説明

流体取扱装置

【課題】多検体の測定を行う試料分析装置として使用した場合に、簡単な構造で反応効率および測定感度を向上させ且つ反応時間および測定時間を短縮することができるとともに、簡単な構造で流体を排出することができ且つ吸光測定法に適用可能な流体取扱装置を提供する。
【解決手段】 流体取扱装置10は、複数の上側流体取扱部16が配列された上側装置本体12と、この上側装置本体12を載置可能な下側装置本体14とからなり、上側装置本体12の複数の上側流体取扱部16の各々に、多数のビーズ24を収容する上側流体取扱室28が形成され、この上側流体取扱室28の底部に弁体26が設けられ、下側装置本体14上に上側装置本体12を載置すると弁体26が突起部18bによって押し上げられて開く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体取扱装置に関し、特に、生体物質に代表される機能性物質などの試料を分析する試料分析装置として使用可能な流体取扱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タンパク質などの生体物質を特異的に検出する方法として、特定の生体物質に対する抗体を用いて抗原抗体反応を起こさせ、その反応物を視覚的に認識または分光学的に測定することによってその生体物質を検出する様々な方法が知られている。
【0003】
現在、タンパク質などの生体物質の抗原抗体反応による反応物を定量する方法として、ELISA(Enzyme−Linked ImmunoSorbent Assay)(酵素結合免疫吸着検定法)などの方法が広く採用されている。これらの方法では、一般にマイクロウェル(以下「ウェル」という)と呼ばれる多数の微小凹部の配列が形成されたマイクロウェルプレートと呼ばれる試料分析装置を使用し、目的物質である特定の生体物質に対する抗体を捕体としてウェルの壁面にコートし、この捕体によって目的物質を捕捉し、目的物質と抗体との間の抗原抗体反応による反応物を蛍光や発光試薬などにより測定することによって目的物質を検出する。
【0004】
一般に、ELISAなどのマイクロウェルプレートを用いた方法では、目的物質を含む検体や抗体試薬などの液体を反応液としてウェル内に満たして反応させている。この反応は、ウェル内に満たされた液体中の成分が分子拡散によって移動し、ウェルの底面や内壁に達したときに初めて起こる。そのため、マイクロウェルプレートを静置した場合には、理論的な反応時間は、ウェル内に満たされた液体中の成分の拡散時間に依存している。液体中の分子は、周囲の分子と衝突しながら移動しているため、その拡散の速さは非常に遅く、目的物質が分子量7万程度のタンパク質である場合には、希薄な水溶液の状態(室温)で0.5〜1×10−6cm/秒程度である。そのため、ウェル内の液体中において、ウェルの底面や内壁から離れた位置にある目的物質は、実用的な測定時間内ではほとんど反応することができない。また、マイクロウェルプレートでは、反応効率を向上させるために、反応部であるウェル内の底面や壁面を反応液と万遍なく接触させることが有効であるので、反応に必要な量の液体に比べて、より多くの量の液体が必要になる。
【0005】
このように、ELISAなどのマイクロウェルプレートを用いた従来の方法では、抗原抗体反応が捕捉用抗体をコートしたウェルの壁面のみで進行するため、ウェルに加えた液体中に含まれる目的物質、抗体、基質などがウェル内で浮遊、還流、沈下してウェルの壁面に到達した後に反応するまで放置しなければならず、反応効率が悪いという問題がある。また、多数のウェルに細分化されているマイクロウェルプレートでは、各々のウェルに加える液体の量が制限されているので、測定感度が低下するという問題もある。
【0006】
反応効率や測定感度を向上させる方法として、捕体として多孔質体を用いる方法が知られているが、液の流動性を制御するためにポンプなどの外部動力を必要とし、また、多孔質体は詰まり易いので液の流動性を連続的に制御するのは困難である。また、微小空間が形成されたマイクロチップを使用し、微小空間内の液を流動させる方法として、加圧または吸引により液を流動させる方法が知られているが、この方法も外部動力を必要とし、煩雑な装置を必要とする。さらに、微小空間が形成されたマイクロチップを使用し、バルブ構造により微小空間内の液を流動させる方法も知られているが、この方法もバルブを作動させるための動力またはエネルギーを必要とする。
【0007】
また、ELISAにより分析を行う場合には、複数の抗原抗体反応を起こす必要があり、各抗原抗体反応に1時間程度の時間がかかる上、各抗原抗体反応間でウェルの洗浄を行う必要があるので、ウェルへの液の注入操作とウェルからの液の排出操作を繰り返す必要がある。また、ウェルに液を注入するための分注ノズルを洗浄することが必要になる場合もある。このように、ELISAにより分析を行う場合には、長時間を要し、多くの操作が必要になる。この問題を改善する方法として、ウェルの底面を多孔質膜として圧力により液をウェルの下側に排出させる方法が提案されている(例えば、特許文献1および2参照)。
【0008】
【特許文献1】特表平9−504864号公報(第20−27頁)
【特許文献2】特開2004−45197号公報(段落番号0008−0019)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1および2に提案された方法では、液を排出するためにポンプなどの外部動力を必要とし、複雑な装置を必要とする。また、ウェルの底面を光透過性の底面にすることが困難であり、ELISAなどの最も一般的な検出方法である吸光測定法に対応できない。
【0010】
したがって、本発明は、このような従来の問題点に鑑み、多検体の測定を行う試料分析装置として使用した場合に、簡単な構造で反応効率および測定感度を向上させ且つ反応時間および測定時間を短縮することができるとともに、簡単な構造で流体を排出することができ且つ吸光測定法に適用可能な流体取扱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明による流体取扱装置は、複数の上側流体取扱部が配列された上側装置本体と、この上側装置本体を載置可能な下側装置本体とからなり、上側装置本体の複数の上側流体取扱部の各々が、流体を注入するための注入口と、この注入口から注入された流体を収容するための上側流体収容室と、この上側流体収容室内に配置されて上側流体収容室内の流体が上側流体収容室内で接触する表面の面積を増大させる表面積増大部材(例えば、多数の微小粒状物のような表面積増大部材や、吸水性部材のような単一の部材からなる表面積増大部材)と、上側流体収容室内の流体を下方に排出するための排出口と、この排出口を開閉する弁体とを備え、下側装置本体が、上側流体収容室から排出された流体を収容するための下側流体収容部を備え、下側装置本体上に上側装置本体を載置すると複数の上側流体取扱部の各々の弁体が開くことを特徴とする。この流体取扱装置において、下側装置本体の下側流体収容部の底面から上方に突出する突起部を、複数の上側流体取扱部の各々に対応して形成し、下側装置本体上に上側装置本体を載置すると突起部が弁体を上方に押し上げて開くようにするのが好ましい。また、表面積増大部材の通過を防止し且つ流体の通過を許容する開口部が形成された保持部材が、表面積増大部材と弁体との間に配置されているのが好ましい。
【0012】
また、上記の流体取扱装置において、複数の上側流体取扱部の各々の上側流体取扱室を、表面積増大部材を収容した第1の上側流体取扱室と、弁体を取り付けた第2の上側流体取扱室に分離し、これらの第1および第2の上側流体取扱室の間に保持部材を配置してもよい。
【0013】
