説明

流体分注デバイス

【課題】流体分注装置の改良および/または代替的構成、特に、使い捨て可能な、単用の流体取り扱い構成要素を実施するものを提供すること。
【解決手段】流体を流体供給源から入れ物に分注するのに適切な、流体分注デバイスであって、可撓性の流体タンクが、流体供給源と入れ物の間に位置し、蠕動ポンプを使用して、前記流体を可撓性の流体タンクから供給し分注するデバイスを開示する。可撓性の流体タンクの流体レベルが電子的に監視され、データがいずれかまたは両方のポンプに送信されて、デバイスの動作を制御する。この可撓性の流体タンクは、ある種の連結導管とともに、使い捨ての、簡単に取り付けることのできる、単用ユニットとして構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2003年11月20日出願の米国仮特許出願第60/523,625号の特典を主張する。
【0002】
一般に、本発明は、流体分注デバイスを対象とし、詳細には流体蠕動ポンピング機構に電子的に連係された「単用(single−use)」可撓性流体タンクを組み込む流体分注デバイスを対象とする。
【背景技術】
【0003】
瓶充填用の、数多くのタイプの流体分注装置が存在する。広く普及している流体分注装置の1つのタイプとして、容積式フィラ(positive displacement filler)がある。容積式フィラは一般に、分注中の流体に接触し、それを変位させる可動部品を含む。例えば、1つのタイプの容積式フィラは、ピストンとシリンダの構成を使用する。このタイプの容積式フィラでは、ピストンの後方移動が、流体を入口からシリンダ内に引き込み、ピストンの前方移動が、流体を出口から放出する。他のタイプの容積式フィラは、流体を移動させるために回転ポンプを使用する。
【0004】
容積式ポンプは、2つの理由によって米国で広く普及している。第一に、容積式ポンプは、比較的高速度で動作して、毎分600本もの瓶に充填することができる。さらに、容積式ポンプは、最大約±0.5%まで正確である。
【0005】
容積式フィラは広く普及しているが、それでもなお欠点を有する。容積式フィラの1つの欠点は、流体が可動部品と接触することである。可動部品が磨耗するにつれて、粒子状物質が流体に進入して、粒子汚染を引き起こす。程度がひどい場合、粒子汚染は、製品を使用不可能にしてしまう場合がある。他の欠点には、流体と接触する可動部品を洗浄し、殺菌する上での難点が含まれる。容積式ポンプでは、ピストンとシリンダなどの部品同士間のクリティカルな公差のために、分解せずに効果的な洗浄を行うことが不可能になる。分解は時間が掛かるだけでなく、再組み立て中に部品が取り扱われるとき生物学的汚染を招く可能性がある。
【0006】
他のタイプの流体分注装置として、時間/圧力フィラがある。一般的な時間/圧力フィラは、比較的一定した圧力で維持される流体タンクを含む。流体は、タンクから圧縮可能吐出管を経て分注される。吐出管を締め付け、折りたたむピンチタイプの弁によって、流体の流れが遮断される。吐出管を所定時間開放することによって、所定体積の流体が分注される。流体タンク内の圧力が一定に維持されている場合、サイクルが繰り返される毎に均等な量の流体が分注されることになる。
【0007】
他のタイプの流体分注装置、即ち容量流体分注装置が、米国特許第5,090,594号明細書に示されている。容量流体分注装置は、計量カップまたは計量充填管内で所定体積の流体を測定し、その後その流体が入れ物の中に分注される。容量フィラは、容積式フィラよりも速度が低いものの、高精度であり、微生物汚染および粒子汚染の問題をより良好に回避する。容量フィラは、時間/圧力フィラと同様、比較的一定した圧力を前提にしている。
【0008】
他のタイプの流体分注装置が、1996年1月2日にKeyesおよびその他に対して発行された米国特許第5,480,063号明細書に記載されている。Keyesおよびその他は、分注中の流体と接触する可動部品を有さない装置を記載している。この流体分注装置は、分注する流体を含む流体チャンバと、その流体チャンバに連通可能に連結された充填管とを含む。充填管は、流体タンクを備えた回路を形成する。動作中、流体がチャンバから充填管内へ移送される。充填管の流体レベルが所定の高さに達すると、充填が終了され、流体が、充填管から容器に分注される。1997年10月28日にKeyesおよびその他に対して発行された米国特許第5,680,960号明細書も参照されたい。
