説明

流体のpHを電気化学的に調節するための微細流動装置、及び該装置の内部の流体のpHを電気化学的に調節する方法

【課題】流体のpHを電気化学的に調節するための微細流動装置を提供する。
【解決手段】イオン交換膜105と、一の面がイオン交換膜105の一の面より構成され、梯子状のアノード電極103及びアノード電極支持部115を備えるアノードチャンバ109と、一の面がイオン交換膜105の他の面より構成され、カソード電極101を備えるカソードチャンバ107と、を備え、アノード電極支持部115は、一の面に梯子状のアノード電極103を具備し、アノード電極103の梯子形状に対応する開口部125が形成されており、他の面は、イオン交換膜105と接触して当該イオン交換膜105を支持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体のpHを電気化学的に調節するための微細流動装置、及び該装置の内部の流体のpHを電気化学的に調節する方法に係る。
【背景技術】
【0002】
微細流動装置は、入口、出口、及び反応容器などがマイクロチャネルを介して流体的に連結されている装置をいう。かかる微細流動装置には、マイクロチャネルが形成されている以外に、一般的に、流体の移送のためのマイクロポンプ、流体の混合のためのマイクロミキサ、及び移送される流体を濾過するためのマイクロフィルタなどが備わっている。
【0003】
かかる微細流動装置は、当業界に公知されており、サンプル内の細胞濃縮(enrichment)、細胞の溶解(lysis)、生分子の精製、PCRのような核酸の増幅及び分離、蛋白質の分離、混成化反応、ならびに検出のような一連の生物学的分析過程を行うラボオンチップ(LOC:Lab−On−a−Chip)のような微細分析装置に利用されている。
【0004】
微細流動装置を利用し、上記のような多様な生物学的分析過程を行うためには、段階ごとに異なるpHを必要とする。生物学的分析過程において、一般的なpHの調節は、酸性溶液、塩基性溶液、中性溶液、またはバッファ溶液を添加したり除去したりすることによってなされている。しかし、微細流動装置において、かかるpH調節用溶液を添加したり除去したりする場合、別途の装置及び過程を必要とするだけではなく、サンプル溶液が希釈されてしまうという問題点が発生する。
【0005】
かかる溶液の注入段階及び装置問題は、微細体積を扱う微細流動装置においては、深刻な問題になり、希釈は、所望のサンプルを採取したり増幅させたりするときに問題になることがある。また、かように添加されたpH調節物質は、今後の生物学的分析過程で阻害物質として作用しうる場合には、使用後に除去されねばならないという場合も発生する。
【0006】
外部からpH調節試薬を注入する一般的な技術の問題点を解決するための方法として、電気分解を利用する方法がある。例えば、アノードチャンバ、カソードチャンバ、及びこれらのチャンバ間に設置される分割膜を有する電気分解装置を利用してpHを調節する方法がある。
【0007】
しかし、上記一般的な方法において、チャンバ内に流入する溶液に分割膜が接触する場合、膨脹(swelling)現象が発生し、それにより形態及びサイズを維持できず、結果的に、チャンバの容積が変わるという問題点が発生する。また、小さな電極面積により電極間の抵抗が高く、電流が局所的に流れ、アノード電極の近傍のみpHが大きく上がり、均一なpH調節が困難であるという問題点がある。また、各チャンバのpH変化速度が遅く、生物学的分析過程、例えば、細胞溶解過程の効率が低いという問題点がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記一般的な技術の問題点を解決すべく案出されたものであり、本発明の目的は、流体のpH調節効率を向上させてチャンバ分割膜の膨脹現象を防止できる、流体のpHを電気化学的に調節するための微細流動装置を提供することである。
【0009】
本発明の他の目的は、上記微細流動装置を利用し、電気分解によって微細流動装置内の流体のpHを調節する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的を達成するために、本発明は、イオン交換膜と、一の面が前記イオン交換膜の一の面より構成され、梯子状のアノード電極及びアノード電極支持部を備えるアノードチャンバと、一の面が前記イオン交換膜の他の面より構成され、カソード電極を備えるカソードチャンバと、を備え、前記アノード電極支持部は、一の面に前記梯子状のアノード電極を具備し、前記アノード電極の梯子形状に対応する開口部が形成されており、他の面は、前記イオン交換膜と接触して当該イオン交換膜を支持することを特徴とする、流体のpHを電気化学的に調節するための微細流動装置を提供する。
【0011】
本発明の一実施形態において、前記アノード電極支持部は、プリント基板(Printed Circuit Board)からなりうる。
【0012】
本発明の一実施形態において、前記イオン交換膜の他の面より構成されるカソードチャンバの一の面に対向する他の面には、ピラー構造が形成されており、前記ピラー構造は、前記イオン交換膜と接触して当該イオン交換膜を支持できる。
