説明

流体加熱装置

【課題】 内部に流体を通流してローラなどの熱処理装置を所定の温度に加熱するための流体の加熱効率を高め、流体や発熱体のオーバーヒートをなくすることのできる流体加熱装置を提供すること。
【解決手段】 鉄心13に巻回されたコイル12を囲繞し、コイル12に印加する電圧で発熱する筒状の発熱体11であって、前記発熱体11の肉厚部に、加熱する流体を通流する複数の長手方向に伸びる貫通孔11aと、筒状の発熱体11の肉厚内に長手方向に伸び、内部に気液二相の熱媒体を封入する密閉室11cを形成し、発熱体11の発熱を、貫通孔11aを通流する流体に伝達する。従って、流体と発熱体との伝熱面積が大きくなり、また、密閉室11c内の気液二相の熱媒体の潜熱移動により筒状の発熱体11が均温となり、筒状の発熱体11の平均温度を高く設定することができ、高温での使用および高効率で加熱することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ローラなどの熱処理装置に熱を供給する流体を加熱する流体加熱装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
樹脂フィルムなどの処理物をローラに掛け、ローラに当接して通過する間に処理物を所定の温度に加熱したり、高温の処理物を所定の温度にまで奪熱することが行われている。加熱処理する場合、ローラは加熱処理に必要な温度に高められ、奪熱処理する場合、処理物からの奪熱作用によってローラ自体の温度が上昇するので、処理物の冷却に適応する温度までローラを冷却する。いずれの場合も熱をローラに移送する熱媒体を必要とし、その熱媒体として流体たとえば油が使用されている場合がある。
【0003】
図3はこのような熱媒体により加熱又は奪熱する場合の熱処理ローラ装置の概略構成を示すもので、図3において、1はローラ本体を構成するロールシェル、2は図示しないモータにより回転してロールシェルを回転する回転駆動軸、3は中子、4はロータリジョイント、5は貯油タンク、6は流体(熱媒体)、7は加熱装置、8はポンプ、9は温度センサ、10は電力制御回路である。ロールシェル1は円筒状をなし、その肉厚内にロールシェル1の軸方向と同方向に伸びる密閉室1aが複数形成されており、その各密閉室1a内に気液二相の熱媒体が封入されている。ロールシェル1の中空部には、中央部に媒体通流路3aを形成する貫通孔を設けた中子3が配置されている。
【0004】
加熱装置7は、加熱容器7aと線状の発熱ヒータ7bとにより構成され、加熱容器7a内の熱媒体6を発熱ヒータ7bで加熱する。加熱された熱媒体6は、ポンプ8の駆動によりロータリジョイント4を介してロールシェル1内へ送られ、中子3の中央部の媒体通流路3aおよび中子3の外周とロールシェル1の内周との間の媒体通流路3bを経てロータリジョイント4を介して 貯油タンク5に排出され、貯油タンク5内の熱媒体6は加熱装置7へ送られる。
【0005】
加熱装置7から導出された熱媒体の温度を温度センサ9で検出し、この検出信号に基づいて電力制御回路10を制御し発熱ヒータ7bに供給する電力を制御し、熱媒体6の温度を所定の温度に維持する。すなわち、所定の温度に加熱された熱媒体をロールシェル1内に通流させ、ロールシェル1を所定の温度に加熱し、その熱でロールシェル1の表面に当接した処理物を加熱処理する。
【特許文献1】特開2004−195888号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来のように線状の発熱ヒータによる流体の加熱では、流体と発熱ヒータの伝熱面積が小さいため、熱の伝達量が少なく流体の流量が低下すると、発熱ヒータと接触する流体の流速が低下し、流体が耐熱温度を越えてオーバーヒートする問題、また、流体の加熱応答性が遅いために発熱ヒータ自身もオーバーヒートを引き起こす問題があった。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、内部に流体を通流してローラなどの熱処理装置を所定の温度に加熱するための流体の加熱効率を高め、流体や発熱体のオーバーヒートをなくし、斯かる問題を解消する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、肉厚内に軸方向と同方向に伸びる複数の貫通孔が形成された中空円筒状の導電性筒と、前記筒の中空内部に配置された鉄心の外周に巻回されたコイルとを有し、前記コイルに印加する交流電圧により前記筒を発熱させ、前記筒の発熱により前記貫通孔に流れる流体を加熱してなることを主な特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、肉厚内に軸方向と同方向に伸びる複数の貫通孔が形成された中空円筒状の導電性筒全体が誘導または直接通電により加熱されるので、貫通孔を通流する流体と発熱体となる導電性筒との伝熱面積を大きくすることができ、流体の加熱効率が高くなり、流体の局部的加熱や発熱体の異常な加熱を避けることができる。すなわち、流体の耐熱温度以下で発熱体の加熱温度を設定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