【0009】
上記の技術で実施されている手法にもかかわらず、流体分注装置の改良および/または代替的構成、特に、使い捨て可能な、単用の流体取り扱い構成要素を実施するものが、引き続き必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第5,090,594号明細書
【特許文献2】米国特許第5,480,063号明細書
【特許文献3】米国特許第5,680,960号明細書
【特許文献4】米国特許第2,909,125号明細書
【特許文献5】米国特許第5,709,539号明細書
【特許文献6】米国特許第6,062,829号明細書
【特許文献7】米国特許第2,412,397号明細書
【特許文献8】米国特許第5,165,873号明細書
【特許文献9】米国特許第5,980,490号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記の必要に応えて、本発明は、それぞれ供給側蠕動ポンプ40と分注側蠕動ポンプ50によって、流体が「単用」可撓性流体タンク60に送られ、そこから分注される流体分注デバイス10を提供する。
【0012】
可撓性の流体タンク60の流体レベルを検出するために、感知手段12が使用される。電子制御装置90が、感知手段と、蠕動ポンプ40および50のいずれか一方または両方とに、信号を送信し、それらから信号を受信する。前記信号に担持された情報は、電子制御装置90によって処理され、適切な信号がこれら(およびおそらくは他)のデバイスの構成要素に送られ、それによって流体分注を行うのを制御する。
【0013】
特定の実施形態では、流体分注デバイスは、流体入口および流体出口を有する可撓性の流体タンクと、流体入口に連結された供給側導管と、流体出口に連結された分注側導管と、可撓性の流体タンクに隣接して配置され、可撓性の流体タンクの流体レベルを検出し、それについてのデータを送信することが可能な感知手段と、供給側導管に係合された供給側蠕動ポンプと、分注側導管に係合された分注側蠕動ポンプと、前記感知手段から受け取られたデータに基づいて、供給側蠕動ポンプおよび/または分注側蠕動ポンプを制御することが可能な電子制御装置とを備える。
【0014】
上記に鑑みて、本発明の主な目的は、蠕動ポンプを使用して、可撓性の流体タンクに流体を供給し、そこから分注する流体分注デバイスを提供することにある。
【0015】
本発明の他の主な目的は、蠕動ポンプを使用して、可撓性の流体タンクに流体を供給し、そこから分注する流体分注デバイスであって、前記可撓性の流体タンクが、使用中前記ポンプに係合される単用の使い捨て可能なユニットの一部であるデバイスを提供することにある。
【0016】
本発明の他の目的は、蠕動ポンプを使用して、可撓性の流体タンクに流体を供給し、そこから分注する流体分注デバイスであって、前記蠕動ポンプの動作が、前記可撓性の流体タンクから電子的に感知された流体レベルのデータに基づいて制御されるデバイスを提供することにある。
【0017】
本発明の他の目的が、添付図面と併せて検討すれば、以下の詳しい記載から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の「単一口」の実施形態による流体分注デバイス10を概略的に示す図である。
【図2】本発明の「多数口」の実施形態による流体分注デバイス10を概略的に示す図である。
【図3a】回転蠕動ポンプのある種の動作特徴を概略的に示す図である。
【図3b】リニア蠕動ポンプのある種の動作特徴を概略的に示す図である。
【図4】光学流体レベル感知手段14、14、16を概略的に示す図であり、前記手段は、流体分注デバイスの実施形態に組み込むのに適切である。
