸ジメチルが例示できる。
【0042】
上記二塩基性エステルは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0043】
本発明においては、上記二塩基性エステルが、グルタル酸ジメチル及びアジピン酸ジメチルからなる群から選択される一種以上であることが好ましい。
【0044】
上記二塩基性エステルが、グルタル酸ジメチルとアジピン酸ジメチルとの混合物である場合には、該混合物中のグルタル酸ジメチルの比率は5〜80質量%で、アジピン酸ジメチルの比率は20〜95質量%であることが好ましい。
【0045】
本発明の組成物におけるa)低蒸気圧成分の含有量の下限値は、55質量%であることが好ましく、57.5質量%であることがより好ましく、59質量%であることが特に好ましい。また、a)低蒸気圧成分の含有量の上限値は、99.45質量%であることが好ましく、90質量%であることがより好ましく、89質量%であることが最も好ましい。
そして、a)低蒸気圧成分の含有量は、上記の下限値と上限値との間のいずれかの値であることが好ましい。
【0046】
本発明の組成物が一般式(I)で表されるグリコールエーテルを含有する場合、該組成物における上記グリコールエーテルの含有量の下限値は、35質量%であることが好ましく、40質量%であることがより好ましく、42質量%であることが特に好ましい。また、上記グリコールエーテルの含有量の上限値は、90質量%であることが好ましく、88質量%であることがより好ましく、87.5質量%であることが特に好ましい。そして、上記グリコールエーテルの含有量は、上記の下限値と上限値との間のいずれかの値であることが好ましい。
【0047】
本発明の組成物が上記二塩基性エステルを含有する場合、該組成物における上記二塩基性エステルの含有量の下限値は、5質量%であることが好ましく、6質量%であることがより好ましく、12質量%であることが特に好ましい。また、上記二塩基性エステルの含有量の上限値は、85質量%であることが好ましく、84.5質量%であることがより好ましく、36質量%であることが特に好ましい。そして、上記二塩基性エステルの含有量は、上記の下限値と上限値との間のいずれかの値であることが好ましい。
【0048】
本発明の組成物がジプロピレングリコールを含有する場合、該組成物におけるジプロピレングリコールの含有量の下限値は、1質量%であることが好ましく、4質量%であることがより好ましく、4.4質量%であることが特に好ましい。また、ジプロピレングリコールの含有量の上限値は、15質量%であることが好ましく、10質量%であることがより好ましく、9質量%であることが特に好ましい。そして、ジプロピレングリコールの含有量は、上記の下限値と上限値との間のいずれかの値であることが好ましい。
【0049】
b)抵抗率調節成分としては、組成物の抵抗率を調節できる、当業者に公知の成分が使用でき、水、電解質が例示できる。
【0050】
一般的に水は、最小限の電解質を含んでおり、その抵抗率は、典型的には1×10Ωm以上、より典型的には1×10Ωm以上、特に典型的には1×10Ωm以上、最も典型的には1×10Ωm以上であり、例えば、1×10Ωm以上、さらには1×10Ωm以上となることが多い。
【0051】
本発明において水としては、脱イオン水や、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)用の水と、同等以上の純度のものが好ましい。
【0052】
電解質は、例えば、水溶液として添加できる。前記電解質としては、酢酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム、アスコルビン酸、クエン酸、酢酸が例示できる。本発明の組成物が電解質を含有する場合、該組成物中の水成分の含有量に対する電解質の含有量の比率は、0.1〜2質量%であることが好ましく、0.1〜1質量%であることがより好ましい。
【0053】
b)抵抗率調節成分は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0054】
本発明の組成物におけるb)抵抗率調節成分の含有量の下限値は、0.5質量%であることが好ましく、0.7質量%であることがより好ましく、1質量%であることが特に好ましい。また、b)抵抗率調節成分の含有量の上限値は、5質量%であることが好ましく、4.5質量%であることがより好ましく、4質量%であることが特に好ましい。そして、b)抵抗率調節成分の含有量は、上記の下限値と上限値との間のいずれかの値であることが好ましい。
【0055】
本発明において、c)活性成分としては、目的に応じて任意の成分が選択でき、好ましいものとしては、香料、空気清浄化薬剤が例示できる。
【0056】
前記香料としては、エッセンシャルオイル及びその他のフレグランスオイルが例示できる。そして、前記香料としては、これらオイルに含まれる全ての画分(成分油)のうちの一部のみを使用しても良い。
【0057】
前記香料の好ましいものとして、より具体的には、コバノブラッシノキ(Melaleuca)のオイル、テルピネン−4−オール型等のティーツリーオイル;ネペタカテリア(Nepeta cateria)、ネペタカテリアの精製油等のイヌハッカオイル;ネペタラクトンを含む画分等のイヌハッカオイルの画分;タチジャコウソウ(Thymus vulgaris)のオイル等のタイムオイル;チモールを含む画分等のタイムオイルの画分等を含むものが例示できる。
【0058】
また、フレグランスオイル等の香料は、例えば、骨格の鎖長が異なる複数種の化合物を含む混合物や、複数種の立体異性体を含む混合物であることが多いが、このような混合物を使用してもよい。
【0059】
上記の中でも、前記香料としては、ティーツリーオイル、イヌハッカオイル及びタイムオイルからなる群から選択される1種以上のオイルの成分油が好ましい。
【0060】
本発明の組成物がフレグランスオイルを含有する場合、該組成物におけるフレグランスオイルの含有量は、5〜35質量%であることが好ましい。
【0061】
そして、好ましいc)活性成分としては、好ましくは55〜95質量%、より好ましくは57.5〜90質量%、さらに好ましくは59〜78質量%の濃度でフレグランスオイルを含むものが例示できる。
【0062】
また、フレグランスオイルとしては、20℃で270Pa以下の蒸気圧を有するものが好適である。
【0063】
前記空気清浄化薬剤としては、活性空気クリーナー成分、活性空気フレッシュナー成分、活性抗菌成分、活性抗真菌成分、活性抗アレルギー成分が例示でき、好ましいものとしてより具体的には、ポリヘキサメチレンビガウアニドポリマー、ポリヘキサメチルグアニドポリマー、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩化物、オクチルデシルジメチルアンモニウム塩化物、クロルヘキシジン、ジグルコン酸クロルヘキシジン、塩化ベンザルコニウム、次亜塩素酸ナトリウム、2−フェニルフェノール、ポリエチレングリコール300、2−ベンジル−4−クロロフェノール、2−フェノキシエタノール、グルタルアルデヒド、フタルアルデヒド、クロロキシレノール、トリクロロフェノール、フェノール、銀塩(特に、水溶性銀塩)、ヘキサクロロフェン、過酢酸、乳酸、過ギ酸、過マンガン酸カリウム、ペルオキシモノ硫酸カリウムが例示できる。