また、上記の流体取扱装置において、下側装置本体の下側流体収容部が、複数の上側流体取扱部の各々の上側流体収容室に対応するように互いに分離された複数の下側流体取扱室からなるのが好ましい。この場合、保持部材が弁体の上方に配置されて表面積増大部材を支持するのが好ましい。
【0014】
また、上記の流体取扱装置において、下側装置本体の下側流体収容部の底面に流体を排出するための排出口を形成するのが好ましく、弁体が透明な部材からなるのが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、多検体の測定を行う試料分析装置として使用した場合に、簡単な構造で反応効率および測定感度を向上させ且つ反応時間および測定時間を短縮することができるとともに、簡単な構造で流体を排出することができ且つ吸光測定法に適用可能な流体取扱装置を提供することができる。そのため、ELISAなどの分析時間を大幅に短縮することができ、測定感度を向上させることができる。また、流体取扱装置の下側装置本体の下側流体収容部の底面に流体を排出するための排出口を形成すれば、洗浄工程においてノズルを使用しなくても簡単に液を排出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明による流体取扱装置の実施の形態について詳細に説明する。本発明による流体取扱装置の実施の形態は、例えば、タンパク質などの生体物質に代表される機能性物質などを含む試料を分析する装置として使用することができ、一般にマイクロウェルプレートと呼ばれる多検体の測定を目的とした試料分析装置として使用することができる。
【0017】
[第1の実施の形態]
図1〜図7Eは、本発明による流体取扱装置の第1の実施の形態を示している。図1に示すように、本実施の形態の流体取扱装置10は、上側装置本体部12と下側装置本体部14とから構成されている。上側装置本体部12と下側装置本体部14の各々は、例えば、ポリカーボネート(PC)やポリメタクリル酸メチル(PMMA)などの樹脂材料またはガラス材料により形成された厚さが数mm程度で一辺の長さが数cm〜十数cm程度の大きさの略矩形の平板状の部材からなる。上側装置本体部12には、上端に略正方形の開口部が形成された多数(本実施の形態では16×24の配列の384個)の上側流体取扱部16が配列している。一方、下側装置本体部14には、上側流体取扱部16に対応するように、上端に略正方形の開口部が形成された多数(本実施の形態では16×24の配列の384個)の下側流体取扱部18が配列している。
【0018】
図2A〜図2Fは、本実施の形態の流体取扱装置10の上側装置本体部12の上側流体取扱部16を拡大して示している。図2Aは上側流体取扱部16の平面図、図2Bは図2AのIIB−IIB線断面図、図2Cは上側流体取扱部16の底面図、図2Dは図2Aからビーズ24を取り除いた上側流体取扱部16の平面図、図2Eは図2Dから網状部材22を取り除いた上側流体取扱部16の平面図、図2Fは図2Eから弁体26を取り除いた上側流体取扱部16の平面図である。図2A〜図2Fに示すように、上側流体取扱部16は、外壁部20と、この外壁部20内に取り付けられた網状部材22と、外壁部20内の網状部材22上に充填された多数のビーズ24と、外壁部20内の網状部材22の下方に取り付けられた弁体26とから構成されている。
【0019】
外壁部20は、上端に略正方形の開口部が形成されて内部に縦横の長さおよび高さが数mm程度の略立方体の空間を形成する上側鉛直壁部20aと、この上側鉛直壁部20aの下端から水平方向内側に且つ上側鉛直壁部20aの下端に沿って延びて上側鉛直壁部20aの上端の開口部より小さい略正方形の開口部を形成する水平壁部20bと、この水平壁部20bの開口端部から鉛直方向下方に延びて内部に略立方体の空間を形成するとともに下端に上側鉛直壁部20aの上端の開口部より小さい略正方形の開口部を形成する下側鉛直壁部20cとから構成されている。
【0020】
網状部材22は、流体を通過させることができ且つビーズ24を通過させない網状の部材(メッシュ構造の部材)であり、ビーズ24の直径より小さい多数の開口部が配列した略正方形の網状の部材である。この網状部材22は、上側鉛直壁部20aに対して略垂直に、すなわち上側鉛直壁部20aの上端の開口部に対して略平行に上側鉛直壁部20a内に配置され、その周縁部が上側鉛直壁部20aの内面の鉛直方向略中央部より下方に当接して固定されている。このように固定された網状部材22の上には、多数のビーズ24が充填されている。
【0021】
図3A〜図3Eは、本実施の形態の流体取扱装置10の上側装置本体部12の上側流体取扱部16に使用する弁体26を拡大して示している。図3Aは弁体26の斜視図、図3Bは弁体26の側面図、図3Cは弁体26の平面図、図3Dは弁体26の底面図、図3Eは図3CのIIIE−IIIE線断面図である。弁体26は、樹脂材料などによって一体に形成され、図3A〜図3Eに示すように、平板状の弁座水平部26aと、この弁座水平部26aの底面の中央部から鉛直方向下方に延びる円柱形の弁棒部26bと、この弁棒部26bのまわりを取り囲むように弁座水平部26aの底面から鉛直方向下方に延びる弁座鉛直部26cとから構成されている。弁座水平部26aは、上側鉛直壁部20aの上端の開口部と略同一の平面形状の平板の4つの側面の各々の略中央部から略矩形の切欠き部26dを切り欠いた平面形状を有する。弁座鉛直部26cは、弁座水平部26aの4つの側面に沿って延びるように形成され、その外面が切欠き部26dの底面(弁座水平部26aの側面に沿って延びる面)に略同一面上に配置するように形成されている。また、弁座鉛直部26cの4つの側面の各々には、鉛直方向下方に延び且つ弁座鉛直部26cを貫通する複数(本実施の形態では4つ)のスリット26eが形成されている。なお、スリット26eの代わりに、弁座鉛直部26cを貫通することなく鉛直方向下方に延びる複数の溝部を形成してもよい。
【0022】
このような構成の上側流体取扱部16を組み立てる際には、図4に示すように、まず、外壁部20内に弁体26を挿入した後、外壁部20内に網状部材22を挿入して外壁部20の内面に接着剤などにより固定し、その後、網状部材22上に多数のビーズ24を充填する。網状部材22の高さは、弁体26が上方に移動して十分に開くことが可能な高さに設定する。このようにして上側流体取扱部16を組み立てると、外壁部20の上端の開口部を液体試料などの流体を注入するための注入口として使用することができ、弁体26が下端に配置している状態(弁が閉じた状態)で外壁部20内の弁体26の上に上側流体取扱室28(図7Aを参照)としての空間が形成される。また、この上側流体取扱室28の下方には、弁体26が上方に移動した状態(弁が開いた状態)で下側流体取扱部18に流体を導入するための連通路が形成される。
【0023】
図5Aおよび図5Bは、本実施の形態の流体取扱装置10の下側装置本体部14の下側流体取扱部18を拡大して示している。図5Aは下側流体取扱部18の平面図であり、図5Bは図5AのVB−VB線断面図である。図5Aおよび図5Bに示すように、下側流体取扱部18は、上端に略正方形の開口部が形成されて内部に縦横の長さおよび高さが数mm程度の略立方体の凹部を形成する外壁部18aと、この外壁部18aの底面の中央部から上方に突出する略四角錐台形状(略四角錐形状の先端から略水平方向に切断した形状)の突起部18bとから構成されている。
【0024】
図6に示すように、下側流体取扱部18上に上側流体取扱部16を載置すると、下側流体取扱部18の突起部18bによって上側流体取扱部16の弁体26の弁棒部26bの底面が上方に押し上げられて、弁体26が上方に移動し、弁体26の弁座水平部26aの底面が上側流体取扱部16の外壁部20の水平壁部20bの上面から離間して弁が開き、上側流体取扱室28に注入された流体が弁体26のスリット26e(図3Aおよび図3Bを参照)を介して下側流体取扱部18の内部(下側流体取扱室30)に導入される。