【0013】
本発明の一実施形態において、前記アノードチャンバ及びカソードチャンバは、それぞれガス排出口をさらに備えることができる。
【0014】
本発明の一実施形態において、前記カソード電極は、水素ガスを吸着できる金属からなり、前記アノード電極は、水よりも標準酸化電位が高くて水と反応しない金属からなりうる。
【0015】
本発明の一実施形態において、前記カソード電極は、Pdを含みうる。
【0016】
本発明の一実施形態において、前記アノード電極は、Cu、Pb、Ag、Cr、Ti、Ni、Zn、Fe、及びSnからなる群から選択される少なくとも1種を含みうる。
【0017】
本発明の一実施形態において、前記イオン交換膜は、電流を通過させる一方で、各チャンバで電気分解によって発生したイオン及びガスを通過させない特性を有するものでありうる。
【0018】
本発明の一実施形態において、前記カソードチャンバ及びアノードチャンバは、それぞれ溶液が流入及び流出する流入口及び流出口をさらに備えることができる。
【0019】
本発明の一実施形態において、前記カソードチャンバ及びアノードチャンバは、それぞれ溶液を流入及び流出させるためのマイクロポンプをさらに備えることができる。
【0020】
本発明の他の目的を達成するために、本発明は、(a)アノードチャンバに水よりも標準酸化電位の低いイオンまたは高いイオンを含む溶液を流入させる段階と、(b)カソードチャンバに水よりも標準還元電位の低いイオンを含む溶液を流入させる段階と、(c)アノード電極及びカソード電極を介して電流を印加し、前記アノードチャンバ及びカソードチャンバで電気分解を起こし、前記アノードチャンバまたはカソードチャンバに流入した溶液のpHを調節する段階と、を含む、本発明による微細流動装置内の流体のpHを電気化学的に調節する方法を提供する。
【0021】
本発明の一実施形態において、前記水よりも標準酸化電位の低いイオンは、NO、F、SO2−、PO3−、及びCO2−からなる群から選択される一つ以上でありうる。
【0022】
本発明の一実施形態において、前記水よりも標準酸化電位の高いイオンは、Clでありうる。
【0023】
本発明の一実施形態において、前記水よりも標準還元電位の低いイオンは、Na、K、Ca2+、Mg2+、及びAl3+からなる群から選択される一つ以上でありうる。
【0024】
本発明の一実施形態において、前記pHは、印加電流の方向、印加電流の強度、電流印加時間、電極の幅、またはイオン交換膜の厚さによって調節されうる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の微細流動装置によれば、チャンバ分割膜の膨脹現象を防止してチャンバの容積変化を最小化することにより、設計された体積のサンプルをチャンバ内に好ましく流入させ、アノード電極を梯子状に全体的に分布させることによって電流フローを促進させ、pH調節を効率的に行うことができる。本発明の方法によれば、電気分解時に、チャンバ分割膜の膨脹現象なしに微細流動装置内の流体のpHを迅速、かつ容易に調節できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面を参照しつつ、本発明について詳細に説明する。
【0027】
本発明の一実施形態は、流体のpHを電気化学的に調節するための微細流動装置に関する。
【0028】
図1は、本発明の一実施形態による微細流動装置を示した側面断面図であり、図2は、図1に示す微細流動装置の側面分解図である。
【0029】
図1及び図2を参照すれば、本発明によるpHを電気化学的に調節するための微細流動装置は、イオン交換膜105と、一の面がイオン交換膜105の一の面より構成され、梯子状のアノード電極103及びアノード電極支持部115を備えるアノードチャンバ109と、一の面がイオン交換膜105の他の面より構成され、カソード電極101を備えるカソードチャンバ107と、を備え、アノード電極支持部115は、その一の面に梯子状のアノード電極103を具備し、アノード電極103の梯子形状に対応する開口部125が形成されており、他の面は、イオン交換膜105と接触してそれを支持することを特徴とする。
【0030】
本発明の微細流動装置において、アノードチャンバ109及びカソードチャンバ107は、流体のような物質を収容できる空間をいい、望ましくは、マイクロ単位の体積以下の物質を収容可能なマイクロチャンバであるが、それに限定されるものではない。チャンバは、細胞溶解チャンバ、核酸分離/精製チャンバ、核酸増幅チャンバ、混成化チャンバ、及び信号検出チャンバからなる群から選択されるいずれか一つでありうる。チャンバは、マイクロチャネルを介して多様な異なるチャンバと連結されていることもある。従って、本発明の一実施形態における微細流動装置は、生分子を含む流体のpHを電気化学的に調節できるLOC形態でありうる。
【0031】
また、図1及び図2を参照すれば、アノードチャンバ109の残りの面は、アノードチャンバ基板111により画定され、カソードチャンバ107の残りの面は、カソードチャンバ基板113及びカソードチャンバ側壁123により画定される。
【0032】
