説明

流体収納バッグ

【課題】流体の無菌充填を低コストに行うことができ、しかも、充填された流体の注出を、注出ヘッドを用いることなく行うことができる流体収納バッグを提供する。
【解決手段】口部材本体12の他端に周縁部の全周を溶着された第1シールフィルム15と、口部材本体12のフランジ形成端に周縁部の複数個所を仮溶着された第2シールフィルム16とからなる充填口部材11を、フランジ14をバッグ本体1に溶着して形成された充填口10と、流体の注出路23を形成する筒状部22内に注出路23を遮断する閉塞板25が一体に形成され、閉塞板25に、その所定の部分25aを切取って流体の流通口を開口させるための環状溝26が形成され、筒状部22内に閉塞板25の切取り部25aを切取る注出口開放摘み27が設けられた注出口部材21を、フランジ24をバッグ本体1に溶着して形成された注出口20とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、流体収納バッグに関する。
【背景技術】
【0002】
液状または粉粒状の飲食品や医薬品等の流体の収納バッグとしては、特許文献1〜4に記載されているようなものがある。
【0003】
特許文献1〜3に記載された流体収納バッグはそれぞれ、バッグ本体に、前記バッグ本体内への流体の充填口と前記バッグ本体内に充填された流体の注出口とを兼ねる充填/注出口を設けたものであり、前記充填/注出口は、流体の流通路を形成する筒状体の一端の外周にバッグ本体溶着用フランジが形成された口部材本体と、この口部材本体の他端に装着されたスクリューキャップ(特許文献1)または押込み型の弾性キャップ(特許文献2及び3)とからなる充填/注出口部材を、前記口部材本体を前記バッグ本体に設けられた口孔から前記バッグ本体外に突出させ、前記フランジの全周を前記バッグ本体の前記口孔の周囲に前記バッグ本体内側から溶着して形成されている。
【0004】
この流体収納バッグへの流体の充填は、前記充填/注出口からキャップを取外してバッグ本体内に流体を充填し、その後に前記充填/注出口に前記キャップを再装着する手順で行われており、また、バッグ内の流体の注出は、前記充填/注出口から前記スクリューキャップを取外すか、或いは、前記弾性キャップを、この弾性キャップに設けられた摘み部を横方向に押すか或いは引上げることにより弾性変形させ、前記注出口と前記弾性キャップとの間に、流体を流出させる隙間を生じさせて行われている。
【0005】
一方、特許文献4に記載された流体収納バッグは、バッグ本体に、前記バッグ本体内に流体を充填するための充填口と、前記バッグ本体内に充填された流体を注出するための注出口とを設けたものである。
【0006】
この流体収納バッグの充填口は、流体の充填路を形成する筒状体の一端の外周にバッグ本体溶着用フランジが形成された口部材本体と、この口部材本体の他端に、前記充填路の開口端を覆い、且つ周縁部の全周を前記口部材本体の端面に溶着して設けられた第1シールフィルムと、前記口部材本体のフランジ形成端に、前記充填路の開口端を覆い、且つ周縁部の複数個所を前記口部材本体の端面に仮溶着して設けられた第2シールフィルムとからなる充填口部材を、前記口部材本体を前記バッグ本体に設けられた充填口孔から前記バッグ本体外に突出させ、前記フランジの全周を前記バッグ本体の前記充填口孔の周囲に前記バッグ本体内側から溶着して形成されている。
【0007】
また、注出口は、流体の注出路を形成する筒状体の一端の外周にバッグ本体溶着用フランジが形成された口部材本体と、この口部材本体の両端にそれぞれ、前記充填路の開口端を覆い、且つ周縁部の全周を前記口部材本体の端面に溶着して設けられた第1と第2のシールフィルムとからなる注出口部材を、前記口部材本体を前記バッグ本体に設けられた注出口孔から前記バッグ本体外に突出させ、前記フランジの全周を前記バッグ本体の前記注出口孔の周囲に前記バッグ本体内側から溶着して形成されている。
【0008】
