説明

流体作動型軸シール

【課題】
【解決手段】流体作動型軸シールと関係したシステム及び方法が提供される。システム100は、ハウジング104と、ハウジングに対して配設されたシールとを含む。該方法は、軸102とハウジングとの間の流体の流れを減少させる。該方法は、ハウジングを軸に対する開口部内に取り付けるステップと、シールをハウジングに対して配置するステップとを含む。シールは、流体に曝されたとき膨張するゲル材料を含む。シール102a、102bは、ハウジングと軸との間の空隙を通る流体の流れを減少させる。システム及び方法の有利な効果は、流体が存在しないとき、シールは軸と係合しないため、摩擦に起因するシールの磨耗を減少させることを含む。シールは流体が存在するとき、軸と係合する。ゲル材料に作用する圧力差を上昇させることにより、密封の質は向上する。一部の実施の形態において、シールはリップ部分126a、126bを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[001] 本明細書に記載された着想の一部は、契約番号N65538−04−M−0157号に基づいて政府の支援を受けて為され、すなわち開発されたものである。連邦政府は、かかる着想に特定の権利を有することができる。
[002] 本発明は、全体として、シール、特に、ゲル材料を含む流体作動型軸シールに関する。
【背景技術】
【0002】
[003] 多くの工業分野は、軸が構造体の1つの領域から壁を通って構造体の別の領域まで伸びることを必要とする。軸は、全体として、壁の開口部を通り且つ、壁の位置に対して動く。例えば、軸は、表面を通る軸の軸線の回りにて平行移動し、回転し又は平行移動及び回転の何らかの組み合わせ(例えば、捩れ、曲がり又は延伸)にて動くことができる。軸と壁の開口部との間には、全体としてこの動きを容易にする空間的な隙間が存在する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
[004] 軸を動かすことを含む幾つかの適用例は、構造体の別個の領域の間にて流体を隔離し、構造体の1つの領域における漏洩又は汚染が軸と壁の開口部との間の隙間を介して構造体の隣接する領域に移行したり又は流れないことを必要とする。例えば、船の船体の長さに沿って伸びるプロぺラ軸は、船の異なる区画を分離する幾つかの隔壁を通って伸びる。1つの区画内の水の漏洩が隔壁を通って軸に沿って次の区画内に進むのを防止することは、船体が水にて満たされ且つ船が沈没するのを防止する点にて極めて重要である。例えば、船構造体の軸開口部に対して軸が回転する間、流体が1つの隔壁から次の隔壁まで流れるのを制限するため、典型的に軸シールが使用されている。
[005] 軸が作動する間、軸が回転するとき回転する設計とされた従来の軸シールの一例は、ワシントン、ポールズボのワルトシラ・リップス(Wartsila−Lips)インキにより販売されるND型軸シールである。ND型シールは、ゴム成形物−軸の境界面に配置されたoリングを有し、成形物及びoリングの双方が軸の旋回に伴い旋回する。隔壁の一側部における不均一な圧力によって発生されたoリングを亙る圧力差により、ゴム成形物は変形し且つ、開口部の回りに配置されたハウジングに対して押し付けられる。成形物がハウジングに対して押し付けられるとき、成形物の回転は妨害される。静止した成形物は、ハウジングに対するシールを形成し、また、oリングを押して軸と接触させる。oリングは、旋回を停止させ且つ、軸に対する流体シールも形成する。
[006] ND型軸シールの1つの欠点は、密封構成要素がドライな状態にある間、密封構成要素と軸との間の接触の結果、oリング及びゴム成形物における関係した摩擦によって生じた摩耗に起因して密封構成要素が過早に破損することになることである。現在の造船の仕様は、全体として、密封構成要素の対向面の間の圧力差は、約1/3psig(平方インチあたりのポンド又は約234.1kg/m)、又はシールが軸と係合する前に約8ないし9インチ(約203ないし229mm)の水柱圧力であることを要求とする。この水圧は、軸と密封構成要素(例えば、成形物及びoリング)との間に水密な境界面を形成するのを助ける。ND型シールは、僅か0.6ないし0.9インチ(約15.2ないし22.9mm)の水柱圧力の存在下にて作動される(例えば、軸と接触している)。密封構成要素は、密封構成要素が相対的にドライな状態にある間、軸と接触し、過早の摩耗を生じさせる。更に、密封構成要素が相対的に少量の水の存在下にて作動されたとき、対向する密封構成要素の間に流体密シールを生じさせるのに不十分な圧力差が生じる。流体密のシールが形成されないとき、軸及び密封構成要素と関係した漏洩量が造船所の仕様値を上廻る可能性がある。
[007] 例えば、造船所の仕様は、全体として、最大漏洩量が0.5米パイント/時(約0.065ml/秒)である自己作動型隔壁軸シールであることを要求する。自己作動型軸シールは、全体として、軸に対して取り付けた後且つ、漏洩する間、人間の操作(例えば、シールの調節)を必要としない。DDG型駆逐艦の場合、造船所の仕様に基づいて許容される、最大漏洩量は米1パイント/分(約0.1314ml/秒)である。相対的に低い圧力差の存在下でのシールの作動(例えば、上述した相対的に少ない水量に起因する過早の作動)により、シール構成要素の加速された摩耗が生じる。シールの加速された摩耗の結果、シールは過早に破断し、造船所の仕様値と不適合となる。
[008] 従って、相対的に少量の流体の存在下にて過早に作動しない自己作動型軸が必要とされている。また、過早の摩耗に抵抗する設計とされた軸シールも必要とされている。また、多岐に亙る直径の軸を効果的に密封し得るようにその設計を寸法付けする(scale)ことのできる軸シールも必要とされている。例えば、駆逐艦又は色々な工業的用途にてその双方が見られる、相対的に小径の軸と相対的に大径の軸とに対する軸シールの設計が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
[009] 本明細書に記載された着想は、流体に曝されたときに膨張するゲル材料と、シールとを関係させることにより、現在の軸シールと関係した上記及びその他の問題点に対処するものである。1つの実施の形態において、かかる材料を採用するシールの設計は、全体として、流体が存在しないとき、動く軸と接触しない。シールと軸とを分離することは、流体が存在しないとき、シールに対する摩擦効果を減少させることにより、シールの寿命を引き延ばすことになる。ゲル材料が膨張すると、シールは変形し且つ押されて軸と接触する。かかるシールと関係した色々な特徴及び有利な点について以下に説明する。
[0010] 本発明は、1つの形態において、ハウジングと、ハウジングに対して配設されたシールとを有するシステムを特徴とする。シールは、流体に曝されたときに膨張して、ハウジングと軸との間の空隙又は隙間を通る流体の流れを減少させるゲル材料を含む。シールはリップ部分を有し、また、ゲル材料の膨張によってリップ部分は押されて軸と接触する。