【図5】電子的流体レベル感知手段18を概略的に示す図であり、前記手段は、流体分注デバイスの実施形態に組み込むのに適切である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1を参照すると、本発明は、流体供給源20から入れ物30に分注される流体に使用することのできる流体分注デバイス10を提供する。この流体分注デバイスは、流体入口62と流体出口64を有する可撓性の流体タンク60を含む。「供給側」導管70と「分注側」導管80が、それぞれ、可撓性の流体タンク60の流体入口62と流体出口64に連結され、供給側導管は、前記流体供給源20に連結可能である。各導管それぞれは、供給側蠕動ポンプ40と分注側蠕動ポンプ50のそれぞれに係合され、または係合することができる。感知手段12が可撓性の流体タンク60に隣接して配置されて、流体レベルの検出を可能にし、そのデータを送信し、または他の方法で電子的に提供する。電子制御装置90が設けられて、前記データを受け取り、それに基づいて、供給側の蠕動ポンプ40と分注側の蠕動ポンプ50のいずれか一方または両方の動作を制御する。
【0020】
ここに示す可撓性の流体タンク60は、少なくとも流体入口62と流体出口64を備え、その流体入口と流体出口は、それぞれ、流体を流体タンク内に導入し、そこから放出するのに適切な大きさ、場所および構造を有する。流体入口62は一般に、可撓性の流体タンク60の上半分、好ましくは所定の流体充填最大レベルよりも上に位置する。流体出口64は一般に、可撓性の流体タンクの下半分、好ましくは、最適なおよび/または本質的に完全な流体の排出を可能にする区域に位置する。
【0021】
可撓性の流体タンク60は、いわゆる「サージタンク」−より大きな容積の流体供給容器と分注口の間の工業用流体分注器でしばしば使用される堅固な容器に匹敵する機能性を提供する。それとは関係なく、可撓性の流体タンク60も、堅固なサージタンクの能力を超えた特徴および品質の、流体圧力制御を提供すると同時に、単用の使い捨て処理できるものにしやすい構造を有する。こうした線に沿って、可撓性の流体タンク60の相対的な寸法および場所の選択は、流体分注デバイス10内に取り付けられたとき、上流側と下流側の流体圧力の状態のいずれにも有利に作用し、それによって速く正確な流体分注を達成できるように行われる。
【0022】
製造コスト縮小に有利なように、可撓性の流体タンク60は、実質的に一体構造であり、最小限の数の組立て部品、継ぎ目、溶接部、および統合された下位構成要素しか有さないことが好ましい。現在の好ましいタンク60は、耐久性のある単一層構造の袋である。
【0023】
可撓性流体タンク60の「柔可撓性」は、様々な用途で異なり、予想される外部圧力、分注された流体試料の流動学的特性、実施された任意の分注側導管のマニホールドアセンブリの構成および内部容積などによって影響を受ける。流体の化学的特性が、可撓性の流体タンクの製造に使用することのできる材料の種類に影響を与えることが考えられ、例えば、ある種の流体は、可撓性度の低い、耐久性のある材料を必要とする場合がある。それとは関係なく、耐久性と柔可撓性のバランスは、当業者には感じられる。
【0024】
好ましい実践例では、可撓性の流体タンク60は、供給側導管70および分注側導管80と構造を成して結合されて、処理可能な単用の「カートリッジ」(「消耗品」と比較)を形成するが、これは、使用前に、流体ろ過デバイス10の固定された他の「ハードウェア」構成要素の中に簡単に取り付けることができる。供給側導管70は、可撓性の流体タンク60に、その流体入口62で取り付けられる。分注側導管80は、可撓性の流体タンク60に、その流体出口64で取り付けられる。必要な場合、(ここに示さない)ろ過要素を、供給側導管内に、供給側蠕動ポンプ40用に確保された場所より上流側または下流側の場所で統合することができる。
【0025】
導管70および80の構造に関しては、流体が、蠕動ポンプ40および50によって導管を通って順次「圧搾される」ことを可能にするほど、導管70および80が充分に可撓性であり、しなやかであり、かつ/または圧縮しやすいことを除いては、それらの構造には特定の制限はない。流体分注デバイス10の好ましい実施形態では、供給側導管70と分注側80の両方共が、しなやかな、実質的に生物学的に不活性な、約0.100インチ(0.254cm)の内径を有する合成ポリマー管を備える。導管70と導管80の両方が、可撓性の流体タンク60に統合、融合、溶接、または他の方法で恒久的に連結されることが好ましい。
【0026】