【0025】
次に、図7A〜図7Eを参照して、本実施の形態の流体取扱装置10の使用例について説明する。まず、図7Aに示すように、本実施の形態の流体取扱装置10の上側装置本体部12の各々の上側流体取扱部16内の網状部材22の上に、抗体をコートした多数のビーズ24を充填する。次に、図7Bに示すように、各々の上側流体取扱部16の弁体26が閉じた状態で反応部としての上側流体取扱室28に試薬を注入して反応させる。次に、上側装置本体部12を下側装置本体部14上に重ね合わせると、図7Cに示すように、上側装置本体部12の各々の上側流体取扱部16の外壁部20の下側鉛直壁部20cが下側装置本体部14の対応する下側流体取扱部18内に挿入されるとともに、水平壁部20bが下側流体取扱部18に支持される。このとき、下側流体取扱部18の突起部18bによって上側流体取扱部16の弁体26の弁棒部26bの底面が上方に押し上げられて、弁体26が上方に移動し、弁体26の弁座水平部26aの底面が上側流体取扱部16の外壁部20の水平壁部20bの上面から離間して弁が開き、上側流体取扱室28内から反応後の液体が弁体26のスリット26eを介して下側流体取扱部18の内部(下側流体取扱室30)に排出される。次に、図7Dに示すように、上側装置本体部12を取り外した後、下側装置本体部14の各々の下側流体取扱部18の下側流体取扱室30内にピペット32により反応停止液を添加して反応を停止させ、図7Eに示すような状態で蛍光測定を行うことができる。
【0026】
[第2の実施の形態]
図8〜図15Eは、本発明による流体取扱装置の第2の実施の形態を示している。図8に示すように、本実施の形態の流体取扱装置110は、第1の実施の形態と同様に、上側装置本体部112と下側装置本体部114とから構成されている。この流体取扱装置110は、上側装置本体部112の各々の上側流体取扱部116の弁体126の形状が第1の実施の形態の流体取扱装置10の弁体26と異なり、この弁体126を開くための下側装置本体部114の各々の下側流体取扱部118の突起部118bの形状が第1の実施の形態の流体取扱装置10の突起部18bと異なり、各々の上側流体取扱部116の外壁部120の下側鉛直壁部120cに切欠き部120dを形成した点を除いて、第1の実施の形態の流体取扱装置10と略同一である。
【0027】
第1の実施の形態と同様に、上側装置本体部112と下側装置本体部114の各々は、例えば、ポリカーボネート(PC)やポリメタクリル酸メチル(PMMA)などの樹脂材料またはガラス材料により形成された厚さが数mm程度で一辺の長さが数cm〜十数cm程度の大きさの略矩形の平板状の部材からなる。図8に示すように、上側装置本体部112には、上端に略正方形の開口部が形成された多数(本実施の形態では16×24の配列の384個)の上側流体取扱部116が配列している。一方、下側装置本体部114には、上側流体取扱部116に対応するように、上端に略正方形の開口部が形成された多数(本実施の形態では16×24の配列の384個)の下側流体取扱部118が配列している。
【0028】
図9A〜図9Dは、本実施の形態の流体取扱装置110の上側装置本体部112の上側流体取扱部116を拡大して示している。図9Aは上側流体取扱部116の平面図、図9Bは図9AのIXB−IXB線断面図、図9Cは上側流体取扱部116の底面図、図9Dは上側流体取扱部116の側面図である。図9A〜図9Dに示すように、上側流体取扱部116は、外壁部120と、この外壁部120内に取り付けられた網状部材122と、外壁部120内の網状部材122上に充填された多数のビーズ124と、外壁部120内の網状部材122の下方に取り付けられた弁体126とから構成されている。
【0029】
外壁部120は、上端に略正方形の開口部が形成されて内部に縦横の長さおよび高さが数mm程度の略立方体の空間を形成する上側鉛直壁部120aと、この上側鉛直壁部120aの下端から水平方向内側に且つ上側鉛直壁部120aの下端に沿って延びて上側鉛直壁部120aの上端の開口部より小さい略正方形の開口部を形成する水平壁部120bと、この水平壁部120bの開口端部から鉛直方向下方に延びて内部に略立方体の空間を形成するとともに下端に上側鉛直壁部120aの上端の開口部より小さい略正方形の開口部を形成する下側鉛直壁部120cとから構成されている。なお、図9Bおよび図9Dに示すように、本実施の形態では、第1の実施の形態と異なり、下側鉛直壁部120cの対向する一対の面の各々の面の略中央部には、鉛直方向下方に延び且つ下側鉛直壁部120cを貫通する切欠き部120dが形成されている。
【0030】
網状部材122は、第1の実施の形態と同様に、流体を通過させることができ且つビーズ124を通過させない網状の部材(メッシュ構造の部材)であり、ビーズ124の直径より小さい多数の開口部が配列した略正方形の網状の部材である。この網状部材122は、上側鉛直壁部120aに対して略垂直に、すなわち上側鉛直壁部120aの上端の開口部に対して略平行に上側鉛直壁部120a内に配置され、その周縁部が上側鉛直壁部120aの内面の鉛直方向略中央部より下方に当接して固定されている。このように固定された網状部材122の上には、多数のビーズ124が充填されている。
【0031】
図10A〜図10Eは、本実施の形態の流体取扱装置110の上側装置本体部112の上側流体取扱部116に使用する弁体126を拡大して示している。図10Aは弁体126の斜視図、図10Bは弁体126の側面図、図10Cは弁体126の平面図、図10Dは弁体126の底面図、図10Eは図10CのXE−XE線断面図である。弁体126は、樹脂材料などによって一体に形成され、図10A〜図10Eに示すように、平板状の弁座水平部126aと、この弁座水平部126aの底面から鉛直方向下方に延びる弁座鉛直部126cとから構成されている。弁座水平部126aは、上側鉛直壁部120aの上端の開口部と略同一の平面形状の平板の4つの側面の各々の略中央部から略矩形の切欠き部126dを切り欠いた平面形状を有する。弁座鉛直部126cは、弁座水平部126aの4つの側面に沿って延びるように形成され、その外面が切欠き部126dの底面(弁座水平部126aの側面に沿って延びる面)に略同一面上に配置するように形成されている。また、弁座鉛直部126cの4つの側面の各々には、鉛直方向下方に延び且つ弁座鉛直部126cを貫通する複数(本実施の形態では2つ)のスリット126eが形成されている。なお、スリット126eの代わりに、弁座鉛直部126cを貫通することなく鉛直方向下方に延びる複数の溝部を形成してもよい。
【0032】
このような構成の上側流体取扱部116を組み立てる際には、図11に示すように、まず、外壁部120内に弁体126を挿入した後、外壁部120内に網状部材122を挿入して外壁部120の内面に接着剤などにより固定し、その後、網状部材122上に多数のビーズ124を充填する。網状部材122の高さは、弁体126が上方に移動して十分に開くことが可能な高さに設定する。このようにして上側流体取扱部116を組み立てると、外壁部120の上端の開口部を液体試料などの流体を注入するための注入口として使用することができ、弁体126が下端に配置している状態(弁が閉じた状態)で外壁部120内の弁体126の上に上側流体取扱室128(図15Aを参照)としての空間が形成される。また、この上側流体取扱室128の下方には、弁体126が上方に移動した状態(弁が開いた状態)で下側流体取扱部118に流体を導入するための連通路が形成される。
【0033】
