説明

活性酸素発生材料用組成物および活性酸素発生材料

【課題】活性酸素発生能の経時劣化が少ない、耐久性に優れた活性酸素発生材料を与え得る活性酸素発生材料用組成物および活性酸素発生材料を提供すること。
【解決手段】ポリアニリン、導電性カーボン材料、例えば、下記式(1)で示されるような重合性化合物、および熱または光重合開始剤を含む活性酸素発生材料用組成物。


(式中、R1およびR2は、互いに独立して、水酸基(ただし、R1およびR2が同時に水酸基となることはない)、または重合性官能基を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性酸素発生材料用組成物および活性酸素発生材料に関し、さらに詳述すると、活性酸素発生剤としてポリアニリンを含有する活性酸素発生材料用組成物およびこれから得られる活性酸素発生材料に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアニリンは、電子の授受により還元型と酸化型の形態が可逆的に変化する導電性高分子であり、これが陰極に存在すると、酸素を還元して活性酸素とする電極反応を促進するレドックス触媒として働く。
したがって、電気的に還元電位を与えてポリアニリンに電子を供給すれば、供給された電子により、水中の溶存酸素を還元して連続的に活性酸素を発生させることが可能となる。
【0003】
例えば、特許文献1には、このようなポリアニリンの性質を利用した水の殺菌方法が提案されている。
また、特許文献2〜6には、陽極と、ポリアニリンを担持させた陰極との間に通電させることで、活性酸素を発生させる方法や装置が開示されている。
しかし、ポリアニリンを含む活性酸素発生材料は、通電を繰り返すことで、活性酸素発生能が低下することが知られており、その耐久性に問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−175801号公報
【特許文献2】特開平10−99863号公報
【特許文献3】特開平10−316403号公報
【特許文献4】特開平11−79708号公報
【特許文献5】特開平11−158675号公報
【特許文献6】特開2003−181191号公報
【特許文献7】特開2007−324142号公報
【特許文献8】特開2007−324143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、活性酸素発生能の経時劣化が少ない、耐久性に優れた活性酸素発生材料を与え得る活性酸素発生材料用組成物およびこれから得られる活性酸素発生材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上述した活性酸素発生能の低下の原因が、ポリアニリンを長時間水中で使用することによる膜の劣化にあると推測し、この劣化を抑える方法として、塗膜の基材密着性、硬度および耐水性を向上させることに着目し、鋭意検討を重ねた結果、ポリアニリン、導電性カーボン材料、および重合性化合物を含む組成物が、活性酸素発生能の経時劣化が少ない、耐久性に優れた活性酸素発生材料(膜)を与え得ることを見いだし、本発明を完成した。
なお、上記特許文献7および8には、ポリアニリン等の導電性高分子に、アリル基やビニル基等の重合性官能基を有するモノマーやポリマーを添加し、加熱やUV照射で硬化させることで塗膜の基材密着性、硬度、耐水性等を向上させる手法が開示されているが、この塗膜の性能向上と活性酸素発生能との関係については明らかにされていない。
【0007】
すなわち、本発明は、
1. ポリアニリン、導電性カーボン材料、重合性化合物、および熱または光重合開始剤を含むことを特徴とする活性酸素発生材料用組成物、
2. 前記導電性カーボン材料が、カーボンブラック、ケッチェンブラック、およびカーボンナノチューブから選ばれる1種または2種以上である1の活性酸素発生材料用組成物、
3. 前記重合性化合物が、(メタ)アクリル基含有化合物、ウレタン基含有化合物、エポキシ基含有化合物、メラミン樹脂、ゼラチンおよびその誘導体、セルロースおよびその誘導体、フェノール樹脂、有機ケイ素化合物、ユリア樹脂、ジアリルフタレート樹脂、並びにブチラール樹脂からなる群から選ばれる1種または2種以上である1または2の活性酸素発生材料用組成物、
4. 前記重合性化合物が、酸性官能基を有する化合物である1〜3のいずれかの活性酸素発生材料用組成物、
5. 前記重合性化合物が、式(1)で示される化合物である4の活性酸素発生材料用組成物、
【化1】

