説明

流体分散のための方法および装置

【課題】ミクロ流体装置システム中の流体流の精密な制御を提供すること。
【解決手段】流体中の同等または不同等なサイズの不連続な部分をフォーカシングおよび/または作製するミクロ流体の方法および装置を提供する。装置は簡単な技法を用いて、容易に入手可能な安価な物質から容易に製作することができる。本発明の方法は、上流部分および出口に接続する下流部分を有するミクロ流体の相互連結領域を提供すること、該ミクロ流体の相互連結領域に目的の流体および分散流体を送達すること、および該目的の流体の不連続な部分であって、基本的に均一なサイズを有する部分を創出することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は全体としてフローフォーカシング型の技術に関し、またミクロ流体素子にも関する。より詳しくは、本発明は分散媒中の分散相、ならびに多相流体システム中の分散相のサイズおよびサイズ分布を制御するように構成されたミクロ流体システムに関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
流体送達、製品製造、分析などを目的とする所望の構成の流体流、不連続な流体流、粒子、分散などを製造する流体の取扱いは比較的よく研究された技術である。たとえば、直径100ミクロン未満の高度に単分散されている気泡はキャピラリーフローフォーカシングと呼ばれる技法を用いて製造されている。この技法では毛管を小さなオリフィスの上に配置して、毛管から液体浴中に気体を吹き込む。このオリフィスを通る外部の液体の縮流によって気体は細いジェットにフォーカシングされ、次いで、このジェットは毛管不安定性によって等しい大きさの泡に分解する。関連する技法では類似の構成を用いて空気中に小液滴を製造している。
【0003】
ミクロ流体素子工学は非常に小さな規模での流体流の制御が関与する技術分野である。一般に、ミクロ流体素子は流体が流れる非常に小さなチャンネルを含む。このチャンネルは、分岐またはその他の配置であり得、流体同士を合流させ、流体をさまざまな場所に送達し、流体間で層流を形成させ、流体を希釈することなどができる。「ラブオンアチップ(lab on a chip)」ミクロ流体素子技術に向けて非常な努力が払われており、研究者は「チップ」すなわちミクロ流体素子上で非常に小さなスケールで既知の化学物質または生体反応を実行しようと努めている。そればかりではなく、ミクロ流体素子工学を用いてマクロスケールで必ずしも知られていない新しい技法が開発されつつある。ミクロ流体スケールで研究中または開発中の技法の例には、ハイスループットのスクリーニング、薬物送達、化学反応速度の測定、コンビナトリアルケミストリー(化学反応、化学親和力、およびミクロ構造の作製の迅速な試験が望まれている)、ならびに物理学、化学および工学の諸分野の基本的な問題の研究が含まれる。
【0004】
分散の分野は十分に研究されている。分散(またはエマルジョン)は二つの物質、一般的には流体の混合物であり、少なくとも二つの非適合性の(混ざらない)物質の一方が他方の中に分散した混合物として定義される。すなわち、一方の物質は別の相(分散媒すなわち固定相)によって囲まれた小さな孤立した領域すなわち小滴に分割され、第一の相は別の相中に保持される。分散の例は食品および化粧品業界を含む多数の産業界で見られる。たとえば、ローションは水性分散媒中に分散したオイルのことが多い。分散中では、分散相の小滴サイズの制御が製品の全体的な特性、たとえばローションの「触感」を決めることがある。
【0005】
一般に分散の製造は、可動部分(たとえばブレンダまたは物質を分割するために同様に設計された装置)を含む装置中で実行されるが、失敗することが多く、非常に小さな分散相の小滴の制御には多くの場合適さない。詳しくは、一般に従来の工業的な方法は、精密な小さい分散制御には一般に適さない大きさの規模で運転するために造られた製造装置を使用する。膜乳化はエマルジョンを製造するためにミクロンサイズの細孔を用いる一つの小規模の技法である。しかし、ある場合には膜の細孔径によって分散相の多分散度が限定されることがある。
【0006】
多相系の制御に関連する多数の技法が存在するが、分散相のサイズ、サイズ範囲(多分散度)およびその他の因子の制御には改良の必要がある。
【0007】
1998年1月12日のフィジカル・レビューズ・レターズ(Phys.Rev.Lett.)第80巻2号285〜288頁の「安定な液体のミクロ細線流れ、ミクロンサイズ単分散スプレーおよび気流の発生」と題する論文(ガナン−カルボ(Ganan−Calvo))には、層状の加速する気流による細いスプレーを発生させる微視的な液体細線の製造法が記載されている。
【0008】
2000年9月19日発行の特許文献1には、流体媒質中の微視的な粒子の分析、たとえば生物学的流体分析を目的として第一および第二の試料流体流を空間的に閉じ込める流体フォーカシングチャンバを有する微細加工装置が記載されている。
【0009】
2000年9月12日発行の特許文献2には、毛管ミクロジェットの作製およびミクロジェットの分割による単分散エーロゾルの製造が記載されている。
【0010】
2001年2月13日発行の特許文献3には、二つの混ざらない流体の相互作用によって製造された約1ミクロンから約5ミクロンのサイズ範囲の噴霧粒子が記載されている。
【0011】
2001年6月19日発行の特許文献4には、食品中に使用する粒子のミクロジェットを用いた製造、およびミクロジェットが分離するときに生成する単分散エーロゾルが記載されている。
【0012】
2001年4月30日のフィジカル・レビューズ・レターズ第86巻18号の「小胞発生ミクロ流体素子中の動力学的パターン形成」と題する論文(ソーセン(Thorsen)ら)には、具体的には二つのミクロ流体チャンネルの間の「T」字接合部で流れるオイルの中に水を導入することによる、ミクロ流体クロスフローによる連続オイル相中の不連続水相の作製が記載されている。
【0013】
ミクロ流体素子システムはさまざまな分野と関連して、一般にミニチュア化実験室分析(たとえば臨床分析)の分野に関連して記載されている。その他の用途も同様に記載されている。たとえば、2001年11月29日に公開されたアンダーソン(Anderson)らによる特許文献5には、生体物質および細胞などの物質のパターンを表面に提供するために用いることができる多層ミクロ流体素子システムが記載されている。他の出版物にはバルブ、スイッチおよびその他の構成要素を含むミクロ流体素子システムが記載されている。
不連続な流体、エーロゾルなどの製造は知られているが、ミクロ流体装置システム中の不連続な流体の製造、すなわち液−液および気−液分散およびエマルジョンの製造についてはほとんど知られていない。これはミクロ流体装置システム中の流体流の精密な制御が極めて困難であるという事実によると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第6,120,666号明細書
【特許文献2】米国特許第6,116,516号明細書
【特許文献3】米国特許第6,187,214号明細書
【特許文献4】米国特許第6,248,378号明細書
【特許文献5】国際公開第01/89789号パンフレット
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
(発明の要約)
本発明は流体の取扱いのための一連の装置、システムおよび技法を含む。一つの局面では、本発明は一連の方法を提供する。本発明の一つの方法は上流部分および出口に接続した下流部分を有するミクロ流体相互連結領域を提供すること、ならびに出口の上流で相互連結領域内に目的の流体の不連続な部分を創出することを含み、不連続な部分の少なくとも一部は20ミクロン未満の最大寸法を有する。
【0016】
別の実施形態は、上流部分および出口に接続した下流部分を有する相互連結ミクロ流体領域を提供すること、相互連結領域の内部の一部分の中に目的の流体を導入すること、および相互連結領域内に目的の流体の不連続な部分を創出することを含む。
【0017】
別の実施形態では、一つの方法は目的の流体流を軸の方向で目的の流体流を完全には囲まない分散流体と合流させること、および分散流体の作用によって少なくとも部分的に目的の流体の不連続な部分を創出することを含む。
【0018】
本発明の別の方法は、目的の流体を第二の流体の二つの別々な流れに曝露することによって目的の流体流をフォーカシングさせること、および二つの別々の流れが合流して目的の流体流を円周方向で完全に囲むことを可能にすることを含む。
【0019】
別の実施形態では、本発明は、目的の流体または分散流体の一方を寸法制限部分に送達するチャンネルに比べて寸法的に制限された平均断面寸法を有する寸法制限部分を通して目的の流体および分散流体を通過させること、ならびに寸法制限部分の平均断面寸法より小さくはない平均断面寸法または平均直径をそれぞれ有する目的の流体流または目的の流体流の不連続な部分を創出することを含む。
【0020】
別の実施形態では、本発明はフローフォーカシング素子の目的の流体チャンネルおよびフォーカシング流体チャンネルの少なくとも一部をともに単一の物質から作製することを含む。
【0021】
別の実施形態では、本発明はフローフォーカシング装置の目的の流体チャンネルおよびフォーカシング流体チャンネルの少なくとも一部をともに単一の成形工程で作製することを含む。
【0022】
別の局面では、本発明は一連のシステムを含む。本発明の一つのシステムはミクロ流体相互連結領域、および少なくとも一部がミクロ流体相互連結領域によって囲まれた目的の流体ミクロ流体チャンネルを含む。
【0023】
別の実施形態では、本発明のシステムは上流部分および出口に接続した下流部分を有するミクロ流体相互連結領域、ならびに出口の上流にバルブのない寸法制限部分を含む。
【0024】
本発明の装置はフォーカシング流体を保持するための相互連結領域、およびフォーカシング流体によってフォーカシングされる流体を保持する目的の流体チャンネルであって少なくとも一部が相互連結領域によって囲まれている目的の流体チャンネルを含み、少なくとも相互連結領域の外壁の形状を定める部分および目的の流体チャンネルの外壁の形状を定める部分は単一の一体化ユニットの部分である。
【0025】
別の実施形態によれば、フローフォーカシング装置は、装置によってフォーカシングされる流体を保持するための流体チャンネル、およびフォーカシング流体を目的の流体に送達して同時に目的の流体をフォーカシングする少なくとも二つの別個のフォーカシング流体チャンネルを含む。
【0026】
別の局面では、本発明は分散した流体のさらに小さな部分への分割を含む装置および方法を提供する。本発明のほとんどの特定の実施形態では、一つの流体の別の非適合性の流体中の離散的な孤立した部分の分散が、閉じ込められたチャンネル中で障害物に対して圧迫されるか、またはチャンネル接合部で少なくとも二つの異なるチャンネル中に分けられるかのどちらかによってさらに分割される。
【0027】
一つの実施形態では、一つの方法は閉じ込められたチャンネル中で流体の不連続な部分を障害物に対して圧迫し、不連続な部分の少なくとも一部を障害物によってさらに分散した部分に分割することを含む。
【0028】