図12Aおよび図12Bは、本実施の形態の流体取扱装置110の下側装置本体部114の下側流体取扱部118を拡大して示している。図12Aは下側流体取扱部118の平面図であり、図12Bは図12AのXIIB−XIIB線断面図である。図12Aおよび図12Bに示すように、下側流体取扱部118は、上端に略正方形の開口部が形成されて内部に縦横の長さおよび高さが数mm程度の略立方体の凹部を形成する外壁部118aと、この外壁部118aの対向する一対の側壁の各々の内面の略中央部に沿って外壁部118aの底面から上方に延びる略矩形の平板状の一対の突起部118bとから構成されている。
【0034】
図13および図14に示すように、下側流体取扱部118上に上側流体取扱部116を載置すると、上側流体取扱部116の外壁部120の切欠き部120dから下側鉛直壁部120c内に侵入した下側流体取扱部118の突起部118bによって上側流体取扱部116の弁体126の弁座鉛直部126cの底面が上方に押し上げられて、弁体126が上方に移動し、弁体126の弁座水平部126aの底面が上側流体取扱部116の外壁部120の水平壁部120bの上面から離間して弁が開き、上側流体取扱室128に注入された流体が弁体126のスリット126e(図10Aおよび図10Bを参照)を介して下側流体取扱部118の内部(下側流体取扱室130)に導入される。
【0035】
次に、図15A〜図15Eを参照して、本実施の形態の流体取扱装置110の使用例について説明する。まず、図15Aに示すように、本実施の形態の流体取扱装置110の上側装置本体部112の各々の上側流体取扱部116内の網状部材122の上に、抗体をコートした多数のビーズ124を充填する。次に、図15Bに示すように、各々の上側流体取扱部116の弁体126が閉じた状態で反応部としての上側流体取扱室128に試薬を注入して反応させる。次に、上側装置本体部112を下側装置本体部114上に重ね合わせると、図15Cに示すように、上側装置本体部112の各々の上側流体取扱部116の外壁部120の下側鉛直壁部120cが下側装置本体部114の対応する下側流体取扱部118内に挿入されるとともに、水平壁部120bが下側流体取扱部118に支持される。このとき、上側流体取扱部116の外壁部120の切欠き部120dから下側鉛直壁部120c内に侵入した下側流体取扱部118の突起部118bによって上側流体取扱部116の弁体126の弁座鉛直部126cの底面が上方に押し上げられて、弁体126が上方に移動し、弁体126の弁座水平部126aの底面が上側流体取扱部116の外壁部120の水平壁部120bの上面から離間して弁が開き、上側流体取扱室128内から反応後の液体が弁体126のスリット126eを介して下側流体取扱部118の内部(下側流体取扱室130)に排出される。次に、図15Dに示すように、上側装置本体部112を取り外した後、下側装置本体部114の各々の下側流体取扱部118の下側流体取扱室130内にピペット132により反応停止液を添加して反応を停止させ、図15Eに示すような状態で蛍光測定を行うことができる。
【0036】
[第3の実施の形態]
図16〜図22Fは、本発明による流体取扱装置の第3の実施の形態を示している。図16に示すように、本実施の形態の流体取扱装置210は、第1および第2の実施の形態と同様に、上側装置本体部212と下側装置本体部214とから構成されている。この流体取扱装置210は、上側流体取扱部216を第1の上側流体取扱部217aと第2の上側流体取扱部217bに分離し、これらの第1および第2の上側流体取扱部217aと217bをスリット223を介して連通させ、第2の実施の形態のように各々の下側流体取扱部118に分離する外壁部118aを形成せずに、下側装置本体部214の凹部214aの底面に排出口214bを形成して排液専用トレイとして使用可能にした以外は、第2の実施の形態の流体取扱装置110と略同一である。
【0037】
第1および第2の実施の形態と同様に、上側装置本体部212と下側装置本体部214の各々は、例えば、ポリカーボネート(PC)やポリメタクリル酸メチル(PMMA)などの樹脂材料またはガラス材料により形成された厚さが数mm程度で一辺の長さが数cm〜十数cm程度の大きさの略矩形の平板状の部材からなる。図16に示すように、上側装置本体部212には、上端に略正方形の多数(本実施の形態では16×24の配列の384個)の開口部が形成され、隣接する2つの開口部にそれぞれ第1の上側流体取扱部217aと第2の上側流体取扱部217bが形成されて、多数(本実施の形態では16×12の配列の192個)の上側流体取扱部216が配列している。一方、下側装置本体部214の上面には、略矩形の凹部214aが形成され、その凹部214aの底面に排出口214bが形成されている。また、凹部214aの底面から鉛直方向上方に多数の対の突起部218bが突出している。各々の対の突起部218bは、後述する弁体226の各々を押し上げて開くために使用される。
【0038】
図17A〜図17Dは、本実施の形態の流体取扱装置210の上側装置本体部212の上側流体取扱部216を拡大して示している。図17Aは上側流体取扱部216の平面図、図17Bは図17AのXVIIB−XVIIB線断面図、図17Cは上側流体取扱部216の底面図、図17Dは上側流体取扱部216の側面図である。図17A〜図17Dに示すように、上側流体取扱部216は、第1の上側流体取扱部217aと第2の上側流体取扱部217bとからなる。第1の上側流体取扱部217aと第2の上側流体取扱部217bの各々には、上端に略正方形の開口部が形成されて内部に縦横の長さおよび高さが数mm程度の略立方体の空間が形成されている。第1の上側流体取扱部217aと第2の上側流体取扱部217bは、外壁部220によって取り囲まれ、仕切り板221によって互いに分離されている。第1の上側流体取扱部217aには、多数のビーズ224が充填され、第2の上側流体取扱部217bの底部には、弁体226が取り付けられている。第1の上側流体取扱部217aと第2の上側流体取扱部217bは、仕切り板221を貫通して鉛直方向に延びるように形成され且つビーズ224の直径よりも狭い幅の1つまたは複数のスリット223を介して互いに連通している。
【0039】
外壁部220は、仕切り板221によって第1の上側流体取扱部217aと第2の上側流体取扱部217bの各々の略立方体の空間を形成する上側鉛直壁部220aと、第1の上側流体取扱部217aの底部を形成するとともに上側鉛直壁部220aの第2の上側流体取扱部217b側の下端から水平方向内側に且つ上側鉛直壁部220aの下端に沿って延びて第2の上側流体取扱部217bの上端の開口部より小さい略正方形の開口部を形成する水平壁部220bと、この水平壁部220bの開口端部から鉛直方向下方に延びて内部に略立方体の空間を形成するとともに下端に第2の上側流体取扱部217bの上端の開口部より小さい略正方形の開口部を形成する下側鉛直壁部220cとから構成されている。また、図17Bおよび図17Dに示すように、本実施の形態では、第2の実施の形態と同様に、下側鉛直壁部220cの対向する一対の面の各々の面の略中央部には、鉛直方向下方に延び且つ下側鉛直壁部220cを貫通する切欠き部220dが形成されている。
【0040】
本実施の形態の流体取扱装置210の上側装置本体部212の上側流体取扱部216に使用する弁体226は、図10A〜図10Eに示す第2の実施の形態の弁体126と同じである。すなわち、弁体226は、透明な樹脂材料などによって一体に形成され、図10A〜図10Eに示すように、平板状の弁座水平部226aと、この弁座水平部226aの底面から鉛直方向下方に延びる弁座鉛直部226cとから構成されている。弁座水平部226aは、上側鉛直壁部220aの上端の開口部と略同一の平面形状の平板の4つの側面の各々の略中央部から略矩形の切欠き部226dを切り欠いた平面形状を有する。弁座鉛直部226cは、弁座水平部226aの4つの側面に沿って延びるように形成され、その外面が切欠き部226dの底面(弁座水平部226aの側面に沿って延びる面)に略同一面上に配置するように形成されている。また、弁座鉛直部226cの4つの側面の各々には、鉛直方向下方に延び且つ弁座鉛直部226cを貫通する複数(本実施の形態では2つ)のスリット226eが形成されている。