(式中、R1およびR2は、互いに独立して、水酸基(ただし、R1およびR2が同時に水酸基となることはない)、または重合性官能基を示す。)
6. 前記重合性化合物が、式(2)で示される化合物である4の活性酸素発生材料用組成物、
【化2】

(式中、R3は、重合性官能基を示す。)
7. 前記重合性化合物が、式(3)で示される化合物である4の活性酸素発生材料用組成物、
【化3】

(式中、R4は、重合性官能基を示す。)
8. 前記重合性官能基が、式(4)または式(5)で示される基である5〜7のいずれかの活性酸素発生材料用組成物、
【化4】

(式(4)中、R5、R6およびR7は、互いに独立して、水素原子、メチル基、またはハロゲン化メチル基を示し、kは0〜8の整数を示す。)
【化5】

(式(5)中、R8は、水素原子、メチル基、またはハロゲン化メチル基を示し、p、q、およびrは、0〜8の整数を示す。ただし、pおよびqが同時に0となることはない。)
9. 1〜8のいずれかの活性酸素発生材料用組成物を硬化させてなる活性酸素発生材料
を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、活性酸素発生能の経時劣化が少ない、耐久性に優れた活性酸素発生材料を与え得る活性酸素発生材料用組成物およびこれから得られる耐久性に優れた活性酸素発生材料を提供できる。
本発明の組成物を用いることで、活性酸素の発生能およびその耐久性が大幅に向上したポリアニリン含有活性酸素発生材料の作製が可能になる。
また、この材料は、熱交換器、蒸発器、ヒーター、オイルクーラー、ラジエター、コンデンサーなどの各種機器へ好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】活性酸素発生能を測定するためのセルを示す模式図である。
【図2】比較例1および実施例1〜4で作製した被膜の活性酸素発生試験を行った結果を示すグラフであり、縦軸は6時間2.5Vを印加した後の過酸化水素の発生濃度を、横軸は試験の繰り返し回数をそれぞれ示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
本発明に係る活性酸素発生材料用組成物は、ポリアニリン、導電性カーボン材料、重合性化合物、および熱または光重合開始剤を含むものである。
本発明において、ポリアニリンとしては、特に限定されるものではなく、従来公知の種々のポリアニリンを用いることができ、市販品や、例えば、特許第2855206号公報記載の製造方法等の酸化剤を用いる化学的重合法や、電気化学的重合法等の各種製法によって得られたポリアニリンを用いることができ、その形態は、酸化型、還元型のいずれでもよい。
【0011】
本発明の組成物は、導電補助剤である導電性カーボン材料を含有する。
これによって、得られる活性酸素発生材料(塗膜)の導電性が向上する結果、活性酸素発生能を向上し得る。
使用可能な導電性カーボン材料としては、特に限定されるものではなく、例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブ、フラーレン、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック、グラファイト、ランプブラック、活性炭、カーボンナノホーン、カーボンフィブリル等が挙げられるが、これらの中でも、導電性をより向上させることを考慮すると、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブが好ましく、活性酸素発生能をも考慮すると、ケッチェンブラックが好適である。
【0012】
さらに、本発明の組成物は、重合性官能基を有する重合性化合物を含有する。
これによって、得られる活性酸素発生材料(膜)の、基材密着性、硬度、および耐水性が向上する結果、その耐久性を向上し得る。
そして、ポリアニリン、導電性カーボン材料、および重合性化合物の3成分を含む組成物とすることによって、得られる活性酸素発生材料(膜)の表面が微視的な相分離を起こして酸素や水との接触面積が大幅に向上し、これによって、表面反応の効率が大きく向上すると推測され、導電性カーボン材料の添加から予想される導電性を上回るなど、より高性能化を達成し得る。
【0013】
ここで、重合性化合物としては、重合性官能基を有する化合物であれば、モノマーでも、ポリマーでもよく、その種類は特に限定されるものではない。
その具体例としては、(メタ)アクリル基含有化合物、ウレタン基含有化合物、エポキシ基含有化合物、メラミン樹脂、ゼラチンおよびその誘導体、セルロースおよびその誘導体、フェノール樹脂、有機ケイ素化合物、ユリア樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ブチラール樹脂などが挙げられる。
【0014】
(メタ)アクリル基含有化合物としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリオキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカニルジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリオキシプロピル(メタ)アクリレート、トリス−2−ヒドロキシエチルイソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリス−2−ヒドロキシエチルイソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、グリセリンメタクリレートアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸ビニル、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。
また、上述した(メタ)アクリレートモノマーを重合して得られるアクリル樹脂を用いることもでき、その具体例としては、KAYARAD PET−30、KAYARAD DPHA(日本化薬(株)製)やウレタンアクリレートUA−306H(共栄社化学(株)製)等が挙げられる。