別の実施形態では、本発明の一つの方法は流体システムのチャンネル接合部で不連続な部分を少なくとも二つの別個のチャンネルに分離することによって、少なくとも一つの不連続な流体の部分をさらに分散した部分に分離することを含む。別の実施形態では、本発明の一つの方法はチャンネルの交差部内に分散相および分散媒を流すこと、ならびにチャンネルの交差部で分散相を少なくとも二つのそれぞれ平均サイズを有するさらに分散した相にさらに分散させることを含む方法であって、チャンネル交差部で分散相に加わる少なくとも二つの異なる背圧によって少なくとも二つのさらに分散した相の平均サイズが定められる方法を含む。
【0029】
別の局面では、本発明は一連の装置を提供する。本発明の一つの装置は、第一の流体および第一の流体と非適合性の第二の流体の送達源に接続可能な入口を有する閉じ込められたチャンネル、第二の流体中の第一の流体の分散相を受け取るための液溜めに接続可能な出口、ならびに入口と出口との間の閉じ込められたチャンネル内の障害物を含む。
【0030】
ある場合には、本出願の主題は相互に関連する製品、特定の課題に対する新たな解決法および/または単一のシステムもしくは品物の複数の異なる使用法を含むことがある。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
上流部分および出口に接続する下流部分を有するミクロ流体の相互連結領域を提供すること、
該出口の上流の相互連結領域に目的の流体の不連続領域を創出すること、
を含む方法であって、該不連続領域の少なくとも一部は、20ミクロン未満の最大断面寸法を有する方法。
(項目2)
前記目的の流体の前記不連続な部分を分散流体によって創出させることを含む、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記分散流体の二つの別々な流れに前記目的の流体を曝露すること、および該二つの別々な流れを合流させて該目的の流体流の周囲を完全に囲むようにすることを含む、項目2に記載の方法。
(項目4)
前記相互連結領域が閉じた断面を有する、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記相互連結領域が1ミリメートル未満の最大断面寸法を有する、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記相互連結領域が500ミクロン未満の最大断面寸法を有する、項目1に記載の方法。
(項目7)
前記相互連結領域が200ミクロン未満の最大断面寸法を有する、項目1に記載の方法。
(項目8)
前記相互連結領域が100ミクロン未満の最大断面寸法を有する、項目1に記載の方法。
(項目9)
前記相互連結領域が50ミクロン未満の最大断面寸法を有する、項目1に記載の方法。
(項目10)
前記相互連結領域が25ミクロン未満の最大断面寸法を有する、項目1に記載の方法。
(項目11)
前記目的の流体および前記分散流体がともに前記相互連結領域の外部境界内にある、項目1に記載の方法。
(項目12)
前記相互連結領域は、前記不連続な部分を作製することを支援する寸法制限部分を含む、項目2に記載の方法。
(項目13)
前記分散流体および前記目的の流体に寸法制限部分を通過させ、該寸法制限部分の形状を定める壁に該目的の流体が接触しないようにすることを含む、項目12に記載の方法。
(項目14)
前記目的の流体を前記目的の流体チャンネルから相互連結領域の前記分散流体中に導入することを含む、項目2に記載の方法。
(項目15)
前記目的の流体が液体を含む、項目2に記載の方法。
(項目16)
前記目的の流体が気体を含む、項目2に記載の方法。
(項目17)
前記目的の流体チャンネルが前記相互連結領域によって少なくとも部分的に囲まれる、項目13に記載の方法。
(項目18)
前記相互連結領域が前記目的の流体チャンネルを部分的に囲み、該目的の流体チャンネルの出口で相互に連結する少なくとも二つの部分を有する、上流部分を備える、項目14に記載の方法。
(項目19)
前記相互連結領域の前記上流部分と前記下流部分との間で圧力差を創出すること、該上流部分と前記出口との間で前記分散流体を導入すること、および該差圧によって少なくとも部分的に前記目的の流体の前記不連続な部分を作製することを含む、項目2に記載の方法。
(項目20)
前記相互連結領域の前記上流部分と前記出口との間の寸法制限部分によって少なくとも部分的に前記差圧を創出することを含む、項目19に記載の方法。
(項目21)
前記目的の流体および前記分散流体を前記寸法制限部分を通して流すことを含む、項目20に記載の方法。
(項目22)
前記分散流体および目的の流体がそれぞれ流速を有し、該分散流体に対する該目的の流体の流速の割合が1/5未満である、項目21に記載の方法。
(項目23)
前記割合が1/25未満である、項目22に記載の方法。
(項目24)
前記割合が1/50未満である、項目22に記載の方法。
(項目25)
前記割合が1/100未満である、項目22に記載の方法。
(項目26)
前記割合が1/250未満である、項目22に記載の方法。
(項目27)
前記割合が1/400未満である、項目22に記載の方法。
(項目28)
前記目的の流体チャンネルが前記相互連結領域内で前記寸法制限部分の上流で終わる出口を有する、項目22に記載の方法。
(項目29)
前記目的の流体チャンネルが前記寸法制限部分の中を通過する軸を有する、項目28に記載の方法。
(項目30)
前記相互連結領域の前記下流部分が中心軸を有し、該相互連結領域の該下流部分の該中心軸と整列する中心軸を有する目的の流体チャンネルから該相互連結領域中に前記目的の流体が導入される、項目2に記載の方法。
(項目31)
前記分散流体が6×10−5ミリリットル/秒と1×10−2ミリリットル/秒との間の流速を有する、項目2に記載の方法。
(項目32)
前記分散流体が1×10−4ミリリットル/秒と1×10−3ミリリットル/秒との間の流速を有する、項目2に記載の方法。
(項目33)
分散流体に対する目的の流体の流速の割合が1/5未満である、項目32に記載の方法。
(項目34)
分散流体に対する目的の流体の流速の割合が1/100未満である、項目32に記載の方法。
(項目35)
分散流体に対する目的の流体の流速の割合が1/400未満である、項目32に記載の方法。
(項目36)
前記分散流体中に単分散の不連続な目的の流体の部分を創出することを含む、項目2に記載の方法。
(項目37)
前記分散流体中に単分散の目的の流体小滴を創出することを含む、項目2に記載の方法。
(項目38)
前記分散流体中に多分散の不連続な目的の流体の部分を創出することを含む、項目2に記載の方法。
(項目39)
前記不連続な部分がそれぞれ最大寸法を有し、最も小さな最大寸法を有する部分に対する最も大きな最大寸法を有する部分の大きさの比が少なくとも10:1である、項目38に記載の方法。
(項目40)
前記比が少なくとも25:1である、項目39に記載の方法。
(項目41)
前記比が少なくとも50:1である、項目39に記載の方法。
(項目42)
前記比が少なくとも100:1である、項目39に記載の方法。
(項目43)
前記不連続な部分の少なくとも一部が50ミクロン未満の最大断面寸法を有する、項目38に記載の方法。
(項目44)
前記不連続な部分の少なくとも一部が25ミクロン未満の最大断面寸法を有する、項目38に記載の方法。
(項目45)
前記不連続な部分の少なくとも一部が10ミクロン未満の最大断面寸法を有する、項目38に記載の方法。
(項目46)
前記不連続な部分の少なくとも一部が5ミクロン未満の最大断面寸法を有する、項目38に記載の方法。
(項目47)
前記不連続な部分の少なくとも一部が1ミクロン未満の最大断面寸法を有する、項目38に記載の方法。
(項目48)
前記目的の流体と前記分散流体との間に中間流体を導入すること、および前記目的の流体の不連続な部分であって、中間流体のシェルによってそれぞれ囲まれた部分を創出することをさらに含む、項目2に記載の方法。
(項目49)
前記シェルを硬化することをさらに含む、項目48に記載の方法。
(項目50)
前記目的の流体チャンネルと前記相互連結領域との間の少なくとも一つの中間流体チャンネルを介して、前記目的の流体と前記分散流体との間に前記中間流体を導入することを含む、項目48に記載の方法。
(項目51)
前記少なくとも一つの中間流体チャンネルが前記目的の流体チャンネルの前記出口の近くに出口を有する、項目48に記載の方法。
(項目52)
前記目的の流体および前記分散流体は、前記不連続な部分の作製時間内では非混和性である、項目2に記載の方法。
(項目53)
前記目的の流体、中間流体および分散流体は、部分の作製時間内ではそれぞれ互いに非混和性である、項目48に記載の方法。
(項目54)
上流部分および出口に接続した下流部分を有する相互連結ミクロ流体領域を提供すること、
該相互連結領域の内部の部分に気体を導入すること、および
該相互連結領域内で該気体の不連続な部分を創出すること
を含む方法。
(項目55)
前記目的の流体がガスを含む、項目60に記載の方法。
(項目56)
前記相互連結領域内で前記気体の不連続な部分を創出することによって泡が形成される、項目55の方法。
(項目57)
目的の流体流を、該目的の流体流を軸方向で完全には囲まない分散流体と合流させること、および該分散流体の作用によって少なくとも部分的に該目的の流体の不連続な部分を創出すること
を含む方法。
(項目58)
前記目的の流体を前記分散流体の二つの別々な流れに曝露すること、および該二つの別々な流れを合流させて前記目的の流体流の周囲を完全に囲むようにすることを含む、項目57に記載の方法。
(項目59)
流体がともにミクロ流体システム中に閉じ込められている、項目57に記載の方法。
(項目60)
流体がともに液体を含む、項目70に記載の方法。
(項目61)
1つの流体が気体を含む、項目70に記載の方法。
(項目62)
前記目的の流体を第二の流体の少なくとも二つの別々な流れに曝露することによって該目的の流体流をフォーカシングすること、および該二つの別々な流れが合流して該目的の流体流の周囲を完全に囲むことを可能にすること
を含む方法。
(項目63)
目的の流体の流れを通過させること、
流体を寸法的に制限された部分を通して分散させること、ならびに
該寸法制限部分の平均断面寸法の30%以上の平均断面寸法または平均直径をそれぞれ有する目的の流体流または目的の流体流の不連続な部分を創出すること
を含む方法であって、
該寸法的に制限された部分は、目的の流体または分散流体の一方を寸法制限部分に送達するチャンネルに比べて寸法的に制限された平均断面寸法を有する平均断面寸法を有する、
方法。
(項目64)
前記寸法制限部分の平均断面寸法の40%以上の平均断面寸法または平均直径をそれぞれ有する目的の流体流または目的の流体流の不連続な部分を創出することを含む、項目63に記載の方法。
(項目65)
前記寸法制限部分の平均断面寸法の50%以上の平均断面寸法または平均直径をそれぞれ有する目的の流体流または目的の流体流の不連続な部分を創出することを含む、項目63に記載の方法。
(項目66)
前記寸法制限部分の平均断面寸法の60%以上の平均断面寸法または平均直径をそれぞれ有する目的の流体流または目的の流体流の不連続な部分を創出することを含む、項目63に記載の方法。
(項目67)
前記寸法制限部分の平均断面寸法の70%以上の平均断面寸法または平均直径をそれぞれ有する目的の流体流または目的の流体流の不連続な部分を創出することを含む、項目63に記載の方法。