【0041】
このような構成の上側流体取扱部216を組み立てる際には、図18に示すように、第1の上側流体取扱部217aと第2の上側流体取扱部217bの間に仕切り板221を挿入して固定し、第2の上側流体取扱部217b内に弁体226を挿入するとともに、第1の上側流体取扱部217aに多数のビーズ224を充填すればよい。このようにして上側流体取扱部216を組み立てると、第1の上側流体取扱部217aの上端の開口部を液体試料などの流体を注入するための注入口として使用することができ、第1の上側流体取扱部217a内に上側流体取扱室228の一方の上側流体取扱室である第1の上側流体取扱室228a(図21を参照)が形成されるとともに、弁体226が下端に配置している状態(弁が閉じた状態)で弁体226の上に上側流体取扱室228の他方の上側流体取扱室である第2の上側流体取扱室228b(図22Aを参照)としての空間が形成される。また、この第2の上側流体取扱室228bの下方には、弁体226が上方に移動した状態(弁が開いた状態)で下側装置本体部214の凹部214aに流体を導入するための連通路が形成される。
【0042】
図19Aおよび図19Bは、本実施の形態の流体取扱装置210の下側装置本体部214の一部を拡大して示している。図19Aは下側装置本体部214の一部を示す平面図であり、図19Bは図19AのXIXB−XIXB線断面図である。図19Aおよび図19Bに示すように、本実施の形態では、第2の実施の形態のように各々の下側流体取扱部118に分離する外壁部118aを形成せずに、各々の上側流体取扱部216の切欠き部220dに対応するようにそれぞれ一対の突起部218bが所定の間隔で離間して下側装置本体部214の凹部214aの底面から鉛直方向上方に延びている。
【0043】
図20および図21に示すように、下側装置本体部214上に上側装置本体部212を載置すると、上側流体取扱部216の外壁部220の切欠き部220dから下側鉛直壁部220c内に侵入した下側装置本体部214の突起部218bによって上側流体取扱部216の弁体226の弁座鉛直部226cの底面が上方に押し上げられて、弁体226が上方に移動し、弁体226の弁座水平部226aの底面が上側流体取扱部216の外壁部220の水平壁部220bの上面から離間して弁が開き、上側流体取扱室228に注入された流体が弁体226のスリット226e(図10Aおよび図10Bを参照)を介して下側装置本体部214の凹部214a内に導入されて排出口214bから排出される。
【0044】
次に、図22A〜図22Fを参照して、本実施の形態の流体取扱装置210の第1の使用例について説明する。
【0045】
まず、図22Aに示すように、本実施の形態の流体取扱装置210の上側装置本体部212の各々の上側流体取扱部216の第1の上側流体取扱室228a内に、抗体をコートした多数のビーズ224を充填する。次に、図22Bに示すように、各々の上側流体取扱部216の弁体226が閉じた状態で反応部としての第1の上側流体取扱室228aに試薬を注入して反応させる。このとき、図22Cに示すように、注入された試薬は、スリット223を介して第2の上側流体取扱室228b内にも導入される。次に、図22Dに示すように、上側装置本体部212の各々の上側流体取扱部216の第1の上側流体取扱室228a内にピペット232により反応停止液を添加して反応を停止させ、図22Eに示すような状態で蛍光測定を行うことができる。その後、上側装置本体部212を下側装置本体部214上に重ね合わせると、図22Fに示すように、上側流体取扱部216の外壁部220の切欠き部220dから下側鉛直壁部220c内に侵入した下側装置本体部214の突起部218bによって上側流体取扱部216の弁体226の弁座鉛直部226cの底面が上方に押し上げられて、弁体226が上方に移動し、弁体226の弁座水平部226aの底面が上側流体取扱部216の外壁部220の水平壁部220bの上面から離間して弁が開き、上側流体取扱室228内から反応後の液体が弁体226のスリット226eを介して下側装置本体部214の凹部214a内に導入されて排出口214bから排出される。
【0046】
また、図22A〜図22Fを参照して、本実施の形態の流体取扱装置210の第2の使用例について説明する。
【0047】
まず、図22Aに示すように、本実施の形態の流体取扱装置210の上側装置本体部212の各々の上側流体取扱部216の第1の上側流体取扱室228a内に、抗体をコートした多数のビーズ224を充填する。次に、図22Bに示すように、各々の上側流体取扱部216の弁体226が閉じた状態で反応部としての第1の上側流体取扱室228aに抗原を注入して、ビーズ224にコートした抗体と反応させる。このとき、図22Cに示すように、注入された抗原は、スリット223を介して第2の上側流体取扱室228b内にも導入される。次に、上側装置本体部212を下側装置本体部214上に重ね合わせて、図22Fに示すように、上側流体取扱部216の外壁部220の切欠き部220dから下側鉛直壁部220c内に侵入した下側装置本体部214の突起部218bによって上側流体取扱部216の弁体226の弁座鉛直部226cの底面を上方に押し上げて、弁体226を上方に移動させ、弁体226の弁座水平部226aの底面を上側流体取扱部216の外壁部220の水平壁部220bの上面から離間させて弁を開き、上側流体取扱室228内から反応後の液体を弁体226のスリット226eを介して下側装置本体部214の凹部214a内に導入して排出口214bから排出する。反応後の液体を排出した後、各々の上側流体取扱部216の弁体226が開いた状態で第1の上側流体取扱室228aに洗浄液を注入して洗浄する。
【0048】
次に、図22Bに示すように、上側装置本体部212を下側装置本体部214から取り外して、各々の上側流体取扱部216の弁体226が閉じた状態で第1の上側流体取扱室228aにビオチン標識抗体を注入して反応させる。このとき、図22Cに示すように、注入されたビオチン標識抗体は、スリット223を介して第2の上側流体取扱室228b内にも導入される。次に、図22Fに示すように、上側装置本体部212を下側装置本体部214上に重ね合わせて弁を開き、上側流体取扱室228内から反応後の液体を弁体226のスリット226eを介して下側装置本体部214の凹部214a内に導入して排出口214bから排出する。反応後の液体を排出した後、各々の上側流体取扱部216の弁体226が開いた状態で第1の上側流体取扱室228aに洗浄液を注入して洗浄する。
【0049】
次に、図22Bに示すように、上側装置本体部212を下側装置本体部214から取り外して、各々の上側流体取扱部216の弁体226が閉じた状態で第1の上側流体取扱室228aにストレプトアビジン−酵素を注入して反応させる。このとき、図22Cに示すように、注入されたストレプトアビジン−酵素は、スリット223を介して第2の上側流体取扱室228b内にも導入される。次に、図22Fに示すように、上側装置本体部212を下側装置本体部214上に重ね合わせて弁を開き、上側流体取扱室228内から反応後の液体を弁体226のスリット226eを介して下側装置本体部214の凹部214a内に導入して排出口214bから排出する。反応後の液体を排出した後、各々の上側流体取扱部216の弁体226が開いた状態で第1の上側流体取扱室228aに洗浄液を注入して洗浄する。
【0050】
