説明

流体を制御するための弁

【課題】閉鎖体に向けて加えられる横方向力によって流体を制御するための弁において、閉鎖体が揺動し、弁座に当接することを防止する。
【解決手段】弁座(3)および閉鎖体(2)が回転対称的な領域(21,31)を備え、領域(21,31)で弁座(3)と閉鎖体(2)との間に密閉線が形成され、弁座(3)および/または閉鎖体(2)が、非回転対称的な領域(22,32)を備え、領域(22,23)が、弁の貫流方向(A)に回転対称的な領域(21,31)に接続しているようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、閉鎖体に意図的に加えられる横方向力によって流体を制御するための弁に関する。
【背景技術】
【0002】
流体を制御するための弁は、従来技術により様々な構成で既知であり、特に、例えば自動車におけるアンチロック・ブレーキ・システム(ABS装置)のために流入弁として使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、これらの弁では作動条件に応じて閉鎖体に揺動が生じ、閉鎖体は、中央位置の周囲で大きく変位された場合に対称的に構成された弁座に当接し、これを損傷する恐れがある。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
これに対して、請求項1の特徴を有する、流体を制御するための本発明による電磁弁は、弁座および/または閉鎖体の非対称的な幾何学形状により、偏心的な液圧力を有する非対称的な流体流が生成され、この流体流は閉鎖体が弁座に当接することを防止するという利点を有する。このことは、本発明によれば、弁が弁座と、弁座の密閉線で開口部を開閉する閉鎖体を備えることによって達成される。弁座および閉鎖体は回転対称的な領域を備え、この領域で、弁座と閉鎖体との間に密閉線が形成されている。さらに弁座および/または閉鎖体は非回転対称的な領域を備え、この領域は、弁の貫流方向に回転対称的な領域に直接に接続している。これにより、閉鎖体の行程で、開放過程で意図的に閉鎖体を偏心的に開放する非対称的な液圧力を有する規定された流体トポロジーを構成することができ、これにより、弁座における当接を防止することができる。弁は、有利にはアンチロック装置(ABS装置)における調整弁/流入弁として使用することができる。
【0005】
従属請求項は本発明の好ましい改良形態を示す。
【0006】
本発明の好ましい一実施形態によれば、弁座の回転対称的な領域は、完全に円錐形に構成されている。これにより、確実な動作による弁の閉鎖および弁の信頼性良い密閉性が確保される。
【0007】
有利には、弁座の非回転対称的な領域は、円形の第1部分領域と楕円形の第2部分領域とを備える。さらに好ましくは、楕円形の第2部分領域は、非回転対称的な領域の半分を形成している。非対称的な形状付与により、流体は弁の解放した環状横断面を通って異なった優先方向に案内され、閉鎖体が開放された場合に楕円形の第2部分領域では円形の第1部分領域と比べてより低い速度およびより高い圧力を有する流体流が生成される。その結果、閉鎖体に作用し、閉鎖体を偏心的な位置に変向する偏心力が生じ、これにより、全ての行程範囲で弁座における当接が防止される。
【0008】
本発明の別の有利な実施形態では、非回転対称的な領域は、この非回転対称的な領域における圧力上昇が、回転対称的な領域における圧力上昇の2倍だけ大きくなるように構成されている。これにより、危険な作動条件における閉鎖体の揺動傾向を効果的に抑制する十分に大きい偏心的な力が生じる。適宜な大きさの偏心的な液圧力では、閉鎖体は弁座に沿って押圧され、弁座と接触し、これにより、閉鎖体の揺動、ひいては弁座における当接を防止することができる。
【0009】
本発明の好ましい一実施形態によれば、回転対称的な領域は弁座に構成されており、非回転対称的な領域は閉鎖体に構成されている。これにより、弁座を時間効率およびコスト効率良く作製することが可能となる。さらに、閉鎖体の交換により従来の弁を時間効率およびコスト効率良く改良することができる。
【0010】
さらに好ましくは、非回転対称的な領域が弁座に構成されており、回転対称的な領域が閉鎖体に構成されている。この場合、既存の閉鎖体構成部品をコスト効率良くさらに使用することができる。
