説明

活性炭粉末とその製造方法、及び電気二重層キャパシタ

【課題】電気容量の大きい、電気二重層キャパシタの電極活物質を提供する。
【解決手段】BET比表面積が1600〜3000m2/g(更に好ましくは2100〜3000m/g)の範囲にあって、平均細孔直径が2.0〜4.0nmの範囲にあり、かつ細孔の全容積が1.0〜3.0cm3/gの範囲にあり、平均アスペクト比が2以下であり、平均粒子径が1〜30μmの範囲にある活性炭粉末を、正極及び負極のうちの少なくとも一方が活物質として含む電気二重層キャパシタ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性炭粉末とその製造方法に関する。本発明はまた、その活性炭粉末を電極活物質に用いた電気二重層キャパシタにも関する。
背景技術
【0002】
活性炭は、各種の工業分野にわたって広く使用されており、空気浄化、放射性物質吸着、ヨウ素トラップ、メタン吸蔵、水素吸蔵、浄水製造、溶剤回収、脱色、水処理、ガスマスクでの用途などの目的で利用されている。また、近年では、キャパシタ(電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ)の電極活物質としても用いられていて、その高機能化が要望されている。
【0003】
電気二重層キャパシタは、電極と電解液との間の界面に形成される電気二重層を利用したエネルギー貯蔵デバイスである。この電気二重層キャパシタで用いる電極活物質としての活性炭は比表面積が大きい方が、電解液との間の界面が広くなり、静電容量が大きくなるので好ましい。従って、電気二重層キャパシタの電極活物質には、比表面積が大きい活性炭が利用されている。活性炭は、通常、繊維状の活性炭粒子からなる活性炭繊維と非繊維状(粒状)の活性炭粒子からなる活性炭粉末とに大別される。
【0004】
非特許文献1には、電気二重層キャパシタ用の活性炭について、低温と室温で、同じ電気二重層容量を形成させるには2nm以上の細孔が必要であると記載されている(p.80)。また、非特許文献1のp.79の表7には、比表面積が〜2500m2/g、平均細孔径が20〜40Å(2〜4nm)、累積細孔容積が0.5〜1.5cc/gのフェノール系の活性炭繊維が記載されている。但し、この非特許文献1に記載されているフェノール系活性炭繊維は、特殊なフェノール樹脂繊維(ノボロイド繊維)を炭化賦活して得られた活性炭繊維である(p.73−75)。この非特許文献1にはフェノール系以外の活性炭繊維として、レーヨン(セルロース)繊維を原料とするレーヨン系とポリアクリロニトリル繊維を原料とするアクリル系の活性炭繊維も記載されているが、レーヨン系の活性炭繊維では、比表面積が1000〜1500m2/gと小さく、平均細孔径も14Å(1.4nm)と小さい。また、アクリル系の活性炭繊維でも、比表面積が700〜1200m2/gと小さく、平均細孔径も10Å(1.0nm)と小さく、さらに累積細孔容積は〜1.1cc/gとされている。
【0005】
特許文献1には、電気二重層キャパシタ用の活性炭粉末として、リン原子含有量が1000〜20000ppmで、BET比表面積が1600〜2200m2/g、平均細孔径が1.7〜2.1nmの範囲にあって、細孔直径が1.4〜2.0nmの間の細孔容積が0.25cm3/g以上のリン化合物複合活性炭粉末が記載されている。但し、細孔容積の上限は、好ましくは0.5cm3/g以下と記載されている([0032])。また、この特許文献1には、上記の活性炭粉末の製造方法として、活性炭原料とリン酸とを130〜170℃で混練した後成型し、これを100〜230℃で加熱する第1加熱工程と、400〜600℃で加熱する第2加熱工程とを経た後、不活性ガス雰囲気下800℃以上で焼成して活性炭とリン化合物とを複合化する方法が記載されている。活性炭原料の例としては、堅木、軟木及びそれらの屑、トウモロコシの穂、コーヒー豆、米のもみ、果実の種、果実の殻などの植物や糖蜜やリグニンなどの残骸や石炭、タール、ピッチ、アスファルト、石油残留物が挙げられている。
【0006】
一方、特許文献2には、活性炭粉末の製造方法として、酢酸セルロース(セルロースアシレート)を炭化して炭化物を生成し、得られた炭化物を賦活する方法が記載されているが、得られた活性炭粉末について、その比表面積、平均細孔直径及び細孔容積の記載はない。但し、特許文献2の実施例で得られている活性炭粉末は、ヨウ素吸着量が1144mg/g程度であり、比表面積はあまり高くないと推察される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−21966号公報
【特許文献2】特開2008−201664号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】西野敦、直井勝彦,「電気化学キャパシタの開発と応用」,CMCテクニカルライブラリー173,シーエムシー出版,2004年6月26日発行、p.73−80
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
