説明

流し台

【課題】流し台の基本構造に大幅な変更を生じさせることなく、そのキャビネットを構成する幕板の内面側に適切に包丁を収納できるようにする。
【解決手段】シンク2の前側面とその両側に位置されるキャビネット1を構成する側板11の端部11aとを前方から覆う幕板10を、この側板11に対して、その下端側において傾動可能に組み付けると共に、幕板10の内面10a側に、この内面に包丁Nの刃Na巾面を向き合わせ、かつ、包丁Nの切っ先を斜め下に柄尻Ndを斜め上にするようにして包丁Nの刃Naを支持する包丁ホルダー3を備えている。前記側板11に、幕板10における傾動の中心となる軸10cより下方の部分10dをその傾動位置で入り込ませると共に、内側にこの部分に突き当たる規制面11cを備えた凹部11bを形成させている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、流し台のキャビネットを構成する幕板の内面側に包丁を収納できるように構成された流し台の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
流し台のシンクの前側面は、側板間に亘るようにして固定された幕板によって覆われている。この幕板の外側に上扉を設けこの上扉と幕板との間に包丁の収納ボックスを設けたものがある。(特許文献1参照)
【0003】
しかるに、流し台のシンクの前側面と幕板との間には、シンクの開口と天板の前端との間に間隔が形成されることから、必ず一定の隙間が形成される。この隙間に前記のような収納ボックスが納まり、幕板自体を前記のような上扉として機能させるようにできれば、既存の流し台の設計を大幅に変更することなく、こうした収納機能を流し台に付加させることができる。
【特許文献1】実用新案登録第3070747号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明が解決しようとする主たる問題点は、流し台の基本構造に大幅な変更を生じさせることなく、そのキャビネットを構成する幕板の内面側に適切に包丁を収納できるようにする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を達成するために、この発明にあっては、流し台を、以下の(1)〜(4)の構成を備えたものとした。
(1)シンクの前側面とその両側に位置される流し台のキャビネットを構成する側板の端部とを前方から覆う幕板を、この側板に対して、その下端側において傾動可能に組み付けると共に、
(2)この幕板の内面側に、この内面に包丁の刃巾面を向き合わせ、かつ、包丁の切っ先を斜め下に柄尻を斜め上にするようにして包丁の刃を支持する包丁ホルダーを備えており、
(3)しかも、前記側板に、幕板における傾動の中心となる軸より下方の部分をその傾動位置で入り込ませると共に、内側にこの部分に突き当たる規制面を備えた凹部を形成させ、
(4)または、幕板における傾動の中心となる軸より下方の部分に、傾動位置で側板の端部に突き当たる規制面を、この部分にカッティングを施すことにより形成させてなる。
【0006】
かかる構成によれば、幕板の内面側にこの幕板とシンクの前側面との間の隙間に納まる態様で包丁ホルダーを設け、また、このように設けた包丁ホルダーを幕板と側板とに若干の加工などを施すだけで幕板の傾動によって都合良く利用できるようにすることができる。
【0007】
前記ステーター体とローター体とから構成されローター体の回転に制動を付与するように構成されたダンパー装置を構成するこのステーター体及びローター体のいずれか一方側を幕板側に取り付け、
かつ、これらの他方を取付具を介して側板側に取り付けることで、幕板を傾動可能に組み付けさるようにしておくこともある。
【0008】
このようにした場合、ダンパー装置を介して、幕板の傾動が突飛なものにならない態様で、幕板を傾動可能に側板に組み合わせることができ、最小の部品点数をもって幕板と化粧板との間の隙間を使い勝手の良い包丁の収納として構成させることができる。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、流し台の基本構造に大幅な変更を生じさせることなく、より具体的には、既存の流し台の幕板をそのまま利用してこれに包丁ホルダーを付加して、流し台のキャビネットを構成する幕板の内面側に適切に包丁を収納可能な流し台を構成できる。幕板とその下の扉板などとのデザイン上の一体感も損なうことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図1〜図9に基づいて、この発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0011】
なお、ここで図1〜図6は幕板10と側板11との干渉を側板11側の加工により回避させた例を、図7〜図8は幕板10と側板11との干渉を幕板10側の加工により回避させた例を、それぞれ示している。
【0012】
具体的には、図1および図2は流し台Kの要部を断面にして示しており図2は幕板10を開かせた状態を示している。また、図3はこの流し台Kを構成する幕板10と包丁ホルダー3とを分離させた状態として、図4はキャビネット1を構成する側板11の一部と化粧板14とを表した状態として、図5は幕板10の軸10cとなるローター体41を備えたダンパー装置4の様子を、図6は側板11側に取り付けられてローター体41に連係され幕板10を軸支する取付具5を、それぞれ示している。
【0013】