[0011] 一部の実施の形態において、シールは、ハウジングと軸との間の空隙と関係した流動面積を減少させる。一部の実施の形態において、シールは、ゲル材料の膨張によって押されて軸と接触し且つ、流動面積を実質的に解消する(例えば、空隙を閉じることにより)。一部の実施の形態において、ゲル材料は、流体が存在しないとき収縮し、シールと軸との間に空隙を形成し又はその空隙を増大させることの少なくとも一方を行い得るようにされている。1つの実施の形態において、流体が区画から除去された後、ゲル材料は乾燥し且つ、収縮して、流体に曝される前にシールがとっていた当初の形状に復帰するのを許容する。一部の実施の形態において、ゲル材料の膨張は、可逆的過程又は効果である。一部の実施の形態において、軸は隔壁を通って伸びる(例えば、船の船体を通って伸びるプロペラ軸である)。一部の実施の形態において、ゲル材料は、ゲル粒子を連続気泡構造内に埋め込むことにより形成される。一部の実施の形態において、連続気泡構造は、硬い連続気泡構造又は柔軟な連続気泡構造である。一部の実施の形態において、連続気泡構造は、シールの空所内に嵌まる形状とされている。
[0012] 一部の実施の形態において、シールはリップシールを含む。シール又はリップシールは、エラストマー的材料、天然ゴム材料又は合成ゴム材料を含むことができる。一部の実施の形態において、シールは、シールと軸との間の摩擦を減少させるため、低摩耗材料を含む。低摩耗材料は、例えば、成形し、接着し、被覆し又はその他の方法にてシールに固定され又は施されたテフロン(Teflon)(登録商標)材料とすることができる。低摩耗材料は、軸とシールとが長期間接触する間に生じるであろう軸とシールとの間の摩擦を減少させる。一部の実施の形態において、システムは、シールをハウジング、軸又はその双方に対して整合させ得るようにされた整合リングを含む。一部の実施の形態において、整合リングは、軸に対する接触面を有し、また、整合リングと軸との間の摩擦を減少させるため、低摩耗材料が使用される。一部の実施の形態において、低摩耗材料は、テフロン(登録商標)材料である。一部の実施の形態において、低摩耗材料は、接着、定置、装着、連結又はこれらの任意の組み合わせの少なくとも1つによってシールに対して固定される。一部の実施の形態において、シールは、例えば、溝、空所、締まり嵌め(例えば、直径方向締まり嵌め)、又は摩擦嵌めを通じて低摩擦材料を捕捉する。整合リングは、例えば、テフロン(登録商標)材料のような低摩耗又は低摩擦材料にて形成することができる。
[0013] 一部の実施の形態において、システムは、流体に曝されたとき、膨張し且つ、ハウジングと軸との間の空隙を通る流体の流れを減少させる第二のゲル材料を備える第二のシールを含む。一部の実施の形態において、シールは、ハウジングと軸との間の空隙を通って第一の方向に沿った流体の流れを減少させ、また、第二のシールは、ハウジングと軸との間の第二の方向に沿った第二の流れを減少させる。一部の実施の形態において、第二の方向は第一の方向に対し実質的に反対の方向である。
[0014] 一部の実施の形態において、シールは予備シール(backup seal)である。シールは、軸がハウジングに対して動く(例えば、回転、平行移動又はこれらの任意の組み合わせ)間、ハウジングとシールとの間の流体の流れを減少させることができる。一部の実施の形態において、シールが流体に曝されたとき、シールを横切って圧力差が維持される。圧力差は、例えば、ゲル材料と相互作用させ且つ、ゲル材料を膨張させることにより、シールの性能を向上させることができる。
[0015] 本発明は、別の形態において、軸とハウジングとの間の流体の流れを減少させる方法を特徴とする。該方法は、ハウジングを軸に対して開口部内に取り付けるステップを含む。該方法は、シールをハウジングに対して配置するステップを含む。シールは、流体に曝されたときに膨張し且つ、ハウジングと軸との間の空隙を通る流体の流れを減少させるゲル材料を備えている。
[0016] 一部の実施の形態において、該方法は、シールをハウジング、軸又はその双方に対して整合させ得るようにされた少なくとも1つの整合リングを取り付けるステップを含む。一部の実施の形態において、該方法は、ハウジングをシールに対して整合させるため、整合リングをシールに連結するステップを含む。一部の実施の形態において、該方法は、流体に曝されたとき膨張し且つ、ハウジングと軸との間の空隙を通る第二の流体の流れを減少させる第二のゲル材料を備える第二のシールを取り付けるステップを含む。一部の実施の形態において、該方法は、シールをハウジング、軸又はその双方に対して整合させ得るようにさせた第二の整合リングを取り付けるステップを含む。一部の実施の形態において、該方法は、低摩耗材料をシールに対して固定するステップを含み、また、固定するステップは、少なくとも接着、定置、装着、連結又はこれら任意の組み合わせを含む。一部の実施の形態において、固定するステップは、例えば、シールが例えば、溝、空所、締まり嵌め(例えば、直径方向締まり嵌め)又は摩擦嵌めを通じて低摩耗材料を捕捉するステップを含む。
[0017] 本発明は、別の形態において、軸に対して配設されたハウジングと、流体に曝されることに応答してハウジングと軸との間の空隙を減少させる手段とを含むシステムを特徴とする。空隙を減少させる手段は、流体に応答可能なゲル材料を含む。
[0018] 本発明は、別の形態において、ハウジングと、ハウジングに対して配設されたシールとを含むシステムを特徴とする。シールは、流体に曝されたとき膨張してハウジングと構造体との間の空隙を通る流体の流れを減少させるゲル材料を含む。
[0019] 一部の実施の形態において、シールの一部分は、例えば、流体が存在しないとき、構造体と接触せず、シールのようなシステムの構成要素との摩擦に関係した摩耗を減少させる。一部の実施の形態において、シールの一部分は、シールが流体に曝されたとき、構造体と接触する。一部の実施の形態において、シールはリップ部分を含み、ゲル材料の膨張によってリップ部分は押し付けられて構造体と接触する。
[0020] 本発明のその他の実施の形態において、上述した形態の任意のものは、上述した特徴の1つ又はより多くを含むことができる。本発明の1つの実施の形態は、上記の特徴及び有利な効果の全てを提供することができる。
[0021] 上記及びその他の特徴は、以下の説明及び単に説明のためであり、必ずしも正確な縮尺通りではない図面を参照することにより、一層完全に理解されよう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