非特許文献1に記載されているフェノール系活性炭繊維は、比表面積、平均細孔径及び細孔容積のいずれも大きく、電気二重層キャパシタ用の電極活物質として有用な材料の一つであると考えられる。しかしながら、非特許文献1に記載されているフェノール系活性炭繊維は、特殊なフェノール樹脂繊維であるノボロイド繊維を原料として使用するため、汎用性が低く、生産コストに問題がある。また、繊維状の活性炭粒子は非繊維状の活性炭粒子と比較して、電極に成形する際に粒子間に隙間ができ易いため、活性炭繊維は活性炭粉末と比較して充填密度が低くなり易い。一方、特許文献1に記載されている活性炭粉末については、比表面積、平均細孔直径及び細孔容積の各特性が上記非特許文献1に記載されているフェノール系活性炭繊維より劣る。
【0010】
従って、本発明の目的は、比表面積、平均細孔直径及び細孔容積の各特性が従来のフェノール系活性炭繊維と同等もしくはそれより優れ、電気二重層キャパシタの電極活物質として有利に用いることができる活性炭粉末及びその製造方法を提供することにある。本発明の目的はまた、電気容量の大きい電気二重層キャパシタを提供することにもある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、酢酸セルロースを加熱して炭化させる炭化工程、炭化工程で得られた炭化物を、炭化工程で酢酸セルロースを炭化させるときの温度よりも50℃以上高い温度で加熱して炭化物に残留する酢酸成分を揮発させて除去する酢酸除去工程、そして酢酸除去工程で酢酸が除去された炭化物を賦活処理する賦活工程を含む方法を用いることによって、BET比表面積が1600〜3000m2/gの範囲にあって、平均細孔直径が2.0〜4.0nmの範囲にあり、かつ細孔の全容積が1.0〜3.0cm3/gの範囲にある活性炭粉末を得ることができることを見出した。そして、その活性炭粉末は電気二重層キャパシタの電極活物質として用いた場合に高い静電容量を示すことを確認して、本発明を完成させた。
【0012】
従って、本発明は、BET比表面積が1600〜3000m2/gの範囲にあって、平均細孔直径が2.0〜4.0nmの範囲にあり、かつ細孔の全容積が1.0〜3.0cm3/gの範囲にある活性炭粉末にある。
【0013】
上記本発明の活性炭粉末の好ましい態様は、次の通りである。
(1)BET比表面積が2100〜3000m2/gの範囲、特に2600〜3000m2/gの範囲にある。
(2)平均細孔直径が2.2〜2.8nmの範囲にある。
(3)細孔の全容積が1.1〜2.5cm3/gの範囲にある。
(4)平均アスペクト比が5以下、さらに好ましくは3以下、特に好ましくは2以下である。
(5)平均粒子径が1〜30μmの範囲にある。
(6)電気二重層キャパシタ用である。
【0014】
本発明はまた、正極と負極と電解液とからなる電気二重層キャパシタであって、正極及び負極のうちの少なくとも一方が上記本発明の活性炭粉末を含む電気二重層キャパシタにもある。
【0015】
本発明はさらに、酢酸セルロースを加熱して炭化させる炭化工程、炭化工程で得られた炭化物を、炭化工程で酢酸セルロースを炭化させたときの温度よりも50℃以上高い温度で加熱して炭化物に残留する酢酸成分を揮発させて除去する酢酸除去工程、そして酢酸除去工程で酢酸が除去された炭化物を賦活処理する賦活工程を含む上記本発明の活性炭粉末の製造方法にもある。
【0016】
上記本発明の活性炭粉末の製造方法の好ましい態様は、次の通りである。
(1)炭化工程において、酢酸セルロースをリン化合物の存在下で加熱して炭化させる。
(2)酢酸セルロースが、リン化合物を含む酢酸セルロースである。
(3)酢酸セルロースが、リン化合物をリン量として0.1〜5.0質量%の範囲にて含む。
(4)酢酸セルロースが、リン化合物を実質的に含まない酢酸セルロースと、リン化合物を含む酢酸セルロースとの混合物である。
(5)酢酸セルロースとリン化合物との混合物を加熱して酢酸セルロースを炭化させる。
(6)炭化工程において、酢酸セルロースを不活性ガス雰囲気下にて250〜350℃の温度で加熱して炭化させる。
(7)酢酸除去工程において、炭化物を不活性ガス雰囲気下にて380〜700℃の温度で加熱する。
(8)賦活工程において、炭化物を、二酸化炭素ガス、水蒸気、酸素ガス、塩化水素ガス、アンモニアガス及び空気からなる群より選ばれる気体雰囲気下にて800〜1100℃の温度で加熱する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の活性炭粉末は、電気二重層キャパシタの電解液との接触下において高い静電容量を示す。また、本発明の活性炭粉末は非繊維状であって、活性炭繊維と比較して、粒子形状や粒子サイズが均一であることから充填密度を高くすることができる。従って、本発明の活性炭粉末を電極活物質として用いた電気二重層キャパシタは高い電気容量を示す。また、電気二重層キャパシタ用の電極活物質は低コスト化が要望されており、この点からも酢酸セルロースを原料として製造することができる本発明の活性炭粉末は、活性炭繊維と比べて有利である。本発明の活性炭粉末は、大きなBET比表面積を有することから、気相吸着用、気体貯蔵用、浄水用もしくは脱色用の活性炭粉末としても有利に使用することができる。