再び図1及び図2を参照すれば、本実施形態による微細流動装置は、アノード電極支持部115によってイオン交換膜105を支持することにより、イオン交換膜105の膨脹現象を防止し、チャンバの容積変化を最小化できる。また、本実施形態による微細流動装置は、梯子状のアノード電極103を全体的に分布させることにより、電流フローを促進させてpH調節を効率的に行うことができる。
【0033】
図3Aは、図1に示す微細流動装置のアノード電極及びアノード電極支持部の斜視図であり、図3Bは、図1に示すアノード電極及びアノード電極支持部の側面図であり、図3Cは、図1に示すアノード電極及びアノード電極支持部の平面図である。
【0034】
図3Aないし図3Cを参照すれば、アノード電極支持部115は、その一の面に梯子状のアノード電極103を具備し、アノード電極103の梯子形状に対応する開口部125が形成されている。アノード電極支持部115には、カソードチャンバに溶液を流入及び流出する流入口119a及び流出口119bが備わりうる。また、アノード電極支持部115には、カソード電極と電源とを連結する電源連結部121が備わりうる。
【0035】
本発明の一実施形態における微細流動装置に用いられる梯子状のアノード電極103の長さ、開口部の幅、隣接する開口部間の横単位電極の幅などは、当業者により容易に選択され、特定範囲に限定されない。
【0036】
再び図1及び図2を参照すれば、本実施形態による微細流動装置は、イオン交換膜105の他の面より構成されるカソードチャンバ107の一の面と対向する他の面に、ピラー構造117が形成されており、ピラー構造117は、イオン交換膜105と接触してそれを支持することができる。ピラー構造117は、バイオ物質、例えば、細胞を非常に効果的に吸着できる。
【0037】
図4Aは、梯子状のアノード電極及びアノード電極支持部が備わらない場合のイオン交換膜の膨脹現象を概念的に示したものであり、図4Bは、梯子状のアノード電極、アノード電極支持部、及びピラー構造の備わらない場合のイオン交換膜の膨脹現象を概念的に示したものである。
【0038】
図4Aを参照すれば、一般的なアノード電極及びピラー構造を具備し、アノード電極支持部を具備しない場合、イオン交換膜は、アノードチャンバ側にはなはだしく膨脹するということが分かる。その場合、圧力降下の小さなピラー構造上部に溶液が続けて流れ、細胞などの吸着のために、ピラー構造を使用する目的を達成できない。
【0039】
また、図4Bを参照すれば、一般的なアノード電極を具備し、ピラー構造及びアノード電極支持部を具備しない場合、イオン交換膜は、カソードチャンバ側にはなはだしく膨脹するということが分かる。
【0040】
従って、本発明の一実施形態による微細流動装置は、アノード電極支持部115とピラー構造117とにより、イオン交換膜105を支持することにより、イオン交換膜105の膨脹現象をほぼ完全に防止し、チャンバの容積変化を最小化できる。
【0041】
本発明の一実施形態による微細流動装置において、アノード電極支持部は、プリント基板(Printed Circuit Board:以下、PCBと称する)、シリコンウェーハ、ガラス、石英、金属、及びプラスチックからなる群から選択される少なくとも1種によって形成されうる。
【0042】
望ましくは、アノード電極支持部は、PCBからなる。電極支持部としてPCBを使用する場合、加工が容易であって電流が通過する開口部の幅を狭めることができ、横の単一電極の数を増加させることができる。従って、抵抗を減らすことができてpH変化分布を等しく調節でき、ピラー構造チップの効果を極大化させることができる。また、量産時に価格が低廉である。例えば、PCBに開口部を形成する方法は、ガラス基板にサンドブラスト法で開口部を形成することに比べ、100倍程度コストを節減できる。
【0043】
本発明の一実施形態において、アノードチャンバ及びカソードチャンバは、それぞれガス排出口を追加的に備えることができる。
【0044】
本発明の一実施形態において、カソード電極は、水素ガスを吸着できる金属からなり、アノード電極は、水よりも標準酸化電位が高くて水と反応しない金属からなりうる。この場合、アノードチャンバ及びカソードチャンバそれぞれでガスが発生しないので、アノードチャンバ及びカソードチャンバは、それぞれガス排出口を追加的に備える必要がない。また、イオン交換膜とピラー構造との密着を極大化させることができるという長所を有する。
【0045】
カソード電極は、水素ガスを吸着できるあらゆる金属を含み、特別の種類に限定されない。
【0046】
例えば、カソード電極は、Pd(パラジウム)でありうる。Pdは、多量の水素ガスを吸着する能力を保有することが知られている(Bhadra Munasiri et al.,J.Electroanal.Chem.,pp.333−337,1992)。上記のように、カソード電極として、例えば、Pdを使用する場合、水の電気分解によりカソード電極付近で発生する水素ガスを吸着してガスの発生を防止でき、水の電気分解により同時に発生するOHにより、カソード電極付近の溶液のpHを上げることができる。
【0047】
また、アノード電極は、標準酸化電位が水よりも高くて、水と反応しないあらゆる金属を含み、特別の種類に限定されない。
