説明

活性炭性能評価装置および方法

【課題】排気脱硫装置に近い条件で活性炭の性能を評価できる活性炭性能評価装置および方法を提供する。
【解決手段】活性炭Cが充填され、二酸化硫黄と酸素とが混合され加湿された評価用ガスが供給され、活性炭Cを通過した評価用ガスが排出される反応容器30と、反応容器30に供給される評価用ガス中の二酸化硫黄の濃度を測定する入口測定器41と、反応容器30から排出される評価用ガス中の二酸化硫黄の濃度を測定する出口測定器42とを備える。入口測定器41で測定した二酸化硫黄の濃度と、出口測定器42で測定した二酸化硫黄の濃度との差から、実際の排気脱硫装置に近い条件で活性炭の性能を評価できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性炭性能評価装置および方法に関する。さらに詳しくは、排気ガス中の二酸化硫黄を硫酸に転換し回収する排気脱硫装置に用いられる活性炭の性能を評価する活性炭性能評価装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化硫黄ガス(SO2)の大気中への放出は法により厳しく規制されているため、二酸化硫黄の生成を伴う工程では二酸化硫黄ガスの無害化処理が必要となる。このような生産工程には、排気ガス中の二酸化硫黄を硫酸(H2SO4)に転換し回収する等の種々の排気脱硫装置が設置される。
【0003】
このような排気脱硫装置の一例が非特許文献1に記載されている。
図4に示すように、非特許文献1に記載の排気脱硫装置は、水平に設置された円筒形の反応槽110と、その反応槽110内に設けられた活性炭層120とを有している。反応槽110の内部は活性炭層120によって上下に分けられており、反応槽110には、反応槽110の外部と反応槽110の下部111とを連通する導入管131と、反応槽110の外部と反応槽110の上部112とを連通する排出管132とが設けられている。
そのため、二酸化硫黄を含有する排気ガスは導入管131を通り反応槽110の下部111に供給され、活性炭層120内を上昇する。活性炭層120に排気ガスが通されると、活性炭に酸素と二酸化硫黄が吸着され、二酸化硫黄と酸素と水とが反応し硫酸が生成される。二酸化硫黄が除去されたガスは反応槽110の上部112から排出管132を通り排出されるようになっている。
【0004】
活性炭層120は、隔壁で6室121〜126に区切られている。反応槽110の上部112には、各室121〜126内の活性炭に水を噴射するスプレー141〜146が取り付けられている。このスプレー141〜146は、個別に水の噴射・停止を制御できるようになっており、1つのスプレー(図4におけるスプレー141)が水を噴射しているときには、他のスプレー(図4におけるスプレー142〜146)からは水が噴射しないようになっている。そして、所定時間経過ごとに、水を噴射するスプレーが循環し、各室121〜126内の活性炭に順番に水を供給し、かつ、活性炭に付着している硫酸を水の中に回収して排出するようになっている。したがって、二酸化硫黄を含有する排気ガスは5室(図4における室122〜126)内の活性炭に通され、他の一つの室(図4における室121)内の活性炭には水が供給されるようになっている。
【0005】
スプレー141〜146から噴射される水が活性炭に供給されると、活性炭層120で生成された硫酸は活性炭層120の内部を下降し、活性炭層120の底面から反応槽110の下部111に落下していく。その後、反応槽110の下部111に蓄積された硫酸は、反応槽110の下部111に設けられたドレン133を通じて回収される。
【0006】
以上の様な構成であるから、上記排気脱硫装置は排気ガス中の二酸化硫黄を除去することができ、かつ硫酸を回収し再利用することができる。また、活性炭に水を供給するため、二酸化硫黄から硫酸への転換に必要な水を活性炭層120に供給することができる。さらに、活性炭を水で洗浄することになり、活性炭層120の二酸化硫黄から硫酸への転換能力を保つことができ、活性炭層120を再生する工程を別に設置する必要がない。
【0007】
上記のような排気脱硫装置に用いられる活性炭は、経年劣化により硫酸への転換効率が低下するため定期的に交換される。そのため、活性炭の経年劣化の進行度合いを評価し、活性炭の交換時期を定める必要がある。