また、本発明の製造方法を利用することによって、通常は廃棄される酢酸セルロースを原料に用いて、高性能の活性炭粉末を工業的に有利に製造することができるとの利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に従う、コイン型電気二重層キャパシタの一例の断面図である。
【図2】実施例3〜5の活性炭粉末の製造に使用したローラハースキルン内の温度分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の活性炭粉末は微小の活性炭粒子からなる。活性炭粒子は非繊維状であって、平均アスペクト比(活性炭粒子の長径と短径との比:長径/短径)が、一般に5以下、好ましくは3以下、特に好ましくは2以下である。
【0020】
本発明の活性炭粉末は、BET比表面積が1600〜3000m2/gの範囲、好ましくは、2100〜3000m2/gの範囲、より好ましくは、2300〜3000m2/gの範囲、特に好ましくは、2600〜3000m2/gの範囲にある。活性炭粉末を電気二重層キャパシタの電極活物質に使用した場合、活性炭粉末と電解液との間の界面に電気二重層が形成されるため、活性炭粉末のBET比表面積が大きい方が静電容量が高くなる。従って、活性炭粉末は大きな比表面積にて電解液と接している方が有利となる。このため、次に述べるように、活性炭粉末の平均細孔直径と細孔容積が重要となる。
【0021】
本発明の活性炭粉末は、平均細孔直径が2.0〜4.0nmの範囲、好ましくは2.0〜3.5nmの範囲、より好ましくは2.0〜2.8nmの範囲、特に好ましくは2.2〜2.8nmの範囲にある。平均細孔直径は、活性炭粉末を電気二重層キャパシタの電解液との接触下に置いた場合に発生する活性炭粉末の細孔中への電解液の浸入の容易さの指標となる。すなわち、平均細孔直径が大きい方が、電解液の活性炭粉末の細孔中への浸入が容易となる。但し、平均細孔直径が過度に大きくなると、活性炭粉末に形成できる細孔の数が少なくなるため、活性炭粉末のBET比表面積が小さくなり易い。
【0022】
本発明の活性炭粉末は、細孔の全容積が1.0〜3.0cm3/gの範囲、好ましくは1.1〜2.5cm3/gの範囲にある。細孔全容積もまた、活性炭粉末を電気二重層キャパシタの電解液との接触下に置いた場合に発生する活性炭粉末の細孔中への電解液の浸入の容易さの指標となる。すなわち、細孔全容積が大きい方が、電解液の活性炭粉末の細孔中への浸入量が多くなる。但し、細孔全容積が過度に大きくなると、活性炭粉末の強度が弱くなる。
【0023】
本発明の活性炭粉末は、ヨウ素吸着量が1600〜2300mg/gの範囲にあることが好ましく、2000〜2300mg/gの範囲にあることがより好ましい。このmg/gの単位で表されるヨウ素吸着量の値に対する、m2/gの単位で表されるBET比表面積の比(BET比表面積/ヨウ素吸着量)は1.1〜2.0の範囲にあることが好ましく、1.1〜1.5の範囲にあることがより好ましい。
【0024】
本発明の活性炭粉末は、平均粒子径が1〜30μmの範囲にあることが好ましく、3〜20μmの範囲にあることがより好ましい。
【0025】
本発明の活性炭粉末はリン化合物を含有していてもよい。但し、活性炭粉末に含まれるリン化合物の量はリン量として5.0質量%以下であることが好ましく、0.3〜1質量%の範囲にあることがより好ましく、0.3〜0.7質量%の範囲にあることが特に好ましい。
【0026】
本発明の活性炭粉末は、例えば、酢酸セルロースを加熱して炭化させる炭化工程、炭化工程で得られた炭化物を、炭化工程で酢酸セルロースを炭化させるときの温度よりも50℃以上高い温度で加熱して炭化物に残留する酢酸成分を揮発させて除去する酢酸除去工程、そして酢酸除去工程で酢酸が除去された炭化物を賦活処理する賦活工程を含む方法により製造することができる。
【0027】
上記の活性炭粉末の製造方法において、出発原料として用いる酢酸セルロースは、酢酸の置換度が2〜3の範囲にあることが好ましい。酢酸セルロースは、トリアセチルセルロースを主成分とするセルロースであることが好ましい。酢酸セルロースの形態には制限はなく、フレーク状、粉末状及び塊状のいずれの形態であってもよい。
【0028】
酢酸セルロースは可塑剤を含んでいてもよい。可塑剤の例としては、リン酸エステル、カルボン酸とアルコールのエステル及びポリエステルを挙げることができる。リン酸エステルの例としては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェートを挙げることができる。カルボン酸の例としては、フタル酸、クエン酸、オレイン酸、リシノール酸及びセバシン酸を挙げることができる。アルコールの例としては、脂肪族アルコール(好ましくは炭素原子数が1〜6の脂肪族アルコール)、グリコール酸、グリコール(好ましくは炭素原子数が2〜3のグリコール)、グリセロール、ジグリセロール、ペンタエリスリトール及びジペンタエリスリトールを挙げることができる。エステルの例としては、フタル酸と脂肪族アルコールとのエステル(例、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジエチルヘキシルフタレート)及びクエン酸と脂肪族アルコールとのエステル(例、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル)を挙げることができる。ポリエステルの例としては、芳香族ジカルボン酸とグリコールとのポリエステルを挙げることができる。