【0064】
本発明の組成物が空気清浄化薬剤を含有する場合、該組成物における空気清浄化薬剤の含有量は、0.05〜20質量%であることが好ましく、0.1〜17質量%であることがより好ましく、0.1〜15質量%であることが特に好ましい。
【0065】
前記活性抗菌成分としては、トリクロサン、トリクロロカルバニリド、イソプロピルメチルフェノール、N−(ジクロロフルオロメチルチオ)−フタルアミド、N’−(ジクロロフルオロメチルチオ)N,N’−ジメチル−N’−フェニル−スルファミド、ポリオクチルポリアミノエチルグリシン、チアベンタゾール、二酸化塩素、2−ブロモ−2−ニトロエタノール、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール、2−ブロモ−2−ニトロプロパノール、1−ブロモ−1−ニトロプロパノール、1,4−ジブロモ−1,4−ジニトロブタンジオール−2,3−セチルピリジニウム、1−ブロモ−1−ニトロ−2−メチルプロパノール−2−セチルピリジニウムおよび塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、アクリノール、ポビドンヨード、マーキュロクロム、クロラムフェニコール、硫酸フラジオマイシン、硫酸ゲンタマイシン、塩酸オキシテトラサイクリン、硫酸ポリミキシンB、トリコマイシン、グリセオフルビンをさらに挙げることができる。
【0066】
前記活性抗真菌成分としては、安息香酸及びその塩、ソルビン酸及びその塩、パラオキシ安息香酸エステル類、デヒドロ酢酸ナトリウム、プロピオン酸、ポリリジン、チアペンダゾール;リナロール、ゲラニオール、ネロール、シトロネロール、α−ターピネオール、ターピネン−4−オール、イソプレゴール等のテルペン系アルコール;2,4−ジメチル−3−シクロヘキセン−1−メタノール、4−イソプロピルシクロヘキサノール、4−イソプロピルシクロヘキサンメタノール、1−(4−イソプロピルシクロヘキシル)−エタノール、2,2−ジメチル−3−(3−メチルフェニル)−プロパノール等の炭素数7〜15の脂環式アルコール;ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール、フェニルプロピルアルコール、カルバクロール、オイゲノール等の炭素数7〜15のアリールアルキルアルコール又はアルキルアリールアルコールをさらに挙げることができる。
【0067】
前記活性抗アレルギー成分としては、ハイドロキシアパタイト、エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレート、没食子酸および没食子酸と炭素数1から4までのアルコールとのエステル化合物をさらに挙げることができる。
【0068】
消臭等のための活性空気クリーナー成分としては、タンニン、フラボノイド(カルコン、フラバノン、フラバノール、フラボン、フラボノール、イソフラボン)等のポリフェノール、シクロデキストリン、メタクリル酸ラウリル、ゲラニルクロリネート、4−ヒドロキシ−6−メチル−3−(4−メチルペンタノイル)−2−ピロン、ホルマリン、グリオキサール、重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、ジヒドロキシ−アセトン、3,5,5−トリメチルヘキサノール、β−エトキシプロピオンアルデヒド、グルタロアルデヒド、メタアクリル酸エステル、マレイン酸エステル、マレイン酸モノアミド、マレイン酸イミド、フマル酸エステル、β−アシルアクリル酸およびその塩、セネシオン酸シトロネリル、1,3−ペンタジエン−1−カルボン酸アルキルエステル、ピナンハイドロパーオキサイド、p−サイメンパーオキサイド、1,2−プロピレンオキサイド、1,2−ブチレンオキサイド、グリシジルエーテル、オクタアセチルサッカロース、Fe(III)−オクタカルボキシフタロシアニン、Fe(III)−テトラカルボキシフタロシアニン、5−メチル−2−イソプロピル−2−ヘキセナール、p−ブトキシフェノール、カテコール、ハイドロキノン、4−メチルカテコール、1,2,4−トリハイドロキシベンゼン、3−メチルカテコール、3−メトキシカテコール、カルノソール、ロズマノール、ブラジリン、ヘマトキシリン、シコニン、ミリセチン、バイカレイン、バイカリン、シトラール、バニリン、クマリンをさらに挙げることができる。
【0069】
好ましいc)活性成分としては、さらに、b)抵抗率調節成分として機能するものも例示できる。このようなc)活性成分としては、第4級アミンの塩、保存料、ジグルコン酸クロルヘキシジン等のクロルヘキシジンの塩、及び先に例示したその他の空気清浄化薬剤が例示できる。このようなc)活性成分は、b)抵抗率調節成分も兼ねて単独で使用してもよいし、その他のc)活性成分又はb)抵抗率調節成分と併用してもよい。
【0070】
c)活性成分は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0071】
2種以上のc)活性成分を併用する場合には、例えば、2種以上の香料のみを併用してもよいし、2種以上の空気清浄化薬剤のみを併用してもよく、1種以上の香料と1種以上の空気清浄化薬剤とを併用してもよい。
【0072】
本発明の組成物におけるc)活性成分の含有量は、0.05〜44.5質量%であることが好ましい。
【0073】
本発明の組成物は、a)低蒸気圧成分、b)抵抗率調節成分及びc)活性成分以外に、必要に応じて、さらに、任意成分としてd)表面張力調節成分を含有していてもよい。
【0074】
表面張力調節成分d)は、例えば、バルク製剤の表面張力を下げるために、あるいは組成物の上記の物理的性質が所望の範囲に近付くように添加されるものである。
【0075】
d)表面張力調節成分としては、イソパラフィン(例えば、Isopar L);デカメチルテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、及びこれらの混合物等のシリコーン油が例示できる。
【0076】
d)表面張力調節成分は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0077】
本発明の組成物がd)表面張力調節成分を含有する場合、該組成物におけるd)表面張力調節成分の含有量の下限値は、0.5質量%であることが好ましく、1質量%であることがより好ましく、2質量%であることが特に好ましく、3質量%であることが最も好ましい。また、d)表面張力調節成分の含有量の上限値は、10質量%であることが好ましく、8質量%であることがより好ましく、4質量%であることが最も好ましい。そして、d)表面張力調節成分の含有量は、上記の下限値と上限値との間のいずれかの値であることが好ましい。
【0078】
本発明の組成物は、上記のa)低蒸気圧成分、b)抵抗率調節成分、c)活性成分及びd)表面張力調節成分以外に、その他の成分を含有していてもよい。
【0079】
前記その他の成分としては、粘度調節成分が例示でき、例えば、グリセリンを含有させることで、組成物の粘度を増大させることができる。
【0080】