また、活性炭を交換する際、あるいは排気脱硫装置を新規に導入する際には、硫酸への転換効率が高い活性炭を選定することが好ましい。活性炭の硫酸への転換効率が低いと、排気脱硫装置から排出される排気ガスに含まれる二酸化硫黄の量が多くなり、下流工程において中和剤が多く必要となるからである。そのため、活性炭を選定するために活性炭の性能を評価する必要がある。
【0008】
従来の活性炭の吸着能を評価する方法として、以下の3つの方法が知られている。
・RIトレーサー法
・吸着等温線から算出する方法
・活性炭試験方法(JIS K1474)
【0009】
このうちRIトレーサー法は、放射性同位元素をトレーサー(追跡子)として用い、放射性物質の検出感度が極めて大きいことを利用してある系内における物質の移動や分布、化学反応の過程などを調べる方法であり、この方法を用いることで活性炭の吸着能を評価できる。
しかるに、RIトレーサー法で活性炭の吸着能を評価するためには、長い測定時間が必要であるという問題がある。
また、測定員が被爆しないように注意する必要がある。
さらに、RIトレーサー法では実際の排気脱硫装置に近い条件で活性炭の吸着能を評価することは困難であるという問題がある。
【0010】
また、活性炭の希ガスに対する吸着等温線を測定することで、その吸着等温線から活性炭の希ガス単独の吸着能を算出できる。
しかるに、吸着等温線から吸着能を算出するにあたり、含水量等の影響を補正する必要があるため、測定精度が高くないという問題がある。
また、上記のような排気脱硫装置では、活性炭は希ガスではなく二酸化硫黄および酸素を吸着するため、吸着等温線の測定では実際の排気脱硫装置に近い条件で活性炭の吸着能を評価することは困難であるという問題がある。
【0011】
また、JIS K1474 に規格されている活性炭試験方法は、活性炭を既知量のヨウ素溶液に一定時間浸漬した後、そのヨウ素溶液に残留するヨウ素量をチオ硫酸ナトリウム溶液による滴定法で測定し、活性炭のヨウ素の吸着量を算出する方法である。
しかるに、上記活性炭試験方法では活性炭のヨウ素の吸着能は試験できるが、活性炭の二酸化硫黄の吸着能を試験できない。活性炭へのヨウ素の吸着は液相吸着であり、二酸化硫黄の吸着は気相吸着であるため、吸着機構が異なる。そのため、活性炭のヨウ素の吸着能と二酸化硫黄の吸着能とは必ずしも相関関係にあるとはいえないので、ヨウ素の吸着能から二酸化硫黄の吸着能を推測することもできない。そのため、上記活性炭試験方法では実際の排気脱硫装置に近い条件で活性炭の吸着能を評価することは困難であるという問題がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】LURGI、「SULFACID-ProcessDesulfurization of SO2-laden Waste Gases with Direst Production ofDilute Sulfuric Acid」、p.5
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は上記事情に鑑み、排気脱硫装置に近い条件で活性炭の性能を評価できる活性炭性能評価装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1発明の活性炭性能評価装置は、評価対象の活性炭が充填されており、二酸化硫黄と酸素とが混合され加湿された評価用ガスが供給され、該活性炭を通過した評価用ガスが排出される反応容器と、前記反応容器に供給される評価用ガス中の二酸化硫黄の濃度を測定する入口測定器と、前記反応容器から排出される評価用ガス中の二酸化硫黄の濃度を測定する出口測定器とを備えることを特徴とする。
第2発明の活性炭性能評価装置は、第1発明において、二酸化硫黄と酸素とが供給され、該二酸化硫黄と該酸素とを混合し加湿して前記評価用ガスを生成する加湿混合器と、該加湿混合器から前記評価用ガスを取り出し、前記反応容器に供給する供給器とを備えることを特徴とする。
第3発明の活性炭性能評価装置は、第2発明において、前記加湿混合器に二酸化硫黄を供給し、該二酸化硫黄の供給量を制御する二酸化硫黄供給源と、前記加湿混合器に酸素を供給し、該酸素の供給量を制御する酸素供給源とを備えることを特徴とする。