[0029] 図1は、本発明を具体化する、軸とハウジングとの間の流体の流れを減少させるシステム100の断面図である。該システム100は、長手方向軸線Aを画成する軸102に対して取り付け且つ該軸102と共に使用し得る設計とされている。システム100は、1つ又はより多くの貫通穴108を画成する伸長可能な部分106と連結されたハウジング104を有する。システム100は、例えば、1つ又はより多くのボルトを貫通穴108を通して支持面又は隔壁(図示せず)における相応する穴(図示せず)まで通すことにより軸102に対して固定し又は固定状態に取り付けることができる。一部の実施の形態において、ボルトは相応する穴内に直接ねじ込まれる。一部の実施の形態において、相応する穴は、貫通穴とし、システム100は、ボルトを支持面又は隔壁の反対側部(例えば、構造体の異なる領域にて)1つ又はより多くのナットに確実にねじ止めすることにより固定される。
[0030] システム100は、ハウジング104内に配設された2つの接続板110a、110bを特徴とする。接続板110a、110bは、2つの面112a、112bを画成する。接続板110aの表面112aは、ハウジング104の内面114bに面している。接続板110bの表面112bは、ハウジング104の内面114aに面している。システム100は、整合リング116を有する。整合リング116は、接続板110a、110bの表面112a、112bの間に相対的に装着する設計とされている。接続板110a、110b及び整合リング116の組み合わせ体は、ハウジング104の表面114a、114bの間に相対的に緩く装着する設計とされている。接続板110a、110bは環状溝117を画成する。整合リング116は、1つ又はより多くのoリング118を収容する相応する環状溝(図示せず)を画成する。一部の実施の形態において、整合リング116の環状溝は、接続板110a、110bの環状溝117と協働し、oリング118を着座させる実質的に連続的な環状溝を形成する。一部の実施の形態において、整合リング116は、例えば、テフロン(登録商標)材料のような低摩耗又は低摩擦材料にて製造される。
[0031] 接続板110a、110b及び整合リング116の合計厚さは、ハウジング104の距離119a(すなわち、表面114a、114bの間のX軸線に沿った距離)よりも僅かに薄い。僅かな隙間119bがハウジング104と整合リング116及び接続板110a、110bの組み合わせ体との間に存在する。oリング118は、接続板110a、110bと整合リング116との組み合わせ体とハウジング104との間にシールを提供し、流体がハウジング104の内部領域114cに入るのを阻止する。更に、oリング118は、接続板110a、110b及び整合リング116が軸102に対して曲がり又は動いて、例えば、ハウジング104(例えば、伸長可能な部分106、貫通穴108又はハウジング104が固定される表面)に過剰な応力を加えずに、軸102がY軸線に沿って平行移動するのを受容するのを許容する。一部の実施の形態において、軸102は、ハウジング104に対して動く(例えば、船におけるプロペラ軸である)。軸102は、ハウジング104に対する平行移動又は回転又は平行移動及び回転の何らかの組み合わせ(例えば、捩れ)により動くことができる。一部の実施の形態において、軸102は、ハウジング104に対して静止している。静止した軸の例は、導管、パイプ、電気ケーブル及び表面を貫通して伸びるその他の構造体を含む。
[0032] システム100は、軸102に対して配置された2つのシール120a、120bも特徴としている。シール120a、120bは、接続板110a、110b及び整合リング116に対して当接する関係に配置されている。一部の実施の形態において、シール120a、120bは、例えば、シール120a、120bを整合リング116に接合することにより、整合リング116に連結される。一部の実施の形態において、シール120a、120b及び整合リング116は、同一の材料にて形成された単一物構造体である。リング122が軸102と整合リング116の底面124との間に配設されている。
[0033] 一部の実施の形態において、リング122は、テフロン(登録商標)材料又はその他の低摩耗又は低摩擦材料にて形成されている。組み立て及び作動中、リング122を使用してシステム100の色々な構成要素を整合させることができる。例えば、リング122は、整合リング116及び接続板110a、110bをハウジング104及び軸102に対して整合させることができる。一部の実施の形態において、リング122は、システム100内に含められていない。一部の実施の形態において、リング122は、軸102が動くとき、リング122が動く(例えば、回転し又は平行移動する)ように軸102に連結されている。一部の実施の形態において、リング122と軸102との間の空隙は、空隙を通る空気又は流体の流れを減少させるのに十分に小さい。一部の実施の形態において、リング122又はその他の低摩耗材料が、例えば、接合、定置、装着、連結又はこれらの何らかの組み合わせによってシール120a、120bに対して固定される。リング122又はその他の低摩耗材料は、例えば、溝(図示せず)、空所(図示せず)又は直径方向締まり嵌め又は摩擦嵌めのようなその他の型式の装着により、シール122a、122bにより捕捉することができる。
[0034] この実施の形態において、リング122は、軸102に対するシール120a、120bの各々のリップ126a、126bの間の半径方向隙間130にほぼ等しい約0.1mm(Y軸線に沿った)の厚さを有する。一部の実施の形態は、リップ126a、126bと軸102との間の半径方向隙間130がリング122の厚さよりも大きいことを特徴とする。一部の実施の形態において、シール120a、120bのリップ126a、126bの軸に面する表面と、シール120a、120bの接続板に面する表面との間の隙間132は約25mmである。一部の実施の形態において、隙間132は、約12.7mmである。代替的な幾何学的形態及び寸法とすることが考えられ、これらも、本発明の範囲に属するものである。
[0035] シール120a、120bの各々は、空所128a、128bをそれぞれ画成する。空所128a、128bは、ゲル材料(本明細書にてゲルとも称する)にて充填される。一部の実施の形態において、ゲル材料は、ヒドロゲル、アクリルアミドゲル(例えば、「スマート」ゲル)又は流体の存在下にて膨張するその他のゲルである。一部の実施の形態において、シール120a、120bは、例えば、エラストマー的材料、天然ゴム材料又は合成ゴム材料のような、柔軟であり又は曲げ可能な材料を備えている。