この流体収納バッグへの流体の充填は、前記充填口部材の口部材本体の外端(バッグ本体外に突出した端部)に、シールフィルム切り裂き手段を備えた充填ヘッドを係合させ、この充填ヘッドに滅菌流体を供給して前記充填ヘッド内及び前記充填口部材の第1シールフィルムの外面を滅菌した後、前記切り裂き手段により前記第1シールフィルムを切り裂き、その後に前記充填ヘッドに充填流体を供給してその流体を前記口部材本体内の充填路と、前記口部材本体の端面に周縁部の複数個所を仮溶着された第2シールフィルムの非溶着部と前記筒状部の端面との間の隙間とを通してバッグ本体内に注入し、前記バッグ本体内に所定量の流体を充填した後に、前記バッグ本体の充填口に対応する部分を、前記充填口が設けられた面とは反対側から加熱ヘッドにより押し潰して前記第2シールフィルムの周縁部を前記口部材本体の端面に押し付け、この第2シールフィルムの周縁部の全周を前記口部材本体の端面に溶着することにより前記充填口を前記第2シールフィルムによって封止し、その後に、前記加熱ヘッドを後退させ、前記充填ヘッドを切り離す手順で行われている。
【0009】
また、この流体収納バッグ内の流体の注出は、前記注出口部材の口部材本体の外端に、シールフィルム切り裂き手段を備えた注出ヘッドを係合させ、この注出ヘッドに滅菌流体を供給して前記注出ヘッド内及び前記充填口部材の第1シールフィルム(筒状部の外端のシールフィルム)の外面を滅菌した後に、前記切り裂き手段により前記第1と第2のシールフィルムを順次切り裂いて前記注出口部材の筒状部内の注出路を開放し、バッグ本体内の流体を、前記注出路及び前記注出ヘッドを通して流出させることにより行われている。
【特許文献1】特開2003−291991号公報
【特許文献2】特開2000−168704号公報
【特許文献3】特開2004−182277号公報
【特許文献4】特開2001−180698号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前記特許文献1〜3に記載された流体収納バッグは、流体の充填を、充填/注出口からキャップを取外してバッグ本体内に流体を充填し、その後に前記充填/注出口に前記キャップを再装着する手順で行うものであるため、充填作業中、つまり前記キャップを取外した後、前記キャップを再装着するまでの時間中に、外気が前記充填/注出口からバッグ本体内に入り込むおそれがある。
【0011】
そのため、この流体収納バッグに、流体を、空気中の雑菌を前記バッグ本体内入り込ませないようにして無菌で充填するには、前記キャップの取外しからバッグ本体内への流体の充填及び充填後のキャップの再装着までの作業を、チャンバ等の気密室内において、作業環境を無菌状態に保って行う必要がある。
【0012】
それに対して、前記特許文献4に記載された流体収納バッグは、流体の充填を、前記充填口部材の口部材本体の外端にシールフィルム切り裂き手段を備えた充填ヘッドを係合させ、その状態で、前記切り裂き部材により前記第1シールフィルムを切り裂いてバッグ本体内に流体を充填し、次いで前記充填口部材の第2シールフィルムの周縁部の全周を口部材本体の筒状部の端面に溶着した後に、前記充填ヘッドを切り離す手順で行うものであるため、充填作業中に、外気が前記充填口からバッグ本体内に入り込むことはなく、したがって、流体の無菌充填を、通常の清浄度の環境下で行うことができる。
【0013】
しかし、この流体収納バッグは、注出口を、前記口部材本体の両端にそれぞれ前記筒状部内の充填路の開口端を覆うシールフィルムを溶着した注出口部材により形成したものであるため、バッグ内の流体の注出を行うには、前記シールフィルムの切り裂き手段を備えた注出ヘッドと、前記注出ヘッドへの滅菌流体の供給装置が必要であり、また、前記注出口部材への前記注出ヘッドの当接に手間がかかるという問題をもっている。
【0014】
この発明は、流体の無菌充填を低コストに行うことができ、しかも、充填された流体の注出を、注出ヘッドを用いることなく簡単に行うことができる流体収納バッグを提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明の流体収納バッグは、