【0015】
ウレタン基含有化合物としては、ポリエステルウレタン、ポリエーテルウレタン等が挙げられる。
エポキシ基含有化合物としては、トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレート、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,2−エポキシ−4−(エポキシエチル)シクロヘキサン、グリセロールトリグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、2,6−ジグリシジルフェニルグリシジルエーテル、1,1,3−トリス[p−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル]プロパン、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジルエステル、4,4’−メチレンビス(N,N−ジグリシジルアニリン)、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、ビスフェノールA−ジグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0016】
また、少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ樹脂である、YH−434、YH434L(東都化成(株)製)、シクロヘキセンオキサイド構造を有するエポキシ樹脂である、エポリードGT−401、同GT−403、同GT−301、同GT−302、セロキサイド2021、セロキサイド3000(ダイセル化学工業(株)製)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂である、エピコート(現、jER)1001、同1002、同1003、同1004、同1007、同1009、同1010、同828(以上、ジャパンエポキシレジン(株)製)、ビスフェノールF型エポキシ樹脂である、エピコート(現、jER)807(ジャパンエポキシレジン(株)製)、フェノールノボラック型エポキシ樹脂である、エピコート(現、jER)152、同154(以上、ジャパンエポキシレジン(株)製)、EPPN201、同202(以上、日本化薬(株)製)、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂である、EOCN−102、EOCN−103S、EOCN−104S、EOCN−1020、EOCN−1025、EOCN−1027(以上、日本化薬(株)製)、エピコート(現、jER)180S75(ジャパンエポキシレジン(株)製)、脂環式エポキシ樹脂である、デナコールEX−252(ナガセケムテックス(株)製)、CY175、CY177、CY179(以上、CIBA−GEIGY A.G製)、アラルダイトCY−182、同CY−192、同CY−184(以上、CIBA−GEIGY A.G製)、エピクロン200、同400(以上、DIC(株)製)、エピコート(現、jER)871、同872(以上、ジャパンエポキシレジン(株)製)、ED−5661、ED−5662(以上、セラニーズコーティング(株)製)、脂肪族ポリグリシジルエーテルである、デナコールEX−611、同EX−612、同EX−614、同EX−622、同EX−411、同EX−512、同EX−522、同EX−421、同EX−313、同EX−314、同EX−321(ナガセケムテックス(株)製)等を用いることもできる。
【0017】
ゼラチンおよびその誘導体としては、ゼラチンの酸無水物付加体(例えばフタル化ゼラチン、コハク化ゼラチン、トリメリット化ゼラチン等)、ラクトン付加体(グルコノ−δ−ラクトン付加ゼラチン等)、アシル化ゼラチン(アセチル化ゼラチン等)、エステル化ゼラチン(メチルエステル化ゼラチン等)、ゼラチン有機酸塩(ゼラチン−酢酸塩、ゼラチン−ステアリン酸塩、ゼラチン−安息香酸塩等)などが挙げられる。
セルロースおよびその誘導体としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ニトロセルロース、ベンジルセルロース、アセチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。
【0018】
フェノール樹脂としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂等のノボラック型樹脂;トリフェノールメタン型フェノール樹脂等の多官能型フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂等の変性フェノール樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等のビスフェノール化合物などが挙げられる。
有機ケイ素化合物としては、エチルシリケート、メチルシリケート、プロピルシリケート、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
なお、以上で説明した重合性化合物は、単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよく、この際、異なるカテゴリの2種以上を組み合わせてもよい。
【0019】
特に本発明においては、同一骨格内にスルホ基、ホスホン基、カルボキシル基等の酸性の官能基を有する重合性化合物を用いることが好ましい。
このような化合物は、重合性基の重合によるバインダー作用(基材密着性、硬度、耐水性の向上)に加え、ポリアニリンに対するドーパントとしても作用するため、得られる活性酸素発生材料(膜)の導電性をより一層向上し得る。
そして、このドーパントとしての作用は、活性酸素発生材料の耐久性の向上だけでなく、活性酸素の初期発生量の向上にも寄与する。
このような化合物としては、例えば、下記式(1)〜(3)で示されるものが挙げられる。
【0020】
【化6】