第4発明の活性炭性能評価装置は、第1、第2または第3発明において、前記反応容器には、該反応容器を加熱する加熱手段が設けられていることを特徴とする。
第5発明の活性炭性能評価方法は、評価対象の活性炭が充填された反応容器に、二酸化硫黄と酸素とが混合され加湿された評価用ガスを供給し、前記活性炭を通過した評価用ガスを前記反応容器から排出し、前記反応容器に供給される評価用ガス中の二酸化硫黄の濃度を測定し、前記反応容器から排出される評価用ガス中の二酸化硫黄の濃度を測定し、前記反応容器に供給される評価用ガス中の二酸化硫黄の濃度と、前記反応容器から排出される評価用ガス中の二酸化硫黄の濃度との差から、前記活性炭の吸着能を評価することを特徴とする。
第6発明の活性炭性能評価方法は、評価対象の活性炭が充填された反応容器に、二酸化硫黄と酸素とが混合され加湿された評価用ガスを供給し、前記活性炭を通過した評価用ガスを前記反応容器から排出し、前記活性炭を前記反応容器から取り出して水に所定時間浸漬し、浸漬後、前記水に含有される硫黄の量を測定して、前記活性炭の脱着能を評価することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
第1発明によれば、入口測定器で測定した二酸化硫黄の濃度と、出口測定器で測定した二酸化硫黄の濃度との差から、活性炭の吸着能を評価できる。また、二酸化硫黄と酸素とが混合され加湿された評価用ガス用いるので、実際の排気脱硫装置に近い条件で活性炭の性能を評価できる。
第2発明によれば、二酸化硫黄と酸素とを混合し加湿して評価用ガスを生成するので、実際の排気脱硫装置に近い条件で活性炭の性能を評価できる。
第3発明によれば、加湿混合器に供給する二酸化硫黄および酸素の供給量を制御できるので、反応容器に供給される評価用ガス中の二酸化硫黄の濃度を制御できる。そのため、様々な濃度条件で活性炭の性能を評価できる。また、反応容器に供給される評価用ガスの流量を制御できる。そのため、様々な流量条件で活性炭の性能を評価できる。
第4発明によれば、反応容器を加熱できるので、実際の排気脱硫装置の温度に近い条件で活性炭の性能を評価できる。また、様々な温度条件で活性炭の性能を評価できる。
第5発明によれば、二酸化硫黄と酸素とが混合され加湿された評価用ガス用いて活性炭の吸着能を評価するので、実際の排気脱硫装置に近い条件で活性炭の吸着能を評価できる。
第6発明によれば、二酸化硫黄と酸素とが混合され加湿された評価用ガスが通過した活性炭を用いて脱着能を評価するので、実際の排気脱硫装置に近い条件で活性炭の脱着能を評価できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る活性炭性能評価装置の説明図である
【図2】試験1における通ガス時間に対する出口二酸化硫黄濃度の変化を示すグラフである。
【図3】試験2における通ガス時間に対する出口二酸化硫黄濃度の変化を示すグラフである。
【図4】従来の排気脱硫装置の正面視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
本発明の一実施形態に係る活性炭性能評価装置Aを示す図1において、符号11は二酸化硫黄(SO2)ガスの供給源、符号12は酸素(O2)の供給源、符号20は二酸化硫黄供給源11および酸素供給源12から供給された二酸化硫黄と酸素とを混合し加湿して評価用ガスを生成する加湿混合器、符号30は加湿混合器20から評価用ガスが供給される反応容器、符号41は反応容器30に供給される評価用ガス中の二酸化硫黄の濃度を測定する入口測定器、符号42は反応容器30から排出される評価用ガス中の二酸化硫黄の濃度を測定する出口測定器である。
【0018】
二酸化硫黄供給源11は、二酸化硫黄ガスが充填されたガスボンベであり、レギュレータが接続されて、二酸化硫黄ガスの供給量を制御できるようになっている。また、酸素供給源12は、エアコンプレッサーであり、酸素の供給量を制御できるようになっている。