気密性を有するバッグ本体に、前記バッグ本体内に流体を充填するための充填口と、前記バッグ本体内に充填された流体を注出するための注出口とが設けられ、
前記充填口は、流体の充填路を形成する筒状体の一端の外周にバッグ本体溶着用フランジが形成された口部材本体と、この口部材本体の他端に、前記充填路の開口端を覆い、且つ周縁部の全周を前記口部材本体の端面に溶着して設けられ、前記バッグ本体内への流体の充填時に切り裂かれる第1シールフィルムと、前記口部材本体のフランジ形成端に、前記充填路の開口端を覆い、且つ周縁部の複数個所を前記口部材本体の端面に仮溶着して設けられ、前記バッグ本体内への流体の充填後に前記周縁部の全周を前記口部材本体の端面に溶着される第2シールフィルムとからなる充填口部材を、前記口部材本体を前記バッグ本体に設けられた充填口孔から前記バッグ本体外に突出させ、前記フランジの全周を前記バッグ本体の前記充填口孔の周囲に前記バッグ本体内側から溶着して形成され、
前記注出口は、流体の注出路を形成する筒状部の一端の外周にバッグ本体溶着用フランジが形成され、前記筒状部内に、前記注出路を気密状態に遮断する閉塞板が一体に形成されるとともに、前記閉塞板に、この閉塞板の所定の部分を切取って前記流体の流通口を開口させるための環状溝が形成され、前記筒状部内の前記閉塞板と前記筒状部の他端との間の部分に、前記閉塞板の前記環状溝により囲まれた切取り部の周縁部の一部に一体に連結され、前記筒状部の他端方向への引張りにより前記閉塞板の前記環状溝に対応する薄肉部を破断させて前記閉塞板から前記切取り部を切取る注出口開放摘みが設けられた注出口部材を、前記筒状部を前記バッグ本体に設けられた注出口孔から前記バッグ本体外に突出させ、前記フランジの全周を前記バッグ本体の前記注出口孔の周囲に前記バッグ本体内側から溶着して形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
この発明の流体収納バッグは、上記のような構成のものであるため、流体の無菌充填を低コストに行うことができ、しかも、内部の流体の注出を、注出ヘッドを用いることなく簡単に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1〜図7はこの発明の一実施例を示しており、図1は流体収納バッグの流体充填前の状態の斜視図、図2は前記流体収納バッグの図1におけるII−II線に沿う拡大断面図、図3及び図4は前記流体収納バッグの注出口を形成する注出口部材の平面図及び底面図、図5は前記注出口の開放状態の拡大断面図、図6は開放された前記注出口にキャップを装着した状態の拡大断面図である。
【0018】
この流体収納バッグは、図1及び図2に示したように、気密性を有する平面形状が正方形状または矩形状のバッグ本体1の一方の面に、前記バッグ本体1内に流体を充填するための充填口10と、前記バッグ本体1内に充填された流体を注出するための注出口20とを設けたものであり、前記充填口10は、前記バッグ本体1の1つの角部付近に設けられ、前記注出口20は、前記バッグ本体1の他の1つの角部付近に設けられている。
【0019】
前記バッグ本体1は、正方形状または矩形状に形成された同じ面積のシートからなる一対のバッグ材2,3を重ね、これらのバッグ材2,3を、その周縁部の全周にわたって互いに溶着したものであり、図1において、1aは、前記一対のバッグ材2,3の溶着部を示している。
【0020】
なお、図2では、便宜上、前記バッグ本体1を形成する一対のバッグ材2,3をそれぞれ単層材のように示しているが、これらのバッグ材2,3はそれぞれ、2枚または3枚のシートをその各シート間に断熱空間を設けて重ねた二重または三重構造のものである。
【0021】