[0036] 一部の実施の形態において、シールは、約ショアA60の硬度を有する材料を備えている。全体として、ゲル材料は流体に曝されたときに膨張し且つ空所128a、128bの内面に対して反作用する。シール120a、120bは柔軟であるから、ゲル材料が膨張すると、シール120a、120bのリップ126a、126bは、押されて軸102と接触し、密封配置状態を形成する。このようにして、リップ126a、126bは、リップ126a、126bと軸102との間の隙間130と関係した流動面積を減少させ又は解消する。一部の実施の形態において、シール120a、120bは、例えば、シール120a、120bと軸102との間の摩擦を減少させるため、テフロン(登録商標)材料のような低摩耗材料を含む。例えば、低摩耗材料は、リップ126a、126bに固定し又は施す(例えば、成形、結合又は表面被覆により)ことができる。
[0037] 試験の結果、一部の実施の形態において、ゲル材料はリップ126a、126bを押して軸102と接触させるとき、リップ126a、126bに対して約37psi(約26,010kg/m)の以上の圧力を発生させることが可能であることが分かった。
[0038] この実施の形態において、システム100は、全体として互いに流体的に連通しない第一の区画Iと、第二の区画IIとを画成する。区画Iは、例えば、ハウジング104に連結された表面(例えば、船の隔壁)により区画IIから分離されている。第一の区画I内にて流体の漏洩が生じたとき、システム100の典型的な作動が生じる。第一の区画Iと第二の区画IIとの間に圧力差が発生する。流体は、シール120a、120bと軸102との間の隙間130を介して第一の区画Iから第二の区画IIまで移行する傾向となる。
[0039] 一部の実施の形態において、流体は、空所128b内に配置されたゲル材料と接触し(例えば、はね出し又は浸漬により)、ゲル材料を空所128bの内面に対して膨張させ且つ反作用させ、リップ126bを押して軸102と接触させる。一部の実施の形態において、ゲル材料が流体に曝された後、数秒以内にゲル材料は膨張し且つリップ126bを押して軸102と接触させる。システム100は、例えば、真水、塩水、酸、アルカリ流体、血液又はその他の生物学的流体及び油のような多岐に亙る自然に生じ又は合成した流体と共に使用することができる。全体として、存在する流体の型式は、システム100内にて使用されるゲル材料の選択に影響を与える。ゲル材料は、一部分、流体の性質に基づいて応答する(例えば、膨張し且つ収縮する)ことができる。
[0040] 全体として、ゲル材料は、流体が存在しないとき膨張しないから、流体が存在する迄、シール120bは作動させない(すなわち、リップ126bは軸102に向けて動かない)。リップ126bが軸102と接触すると、リップ126bと軸102との間の隙間130又は空隙は減少し、このことは、移行する流体が通る流動面積を減少させることになる。第一の区画Iと第二の区画IIとの間の圧力差は、リップ126bが軸102に接近し又は軸102と接触するのに伴い増大する。一部の実施の形態において、第一の区画Iと第二の区画IIとの間の圧力差が上昇するに伴い、リップ126bが隙間130を通る流れを減少させる能力は増大する。oリング118は、整合リング116及び接続板110a、110bの組み合わせ体をハウジング104の内面114a、114bに対して密封することにより、流体が第一の区画Iから第二の区画IIまでハウジング104を通って移行するのを妨害する。
[0041] 一部の実施の形態において、リップ126bが軸102と係合するときに生ずる圧力差は、第二の区画IIに面するシール120aの空所128a内に配設されたゲル材料にも作用する。圧力差によって空所128a内のゲル材料は膨張し、リップ126aを押して軸102と係合させる。一部の実施の形態において、シール120aのリップ126aは、予備シールを形成し、第一の区画Iに面するシール120b(例えば、リップ126b)が機能しなくなるとき(例えば、磨耗により)、流体が第二の区画IIに入るのを妨害する。一部の実施の形態において、一部の流体は、第一の区画Iから第二の区画IIまで移行し且つ、空所128a内に配設されたゲル材料と接触し又は該ゲル材料を湿らせる。空所128a内のゲル材料が流体に曝されると、シール120aのリップ126aは、軸102に向けて動き且つ(又は)該軸102と接触する。このようにして、第二の区画II内の流体は、シール120aの作用によって第一の区画Iに移行して戻ることが妨害される。
[0042] シール120a、120bが流体に曝されることにより作動された後、流体が除去され、シール120a、120bはドライな状態となる(例えば、熱を加えることにより)迄、リップ126a、126bは軸102と接触したままである。一部の実施の形態において、シール120a、120bは、空気に曝すことによりドライな状態とさせる。ゲル材料は、例えば、ゲル材料がドライな状態となったとき、流体が存在しない場合に収縮する。ゲル材料が収縮すると、シール120a、120bは、流体に曝される前に(例えば、漏洩する前)シール120a、120bが取っていた当初の形状に変形して戻る。システム100は、ゲル材料の膨張は可逆的効果であるため(例えば、ゲル材料の収縮により)、システム100は、交換せずに多数回の漏洩に対して使用することができる。
[0043] 全体として、ゲルは、分散した粒子が分散媒質に結合して半固体材料を形成するコロイド状材料である。ゲルは、ゲルと関係した分散媒質に従って、種類分けされる場合がある。例えば、ヒドロゲルに対する分散媒質は、水であり、アクリルアミドゲルに対する分散媒質はアセトンである。
[0044] 本発明の一部の実施の形態にて使用されるゲル材料は、ポリマーストランド(例えば、ゲル粒子)を溶液(例えば、水又はアセトン)中に浸漬させることにより形成される。一部の実施の形態において、ゲル粒子は分散媒質中に懸濁される。一部の実施の形態において、ゲルは、ゲルが曝される環境に応答して体積を変化させる(例えば、膨張し又は収縮する)。ゲル材料の体積の変化は、浸透圧として知られたゲル材料の性質に直接、比例する。浸透圧は、例えば、分散媒質の温度、イオン化、溶液(例えば、アセトン)の濃度又はゲル材料に作用する外力(例えば、圧力)のような、多岐に亙る因子に依存する。全体として、ゲルは、最低の熱動的エネルギを有する状態(例えば、最低の浸透圧)をとろうとする。外力が存在しないとき(例えば、0N/mの浸透圧)、ゲルはそれ自体に圧縮する。例えば、一部のアクリルアミドゲル(「スマートゲル」とも称される)は、スマートゲルにて相変化を引き起こすのに十分な適宜な外部状態に曝されたとき、体積が約1000倍だけ減少する可能性がある。
[0045] 一般的に、環境上の変化は、ゲルが可逆的な体積変化を生ずるのを容易にすることによりゲル材料に影響を与える。かかる環境状の変化は、流体の温度、pH、流体のイオン強度、光及びゲルが存在するときの電磁場の変化を含む。環境上の変化は、全体として、環境の変化に応答してゲル材料の体積を膨張させ又は収縮させることになる。ゲル材料が体積変化を経験する環境値の範囲は、ゲルの環境的体積相変化領域と称することができ、ゲル材料の型式に依存して変化する。単に一例として、粒子ゲルは、ゲル又はゲルと接触した流体の温度が増大するに伴い収縮する可能性がある。同様に、ゲルは、ゲル又はゲルと接触した流体の温度が低下するに伴い膨張するであろう。