(項目68)
前記寸法制限部分の平均断面寸法の80%以上の平均断面寸法または平均直径をそれぞれ有する目的の流体流または目的の流体流の不連続な部分を創出することを含む、項目63に記載の方法。
(項目69)
前記寸法制限部分の平均断面寸法の90%以上の平均断面寸法または平均直径をそれぞれ有する目的の流体流または目的の流体流の不連続な部分を創出することを含む、項目63に記載の方法。
(項目70)
前記寸法制限部分の平均断面寸法以上の平均断面寸法または平均直径をそれぞれ有する目的の流体流または目的の流体流の不連続な部分を創出することを含む、項目63に記載の方法。
(項目71)
一体的に形成された相互連結ミクロ流体領域、および
前記相互連結ミクロ流体領域によって少なくとも部分的に囲まれた目的の流体ミクロ流体チャンネル
を含むシステム。
(項目72)
少なくとも前記相互連結領域を定める部分および前記目的の流体チャンネルを定める部分が単一の一体化されたユニットの部分である、項目71に記載のシステム。
(項目73)
前記相互連結領域が上流部分および出口に接続した下流部分を有し、前記目的の流体ミクロ流体チャンネルが前記相互連結領域の該上流部分と該出口との間に出口を有する、項目71に記載のシステム。
(項目74)
前記相互連結領域が上流部分および出口に接続した下流部分、ならびに該上流部分と該出口との間に寸法制限部分を含む、項目71に記載のシステム。
(項目75)
前記目的の流体ミクロ流体チャンネルが前記寸法制限部分の上流に出口を有する、項目74に記載のシステム。
(項目76)
前記目的の流体チャンネルおよび前記相互連結領域の前記下流部分がそれぞれ中心軸を有し、これらの軸が整列する、項目75に記載のシステム。
(項目77)
前記目的の流体チャンネルおよび前記相互連結領域の前記下流部分がそれぞれ中心軸を有し、これらの軸が整列する、項目71に記載のシステム。
(項目78)
前記相互連結領域および前記目的の流体チャンネルに流体連結した少なくとも一つの中間流体チャンネルをさらに含む、項目71に記載のシステム。
(項目79)
前記中間流体領域が前記相互連結領域の前記上流部分と出口との間に出口を有する、項目78に記載のシステム。
(項目80)
前記中間流体チャンネルが前記相互連結領域の寸法制限部分の上流で出口を有する、項目78に記載のシステム。
(項目81)
前記目的の流体チャンネルが少なくとも一つの中間流体チャンネルによって前記相互連結領域から横方向に分離されている、項目78に記載のシステム。
(項目82)
前記目的の流体チャンネルおよび中間流体チャンネルが寸法制限部分の上流に出口をそれぞれ有する、項目80に記載のシステム。
(項目83)
上流部分と、出口に接続した下流部分とを有する相互連結ミクロ流体領域、および
該出口の上流の、バルブのない寸法制限部分
を含むシステム。
(項目84)
フォーカシング流体を保持するための相互連結領域、および該相互連結領域によって少なくとも部分的に囲まれた該フォーカシング流体によってフォーカシングされるための流体を保持する目的の流体チャンネルを含むフローフォーカシング装置であって、少なくとも該相互連結領域の外壁を定める部分および該目的の流体チャンネルの外壁の形状を定める部分が単一の一体ユニットの部分である装置。
(項目85)
装置によってフォーカシングされる流体を保持するための流体チャンネル、および
目的の流体にフォーカシング流体を同時に送達して該目的の流体をフォーカシングするための少なくとも二つの別々なフォーカシング流体チャンネル
を含むフローフォーカシング装置。
(項目86)
フローフォーカシング装置の目的の流体チャンネルおよびフォーカシング流体チャンネルを少なくとも部分的に単一の物質から一体的に作製すること
を含む方法。
(項目87)
フローフォーカシング装置の目的の流体チャンネルおよびフォーカシング流体チャンネルを少なくとも部分的に単一の成形工程で作製すること
を含む方法。
(項目88)
限定的チャンネル内で流体の不連続な部分を障害物に対して押し付けて、該障害物によって該不連続な部分の少なくとも一部をさらに分散した部分に分割させること
を含む方法。
(項目89)
前記さらに分散した部分を製品として回収することをさらに含む、項目88に記載の方法。
(項目90)
前記製品が消費者向け製品である、項目89に記載の方法。
(項目91)
前記限定的チャンネルがミクロ流体チャンネルである、項目88に記載の方法。
(項目92)
前記限定的チャンネルが1ミリメートル未満の最大断面寸法を有する、項目91に記載の方法。
(項目93)
前記限定的チャンネルが500ミクロン未満の最大断面寸法を有する、項目91に記載の方法。
(項目94)
前記限定的チャンネルが200ミクロン未満の最大断面寸法を有する、項目91に記載の方法。
(項目95)
前記限定的チャンネルが100ミクロン未満の最大断面寸法を有する、項目91に記載の方法。
(項目96)
前記限定的チャンネルが50ミクロン未満の最大断面寸法を有する、項目91に記載の方法。
(項目97)
前記限定的チャンネルが25ミクロン未満の最大断面寸法を有する、項目91に記載の方法。
(項目98)
前記障害物が前記限定的チャンネルの中心に配置された、項目88に記載の方法。
(項目99)
前記障害物が前記限定的チャンネルの中心から外れている、項目88に記載の方法。
(項目100)
流体の不連続な部分を前記複数の障害物を含むチャンネル中に流し、前記不連続な部分の少なくとも一部を前記障害物でさらに分散させることを含む、項目88に記載の方法。
(項目101)
第一の障害物で少なくとも一つの不連続な部分を分割させて少なくとも二つのさらに分散した部分を作製すること、および該さらに分散した部分の少なくとも一つを第二の障害物でさらに分割させることを含む、項目100に記載の方法。
(項目102)
前記不連続相と前記障害物との間の相互作用の結果として、500ミクロン未満の平均最大断面寸法を有するさらに分散した部分を回収することを含む、項目88に記載の方法。
(項目103)
前記不連続相と前記障害物との間の相互作用の結果として、200ミクロン未満の平均最大断面寸法を有するさらに分散した部分を回収することを含む、項目88に記載の方法。
(項目104)
前記不連続相と前記障害物との間の相互作用の結果として、100ミクロン未満の平均最大断面寸法を有するさらに分散した部分を回収することを含む、項目88に記載の方法。
(項目105)
前記不連続相と前記障害物との間の相互作用の結果として、50ミクロン未満の平均最大断面寸法を有するさらに分散した部分を回収することを含む、項目88に記載の方法。
(項目106)
前記不連続相と前記障害物との間の相互作用の結果として、20ミクロン未満の平均最大断面寸法を有するさらに分散した部分を回収することを含む、項目88に記載の方法。
(項目107)
前記不連続相と前記障害物との間の相互作用の結果として、10ミクロン未満の平均最大断面寸法を有するさらに分散した部分を回収することを含む、項目88に記載の方法。
(項目108)
チャンネルの交差部内に分散相および分散媒を流すこと、
該チャンネルの交差部で、該分散相をそれぞれ平均サイズを有する少なくとも二つのさらに分散した相にさらに分散することを含む方法であって、該少なくとも二つのさらに分散した相の該平均サイズが該チャンネルの交差部で該分散相に加わる少なくとも二つの異なる背圧によって定められる方法。
(項目109)
前記チャンネルの交差部がT字接合部である、項目108に記載の方法。
(項目110)
流体システムのチャンネルの接合部で不連続な部分を、別々なチャンネル内の少なくとも二つのさらに分散した部分に分離させることによって、流体の少なくとも一つの該不連続な部分を該少なくとも二つのさらに分散した部分に分割することを含む方法であって、該少なくとも二つのさらに分散した部分の体積が異なる方法。
(項目111)
少なくとも二つのさらに分散した部分がより大きな部分およびより小さな部分を含み、該より大きな部分が該より小さな部分より体積で少なくとも10%大きい、項目110に記載の方法。
(項目112)
前記より大きな部分が前記より小さな部分より体積で少なくとも20%大きい、項目111に記載の方法。
(項目113)
前記より大きな部分が前記より小さな部分より体積で少なくとも30%大きい、項目111に記載の方法。
(項目114)
前記より大きな部分が前記より小さな部分より体積で少なくとも50%大きい、項目111に記載の方法。
(項目115)
前記より大きな部分が前記より小さな部分より体積で少なくとも70%大きい、項目111に記載の方法。
(項目116)
第一の流体および該第一の流体と非適合性の第二の流体の送達源に接続可能な入口、該第二の流体中の該第一の流体の分散相を受け取るための液溜めに接続可能な出口を有する限定的チャンネル、および
該入口と該出口との間の該限定的チャンネル内の障害物
を含む装置。
本発明の非限定的な実施形態の以下の詳細な説明から、添付の図面も考慮すると、本発明のその他の利点、特徴、および使用法が明らかになろう。添付の図面は概略を示すものであり、一定の比率で描くことを意図したものではない。図では、さまざまな図に例示される同じ部品またはほとんど同じ部品は一般に単一の番号で表される。分かりやすくするため、本発明を当業者が理解することを可能にするために例示が必要でない場合には、すべての図ですべての部品に番号をつけたわけではないし、本発明の各実施形態のすべての部品を示したわけでもない。本明細書および参考として援用される文献が矛盾する開示を含む場合には、本明細書が優先する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、先行技術のフローフォーカシングの構成の概略図である。
【図2】図2は、図1の線2−2での断面図である。
【図3】図3は、本発明のミクロ流体装置の図式的な実例である。
【図4】図4は、図3の線4−4での概略断面図である。
【図5】図5は、分散した小滴の本発明による障害物によるさらなる分散の原理を例示する。
【図6】図6は、障害物またはその欠如による分散を含む五つの異なる手法を例示する。
【図7】図7は、障害物によるさらなる分散を有するT字接合部での分散の作製を例示する。
【図8】図8は、T字接合部の各分枝の背圧差による差圧T字接合部分散作製を例示する。
【図9】図9は、図3に図式的に例示する本発明のミクロ流体構成の拡大写真のフォトコピーである。
【図10】図10(画像a〜e)は、使用中の図5の構成の拡大写真のフォトコピーである。
【図11】図11(画像a〜e)は、別の実施形態によって使用中の図5の構成の拡大写真のフォトコピーである。
【図12】図12は、さまざまな流体の流速および流量比で使用中の図5の構成の拡大写真のフォトコピーである。
【図13】図13(区分a〜e)は、液体中の気体の分散を示す顕微鏡写真のフォトコピーである。
【図14】図14(区分a〜d)は、ミクロ流体システム中の分散した種の障害物によるさらなる分散を示す顕微鏡写真のフォトコピーである。
【図15】図15(区分a〜c)は、分散した種のT字接合部での背圧差によって支配される差圧分散によるさらなる分散の顕微鏡写真のフォトコピーである。
【図16】図16(区分a〜b)は、分散した種の直列T字接合部(a)による高度に分散した種(b)へのさらなる分散の顕微鏡写真のフォトコピーである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