【0048】
一般的に、水を電気分解する場合、アノード電極付近では、酸素ガスが発生して泡が形成されて水素イオンが発生し、溶液のpHが低くなる。一方、本発明による微細流動装置は、水よりも標準酸化電位の高い金属を使用することにより、水が電気分解されず、金属が酸化してイオン化されることによりガスが発生しない。また、電圧の上昇及び溶質の変化のような一定条件下で発生しうる少量の酸素も、金属と結合して金属酸化物を形成することにより、酸素ガスによる泡は発生しない。
【0049】
アノード電極として、標準酸化電位が水よりも高いとしても水と反応する金属は、望ましくない。例えば、K、Ca、Na、及びMgは、アノード電極として望ましくない。
【0050】
また、アノード電極として、水よりも標準酸化電位が高いとしても酸化膜が速く形成されすぎて抵抗値が大きくなる金属は、望ましくない。例えば、Alは、短時間内にアルミナに酸化されるので、アノード電極として望ましくない。
【0051】
本実施形態によるアノード電極は、例えば、Cu(銅)、Pb(鉛)、Ag(銀)、Cr(クロム)、Ti(チタン)、Ni(ニッケル)、Zn(亜鉛)、Fe(鉄)、及びSn(スズ)からなる群から選択されうる。
【0052】
本実施形態による微細流動装置は、その具体的な形態、構造、及びサイズなどに特別に限定されない。
【0053】
本発明において、イオン交換膜は、電流を通過させる一方で、各チャンバで電気分解によって発生したイオン及びガスを通過させないという特性を有する。望ましくは、イオン交換膜は、電流は通過させる一方で、水素イオン及び水酸イオンは通過させないという特性を有する。
【0054】
イオン交換膜は、陽イオン交換膜または陰イオン交換膜でありうる。
【0055】
本発明において、陽イオン交換膜は、陽イオンを通過させる一方で、陰イオン通過には100%に近い抵抗を示して陰イオンを通過させない膜である。反対に、陰イオン交換膜は、陰イオンは通過させる一方で、陽イオン通過には100%に近い抵抗を示して陽イオンを通過させない膜である。例えば、陽イオン交換膜は、強酸交換膜(strong acid exchange membrane;−SO−含む;Nafion)または弱酸交換膜(weak acid exchange membrane;−COO−含む)であり、陰イオン交換膜は、強塩基交換膜(strong base;N(CH)含む)、または弱塩基交換膜(weak base;N(CH含む)でありうる。陽イオン交換膜及び陰イオン交換膜は、当業界に公知であり、当業者が容易にこれを購入して使用できるものである。例えば、イオン交換膜は、ナフィオン(Nafion)(デュポン(Dupont)社)、ダウエックス(Dowex)(アルドリッチ(Aldrich)社)、及びダイヤイオン(Diaion)(アルドリッチ(Aldrich)社)などとして市販されている。
【0056】
本発明の一実施形態において、カソードチャンバ及びアノードチャンバは、それぞれ溶液が流入及び流出する流入口及び流出口を追加的に備えることができる。
【0057】
本発明の一実施形態において、カソードチャンバ及びアノードチャンバは、それぞれ溶液を流入及び流出させるためのマイクロポンプを追加的に備えることができる。
【0058】
本発明の一実施形態で、微細流動装置は、アノードチャンバに水よりも標準酸化電位の低いイオンまたは高いイオンを含む溶液、すなわち、電気分解される電解質が流入されうる。水よりも標準酸化電位の低いイオンは、NO(硝酸イオン)、F(フッ素イオン)、SO2−(硫酸イオン)、PO3−(リン酸イオン)、及びCO2−(炭酸イオン)などの陰イオンの含まれた一つ以上のイオンであり、水よりも標準酸化電位の高いイオンは、Clイオン(塩素イオン)が含まれた電解質であるが、それらの例に限定されるものではない。アノードチャンバ溶液が水よりも標準酸化電位が低い化合物である場合、本発明の一実施形態による微細流動装置を利用して電気分解を行う場合、アノードチャンバでは、水が電気分解されて酸素ガスとHイオンとが発生する。この場合、アノードチャンバ溶液は、HイオンによりpHが低くなる。一方、前述のように、アノード電極として水よりも標準酸化電位が高くて水と反応しない金属を使用する場合、金属が酸化されて酸素ガスが発生しない。水よりも標準酸化電位の高いClイオンは、細胞の溶解だけを目的とする場合に特別に使われうる。
【0059】
また、本発明の他の実施形態における微細流動装置は、カソードチャンバに水よりも標準還元電位の低いイオンを含む溶液が流入されうる。イオンの例は、Na(ナトリウムイオン)、K(カリウムイオン)、Ca2+(カルシウムイオン)、Mg2+(マグネシウムイオン)、及びAl3+(アルミニウムイオン)などの陽イオンであるが、それらの例に限定されるものではない。従って、本実施形態による微細流動装置を利用して電気分解を行う場合、カソードチャンバでは、水が電気分解され、水素ガスとOHイオンとが発生する。この場合、カソードチャンバ溶液は、OHイオンによりpHが高まる。一方、前述のように、カソード電極として水素ガスを吸着できる金属を使用する場合、発生した水素ガスは吸着され、ガス泡が発生しない。
【0060】