【0011】
有利には、非回転対称的な領域が弁座および閉鎖体に構成されている。これにより、流体流のさらに上昇した圧力、したがって大きい偏心力を生成することができ、これにより、作動時に閉鎖体の負荷が低減され、耐用寿命が延長される。
【0012】
本発明の好ましい実施形態によれば、回転対称的な領域と非回転対称的な領域との間の移行部に移行部エッジが構成されている。これにより、流体流の圧力上昇が直接的に開始可能となるか、もしくは流体流の速度が急激に降下される。
【0013】
次に本発明の実施例を添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明による弁の第1実施例を示す概略的な断面図である。
【図2】図1の弁の弁座を示す平面図である。
【図3】図1の本発明による弁を圧力比と共に示す概略的な横断面図である。
【図4】本発明の第2実施例による弁を示す概略的な断面図である。
【図5】本発明の第3実施例による弁を示す概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、図1〜図3に基づき本発明の第1の好ましい実施例による流体を制御するための弁1を詳細に説明する。
【0016】
図1は弁1を示し、弁1は、弁座3と、弁座3で密閉線5において開口部4を開閉する閉鎖体2とを備える。閉鎖体2は、半球状に構成された回転対称的な領域21を備える円筒形に構成されている。弁座3は回転対称的な領域31を備え、この領域31には、弁座3と閉鎖体2との間に円形の密閉線5が形成されている。図1は、完全に開放された行程(移動)位置にある弁1を示し、この位置で流体は高い圧力により軸線X−Xの方向に供給され、閉鎖体2と弁座3との間の解放された環状横断面8で矢印により示した貫流方向Aに閉鎖体2に沿って変向される。
【0017】
さらに弁座3は非回転対称的な領域32を有し、この領域32は、貫流方向Aに、移行部エッジ7で回転対称的な領域31に接続している。非回転対称的な領域32は、図2から分かるように、半円形の第1部分領域32aと、非回転対称的な領域32の他方の半分を形成する楕円形の第2部分領域32bとを備える。第1および第2の部分領域32a,32bは、周方向にも移行部エッジ7によって相互に分離される。
【0018】
図1からさらに分かるように、弁1の開放時には、弁座3と閉鎖体2との間における密閉線5の位置に流体流のための最小横断面6が形成される。最小横断面6では流体流は最大速度を有する。したがって、図3からわかるように、流体流の静圧Pは最小横断面6で最小値に達する。移行部エッジ7で、流体流は弁座3の一方の半部で非回転対称的な第2部分領域32bに進入する。移行部エッジ7から拡大された環状横断面8により、流体流の速度は著しく低下する。したがって、圧力Pは第2部分領域32bでは比較的平坦な圧力上昇を有する向かい側の第1部分領域32aにおいてよりも早く上昇する。これにより、偏心力Fの形態でもたらされる横方向力割合による力不均衡が生じ、偏心力Fは閉鎖体2では弁1の行程(移動)方向に対して横(直交)方向の軸線X−Xに作用し、低圧側に、すなわち、第1部分領域32aの側に押圧される(図1参照)。
【0019】
弁を部分的に開放された状態で示す図3から分かるように、偏心力Fは閉鎖体2のわずかな行程でも作用する。さらに、有利には非回転対称的な第2部分領域32bは、ここで引き起こされた圧力上昇が、有利には回転対称的な第1部分領域32aよりも2倍だけ大きくなるように構成されている。これにより、弁1の揺動傾向もしくは閉鎖体2の当接を閉鎖体2の開度とは無関係に効果的に抑制し、閉鎖体の損傷を防止することが可能である。
【0020】
次に図4を参照して本発明の第2実施例による弁1を詳細に説明する。同じまたは機能的に同じ構成部分にはここでは第1実施例と同じ参照符号を付す。
【0021】
上述の第1実施例とは反対に、ここでは弁座3の非回転対称的な領域32の他に、閉鎖体2にも第1部分領域22aおよび第2部分領域22bを有する非回転対称的な領域22が構成されている。第1および第2部分領域22a,22bは、この場合、閉鎖体2の表面の一部を形成しており、第1部分領域22aは球部分の形態の表面220を備え、第2部分領域22bは、切欠き222を有する表面221を備える。第2部分領域22bはここでは第2部分領域32bの向かい側に配置されている。これにより、第1実施例に比べて著しく大きい横断面の拡大、その結果、圧力Pのより大きい上昇が達成され、これにより、偏心力Fの作用は閉鎖体2の最小行程で既に著しく急激に始まる。