また、本発明の組成物は、全体的な性質に影響が及ばない範囲内で、少量の蛍光剤を含有していてもよく、例えば、Uvitex−OB等を1質量%以下の量で含有させることができる。
【0081】
c)活性成分としてフレグランスオイルを含有する好ましい本発明の組成物としては、 a)低蒸気圧成分55〜89.5質量%、
b)抵抗率調節成分0.5〜5質量%、
フレグランスオイル10〜35質量%、
d)表面張力調節成分0〜8質量%
を含有するものが例示できる。
【0082】
c)活性成分として空気清浄化薬剤を含有する好ましい本発明の組成物としては、
a)低蒸気圧成分70〜97.9質量%、
b)抵抗率調節成分1〜5質量%、
空気清浄化薬剤0.1〜20質量%、
d)表面張力調節成分1〜10質量%
を含有するものが例示でき、これら成分のみを含有するものがより好ましい。
【0083】
c)活性成分としてフレグランスオイル及び空気清浄化薬剤を含有する好ましい本発明の組成物としては、
a)低蒸気圧成分55〜92.9質量%、
b)抵抗率調節成分1〜5質量%、
フレグランスオイル5〜35質量%、
空気清浄化薬剤0.1〜20質量%、
d)表面張力調節成分1〜10質量%
を含有するものが例示でき、これら成分のみを含有するものがより好ましい。
【0084】
a)低蒸気圧成分、b)抵抗率調節成分、c)活性成分及びd)表面張力調節成分中のc)活性成分の含有量(相対比)は、c)活性成分が効率的に分散されるように、適切な大きさの液滴の安定なスプレーを得るために、最終的な組成物の抵抗率、表面張力及び蒸気圧が適切となるように、上述の数値範囲内で適宜調節することができる。
【0085】
本発明の組成物の好ましい物性値は、以下の通りである。
【0086】
20℃での抵抗率は、1×10〜1×10Ωmであることが好ましく、1.5×10〜8×10Ωmであることがより好ましい。
【0087】
20℃での表面張力は、20〜40mN/mであることが好ましく、26〜34mN/mであることがより好ましい。
【0088】
粘度は、20℃で1〜10mPa・sであることが好ましく、2〜5mPa・sであることがより好ましい。
【0089】
そして、本発明の組成物は、これら物性値の二つ以上又はすべてを同時に有することが好ましい。
【0090】
本発明の組成物の物性値は、公知の方法で測定でき、測定法は特に限定されないが、具体例は以下の通りである。
【0091】
抵抗率は、液体抵抗性セルを使用方法で測定できる。表面張力は、Du Nouy Ring法で測定でき、「mN/m」を単位とする測定値が得られる。粘度は、粘度計を使用して測定でき、「mPa・s」を単位とする測定値が得られる。そして、スプレー組成物の液滴の物理的サイズ(直径)は、測定値をミクロン(μm)にて提供する空気力学的な粒子サイズ測定器を用いて測定され得る。蒸気圧は、CARB法310によって測定される。
【0092】
従来の空気処理用の液体の組成物は、ヒトの健康及び環境に対して許容できない量のVOCを有する溶媒を典型的に含有していたり、許容できない毒性プロファイルを有していたり、ポンプ装置を使用せずに空気中に効果的に送出するには粘性が高過ぎたりするものであった。これに対して、本発明の組成物の一つの特徴としては、VOCを全く若しくは実質的に含有せず、又は少なくともCARB規則(カリフォルニア大気資源局によるVOCにかかる規制)により認可される程度に含有していることが挙げられる。
【0093】
また、本発明の組成物は、実質的に透明で単分散系(例えば0.1〜20μmの範囲)であり、例えば、静電スプレー装置での使用時に、(例えば、欧州特許出願公開第1399265号明細書に開示されているように)残留電荷が0以外の小滴を一貫して生成できる。液滴の大きさは、例えば、空気力学的粒度計を使用する方法等、公知の方法で測定でき、「μm」を単位とする測定値が得られる。本発明における液滴のサイズは、例えば平均直径が10μm未満である。
【0094】
また、本発明の組成物は、広範な種々の活性成分を広範な用途に適用でき、これは、実質的に水溶性の組成物を有する従来の製剤が必要とされていることである。利用可能な活性成分としては、有機溶媒に対して混和性があるとは一般的に考えられていないもの(例えば、第4級アミン及びその他のイオン性活性成分の塩等が該当する水溶性空気清浄化薬剤等)が挙げられる。
【0095】
通常のスプレー用の組成物は、組成物の性質が影響を受ける量の噴射剤を含有する。ここで、噴射剤とは、大気圧で適切な蒸気圧を有する低沸点物質、即ち、液化ガスであり、例えば、大気圧(1.025×10Pa)で0℃未満(例えば、−40℃未満)の沸点を有する化学物質である。具体的には、プロパン、ブタン等の低級炭化水素;Propellant 12等のCFC(クロロフルオロカーボン);HFA134a、HFA227等のHFA(ヒドロフルオロアルカン)が例示できる。
【0096】
これに対して、本発明の組成物は、噴射剤は必須成分ではなく、該組成物における噴射剤の含有量は、典型的には5質量%未満、より典型的には1質量%未満、特に典型的には0.1質量%未満であり、0質量%であってもよく、噴射剤を全く又は実質的に含有しない。したがって、本発明の組成物は、その性質が本質的に噴射剤の影響を受けない。
【0097】
本発明の組成物は、例えば、蒸気圧が高いエタノール、プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、エチレングリコール、プロピレングリコールは必須成分ではない。
【0098】
そして、本発明の組成物におけるエタノール、プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、エチレングリコール、プロピレングリコールの総含有量は、典型的には5質量%未満、より典型的には1質量%未満、特に典型的には0.1質量%未満であり、0質量%であってもよく、エタノール、プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、エチレングリコール、プロピレングリコールを全く又は実質的に含有しない。エタノール、グリコールメチルエーテル、エチレングリコールまたはプロピレングリコールは、一旦分散されたら、組成物中で検出可能でない量であることが理想的である。
【0099】
本発明の組成物は、例えば、グリセロール、ポリエチレングリコール等の不適切な物理的性質を有する化学物質が不要であり、機械的ポンプによる送出を行わなくても、容易に分散させることができる。
【0100】
本発明の組成物は、想定される使用条件下での全温度範囲に渡って、抵抗率、表面張力及び蒸気圧が上記数値範囲を満たす。ここで、「全温度範囲」とは、空気処理用の液体の組成物が通常使用される温度範囲であって、具体的には概ね0〜40℃の範囲であり、典型的には室温で、より典型的には18〜25℃、特に典型的には20℃程度である。
【0101】
例えば、ジプロピレングリコールn−プロピルエーテル(DPnP)は、粘度が高い(25℃で11.4mPa・s)ので、適切な送出速度を実現するためには、静電スプレー分散の機械的支援を必要とすることが予測されると考えられる。しかし、驚くべきことに、本発明の組成物は、例えば、DPnPを多量に(例えば、85質量%以上)含有する場合であっても、機械的ポンプ等の機械的支援を必要とせずに、容易に分散させることができる。