【0029】
酢酸セルロースは、写真フィルムの支持体や液晶表示装置用の偏光板の保護フィルムの材料として利用されている。本発明の活性炭粉末の製造方法の実施に際しては、写真フィルムの生産工程や液晶表示装置用偏光板の生産工程で生じた不良品から回収した酢酸セルロースを原料として使用することができる。また、本発明の活性炭粉末の製造方法の実施に際しては、写真フィルムや液晶表示装置用偏光板の使用済み品から回収された酢酸セルロースを原料として用いてもよい。
【0030】
炭化工程では、酢酸セルロースをリン化合物の存在下で加熱して炭化させることが好ましい。リン化合物は加熱前に出発原料の酢酸セルロースに加えておくことが好ましい。すなわち、出発原料は、リン化合物を含む酢酸セルロース、リン化合物を実質的に含まない酢酸セルロースとリン化合物を含む酢酸セルロースとの混合物、または酢酸セルロースとリン化合物との混合物であることが好ましい。
【0031】
リン化合物含有酢酸セルロースは、リン化合物をリン量として0.1〜5.0質量%の範囲にて含むことが好ましく、0.1〜3.0質量%の範囲にて含むことがより好ましく、0.1〜1.0質量%の範囲にて含むことが特に好ましい。リン化合物は、リン酸エステルであることが好ましい。リン酸エステルの例は前記の通りである。リン化合物は、酢酸セルロース中に分子分散していることが好ましい。
【0032】
リン化合物を実質的に含まない酢酸セルロースとは、リン含有量が0.1質量%未満、特に0.01質量%未満のものをいう。リン化合物を実質的に含まない酢酸セルロースと混合するリン化合物含有酢酸セルロースは、上記の通りである。リン化合物を実質的に含まない酢酸セルロースとリン化合物含有酢酸セルロースとの混合比は、質量比で30:70〜70:30の範囲にあることが好ましい。
【0033】
酢酸セルロースと混合するリン化合物の例としては、リン酸、リン酸塩及びリン酸エステルを挙げることができる。リン酸は、オルトリン酸及び縮合リン酸を含む。リン酸塩の例としては、アンモニウム塩、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩を挙げることができる。リン酸エステルの例は前記の通りである。リン化合物はリン酸エステルであることが好ましい。酢酸セルロースとリン化合物の混合物は、リン化合物をリン量として0.1〜5.0質量%の範囲にて含むことが好ましく、0.1〜3.0質量%の範囲にて含むことがより好ましく、0.1〜1.0質量%の範囲にて含むことが特に好ましい。酢酸セルロースは、リン化合物含有酢酸セルロースであってもよいし、リン化合物を実質的に含まない酢酸セルロースであってもよい。
【0034】
炭化工程では、酢酸セルロースを不活性ガスの雰囲気下にて250〜350℃の温度で加熱して炭化させることが好ましい。不活性ガスの例としては、窒素ガス及びアルゴンガス、ヘリウムガス、キセノンガス、ネオンガスなどの希ガスを挙げることができる。加熱時間は、少なくとも酢酸セルロースが炭化物となるまでであるが、通常は5〜180分の範囲で、例えば5〜30分もしくは30〜120分の範囲である。炭化工程において、酢酸セルロースは、通常、一旦溶融し、次いで固化した後に炭化する。酢酸セルロースが一旦溶融することによって、原料の酢酸セルロースがリン化合物を含む場合には炭化物中にリン化合物を均一に分散させることができる。得られた炭化物は、次の酢酸除去工程で炭化物中に残留する酢酸を揮発除去することによって細孔が形成される。なお、この炭化工程においても、通常は酢酸の一部は揮発により除去される。
【0035】
酢酸除去工程では、炭化物を不活性ガスの雰囲気下にて加熱して、酢酸成分を揮発させることにより除去することが好ましい。加熱温度は、一般に380〜700℃の範囲、好ましくは500〜650℃の範囲である。不活性ガスの例としては、窒素ガス及びアルゴンガス、ヘリウムガス、キセノンガス、ネオンガスなどの希ガスを挙げることができる。加熱時間は、一般に10分間〜10時間の範囲、好ましくは30分間〜5時間の範囲である。酢酸除去工程において、炭化物から酢酸成分が揮発するときに生成する通路が、細孔として炭化物内に多数形成される。酢酸除去工程にて、炭化物内に多数の細孔が形成されていることは、炭化物のヨウ素吸着量を測定することによって確認することができる。酢酸除去工程前の炭化物は、ヨウ素吸着量が通常は100mg/g以下であるが、酢酸除去工程後の炭化物は、ヨウ素吸着量が通常は300〜800mg/gの範囲、特に400〜800mg/gの範囲と大幅に大きくなる。上記の不活性ガスに二酸化炭素ガス、水蒸気、酸素、空気などの酸化性ガスを混合すると、細孔形成が促進される場合がある。酸化性ガスの使用量は、不活性ガスと酸化性ガスの合計量に対して20質量%以下となる量であることが好ましく、5〜15質量%の範囲となる量であることが特に好ましい。また、炭化工程で不活性ガスに該酸化性ガスを混合し、連続して同一雰囲気下で酢酸除去工程を行なってもよい。酢酸除去工程後の炭化物に残留している酢酸の量は、炭化物の全体量に対する酢酸含有量として20質量%以下となる量であることが好ましく、10質量%以下となる量であることが特に好ましい。