(発明の詳細な説明)
以下の文書は参考として本明細書中に全体として援用される。1996年4月30日発行のクマール(Kumar)らへの米国特許第5,512,131号明細書、1996年6月26日公開のホワイトサイズ(Whitesides)らによる国際公開WO96/29629号明細書、2002年3月12日発行のキム(Kim)らへの米国特許第6,355,198号明細書、および2001年11月29日公開のアンダーソン(Anderson)らの国際公開WO01/89787号明細書。
【0033】
本発明は流体の相互作用および流体間の相互作用を起こさせるミクロ流体技法、特に流体の不連続な部分の作製、たとえば分散およびエマルジョンの製造法を提供する。本発明はいくつかの点で分散流体の作製のための既知の大部分の技法と異なる。
【0034】
本発明には、多数の技術分野での分散作製および/または制御の改良の必要性に対する適用、ならびに改良された分散の用途に対する適用が含まれている。本発明による分散作製法改良はさまざまな用途でたとえば少ない液量(ナノリットル、ピコリットル、およびフェムトリットル以下の量でさえも)の正確な送達に応用され得る。たとえば、少ない液量を系統的に送達するための一つの可能な方法は、特定の化学物質の簡便な輸送手段として機能し得るか、またはそれ自体小さな化学反応器であり得る制御されたサイズの滴を作製することである。1ピコリットルの体積を含む小滴は10ミクロン未満の半径を有するので、非常に小さな小滴を制御しつつ作製することが非常に重要となる。本発明によれば、たとえば種々の化学反応剤の化学量論を正確に制御するために、二つ以上のサイズの指定された体積が提供され得る。すなわち、このことはさまざまな場所へ指定量の反応剤を送達することが必要なラブオンアチップ素子の場合、流体反応剤の滴サイズを制御し、続いて素子中のその送達経路を制御することによって達成され得る。これは本発明によって達成され得る。分散中の滴サイズおよび滴サイズ範囲の制御はある程度は存在するが、本発明は小さな流体の滴サイズのさらに優れた制御を実現する技法および/または制御を実現する改良技法を提供する。本発明は容易にまた再現性よく流体の滴サイズおよびサイズ範囲を制御し、一つのサイズまたはサイズ範囲の流体の滴を一つの場所へ振り向け、別のサイズまたはサイズ範囲の滴を別の場所へ振り向ける能力を提供する。
【0035】
詳しくは、本発明は多相物質の取扱いに関連する装置および技法を含む。さまざまな数の相を含む非常に多様な物質の任意のものが本発明によって操作され得ることは当業者には明らかであろうが、最も一般的には本発明は、非適合性の流体の二相システムに有用である。本明細書中で用いられる「流体」とは、下記で説明する装置を通して強制的に流され、本発明の利点を実現し得る任意の物質を意味する。どの流体が本発明による用途に適する粘度を有するか、すなわちどの物質が「流体」であるか当業者には明らかであろう。ある物質は本発明の目的で、一連の条件下では流体のこともあるが、別の条件下では本発明で流体として使用するためにはあまりにも高い粘性を有することもあることを認識すべきである。物質(単数または複数)が本発明に適合する少なくとも一連の条件下で流体として挙動する場合には、この物質は本発明による操作の適用可能な物質として含まれる。
【0036】
ある一連の実施形態では、本発明は、滴形成用の可動部品のないフローシステム(好ましくはミクロ流体システム)で、サイズおよびサイズ分布が制御された分散媒内に分散相の滴を作製することを含む。すなわち、装置には所望のサイズの滴が作製される場所(単数または複数)で、装置に対して全体が動いて滴の作製またはサイズに影響を及ぼすような構成部品がない。たとえば、サイズが制御された滴を作製する場合、内部を滴が流れるチャンネルの形状を定める装置の部品に対して動く別の部品はなく、滴が作製される。これは滴サイズの「受動制御」または「受動分割」と呼ぶことができ、最初の滴の集合はより小さな滴に分割される。
【0037】
以下の定義は本発明のある種の局面を理解する上で助けとなろう。定義のリストの中に、本発明のある種の実施形態が分類されるパラメータの集合も含まれる。
【0038】
本明細書中で用いられる「チャンネル」は流体流を少なくとも部分的に閉じ込め誘導することができ、少なくとも2:1、より一般的には少なくとも3:1、5:1、または10:1のアスペクト比(長さ対平均断面寸法)を有する物品(基板)の表面または内部の微細構造を意味する。微細構造は任意の断面形状(曲線、正方形または長方形)の溝またはその他のくぼみであってよく、また被覆されていてもいなくてもよい。微細構造が完全に被覆されている実施形態では、チャンネルの少なくとも一部分が完全に囲まれた断面を有することがあり、あるいはチャンネル全体がその入口と出口とを除いて全長にわたり完全に囲まれていることがある。一般に、開口チャンネルは流体輸送の制御を容易にする特性、たとえば、流体に力(たとえば封入力)を及ぼすことができる構造上の特性(細長いくぼみ)および/または物理的もしくは化学的特性(疎水性対親水性)あるいはその他の特性を含む。チャンネル内の流体は部分的にチャンネルを満たしても完全にチャンネルを満たしてもよい。開口チャンネルが用いられる場合には、たとえば表面張力(すなわち凹面または凸面メニスカス)を用いて流体がチャンネル内に保持されることがある。チャンネルは任意のサイズでよく、たとえば約5または2ミリメートル未満、または約1ミリメートル未満、または約500ミクロン未満、約200ミクロン未満、約100ミクロン未満、または約50または25ミクロン未満の流体流に垂直な最大寸法を有する。ある場合には、流体が反応器中を自由に流れることができるようにチャンネルの寸法が選ばれることがある。チャンネルの寸法はまた、たとえばチャンネル内の流体の特定の体積速度または線速度が実現できるように選ばれることがある。もちろん、チャンネルの数およびチャンネルの形状は当業者には既知の任意の方法によって変更することができる。添付する図に例示する実施形態では、チャンネルはすべて完全に囲まれている。本明細書中で用いられる「チャンネル」はチャンネルの壁と障害物との間に造り出された空間を含まない。それどころか、本明細書中で定義される「障害物」はチャンネル内に含まれることが理解される。ミクロ流体装置中では種々の目的に合わせて、たとえば流体を大量に貯蔵するため、および本発明の構成要素に流体を送達するために、さらに大きなチャンネル、管などを用いてもよい。
【0039】
種々の物質で種々の構成部品を製作してよい。たとえば、ケイ素またはPDMSなどの不透明物質から底壁および側壁に適するミクロ流体素子のベース部分を製作してもよく、流体プロセスの観測および制御のためにガラスまたは透明ポリマーなどの透明物質から上部またはカバーを製作してよい。ベース支持体物質がちょうど所望の官能基を有しない場合には、構成部品に塗布して内部チャンネル壁と接触する流体に所望の化学官能基を露出させてもよい。たとえば、例示するように内部チャンネル壁を別の物質で塗布して構成部品を製作してもよい。
【0040】
図1は流体流のサイズを小さくする、あるいは第二の流体によって分離された第一の流体の小滴を作製する一般的な先行技術の「フローフォーカシング」技法の部分的な概略断面図である。図1の構成では、管10は、管10が収容されている容器16の壁に造られた小さなオリフィス14の上流に配置されオリフィス14に方向を向けた出口12を有する。第一の流体18は管10の中を流れ、出口12で流体10から出る。第二の流体20はハウジング16の外部の圧力より高い圧力でハウジング16の内部22に閉じ込められている。この圧力差によって流体20はオリフィス14を通ってハウジング16から漏れ出し、流体18は流体20の作用によってオリフィス14の方向に引き伸ばされ、オリフィス14を通って引き出される。定常な流体18の細い液体ジェット24が生成し、不連続な部分に分割することができる。通常「フローフォーカシング」として知られているこの技法は燃料噴射、食品粒子製造、医薬品製造などを含むさまざまな用途で記載されている。
【0041】
図2は図1の線2−2での断面図であり、ハウジング16および管10を示す。ハウジング16は、流体18が管10の出口から出るときに流体20が流体18を完全に囲むよう、一般に管10を完全に囲むように構成される。図1および2の構成は複数の部品から製作され、一般に本発明の装置の構築に対して相対的に複雑な多段階の製造工程を必要とし、全体的な規模では一般にはるかに大きい。
【0042】
次に図3を参照して、本発明の一つの実施形態の概略をミクロ流体素子システム26の形で断面図に例示する(図4の上部壁38がなければ、システム26の上面図は同じように見えると理解されるが)。本発明のシステムの特定の部分および全体を定義するために「上部」および「底部」が用いられるが、説明するものとは異なる向きでシステムを使用することもできることが理解される。参照の都合上、図3の向きで流体が最適には左から右に流れるようにシステムが設計されている点に注意する。
【0043】
システム26はミクロ流体素子システムの領域の形状を定める一連の壁を含む。これらの壁によってシステムを説明する。ミクロ流体相互連結領域28はシステム内で壁29によって定められ、上流部分30、および図3に示していないもっと下流で出口に接続する下流部分32を含む。図3に例示する実施形態では、相互連結領域28の外部境界内に側壁31によって形状を定められる目的の流体チャンネル34が提供される。目的の流体チャンネル34は、相互連結領域28の上流部分30と下流部分32との間で出口37を有する。したがって、システムは上流部分と下流部分との間でチャンネル34から相互連結領域に目的の流体を送達するように構成されている。
【0044】
図4は、図3の線4−4での断面図であり、壁29および31と共に連続領域28(その上流部分30で)および目的の流体チャンネル34の形状を定める底部壁36および上部壁38(図3に示す一部構成部品(壁29および31)の他に)を示す。相互連結領域28は、上流部分30では目的の流体チャンネル34によって分けられた二つの別個の部分を含むことが分かる。別個の部分はさらに下流で相互連結されている。
【0045】
再び図3を参照して、相互連結領域28は側壁29から相互連結領域に伸びる延長部分42によって形成される寸法制限部分40を含む。例示した実施形態では、相互連結領域の上流部分30から下流部分32に流れる流体は寸法制限部分40の中を通過しなければならない。目的の流体チャンネル34の出口37は寸法制限部分の上流に配置される。例示した実施形態では、相互連結領域28の下流部分は中心軸44を有し、中心軸44は目的の流体チャンネル34の中心軸と同じである。すなわち、目的の流体チャンネルは寸法制限部分の上流で、寸法制限部分と同じ線上で目的の流体を放出するように配置されている。図3に示すように構成されると、目的の流体チャンネル34は相互連結領域28の内部の部分に目的の流体を放出する。すなわち、相互連結領域の外側の境界は目的の流体チャンネルの外側の境界の外側にある。相互連結領域中で下流に流れる流体が目的の流体チャンネルから放出される流体と合流する正確な地点で、目的の流体は相互連結領域内の流体によって少なくとも部分的に囲まれるが、相互連結領域内の流体によって完全には囲まれない。例示する実施形態では、代わりにほぼその外周の50%で囲まれる。目的の流体の外周の一部分は底壁36および上部壁38によって押さえられている。