内部に流体を通流してローラなどの熱処理装置を所定の温度に加熱するための流体の加熱効率を高め、流体や発熱体のオーバーヒートをなくす目的を、流体を通流する複数の貫通孔を形成した筒とし、その筒全体を発熱体とすることにより実現した。
【実施例1】
【0011】
図1は、本発明の実施例に係る流体加熱装置の構成を示す断面図、図2は図1に示す発熱体の斜視図である。図1および図2において、11は発熱体、12はコイル、13は鉄心である。発熱体11は、導電性金属からなる厚みのある中空円筒をなし、その中空内に鉄心13に巻回されたコイル12が挿入されており、コイル12に交流電圧を印加することにより筒状の発熱体11に電流が流れ、その電流で発熱する。
【0012】
筒状の発熱体11の肉厚部には、加熱する流体を通流する複数の長手方向に伸びる貫通孔11aと、図2に示すように冷却用の流体を通流する複数の長手方向に伸びる貫通孔11bが交互に形成されており、加熱する流体が貫通孔11aを通過する間に筒状の発熱体11の発熱で加熱される。なお、貫通孔11bは、加熱される流体の温度を下げる場合に水などの冷却用の流体を通流するためのものである。
【0013】
また、筒状の発熱体11の肉厚内には、図1に示すように長手方向に伸びる複数の密閉室11cが形成され、この密閉室11c内に気液二相の熱媒体が封入されている。この密閉室11cに気液二相の熱媒体を封入することにより、筒状の発熱体11全体が気液二相の熱媒体の潜熱移動で均温となり、筒状の発熱体11の平均温度を高く設定することができ、高温での使用および高効率で加熱することができる。
【0014】
たとえば、流体の耐熱限界温度が290℃とし、流体が流入する入口の流体の温度を180℃、出口の流体の温度を220℃とした場合、密閉室11cがなく気液二相の熱媒体の潜熱移動がないときには、筒状の発熱体11の入口付近の温度250度、出口付近の温度290℃となり、平均温度270℃となるが、この潜熱移動があるときには、入口および出口付近の温度を290度とすることができ、平均温度290℃と平均温度が上げられ、その分高効率で加熱することができる。
【0015】
なお、以上の流体加熱装置は、図3に示す熱処理ローラ装置の流体からなる熱媒体を加熱する加熱装置として好適であるが、本発明は、例えば加熱された流体を通流して加熱する加熱板の流体加熱装置としても適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例に係る流体加熱装置の構成を示す断面図である。
【図2】図1に示す発熱体の斜視図である。
【図3】従来の熱処理ローラ装置の構成図である。
【符号の説明】
【0017】
11 筒状の発熱体
11a 加熱する流体を通流する貫通孔
11b 冷却用の流体を通流する貫通孔
11c 気液二相の熱媒体を封入する密閉室
12 コイル
13 鉄心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肉厚内に軸方向と同方向に伸びる複数の貫通孔が形成された中空円筒状の導電性筒と、前記筒の中空内部に配置された鉄心の外周に巻回されたコイルとを有し、前記コイルに印加する交流電圧により前記筒を発熱させ、前記筒の発熱により前記貫通孔に流れる流体を加熱してなることを特徴とする流体加熱装置。
【請求項2】
筒の肉厚内部に軸方向と同方向に伸びる複数の密閉室を形成し、前記各密閉室に気液2相の熱媒体を封入してなることを特徴とする請求項1に記載の流体加熱装置。
【請求項3】
筒の発熱は誘導電流による発熱であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の流体加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−210260(P2007−210260A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−34697(P2006−34697)
【出願日】平成18年2月13日(2006.2.13)
【出願人】(000110158)トクデン株式会社 (91)
【Fターム(参考)】