【0102】
また、二塩基性エステル(DBE)は、表面張力が比較的高く(例えば、38.8mN/m)、水溶性がほとんどない(溶媒中の水、20℃で2.5質量%)ため、活性成分と共に組成物に配合するには不適切であり、乳化剤を使用せずに水性溶媒和させるか、又は抵抗率調節成分(典型的には弱電界溶液)の使用が必要となっていた。したがって、本発明の組成物において、乳化剤を使用することなく二塩基性エステルを配合できることは、驚くべきことである。さらに、二塩基性エステルは表面張力が高いので、許容できないほどの低い送出速度をもたらすことが予測され得る。しかし、本発明の組成物は、驚くべきことに、例えば、0.40〜1.0g製剤/日という流量で安定して空気中に送出でき、静電スプレー用として特に好適である。さらに、本発明の組成物は、一般に64℃よりも高い引火点を有している。これにより、製造、操作および移動の際の危険性を低減する。本発明の組成物によって具体化される他の利点として、本組成物は引火性が低く、従来の溶媒よりも高い引火点を有しているという事実が挙げられる。このことは、エタノールおよび/または低分子量の炭化水素および/またはグリコールメチルエーテル、エチレングリコールまたはプロピレングリコールを含む従来の組成物と比較して火災の危険性が低いということを示し、火災の危険性が低く、圧力下にて貯蔵される必要がないということを示す。
<空気の処理方法、組成物の使用、活性成分の定量送出方法>
本発明の空気の処理方法は、上記本発明の組成物を、空気中にスプレーする工程を含む。
【0103】
また、本発明の活性成分の定量送出方法は、上記本発明の組成物を採取する工程と、採取した前記組成物を静電スプレー装置からスプレーする工程とを含む。
【0104】
本発明の組成物は、上記のように、スプレーでの送出に好適であり、しかも安定した流量で長時間送出可能な、高い定量送出性を有する。組成物の送出は、間欠的及び連続的のいずれでもよい。
【0105】
空気の処理は、例えば、リザバに保持されている本発明の組成物を採取し、スプレー装置から送出して、空気中にスプレーすることで行うことができる。
【0106】
スプレー装置としては、静電スプレー装置が好ましく、例えば、前記組成物が保持されたリザバと、前記組成物が前記リザバから供給されるスプレー電極と、前記スプレー電極近傍に配置された参照電極とを備え、前記スプレー電極と参照電極との間に電界を印加することで、前記組成物が液滴として前記スプレー電極からスプレーされる構造の本発明の装置が挙げられる。
【0107】
静電スプレー装置では、スプレー電極に組成物が供給され、このスプレー電極が最終的には電界に曝されて、参照電極との間に電界(電位差)が印加されることで、前記組成物が液滴となり、スプレーされる。このような静電スプレー装置は、例えば、「Sir Geoffrey Taylor, Proceedings of the Royal Society−1964,p383〜397」に記載されているように、当技術分野においては周知のものである。
【0108】
「欧州特許出願公開第1399265号明細書」に記載された静電スプレー装置は、本発明の組成物の使用に好適なものである。この装置は、スプレー電極が装置の出口表面付近に配置され、接近している別の参照電極及び放電電極も、装置の出口表面付近に配置されており、簡単で頑強な静電スプレー装置である。開放幾何形状に構成された場合、両方の電極は、通常、出口表面の個別のリセス部内に配置されることによって、使用者の干渉から保護される。出口表面は、イオン又は荷電粒子を通して堆積された任意の電荷が即座に移行しないように、又は漏出しないように、低速で電荷を漏らすよう選択された誘電体材料を含む。したがって、これらの誘電体リセス部は、これらが収容する電極と同じ極性のわずかな電荷を確実に保持する。このため、局所電界形状が著しく変化し、さらなる電荷の堆積が確実に抑制され、最も顕著な場合には、余分な電極を必要としない。また、この静電スプレー装置の別の利点は、装置が極性に依存していないことである。言い換えれば、スプレー電極は、任意の電圧(正又は負)とすることができ、放電電極は、任意のその他の電位とすることができる。ただし、電位差は、まずスプレーを生成するのに十分であることのみを条件とする。実現可能な電位差の範囲は、2つの電極間の距離、これら電極が出口表面からリセス処理される深さ、及びリセス自体のサイズに依存し、例えば、下限値は1〜2kV、上限値は30kV又はそれ以上とすることができ、相対的極性に関して共に正又は負とすることができる。
【0109】
「欧州特許出願公開第1399265号明細書」に記載されている装置については、さらに1つの可能性ある実施形態として、スプレー電極をスプレーリセス部内に収容し、放電電極を放電リセス部内に収容したものを例示できる。この実施形態のスプレー電極は、27ゲージ金属又は導電性プラスチックキャピラリーを備え、放電電極は直径0.6mmの鋭いステンレス鋼ピンを備える。
【0110】
リセス部の2つの縦軸は、誘電体材料から製造されたスプレー出口表面に直角である。
この実施形態では、材料がナイロンであり、スプレー出口表面は平らである。しかし、スプレーが偏向するようにスプレー出口表面で十分な電荷が保持され、かつ電荷が装置及び電極から運び去られることを条件に、その他の材料及び曲面も適用できる。電気接続は、駆動回路に接続している。
【0111】
静電スプレー装置では、スプレーされる組成物は、リザバに保持され、小さな空気入口穴を介して、空気がリザバに供給されて、スプレーされた液体と置き換わる。
【0112】
そして、この装置に駆動回路によって電力を供給すると、リザバから供給された組成物が、非常に微細な液滴となってスプレー電極から放出され、その蒸気圧及び装置付近の周囲条件に従って素早く蒸発する。静電スプレー装置における本発明の組成物の使用も、本発明に包含される。
【0113】
静電スプレー装置は、例えば、デューティサイクルを使用して間欠的に、又は連続的に組成物を定量送出するように、適合させることができる。
【0114】
以下、具体的実施例により、本発明についてさらに詳しく説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
【0115】
なお、各組成物の調製に使用したフレグランスオイルA、B及びCは、それぞれ、Firmenich社製(Firmenich S.A.,Route des Jeunes 1,P.O.Box 239,Geneve 8 CH−1211,Switzerland)のフレグランスオイル225696、163047及び180262である。
また、フレグランスオイルDは、Firmenich社製のISO 4730(2004)「Oil of melaleuca,Terpinen−4−ol type」に準拠したフレグランスオイル、ティーツリーオイルCAS No 68647−73−4である。
【実施例】
【0116】
<組成物の調製及び物性評価>
[実施例1]
表2に示す組成の組成物を調製し、その抵抗率、表面張力、引火点及び蒸気圧を測定して、組成物の物性を評価した。評価結果を表2にあわせて示す。
【0117】
【表2】