【0046】
例示する実施形態では、寸法制限部分は環状のオリフィスであるが、さまざまな形の任意の形状をとってよい。たとえば細長くても、卵形でも、正方形その他でもよい。好ましくは、分散流体に目的の流体の断面形状を囲ませて制限させる原因となるような任意の形状にされる。好ましい実施形態では、寸法制限部分は弁を使用しない。すなわち、それは開状態と閉状態との間で切り替えることができないオリフィスであり、一般に固定サイズである。
【0047】
図3および4には示さないが、目的の流体に対する分散流体の作用によって造り出された目的の流体の不連続な部分を囲む封入流体を提供するために、図3および4の構成中に一つ以上の中間流体チャンネルを提供してもよい。一つの実施形態では、目的の流体チャンネル34の両側に一つずつ、目的の流体チャンネルの出口の近くにそれぞれ出口を有する二つの中間流体チャンネルが提供されている。
【0048】
すべての実施形態ではないが、ある実施形態では、システム26の構成部品はすべてミクロ流体素子である。本明細書中で用いられる「ミクロ流体」とは、1ミリメートル(mm)未満の断面寸法および少なくとも3:1の長さ対最大断面寸法の比を有する少なくとも一つの流体チャンネルを含む素子、装置またはシステムを指し、「ミクロ流体チャンネル」はこれらの基準を満たすチャンネルである。断面寸法は流体流方向に対して垂直に測定される。本発明の構成部品内の大部分の流体チャンネルは2ミリメートル未満、好ましくは1ミリメートルの最大断面寸法を有する。ある一連の実施形態では、少なくとも、一つの流体が別の流体によって分散させられる領域では、流体チャンネルはすべてミクロ流体素子、または2ミリメートル以下の最大断面寸法である。別の実施形態では、単一構成部品(たとえばエッチング基板または成形ユニット)によって部分的に形成された、流体の分散に関連する流体チャンネルはすべてミクロ流体素子、または最大寸法2ミリメートルである。もちろん、これより大きなチャンネル、管などを用いて流体を大量に貯蔵し、本発明の構成部品に流体を送達してもよい。
【0049】
本明細書中で用いられる「ミクロ流体相互連結領域」とは、流体によって連絡する二つ以上のミクロ流体チャンネルを含む装置、装置またはシステムの一部分を指す。
【0050】
ある一連の実施形態では、すべての能動流体チャンネル、すなわち流体の分散に関与するすべてのチャンネル、の最大断面寸法は、500ミクロンまたは200、100、50、または25ミクロン未満である。たとえば、相互連結領域28の断面50ならびに目的の流体チャンネル34の最大断面寸法52はこれらの寸法のどれよりも小さくてもよい。相互連結領域28の上流部分30はこれらの最大断面境界値のどれによって定められてもよい。装置およびシステムはミクロ流体素子的でない部分も有するチャンネルを含むことがある。
【0051】
本明細書中で用いられる「チャンネル」とは、少なくとも部分的に流体流を誘導する物品(基板)の上部または内部の微細構造を意味する。微細構造は任意の断面形状(図に例示するように曲線、正方形または長方形など)の溝であってよく、被覆されていてもいなくてもよい。微細構造が完全に被覆されている実施形態では、チャンネルの少なくとも一部分が完全に囲まれた断面を有することがあり、あるいはチャンネル全体がその入口と出口とを除いて全長にわたって完全に囲まれていることがある。特に明記しない限り、添付する図に例示する実施形態では、チャンネルはすべて完全に囲まれている。
【0052】
本発明の一つの局面はミクロ流体素子流体結合システムの単純化された製造方法、およびそれによる一般的な先行技術のシステムより少ない構成部品で定められるシステムを含む。たとえば、図3および4に例示する構成では、底壁36および壁29および31は互いに一体化されている。本明細書中で用いられる「一体化されている」とは、構成部品を互いに切断または破壊することなしには互いに分けられないように部分が結合していることを意味する。例示するように、底壁36ならびに壁31および29は物質の一個の品物から作製される。例示する実施形態では、相互連結領域28および目的の流体チャンネル34の上部壁を定める上部38は底壁36ならびに壁31および29と同じ物質で作製してもよいし、あるいは異なる物質で作製してもよい。一つの実施形態では、上記で説明した構成部品の少なくとも一部は、流体流を観測できるように透明である。たとえば、上部壁38はガラスのような透明物質であってもよい。
【0053】
さまざまな物質および方法を用いてシステム26の構成部品を作製してもよい。ある場合には、選択したさまざまな物質がさまざまな方法で使用される。たとえば、固体物質から本発明の構成部品を作製してもよく、その場合にはミクロ機械加工、スピンコーティングおよび化学蒸着法などの膜作製方法、レーザー加工法、フォトリソグラフィー法、湿式化学物質またはプラズマプロセスを含むエッチング法などによってチャンネルを作製してもよい。たとえば、サイエンティフィックアメリカン(Scientific American)248巻44〜55頁(1983年)のエンジェル(Angell)らを参照すること。一つの実施形態では、システムの少なくとも一部(たとえば底壁36ならびに壁29および31)は、シリコンチップに微細構造をエッチングすることによってケイ素で作製される。ケイ素から本発明の装置を製造する精密で効率的な技術は既知である。別の実施形態では、部分(またはその他の部分)はポリマーで作製してもよく、エラストマーまたはポリテトラフルオロエチレン(PTFE,テフロン(登録商標))などでもよい。
【0054】
種々の物質で種々の構成部品を製作することができる。たとえば、底壁36ならびに側壁29および34を含むベース部分はケイ素またはPDMSなどの不透明物質で製作してもよく、上部38は流体プロセスの観測および制御のためにガラスまたは透明なポリマーなどの透明物質で製作してもよい。ベース支持体物質がちょうど所望の官能基を有しない場合には、構成部品に塗布して内部チャンネル壁と接触する流体に所望の化学官能基を露出させてもよい。たとえば、例示するように内部チャンネル壁を別の物質で塗布して構成部品を製作してもよい。
【0055】
本発明の装置を製作するために用いられる物質、あるいは流体チャンネル内壁を被覆するために用いられる物質は、好ましくは装置内を流れる流体に悪影響を与えない、あるいは装置内を流れる流体によって悪影響を受けない物質、たとえば、装置内で用いられる作業温度および圧力で流体の存在下で化学的に不活性である物質(単数または複数)の中から選ばれ得る。
【0056】
一つの実施形態では、本発明の構成部品は重合体および/または可撓性および/またはエラストマー物質で製作され、好都合には、硬化性流体で成形(たとえばレプリカ成形、射出成形、注型成形など)による製造を容易にして作製してもよい。硬化性流体は基本的に、ミクロ流体網目構造中およびミクロ流体網目構造との用途で考えられる流体を収容および輸送できる固体中への固体化を誘起すること、あるいは自発的に固まることができる任意の流体形であってもよい。一つの実施形態では、硬化性流体は重合体液体または液状の重合体前駆物質(すなわち「プレポリマー」)を含む。適当な重合体液体はたとえば熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー、または融点より高温に熱されたそのようなポリマーの混合物、あるいは溶媒の除去、たとえば蒸発によって溶液が固体重合物質を形成する適当な溶媒中の一つ以上のポリマーの溶液を含んでもよい。たとえば、溶融状態から、溶媒蒸発によって、または触媒反応によって固化できるような重合体物質は当業者には周知である。さまざまな重合物質(このうちの多数はエラストマーである)が適当であり、また鋳型マスターの一方または両方がエラストマー物質で構成される実施形態については、二次鋳型または鋳型マスターにも適当である。そのようなポリマーの非限定的な例のリストはシリコーンポリマー、エポキシポリマーおよびアクリレートポリマーの一般的な種類のポリマーを含む。エポキシポリマーは一般にエポキシ基、1,2−エポキシド、またはオキシランと呼ばれる三員環の環状エーテル基の存在によって特徴づけられる。たとえば、芳香族アミン、トリアジン、および脂環式骨格にもとづく化合物に加えて、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルを用いてもよい。別の例は、周知のノボラックTM(NovolacTM)ポリマーを含む。本発明による用途に適するシリコーンエラストマーの例はメチルクロロシラン、エチルクロロシランおよびフェニルクロロシランなどのようなクロロシラン類を含む前駆物質から形成されるものを含む。
【0057】
ある一連の実施形態ではシリコーンポリマー、たとえばシリコーンエラストマーポリジメチルシロキサン(PDMS)が好ましい。ポリジメチルシロキサンポリマーの例には、ミシガン州ミッドランドのダウケミカル社(Dow Chemical Co.,Midland,MI)によってシルガード(登録商標)(Sylgard(登録商標))、詳しくはシルガード182、シルガード184、およびシルガード186の商標名で販売されているものが含まれる。PDMSを含むシリコーンポリマーは本発明のミクロ流体構造体の製造を単純化するいくつかの有益な性質を有する。第一に、そのような物質は安価であり、容易に入手でき、熱で硬化することによってプレポリマー液から固体化することができる。たとえば、一般にPDMSは、たとえば約1時間の加熱時間の間、たとえば約65℃から約75℃の温度にプレポリマー液をさらすことによって硬化できる。第二に、PDMSなどのシリコーンポリマーはエラストマーであり、したがって本発明のある種の実施形態で必要な比較的アスペクト比の高い非常に小さな微細構造を形成するために有用である。柔軟な(たとえばエラストマー)鋳型またはマスターはこの点に関しては好都合であり得る。
【0058】
PDMSなどのシリコーンポリマーから本発明のミクロ流体構造体を作製することの別の利点は、たとえば空気プラズマなどの酸素含有プラズマにさらすことによって酸化されるそのようなポリマーの能力である。その結果、酸化された構造体は、他の酸化されたシリコーンポリマー表面またはさまざまなその他の重合体および非重合体物質の酸化された表面に架橋できる化学基を表面に含む。したがって、構成部品が製作され得、次いで酸化され得、別個の接着剤またはその他の封着手段を必要とすることなく、他のシリコーンポリマー表面、または酸化されたシリコーンポリマー表面と反応する、その他の基板の表面に本質的に不可逆的に封着される。ほとんどの場合、酸化されたシリコーン表面を別の表面に単に接触させることによって、封着を形成するために補助的な圧力を加える必要もなく、封着を完了することができる。すなわち、あらかじめ酸化されたシリコーン表面は、適当な合わせ面に対してコンタクト型接着剤として作用する。特に、自身に不可逆的に封着可能であることに加えて、酸化されたPDMSなどの酸化されたシリコーンはさらに、たとえばPDMS表面と同じように(たとえば酸素含有プラズマに接触させることにより)酸化されたガラス、ケイ素、酸化ケイ素、石英、窒化ケイ素、ポリエチレン、ポリスチレン、ガラス状炭素およびエポキシポリマーを含む、自身を除く広い範囲の酸化された物質に不可逆的に封着することができる。本発明の分野に関連する有用な酸化および封着方法ならびに全体的な成形技術は、参考として本明細書中に援用されるアナリティカル・ケミストリー(Analytical Chemistry)第70巻474〜480頁(1998年)のダフィー(Duffy)らの「ミクロ流体素子システムおよびポリジメチルシロキサンの迅速なプロトタイプ作製(Rapid Prototyping of Microfluidic Systems and Polydimethylsiloxane)」中で説明されている。