(式中、R1およびR2は、互いに独立して、水酸基(ただし、R1およびR2が同時に水酸基となることはない)、または重合性官能基を示し、R3およびR4は、互いに独立して、重合性官能基を示す。)
【0021】
上記重合性官能基としては、重合性を有する官能基であれば、特に限定されるものではないが、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、ビニルエーテル基、エポキシ基、グリシジル基等を含有する基が好ましく、特に、下記式(4),(5)で示される基が好適である。
【0022】
【化7】

【0023】
上記式(4)中、R5、R6およびR7は、互いに独立して、水素原子、メチル基、ハロゲン化メチル基を示す。
ここで、ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素原子が挙げられ、ハロゲン化メチル基としては、メチル基の水素原子の1〜3個が、互いに独立して、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子で置換された基が挙げられ、具体的には、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、クロロメチル基、ジクロロメチル基、トリクロロメチル基、ブロモメチル基、ジブロモメチル基、トリブロモメチル基、ヨードメチル基、ジヨードメチル基、トリヨードメチル基等が挙げられる。
これらの中でも、好ましくは、水素原子、メチル基である。
kは0〜8の数を示すが、好ましくは1〜8の整数である。
【0024】
一方、式(5)中、R8は、水素原子、メチル基、ハロゲン化メチル基を示す。ハロゲン化メチル基としては、上記と同様のものが挙げられる。この場合も、好ましくは、水素原子、メチル基である。
p、q、およびrは、0〜8の整数を示すが、好ましくは、1〜8の整数である。なお、pおよびqが同時に0となることはない。
【0025】
重合性基および酸性官能基を有する化合物の具体例としては、2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート(共栄社化学(株)製、商品名「ライトエステルPA」)、アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノメタクリレート(ユニケミカル(株)製、商品名「ホスマーPE」)、アシッドホスホオキシエチルメタクリレート(ユニケミカル(株)製、商品名「ホスマーM」)、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、(メタ)アクリル酸等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0026】
本発明の組成物は、熱または光重合開始剤を含有する。これらの重合開始剤は特に限定されるものではなく、従来公知のものから適宜選択して用いることができる。
熱重合開始剤の具体例としては、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシアセテート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネートなどが挙げられる。
光重合開始剤の具体例としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾフェノン、ヒドロキシアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、α,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェノイルフォスフィンオキシドなどが挙げられる。
【0027】
本発明の活性酸素発生材料用組成物において、導電性カーボン材料の含有量は、ポリアニリン100質量部に対して、10〜200質量部が好ましく、40〜60質量部がより好ましい。
また、重合性化合物の含有量は、ポリアニリン100質量部に対して、10〜200質量部が好ましく、50〜100質量部がより好ましい。
重合開始剤の配合量は、重合性化合物100質量部に対して、1〜20質量部が好ましく、4〜6質量部がより好ましい。
【0028】
本発明の活性酸素発生材料用組成物は、上述した各成分を任意の順序で混合して調製することができるが、予め、ポリアニリンと導電性カーボン材料とを混合し、導電性カーボン材料を良く分散させた状態で、重合性化合物および重合開始剤を混合することが好ましい。
【0029】
この際、必要に応じて適宜有機溶媒を用いてもよい。