【0118】
[実施例2]
表3に示す組成の組成物を調製し、その抵抗率、表面張力、引火点、a)低蒸気圧成分の蒸気圧を測定して、物性を評価した。評価結果を表3にあわせて示す。
【0119】
【表3】

【0120】
[実施例3]
表4に示す組成の組成物を調製し、その抵抗率、表面張力、引火点、a)低蒸気圧成分の蒸気圧を測定して、物性を評価した。評価結果を表4にあわせて示す。
【0121】
【表4】

【0122】
[実施例4]
表5に示す組成の組成物を調製し、その抵抗率、表面張力、引火点、a)低蒸気圧成分の蒸気圧を測定して、物性を評価した。評価結果を表5にあわせて示す。
【0123】
【表5】

【0124】
[実施例5]
表6に示す組成の組成物を調製し、その抵抗率、表面張力、引火点、a)低蒸気圧成分の蒸気圧を測定して、物性を評価した。評価結果を表6にあわせて示す。
【0125】
【表6】

【0126】
[実施例6]
表7に示す組成の組成物を調製し、その抵抗率、表面張力、引火点、a)低蒸気圧成分の蒸気圧を測定して、物性を評価した。評価結果を表7にあわせて示す。
【0127】
【表7】

【0128】
[実施例7]
表8に示す組成の組成物を調製し、その抵抗率、表面張力、引火点、a)低蒸気圧成分の蒸気圧を測定して、物性を評価した。評価結果を表8にあわせて示す。
【0129】
【表8】

【0130】
実施例1〜7の組成物は、「欧州特許出願公開第1399265号明細書」で開示された静電スプレー装置を使用した場合、約0.40〜1.0g製剤/日という流量で、20.9%のデューティサイクルを用い、1日という連続スプレー期間に渡って沈殿物が観察されること無く活性成分を効率的に分散させる安定なスプレーを生成した。
【0131】
[比較例1]
表9に示す組成の組成物を調製し、その抵抗率、表面張力、引火点、非低蒸気圧成分の蒸気圧を測定して、物性を評価した。評価結果を表9にあわせて示す。
【0132】
【表9】

【0133】
[比較例2]
表10に示す組成の組成物を調製し、その抵抗率、表面張力、引火点、非低蒸気圧成分の蒸気圧を測定して、物性を評価した。評価結果を表10にあわせて示す。
【0134】
【表10】

【0135】
比較例1〜2の組成物は、静電スプレー用の抵抗率、粘度及び表面張力に関して適切な特徴を有する、当技術分野における溶媒を含有する従来の組成物である。これら組成物は、14Pa以上の高い蒸気圧を示すので、規則により製剤のVOC含量が制限される場合には、空気中に分散させるのに不適切なものである。
【0136】
好ましい局面において、本発明は、活性成分を空気中へ送達するに好適な組成物および方法を提供する。本発明の組成物は、VOC規制に適合し、任意の活性成分を安定して空気中に送出でき、静電スプレー装置によるスプレーに特に好適である。
【0137】
活性成分を空気中へ送達するに好適な組成物を提供することが、本発明の目的の1つであり、本発明の組成物は、特にエアロゾルスプレー、好ましくは静電スプレーによる空気中への分散によって空気中へ提供される。分散の際にヒトへの毒性および危険性が低い組成物を提供することが、本発明のさらなる目的である。本発明の組成物は、噴射剤やエタノールなどのような望ましくない構成成分の使用を回避することができる。清浄でありかつ単相にて存在する組成物を提供することもまた、本発明のさらなる目的である。空気を処理するに好適な、揮発性有機化合物(VOC)が少ない組成物を提供することもまた、本発明の目的の1つである。任意の活性成分(例えばフレグランスオイル、消毒剤、またはスプレーした時のこれらの組合せ)を安定的に供給し得る組成物を提供することもまた、本発明のさらなる目的である。
【0138】
本発明の目的は、以下に示す組成物および方法を提供することによって達成される。
【0139】
本発明は、活性成分を空気中へ送達するためのスプレー組成物および方法を提供し、空気中へ活性成分を送達するための特定の化合物またはキャリア組成物の使用を提供する。
【0140】
本発明の第1の態様は、活性成分を空気中へ送達するためのスプレー組成物である。本発明のスプレー組成物は、活性成分を空気中へ送達するために、
一般式(I)
【0141】
【化3】