また、図7および図8は幕板10とキャビネット1の要部を、図9は図7および図8のように幕板10を構成させた場合の幕板10の規制面10eの機能を理解しやすいように示したものである。
【0014】
この実施の形態にかかる流し台Kは、流し台Kの基本構造に大幅な変更を生じさせることなく、そのキャビネット1を構成する幕板10の内面10a側に適切に包丁Nを収納できるようにしたものである。
【0015】
流し台Kを構成するキャビネット1は、左右に側板11、11を有し、上部に天板12を備える。図中符号2はシンクであり、符号13は見付である。シンク2の前側面は化粧板14によって覆われる。幕板10は、この化粧板14の前方にあって、この化粧板14との間にやや隙間15を開けて、この化粧板14とこの化粧板14の両側に位置される側板11の端部11aを前方から覆うように備えられるものである。シンク2の下方には収納空間16される。流し台Kの前面側であって幕板10の下方にはこの収納空間16の開口を塞ぐ扉板17が位置される。この収納空間に引き出しを納める場合にはこの引き出しの前板が幕板10の下方に位置される。幕板10の外面とかかる扉板17の外面17aとは略同面上に位置される。
【0016】
この実施の形態にあっては、先ず、幕板10を、化粧板14の両側に位置される側板11に対して、その下端側において傾動可能に組み付けさせている。
【0017】
それと共に、この幕板10の内面10a側に、この内面に包丁Nの刃巾面Nbを向き合わせ、かつ、包丁Nの切っ先Ncを斜め下に柄尻Ndを斜め上にするようにして包丁Nの刃Naを支持する包丁ホルダー3を備えさえている。
【0018】
図示の例では、かかる包丁ホルダー3は、幕板10の左右方向(長さ方向)に長く構成されると共に、内部を包丁Nの刃Naの挿入空間30とするように構成されている。包丁ホルダー3の上部にはその長さ方向に亘ってこの挿入空間30に連通するスリット31が形成されており、包丁Nの刃Naをこのスリット31を利用して挿入空間30内に入れ込めるようになっている。包丁ホルダー3の上部にはまた包丁Nの柄Nfの刃Na側の端面Neに引っかかる隆起部32aとこの隆起部32aに隣り合ってこの隆起部32aに端面Neを引っ掛ける位置までスリット31を通じて挿入空間30に刃Naを入れ込ませた包丁Nの柄Nfを載置する台状部32cとを一組とする支持箇所32が包丁ホルダー3の長さ方向に亘って四箇所に形成されている。隆起部32aは包丁Nの引っ掛け面32bを斜め上方に向けており、台状部32cの台面32dはこの引っ掛け面32bに略直交する向きの面となっている。図示の例では、上方に開放箇所を向けるように幕板10に腕部の一方を固定させたU字状金具18の他方の腕部と幕板10の内面10aとの間に、このように構成された包丁ホルダー3をその下部側からはめ込むことで幕板10の内面10a側にこの幕板10と前記化粧板14との間に形成された前記隙間15に納まるように包丁ホルダー3を備え付けさせている。(図3、図1)
【0019】
幕板10の傾動の中心となる軸10cは、幕板10の下端側であって、かつ、幕板10がもっとも傾動したときにこの軸10cより下方の部分10dが前記隙間15内に納まる位置に備えられる。しかるに、幕板10は前記側板11の端部11aを前方から覆うように構成されるものであることから、図1〜図6に示される例にあっては、前記側板11に、幕板10における傾動の中心となる軸10cより下方の部分10dをその傾動位置で入り込ませると共に、内側にこの部分に突き当たる規制面11cを備えた凹部11bを形成させている。具体的には、この例にあっては、キャビネット1の内側に向けられた側と前方とにおいてそれぞれ開放された凹部11bを側板11に設けさせて、傾動時に側板11の端部11aの前方を覆う幕板10の下端側がこの凹部11bに入り込むようにしている。この例では、側板11に形成させた切り欠き11dに、内側から凹部形成体11eを入れ込み取り付けることでこの側板11に前記凹部11bを形成させている。凹部形成体11eは、取り付けられて側板11の外面と同面となる底板部11fと、上側壁部11gと、この上側壁部11gに対して直角の内隅11iを形成させる下側壁部11hとからなる凹部11bを備えており、かかる内隅11iを前方に向けるようにして側板11に備え付けられる。幕板10はその軸10cより下方の部分10dをかかる上側壁部11gに下方から突き当てる位置まで傾動されるようになっている。
【0020】
図7〜図9は、キャビネット1側に加工を施さずに、幕板10における傾動の中心となる軸10cより下方の部分10dに、傾動位置で側板11の端部11aに突き当たる規制面10eを、この部分にカッティングを施すことにより形成させた例を示している。かかる規制面10eは、かかる軸10cより下方の部分10dであって幕板10の内面10a側に形成され、軸10c側から下方に向かうに連れて次第に幕板10の肉厚を小さくする向きに傾斜した傾斜面となっている。この規制面10eは、図7に示されるように幕板10の長さ方向に亘ってカッティングを施すことで形成させることができる。また、図8に示されるように幕板10における側板11の端部11aの前方に位置される箇所にのみカッティングを施すことで形成させることもできる。
【0021】
また、この実施の形態にあっては、ステーター体40とローター体41とから構成されローター体41の回転に制動を付与するように構成されたダンパー装置4を構成するこのステーター体40及びローター体41のいずれか一方側を幕板10側に取り付け、