本発明の一実施形態において、アノードチャンバ及びカソードチャンバは、それぞれ溶液が流入及び流出する流入口及び流出口を追加的に備えることができる。流入口と流出口は、必ずしも別個に備わる必要はなく、1つのポートが流入口及び流出口の役割を果たすこともある。
【0061】
本発明の一実施形態において、アノードチャンバ及びカソードチャンバは、それぞれ溶液を流入及び流出させるためのマイクロポンプを追加的に備えることができる。
【0062】
本発明による微細流動装置は、一般的な方法により製作されうる。望ましくは、各部品を製作した後に、組み立てられて製作されうる。
【0063】
図5は、本発明の一実施形態による微細流動装置のアノード電極及びアノード電極支持部の製作過程を概略的に示した図である。
【0064】
図5を参照すれば、Cu503がコーティンされているPCB501上にフォトレジストフィルム505を蒸着し、あらかじめ設計された梯子状のマスクを介してUVを照射して露光を行い、現像する。次に、露出されたCu503をエッチングし、フォトレジストフィルム505を除去する。次に、露出されたPCB501を切断して開口部を形成し、残ったCu503上にPb507をコーティングすることにより、本発明による微細流動装置のアノード電極及びアノード電極支持部を製作できる。
【0065】
図6Aは、本発明による微細流動装置の具体例のアノード電極及びアノード電極支持部の写真であり、図6Bは、本発明による微細流動装置の他の具体例のアノード電極及びアノード電極支持部の写真である。
【0066】
図7は、本発明による微細流動装置の具体例の各部品の写真、及びそれらを組立てて製作された本発明による微細流動装置の写真である。
【0067】
図7を参照すれば、カソードチャンバには、ピラー構造が形成されず、アノードチャンバ基板111には、アノード電極支持部115のカソードチャンバの流入口119a及び流出口119bと整合される流入口125a及び流出口125bが備わっている。また、アノードチャンバ基板111には、アノードチャンバの流入口127a及び流出口127bが備わっており、アノード電極支持部115の電源連結部121と整合される電源連結部129が備わっている。
【0068】
本発明の他の実施形態は、(a)アノードチャンバに水よりも標準酸化電位の低いイオンまたは高いイオンを含む溶液を流入させる段階と、(b)カソードチャンバに水よりも標準還元電位の低いイオンを含む溶液を流入させる段階と、(c)アノード電極及びカソード電極を介して電流を印加し、アノードチャンバ及びカソードチャンバで電気分解を起こし、アノードチャンバまたはカソードチャンバに流入した溶液のpHを調節する段階と、を含む、本発明による微細流動装置内の流体のpHを電気化学的に調節する方法に関する。
【0069】
本発明の方法において、水よりも標準酸化電位の低い陰イオン、水よりも標準酸化電位の高い陰イオン、及び水よりも標準還元電位の低い陽イオンの例は、前述の通りである。上記(a)及び(b)段階は、同時または順次に行われうる。
【0070】
pHは、印加電流の方向、印加電流の強度、電流印加時間、電極の幅、またはイオン交換膜の厚さによって調節されうる。正確な印加電流の方向、印加電流の強度、電流印加時間、電極の面積、及びイオン交換膜の厚さは、所望のpHまたはチャンバの容積などによって変わり、それらは、当業者の実験により容易に決定されうる。
【0071】
バイオサンプル溶液に最も多く入っているNaClの含まれたサンプル溶液をアノードとカソードとに流入した後で電気分解を行えば、アノードチャンバで水でない塩素イオンが電気分解されて塩素ガスが発生し、カソードチャンバに発生した水酸イオンよりも少量の水素イオンが発生し、この量は、塩素ガスと水とが反応して発生したものであり、塩素ガスの溶解条件によって変わってしまい、pH調節が困難である。本発明では、かかる問題点を解決するために、アノードチャンバ及びカソードチャンバで、水よりも標準酸化電位の低い化合物及び水よりも標準還元電位の低い化合物を使用する。しかし、細胞の溶解だけのためである場合には、NaClを含んだサンプル溶液をアノードとカソードとに流入した後で電気分解を行い、カソードで細胞を溶解させることができる。
【0072】
本発明の方法において、カソードチャンバでは、水よりも標準還元電位の低い化合物が含まれているカソードチャンバ溶液が含まれているために、水が電気分解され、水素ガスとOHイオンとが発生する。また、アノードチャンバでは、水よりも標準酸化電位の低い化合物が含まれているアノードチャンバ溶液が含まれているために、水が電気分解され、酸素ガスとHイオンとが発生する。結果的に、カソードチャンバ溶液は塩基性pHを帯び、アノードチャンバ溶液は酸性pHを帯びる。
【0073】
一方、前述のように、アノード電極として、水よりも標準酸化電位が高くて水と反応しない金属を使用し、カソード電極として水素ガスを吸着できる金属を使用する場合、各チャンバでガス発生を防止できる。
【0074】
以下、本発明につき、実施例を介してさらに詳細に説明する。しかし、これらの実施例は、本発明を例示的に説明するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されるものではない。