【0142】
(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基であり、nは2又は3であり、但し、nが2の場合にはRはメチル基ではない。)
で表されるグリコールエーテルを含有しているキャリア組成物に混合された活性成分を含有しており、該キャリア組成物の20℃における蒸気圧が14Pa未満である。上記キャリア組成物は、二塩基エステルおよび/またはジプロピレングリコールをさらに含有してもよく、らに、上記スプレー組成物は、抵抗率調節成分、および必要に応じて表面張力調節成分をさらに含有してもよい。
【0143】
本発明のスプレー組成物は、グリコールエーテル、ならびに、必要に応じて二塩基エステルおよび/またはジプロピレングリコールの含有量の合計が、55〜99.45質量%となるように構成されていてもよい。
【0144】
本発明のスプレー組成物は、20℃における、抵抗率が1×10〜1×10Ωmであり、表面張力が20〜40mN/mであるように構成されていてもよく、この場合、活性成分の含有量が0.05〜44.5質量%であり、抵抗率調節成分の含有量が0.5〜5質量%であり、かつ表面張力調節成分の含有量が0〜10質量%であることが好ましい。
【0145】
本発明において、グリコールエーテルは、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールn−プロピルエーテルおよびジプロピレングリコールn−ブチルエーテルからなる群より選択されていてもよい。
【0146】
本発明において、二塩基エステルは、グルタル酸ジメチルおよび/またはアジピン酸ジメチルであってもよい。
【0147】
本発明のスプレー組成物は、粘度調節成分をさらに含有しているように構成されていてもよい。
【0148】
本発明において、活性成分は香料であってよく、香料はフレグランスオイルであってよく、フレグランスオイルは、ティーツリーオイル、イヌハッカオイルおよびタイムオイルからなる群より選択される1種以上であってもよい。
【0149】
本発明のスプレー組成物は、フレグランスオイルの含有量が、5〜35質量%となるように構成されていてもよい。
【0150】
本発明のスプレー組成物は、以下の組成を含有するように構成されていてもよい:
一般式(I)
【0151】
【化4】

【0152】
(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基であり、nは2または3であり、nが2の場合、Rはメチル基でない。)
で表されるグリコールエーテル、ならびに、必要に応じて、二塩基エステルおよび/またはジプロピレングリコールを含有し、
抵抗率調節成分、フレグランスオイルおよび表面張力調節成分をさらに含有し、
上記グリコールエーテル、ならびに、必要に応じて上記二塩基エステルおよび/または上記ジプロピレングリコールの含有量の合計が、55〜89.5質量%であり、
上記抵抗率調節成分の含有量が、0.5〜5質量%であり、
上記フレグランスオイルの含有量が、10〜35質量%であり、
上記表面張力調節成分の含有量が、0〜8質量%である。
【0153】
本発明は、活性成分が空気清浄化剤であってもよく、空気清浄化剤の含有量は0.05〜20質量%となるように構成されていてもよい。
【0154】
本発明のスプレー組成物は、以下の組成を含有するように構成されていてもよい:
一般式(I)
【0155】
【化5】

【0156】
(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基であり、nは2または3であり、nが2の場合、Rはメチル基でない。)
で表されるグリコールエーテル、ならびに、必要に応じて、二塩基エステルおよび/またはジプロピレングリコールを含有し、
抵抗率調節成分、空気清浄化剤および表面張力調節成分をさらに含有し、
上記グリコールエーテル、ならびに、必要に応じて上記二塩基エステルおよび/または上記ジプロピレングリコールの含有量の合計が、70〜97.9質量%であり、
上記抵抗率調節成分の含有量が、1〜5質量%であり、
上記空気清浄化剤の含有量が、0.1〜20質量%であり、
上記表面張力調節成分の含有量が、1〜10質量%である。
【0157】
本発明のスプレー組成物は、静電的に噴霧するために用いられることが好ましい。
【0158】
本発明の第2の態様は、活性成分を空気中へ送達するための方法である。本発明の方法は、活性成分を空気中へ送達するために、上記組成物を空気中へ噴霧する工程を包含する。噴霧する工程は静電的に行われるように構成されていてもよい。
【0159】
本発明の方法は、活性成分を、キャリア組成物と混合してスプレー組成物を調製する工程をさらに包含してもよい。
【0160】
本発明の方法は、スプレー組成物を空気中へスプレーするためのスプレー電極に該スプレー組成物を供給する工程、および該スプレー電極の近傍に配置された放電電極と該スプレー電極との間に電界を印加する工程を包含するように構成されていてもよい。
【0161】
本発明の第3の態様は、活性成分を空気中へ送達するための、特定のグリコールエーテルまたは上記キャリア組成物の使用である。本発明の使用は、静電的に噴霧して活性成分を空気中へ送達するように構成されていてもよい。また、本発明の使用は、グリコールエーテルが、二塩基エステルおよび/またはジプロピレングリコールと組み合わせて用いられるように構成されていてもよく、抵抗率調節成分および/または表面張力調節成分、ならびに、必要に応じて粘度調節成分と組み合わせて用いられてもよい。
【0162】
本発明の第4の態様は、上記スプレー組成物が封入されているリザバである。
【0163】
本発明の第5の態様は、スプレー組成物を空気中へスプレーする装置である。本発明の装置は、上記スプレー組成物が封入されているリザバ、上記スプレー組成物を受容するように該リザバと連結したスプレー電極、該スプレー電極の近傍に配置された放電電極、および、該スプレー電極と該放電電極との間に電界を印加する印加部を備えており、該スプレー電極と該放電電極との間に電界が印加されることによって、該リザバから供給された該組成物が該スプレー電極にて空気中へ液滴形態にてスプレーされる。
【0164】
さらなる局面において、本発明は、空気の処理に好適な方法および組成物を提供する。本発明の組成物は、VOC規制に適合し、任意の活性成分を安定して空気中に送出でき、静電スプレー装置によるスプレーに特に好適である。
【0165】
空気を処理するに好適な組成物を提供することが、本発明の目的の1つであり、本発明の組成物は、特にエアロゾルスプレー、好ましくは静電スプレーによる空気中への分散によって空気中へ提供される。分散の際にヒトへの毒性および危険性が低い組成物を提供することが、本発明のさらなる目的である。本発明の組成物は、噴射剤やエタノールなどのような望ましくない構成成分の使用を回避することができる。清浄でありかつ単相にて存在する組成物を提供することもまた、本発明のさらなる目的である。空気を処理するに好適な、揮発性有機化合物(VOC)が少ない組成物を提供することもまた、本発明の目的の1つである。任意の活性成分(例えばフレグランスオイル、消毒剤、またはスプレーした時のこれらの組合せ)を安定的に供給し得る組成物を提供することもまた、本発明のさらなる目的である。
【0166】
このような本発明の目的は、以下に示す組成物および方法を提供することによって達成される。
【0167】
本発明の第1の態様は、空気を処理するための液体の組成物であって、
a)(i)下記一般式(I)
【0168】
【化6】