【0059】
酸化されたシリコーンポリマーから本発明のミクロ流体素子構造(または内部の流体接触表面)を作製することの別の利点は、これらの表面が一般的なエラストマーポリマーの表面よりずっと親水性になり得ること(親水性の内部表面が望ましい場合)である。そのような親水性のチャンネル表面は、したがって一般的な酸化されていないエラストマーまたはその他の疎水性物質で構成された構造体よりも、より簡単に水溶液で満たし濡らすことができる。したがって、酸化されていないエラストマーポリマーよりも親水性の大きい表面を有する本発明の素子を製作することができる。
【0060】
一つの実施形態では、底壁36は壁29または31の一つ以上、あるいは上部壁38またはその他の構成部品とは異なる物質で作製される。たとえば、底壁36の内部表面はシリコンウエハまたはマイクロチップの表面あるいはその他の基板を含んでもよい。上記で説明したように、その他の構成要素はそのような代替基板に封着することができる。シリコーンポリマー(たとえばPDMS)を含む構成部品を異なる物質の基板(底部)に封着することが望まれる場合には、酸化されたシリコーンポリマーが不可逆的に封着することができる物質の群から基板を選ぶことが好ましい(たとえば酸化されたガラス、ケイ素、酸化ケイ素、石英、窒化ケイ素、ポリエチレン、ポリスチレン、エポキシポリマー、およびガラス状炭素表面)。あるいは、当業者にとって明らかである個別の接着剤、熱結合、溶剤結合、超音波溶接などの使用を含むが、これらに限定されないその他の封着技法を用いてもよい。
【0061】
本発明は、分散流体中の不連続なまたは孤立した目的の流体の領域の生成を提供するが、オプションとして目的の流体は一つ以上の中間流体によって隔てられていることがある。中間流体は流体間の関係を考慮することによって、当業者によって基本的に任意の流体(液体、気体など)の間で選ばれ得る。たとえば、目的の流体および分散流体は、分散した部分の生成の時間枠内では混ざらないように選ばれる。分散した部分がかなりの時間の間液体のままの場合には、流体は著しく混ざらないものである方がよい。分散した部分の生成の後で、分散した部分が重合などによって迅速に硬化する場合、流体は非混合性である必要はない。当業者は本発明の技法を実行するために接触角測定などを用いて適当な非混合流体を選ぶことができる。
【0062】
本明細書中の教示(ならびにフローフォーカシングの分野で利用可能な教示)にもとづいて、目的の流体の分散は当業者によって制御され得る。本発明の目的を実行する流体の選択のためには、たとえば1998年1月12日のフィジカル・レビューズ・レターズ80巻2号のガナン−カルボの「安定な液体微小流およびミクロンサイズの単分散スプレーおよびガス流体の生成」ならびに多数のその他の文献を参照することができる。下記の例からさらに完全に理解されるように、分散流体の流速の制御および分散流体と目的の流体との間の流速比を用いて、目的の流体流および/または分散サイズおよび分散液中の単分散度対多分散度を制御することができる。本発明のミクロ流体素子は、本明細書中に教示するように流速および比率の制御と結びついて、著しく改良された制御および範囲を可能にする。分散部分のサイズは直径一ミクロン未満にまで小さくすることができる。
【0063】
多くの分散はバルクの性質(たとえばレオロジー、分散(単数または複数)がどのように流れるか、およびオプションとして光学的性質、味、触感など分散粒子の大きさおよび分散粒子の粒度分布によって影響されるその他の特質を有する。一般的な先行技術技法、たとえば先行技術のフローフォーカシング技法は最も一般的に単分散系を含む。本発明はまた不連続な部分の分布結果を複分散および多分散させる条件の制御を含む。これは不連続な粒度分布などを変更することによってバルクの性質に影響を及ぼすとき有用であり得る。
【0064】
本発明を用いて医療(たとえば医薬品)、スキンケア製品(たとえばローション、シャワーゲル)、食品(たとえばサラダドレッシング、アイスクリーム)、インクのカプセル化、塗料、マイクロエンジニアリング材料(たとえばフォトニック結晶、スマート材料など)のマイクロテンプレート化、泡などで使用するためのさまざまな分散した流体の部分または粒子を作製することができる。本発明によって製造された高度に単分散の濃縮された液晶小滴は二次元および三次元構造へ自己組織化することができ、これらはたとえば新規な光学装置中に使われ得る。
【0065】
本発明の一つの特長は目的の流体の不連続な部分の大きさに対する強められた制御である。これは多くの先行技術の技法と対照的である。一般に、先行技術では内部流体は流体が強制的に通らされるオリフィスより小さいサイズの流れまたは滴の集合中に引き込まれる。本発明では、ある実施形態には寸法制限部分の平均断面寸法以上の平均断面寸法または平均直径をそれぞれ有する目的の流体流および/または不連続な部分の作製が含まれる。本発明には、代わりにミクロ流体素子環境による分散流体、目的の流体のどちらかまたは両方の流速の制御および/またはこれらの流速の比の制御によるこれらの平均断面寸法または直径に対する制御が含まれる。他の実施形態では、目的の流体の流れおよび/または不連続な部分は寸法制限部分の平均断面寸法のそれぞれ90%以上の平均断面寸法または平均直径を有し、あるいはその他の実施形態では寸法制限部分の平均断面寸法の80%、70%、60%、50%、40%または30%以上の平均断面寸法または平均直径を有する。これは、本発明のシステムが広い流速の範囲にわたって機能し得、しきい値流速の点までは、変化する流速の下で基本的に同じ流れのサイズまたは不連続な部分のサイズを製造する(サイズはたとえば寸法制限部分の寸法によって定まる)ことができる点で有利であり得る。しきい値流速では、流速を増大すると対応する減少が目的の流体流および/または不連続な部分の平均断面寸法または平均直径にそれぞれ起きる。
【0066】
ある実施形態では、気−液分散を用いて泡を製造することがある。気−液分散中の気体の体積パーセントが増大するにつれて、個々の気泡は互いに押し付けられ球状の形状を失うことがある。一つ以上の表面によって制約されると、これらの球体は円盤形に圧縮されることがあるが、一般に圧縮する面から見ると円形の形状パターンを維持する。一般に、より高い体積パーセントで気泡が非球体または多面体になると分散は泡と呼ばれる。泡が形成されるときには多くの因子、たとえば分散サイズ、粘度、および表面張力が影響を及ぼすことがあるが、ある実施形態では、気−液分散中の気体の体積パーセントがたとえば75、80、85、90または95を超えると泡(非球体の気泡)が生成する。
【0067】
本発明のある局面によってより小さな小滴に分割され得る始めの目的の流体小滴(または分散相)の生成について説明する。基本的に本明細書中で説明するものを含む任意の技法が目的の流体小滴を作製するために使用できることが理解される。目的の流体小滴を作製する一つの技法は、図1に示すもののような装置を用いて実施できる。図1は流体流の大きさを減少させ、あるいは第二の流体によって分けられた第一の流体の小滴を作製する一般的な先行技術の「フローフォーカシング」技法の部分的な断面概略図である。構成は上記で説明した。
【0068】
目的の流体小滴作製のための別の技法は、本明細書中で説明した図3の装置を使用することによる。図3は断面概略図で例示したミクロ流体素子システム26を示す(上部壁がなければシステム26の上面図は同じように見えると理解されるが)。本発明のシステムの特定の部分および全体を定義するために「上部」および「底部」が用いられるが、説明するものとは異なる方向でシステムを使用してもよいことが理解されるべきである。参照の都合上、図3の方向で流体が最適には左から右に流れるようにシステムが設計されている点に注意する。システム26はミクロ流体素子システムの部分の形状を定める一連の壁を含む。これらの壁を用いてシステムを説明する。ミクロ流体相互連結部分28はシステム内で壁29によって定められ、上流部分30および下流部分32を含む。下流部分32は図3には示していないもっと下流で出口に連結する。図3に例示する実施形態では、相互連結領域28の外部境界の内側に側壁31によって定められた目的の流体チャンネル34が提供される。目的の流体チャンネル34は、相互連結領域28の上流部分と下流部分との間に出口37を有する。したがって、システムはチャンネル34から上流部分と下流部分との間の相互連結領域に目的の流体を送達するように構成されている。相互連結領域28は側壁29から相互連結領域に伸びる延長部分42によって形成される寸法制限部分40を含む。例示した実施形態では、相互連結領域の上流部分30から下流部分32に流れる流体は寸法制限部分40の中を通過しなければならない。目的の流体チャンネル34の出口37は寸法制限部分の上流に配置される。例示した実施形態では、相互連結領域28の下流部分は中心軸44を有し、中心軸44は目的の流体チャンネル34の中心軸と同じである。すなわち、目的の流体チャンネルは寸法制限部分の上流で、寸法制限部分と同じ線上に目的の流体を放出するように配置されている。図3に示すように構成されると、目的の流体チャンネル34は相互連結領域28の内部の部分に目的の流体を放出する。すなわち、相互連結領域の外側の境界は目的の流体チャンネルの外側の境界の外側にある。相互連結領域を通って下流に流れる流体が目的の流体チャンネルから放出される流体と合流する正確な地点で、目的の流体は少なくとも部分的に相互連結領域内の流体によって囲まれるが、相互連結領域の流体によって完全には囲まれない。例示する実施形態では、代わりにその外周のほぼ50%で囲まれる。
【0069】
次に図5を参照して、本発明の小滴作製のための一つの一般原理の概略を図示する。図5では、複数の目的の小滴60が矢印62によって示される方向に流れる。小滴60は分散媒(小滴60を囲んでいるが図には特に示していない)中に閉じ込められた分散相小滴である。小滴60は障害物62に向かって流れ、衝突させられ、小滴60はそれによって障害物の下流でさらに小さな小滴64に分割される。本明細書中で説明したミクロ流体素子技法を含む任意の適当な技法を用いて、小滴60を障害物62に誘導し得、障害物62に衝突させ得、これによって小滴64に分割し得る。
【0070】
ある一連の実施形態では、目的の流体小滴は、5ミリメートル、または1ミリメートル、500ミクロン、250ミクロン、100ミクロン、60ミクロン、40ミクロン、20ミクロン、または10ミクロン以下の最大断面寸法を有する。小滴が実質的に球形の場合には、最大断面寸法は球体の直径である。作製されたさらに分散した小滴64は上記に列挙したばかりのものと同じ最大断面寸法を有してもよいが、もちろん最大断面寸法は小滴60より小さい。一般に、さらに分散した小滴64の最大断面寸法は最初の目的の小滴60の最大断面寸法の80%以下、または60%以下、40%、または小滴60の最大断面寸法の20%以下である。