前記バッグ材2,3の各シートのうち、バッグ本体1の内面を形成する内側シートは、1枚のポリエチレンフィルム、または、ポリエチレンフィルム上に、ナイロンフィルム、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム、アルミニウムまたはシリカ等を蒸着したポリエチレンまたはPETフィルムのうちの少なくとも1枚のフィルムをラミネートし、その上にもう1枚のポリエチレンフィルムをラミネートした積層フィルムからなっている。
【0022】
また、バッグ本体1の外面を形成する外側シートは、ポリエチレンフィルム上に、ナイロンフィルム、PETフィルム、アルミニウムまたはシリカ等を蒸着したポリエチレンまたはPETフィルムのうちの2枚または3枚のフィルムを順に重ねてラミネートした積層フィルムからなっており、前記ポリエチレンフィルム面を前記内側シートに対向させて配置されている。
【0023】
さらに、前記三重構造のバッグ材2,3の場合、前記外側シートと内側シートとの間の中間シートは、1枚のポリエチレンフィルムからなっている。
【0024】
そして、前記一対のバッグ材2,3のうちの一方のバッグ材2には、前記充填口10の形成位置と前記注出口20の形成位置とに、充填口孔2aと注出口孔2bとが穿設されており、前記充填口10は、前記バッグ本体1の一方のバッグ材2の充填口孔2aを設けた部分に充填口部材11を取付けて形成され、前記注出口20は、前記バッグ本体1の一方のバッグ材2の注出口孔2bを設けた部分に注出口部材21を取付けて形成されている。
【0025】
前記充填口部材11は、基本的に特許文献4(特開2001−180698号公報)に記載された流体収納バッグの充填口と同じ構成のものであり、流体の充填路13を形成する筒状体の一端(以下、基端という)の外周にバッグ本体溶着用フランジ14が形成された口部材本体12と、この口部材本体12の他端、つまり前記フランジ14の形成端とは反対端(以下、先端という)に、前記充填路13の開口端を覆い、且つ周縁部の全周を口部材本体12の端面に溶着して設けられ、前記バッグ本体1内への流体の充填時に切り裂かれる第1シールフィルム15と、前記口部材本体12のフランジ形成端(基端)に、前記充填路13の開口端を覆い、且つ周縁部の複数個所を口部材本体12の端面に仮溶着して設けられ、前記バッグ本体1内への流体の充填後に前記周縁部の全周を前記口部材本体12の端面に溶着される第2シールフィルム16とからなっている。
【0026】
前記口部材本体12は、前記バッグ本体1の内面、つまり前記バッグ材2,3の内側シートのバッグ本体1内に対向する面のフィルムと同じポリエチレンからなる成形品であり、前記第1シールフィルム15と第2シールフィルム16はそれぞれ、ポリエチレンフィルム上にポリエステルフィルムをラミネートした二層フィルムからなっており、前記ポリエチレンフィルム面を前記口部材本体12の端面に溶着されている。
【0027】
そして、前記充填口部材11は、前記口部材本体12を前記バッグ本体1の一方のバッグ材2に設けられた充填口孔2aからバッグ本体1外に突出させ、前記フランジ14の全周を前記バッグ材2の充填口孔2aの周囲に前記バッグ本体1内側から溶着することにより前記バッグ本体1に取付けられている。
【0028】
また、前記注出口部材21は、図1〜図4に示したように、流体の注出路23を形成する筒状部22の一端(以下、基端という)の外周にバッグ本体溶着用フランジ24が形成され、前記筒状部22内に、前記注出路23を気密状態に遮断する閉塞板25が一体に形成されるとともに、前記閉塞板25に、この閉塞板25の所定の部分を切取って前記流体の流通口30(図5参照)を開口させるための環状溝26が形成され、前記筒状部22
内の前記閉塞板25と筒状部22の他端(以下、先端という)との間の部分に、前記閉塞板25の前記環状溝26により囲まれた切取り部25aの周縁部の一部に一体に連結され、前記筒状部22の先端方向への引張りにより前記閉塞板25の前記環状溝26に対応する薄肉部を破断させて前記閉塞板25から前記切取り部25aを切取る注出口開放摘み27が設けられた注出口部材21からなっている。
【0029】