加湿混合器20に供給する二酸化硫黄および酸素の供給量を制御できるので、反応容器30に供給される評価用ガス中の二酸化硫黄の濃度を制御でき、様々な濃度条件で活性炭Cの性能を評価できる。また、反応容器30に供給される評価用ガスの流量を制御できるため、様々な流量条件で活性炭Cの性能を評価できる。
なお、酸素供給源12としては、エアコンプレッサーの他に標準空気のボンベや、酸素ボンベ等を用いることができる。
【0019】
加湿混合器20は、気密性の容器の中に水が保持されたものであり、二酸化硫黄供給源11に接続されたガス管51、および酸素供給源12に接続されたガス管52が、加湿混合器20内の水中に導かれている。したがって、二酸化硫黄および酸素で加湿混合器20内の水をバブリングすることにより加湿するとともに、二酸化硫黄と酸素とを混合して評価用ガスを生成することができる。
【0020】
加湿混合器20内の水面上にはガス管53の一端が接続されており、そのガス管53の他端は反応容器30の底面に接続されている。そのため、このガス管53を通じて、加湿混合器20から評価用ガスを取り出し、反応容器30に供給することができる。なお、ガス管53が特許請求の範囲に記載の供給器に相当する。
【0021】
なお、加湿混合器20には、図示しない加温機が取り付けられており、評価用ガスの温度を制御できるようになっている。この加温機としては、加湿混合器20の周囲に設けられたリボンヒーターや、シリコンラバーヒーター等を用いることができる。
そのため、実際の排気脱硫装置の排気ガス温度に近い条件で活性炭の性能を評価できる。また、評価用ガスの様々な温度条件で活性炭の性能を評価できる。
【0022】
反応容器30は、気密性のある円筒状の容器であり、評価対象の活性炭Cを充填することができるようになっている。ただし、反応容器30の形状や大きさは性能評価に最適なものを適宜選択することができる。
【0023】
反応容器30の上面にはガス管54が接続されており、そのガス管54を通じて活性炭Cを通った評価用ガスを排出できる。
【0024】
反応容器30には、その反応容器30を加熱する加熱手段31が設けられている。この加熱手段31としては、反応容器30の周囲に設けられたリボンヒーターや、シリコンラバーヒーター等を用いることができる。
加熱手段31により反応容器30を加熱できるので、実際の排気脱硫装置の温度に近い条件で活性炭の性能を評価できる。また、活性炭の様々な温度条件で活性炭の性能を評価できる。
【0025】
入口測定器41はガス中の二酸化硫黄の濃度を測定できるガス検知管であり、ガス管53に接続されている。そのため、反応容器30に供給される評価用ガス中の二酸化硫黄の濃度を測定することができる。
また、出口測定器42も入口測定器41と同様のガス検知管であり、ガス管54に接続されている。そのため、反応容器30から排出される評価用ガス中の二酸化硫黄の濃度を測定することができる。
【0026】
つぎに、活性炭性能評価装置Aを用いた活性炭の性能評価方法について説明する。
活性炭による二酸化硫黄の硫酸への転換は、以下の(1)〜(5)の工程で行われる。
(1)活性炭を覆う水に酸素と二酸化硫黄が吸収される。
(2)水に吸収された酸素と二酸化硫黄が拡散により活性炭の細孔内の活性点に移動する。
(3)二酸化硫黄と酸素と水とが反応し硫酸が生成される。
(4)生成された硫酸が活性炭の細孔から活性炭表面の水に拡散する。
(5)水により活性炭から硫酸が洗い流される。
上記の工程の内、工程(1)、(2)が活性炭への吸着、工程(4)、(5)が活性炭からの脱着である。そのため、活性炭の性能評価は、工程(1)、(2)の能力を示す吸着能の評価と、工程(4)、(5)の能力を示す脱着能の評価の2つの評価がある。
【0027】
(吸着能の評価方法)
まず、吸着能の評価方法について説明する。
まず、反応容器30に評価対象の活性炭Cを充填する。つぎに、二酸化硫黄供給源11および酸素供給源12から二酸化硫黄および酸素を供給し、加湿混合器20で二酸化硫黄と酸素とを混合し加湿して評価用ガスを生成する。その評価用ガスを反応容器30に供給し、活性炭Cを通過した評価用ガスを反応容器30から排出する。このとき、入口測定器41で反応容器30に供給される評価用ガス中の二酸化硫黄の濃度を測定し、出口測定器42で反応容器30から排出される評価用ガス中の二酸化硫黄の濃度を測定する。
【0028】