【0071】
図6を参照して、さまざまなサイズの小滴の作製(滴のサイズ分布または範囲の制御)のための一つの構成を例示する。図6では、複数のミクロ流体素子チャンネル66、68、70、72および74がそれぞれ複数の目的の小滴60(簡単化のためそれぞれの場合を一つの小滴で表す)を運び、小滴を囲む分散媒中で矢印76の方向に流れるように小滴を圧迫する。チャンネル66〜74はそれぞれ異なる配置の障害物を含む。チャンネル66には障害物がなく、小滴60は下流に流れるとき影響を受けない。チャンネル68は図5の配置を表わし、障害物62の下流で基本的に均一なサイズの小滴64が生成する。チャンネル70は直列に配置された複数の障害物を含み、チャンネル70のほぼ中央に一つ、第一の障害物の下流に残りの二つを第一の障害物とチャンネルの壁との間のほぼ中間地点にそれぞれ置いた。その結果は基本的に小滴64より小さい均一なサイズの複数の小滴76であり得る。チャンネル72は一つの障害物を含むが、中心から外れている。その結果、障害物の下流で滴のサイズが異なる少なくとも二つの異なる滴78と80が生成し得る。チャンネル74はチャンネルを横断する複数の等間隔の障害物を含み、その下流で基本的に均一な小さな液滴82の分布を生じ得る。チャンネル66〜74はそれぞれ、種々のサイズまたはサイズ分布の分散した小滴の集合を個別に作製するための個別のシステムを表すことができる。あるいは、これらのまたはその他のチャンネルの一部またはすべての出口を組み合わせて、基本的に任意の組合せの小滴サイズを有する任意の製品を生み出し得ることが基本的に可能である。
【0072】
図6の構成は極めて図式的であり、本発明によって創出できる分散の多様性を表すことだけを意図している。障害物の下流での小滴の特定の分布は分散媒中の分散相の非混合性(非相容性)(流体の接触角の測定または当分野で既知のその他の性質における差異によって特徴づけられることがある)、流速、障害物サイズおよび形状などのような因子によって変化することが理解されるべきである。図5では三角形の断面形状の障害物が例示され、図6では実質的に円形の断面形状の障害物として高度に図式的に再現されているが、基本的に任意のサイズおよび断面形状(たとえば正方形、長方形、三角形、楕円形、円形)の障害物でも使うことができることが理解される。当業者は基本的に任意の分散媒サイズおよび分布結果を実現するために障害物のサイズ、形状および配置を選ぶことができる。チャンネルの形状およびサイズもさまざまなもの、たとえば上記で図3に関して説明したものから選ぶこともできる。
【0073】
次に図7を参照して、ミクロ流体システム90の概略を例示し、分散相の小滴60を作製し、本発明によって障害物(単数または複数)を用いてこれをさらに分散させ得る一つの技法を示す。システム90は第一のチャンネル92、および垂直に配置され、チャンネル92との「T」字接合部で終わる第二のチャンネル94を含む。分散媒はチャンネル92の中をT字接合部の上流で矢印96の方向に流れ、分散相はチャンネル94の中をT字接合部の上流で矢印98の方向に流れる。流体小滴96として表される、チャンネル94を経て送達される流体の、チャンネル92を経て送達される分散媒中の分散相が、T字接合部で作製される。例示するT字接合部での分散媒中の分散相の作製は当分野では既知である。流体チャンネル中の分散媒および分散相の相対圧力、流速、その他の選択はすべて当業者によって慣用的に選ばれ得る。本発明によって、障害物98(中央に置かれた四角い断面の障害物として図7に表す)によって障害物の下流で小滴96がより小さな小滴100に分割されるようにした。各側壁からの相対距離(a)および(b)で示される障害物98の横の配置によって、上記で図6に関して参照したように、生じる分散相のサイズおよびサイズ分布の範囲の制御が可能になる。チャンネル92および94は基本的に任意の幾何学的な形状をとることができる。例示した実施形態では、それらは基本的に約1ミリメートル未満の側壁間の距離を表す寸法(c)または上記でチャンネルについて述べたその他の寸法を有する四角い横断面であることを意図する。
【0074】
代わりの構成では、図7に示すようにT字接合部で小滴96によって表される分散相を作製するのではなく、一つ以上の障害物の上流で図3に例示した配置を用いてもよい。
【0075】
障害物は基本的に任意のサイズおよび断面形状でよい。障害物は望ましくはさらに分散した相に分割される分散相を保持するチャンネル内の任意の場所に配置してよい。製造の容易さを目的として、一般にチャンネルの底面からその上面(図5、6および7ではチャンネル中で「下を」見ているとして)まで障害物をつなぎ、一般にこの間で均一な断面幾何学形状を有する。
【0076】
次に図8を参照して、分散相をさらに分散させるシステム110の概略を例示する。システム110では、入口チャンネル112が矢印114の方向でT字接合部116に流れる流体を送達し、T字接合部116でチャンネル112はそれぞれT字接合部から反対の方向に伸びる部分118および120を含む背圧制御チャンネルに垂直に接する。チャンネル118および120はそれぞれ集合チャンネル122および124に送達し、集合チャンネル118および120は最終的には合流して出口チャンネル126に流体を送達する。
【0077】
チャンネル112は任意の都合のよい方法(本明細書中で図1および3を参照して説明したもののような)および条件(当業者に知られているように分散相の大きさ、流速、圧力など)で作製した分散媒流体相内の分散流体相を矢印114の方向に送達して、T字路116で分散相を分割させる。本発明によってチャンネル118および120のそれぞれの中の相対的な流れ抵抗がこれらのチャンネル中を流れる分散相小滴(チャンネル118によって送達される相対的に小さな小滴128およびチャンネル120によって送達される相対的に大きな小滴130として表される)の相対的なサイズ(体積)を決定することがわかった。これらの小滴は送達チャンネル126中で一緒になる。他の点では対称形の装置中では、逆流圧チャンネル118および120の相対的な長さによって比例する背圧が生じ、より高い背圧(より長いチャンネル)では比例して小さなサイズの滴が作製される。したがって一つの局面では、本発明は送達チャンネルと第一および第二の分散チャンネルとの交差部に送達チャンネルから第一および第二の流体を送達すること、第一の流体チャンネル中では第二の流体中の第一の流体の第一の分散サイズ、および第二の分散チャンネル中では第二の異なる分散サイズでの分散を起こさせることを含む。この構成はT字接合部での澱み点近くの伸長流を利用している。
【0078】
T字接合部の幾何学的な形状を用いるときには、一般に小滴の生成には連続相中の高いせん断速度が必要とされ、従って小さな滴は分散相の小さな体積分率と関連する傾向がある。一方、より低いせん断速度では分散相はもっと長細い形状を形成し、それが今度は高い分散相体積分率を意味する。
【0079】
これらおよびその他の本発明の実施形態の機能および特長は下記の実施例からさらに完全に理解されよう。以下の実施例は本発明の利点を例示することを意図するが、本発明のすべての範囲を例示すものではない。
【実施例】
【0080】
以下の実施例は、第二の混ざらない分散流体の連続相中で目的の流体の滴を形成するためのミクロ流体素子チャンネルの幾何学的な形状の使用法を例証する。ここで説明する実験用として、ソフトリソグラフィー製造方法を用いる平らなマイクロチャネル設計により、フローフォーカシング装置に類似の幾何学的な形状を製作した。すなわち、一体化されたマイクロチャネルプロトタイプを基本的に単一工程で迅速に製造する能力を実施例によって例証する。第一の群の実施例では二つの混ざらない流体としてオイルと水とを使った。連続相液体(分散流体)としてオイル、分散相(目的の流体)として水を用い、各液体入口の流れに加えられる流速に基づいて広範な滴(不連続な部分)生成パターンを実現した。生成する不連続な部分のサイズの変化を、オイルの流速Qoilおよび水の流速に対するオイルの流速の比R=Qoil/Qwaterの関数として決定した。観測された小滴は直径で三桁(decade)にまたがり、最小の小滴は数百ナノメートルの範囲にある。
【0081】
図9は本発明によって製作した図3および4に概略を例示した装置の拡大写真(10×)のフォトコピーである。目的の流体チャンネル34中に目的の流体として水を流し、目的の流体チャンネルを囲む相互連結領域中の下流に混ざらない分散流体としてオイルを流した。次に二つの液相は目的の流体チャンネルの下流で、目的の流体チャンネルの出口と整列したオリフィスの形の寸法制限部分40中を流れるように強制された。分散流体(オイル)が圧力および粘性応力を及ぼし、目的の流体を強制的に細線に引き伸ばし、細線になった目的の流体は次に寸法制限部分の内部またはわずかに下流で分割された。界面活性剤スパン80をオイル相に溶かし、融着しないように液滴の安定性を維持した。図10〜12は目的の流体66と接触し、装置中の寸法制限部分40を通るように強制された、分散流体68の動作による目的の流体66中の不連続な部分62作製の拡大写真(20×拡大)のフォトコピーである。明らかに、広範なサイズの不連続な部分62を提供することができる。たとえば図11(e)では、この議論を目的として特に70および72と番号をつけた不連続な部分62は、不連続な部分のそれぞれの最大断面寸法の比約5:1を実証する。
【0082】
上記で参照したダフィーらによって説明されているように、ソフトリソグラフィー技法を用いてPDMSから図9(および図10〜13)に示すミクロ流体装置を製作した。名目上は、相互連結領域の最大のチャンネル幅50は(図3の概略図を参照して)1mmであり、目的の流体チャンネル34の幅は200ミクロンであった。目的の流体チャンネルの出口36から寸法制限領域40までの距離(Hfocus)は200ミクロン、寸法制限部分の直径は二つの異なる実験で50ミクロンおよび100ミクロンであった。装置中の内壁の厚さは100ミクロンで、PDMS(壁の製作材料)およびガラスの上部壁38を維持するために適当だった。チャンネルの深さ(壁29および31の高さ)は100ミクロンであった。使用中の実際の寸法はシリコーンオイルがPDMSを膨潤させたので、若干変化した。顕微鏡観察によってこれらの値を決定した。
【0083】
使用流体は蒸留水(目的の流体)およびシリコーンオイル(分散流体、フルーカ社(Fluka)、Silicone Oil AS 4)であった。製造業者によって報告されたシリコーンオイルの粘度は6mPa・秒であった。シリコーンオイルはスパン80界面活性剤(オールドリッチ(Aldrich)社のモノオレイン酸ソルビタン)0.67重量%を含有していた。界面活性剤溶液を、シリコーンオイルと界面活性剤とを約30分間機械的に混合し、それからマイクロチャンネルの目詰まりを防ぐために濾過して凝集体を除くことによって調製した。
【0084】