[0046] 一部の実施の形態において、ゲル材料は、ゲルが「不連続的」な体積変化を受ける能力に基づいて、システム100にて使用し得るよう選ばれる。不連続的な体積変化は、ゲル材料が膨張した状態から収縮した(又は圧縮した)状態に可逆的に変化し再度戻ることによる可逆的転位を含む。一部の実施の形態において、体積変化は、環境条件の相対的に僅かな変化に応答する顕著な体積の変化である。一部の実施の形態において、温度が約0.1℃以下だけ変化すると、不連続的な体積変化となる。かかるゲル材料は「相転位ゲル」と称することができる。環境条件は、ゲルは相転位温度付近にて体積変化を受けるため、「相転位温度」と称することができる。一部の実施の形態において、温度が相転位温度以下に降下すると、ゲル材料は膨張し且つ、リップ126a、126bを押し付けて軸102と接触させる。一部の実施の形態において、流体が存在しないとき、又は温度が相転位温度以上に上昇したとき、ゲル材料は収縮し且つリップ126a、126bが変形して軸102から離れるのを許容する。
[0047] 一部の実施の形態において、ゲル材料(例えば、ゲル材料のペレット又はパケット)は発泡材料中に埋め込まれる。一部の実施の形態において、発泡材料は、連続気泡構造材料である。一部の実施の形態において、連続気泡構造材料は柔軟な連続気泡構造材料である。適宜な連続気泡構造材料の例は、ウレタン発泡材又は例えば、メイン州のブースベイ(Boothbay)のレイネル(Rynel)インクが販売する低密度ポリウレタン発泡材を含む。
[0048] 一部の実施の形態において、発泡材料は空所128a、128b内の空間を占めるため、発泡材料が使用されるとき、使用されるゲル材料は少ない。発泡材料は、ゲル材料に対する封じ込め担体(例えば、個別のゲル粒子又はポリマーストランド)として使用され且つ、ゲル材料の移行を防止することができる。一部の実施の形態において、発泡材中のゲル材料は、流体に曝されたとき膨張する。ゲル材料の膨張によって発泡材は膨張する。膨張する発泡材は、シール120a、120bの空所128a、128bに対して反作用し、シール120a、120bを変形させ且つ、リップ126a、126bを押し付けて軸102と接触させる。
[0049] 一部の実施の形態において、ゲル材料は、液体透過性スリーブ又は管(図示せず)内に配設される。スリーブは、シール120a、120bの空所128a、128b内に配置することができる。一部の実施の形態において、スリーブは、水がスリーブ内に且つスリーブ外に透過するのを許容するが、ゲル材料がスリーブ外に透過するのを阻止するメッシュ材料にて形成される。ゲル材料を保持するスリーブは、形成し且つ、多岐に亙る幾何学的形態を有するシールにて使用することができ、それは、スリーブ及びゲル材料は、シールの形状又はシールの空所の形状をとることができるからである。一部の実施の形態において、発泡材料中に埋め込むことのできる量よりも著しく多量の量のゲル材料をスリーブ内に保持することができる。
[0050] 図2は、軸102とハウジングとの間の流体の流れを減少させるシステム200の分解斜視図である。システム200は、協働して軸102の回りにて周方向に配設された単一のハウジング(全体として参照番号200)を形成する2つのハウジング部分202a、202bを有する。軸102は、長手方向軸線Aを画成する。ハウジング部分202a、202bの各々は、ハウジング部分202a、202bを軸102が通る表面又は隔壁(図示せず)に固定する複数の貫通穴108を画成する。ハウジング部分202a、202bの各々は、各々が軸102のほぼ1/2に外接する半体のリング形状構造体である。ハウジング202を軸102の回りに配設する、ハウジングのその他の形態が可能である(例えば、四分円又は三分円)。
[0051] システム200は、協働して、ハウジング202内に配設され且つ、軸102の回りで周方向にある単一の整合リングを形成する2つの整合リング206a、206bを有する。整合リング206a、206bは、接続部208a、208bにより互いに固定される。接続部208aは、2つの接続板210a、210bを特徴とする。接続部208b(斜視図にて隠れている)に対し同一の組みの接続板が使用される。複数のコネクタ212(例えば、ボルト、ねじ、リベット又は締結具)が第一の接続板210a、整合リング206a、206bの何れか又は双方の一部分、第二の接続板210bを通って伸び、また、軸方向に固定されて構成要素間の密着嵌め状態を形成する。一部の実施の形態において、整合リング206a、206bは、互いに密着嵌めされて(例えば、摩擦嵌めにより)整合リングを形成する。
[0052] 整合リング206a、206b及び接続板210aの各々は、oリング118を受容する環状溝117(例えば、図1の環状溝117)を画成する。同様に、整合リング206a、206b及び接続板210bの各々は、整合リング206a、206b及び接続板210bの軸線Aに沿った反対側面にoリング118(斜視図にて隠れている)を受容する環状溝117(斜視図にて隠れている)を画成する。oリング118は、環状溝117内で軸102の回りで周方向に連続している。一部の実施の形態において、oリング118は、周方向に連続しているのでなく(例えば、これらは割り型oリングである)、oリング118を軸102の長さに沿って(例えば、軸の中間位置まで)摺動させることなく、軸102の回りに配置することを可能にする。
[0053] システム200はまた、軸102の回りで周方向に配設されたリング122、シール120a、120bも有する。図面の明確化のため、シール120aは図示されていない。リング122及びシール120aは、軸102の回りで周方向に連続している。一部の実施の形態において、整合リング122又はシール120bの何れも周方向に連続していず、割り型oリングと同様に軸102を軸の中間位置に配置することを可能にすることはない。
[0054] 図3は、本発明を具体化するゲル材料を保持する設計とされた空所308を含むリップシール300の断面斜視図である。シール300は、長手方向軸線A(例えば、図1、図2の軸102の長手方向軸線A)に沿った軸(図示せず)の回りに配設し得るよう半円形として示されている。一部の実施の形態において、シール300は、エラストマー又はゴム材料にて形成される。一部の実施の形態において、シール300は単一物構造であり、また、軸の回りに配設し得る実質的に連続的なリングを形成する。一部の実施の形態において、シール300は、協働して実質的に連続的なリングを形成する1つ又はより多くの構成要素にて形成することができる。