【0036】
炭化工程及び酢酸除去工程において発生する酢酸を含む揮発ガスは、燃焼させてもよいし、また液化して回収してもよい。回収した酢酸を含む液体は農業用途製品、工業用酢酸及び燃料などの原料として利用することができる。また、回収した液体を原料の酢酸セルロースに添加することによって、酢酸除去工程での炭化物の細孔形成が促進され、活性炭の特性が向上する。
【0037】
賦活工程において、賦活処理は、炭化物を賦活ガスの存在下にて加熱することにより行なうことが好ましい。賦活ガスの例としては、二酸化炭素ガス、水蒸気、酸素ガス、塩化水素ガス、アンモニアガス及び空気を挙げることができる。賦活ガスとしては、二酸化炭素ガス及び水蒸気が好ましく、水蒸気が特に好ましい。加熱温度は、一般に800〜1100℃の範囲、好ましくは900〜1100℃の範囲である。加熱時間は、一般に10分間〜10時間の範囲、好ましくは30分間〜5時間の範囲である。賦活処理によって、酢酸除去工程で炭化物内に形成された細孔が発達して、細孔の径や容積が大きくなる。炭化物内に分散されているリン化合物は、賦活処理による細孔の発達を促進する効果があると理解される。
【0038】
賦活ガスに二酸化炭素ガスを用いる場合、賦活工程にて排出されるのは一酸化炭素ガスと二酸化炭素ガスとを含む混合ガスである。この排出された混合ガスは回収して賦活ガスとして利用してもよい。混合ガスを賦活ガスとして利用する場合、予め該混合ガス中に含まれる一酸化炭素ガスを二酸化炭素ガスに変換して、混合ガス中の二酸化炭素ガス量を増加させることが好ましい。混合ガス中の一酸化炭素ガスを二酸化炭素ガスに変換する方法としては、混合ガスを酸素の存在下で酸化触媒と接触させる方法、混合ガスを水蒸気存在下でシフト触媒と接触させる方法、混合ガスを酸素の存在下で燃焼する方法を挙げることができる。
【0039】
炭化工程、酢酸除去工程及び賦活工程の実施のためには、公知の加熱炉を用いることができる。加熱炉は回分式でもよいし、連続式でもよい。回分式加熱炉の例としては、炭窯式炭化炉、撹拌式炭化炉、トロリー式炭化炉及び流動層式炭化炉を挙げることができる。連続式加熱炉では、炉内での被加熱物の搬送方式に特には制限はない。被加熱物の搬送方式の例としては、ローラ式、ベルトコンベア式、流動層式、ロータリキルン式及びスクリューコンベア式を挙げることができる。生産効率上は、連続式加熱炉を用いることが好ましい。
【0040】
炭化工程、酢酸除去工程及び賦活工程の各工程は、それぞれ別の加熱炉を用いて順次行なってもよいし、一つの加熱炉を用いて連続的に行なってもよい。また、炭化工程と酢酸除去工程を一つの加熱炉を用いて連続的に行ない、賦活工程は別の加熱炉を用いて行なってもよいし、酢酸除去工程と賦活工程を一つの加熱炉を用いて連続的に行ない、炭化工程は別の加熱炉を用いて行なってもよい。
【0041】
炭化工程と酢酸除去工程での加熱処理は撹拌を行わずに静置状態で行なう方が、細孔が発達した炭化物が得られる傾向がある。このため、炭化工程と酢酸除去工程は、炉内での被加熱物の搬送方式がローラ式もしくはベルトコンベア式の連続式加熱炉を用いて行なうことが好ましい。連続式加熱炉には、被加熱物の搬送方式がローラ式のローラハースキルンを用いることが、炉内での温度の制御が容易であるので好ましい。
【0042】
ローラハースキルンでは、炉内を250〜350℃の温度に調整された第一加熱領域と、第一加熱領域よりも50℃以上高く、かつ380〜700℃の温度に調整された第二加熱領域とに分け、原料の酢酸セルロースを収納した耐熱容器を第一領域から第二領域に搬送することによって炭化工程と酢酸除去工程とを行なうことが好ましい。均質の炭化物を得るために、二個以上の耐熱容器を重ねることができる。
賦活工程は生産効率を高めるために、ロータリキルンを用いて行なうことが好ましい。
【0043】
賦活処理後の炭化物(活性炭)は、必要に応じて粉砕処理及び分級処理を行なって、粒子サイズを調整することが望ましい。粉砕処理には、例えば、ボールミル、ディスクミル、ビーズミル及びジェットミルなどの粉砕装置を用いることができる。粉砕装置は、ボールミル(特に、遊星ボールミル)、ディスクミル(特に、石臼式ディスクミル)を用いることが好ましい。これらのミルの粉砕媒体は、活性炭への金属の混入を防ぐために、アルミナ製、セラミック製またはジルコニア製のいずれかであることが好ましい。分級処理には、例えば、ステンレス製の篩やサイクロン型分級機を用いることができる。
【0044】
次に、本発明の活性炭粉末を電極活物質に用いた電気二重層キャパシタについて、説明する。
図1は、本発明に従う、電気二重層キャパシタの一例の断面図である。
【0045】
図1に示されている電気二重層キャパシタは、一般にコイン型と呼ばれている電気二重層キャパシタである。図1において、電気二重層キャパシタは、正極容器1、正極容器1の底部表面の上に積載された、正極集電体2と正極活物質シート3とを圧着させて形成した正極シート4、正極シート4の上に積載されたセパレータ5、セパレータ5の上に積載された、負極活物質シート6と負極集電体7とを圧着させて形成した負極シート8、負極シート8の上に被せられた負極容器9、正極容器1と負極容器9とを封止するガスケット10、そして内部に封入されている電解液(図示せず)からなる。