「単一口」の分注導管を構築することの別法として、流体分注デバイス10は、分注側導管80を複数の枝路80a、80b、80cに分割するマニホールドアセンブリ68を使用することができる。流れを制御するために、導管の各枝路には、それぞれの蠕動ポンプ50a、50b、50cが設けられる。別法として、単一の蠕動ポンプを分注側導管80に係合させてから、マニホールドアセンブリ68によってその分岐を行い、各枝路80a、80b、80cそれぞれを通る流れに対する制御を、それに係合された電子制御可能な(ここでは示さない)ピンチ弁を使用することによって可能にすることができる。前者の構造(即ち多数ポンプ)が好ましいのは、弁とポンプの活動化と非活動化の潜在的に複雑な同期化が回避できる限りにおいてである。
【0027】
製薬用途および他の無菌の用途では、可撓性の流体タンク60から、例えば隔膜で蓋をしたガラス瓶または類似の入れ物の中への無菌の流体分注を可能にするために、分注側導管80の排出端部(即ち「口(head)」)には、例えば(ここでは示さない)密閉された注射針を取り付けることが好ましい。
【0028】
可撓性の流体タンクと、導管70および80との適切なポリマー材料の例には、ポリカーボネート、ポリエステル、ナイロン、PTFE樹脂および他のフッ素重合体、アクリル樹脂、メタクリル樹脂およびコポリマー、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリル−スルホン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリ塩化ビニル、ABS、およびその混和物および混合物、ポリウレタン、熱硬化性ポリマー、ポリオレフィン(低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超大分子量ポリエチレンおよびそのコポリマー等)、ポリプロピレンおよびそのコポリマー、メタロセン生成ポリオレフィンが含まれるが、以上に限定される訳ではない。
【0029】
本発明の装置で流体の分注を行う際、適切な内部圧力条件を維持することが重要である。流体が可撓性の流体タンクに出入りするにつれて、その中の圧力は、制御されない場合、変動する可能性があり、そのために分注体積の不正確さをもたらし、それが、例えば分注される製品が正確な用量となるべき医薬品となる場合などは、容認不可能となる。本発明では、アセンブリ全体の常圧を維持する気体ゲート制御手段を取り付けることによって、適切な内部圧条件を促進することができる。
【0030】
ゲート制御手段の構造、場所および構成は、可撓性流体タンク60の対象用途、ならびにその内部寸法および分注側導管口の数などの構造などの要因に応じて変更される。しかし2つの主要な実施形態として、ベントフィルタアセンブリおよび圧力起動弁がある。これらの2つの機構のうち、ベントフィルタアセンブリが−実施コストが潜在的に低いことを考慮すると−特に好まれる。
【0031】
ベントフィルタアセンブリに関して述べると、その代表的な実施形態は、可撓性の流体タンク60に、予想最高流体レベルよりも上に鋳型成形され、または取り付けられた構造物を備え、それは、通路を間に備えた入口と出口、ならびに前記通路を断面的に分割する膜またはフィルタを形成する。
【0032】
以下は本発明の限定ではないが、医薬品流体の分注に関して、可撓性の流体タンク60の総内部容積は、現在実施されているところでは、約1.5リットルから約10リットルの範囲である。このような容積で、供給入口、任意選択のベント出口、および流体出力の寸法は以下の通りである。即ち、供給入口の直径は、約0.25インチから約0.75インチ(約0.635cmから約1.90cm)にわたり、ベント出口の直径は、約0.125インチから約0.75インチ(約0.3175cmから約1.90cm)にわたり、流体出口の直径は、約0.125インチから約0.75インチ(約0.3175cmから約1.90cm)にわたる。より大きな体積については−特に粘性流体を含むとき−これらの寸法は実質的に大きくなる。
【0033】