次に、図22Bに示すように、上側装置本体部212を下側装置本体部214から取り外して、各々の上側流体取扱部216の弁体226が閉じた状態で第1の上側流体取扱室228aに基質を注入して反応させる。このようにして蛍光を発した反応液は、図22Cに示すように、スリット223を介して第2の上側流体取扱室228b内にも導入される。次に、図22Dに示すように、上側装置本体部212の各々の上側流体取扱部216の第1の上側流体取扱室228a内にピペット232により反応停止液を添加して反応を停止させ、図22Eに示すような状態で蛍光測定を行うことができる。
【0051】
[第4の実施の形態]
図23A〜図29は、本発明による流体取扱装置の第4の実施の形態を示している。図23Aおよび図23Bに示すように、本実施の形態の流体取扱装置310は、第3の実施の形態と同様に、上側装置本体部312と下側装置本体部314とから構成されている。この流体取扱装置310では、下側装置本体部316を排液専用トレイとして使用可能にした点で第3の実施の形態と同様であるが、上側装置本体部312の各々の上側流体取扱部316が、第3の実施の形態の流体取扱装置210の上側装置本体部212の各々の上側流体取扱部216と異なっている。
【0052】
第3の実施の形態と同様に、上側装置本体部312と下側装置本体部314の各々は、例えば、ポリカーボネート(PC)やポリメタクリル酸メチル(PMMA)などの樹脂材料またはガラス材料により形成された厚さが数mm程度で一辺の長さが数cm〜十数cm程度の大きさの略矩形の平板状の部材からなる。図23Aに示すように、上側装置本体部312には、上端に略瓢箪形の多数(本実施の形態では8×12の配列の96個)の開口部が形成され、各々の開口部に上側流体取扱部316が挿入されて、多数の上側流体取扱部316が配列している。一方、下側装置本体部314の上面には、略矩形の凹部314aが形成され、その凹部314aの底面に排出口314bが形成されている。また、凹部314aの底面から鉛直方向上方に多数の対の突起部318bが突出している。各々の対の突起部318bは、後述する弁体326の各々を押し上げて開くために使用される。
【0053】
図24A〜図24Cは、本実施の形態の流体取扱装置310の上側装置本体部312の上側流体取扱部316を拡大して示している。図24Aは上側流体取扱部316の平面図、図24Bは図24AのXXIVB−XXIVB線断面図、図24Cは上側流体取扱部316の側面図である。図24A〜図24Cに示すように、上側流体取扱部316は、略瓢箪形の平面形状を有し、略円筒形の第1の上側流体取扱部317aと略円筒形の第2の上側流体取扱部317bとからなる。第1の上側流体取扱部317aと第2の上側流体取扱部317bの各々には、上端に略円形の開口部が形成されて内部に直径および高さが数mm程度の略円柱形の空間が形成されている。第1の上側流体取扱部317aと第2の上側流体取扱部317bは、外壁部320によって取り囲まれ、仕切り板321を挿入することによって互いに分離されている。第1の上側流体取扱部317aには、多数のビーズ324が充填され、第2の上側流体取扱部317bの底部には、弁体326が取り付けられている。第1の上側流体取扱部317aと第2の上側流体取扱部317bは、仕切り板321を貫通して鉛直方向に延びるように形成され且つビーズ324の直径よりも狭い幅の1つまたは複数のスリット323を介して互いに連通している。
【0054】
外壁部320は、仕切り板321によって第1の上側流体取扱部317aと第2の上側流体取扱部317bの各々の略円柱形の空間を形成する上側鉛直壁部320aと、第1の上側流体取扱部317aの底部を形成するとともに上側鉛直壁部320aの第2の上側流体取扱部317b側の下端から水平方向内側に且つ上側鉛直壁部320aの下端に沿って延びて第2の上側流体取扱部317bの上端の開口部より小さい略円形の開口部を形成する水平壁部320bと、この水平壁部320bの開口端部から鉛直方向下方に延びて内部に略円柱形の空間を形成するとともに下端に第2の上側流体取扱部317bの上端の開口部より小さい略円形の開口部を形成する下側鉛直壁部320cとから構成されている。また、図24Bおよび図24Cに示すように、本実施の形態では、第3の実施の形態と同様に、下側鉛直壁部320cの直径方向に対向する部分には、鉛直方向下方に延び且つ下側鉛直壁部320cを貫通する一対の切欠き部320dが形成されている。
【0055】
図25A〜図25Cは、本実施の形態の流体取扱装置310の上側装置本体部312の上側流体取扱部316に使用する弁体326を拡大して示している。図25Aは弁体326の斜視図、図25Bは弁体326の平面図、図25Cは図25BのXXVC−XXVC線断面図である。本実施の形態の弁体326は、弁座水平部326aの平面形状を略円形にした点で、図10A〜図10Eに示すように弁座水平部126a(226a)の平面形状が略正方形である第2および第3の実施の形態の弁体126(226)と異なっている。すなわち、弁体326は、透明な樹脂材料などによって一体に形成され、図25A〜図25Cに示すように、略円板状の弁座水平部326aと、この弁座水平部326aの底面から鉛直方向下方に延びる弁座鉛直部326cとから構成されている。弁座水平部326aは、上側鉛直壁部320aの上端の開口部と略同一の平面形状の円板の周縁部から複数(本実施の形態では3つ)の略扇形の切欠き部326dを切り欠いた平面形状を有する。弁座鉛直部326cは、弁座水平部326aの周縁に沿って延びるように形成され、その外面が切欠き部326dの底面(弁座水平部326aの側面に沿って延びる面)に略同一面上に配置するように形成されている。また、弁座鉛直部326cには、弁座鉛直部326cを貫通して下方に延びる複数(本実施の形態では3つ)のスリット326eが所定の間隔で形成されている。なお、スリット326eの代わりに、弁座鉛直部326cを貫通することなく鉛直方向下方に延びる複数の溝部を形成してもよい。
【0056】
このような構成の上側流体取扱部316を組み立てる際には、図26に示すように、第1の上側流体取扱部317aと第2の上側流体取扱部317bの間に仕切り板321を挿入して固定し、第2の上側流体取扱部317b内に弁体326を挿入するとともに、第1の上側流体取扱部317aに多数のビーズ324を充填すればよい。このようにして上側流体取扱部316を組み立てると、第1の上側流体取扱部317aの上端の開口部を液体試料などの流体を注入するための注入口として使用することができ、第1の上側流体取扱部317a内に上側流体取扱室328の一方の上側流体取扱室である第1の上側流体取扱室328a(図29を参照)が形成されるとともに、弁体326が下端に配置している状態(弁が閉じた状態)で弁体326の上に上側流体取扱室328の他方の上側流体取扱室である第2の上側流体取扱室328bとしての空間が形成される。また、この第2の上側流体取扱室328bの下方には、弁体326が上方に移動した状態(弁が開いた状態)で下側装置本体部314の凹部314aに流体を導入するための連通路が形成される。
【0057】
図27Aおよび図27Bは、本実施の形態の流体取扱装置310の下側装置本体部314の一部を拡大して示している。図27Aは下側装置本体部314の一部を示す平面図であり、図27Bは図27AのXXVIIB−XXVIIB線断面図である。図27Aおよび図27Bに示すように、第3の実施の形態と同様に本実施の形態では、第2の実施の形態のように各々の下側流体取扱部118に分離する外壁部118aを形成せずに、各々の上側流体取扱部316に対応するように一対の突起部318bが所定の間隔で離間して下側装置本体部314の凹部314aの底面から鉛直方向上方に延びている。なお、本実施の形態の突起部318bの幅の方向が、第3の実施の形態の突起部318bと異なり、下側装置本体部314の側面に対して傾斜しているのは、各々の上側流体取扱部316が傾斜していることに対応している。