[0055] シール300は、軸に隣接して配置される第一の面304と、外部構成要素(例えば、整合リング116、接続板110、ハウジング104又は図1のこれらの構成要素の組み合わせ体)に対して反作用する第二の面306を有する。シール300は、流体の存在下にて膨張するゲル材料(図示せず)を収容し又は保持する設計とされた空所308を画成する。流体が存在するとき、ゲル材料は、膨張し且つ、空所308の内部に対して反作用する。
[0056] 一部の実施の形態において、シール300は、流体が存在しないとき、第一の面304が軸と係合するのを防止するのに十分に硬い材料にて形成されている。該材料は、流体の存在下にてゲル材料の膨張がシール300を変形させて第一の面304が軸と係合するのを許容するのに十分柔軟である。例えば、シールは、エラストマー材料又はゴム材料(例えば、天然又は合成ゴム)にて形成することができる。第二の面306は、相対的に固定された外部構成要素(例えば、図2のハウジング202又は整合リング206a、206b)に対して反作用するから、第一の面304は、軸線Aと整合された軸に向けて実質的に半径方向に膨張する。
[0057] 一部の実施の形態において、試験の結果、流体が存在しないとき、距離310aは約12.7mm、距離310bは約14.6mmであり、軸に対してシールから約1mmの隙間又は空隙を提供することが分かった。流体が存在するとき、空所308内のゲル材料はシール300を変形させた。距離310aは、ほぼ同一のままであった(すなわち約12.7mm)。距離310bは、約16.5mmまで膨張し、この距離は、シール300と軸との間の約1mmの隙間の空隙を上回るのに十分であった。この実施の形態において、外部構成要素(例えば、図2のハウジング202又は整合リング206a、206b)が第二の面306と接触したとき、距離310bの膨張は約16.5mm以上となった。膨張程度が大きければ大きい程、シール300と軸との間に益々強力(例えば、補強された)且つ益々堅固な密封境界面が提供される。
[0058] 図4は、本発明を具体化するシステム400の断面図である。該システム400は、整合リング404に対して配設されたハウジング402を有する。ハウジング402は、システム400を軸410が長手方向軸線Aに沿って伸びる壁又は表面(例えば、隔壁)に固定する1つ又はより多くの貫通穴408を有する伸長部分406に連結されている。ハウジング402は内面412を画成する。該内面412は、整合リング404に対して配設された1つ又はより多くのoリング410に対して反作用することにより、整合リング404に対するシールを形成することができる。整合リング404内の環状溝416はoリング414を受容する。
[0059] システム400は、シール418を有する。該シールは、軸410に隣接して配設される形態とされた整合リング404の一部分422のキャビティ420に対して配設される。該シール418は、空所424及び開口部426を画成して流体が空所424内に配設されたゲル材料(図示せず)と相互作用するのを許容する。一部の実施の形態において、シール418は、「背中合わせ」シールと称され、それは、ゲル材料が流体の存在下にて膨張したとき、ゲル材料は空所424の両面428に対して反作用し、シール418の底部分430(例えば、反対方向を向いた2つの軸方向リップ432a、432b)を軸410に向けて半径方向に押し付けるからである。システム400は、軸410とシステム400との間に配設された2つのリング434も有する。全体として、リング434の各々は、図1に関して上述したリング122と同様である。
[0060] 一部の実施の形態において、シール418は、例えば、摩擦嵌めによって整合リング404(例えば、キャビティ420)に対して配置され又は固定される。一部の実施の形態において、シール418は、例えば、シール418を包被体420に接合するか又はシール418を整合リング404と同一の材料にて形成することにより、整合リング404に連結される。第一の区画Iからの流体が整合リング404と軸410との間の空隙436又は半径方向距離を横切って第二の区画IIに向けて移行するとき、流体はシール418の開口部426に入る。開口部426に入る流体は、空所424内に配設されたゲル材料と相互作用し、接触し又はゲル材料を湿らせる。ゲル材料は、膨張し且つリップ432a、432bを押し付けて軸410と接触させシール410に対する流体密シールを形成する。ゲル材料が空所内にて膨張することは、シール418を押し付けて軸410と係合させることになる。シール418は、流体が存在しないとき、軸410と接触せず又は最小程度のみ接触するから、システム400は、摩擦力と関係したシール418における過早の磨耗に抵抗する。全体として、ゲル材料は、本明細書に記載した実施の形態に関して説明した特徴の1つ以上を含むことができる。
[0061] 図5は、図4のシステムにて使用される背中合わせのリップシール500(例えば、図4のシール418のような)の断面斜視図である。一部の実施の形態において、シール500は、エラストマー又はゴム材料にて形成される。一部の実施の形態において、シール500は、単一物構造であり且つ、長手方向軸線Aを画成する軸(図示せず)の回りに配設される実質的に連続したリングを形成する。一部の実施の形態において、シール500は、協働して実質的に連続したリングを形成する1つ又はより多くの構成要素にて形成することができる。
[0062] シール500は、軸に隣接して配設される第一の部分504と、外部構成要素(例えば、整合リング404、ハウジング部分402又は図4のこれらの構成要素の双方)に対して反作用する第二の面506とを有する。第一の部分504は、反対方向を向いた2つのリップ508a、508bを有し、リップ508aと508bとの間に開口部426が配設されている。該開口部426は、第一の部分504に沿って流れる流体がシール500の空所424内に配設されたゲル材料(図示せず)と接触し、また、該材料を湿らせるのを許容する。ゲル材料は、流体の存在下にて膨張し且つ、空所424の内側に対して反作用する。ゲル材料が膨張すると、リップ508a、508bの一方又は双方は変形し且つ、軸に向けて動いて軸との接触状態を確立し、流体密封境界面を形成する。リップ508a、508bと軸との間の接触は、軸とシール500との間の流体の流れを減少させることになる。構造体の構成要素の間(例えば、図4の区画Iと区画IIとの間)の圧力差が増すに伴い、ゲル材料は、シール500を軸に対して補強し又は強化する膨張力を提供することを継続する。
[0063] 一部の実施の形態において、シール500は、流体が存在しないとき、第一の部分504又はリップ508a、508bが軸と係合するのを防止するのに十分に硬い材料にて形成されている。シール500は、流体が存在するとき、ゲル材料の膨張によりリップ508a、508bが変形して、リップ508a、508bを軸に向けて動かすのに十分に柔軟な材料にて形成されている。第二の表面506は、相対的に固定された外部構成要素に対して反作用するため、膨張は、実質的に軸に向けた方向となる。図3、図5のシール300、500は、半円形としてそれぞれ示されているが、その他の幾何学的形態(例えば、直線状の幾何学的形態又はその他の曲線状の幾何学的形態又はそれらの組み合わせ)を有するシールが本発明の範囲に属するものである。