ここに示すように、一対の蠕動ポンプ40と蠕動ポンプ50は、それぞれ、供給側導管70と分注側導管に係合される。動作中、供給側蠕動ポンプ40は、流体供給源20から可撓性流体タンク60への流体試料の流れを可能にする蠕動押し付け力を提供する。同様に、分注側蠕動ポンプ50は、可撓性の流体タンク60から最終的に流体分注デバイス10の外側へ、適切な入れ物30の中に至る液体試料の流れを可能にする蠕動押し付け力を提供する。ポンプ40とポンプ50の両方が、無菌の蠕動流れを可能にし、いずれの導管の分断物の取り付けも必要としない。導管を通る流体試料の流れは、外部の周囲環境およびポンプ機構から物理的に隔離されたままとなる。
【0034】
蠕動ポンプ40と蠕動ポンプ50の、導管70と導管80に沿った配置は、本発明を実践するのに絶対的に重要ではない。両方とも大よそ「真ん中」の位置に配置されることが考えられるが、本発明の企図する他の実施形態では、ポンプ40とポンプ50の位置が変化する。ある種の実施形態は、ポンプをそれぞれの導管の厳密に真ん中に配置するのに有利であり、実施形態によっては、一方(または両方)を可撓性の流体タンクのより近くに配置する場合があり、より離れたところに配置するものもある。ポンプの配置に影響する要因として、流体供給源20の容積容量、可撓性の流体タンク60の容積容量、導管70および導管80の長さおよび直径、対象となる流体試料の粘性および成分、選択された蠕動ポンプ40および蠕動ポンプ50の動作範囲、ならびに/あるいは分注デバイス10の所望の正確さおよび/または分注速度があるが、以上に限定されない。
【0035】
蠕動ポンプ40および蠕動ポンプ50の特定の機械構造も−それらの配置と同様に−本発明の実践に重要ではない。それとは関係なく、図3A、3Bに示すように、有用な蠕動ポンプは一般に、ハウジング42内に配設された、通路52および蠕動締め付け手段45を備える。動作中、導管80(または導管70)は、通路52内に係合される。次いで蠕動締め付け手段45が活動化されて、導管80をその長さに沿って順次締め付けて、ルーメン82を波状運動で潰してゆき、その中の流体試料を流路Fに沿って順次変位させてゆく。
【0036】
蠕動ポンプは一般に、図3A、3Bにそれぞれ示す2つのタイプ、即ち、回転蠕動ポンプとリニア蠕動ポンプのうちの一方である。図3Aに示す回転蠕動ポンプでは、蠕動締め付け手段45が、円形状掃過運動または弓形状掃過運動で力を掛ける。特に、弓形通路52に対して導管80を締め付ける回転ドラムの「指」によって、締め付け力が掛けられる。図3Bで示すリニア蠕動ポンプでは、蠕動締め付け手段45が、一連の断続的な直線運動で力を掛ける。特に、締め付け力は、−しばしばカムシャフトに配設される−一連の直線往復指によって掛けられるが、それらは、導管80の遂次的部分と直交方向に面し、それらを締め付ける。
【0037】
本発明の流体分注デバイスを構築する際、供給側蠕動ポンプ40と分注側蠕動ポンプ50は、タイプおよび/または能力の点で同じであることも、異なることもできる。例えば、一方がリニア式で他方が回転式であることができる。あるいはその両方がリニア式または回転式であることができる。あるいは一方が他方より正確に作動することもできる。それとは関係なく、現在好ましいデバイスでは、構築と容易な動作の両方を促進するために、ポンプ40とポンプ50両方が同一である。
【0038】
回転蠕動ポンプの詳細および代替実施形態が、例えば1959年10月20日にP.J.Danielsに対して発行された米国特許第2,909,125号明細書、1998年1月20日にM.R.Hammerに対して発行された米国特許第5,709,539号明細書、および2000年5月16日にJ.F.Ognierに対して発行された米国特許第6,062,829号明細書にある。リニア蠕動ポンプの詳細および代替実施形態が、例えば1946年12月10日にL.E.Harperに対して発行された米国特許第2,412,397号明細書、1992年11月24日にR.S.Meijerに対して発行された米国特許第5,165,873号明細書、および1990年11月9日にA.Tsoukalisに対して発行された米国特許第5,980,490号明細書にある。
【0039】