【0075】
<実施例1>
本発明によるpH調節用微細流動装置の製作
図5に表した方法を利用し、梯子状のアノード電極及びアノード電極支持部を製作した。
【0076】
すなわち、CuのコーティンされているPCB上にフォトレジストフィルムを蒸着し、あらかじめ設計された梯子状のマスクを介してUVを照射して露光を行い、現像させた。次に、露出されたCuをエッチングし、フォトレジストフィルムを除去した。次に、露出されたPCBを切断して開口部を形成し、残ったCu上にアノード電極としてPbをコーティングした。
【0077】
図6Aは、本実施例で製作されたアノード電極及びアノード電極支持部の写真である。
【0078】
図6Aを参照すれば、アノード電極支持部の横長は14mmであり、縦長は34mmである。また、開口部の幅は1.0mmであり、横単位電極の幅は0.5mmである。また、アノード電極支持部の下部には、−SO−Na基を含む陽イオン交換膜が付着されている。また、アノード電極支持部には、カソードチャンバに溶液を流入及び流出するための流入口及び流出口、ならびに電源連結部が備わっている。
【0079】
このように製作されたアノード電極及びアノード電極支持部を利用し、本発明による微細流動装置を製作した。
【0080】
図7は、本実施例で製作されたアノード電極及びアノード電極支持部を利用して製作された微細流動装置の各部品及び完成品の写真である。
【0081】
図7の一番左側の写真は、アノードチャンバ基板を示すものである。アノードチャンバ基板には、カソードチャンバに溶液を流入及び流出するための流入口及び流出口、アノードチャンバに溶液を流入及び流出するための流入口及び流出口、ならびに電源連結部が備わっている。
【0082】
図7の上記写真のすぐ右の写真は、上述した処理で製作されたアノード電極及びアノード電極支持部を示すものである。
【0083】
図7のさらに右の写真は、カソード電極及びカソード基板を示すものである。なお、カソード基板上にはピラー構造が形成されていない。カソードは、Pdにより製作し、カソード基板の厚さ、すなわちカソードチャンバの高さは100μmであった。
【0084】
上記3部品を組み立て、電極に導線を連結することにより、本発明による微細流動装置を製作した(図7の一番右側の写真)。製作されたカソードチャンバ及びアノードチャンバの容積は、それぞれ10μlであった。
【0085】
<実施例2>
本発明によるpH調節用微細流動装置の製作
アノード電極としてAuをコーティングした点、及び開口部並びに横単位電極の幅をそれぞれ0.5mmとした点を除き、実施例1のような方法を利用し、梯子状のアノード電極及びアノード電極支持部を製作した。
【0086】
図6Bは、本実施例で製作されたアノード電極及びアノード電極支持部の写真である。
【0087】
このように製作されたアノード電極及びアノード電極支持部を利用し、実施例1のような方法で本発明による微細流動装置を製作した。
【0088】
<比較例1>
pH調節用微細流動装置の製作
アノード電極が中央部に開口部が形成されている矩形状であり、当該開口部に合わせてアノード電極支持部にも開口部が形成されている点、及びアノード電極としてAuをコーティングした点を除き、実施例1のような方法を利用してアノード電極及びアノード電極支持部を製作した。
【0089】
図6Cは、本比較例で製作されたアノード電極及びアノード電極支持部の写真である。
【0090】
このように製作されたアノード電極及びアノード電極支持部を利用し、実施例1と同じ方法で本発明による微細流動装置を製作した。
【0091】
<実験例1>
イオン交換膜の膨脹確認
実施例及び比較例で製作された微細流動装置に対し、イオン交換膜の膨脹の有無及びその程度を確認した。
【0092】
各微細流動装置のカソードチャンバ及びアノードチャンバに、それぞれ10μlの55mMのNaSO溶液を注入し、1分後にイオン交換膜の膨脹現象を観察した。
【0093】
図8A、図8B、及び図8Cは、それぞれ実施例1、実施例2、及び比較例1による微細流動装置のアノードチャンバ及びカソードチャンバへの溶液の注入前及び注入後1分でのイオン交換膜を表す写真である。
【0094】
図8Aないし8Cを参照すれば、実施例1の場合、イオン交換膜の体積変化が非常に少なく、実施例2の場合、イオン交換膜の体積変化が少ない一方、比較例1の場合、イオン交換膜の体積変化が大きいということが分かる。
【0095】
<実験例2>
微細流動装置の抵抗測定
実施例及び比較例で製作された微細流動装置のカソードチャンバ及びアノードチャンバに、それぞれ10μlの55mMのNaSO溶液を注入し、電極間の抵抗値を測定した。
【0096】
その結果、実施例1の場合、約750Ωの抵抗値を有し、実施例2の場合、約430Ωの抵抗値を有し、比較例1の場合、約4500Ωの抵抗値を有した。開口部の面積及び電極面積が広いほど抵抗値が減少した。そのうち、電極面積が抵抗の主要因子であった。
【0097】
結果から、本発明による微細流動装置は、アノード電極を梯子状に全体的に分布させることによって電極間抵抗を減らし、かつ電流フローを促進させ、pH調節を効率的に行うことができるということが分かる。
【0098】