かつ、これらの他方を取付具5を介して側板11側に取り付けることで、幕板10を前記のように傾動可能に組み付けさせている。
【0022】
図示の例では、かかるダンパー装置4を構成するステーター体40を幕板10側に取り付けるようにしている。図示の例では、ダンパー装置4は、ステーター体40の保持部42aとこの保持部42aに隣り合うローター体41の端部41aの突き出し空間42bとを備えた取り付け用ケース42を介して幕板10に備えられるようになっている。ステーター体40はローター体41を回転可能に支持すると共にシリコンオイルなどの粘性流体を封入備えておりこの粘性流体の抵抗をローター体41の回転に作用させるように構成されている。ステーター体40は保持部42aに保持固定されている。ローター体41の端部41aには接続用アーム43の一端が止着されている。そして、この例では、ローター体41の回転軸10cを幕板10の長さ方向に沿わせるようにして、幕板10の内面10a側に形成させた彫り込み10fに接続用アーム43が後方に突き出すようにして取り付け用ケース42を納め入れ固定させることでステーター体40を幕板10側に備え付けさせている。
【0023】
図示の例では、前記取付具5は、上下方向に長い取り付け板部50と、この取り付け板部50の下端から水平方向に突き出す耳部51と、この耳部51に上方からネジ付けられた接続用ネジ52とを備えている。そして、図示の例では、かかる取り付け板部50をもって側板11の内面に取り付けられた取付具5の耳部51に備えられた接続用ネジ52を前記のように幕板10に備えられたダンパー装置4の接続用アーム43の他端に形成された割溝43aに入れ込み締め込むことでダンパー装置4のローター体41を側板11側に取り付けさせている。
【0024】
この実施の形態にあっては、幕板10の内面10a側にこの幕板10と化粧板14との間の隙間15に納まる態様で包丁ホルダー3を設け、また、このように設けた包丁ホルダー3を幕板10と側板11とに若干の加工などを施すだけで幕板10の傾動によって都合良く利用可能としている。
【0025】
また、ダンパー装置4を介して、幕板10の傾動が突飛なものにならない態様で、幕板10を傾動可能に側板11に組み合わせており、最小の部品点数をもって幕板10と化粧板14との間の隙間15を使い勝手の良い包丁Nの収納として構成させている。
【0026】
なお、図示の例では、前記取付具5の取り付け板部50の上部に設けたマグネットキャッチャー53に幕板10の内面10aに設けた吸着プレート10gが幕板10の傾動前位置で吸着捕捉されるようになっており、この捕捉を解く大きさの力で幕板10の上部側を手前に引っ張ることで前記ダンパー装置4の制動を蒙りながら幕板10は自重により傾動され、これにより包丁ホルダー3に支持された包丁Nの取り出しあるいは納め戻しができるようになっている。幕板10の上端部には、必要に応じて指掛け部などを備えさせて幕板10の傾動操作を行い易くしておくことが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】流し台Kの縦断面要部構成図
【図2】流し台Kの縦断面要部構成図
【図3】幕板10と包丁ホルダー3の分離斜視構成図
【図4】キャビネット1の要部斜視構成図
【図5】ダンパー装置4の斜視構成図
【図6】取付具5の斜視構成図
【図7】幕板10の他の加工例を示した斜視構成図
【図8】幕板10のさらに他の加工例を示した斜視構成図
【図9】図7および図8の例の要部側面構成図
【符号の説明】
【0028】
K 流し台
N 包丁
Na 刃
Nb 刃巾面
Nc 切っ先
Nd 柄尻
1 キャビネット
10 幕板
10a 内面
10c 軸
10d 下方の部分
11 側板
11a 端部
11b 凹部
11c 規制面
2 シンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シンクの前側面とその両側に位置される流し台のキャビネットを構成する側板の端部とを前方から覆う幕板を、この側板に対して、その下端側において傾動可能に組み付けると共に、
この幕板の内面側に、この内面に包丁の刃巾面を向き合わせ、かつ、包丁の切っ先を斜め下に柄尻を斜め上にするようにして包丁の刃を支持する包丁ホルダーを備えており、
しかも、前記側板に、幕板における傾動の中心となる軸より下方の部分をその傾動位置で入り込ませると共に、内側にこの部分に突き当たる規制面を備えた凹部を形成させ、
または、幕板における傾動の中心となる軸より下方の部分に、傾動位置で側板の端部に突き当たる規制面を、この部分にカッティングを施すことにより形成させてなることを特徴とする流し台。
【請求項2】
ステーター体とローター体とから構成されローター体の回転に制動を付与するように構成されたダンパー装置を構成するこのステーター体及びローター体のいずれか一方側を幕板側に取り付け、
かつ、これらの他方を取付具を介して側板側に取り付けることで、幕板を傾動可能に組み付けさせていることを特徴とする請求項1記載の流し台。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−200335(P2008−200335A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−40862(P2007−40862)
【出願日】平成19年2月21日(2007.2.21)
【出願人】(507057114)
【出願人】(000148807)株式会社太田製作所 (10)
【Fターム(参考)】