この注出口部材21の筒状部22内の注出路23を気密状態に遮断する閉塞板25は、前記筒状部22のバッグ本体溶着用フランジ24が形成された基端部に、前記フランジ24と略面一に設けられている、
また、前記環状溝26は、前記閉塞板25の両面のうちの前記筒状部22の基端側に対向する面に、例えば前記閉塞板25の外周縁に沿った略円形の環状に形成されており、前記注出口開放摘み27は、前記閉塞板25の切取り部25aの周縁部の一部から前記筒状部22の先端方向に突出された柱部28と、この柱部28の先端に一体に形成された指掛けリング29とからなっている。
【0030】
この注出口部材21は、前記バッグ本体1の内面、つまり前記内側シートのバッグ本体1内に対向する面のフィルムと同じポリエチレンからなる成形品であり、前記筒状部22を前記バッグ本体1の一方のバッグ材2に設けられた注出口孔2bからバッグ本体1外に突出させ、前記フランジ24の全周を前記バッグ材2の注出口孔2bの周囲にバッグ本体1内側から溶着することにより前記バッグ本体1に取付けられている。
【0031】
この流体収納バッグは、まず、前記一方のバッグ材2に前記充填口部材11と注出口部材21を取付け、このバッグ材2に他方のバッグ材3を重ねて、これらのバッグ材2,3を、その周縁部の全周にわたって互いに溶着することにより製造される。
【0032】
なお、前記一方のバッグ材2の各シートは、前記充填口孔2aの周囲と、前記注出口孔2bの周囲において、前記充填口部材11のフランジ14の溶着及び前記注出口部材21のフランジ24の溶着と同時に互いに溶着され、前記一方のバッグ材2の各シートと他方のバッグ材3の各シートはそれぞれ、その周縁部において、一対のバッグ材2,3の周縁部の溶着と同時に互いに溶着される。
【0033】
そして、製造された流体収納バッグは、その外部から放射線を照射することにより、バッグ本体1内と、充填口部材11の充填路13内(第1と第2のシールフィルム15,16間の部分)と、前記充填口部材11の第2シールフィルム16及び注出口部材21の閉塞板25のバッグ本体1内に対向する面を滅菌処理される。
【0034】
前記流体収納バッグは、前記充填口10からバッグ本体1内に液状または粉粒状の飲食品や医薬品等の流体を充填されるものであり、前記流体の充填は、前記特許文献4に記載された流体収納バッグと同様に、前記充填口部材11の口部材本体12の外端(バッグ本体1外に突出した端部)に、シールフィルム切り裂き手段を備えた充填ヘッド(図示せず)を係合させ、この充填ヘッドに滅菌流体を供給して前記充填ヘッド内及び前記充填口部材11の第1シールフィルム15の外面を滅菌した後、前記切り裂き手段により前記第1シールフィルム15を切り裂き、その後に前記充填ヘッドに充填流体を供給してその流体を前記口部材本体12内の充填路13と、前記口部材本体12のバッグ本体1側の端面に周縁部の複数個所を仮溶着された第2シールフィルム16の非溶着部と前記口部材本体12の端面との間の隙間とを通してバッグ本体1内に注入し、前記バッグ本体1内に所定量の流体を充填した後に、前記バッグ本体1の充填口10に対応する部分を、前記充填口10が設けられた面とは反対側から加熱ヘッド(図示せず)により押し潰して前記第2シールフィルム16の周縁部を前記口部材本体12の端面に押し付け、この第2シールフィルムの周縁部の全周を前記筒状部の端面に溶着することにより前記充填口10を前記第2シールフィルム16によって封止し、その後に、前記加熱ヘッドを後退させ、前記充填ヘッドを切り離す手順で行われる。
【0035】
このように、前記流体収納バッグは、流体の充填を、前記充填口部材11の口部材本体12の外端に、シールフィルム切り裂き手段を備えた充填ヘッドを係合させ、前記充填ヘッド内及び前記充填口部材11の第1シールフィルム15の外面を滅菌流体により無菌化した後に、前記切り裂き部材により前記第1シールフィルムを切り裂いてバッグ本体内に流体を充填し、次いで前記充填口部材の第2シールフィルムの周縁部の全周を口部材本体の筒状部の端面に溶着した後に、前記充填ヘッドを切り離す手順で行うものであるため、充填作業中に、外気が前記充填口10からバッグ本体1内に入り込むことはない。