【0046】
正極活物質シート3及び負極活物質シート6はいずれも、一般に電極活物質とバインダーと導電材との混合物からなる。本発明では、正極活物質シート3及び負極活物質シート6のうちの少なくとも一方(好ましくは両方)の電極活物質に本発明の活性炭粉末を用いる。バインダーの例としては、ポリテトラフルオロエチレン及びポリビニリデンフロライドを挙げることができる。導電材の例としては、アセチレンブラック及びカーボンブラックを挙げることができる。
【0047】
電解液としては、電解質を含む有機溶媒溶液が一般に用いられる。電解質の例としては、テトラアルキルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート、テトラアルキルホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、テトラアルキルホスホニウムテトラフルオロボレート及びテトラアルキルアンモニウムテトラフルオロボレートを挙げることができる。これらの電解質は一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。有機溶媒の例としては、プロピレンカーボネートやエチレンカーボネートなどのアルキレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン及びメチルホルマートを挙げることができる。これらの有機溶媒は一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。電解液の電解質の濃度は、一般に0.5〜2.0モル/Lの範囲にある。
【0048】
正極容器1、正極集電体2、負極集電体7及び負極容器9の材料には、一般に金属が用いられる。金属の例としては、アルミニウム及びステンレスを挙げることができる。セパレータ5には、一般に多孔質シートが用いられる。多孔質シートの例としては、ガラスウールシート及び不織布シートを挙げることができる。ガスケット10の材料には樹脂が用いられる。樹脂の例としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン及びポリアミドを挙げることができる。
【0049】
本発明の電気二重層キャパシタはコイン型電気二重層キャパシタに限定されるものではない。本発明の電気二重層キャパシタは、捲回型の電気二重層キャパシタであってもよい。捲回型の電気二重層キャパシタとは、長尺状の正極活物質シートと長尺状の負極活物質シートとの間にセパレータを介在させた状態で捲回して作製した電極ロールと、電解液とを容器に収容して封止した構成の電気二重層キャパシタである。
【実施例】
【0050】
[実施例1]
<活性炭粉末の製造>
トリフェニルホスフェートを含有する酢酸セルロース(リン量:0.1〜5質量%)をフレーク状に粉砕して、耐熱容器に入れた。その容器に温度計と窒素ガス導入口とガス排気口とを備えた蓋をした。次いで、耐熱容器の窒素ガス導入口に窒素ガスを供給しながら、耐熱容器の内部温度が300℃となるように加熱した。耐熱容器内の酢酸セルロースフレークは溶解し、液体となった後、炭化して炭化物が生成した(炭化工程)。
【0051】
炭化物が生成した後、耐熱容器の内部温度を600℃にまで昇温させて、その温度で1時間保持して、炭化物に残留する酢酸を除去した(酢酸除去工程)。加熱後、室温まで放冷した後、蓋を外して、炭化物を取り出した。酢酸除去工程後の炭化物のヨウ素吸着量を測定したところ、580mg/gであった。酢酸除去工程後の炭化物中の酢酸含有量は6.0質量%であった。
【0052】
酢酸除去工程で得られた炭化物を、窒素ガス導入口と二酸化炭素ガス導入口とガス排気口とを備えたロータリキルン炉に投入した。ロータリキルン炉を1rpmの回転速度で回転させ、二酸化炭素ガス導入口に二酸化炭素ガスを16L/分の流量で供給しながら、炉内温度を1050℃にまで昇温させ、その温度で3時間保持して、炭化物を賦活した(賦活工程)。その後、放冷し、炉内温度が800℃になった時点で、二酸化炭素ガスの供給を止め、窒素ガス導入口に窒素ガスを供給し、炉内温度が100℃になった時点で炉内から賦活処理した炭化物(活性炭)を取り出した。得られた活性炭をジルコニア製の容器とボールを用いた遊星ボールミルにて粉砕処理した後、分級処理して活性炭粉末を得た。得られた活性炭粉末のリン含有量は0.56質量%であった。また、活性炭粉末の平均粒子径は3.8μmであった。
【0053】
<活性炭粉末の評価>
得られた活性炭粉末のBET比表面積、平均細孔直径、細孔全容積、ヨウ素吸着量及び電気二重層キャパシタ用電解液との接触下での静電容量を、下記の方法により測定した。その結果を表1に示す。
【0054】
(BET比表面積、平均細孔直径及び細孔全容積の測定方法)
窒素ガスを用いたBET法により測定した吸着等温線より算出した。
【0055】
(ヨウ素吸着量の測定方法)
JIS K−1474(活性炭試験方法)に規定されている方法に従って測定した。
【0056】
(静電容量の測定方法)
下記の通り、コイン型電気二重層キャパシタを製造して、静電容量を測定した。