特に分注側蠕動ポンプ50の構造および/または選択に関して、非活動であるときポンプを通る流体試料の流れを停止するポンプの能力に、比較的大きな配慮が向けられる。この点で、本発明の好ましい実施形態では、ポンプ50と導管80の出口との間の分注側導管80に、補助的排出弁(ピンチ弁など)または補助的排出ゲートは使用されない。したがって流体分注デバイスを出て入れ物30へと至る液体試料の流れは、−活動および非活動の試料流れ速度と体積に関して−もっぱら分注側蠕動ポンプ50によって変化可能に制御される。適切に液密の蠕動ポンプを設ければ、そのような構成は、構築、維持、および動作を促進すると同時に、なお、ほとんどまたは全く滴下を起こさずに良好な流体を提供する。
【0040】
ここに示すように、可撓性の流体タンク60に含まれる流体のレベルまたはその体積の検出を可能にするように、感知手段12がそこに隣接して、取り付けられるかまたは他の方法で設けられる。感知手段は、光学的に、超音波で、電子的に、または重量によって検出を実施することができる。そのような手段による流体体積の検出は知られており、必要に応じて組み込むことができる。一例として、図4および図5が、光学感知手段および電子的感知手段の代表的な実施形態の概略を提供する。
【0041】
可撓性の流体タンク60に直接焦点を合わせた光学感知手段を使用することが可能であるが、前記タンクの可撓性度−および流体の分注中その形状(したがって内部体積)が変化する可能性−によって、間接的な手法を取ることが有利であると考えられる。そのような目的に向けて、図4で示すように、光学感知手段は、可撓性の流体タンク60に連結し、「流体連通」する側管16と、前記側管16に沿ってある種の使用者が定義可能な流体の頂レベルおよび底レベルに達したことをそれぞれ検出するように位置する複数の光学検出器14および14とを備えるように構成される。光学検出器14および14は、側管16の水レベルを明示する電子信号をもたらし、それが可撓性の流体タンク60の流体レベルと相互に関連する。
【0042】
ある種の用途では、可撓性の流体タンク60の流体の体積が、本発明の実践で、特に蠕動ポンプ40および50の動作で考慮の鍵となる。タンク60の流体体積が大きくなると、そこに流体を汲み込むために、それに対応したより大きなポンピング力が、供給側の蠕動ポンプ40によって掛けられる必要がある。同様に、流体の体積が大きくなると、それに対応したより大きな流体圧力が下流に、分注側蠕動ポンプ50に対して掛かる。
【0043】
代表的な光学検出器は一般に、単一ユニットに組み合わされ、または近傍で対に組み合わされた光源と光受け取り器を備える。光源は光信号(コリメート光または干渉性光など)を供給し、これが前記側管16に入射した後、前記光受け取り器で終端する−直線または他の形の−光経路に沿って伝播する。光受け取り器には、そこに当たる光に対応し、それに反応した電子信号をもたらす光受容体(電化結合デバイスなど)が設けられる。
【0044】
上記のように、可撓性流体タンク60の流体レベルは、−光学流体レベル感知器52および54ではなく−電子的感知手段を使用して監視することもできる。電子的流体レベル感知手段を使用して、可撓性の流体タンク60から直接に、または側管16から間接的にタンクの流体レベルを測定することができる。
【0045】
電子流体感知手段の使用は、電気伝導性端末18(伝導性金属の薄片など)を、タンク60または側管16の外部表面に付けることを含む。電流が一方の端末から他方の端末に流れ、電気容量または抵抗などが測定され、信号が生成される。電気容量または抵抗の変化を、流体レベルの変化と相互に関連付けることができる。
【0046】
電気伝導性端末だけでは、電子流体レベル感知手段を使用可能にするのに充分ではない。電気伝導性端末は、エネルギー源と電子制御機構の両方に配線し、あるいは他の方法で連係または連結する必要があり、エネルギー源と電子制御機構は両方とも単一の下位構成要素内に統合することができる。エネルギー源は本質的に両方の端末から電流を駆動し、電子制御機構は−例えば電位差計または同様の電子感知器をそこに組み込むことによって−前記電流の電気容量を測定し、それに基づいて該当の弁および/またはポンプを選択的に開けかつ/または閉める。
【0047】
電気容量の検出を可能にする電子回路は、単用の使い捨て性に眼目を置いて構成されるべきである。したがって、例えば可撓性の流体タンク60の消耗可能な実施形態は、端末と、場合によって何本かのリードおよび電線とを含むことができ、それらは、流体ろ過デバイス10の非使い捨てのハードウェア構成要素への適切な専用ソケット内に差し込まれ、かつ/または接続される。