[0064] 図6は、本発明を具体化するシステムの漏洩量のデータのグラフである。データは、原型システム(prototype system)の性能を観察することにより得られたものである。原型システムは、DDG型駆逐艦のプロペラ軸にて使用することのできるシステムの約8分の1寸法のモデルとして設計した。システムは、図1の要素を含むものとした。例えば、原型軸の直径は、約63.5mmとした。DDG型駆逐艦プロペラの実物大寸法(full−scale)の軸の直径は、約508mmである。造船所の規則によって許容される実物大寸法の軸の分当たり最大回転数(RPM)は約168RPMである。8分の1寸法(1/8th−scale)の原型は、軸の直径の相違を考慮するため、約1,344RPMにて試験した。試験装置は、雰囲気圧力環境にある第一の区画と、加圧した環境(例えば、水が存在する)にある第二の区画とを含むものとした。第一の区画と、第二の区画との間の圧力降下によって、水は低圧の第一の区画に向けて移行しようとする。実験の間、第一の区画に入る漏洩水の量を測定した。
[0065] グラフ600は、原型システムにて得られた漏洩量の第一の曲線602を含む。第一の曲線602は、横軸606の時間(分)に対する縦軸604の米パイント/時の漏洩量の値に相応する。グラフ600は、横軸606の時間(分)に対する縦軸610の米パイント/時にて漏洩量を描いた第二の曲線608も含む。曲線608は、第一のプロット602に基づいて予想されるデータを示すDDG型駆逐艦に対する実物大寸法のシステムにて使用する設計とされたシステムの予想性能を表わす。第二の曲線608にて示したデータは、第一の曲線602にて示したデータの線形外挿法によるものである(原型の8分の1の寸法を補償するため、8のファクタによって寸法付けされた(scaled))。
[0066] プロット602と関係したデータは、ショアデュロメータ硬さAが約60の硬度を有するシール(例えば、シール120a、120b)を表わす。その他の硬度のシールの試験結果は良好であった。ショアデュロメータ硬さが約A20ないしショアデュロメータ硬さが約A60の範囲の硬度を有するシールも試験した。一部の実施の形態において、特定のシールの選んだ硬度の値は、例えば、シールが作用可能である時間のような、シールと関係した使用パラメータに依存する。試験する間、シール内に(例えば、シールの空所内)に配設されたゲル材料は、流体に曝された数秒以内に流体(この場合、水)の存在に応答した。第一の曲線602は、約10分後、第一の区画Iから第二の区画IIへの漏洩量は約1.5米パイント/時(約0.197ml/秒)に減少することを示す。更に、1時間後の漏洩量は、0.1米パイント/時(約0.0131ml/秒)以下である。
[0067] 第二の曲線608は、約10分後の漏洩量は約9米パイント/時(約1.183ml/秒)であり、また、約1時間後、約0.5米パイント/時(約0.065ml/秒)以下であると予想されることを示す。更に、一例としての圧力差が約7.5psid(平方インチ当たりポンドの差)(約5,273kg/m)及び15.0psid(約10,550kg/m)のとき、観察された漏洩量は、第一の曲線602又は第二の曲線608におけるよりも低いことが分かり、それは圧力差の上昇は、シールのシール性能を増大させるからである。一部の実施の形態において、8分の1の寸法の軸が約720及び1440RPM(実物大寸法の軸の場合の約90及び180RPMに相応する)にて旋回するとき、僅かに大きい漏洩量となった。
[0068] 図7は、本発明を具体化するシール700の断面斜視図である。シール700は、リップ部分702と、上側部分704とを有する。空所706は、リップ部分702及び上側部分704によって画成される。一部の実施の形態において、ゲル材料(図示せず)は空所706内に配設される。シール700は、リップ部分702からY軸線に沿って上側部分704に向けて伸びる2つのコネクタ部分708a、708b(全体として参照番号708)を有する。上側部分704は、コネクタ部分708a、708bと合わさる形態とされた相応する表面710a、710b(全体として参照番号710)を画成する。一部の実施の形態において、シール700は、エラストマー材料又はゴム材料(例えば、天然又は合成ゴム)にて出来ている。
[0069] 一部の実施の形態において、コネクタ部分708a、708bは、例えば、重力の影響により又はリップ部分702に加わるゲル材料の重量に基づいて、リップ部分702が上側部分704から(例えば、Y軸線に沿って)動くのを防止する。流体が存在するとき、空所708内のゲル材料は、膨張し且つ、リップ部分702を押し付けて上側部分704から離す。コネクタ部分708a、708bは、上側部分704の相応する表面710a、710bに対して反作用し、リップ部分702が動くのに抵抗する。ゲル材料は、この抵抗に打ち勝ち且つ、コネクタ部分708a、708bを相応する表面710a、710bから変位させるのに十分な膨張力を提供する。コネクタ部分708a、708bが変位した後、ゲル材料は、リップ部分702を上側部分704から離れるように動かすことができる。本発明の代替的な実施の形態において、コネクタ部分708及び相応する表面710を代替的な幾何学的形態、数及び形態とすることが考えられる。
[0070] 本発明は、特定の実施の形態に関して特に示し且つ説明したが、当該技術の当業者は、特許請求の範囲により規定された本発明の精神及び範囲から逸脱せずに、形態及び細部の点で色々な変更を為すことが可能であることを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本発明を具体化する、軸とハウジングとの間の流体の流れを減少させるシステムの一部分の断面図である。
【図2】本発明を具体化する、軸とハウジングとの間の流体の流れを減少させるシステムの分解斜視図である。
【図3】本発明の一例としての実施の形態に従った、ゲル材料を保持する設計とされた空所を含むリップシールの断面斜視図である。
【図4】本発明の一例としての実施の形態に従った、システムの断面図である。
【図5】図4のシステムにて使用される背中合わせリップシールの断面斜視図である。
【図6】本発明を具体化するシステムの漏洩量データを示すグラフ図である。
【図7】本発明の一例としての実施の形態に従ったシールの断面斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムにおいて、
ハウジングと、