【0036】
そのため、この流体収納バッグは、流体の無菌充填を通常の清浄度の環境下で行うことができ、したがって、チャンバ等の気密室内において室内を無菌状態に保って流体を充填する場合に比べて、流体の無菌充填を低コストに行うことができる。
【0037】
前記流体を充填された流体収納バッグは、段ボール等からなる図示しない包装箱内に収納されて出荷される。
【0038】
一方、前記バッグ本体1内に充填された流体の注出は、前記注出口部材21の筒状部22内を、その外端側(バッグ本体1外に突出した端部側)からの滅菌流体の吹き付け等により滅菌した後、前記注出口部材21の筒状部22内に指を差込んで前記注出口開放摘み29を引張り、前記筒状部22内の閉塞板25の前記環状溝26に対応する薄肉部を破断させて前記閉塞板25から前記環状溝26により囲まれた切取り部25aを切取ることにより、図5のように前記閉塞板25に流体の流通口30を開口させ、バッグ本体1内の流体を、前記筒状部22内の注出路23及び前記流通口30を通して外部に流出させることにより行われる。
【0039】
なお、前記バッグ本体1内の流体の注出は、前記包装箱内から流体収納バッグを取出して行っても、前記包装箱内に流体収納バッグを収容した状態で行ってもよく、後者の場合は、前記包装箱の前記流体収納バッグの注出口20に対応する部分を切開き、その切開部から前記注出口部材21の筒状部22を包装箱外に引出して、前記注出口開放摘み29を引張ることにより流通口30を開口させればよい。
【0040】
このように、前記流体収納バッグは、前記注出口部材21の注出口開放摘み27を引張るだけで、注出口20を開放することができるため、前記特許文献4に記載された流体収納バッグに比べて、充填された流体の注出を、注出ヘッドを用いることなく簡単に行うことができる。
【0041】
しかも、前記流体収納バッグは、前記注出口部材21の筒状部22内の閉塞板25に環状溝26を設け、その環状溝26により囲まれた切取り部25aを切取ることによって前記閉塞板25に流体の流通口30を開口させるものであり、前記環状溝26は、閉塞板25の面積内に任意のパターンに形成することができるため、前記閉塞板25に充分な面積の流通口30を開口させ、前記バッグ本体1内の流体を充分な注出流量で注出することができる。
【0042】
さらに、前記流体収納バッグは、前記注出口部材21からなる注出口20に図6に示したように装着されるキャップ31を備えている。
【0043】
このキャップ31は、前記注出口部材21の筒状部22に押込み装着される弾性キャップであり、前記筒状部22の先端側の部分の外周に嵌装される外筒部32内に、外周部において前記外筒部32の一端側の内周面につながり、前記外周部から中央部に向かって前記外筒部32の他端方向に略球面状に凹入した注出口封止部33が一体に形成され、前記外筒部32の内周面に、注出口係止溝32aが形成されたシリコンゴム等の成形品からなっており、前記注出口部材21の筒状部22の先端部の外周には、前記弾性キャップ31の注出口係止溝32aに嵌入する鍔部22aが一体に形成されている。
【0044】
前記弾性キャップ31は、前記バッグ本体1内の流体の注出を途中で停止する場合に、開放された前記注出口20を一時的に密閉するために使用されるものであり、前記略球面状の注出口封止部33を前記注出口部材21の筒状部22内に押込んでこの注出口封止部33の外周部を前記筒状部22の内周面に密着させるとともに、前記外筒部32を前記筒状部22の外周に嵌装して前記注出口係止溝32aを前記筒状部22の鍔部22aに係合させることによって前記注出口22に装着される。
【0045】
この弾性キャップ31は、前記包装箱内に付属品として入れておいてもよいが、前記注出口部材21の筒状部22に予め装着しておくのが好ましく、前記弾性キャップ31を前記注出口部材21の筒状部22に予め装着しておくことにより、バッグ本体1の製造及び前記バッグ本体1内への流体の充填から前記バッグ本体1内の流体の注出を行うまでの期間中、前記注出口部材21の筒状部22内を常に清浄に保つことができる。