【0022】
次に図5を参照して本発明の第3実施例による弁1を詳細に説明する。同じまたは機能的に同じ構成部分はここでは第1および第2実施例と同じ参照符号を付す。第1実施例とは異なり、ここでは弁閉鎖体2が非回転対称的な領域22を備え、弁座3は完全に回転対称的に形成されている。これにより、第1実施例と同じ利点および効果が達成可能である。さらに、既存の弁構成部材は簡単に閉鎖体2の交換にみによって簡単に改良できる。
【0023】
したがって、本発明による弁1は上述の実施例では弁座3および/または閉鎖体2の幾何学形状付与もしくは外形により、非対称的な流体流、およびこれにより生じ、弁閉鎖体2に向けて作用する偏向力Fが生成される。これにより、閉鎖体2は偏心的に開放され、閉鎖体2の揺動およびこれにより生じる当接が効果的に抑制される。このようにして、閉鎖体2の負荷および閉鎖体2の表面における損傷の危険性を著しく低減することができる。
【符号の説明】
【0024】
1 弁
2 閉鎖体
3 弁座
4 開口部
5 密閉線
6 最小横断面
7 移行部エッジ
8 環状横断面
21,31 回転対称的な領域
22,32 非回転対称的な領域
22a 第1部分領域
22b 第2部分領域
32a 第1部分領域
32b 第2部分領域
220,221 表面
222 切欠き
A 貫流方向
F 偏心力
P 圧力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を制御するための弁において、
閉鎖体(2)と、弁座(3)とを備え、前記閉鎖体(2)が前記弁座(3)で密閉線(5)に沿って開口部(4)を開閉し、
前記弁座(3)および前記閉鎖体(2)が、回転対称的な領域(21,31)を備え、該領域(21,31)で前記弁座(3)と前記閉鎖体(2)との間に前記密閉線(5)が形成され、
前記弁座(3)および/または前記閉鎖体(2)が、非回転対称的な領域(22,32)を備え、該領域(22,32)が、前記弁の貫流方向(A)に前記回転対称的な領域(21,31)と接続されていることを特徴とする、流体を制御するための弁。
【請求項2】
前記弁座(3)の回転対称的な領域(31)が完全に円錐状に構成されている、請求項1に記載の弁。
【請求項3】
前記弁座(3)の非回転対称的な領域(32)が、円形状の第1部分領域(32a)と楕円形状の第2部分領域(32b)とを備える、請求項1または2に記載の弁。
【請求項4】
前記楕円形状の第2部分領域(32b)が、前記非回転対称的な領域(32)の半分を形成している、請求項3に記載の弁。
【請求項5】
前記非回転対称的な領域(22,32)が、該非回転対称的な領域(22,32)の圧力上昇が、前記回転対称的な領域(21,31)の2倍だけ大きくなるように構成されている、請求項1から4までのいずれか一項に記載の弁。
【請求項6】
前記回転対称的な領域(31)が前記弁座(3)に構成されており、前記非回転対称的な領域(22)が前記閉鎖体(2)に構成されている、請求項1から5までのいずれか一項に記載の弁。
【請求項7】
前記非回転対称的な領域(32)が前記弁座(3)に構成されており、前記回転対称的な領域(21)が前記閉鎖体(2)に構成されている、請求項1から5までのいずれか一項に記載の弁。
【請求項8】
前記非回転対称的な領域(32)が前記弁座(3)に構成されており、前記非回転対称的な領域(22)が前記閉鎖体(2)に構成されている、請求項1から5までのいずれか一項に記載の弁。
【請求項9】
前記閉鎖体(2)の行程が調節可能である、請求項1から8までのいずれか一項に記載の弁。
【請求項10】
前記回転対称的な領域(21,31)と前記非回転対称的な領域(22,32)との間の移行部に、移行部エッジ(7)が構成されている、請求項1から9までのいずれか一項に記載の弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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