使用可能な有機溶媒としては、例えば、例えば、トルエン、p−キシレン、o−キシレン、m−キシレン、エチルベンゼン、スチレン、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコ−ルモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール、1−オクタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、トリメチレングリコール、1−メトキシ−2−ブタノール、シクロヘキサノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ベンジルアルコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、γ−ブチロラクトン、ε−カプロラクタム、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルノーマルブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸イソプロピルケトン、酢酸ノーマルプロピル、酢酸イソブチル、酢酸ノーマルブチル、乳酸エチル、メタノール、エタノール、イソプロパノール、tert−ブタノール、アリルアルコール、ノーマルプロパノール、2−メチル−2−ブタノール、イソブタノール、ノーマルブタノール、2−メチル−1−ブタノール、1−ペンタノール、2−メチル−1−ペンタノール、2−エチルヘキサノール、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、N−シクロヘキシル−2−ピロリジノン、モルホリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、N−ホルミルモルホリン、N−アセチルモルホリン、N−メチルモルホリン、N−アクリロイルモルホリン、N−(3−アミノ)モルホリン等が挙げられるが、ポリマーの溶解性の観点から、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ε−カプロラクタム、N−アクリロイルモルホリン等が好適である。
【0030】
有機溶媒を用いる場合、組成物中の固形分濃度は、目的とする材料(膜)の厚みに応じて適宜設定すればよく、例えば、固形分濃度0.1〜50質量%程度、好ましくは0.1〜20質量%程度とすればよい。
なお、本発明においては、本発明の効果を損なわない限りにおいて、その他の成分、例えば、レベリング剤、界面活性剤等が含まれていてもよい。
【0031】
以上説明した本発明の活性酸素発生材料用組成物は、これを光や熱によって反応硬化させて活性酸素発生材料とすることができる。
この際、本発明の組成物を、基材に塗布し、その後、加熱や光照射することで所望の膜を形成することができる。
組成物の塗布方法は任意であり、例えば、スピンコート法、ディップ法、フローコート法、インクジェット法、スプレー法、バーコート法、グラビアコート法、スリットコート法、ロールコート法、転写印刷法、刷毛塗り、ブレードコート法、エアーナイフコート法等の方法を採用できる。
【0032】
また、基材としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のプラスチック、ガラス、石英、セラミックス等からなる基材を挙げることができる。
加熱する場合、その温度は、用いる溶媒や重合開始剤によって変動するものであるため一概には規定できないが、通常、40〜400℃で行うことができる。
【実施例】
【0033】
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0034】
[比較例1]
N−メチル−2−ピロリドン(純正化学(株)製、純正特級)(以下、NMPという)441g、およびエチレングリコールモノブチルエーテル(東京化成工業(株)製)50gの混合溶媒中に、特許第2855206号公報の参考例1記載の方法にて合成したエメラルジンベース型ポリアニリン(Mw:53000、Mn:19000)9gを加え、45分間撹拌した。
さらに、この液体に、カーボン系の導電補助剤としてケッチェンブラック4.5gを添加し、30分間撹拌した後、この液を容器ごと氷冷しながら、プローブ型超音波照射機(hielscher社製 UIP2000)で1000Wの超音波を5分間ずつ2回照射することでエメラルジンベース/ケッチェンブラックの混合分散液を調製した。
これをPET基材にワイヤーバー((株)エスエムテー製、No.22、ウェット膜厚50μm)およびワイヤーバーコーター((株)エスエムテー製、PM−9050MC)を用いて塗布した後、100℃にて20分間乾燥し、活性酸素発生材料被膜を作製した。
【0035】
[実施例1]
上記比較例1で作製したポリアニリン/ケッチェンブラック混合分散液7.5gに、ペンタエリスリトールトリアクリレート(KAYARAD PET30、日本化薬(株)製)10.0g、AIBN0.5g、およびNMP15.0gを混合した熱硬化性樹脂組成物0.2gを混合し、活性酸素発生材料用組成物を得た。
これをPET基材にワイヤーバー((株)エスエムテー製、No.22、ウェット膜厚50μm)およびワイヤーバーコーター((株)エスエムテー製、PM−9050MC)を用いて塗布した後、100℃にて20分間乾燥し、活性酸素発生材料被膜を作製した。
【0036】
[実施例2]
ペンタエリスリトールトリアクリレートを、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(KAYARAD DPHA、日本化薬(株)製)に変更した以外は、実施例1と同様にして、活性酸素発生材料用組成物および活性酸素発生材料被膜を作製した。
【0037】
[実施例3]
ペンタエリスリトールトリアクリレートを、骨格内にホスホン基を有するアシッドホスホオキシエチルメタクリレート(ホスマーM、ユニケミカル(株)製)に変更した以外は、実施例1と同様にして、活性酸素発生材料用組成物および活性酸素発生材料被膜を作製した。