ハウジングに対して配設されたシールであって、ハウジングと軸との間の空隙を通る流体の流れを減少させるように流体に曝されたときに膨張するゲル材料を有する前記シールとを備え、該シールはリップ部分を有し、また、ゲル材料の膨張によってリップ部分は押されて軸と接触する、システム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムにおいて、
ゲル材料は、流体が存在しないとき収縮し、ハウジングと軸との間に空隙を形成し又はその空隙を増大させることの少なくとも一方を行うようにされた、システム。
【請求項3】
請求項1に記載のシステムにおいて、
ゲル材料の膨張は、可逆的効果である、システム。
【請求項4】
請求項1に記載のシステムにおいて、
軸は隔壁を通って伸びる、システム。
【請求項5】
請求項1に記載のシステムにおいて、
ゲル材料は、ゲル粒子を硬い連続気泡構造(hard open cell foam)内又は柔軟な連続気泡構造内に埋め込むことにより形成される、システム。
【請求項6】
請求項5に記載のシステムにおいて、
硬い連続気泡構造又は柔軟な連続気泡構造は、シールの空所内に嵌まる形状とされる、システム。
【請求項7】
請求項1に記載のシステムにおいて、
シールは、エラストマー的材料、天然ゴム材料又は合成ゴム材料を備える、システム。
【請求項8】
請求項1に記載のシステムにおいて、
シールは、シールと軸との間の摩擦を減少させるため、低摩耗材料を備える、システム。
【請求項9】
請求項1に記載のシステムにおいて、
シールをハウジング、軸又はその双方に対して整合させ得るようにされた整合リングを備える、システム。
【請求項10】
請求項9に記載のシステムにおいて、
整合リングは、軸に対する接触面を有し、
また、整合リングと軸との間の摩擦を減少させるため、低摩耗材料が使用される、システム。
【請求項11】
請求項9に記載のシステムにおいて、
低摩耗材料は、テフロン(登録商標名)材料を備える、システム。
【請求項12】
請求項9に記載のシステムにおいて、
低摩耗材料は、接着、定置、装着、連結又はこれらの任意の組み合わせの少なくとも1つによってシールに対して固定される、システム。
【請求項13】
請求項9に記載のシステムにおいて、
整合リングは、低摩耗又は低摩擦材料を備える、システム。
【請求項14】
請求項9に記載のシステムにおいて、
シールをハウジング、軸又はその双方に対して整合させ得るようにされた第二の整合リングを備える、システム。
【請求項15】
請求項1に記載のシステムにおいて、
流体に曝されたとき、膨張し且つ、ハウジングと軸との間の空隙を通る流体の流れを減少させる第二のゲル材料を有する第二のシールを備える、システム。
【請求項16】
請求項15に記載のシステムにおいて、
シールは、ハウジングと軸との間の空隙を通って第一の方向に沿った流体の流れを減少させ、
また、第二のシールは、ハウジングと軸との間の第一の方向に対し実質的に反対である第二の方向に沿った第二の流れを減少させる、システム。
【請求項17】
請求項1に記載のシステムにおいて、
シールは予備シール(backup seal)である、システム。
【請求項18】
請求項1に記載のシステムにおいて、
シールは、軸がハウジングに対して動く間、ハウジングとシールとの間の流体の流れを減少させる、システム。
【請求項19】
請求項18に記載のシステムにおいて、
前記動きは、軸のハウジングに対する平行移動、回転又はこれらの任意の組み合わせを含む、システム。
【請求項20】
請求項1に記載のシステムにおいて、
シールが流体に曝されたとき、シールを横切って圧力差が維持される、システム。
【請求項21】
請求項1に記載のシステムにおいて、
シールは、シールが流体に曝されたとき、軸とハウジングとの間の空隙を減少させる、システム。
【請求項22】
軸とハウジングとの間の流体の流れを減少させる方法において、
ハウジングを軸に対して開口部内に取り付けるステップと、
シールをハウジングに対して配置するステップとを備え、
該シールは、流体に曝されたときに膨張し且つ、ハウジングと軸との間の空隙を通る流体の流れを減少させるゲル材料を備える、軸とハウジングとの間の流体の流れを減少させる、方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法において、
シールをハウジング、軸又はその双方に対して整合させ得るようにされた少なくとも1つの整合リングを取り付けるステップを備える、方法。
【請求項24】
請求項22に記載の方法において、
低摩耗材料をシールに対して固定するステップを備え、
前記固定するステップは、接着、定置、装着、連結又はこれら任意の組み合わせの少なくとも1つを備える、方法。
【請求項25】
請求項22に記載のシステムにおいて、
流体に曝されたときに膨張し且つ、ハウジングと軸との間の空隙を通る第二の流体の流れを減少させる第二のゲル材料を備える第二のシールを取り付けるステップを備える、システム。
【請求項26】
請求項25に記載のシステムにおいて、
シールをハウジング、軸又はその双方に対して整合させ得るようにされた第二の整合リングを取り付けるステップを備える、システム。
【請求項27】
システムにおいて、
軸に対して配設されたハウジングと、
流体に曝されることに応答してハウジングと軸との間の空隙を減少させる手段とを備え、
前記手段は流体に応答可能なゲル材料を備える、システム。
【請求項28】
システムにおいて、
ハウジングと、
ハウジングに対して配設されたシールであって、流体に曝されたときに膨張してハウジングと構造体との間の空隙を通る流体の流れを減少させるゲル材料を有する前記シールとを備える、システム。
【請求項29】
請求項28に記載のシステムにおいて、
シールの一部分は、流体が存在しないとき、構造体と接触しない、システム。
【請求項30】
請求項28に記載のシステムにおいて、
シールの一部分は、シールが流体に曝されたとき、構造体と接触する、システム。
【請求項31】
請求項28に記載のシステムにおいて、
シールはリップ部分を含み、
ゲル材料の膨張によってリップ部分は押されて構造体と接触する、システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−520938(P2008−520938A)
【公表日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−543506(P2007−543506)
【出願日】平成17年11月22日(2005.11.22)
【国際出願番号】PCT/US2005/042683
【国際公開番号】WO2006/086039
【国際公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(507165361)ミデ・テクノロジー・コーポレーション (2)
【Fターム(参考)】