【0169】
(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基であり、nは2又は3であり、但し、nが2の場合にはRはメチル基ではない。)
で表されるグリコールエーテル、及び
(ii)二塩基性エステル
からなる群から選択される少なくとも1種の化合物と、さらに任意選択でジプロピレングリコールとを含む低蒸気圧成分と;
b)抵抗率調節成分と;
c)活性成分と;
さらに任意選択でd)表面張力調節成分と
を含有し、
且つ、20℃で14Pa未満の蒸気圧を有する組成物である。
【0170】
上記組成物は、低蒸気圧成分の含有量が、55〜99.45質量%となるように構成されていてもよい。
【0171】
上記組成物は、低蒸気圧成分の含有量が、57.5〜90質量%となるように構成されていてもよい。
【0172】
上記組成物は、低蒸気圧成分の含有量が、59〜89質量%となるように構成されていてもよい。
【0173】
上記組成物において、低蒸気圧成分が、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールn−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールn−ブチルエーテル及び二塩基性エステルからなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含むように構成されていてもよい。
【0174】
上記組成物において、低蒸気圧成分が、ジプロピレングリコールn−プロピルエーテルを含むように構成されていてもよい。
【0175】
上記組成物において、低蒸気圧成分が、二塩基性エステルを含むように構成されていてもよい。
【0176】
上記組成物において、上記二塩基性エステルがグルタル酸ジメチル及びアジピン酸ジメチルからなる群から選択されてもよい。
【0177】
上記組成物において、上記二塩基性エステルがグルタル酸ジメチルとアジピン酸ジメチルとの混合物であってもよい。
【0178】
上記組成物は、上記二塩基性エスエルの含有量が、5〜85質量%であるように構成されていてもよい。
【0179】
上記組成物において、活性成分は、香料を含んでもよい。
【0180】
上記組成物において、上記香料はフレグランスオイルであってもよい。
【0181】
上記組成物において、上記香料は、ティーツリーオイル、イヌハッカオイル及びタイムオイルからなる群から選択される1種以上のオイルの構成成分を含んでもよい。
【0182】
上記組成物は、上記オイルの構成成分が、存在する総オイルの一部となるように構成されていてもよい。
【0183】
上記組成物は、上記フレグランスオイルの含有量が、5〜35質量%となるように構成されていてもよい。
【0184】
上記組成物は、以下の組成を含有するように構成されていてもよい:
低蒸気圧成分55〜89.5質量%、
抵抗率調節成分0.5〜5質量%、
フレグランスオイル10〜35質量%、
表面張力調節成分0〜8質量%。
【0185】
上記組成物において、上記c)活性成分は、空気清浄化薬剤を含んでもよい。
【0186】
上記組成物は、上記空気清浄化薬剤の含有量が、0.05〜20質量%となるように構成されていてもよい。
【0187】
上記組成物は、以下の組成を含有するように構成されていてもよい:
低蒸気圧成分70〜97.9質量%、
抵抗率調節成分1〜5質量%、
空気清浄化薬剤0.1〜20質量%、
表面張力調節成分1〜10質量%。
【0188】
上記組成物は、さらに粘度調節成分を含有してもよい。
【0189】
上記組成物は、20℃において、1×10〜1×10Ωmの抵抗率と、20〜40mN/mの表面張力を共に有してもよい。
【0190】
上記組成物は、静電スプレー用であってもよい。
【0191】
また、本発明の第2の態様は、上記本発明の第1の態様の組成物を、空気中にスプレーする工程を含む空気の処理方法である。
【0192】
また、本発明の第3の態様は、上記本発明の第1の態様の組成物が保持されたスプレー装置リザバである。
【0193】
上記スプレー装置リザバは、静電スプレー装置用であってもよい。
【0194】
また、本発明の第4の態様は、上記本発明の第1の態様の組成物を保持するリザバと、前記組成物が前記リザバから供給されるスプレー電極と、前記スプレー電極近傍に配置された参照電極とを備え、前記スプレー電極と参照電極との間に電界を印加することで、前記組成物が液滴として前記スプレー電極からスプレーされる静電スプレー装置である。
【0195】
また、本発明の第5の態様は、静電スプレー装置における上記本発明の第1の態様の組成物の使用である。
【0196】
また、本発明の第6の態様は、上記本発明の第1の態様の組成物を採取する工程と、採取した前記組成物を静電スプレー装置からスプレーする工程とを含む活性成分の定量送出方法である。
【0197】
本発明の驚くべき局面は、組成物における、(i)本明細書中にて規定した一般式(I)によって示される化合物(例えば、ジプロピレングリコールn−プロピルエーテル(DPnP));(ii)二塩基性エステル、からなる群より選択される化合物の少なくとも1つの、必要に応じて、ジプロピレングリコールとの組合せでの、使用が、空気中へのスプレーの際、好ましくは静電スプレーを用いたときに、空気の処理に好適な液体を提供することである。グリコールエーテルは、空気処理の静電スプレーに好適であると、当該分野において長期間にわたって記載されてきたが、本発明者らは、このような知見が総じて単純化され過ぎているということを見出した。なぜなら、従来の組成物は、ヒトの健康および環境について許容され得ない量のVOCを含む溶媒を含有していたり、許容され得ない毒性プロファイルを有していたり、高価なポンプ装置を必要とすることなく効果的に空気中へ送達するには粘度が高過ぎたりするものであったからである。
【0198】
好適には、本発明の組成物は、通常の操作の間に予想される温度範囲の全体にわたって、上述した物理的特性ウインドウ(すなわち、抵抗率、表面張力および蒸気圧)に保たれるべきである。少なくとも上記温度は室温(18〜25℃(例えば20℃))であり、これは最適な温度範囲である。しかし、本発明の組成物は、典型的には0℃〜40℃以上まで改変することなく操作され、この温度範囲外であることもしばしばである。
【0199】
従来の非水性溶媒は、該当するVOC条件を満たすに適切でない。該当するVOC条件を満たす非水性溶媒の組成物を提供することもまた、本発明の目的である。本発明の組成物は、ARB法310によって決定されるような20℃で14Paよりも高い蒸気圧を有する物質を成分としてほとんど含まない(ここで、物質の量は規則によって規定されるように製品カテゴリーに従って決定される。)。そして、このような組成物中に存在し得る任意のフレグランスオイル成分は、20℃で280Pa以下の蒸気圧を有し得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】