【0038】
[実施例4]
ペンタエリスリトールトリアクリレートとAIBNを、それぞれアシッドホスホオキシエチルメタクリレート(ホスマーM、ユニケミカル(株)製)と光重合開始剤イルガキュア184(チバ・ジャパン社製)に変更し、100℃で20分間加熱した後に、紫外線照射器で紫外線を照射した以外は、実施例1と同様にして、活性酸素発生材料用組成物および活性酸素発生材料被膜を作製した。
【0039】
[比較例2]
NMP441g、エチレングリコールモノブチルエーテル50gの混合溶媒中に、比較例1と同一のエメラルジンベース型ポリアニリン(Mw:53000、Mn:19000)9gを加え、45分間撹拌した。この液を容器ごと氷冷しながら、プローブ型超音波照射機(hielscher社製 UIP2000)で1000Wの超音波を5分間ずつ2回照射することでエメラルジンベースの分散液を調製した。
これをPET基材にワイヤーバー((株)エスエムテー製、No.22、ウェット膜厚50μm)およびワイヤーバーコーター((株)エスエムテー製、PM−9050MC)を用いて塗布した後、100℃にて20分間乾燥し、活性酸素発生材料被膜を作製した。
【0040】
[比較例3]
比較例2で作製したポリアニリン含有NMP分散液7.5gに、ペンタエリスリトールトリアクリレート(KAYARAD PET30、日本化薬(株)製)10.0g、AIBN0.5g、およびNMP15.0gを混合した熱硬化性樹脂組成物0.2gを混合し、活性酸素発生材料用組成物を得た。
これをPET基材にワイヤーバー((株)エスエムテー製、No.22、ウェット膜厚50μm)およびワイヤーバーコーター((株)エスエムテー製、PM−9050MC)を用いて塗布した後、100℃にて20分間乾燥し、活性酸素発生材料被膜を作製した。
【0041】
[比較例4]
ペンタエリスリトールトリアクリレートを、アシッドホスホオキシエチルメタクリレート(ホスマーM、ユニケミカル(株)製)に変更した以外は、比較例3と同様にして、活性酸素発生材料用組成物および活性酸素発生材料被膜を作製した。
【0042】
〈活性酸素発生量測定〉
活性酸素の発生量を直接測定することは困難であるため、活性酸素によって発生する過酸化水素の発生量を、図1に示される測定セル1を用いて定量した。
上記実施例1〜4および比較例1〜4で作製した被膜を、2.5cm×5.5cmで各2枚ずつ切り取って、試験片とした。切り取った試験片は塗工していない面同士を重ねて測定セル1の陰極部10に用い、陽極部20には、Carbon felt(A4サイズ,2t)(有限会社筑波物質情報研究所販売、日本カーボン(株)製)を用い、電源部30には、直流安定化電源(AD−8735D、(株)エー・アンド・デイ製)を用い、活性酸素発生槽40には水道水50gを入れた。
2.5Vの直流電圧を6時間印加した後の過酸化水素発生量を半定量イオン試験紙(Quautofix(登録商標) Peroxide25(MACHEREY−NAGEL GmbH&Co.KG製)の色の変化から読み取った。
その結果、比較例1および実施例1〜4で作製した被膜からは過酸化水素の発生が確認されたが、比較例2〜4で作製した被膜からは過酸化水素の発生が確認されなかった。
【0043】
また、通電させた後のポリアニリン塗膜を速やかに測定セル1から取りはずし、一晩静置した後、再び測定セル1に装着し、2.5Vの電圧を6時間印加し、通電により発生した活性酸素から生じた過酸化水素の量を再度定量した。この試験を所定回数繰り返し、その都度、過酸化水素発生量を定量し、耐久性を調べた。結果を図2に示す。
【0044】
図2に示されるように、重合性化合物を添加していない比較例1の被膜に比べ、実施例1〜4の被膜は、活性酸素の初期発生能が向上しているうえに、繰り返し試験後の活性酸素発生能の低下が抑制され、その耐久性にも優れていることがわかる。
また、実施例1,2と実施例3,4とを比較すればわかるように、酸性の官能基を有する重合性化合物を含有する組成物から得られた被膜の方が、耐久性により優れていることがわかる。
【符号の説明】
【0045】
1 測定セル
10 陰極部
20 陽極部
30 電源部
40 活性酸素発生槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアニリン、導電性カーボン材料、重合性化合物、および熱または光重合開始剤を含むことを特徴とする活性酸素発生材料用組成物。
【請求項2】
前記導電性カーボン材料が、カーボンブラック、ケッチェンブラック、およびカーボンナノチューブから選ばれる1種または2種以上である請求項1記載の活性酸素発生材料用組成物。
【請求項3】
前記重合性化合物が、(メタ)アクリル基含有化合物、ウレタン基含有化合物、エポキシ基含有化合物、メラミン樹脂、ゼラチンおよびその誘導体、セルロースおよびその誘導体、フェノール樹脂、有機ケイ素化合物、ユリア樹脂、ジアリルフタレート樹脂、並びにブチラール樹脂からなる群から選ばれる1種または2種以上である請求項1または2記載の活性酸素発生材料用組成物。
【請求項4】
前記重合性化合物が、酸性官能基を有する化合物である請求項1〜3のいずれか1項記載の活性酸素発生材料用組成物。
【請求項5】
前記重合性化合物が、式(1)で示される化合物である請求項4記載の活性酸素発生材料用組成物。
【化1】