<実験例3>
微細流動装置のガス発生確認
実施例1及び実施例2でそれぞれ製作した微細流動装置を利用して電気分解を行った場合のガス発生の有無を確認した。
【0099】
各微細流動装置のカソードチャンバ及びアノードチャンバに、それぞれ10μlの55mMのNaSO溶液を注入し、カソード電極及びアノード電極を介して2mAの電流を印加した。
【0100】
図9Aは、実施例1による微細流動装置(カソード電極:Pd、アノード電極:Pb)を利用して電気分解した場合、アノード電極でガスが発生しない写真であり、図9Bは、図9Aの拡大写真である。カソード電極でもガスが発生していない(結果は図示せず)。
【0101】
図10Aは、実施例2による微細流動装置(カソード電極:Pd、アノード電極:Au)を利用して電気分解した場合、アノード電極でガスが発生する写真であり、図10Bは、図10Aの拡大写真である。実施例2において、ガスは、電流印加後直ちに発生し始めた。カソード電極ではガスが発生していない(結果は図示せず)。
【0102】
結果から、カソード電極として水素ガスを吸着できる金属を使用し、アノード電極として水よりも標準酸化電位が高くて水と反応しない金属を使用する場合、電気分解によるガス発生を防止できるということが分かる。
【0103】
以上、本発明についてその望ましい実施形態を中心に述べた。本発明の属する技術分野で当業者は、本発明の本質的な特性から外れない範囲で変形された形態で本発明が具現されうるということを理解することができるであろう。従って、開示された実施形態は、限定的な観点でなく、説明的な観点から考慮されるものである。本発明の範囲は、前述の説明ではなくして特許請求の範囲に示されており、それと同等な範囲内にあるあらゆる差異点は、本発明に含まれるものと解釈されねばならない。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明の流体のpHを電気化学的に調節するための微細流動装置、及び該装置を利用してpHを調節する方法は、例えば、生物学的分析関連の技術分野に効果的に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明の一実施形態による微細流動装置を示した側面断面図である。
【図2】図1に示す微細流動装置の側面分解図である。
【図3A】図1に示す微細流動装置のアノード電極及びアノード電極支持部の斜視図である。
【図3B】図1に示す微細流動装置のアノード電極及びアノード電極支持部の側面図である。
【図3C】図1に示す微細流動装置のアノード電極及びアノード電極支持部の平面図である。
【図4A】カソードチャンバがピラー構造を有している場合、かつアノードチャンバに梯子状のアノード電極及びアノード電極支持部が備わっていない場合にイオン交換膜の膨脹現象を概念的に示した図である。
【図4B】アノードチャンバに梯子状のアノード電極、アノード電極支持部が備わっていない場合、かつカソードチャンバにピラー構造が備わっていない場合、イオン交換膜の膨脹現象を概念的に示した図である。
【図5】本発明による微細流動装置のアノード電極及びアノード電極支持部の製作過程の一例を概略的に表した図面である。
【図6A】本発明による微細流動装置の具体例のアノード電極及びアノード電極支持部の写真である。
【図6B】本発明による微細流動装置の他の具体例のアノード電極及びアノード電極支持部の写真である。
【図6C】比較例であり、梯子状を有さないアノード電極及びアノード電極支持部の写真である。
【図7】本発明による微細流動装置の各部品の写真、及びそれらを組み立てて製作された本発明による微細流動装置の写真である。
【図8A】図6Aのアノード電極及びアノード電極支持部を備える微細流動装置のアノードチャンバ及びカソードチャンバに対する溶液の注入前及び注入後1分でのイオン交換膜を表す写真である。
【図8B】図6Bのアノード電極及びアノード電極支持部を備える微細流動装置のアノードチャンバ及びカソードチャンバに対する溶液の注入前及び注入後1分でのイオン交換膜を表す写真である。
【図8C】図6Cのアノード電極及びアノード電極支持部を備える微細流動装置のアノードチャンバ及びカソードチャンバに対する溶液の注入前及び注入後1分でのイオン交換膜を表す写真である。
【図9A】図6Aのアノード電極及びアノード電極支持部を備え、該アノード電極は、Pbからなる微細流動装置を利用して電気分解した場合、アノード電極でガスが発生しない写真である。
【図9B】図9Aの拡大写真である。
【図10A】図6Bのアノード電極及びアノード電極支持部を備え、該アノード電極は、Auからなる微細流動装置を利用して電気分解した場合、アノード電極でガスが発生する写真である。
【図10B】図10Aの拡大写真である。
【符号の説明】
【0106】
101 カソード電極、
103 アノード電極、
105 イオン交換膜、
107 カソードチャンバ、
109 アノードチャンバ、
111 アノードチャンバ基板、
113 カソードチャンバ基板、
115 アノード電極支持部、
117 ピラー構造、
119a,125a,127a 流入口、
119b,125a,127b 流出口、
121,129 電源連結部、