(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基であり、nは2または3であり、nが2の場合、Rはメチル基でない。)
で表されるグリコールエーテルを含有しているキャリア組成物に混合された活性成分を含有し、該キャリア組成物の20℃における蒸気圧が14Pa未満である、活性成分を空気中へ送達するためのスプレー組成物。
【請求項2】
前記キャリア組成物が、二塩基エステルおよび/またはジプロピレングリコールをさらに含有している、請求項1に記載のスプレー組成物。
【請求項3】
前記グリコールエーテル、ならびに、必要に応じて前記二塩基エステルおよび/または前記ジプロピレングリコールの含有量の合計が、55〜99.45質量%である、請求項1または2に記載のスプレー組成物。
【請求項4】
抵抗率調節成分、および必要に応じて表面張力調節成分をさらに含有している、請求項1〜3のいずれか一項に記載のスプレー組成物。
【請求項5】
20℃における、抵抗率が1×10〜1×10Ωmであり、表面張力が20〜40mN/mである、請求項4に記載のスプレー組成物。
【請求項6】
前記活性成分の含有量が0.05〜44.5質量%であり、前記抵抗率調節成分の含有量が0.5〜5質量%であり、かつ前記表面張力調節成分の含有量が0〜10質量%である、請求項5に記載のスプレー組成物。
【請求項7】
前記グリコールエーテルが、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールn−プロピルエーテルおよびジプロピレングリコールn−ブチルエーテルからなる群より選択される、請求項1〜6のいずれか一項に記載のスプレー組成物。
【請求項8】
前記二塩基エステルが、グルタル酸ジメチルおよび/またはアジピン酸ジメチルである、請求項1〜7のいずれか一項に記載のスプレー組成物。
【請求項9】
粘度調節成分をさらに含有している、請求項1〜8のいずれか一項に記載のスプレー組成物。
【請求項10】
前記活性成分が香料である、請求項1〜8のいずれか一項に記載のスプレー組成物。
【請求項11】
前記香料がフレグランスオイルである、請求項10に記載のスプレー組成物。
【請求項12】
前記フレグランスオイルが、ティーツリーオイル、イヌハッカオイルおよびタイムオイルからなる群より選択される1種以上である、請求項11に記載のスプレー組成物。
【請求項13】
前記フレグランスオイルの含有量が、5〜35質量%である、請求項11または12に記載のスプレー組成物。
【請求項14】
一般式(I)
【化2】

(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基であり、nは2または3であり、nが2の場合、Rはメチル基でない。)
で表されるグリコールエーテル、ならびに、必要に応じて、二塩基エステルおよび/またはジプロピレングリコールを含有し、
抵抗率調節成分、フレグランスオイルおよび表面張力調節成分をさらに含有し、
上記グリコールエーテル、ならびに、必要に応じて上記二塩基エステルおよび/または上記ジプロピレングリコールの含有量の合計が、55〜89.5質量%であり、
上記抵抗率調節成分の含有量が、0.5〜5質量%であり、
上記フレグランスオイルの含有量が、10〜35質量%であり、
上記表面張力調節成分の含有量が、0〜8質量%である、活性成分を空気中へ送達するためのスプレー組成物。
【請求項15】
前記活性成分が空気清浄化剤である、請求項1〜9のいずれか一項に記載のスプレー組成物。
【請求項16】
前記空気清浄化剤の含有量が、0.05〜20質量%である、請求項15に記載のスプレー組成物。
【請求項17】
一般式(I)
【化3】

(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基であり、nは2または3であり、nが2の場合、Rはメチル基でない。)
で表されるグリコールエーテル、ならびに、必要に応じて、二塩基エステルおよび/またはジプロピレングリコールを含有し、
抵抗率調節成分、空気清浄化剤および表面張力調節成分をさらに含有し、
上記グリコールエーテル、ならびに、必要に応じて上記二塩基エステルおよび/または上記ジプロピレングリコールの含有量の合計が、70〜97.9質量%であり、
上記抵抗率調節成分の含有量が、1〜5質量%であり、
上記空気清浄化剤の含有量が、0.1〜20質量%であり、
上記表面張力調節成分の含有量が、1〜10質量%である、活性成分を空気中へ送達するためのスプレー組成物。
【請求項18】
静電的に噴霧するための、請求項1〜17のいずれか一項に記載のスプレー組成物。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか一項に記載のスプレー組成物を、空気中へ噴霧する工程を包含する、活性成分を空気中へ送達する方法。
【請求項20】
前記噴霧する工程が静電的に行われる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記活性成分を、前記キャリア組成物と混合して前記スプレー組成物を調製する工程をさらに包含する、請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
前記スプレー組成物を空気中へスプレーするためのスプレー電極に該スプレー組成物を供給する工程、および該スプレー電極の近傍に配置された放電電極と該スプレー電極との間に電界を印加する工程を包含する、請求項19〜21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
活性成分を空気中へ送達するための、一般式(I)
【化4】

(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基であり、nは2または3であり、nが2の場合、Rはメチル基でない。)
で表されるグリコールエーテルの、使用。
【請求項24】
静電的に噴霧して活性成分を空気中へ送達する、請求項23に記載の使用。
【請求項25】
前記グリコールエーテルが、二塩基エステルおよび/またはジプロピレングリコールと組み合わせて用いられる、請求項23または24に記載の使用。
【請求項26】
抵抗率調節成分および/または表面張力調節成分、ならびに、必要に応じて粘度調節成分と組み合わせて用いられる、請求項23〜25のいずれか一項に記載の使用。
【請求項27】
一般式(I)
【化5】

(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基であり、nは2または3であり、nが2の場合、Rはメチル基でない。)
で表されるグリコールエーテルを含有しているキャリア組成物に混合された活性成分を含有しているスプレー組成物が封入されており、該キャリア組成物の20℃における蒸気圧が14Pa未満である、リザバ。
【請求項28】
前記スプレー組成物を受容するように請求項27に記載のリザバと連結したスプレー電極、
該スプレー電極の近傍に配置された放電電極、および
該スプレー電極と該放電電極との間に電界を印加する印加部
を備えており、
該スプレー電極と該放電電極との間に電界が印加されることによって、該リザバから供給された該組成物が該スプレー電極にて空気中へスプレーされる、スプレー装置。

【公開番号】特開2012−52104(P2012−52104A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169541(P2011−169541)
【出願日】平成23年8月2日(2011.8.2)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】