活性炭Cに評価用ガス中の二酸化硫黄が吸着されると、反応容器30に供給される評価用ガス中の二酸化硫黄の濃度よりも、反応容器30から排出される評価用ガス中の二酸化硫黄の濃度の方が低くなる。そのため、入口測定器41で測定した二酸化硫黄の濃度と、出口測定器42で測定した二酸化硫黄の濃度との差を求めることにより活性炭Cに吸着された二酸化硫黄の量を求めることができる。これにより、活性炭Cの吸着能を評価できる。
【0029】
ここで、活性炭性能評価装置Aは二酸化硫黄と酸素とが混合され加湿された評価用ガス用いるので、実際の排気脱硫装置に近い条件で活性炭の吸着能を評価できる。
【0030】
(脱着能の評価方法)
つぎに、脱着能の評価方法について説明する。
まず、活性炭性能評価装置Aにおいて活性炭Cに評価用ガスを所定時間供給する。これにより、活性炭Cに二酸化硫黄を吸着させる。つぎに、活性炭Cを反応容器30から取り出して水に所定時間浸漬する。これにより、水中に二酸化硫黄を脱着させる。水への浸漬後、水から活性炭Cを取り出し、水切りを行う。そして、水に含有される硫黄の量を測定して、活性炭Cの脱着能を評価する。なお、水に含有される硫黄の量はICP発光分光分析法、原子吸光光度法等により測定できる。また、イオンクロマトグラフ法、重量法、クロム酸バリウム吸光光度法等によって測定した硫酸イオンの量から硫黄の量を換算できる。
【0031】
以上のごとく、二酸化硫黄と酸素とが混合され加湿された評価用ガスが通過した活性炭Cを用いて脱着能を評価するので、実際の排気脱硫装置に近い条件で活性炭の脱着能を評価できる。
【0032】
つぎに、活性炭性能評価装置Aを用いて実際の活性炭を評価した試験について説明する。
用いた反応容器30は、内径50mmφ、長さ400mmの円筒状であり、ガラスで形成されている。この反応容器30に、評価対象の活性炭を200ml充填した。なお、評価する活性炭Cによって比重が異なるため、活性炭の充填重量は150〜200gである。また、評価用ガスの流量を1.9L/min、反応容器30に供給される評価用ガス中の二酸化硫黄の濃度(以下、入口二酸化硫黄濃度という。)を1.6%、反応容器30の温度を60℃とした。
【0033】
(試験1)
同一種類の活性炭のうち実際の排気脱硫装置で使用する前のもの、および使用した後のもの(約2年間使用)を用いて、前述の吸着能の評価方法に従い吸着能を評価した。反応容器30から排出される評価用ガス中の二酸化硫黄の濃度(以下、出口二酸化硫黄濃度という。)を出口測定器42で所定時間間隔で測定した結果、図2に示すグラフを得た。
図2に示すように、使用前の活性炭も使用後の活性炭も通ガス時間の経過とともに出口二酸化硫黄濃度が上昇していく事が分かる。しかし、使用後の活性炭に比べて使用前の活性炭の方が出口二酸化硫黄濃度の上昇が遅い事が分かる。
【0034】
活性炭への二酸化硫黄の吸着能を以下のように評価した。
まず、出口二酸化硫黄濃度がある閾値を超えた時点を破過時間と定義する。この閾値は、排気脱硫装置から排出される排気ガス中の二酸化硫黄の濃度の許容限度に相当する。そして、破過時間はその許容限度を超える時間に相当し、排気脱硫装置においてはこの破過時間を超える前に活性炭層を再生する工程を行う必要がある。本試験においては、閾値を0.6%とした。
【0035】
つぎに、入口二酸化硫黄濃度(本試験においては1.6%)から出口二酸化硫黄濃度を減算したものを、通ガス開始から破過時間まで積分して、吸着量を算出した。
表1に示すように、使用前の活性炭の破過時間は27.1分であり、吸着量は24.1[g-SO2/kg-AC]であったのに対し、使用後の活性炭の破過時間は18.4分であり、吸着量は11.2[g-SO2/kg-AC]であった。ここで、[g-SO2/kg-AC]とは、1kgの活性炭当たりに吸着または脱着された硫酸の量[g]を示す単位である。
これより、使用前の活性炭に比べて使用後の活性炭の方が破過時間が短く、活性炭層を再生する時間間隔を短くする必要があることが分かる。また、使用前の活性炭に比べて使用後の活性炭の方が吸着量が50%以上低下しており、経年劣化が生じていることが分かる。
【表1】

【0036】
本試験により、排気脱硫装置に用いられている活性炭の経年変化の進行度合いを把握でき、活性炭の交換の時期を予測することができる。