(式中、R1およびR2は、互いに独立して、水酸基(ただし、R1およびR2が同時に水酸基となることはない)、または重合性官能基を示す。)
【請求項6】
前記重合性化合物が、式(2)で示される化合物である請求項4記載の活性酸素発生材料用組成物。
【化2】

(式中、R3は、重合性官能基を示す。)
【請求項7】
前記重合性化合物が、式(3)で示される化合物である請求項4記載の活性酸素発生材料用組成物。
【化3】

(式中、R4は、重合性官能基を示す。)
【請求項8】
前記重合性官能基が、式(4)または式(5)で示される基である請求項5〜7のいずれか1項記載の活性酸素発生材料用組成物。
【化4】

(式(4)中、R5、R6およびR7は、互いに独立して、水素原子、メチル基、またはハロゲン化メチル基を示し、kは0〜8の整数を示す。)
【化5】

(式(5)中、R8は、水素原子、メチル基、またはハロゲン化メチル基を示し、p、q、およびrは、0〜8の整数を示す。ただし、pおよびqが同時に0となることはない。)
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項記載の活性酸素発生材料用組成物を硬化させてなる活性酸素発生材料。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−42532(P2011−42532A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−192030(P2009−192030)
【出願日】平成21年8月21日(2009.8.21)
【出願人】(000003986)日産化学工業株式会社 (510)
【Fターム(参考)】