(1)コイン型電気二重層キャパシタの製造
活性炭粉末10mgとアセチレンブラック4mgとポリテトラフルオロエチレン(PTFE)2mgとを秤量し、これらを乳鉢に入れて混練した。得られた混練物を直径16mmの円形シート状に成型し、これを活物質シートとした。次に、この活物質シートをメッシュ状のアルミニウム製集電体に圧着して、電極シートを作製した。電極シートは二個作製し、一方を正極シート、他方を負極シートとした。次いで、正極シートと負極シートとを減圧下にて加熱乾燥した。
【0057】
加熱乾燥した正極シートと負極シートとを、アルゴンガス雰囲気のグローブボックスに入れ、そのグローブボックス内にて、図1に示すようなコイン型電気二重層キャパシタを製造した。すなわち、正極容器の中に正極シートを、正極容器の底部表面と電極シートのアルミニウム製集電体とが接するように積層し、次いで、正極シートの上にガラスウール製セパレータを積層した。次に、このままガラスウール製セパレータに、電解液(1.5モル/Lのトリエチルメチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェートを含有するプロピレンカーボネート溶液)を滴下して、上記セパレータに電解液を十分にしみ込ませた後、セパレータの上に負極シートを、セパレータ表面と負極シートの活物質シートとが接するように積層した。そして最後に、負極シートの上から負極容器を被せ、ガスケットを用いて封止した。
【0058】
(2)静電容量の測定
コイン型電気二重層キャパシタを、1mA(電極面積当たりの電流密度:0.5mA/cm2)の定電流にて、電圧が3.0Vとなるまで充電した。次に、充電したコイン型電気二重層キャパシタを、1mAの定電流にて電圧が0Vとなるまで放電させ、コイン型電気二重層キャパシタの放電電圧と放電時間との関係をプロットした放電カーブを作成した。放電カーブの勾配から、常法に従って活性炭粉末の静電容量を算出した。
【0059】
[実施例2]
実施例1の活性炭粉末の製造において、酢酸除去工程での加熱温度を400℃としたこと以外は、実施例1と同様に処理して、活性炭粉末を製造した。なお、酢酸除去工程後の炭化物は、ヨウ素吸着量が386mg/g、酢酸含有量が6.0質量%であった。得られた活性炭粉末は、リン含有量が0.58質量%であり、平均粒子径は3.7μmであった。得られた活性炭粉末のBET比表面積、平均細孔直径、細孔全容積、ヨウ素吸着量及び静電容量を実施例1と同様に測定した。表1に、その結果を示す。
【0060】
[比較例1]
市販の電気二重層キャパシタ用活性炭粉末について、静電容量を実施例1と同様に測定した。表1に、その結果と活性炭粉末の比表面積、細孔全容積及びヨウ素吸着量を示す。
【0061】
【表1】

【0062】
表1の結果から明らかなように、本発明に従う活性炭粉末は、市販の活性炭粉末と比較して、高いBET比表面積と細孔全容積を示し、電気二重層キャパシタの電極活物質として用いた場合に高い静電容量を示すことが確認された。
【0063】
[実施例3]
トリフェニルホスフェートの代わりにフェニレンジカルボン酸とエチレンジオールとのポリエステルを10〜15質量%の範囲で含有する酢酸セルロースを用いたこと以外は、実施例1と同様に処理して活性炭粉末を得た。酢酸除去工程後の炭化物は、ヨウ素吸着量が500mg/gであり、酢酸含有量は5.0質量%であった。得られた活性炭粉末は、BET比表面積が2200m2/g、平均細孔直径が2.3nm、細孔全容積が1.30cm3/g、そしてヨウ素吸着量が1800mg/gであった。
【0064】
[実施例4]
トリフェニルホスフェートを含有する酢酸セルロース(リン量:1.5質量%)のフレーク状粉砕品を耐熱容器に入れて、炉内温度を図2に示す温度分布に調整したローラハースキルン(長さ10m)内に1m/時間の速度で搬送して、炭化工程と酢酸除去工程とを連続的に行なった。なお、図2において、横軸はローラハースキルンの入り口からの距離を、縦軸は該距離での温度を示す。得られた炭化物は、ヨウ素吸着量が476mg/g、酢酸含有量が5.4質量%であった。得られた炭化物を電気炉に入れ、該電気炉に水蒸気を水として0.5mL/分の速度で導入しながら、850℃の温度で3時間加熱して賦活工程を行なった。賦活工程後の炭化物を、実施例1と同様に粉砕処理し、次いで分級処理して活性炭粉末を得た。得られた活性炭粉末は、BET比表面積が2100m2/g、平均細孔直径が2.32nm、細孔全容積が1.19cm3/g、そしてヨウ素吸着量が1803mg/gであった。
【0065】
[実施例5]
賦活工程において、加熱時間を4時間としたこと以外は実施例4と同様に処理して活性炭粉末を得た。得られた活性炭粉末は、BET比表面積が2435m2/g、平均細孔直径が2.44nm、細孔全容積が1.48cm3/g、そしてヨウ素吸着量が1837mg/gであった。
【0066】
[実施例6]
賦活工程において、電気炉に二酸化炭素ガスを200mL/分の速度で導入しながら、950℃の温度で3時間加熱したこと以外は実施例4と同様に処理して活性炭粉末を得た。得られた活性炭粉末は、BET比表面積が2775m2/g、平均細孔直径が3.77nm、細孔全容積が2.61cm3/g、そしてヨウ素吸着量が2111mg/gであった。