【0048】
特定の実施形態では、電子端末は、側管16の側壁に恒久的に取り付けられた幅の狭い2つの銅片を備える。銅片は、管の外側で互いに対向して、その「作動」長さ全体を横断して取り付けられる。電気容量の検出は、2つの金属片の間の空間を横切ってパルス電流を渡すことによって実施される。金属片を分離する材料の電気容量が測定される。空気が充填された空の管の電気容量と、流体が充填されたもののそれには大きな差異があるので、流体の体積を、それが側管を上り下りするにつれて連続して監視することができる。
【0049】
充填管アセンブリの外側表面への銅片の配置に対して代替方法が存在する。例えば銅片を、以下のように取り付けることができる。即ち、一方を(例えば底部分に向けて)側管の外側に取り付け、2番目のものを管アセンブリの内側で壁に接触せずに吊るして配置する。この実施形態は、管の内壁に活発に“密着する”傾向のある高粘度の流体に特に適している。内側に取り付けられた端末と側管アセンブリ内に充填された流体との間の、望ましくない化学反応を防止するために、内側に取り付けられる端末は、化学的に非反応性のポリマー材料で被覆され、あるいは他の適切な障壁を用いて他の方法で保護されまたは絶縁されることが好ましい。
【0050】
主流体分注装置の動作では、充填管アセンブリの電気容量が連続的に測定され、それによって、ある種の最低体積と最高体積を決定するのではなく、管内の体積が連続的に決定されるようになる。キャパシタンス感知器が流体を連続的に測定するので、単なる比例制御ではなく、システムのいわゆる「比例積分微分」(PID)制御を使用することができ、そのようにして分注の精度および繰り返し性を向上させる。
【0051】
ここに示すように、電子制御装置90を使用して、供給側蠕動ポンプ40および/または分注側蠕動ポンプ50の動作を、流体レベル感知手段12によってもたらされたデータ(信号など)に、少なくとも部分的に直接または間接的に基づいて制御することができる。一実施形態では、本構成のように、電子制御装置90は、流体レベル感知手段12によってもたらされたデータに基づいて、供給側蠕動ポンプ40の動作をもっぱら制御する。他の実施形態では、ポンプ40とポンプ50の両方が、電子制御装置90によって制御される。
【0052】
電子制御装置90は、少なくとも感知手段12、ならびに蠕動ポンプ40と蠕動ポンプ50の一方または両方からデータを受け取り、処理し、それらに供給する能力があるべきである。ピンチ弁、攪拌器、熱感知器、データ記録および印刷デバイス、システム表示器などのような、存在する可能性のある他のデバイス構成要素にも類似の機能を設けることができる。
【0053】
電子制御装置90は、回路、配線、メモリモジュール、電源、入力ポートおよび出力ポート、ユーザインターフェース、プロセッサおよびコプロセッサ、および他の良く知られた電子構成要素を備えて、電子的接続性と、サービスを受けるデバイス構成要素の制御を実行することができる。この電子制御装置は、単一の集中化された電子パッケージ(専用のノート型コンピュータまたは多機能型プリント回路基板など)、あるいは分離された中央処理ユニットへと配線または他の方法でネットワーク化された分散型下位構成要素のネットワーク(複数の個別の特定構成要素PCBなど)を備えることができる。
【0054】
分散型電子制御装置システムの特定の例は、工業用のプログラム可能なロジック制御装置(即ち「PLC」)に連係されたコンピュータを含み、プログラム可能なロジック制御装置それ自体は、電子制御の感知器およびポンプに連係される。当業者に知られているように、プログラム可能なロジック制御装置は、本質的に、電子データを電子的に受け取り、処理し、伝送する特定デバイスのコンピュータボードまたは構成要素である。プログラム可能なロジック制御装置は、「生」データで動作し、それ用の埋め込み式動作ソフトウェアを有する。コンピュータを、プログラム可能なロジック制御装置と通信するように、またそれをある程度制御するように構成することができ、より高いレベルの動作がコンピュータによって実施される。プログラム可能なロジック制御装置を使用することは、中央デバイスコンピュータのより簡単な交換または置換えの点で、また多様な中からのその選択を可能にするという点でより有利である。