【0046】
なお、前記弾性キャップ31を前記注出口部材21の筒状部22に予め装着しておく場合は、バッグ本体1内の流体の注出に際して、前記弾性キャップ31を取外してから前記注出口部材21の流通口30を開口させなければならないが、前記弾性キャップ31は、その外筒部32の開口端側をめくり上げることにより極く簡単に取外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】この発明の一実施例を示す流体収納バッグの流体充填前の状態の斜視図。
【図2】前記流体収納バッグの図1におけるII−II線に沿う拡大断面図。
【図3】前記流体収納バッグの注出口を形成する注出口部材の平面図。
【図4】前記注出口部材の底面図。
【図5】前記注出口の開放状態の拡大断面図。
【図6】開放された前記注出口にキャップを装着した状態の拡大断面図。
【符号の説明】
【0048】
1…バッグ本体、2,3…バッグ材、2a…充填口孔、2b…注出口孔、10…充填口、11…充填口部材、12…口部材本体、13…充填路、14…フランジ、15…第1シールフィルム、16…第2シールフィルム、20…注出口、22…注出口部材、23…注出路、24…フランジ、25…閉塞板、25a…切取り部、26環状溝、27…注出口開放摘み、30…流通口、31…弾性キャップ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気密性を有するバッグ本体に、前記バッグ本体内に流体を充填するための充填口と、前記バッグ本体内に充填された流体を注出するための注出口とが設けられ、
前記充填口は、流体の充填路を形成する筒状体の一端の外周にバッグ本体溶着用フランジが形成された口部材本体と、この口部材本体の他端に、前記充填路の開口端を覆い、且つ周縁部の全周を前記口部材本体の端面に溶着して設けられ、前記バッグ本体内への流体の充填時に切り裂かれる第1シールフィルムと、前記口部材本体のフランジ形成端に、前記充填路の開口端を覆い、且つ周縁部の複数個所を前記口部材本体の端面に仮溶着して設けられ、前記バッグ本体内への流体の充填後に前記周縁部の全周を前記口部材本体の端面に溶着される第2シールフィルムとからなる充填口部材を、前記口部材本体を前記バッグ本体に設けられた充填口孔から前記バッグ本体外に突出させ、前記フランジの全周を前記バッグ本体の前記充填口孔の周囲に前記バッグ本体内側から溶着して形成され、
前記注出口は、流体の注出路を形成する筒状部の一端の外周にバッグ本体溶着用フランジが形成され、前記筒状部内に、前記注出路を気密状態に遮断する閉塞板が一体に形成されるとともに、前記閉塞板に、この閉塞板の所定の部分を切取って前記流体の流通口を開口させるための環状溝が形成され、前記筒状部内の前記閉塞板と前記筒状部の他端との間の部分に、前記閉塞板の前記環状溝により囲まれた切取り部の周縁部の一部に一体に連結され、前記筒状部の他端方向への引張りにより前記閉塞板の前記環状溝に対応する薄肉部を破断させて前記閉塞板から前記切取り部を切取る注出口開放摘みが設けられた注出口部材を、前記筒状部を前記バッグ本体に設けられた注出口孔から前記バッグ本体外に突出させ、前記フランジの全周を前記バッグ本体の前記注出口孔の周囲に前記バッグ本体内側から溶着して形成されていることを特徴とする流体収納バッグ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−302954(P2008−302954A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−151824(P2007−151824)
【出願日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(595068151)コーンズドッドウェル株式会社 (5)
【Fターム(参考)】