【0058】
図28および図29に示すように、下側装置本体部314上に上側装置本体部312を載置すると、上側流体取扱部316の外壁部320の切欠き部320dから下側鉛直壁部320c内に侵入した下側装置本体部314の突起部318bによって上側流体取扱部316の弁体326の弁座鉛直部326cの底面が上方に押し上げられて、弁体326が上方に移動し、弁体326の弁座水平部326aの底面が上側流体取扱部316の外壁部320の水平壁部320bの上面から離間して弁が開き、上側流体取扱室328(第1の上側流体取扱室328a、第2の上側流体取扱室328b)に注入された流体が弁体326のスリット326e(図25Aを参照)を介して下側装置本体部314の凹部314a内に導入されて排出口314bから排出される。
【0059】
[第5の実施の形態]
図30〜図34は、本発明による流体取扱装置の第5の実施の形態を示している。本実施の形態では、上述した第1の実施の形態の流体取扱装置10と、排液専用トレイとして使用する下側装置本体部414とを組み合わせている。
【0060】
下側装置本体部414は、第1の実施の形態の下側装置本体部14と同様に、例えば、ポリカーボネート(PC)やポリメタクリル酸メチル(PMMA)などの樹脂材料またはガラス材料により形成された厚さが数mm程度で一辺の長さが数cm〜十数cm程度の大きさの略矩形の平板状の部材からなる。図30に示すように、下側装置本体部414の上面には、略矩形の凹部414aが形成され、その凹部414aの底面に排出口414bが形成されている。また、凹部414aの底面から鉛直方向上方に多数の突起部418bが突出している。各々の突起部418bは、第1の実施の形態の流体取扱装置10の上側装置本体部12の弁体26の各々を押し上げて開くために使用される。
【0061】
図31Aおよび図31Bは、本実施の形態の流体取扱装置において排液専用トレイとして使用する下側装置本体部414の一部を拡大して示している。図31Aは下側装置本体部414の一部を示す平面図であり、図31Bは図31AのXXXIB−XXXIB線断面図である。図31Aおよび図31Bに示すように、下側装置本体部414は、下側装置本体部14のように各々の下側流体取扱部18に分離する外壁部18aを形成せずに、各々の上側流体取扱部16の弁体26の弁棒部26bの底面に対応するようにそれぞれ突起部418bが所定の間隔で離間して下側装置本体部414の凹部414aの底面から鉛直方向上方に延びている。
【0062】
図32および図33に示すように、排液専用トレイとしての下側装置本体部414上に上側装置本体部12を載置すると、下側装置本体部414の突起部418bによって上側流体取扱部16の弁体26の弁棒部26bの底面が上方に押し上げられて、弁体26が上方に移動し、弁体26の弁座水平部26aの底面が上側流体取扱部16の外壁部20の水平壁部20bの上面から離間して弁が開き、上側流体取扱室28に注入された流体が弁体26のスリット226e(図3Aおよび図3Bを参照)を介して下側装置本体部414の凹部414a内に導入されて排出口414bから排出される。
【0063】
次に、図34と図7A〜図7Eを参照して、本実施の形態の流体取扱装置の使用例について説明する。
【0064】
まず、図7Aに示すように、本実施の形態の流体取扱装置の上側装置本体部12の各々の上側流体取扱部16内の網状部材22の上に、抗体をコートした多数のビーズ24を充填する。次に、図7Bに示すように、各々の上側流体取扱部16の弁体26が閉じた状態で反応部としての上側流体取扱室28に抗原を注入して、ビーズ24にコートした抗体と反応させる。次に、上側装置本体部12を排液専用トレイとしての下側装置本体部414上に重ね合わせて、図34に示すように、下側装置本体部414の突起部418bによって上側流体取扱部16の弁体26の弁棒部26bの底面を上方に押し上げて、弁体26を上方に移動させ、弁体26の弁座水平部26aの底面を上側流体取扱部16の外壁部20の水平壁部20bの上面から離間させて弁を開き、上側流体取扱室28内から反応後の液体を弁体26のスリット26eを介して下側装置本体部414の凹部414a内に導入して排出口414bから排出する。反応後の液体を排出した後、各々の上側流体取扱部16の弁体26が開いた状態で上側流体取扱室28に洗浄液を注入して洗浄する。
【0065】
次に、図7Bに示すように、上側装置本体部12を下側装置本体部414から取り外して、各々の上側流体取扱部16の弁体26が閉じた状態で上側流体取扱室28にビオチン標識抗体を加えて反応させる。次に、図34に示すように、上側装置本体部12を排液専用トレイとしての下側装置本体部414上に重ね合わせて弁を開き、上側流体取扱室28内から反応後の液体を弁体26のスリット26eを介して下側装置本体部414の凹部414a内に導入して排出口414bから排出する。反応後の液体を排出した後、各々の上側流体取扱部16の弁体26が開いた状態で上側流体取扱室28に洗浄液を注入して洗浄する。
【0066】
次に、図7Bに示すように、上側装置本体部12を下側装置本体部414から取り外して、各々の上側流体取扱部16の弁体26が閉じた状態で上側流体取扱室28にストレプトアビジン−酵素を加えて反応させる。次に、図34に示すように、上側装置本体部12を排液専用トレイとしての下側装置本体部414上に重ね合わせて弁を開き、上側流体取扱室28内から反応後の液体を弁体26のスリット26eを介して下側装置本体部414の凹部414a内に導入して排出口414bから排出する。反応後の液体を排出した後、各々の上側流体取扱部16の弁体26が開いた状態で上側流体取扱室28に洗浄液を注入して洗浄する。
【0067】
次に、図7Bに示すように、上側装置本体部12を下側装置本体部414から取り外して、各々の上側流体取扱部16の弁体26が閉じた状態で上側流体取扱室28に基質を加えて反応させる。次に、上側装置本体部12を下側装置本体部14上に重ね合わせると、図7Cに示すように、上側装置本体部12の各々の上側流体取扱部16の外壁部20の下側鉛直壁部20cが下側装置本体部14の対応する下側流体取扱部18内に挿入されるとともに、水平壁部20bが下側流体取扱部18に支持される。このとき、下側流体取扱部18の突起部18bによって上側流体取扱部16の弁体26の弁棒部26bの底面が上方に押し上げられて、弁体26が上方に移動し、弁体26の弁座水平部26aの底面が上側流体取扱部16の外壁部20の水平壁部20bの上面から離間して弁が開き、上側流体取扱室28内から反応後の液体が弁体26のスリット26eを介して下側流体取扱部18の内部(下側流体取扱室30)に排出される。このようにして蛍光を発した反応液を下側流体取扱室30内に回収した後、図7Dに示すように、上側装置本体部12を下側装置本体部14から取り外し、下側装置本体部14の各々の下側流体取扱部18の下側流体取扱室30内にピペット32により反応停止液を添加して反応を停止させ、図7Eに示すような状態で蛍光測定を行うことができる。
【0068】
[第6の実施の形態]
図35〜図39は、本発明による流体取扱装置の第6の実施の形態を示している。本実施の形態では、上述した第2の実施の形態の流体取扱装置110と、排液専用トレイとして使用する下側装置本体部514とを組み合わせている。
【0069】
下側装置本体部514は、第2の実施の形態の下側装置本体部114と同様に、例えば、ポリカーボネート(PC)やポリメタクリル酸メチル(PMMA)などの樹脂材料またはガラス材料により形成された厚さが数mm程度で一辺の長さが数cm〜十数cm程度の大きさの略矩形の平板状の部材からなる。図35に示すように、下側装置本体部514の上面には、略矩形の凹部514aが形成され、その凹部514aの底面に排出口514bが形成されている。また、凹部514aの底面から鉛直方向上方に多数の対の突起部518bが突出している。各々の対の突起部518bは、第2の実施の形態の流体取扱装置110の上側装置本体部112の弁体126の各々を押し上げて開くために使用される。