【0055】
本発明を特定の実施形態を参照して記載したが、本発明は、本明細書に開示し、かつ/または図面に示す特定の構造および方法に限定されず特許請求の範囲内の任意の修正形態または均等物も含むものである。
【符号の説明】
【0056】
10 流体分注デバイス
14 光学検出器
16 側管
18 電気伝導性端末
12 感知手段
20 流体供給源
30 入れ物
40 供給側蠕動ポンプ
42 ハウジング
45 締め付け手段
52 通路
50 分注側蠕動ポンプ
60 可撓性の流体タンク
62 流体入口
64 流体出口
70 供給側導管
80 分注側導管
82 ルーメン
90 電子制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体供給源から入れ物に分注するのに適切な流体分注デバイスであって、
流体入口と流体出口を有する可撓性の流体タンクと、
可撓性の流体タンクの流体入口に連結された供給側導管と、
可撓性の流体タンクの流体出口に連結された分注側導管と、
可撓性の流体タンクに近接して配置され、可撓性の流体タンクの流体レベルを検出し、そのデータを送信することが可能な感知手段と、
供給側導管に係合された供給側蠕動ポンプと、
分注側導管に係合された分注側蠕動ポンプと、
供給側蠕動ポンプおよび/または分注側蠕動ポンプを、前記感知手段から受け取られたデータに基づいて制御することが可能な電子制御装置とを備えるデバイス。
【請求項2】
供給側蠕動ポンプまたは分注側蠕動ポンプのいずれかまたは両方が、回転蠕動ポンプである請求項1に記載の流体分注デバイス。
【請求項3】
供給側蠕動ポンプまたは分注側蠕動ポンプのいずれかまたは両方が、リニア蠕動ポンプである請求項1に記載の流体分注デバイス。
【請求項4】
可撓性の流体タンクが、実質的に一体構造を有する請求項1に記載の流体分注デバイス。
【請求項5】
可撓性の流体タンクが単層構造の袋である請求項4に記載の流体分注デバイス。
【請求項6】
前記分注側導管を複数の枝路に区分するマニホールドアセンブリをさらに備え、各枝路は、それ自体の前記分注側蠕動ポンプが設けられ、それによって各枝路からの流れが、各前記分注側蠕動ポンプによって個別に可能になる請求項1に記載の流体分注デバイス。
【請求項7】
マニホールドアセンブリと複数の電子制御可能なピンチ弁とをさらに備え、マニホールドアセンブリが、前記分注側導管を複数の枝路に区分し、前記分注側蠕動ポンプが前記分注側導管に係合されてからマニホールドアセンブリによって導管が区分され、前記ピンチ弁が前記枝路に係合されて、そこを通る流れの制御を可能にする請求項1に記載の流体分注デバイス。
【請求項8】
蠕動ポンプ機構と取替え可能な可撓性の流体タンクを係合する手段とを備える流体分注デバイスであって、(a)前記可撓性の流体タンクが流体入口と流体出口を有し、流体入口に供給側導管が連結され、流体出口に分注側導管が連結され、(b)前記可撓性の流体タンクへの流体の出入りが、少なくとも部分的に前記蠕動ポンプ機構によって駆動されるデバイス。
【請求項9】
前記蠕動ポンプ機構が、供給側導管に係合される供給側蠕動ポンプと、分注側導管に係合される分注側蠕動ポンプとを備える請求項8に記載の流体分注デバイス。
【請求項10】
予め殺菌された可撓性の流体タンクが、前記流体分注デバイス内に係合される請求項8に記載の流体分注デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−234664(P2009−234664A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−161376(P2009−161376)
【出願日】平成21年7月8日(2009.7.8)
【分割の表示】特願2004−330074(P2004−330074)の分割
【原出願日】平成16年11月15日(2004.11.15)
【出願人】(390019585)ミリポア・コーポレイション (212)
【氏名又は名称原語表記】MILLIPORE CORPORATION
【Fターム(参考)】