【0067】
[実施例7](出発原料の酢酸セルロースに含まれるリン化合物の影響)
実施例3で使用したフェニレンジカルボン酸とエチレンジオールとのポリエステルを10〜15質量%の範囲で含有する酢酸セルロースのフレーク状粉砕物100質量部に、実施例1で使用したトリフェニルホスフェートを含有する酢酸セルロース(リン量:0.1〜5質量%)のフレーク状粉砕物を100質量部加えて混合した。得られた混合物(リン含有量:0.05〜2.5質量%)を出発原料に用いたこと以外は、実施例1と同様に処理して活性炭粉末を得た。得られた活性炭粉末のBET比表面積、平均細孔直径、細孔全容積、そしてヨウ素吸着量を、実施例3で得られた活性炭粉末の結果を共に表2に示す。
【0068】
[実施例8](出発原料の酢酸セルロースに含まれるリン化合物の影響)
実施例3で使用したフェニレンジカルボン酸とエチレンジオールとのポリエステルを10〜15質量%の範囲で含有する酢酸セルロースをフレーク状に粉砕して得た粉砕物100質量部に、トリフェニルホスフェートを10質量部加えて混合した。得られた混合物(リン含有量:1質量%)を出発原料に用いたこと以外は、実施例1と同様に処理して活性炭粉末を得た。得られた活性炭粉末のBET比表面積、平均細孔直径、細孔全容積、そしてヨウ素吸着量を表2に示す。
【0069】
【表2】

【0070】
上記表2の結果から、出発原料の酢酸セルロースがリン化合物を含む場合に、得られる活性炭粉末のBET比表面積、平均細孔直径、細孔全容積そしてヨウ素吸着量のいずれについても高い値を示す傾向があることが分かる。
【符号の説明】
【0071】
1 正極容器
2 正極集電体
3 正極活物質シート
4 正極シート
5 セパレータ
6 負極活物質シート
7 負極集電体
8 負極シート
9 負極容器
10 ガスケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
BET比表面積が1600〜3000m2/gの範囲にあって、平均細孔直径が2.0〜4.0nmの範囲にあり、かつ細孔の全容積が1.0〜3.0cm3/gの範囲にある活性炭粉末。
【請求項2】
BET比表面積が2100〜3000m2/gの範囲にある請求項1に記載の活性炭粉末。
【請求項3】
平均細孔直径が2.2〜2.8nmの範囲にある請求項1もしくは2に記載の活性炭粉末。
【請求項4】
細孔の全容積が1.1〜2.5cm3/gの範囲にある請求項1乃至3のうちのいずれかの項に記載の活性炭粉末。
【請求項5】
平均アスペクト比が2以下である請求項1に記載の活性炭粉末。
【請求項6】
平均粒子径が1〜30μmの範囲にある請求項1に記載の活性炭粉末。
【請求項7】
正極と負極と電解液とからなる電気二重層キャパシタであって、正極及び負極のうちの少なくとも一方が請求項1に記載の活性炭粉末を含む電気二重層キャパシタ。
【請求項8】
酢酸セルロースを加熱して炭化させる炭化工程、炭化工程で得られた炭化物を、炭化工程で酢酸セルロースを炭化させたときの温度よりも50℃以上高い温度で加熱して炭化物に残留する酢酸成分を揮発させて除去する酢酸除去工程、そして酢酸除去工程で酢酸が除去された炭化物を賦活処理する賦活工程を含む請求項1に記載の活性炭粉末の製造方法。
【請求項9】
炭化工程において、酢酸セルロースをリン化合物の存在下で加熱して炭化させる請求項8に記載の活性炭粉末の製造方法。
【請求項10】
酢酸セルロースが、リン化合物をリン量として0.1〜5.0質量%の範囲にて含む請求項9に記載の活性炭粉末の製造方法。
【請求項11】
酢酸セルロースが、リン化合物を実質的に含まない酢酸セルロースと、リン化合物を含む酢酸セルロースとの混合物である請求項9に記載の活性炭粉末の製造方法。
【請求項12】
酢酸セルロースとリン化合物との混合物を加熱して、酢酸セルロースを炭化させる請求項9に記載の活性炭粉末の製造方法。
【請求項13】
炭化工程において、酢酸セルロースを不活性ガス雰囲気下にて250〜350℃の温度で加熱して炭化させる請求項8または9に記載の活性炭粉末の製造方法。
【請求項14】
酢酸除去工程において、炭化物を不活性ガス雰囲気下にて380〜700℃の温度で加熱する請求項8または9に記載の活性炭粉末の製造方法。
【請求項15】
賦活工程において、炭化物を、二酸化炭素ガス、水蒸気、酸素ガス、塩化水素ガス、アンモニアガス及び空気からなる群より選ばれる気体雰囲気下にて800〜1100℃の温度で加熱する請求項8または9に記載の活性炭粉末の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−42146(P2013−42146A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−198621(P2012−198621)
【出願日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【分割の表示】特願2012−521889(P2012−521889)の分割
【原出願日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【出願人】(594159445)南開工業株式会社 (14)
【Fターム(参考)】