123 カソードチャンバ側壁、
125 開口部、
501 PCB、
503 Cu、
505 フォトレジストフィルム、
507 Pb。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン交換膜と、
一の面が前記イオン交換膜の一の面より構成され、梯子状のアノード電極及びアノード電極支持部を備えるアノードチャンバと、
一の面が前記イオン交換膜の他の面より構成され、カソード電極を備えるカソードチャンバと、を備え、
前記アノード電極支持部は、一の面に前記梯子状のアノード電極を具備し、前記アノード電極の梯子形状に対応する開口部が形成されており、他の面は、前記イオン交換膜と接触して当該イオン交換膜を支持することを特徴とする流体のpHを電気化学的に調節するための微細流動装置。
【請求項2】
前記アノード電極支持部は、プリント基板からなることを特徴とする請求項1に記載の流体のpHを電気化学的に調節するための微細流動装置。
【請求項3】
前記イオン交換膜の他の面より構成されるカソードチャンバの一の面に対向する他の面にはピラー構造が形成されており、
前記ピラー構造は、前記イオン交換膜と接触して当該イオン交換膜を支持することを特徴とする請求項1に記載の流体のpHを電気化学的に調節するための微細流動装置。
【請求項4】
前記アノードチャンバ及びカソードチャンバは、それぞれガス排出口をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の流体のpHを電気化学的に調節するための微細流動装置。
【請求項5】
前記カソード電極は、水素ガスを吸着できる金属からなり、前記アノード電極は、水よりも標準酸化電位が高くて水と反応しない金属からなることを特徴とする請求項1に記載の流体のpHを電気化学的に調節するための微細流動装置。
【請求項6】
前記カソード電極は、Pdを含むことを特徴とする請求項5に記載の流体のpHを電気化学的に調節するための微細流動装置。
【請求項7】
前記アノード電極は、Cu、Pb、Ag、Cr、Ti、Ni、Zn、Fe、及びSnからなる群から選択される少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項5に記載の流体のpHを電気化学的に調節するための微細流動装置。
【請求項8】
前記イオン交換膜は、電流を通過させる一方で、各チャンバで電気分解によって発生したイオン及びガスを通過させない特性を有することを特徴とする請求項1に記載の流体のpHを電気化学的に調節するための微細流動装置。
【請求項9】
前記カソードチャンバ及びアノードチャンバは、それぞれ溶液が流入及び流出する流入口及び流出口をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の流体のpHを電気化学的に調節するための微細流動装置。
【請求項10】
前記カソードチャンバ及びアノードチャンバは、それぞれ溶液を流入及び流出させるためのマイクロポンプをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の流体のpHを電気化学的に調節するための微細流動装置。
【請求項11】
請求項1に記載の微細流動装置の内部の流体のpHを電気化学的に調節する方法であって、
(a)アノードチャンバに水よりも標準酸化電位の低いイオンまたは高いイオンを含む溶液を流入させる段階と、
(b)カソードチャンバに水よりも標準還元電位の低いイオンを含む溶液を流入させる段階と、
(c)アノード電極及びカソード電極を介して電流を印加し、前記アノードチャンバ及びカソードチャンバで電気分解を起こし、前記アノードチャンバまたはカソードチャンバに流入した溶液のpHを調節する段階と、を含むことを特徴とする流体のpHを電気化学的に調節する方法。
【請求項12】
前記水よりも標準酸化電位の低いイオンは、NO、F、SO2−、PO3−、及びCO2−からなる群から選択される一つ以上であることを特徴とする請求項11に記載の流体のpHを電気化学的に調節する方法。
【請求項13】
前記水よりも標準酸化電位の高いイオンは、Clであることを特徴とする請求項11に記載の流体のpHを電気化学的に調節する方法。
【請求項14】
前記水よりも標準還元電位の低いイオンは、Na、K、Ca2+、Mg2+、及びAl3+からなる群から選択される一つ以上であることを特徴とする請求項11に記載の流体のpHを電気化学的に調節する方法。
【請求項15】
前記pHは、印加電流の方向、印加電流の強度、電流印加時間、電極の幅、またはイオン交換膜の厚さによって調節されることを特徴とする請求項11に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【公開番号】特開2007−171172(P2007−171172A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−322508(P2006−322508)
【出願日】平成18年11月29日(2006.11.29)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【Fターム(参考)】