可撓性の管(クレイ・アダムズ(Clay Adams)イントラメディックPE60ポリエチレン配管)を通してマイクロチャンネル中に流体を導入し、各流体用に個別のシリンジポンプ(ブレイントリー・サイエンティフィック社(Braintree Scientific)BS8000シリンジポンプ)を用いて流速を制御した。ここで例証する本発明の実施形態では分散流体(オイル)の流速Qは目的の流体(水)の流速Qより常に大きかった。三つの異なる流速比Q/Q=4、40および400を選び、ここで、所定のオイル流速が両方のオイル入口の流れの全流速に対応した。各Q/Qについて、二桁を超える範囲のオイル流速を選んだ(4.2×10−5ml/秒≦Q≦8.3×10−3ml/秒)。QおよびQの各々の値で、オリフィスの内部およびわずかに下流での滴生成を倒立顕微鏡(モデルDM IRB(ライカ・マイクロシステムズ(Leica Microsystems))および高速度カメラ(ファントム(Phantom)V5.0、フォト・ソニックス社(Photo−Sonics,Inc.最高6000フレーム/秒)を用いて可視化した。画像処理を用いて滴サイズを測定し、等価球の直径として報告する。
【0085】
図10(画像a〜e)は使用中の図9の装置の20×拡大写真のフォトコピーである。寸法制限部分(オリフィス)の内部で起こっている滴の解体のシーケンスの実験画像を示す。目に見えるサテライトなしで均一の大きさの滴が形成され、オリフィスの内部で分割が起こった。画像の間の時間間隔は1000マイクロ秒であった。Q=8.3×10−5ml/秒およびQ/Q=4であった。
【0086】
図11(画像a〜e)は別の条件で使用中の図9の装置の20×拡大写真のフォトコピーである。小さなサテライト(不連続な部分)がそれぞれの大きな滴(不連続な部分)に随伴し、オリフィスの内部の二つの対応する場所で分割が起こった。画像の間の時間間隔は166マイクロ秒、Q=4.2×10−4ml/秒およびQ/Q=40であった。
【0087】
図12は、さまざまな流体流速および比で使用中の図9の構成の拡大写真のフォトコピーである。各画像は指定されたQ(行)およびQ/Q(列)の値で作製される不連続な部分(滴)のサイズおよびパターンを表す。拡大は、20Xであった。
【0088】
図13は液体中の気泡の生成を示す一連の顕微鏡写真を提供する。気体分散は図3に示したもののようなミクロ流体フォーカシング装置を用いて製造した。目的の流体は窒素であり分散流体は水であった。目的の流体チャンネルは200μmの幅を有し、二つの分散流体チャンネルのそれぞれは250μmの幅を有した。制限された部分は30μmの幅を有する環状オリフィスであった。出口チャンネルの幅は750μmであった。目的の流体チャンネルに送達される窒素の圧力は4psiであった。水性分散液相の流速は4mL/hから0.01mL/hまで段階的に下げて変化させた。図13(a)に示すように、分散流体の流速(4mL/h)が高い方では流出する流体中の気体の体積分率は小さく、泡には規則性がなかった。分散流体の流速が1.8mL/hまで下がると(図13(b))明確な泡が見えるがそれでもまだ規則性は低かった。分散流体の流速が0.7mL/hまで下がると(図13(c))、窒素のより大きな体積分率および増大した規則性が見えた。この傾向は、流速がそれぞれ0.5mL/hの図13(d)から0.1mL/hの(e)まで続いた。さらに低い流速では、図13(f)から(i)に示すように分散した流体部分(窒素)はそれらの丸い形状を失い始める。図13(h)および(i)に示すように、気泡が非円形の多角形形状を取り始めると分散が泡を形成すると考えられる。分散中で気体の体積分率が約90%を超えると、これらの非円形の形状が発生する傾向があると考えられる。これらの顕微鏡写真は、液体中で高い体積分率で規則度を有する相を形成する本発明の能力を例証する。
【0089】
非混和流体中で分散を形成した流体部分をさらに分散させるために別の装置を製作した。既知のソフトリソグラフィー製造技法を用いてポリジメチルシロキサン(PDMS)から一連のマイクロチャンネルを作製した(たとえば、参考として援用されるアンゲヴァンテ・ヘミー・インターナショナル・エディション・イン・イングリッシュ(Angew.Chem.,Int.Ed.Engl.)1998年第37巻550頁のシャ(Xia)らの論文、および上記で参照したWO96/29629号明細書を参照すること)。本明細書中で説明する各実施例では、最初の滴生成はT字接合部で起こり、流速はほとんど均一のサイズの滴を維持するように選ばれる。チャンネルの高さは30ミクロン、滴が最初に作製されるT字接合部ではチャンネルの幅も30ミクロンであった。障害物によって支援された分割の場合、障害物は対角線の長さ60ミクロンの正方形断面を有し、チャンネル幅はチャンネル内の障害物の場所によって120ミクロンから240ミクロンまで変化した(図7に例示する(b)対(a)の相対比)。分散相を作製するために蒸留水が選ばれ、連続相としてヘキサデカン(せん断粘度が0.08g/cm・秒に等しい)が使われた。2.0重量%のスパン80界面活性剤をオイル相に加えて液滴作製を支援した。個別のシリンジポンプを用いて二つの相の流速を制御した。
【0090】
図14(a)はチャンネルの中心に配置された障害物を通り過ぎて流れる、チャンネルと同程度のサイズを有する滴の単一の列を示す。滴は障害物を囲むギャップ中に流れ込むと変形し、障害物のわずかに下流でさらに分散した滴に分割される。図14(b)および(c)は非対称な障害物の位置を変えることによって、さらに分散した小滴の相対的なサイズの制御が可能になることを例示する。さらに、障害物の下流で分散した小滴の充填配置の変化が起こり得る。図14(d)は中心から外れて配置された障害物に小滴の二つの層配置が遭遇すると、一方の層の滴だけがさらに分散され、従って結果は三つの異なるサイズの滴の規則的な配列となるように装置を構成することができることを例示する。滴分割のこの受動経路が進むためには、滴が障害物のまわりで細い隙間を通って単に通過するのではなく、変形することを強制されるように、体積分率の分散相は比較的大きいべきである点に注意すること。
【0091】
図14(a〜d)のそれぞれでは、障害物は60ミクロン断面寸法の正方形であった。(a)ではチャンネルの中央に障害物が配置され、従って比(a):(b)は1:1であった。(b)ではチャンネル幅は150ミクロン、比(a):(b)は1:2であった。(c)ではチャンネル幅は240ミクロン、(a):(b)の比は1:5であった。(d)では二層パターンが中心を外れた障害物に遭遇したとき、第二の滴はすべてさらに分散した。
【0092】
図15は、T字型接合部の近傍の伸長流に曝露することによる分散系のさらなる分散を例示する。臨界値より下の流速では個々の滴は分割されず、むしろ側方チャンネルのそれぞれに交互に流れる。滴がすべて等しいサイズの二つのさらに分散した小滴に分割される図15(a)に示すように、チャンネル幅に対する滴直径の任意の所定の比に対して、それより上で滴が分割される臨界流速がある。さらに分散した小滴の相対サイズは側方チャンネルの流れ抵抗によって制御することができ、さらに横方向チャンネルの流れ抵抗は長さおよび断面積の関数である。図15(b)および(c)は二つの側方チャンネルが1:1から増大して偏って行く長さの比を有する設計を示す。層流チャンネル流の流れ抵抗はチャンネル長に比例する。流れ抵抗によって相対的な体積流速が決まるので、横方向チャンネル、滴の体積は長さ比によっても変化する。流れ抵抗はフローチャンネルの相対的な長さによって制御できるだけでなく、圧力駆動バルブを用いることもできる。
【0093】
図16は幾何学的に調節されたT字型接合部を用いて、大きなセグメントの分散相をチャンネル断面積と同等なサイズのより小さなさらに分散した小滴の生成に順次分割する利用法を示す。詳しくは、単一の入口(部分(a)の上部)で大きな体積の分散媒中の分散相が送達される。分散媒に対する分散相の比は大きく、少なくとも4:1である。最初のT字接合部で分散相は最初の入口を通って送達されたものの約半分の大きさの体積のセグメントに分割される。最初のT字接合部からの出口のそれぞれが別のT字型接合部分のための入口として使用され、さらに二代のT字接合部を通った後、その結果できた八つの出口が、分散媒中に高度に分散した小滴を含む単一の集合または製品チャンネルに再び結合される(図16(b))。
【0094】
本明細書中には示さず詳細に説明もしなかった補助構成要素が本発明を実体化する上で有用であることが当業者には明らかであろう。たとえばさまざまな流体の送達源、本明細書中に示すチャンネルに送達される際にこれらの流体の圧力および/または流速を制御する手段などである。当業者は本明細書中で説明した機能を実施し、および/または結果または特長を得るさまざまなその他の手段および構造を容易に想到し、そのような変化形または変更形はそれぞれ本発明の範囲内にあると思料される。さらに一般的には、本明細書中で説明したすべてのパラメータ、寸法、物質、および構成は例を示すためのものであり、実際のパラメータ、寸法、物質および構成が本発明の教示を使用する特定の用途に依存することは当業者には自明であろう。単なる慣用的な実験操作を用いて、当業者は本明細書中に説明した本発明の特定の実施形態に等価な多くのものを認識し、あるいは確かめることができよう。したがってこれまでに説明した実施形態は例を示すためにだけ提示したものであり、本発明は添付の請求項および請求項への等価物の範囲内で、具体的に説明したものとは異なった方法で実施されることがあることが理解される。本発明は本明細書中で説明した個々の機能、システム、物質および/または方法を目的とする。さらに、そのような機能、システム、物質および/または方法の二つの以上の任意の組合せはそのような機能、システム、物質および/または方法が相互に矛盾しないなら、本発明の範囲に含まれる。
【0095】
請求項(ならびに上記明細書)で「を備える(comprising)」、「を含む(including)」、「を保持する(carrying)」、「を有する(having)」、「を含有する(containing)」、「を包含する(involving)」、「で構成される(conposed of)」、「で製造される(made of)」および「で作製される(formed of)」などのようなすべての移行句は開放形すなわち、含むが限定されない、を意味すると理解される。米国特許庁特許審査基準の2111.03節に示されるように、移行句「からなる(comsisting of)」および「基本的にからなる(comsisting essentially of)」だけがそれぞれ閉鎖形または半閉鎖形の移行句である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−75927(P2010−75927A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−265751(P2009−265751)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【分割の表示】特願2004−549845(P2004−549845)の分割
【原出願日】平成15年6月30日(2003.6.30)
【出願人】(502072134)プレジデント アンド フェロウズ オブ ハーバード カレッジ (92)
【氏名又は名称原語表記】President and Fellows of Harvard College
【出願人】(506222292)ザ ガバニング カウンシル オブ ザ ユニバーシティ オブ トロント (1)
【Fターム(参考)】