【0037】
(試験2)
3種類の活性炭X、Y、Zを用いて、前述の吸着能の評価方法に従い吸着能を評価した。出口測定器42で出口二酸化硫黄濃度を所定時間間隔で測定した結果、図3に示すグラフを得た。
図3に示すように、活性炭の種類によって、通ガス時間に対する出口二酸化硫黄濃度の変化が異なることが分かる。また、入口二酸化硫黄濃度が1.6%であることから、活性炭X、Yについては通ガス時間40分を経過すると、ほとんど吸着しておらず飽和状態となっていることが分かる。これに対して活性炭Zは、通ガス時間1時間でも飽和状態に達しておらず、まだ吸着可能であることが分かる。
また、試験1と同様の方法で、各活性炭の破過時間と吸着量を算出し、表2にまとめた。
【0038】
つぎに、1時間通ガス後の活性炭X,Y、Zを200mlの水に24時間浸漬して、前述の脱着能の評価方法に従い脱着能を評価した。水に含有される硫黄の量(脱着量)はICP発光分光分析法により測定した。
表2に、各活性炭X,Y、Zの脱着量をまとめた。
【表2】

【0039】
表2より活性炭の種類によって、破過時間、吸着量、脱着量が異なることが分かった。
排気脱硫装置に用いる活性炭としては、破過時間が長く、吸着量、脱着量が共に多い方が良い。本試験により、排気脱硫装置に用いる活性炭を選定するにあたり、実際の排気脱硫装置に近い条件で性能の良い活性炭を選定することができる。
【符号の説明】
【0040】
11 二酸化硫黄供給源
12 酸素供給源
20 加湿混合器
30 反応容器
41 入口測定器
42 出口測定器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
評価対象の活性炭が充填されており、二酸化硫黄と酸素とが混合され加湿された評価用ガスが供給され、該活性炭を通過した評価用ガスが排出される反応容器と、
前記反応容器に供給される評価用ガス中の二酸化硫黄の濃度を測定する入口測定器と、
前記反応容器から排出される評価用ガス中の二酸化硫黄の濃度を測定する出口測定器とを備える
ことを特徴とする活性炭性能評価装置。
【請求項2】
二酸化硫黄と酸素とが供給され、該二酸化硫黄と該酸素とを混合し加湿して前記評価用ガスを生成する加湿混合器と、
該加湿混合器から前記評価用ガスを取り出し、前記反応容器に供給する供給器とを備える
ことを特徴とする請求項1記載の活性炭性能評価装置。
【請求項3】
前記加湿混合器に二酸化硫黄を供給し、該二酸化硫黄の供給量を制御する二酸化硫黄供給源と、
前記加湿混合器に酸素を供給し、該酸素の供給量を制御する酸素供給源とを備える
ことを特徴とする請求項2記載の活性炭性能評価装置。
【請求項4】
前記反応容器には、該反応容器を加熱する加熱手段が設けられている
ことを特徴とする請求項1、2または3記載の活性炭性能評価装置。
【請求項5】
評価対象の活性炭が充填された反応容器に、二酸化硫黄と酸素とが混合され加湿された評価用ガスを供給し、
前記活性炭を通過した評価用ガスを前記反応容器から排出し、
前記反応容器に供給される評価用ガス中の二酸化硫黄の濃度を測定し、
前記反応容器から排出される評価用ガス中の二酸化硫黄の濃度を測定し、
前記反応容器に供給される評価用ガス中の二酸化硫黄の濃度と、前記反応容器から排出される評価用ガス中の二酸化硫黄の濃度との差から、前記活性炭の吸着能を評価する
ことを特徴とする活性炭性能評価方法。
【請求項6】
評価対象の活性炭が充填された反応容器に、二酸化硫黄と酸素とが混合され加湿された評価用ガスを供給し、
前記活性炭を通過した評価用ガスを前記反応容器から排出し、
前記活性炭を前記反応容器から取り出して水に所定時間浸漬し、
浸漬後、前記水に含有される硫黄の量を測定して、前記活性炭の脱着能を評価する
ことを特徴とする活性炭性能評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−211024(P2012−211024A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75902(P2011−75902)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【Fターム(参考)】