【0070】
図36Aおよび図36Bは、本実施の形態の流体取扱装置において排液専用トレイとして使用する下側装置本体部514の一部を拡大して示している。図36Aは下側装置本体部514の一部を示す平面図であり、図36Bは図36AのXXXVIB−XXXVIB線断面図である。図36Aおよび図36Bに示すように、下側装置本体部514は、下側装置本体部114のように各々の下側流体取扱部118に分離する外壁部118aを形成せずに、各々の上側流体取扱部116の切欠き部120dに対応するようにそれぞれ一対の突起部518bが所定の間隔で離間して下側装置本体部514の凹部514aの底面から鉛直方向上方に延びている。
【0071】
図37および図38に示すように、排液専用トレイとしての下側装置本体部514上に上側装置本体部12を載置すると、上側流体取扱部116の外壁部120の切欠き部120dから下側鉛直壁部120c内に侵入した下側装置本体部514の突起部518bによって上側流体取扱部116の弁体126の弁座鉛直部126bの底面が上方に押し上げられて、弁体126が上方に移動し、弁体126の弁座水平部126aの底面が上側流体取扱部116の外壁部120の水平壁部120bの上面から離間して弁が開き、上側流体取扱室128に注入された流体が弁体126のスリット126e(図10Aおよび図10Bを参照)を介して下側装置本体部514の凹部514a内に導入されて排出口414bから排出される。
【0072】
次に、図39と図15A〜図15Eを参照して、本実施の形態の流体取扱装置の使用例について説明する。
【0073】
まず、図15Aに示すように、本実施の形態の流体取扱装置の上側装置本体部112の各々の上側流体取扱部116内の網状部材122の上に、抗体をコートした多数のビーズ124を充填する。次に、図15Bに示すように、各々の上側流体取扱部116の弁体126が閉じた状態で反応部としての上側流体取扱室128に抗原を注入して、ビーズ124にコートした抗体と反応させる。次に、上側装置本体部112を排液専用トレイとしての下側装置本体部514上に重ね合わせて、図39に示すように、上側流体取扱部116の外壁部120の切欠き部120dから下側鉛直壁部120c内に侵入した下側装置本体部514の突起部518bによって上側流体取扱部116の弁体126の弁座鉛直部126cの底面を上方に押し上げて、弁体126を上方に移動させ、弁体126の弁座水平部126aの底面を上側流体取扱部116の外壁部120の水平壁部120bの上面から離間させて弁を開き、上側流体取扱室128内から反応後の液体を弁体126のスリット126eを介して下側装置本体部514の凹部514a内に導入して排出口514bから排出する。反応後の液体を排出した後、各々の上側流体取扱部116の弁体126が開いた状態で上側流体取扱室128に洗浄液を注入して洗浄する。
【0074】
次に、図15Bに示すように、上側装置本体部112を下側装置本体部514から取り外して、各々の上側流体取扱部116の弁体126が閉じた状態で上側流体取扱室128にビオチン標識抗体を加えて反応させる。次に、図39に示すように、上側装置本体部112を排液専用トレイとしての下側装置本体部514上に重ね合わせて弁を開き、上側流体取扱室128内から反応後の液体を弁体126のスリット126eを介して下側装置本体部514の凹部514a内に導入して排出口514bから排出する。反応後の液体を排出した後、各々の上側流体取扱部116の弁体126が開いた状態で上側流体取扱室128に洗浄液を注入して洗浄する。
【0075】
次に、図15Bに示すように、上側装置本体部112を下側装置本体部514から取り外して、各々の上側流体取扱部116の弁体126が閉じた状態で上側流体取扱室128にストレプトアビジン−酵素を加えて反応させる。次に、図39に示すように、上側装置本体部112を排液専用トレイとしての下側装置本体部514上に重ね合わせて弁を開き、上側流体取扱室128内から反応後の液体を弁体126のスリット126eを介して下側装置本体部514の凹部514a内に導入して排出口514bから排出する。反応後の液体を排出した後、各々の上側流体取扱部116の弁体126が開いた状態で上側流体取扱室128に洗浄液を注入して洗浄する。
【0076】
次に、図15Bに示すように、上側装置本体部112を下側装置本体部514から取り外して、各々の上側流体取扱部116の弁体126が閉じた状態で上側流体取扱室128に基質を加えて反応させる。次に、上側装置本体部112を下側装置本体部114上に重ね合わせると、図15Cに示すように、上側装置本体部112の各々の上側流体取扱部116の外壁部120の下側鉛直壁部120cが下側装置本体部114の対応する下側流体取扱部118内に挿入されるとともに、水平壁部120bが下側流体取扱部118に支持される。このとき、下側流体取扱部118の突起部118bによって上側流体取扱部116の弁体126の弁棒部126bの底面が上方に押し上げられて、弁体126が上方に移動し、弁体126の弁座水平部126aの底面が上側流体取扱部116の外壁部120の水平壁部120bの上面から離間して弁が開き、上側流体取扱室128内から反応後の液体が弁体126のスリット126eを介して下側流体取扱部118の内部(下側流体取扱室130)に排出される。このようにして蛍光を発した反応液を下側流体取扱室130内に回収した後、図15Dに示すように、上側装置本体部112を下側装置本体部114から取り外し、下側装置本体部114の各々の下側流体取扱部118の下側流体取扱室130内にピペット132により反応停止液を添加して反応を停止させ、図15Eに示すような状態で蛍光測定を行うことができる。
【0077】
上述したように、第1および第2の実施の形態の流体取扱装置10、110では、下側流体取扱部18、118上に上側流体取扱部16、116を載置するだけで弁体26、126が開いて、上側流体取扱室28、128内の流体を下側流体取扱室30、130内に排出することができるので、簡単な構造で流体を排出することができるとともに、下側流体取扱室30、130の底部を透明な部材によって形成すれば、吸光測定法に適用することができる。
【0078】
また、第3および第4の実施の形態の流体取扱装置210、310では、下側装置本体部214、314上に上側装置本体部212、312を載置するだけで弁体226、326が開いて、上側流体取扱室228、328内の流体を下側装置本体部214、314の凹部214a、314a内に排出することができるので、簡単な構造で流体を排出することができるとともに、弁体226、326を透明な部材によって形成すれば、吸光測定法に適用することができる。
【0079】
また、第5および第6の実施の形態のように、第1および第2の実施の形態の流体取扱装置10、110と、排液専用トレイとしての下側装置本体部414、514とを組み合わせて使用すれば、簡単な構造で流体を排出することができるとともに、下側流体取扱室30、130の底部を透明な部材によって形成すれば、吸光測定法に適用することができる。
【0080】
さらに、第1〜第6の実施の形態の流体取扱装置では、上側流体取扱室28、128、228、328内に多数のビーズ24、124、224、324を充填することにより、上側流体取扱室28、128、228、328内の流路の内面の表面積を増大し、流体取扱装置を試料分析装置として使用した場合に、ビーズ24、124、224、324の表面を捕体の支持面(反応面)として利用すれば、捕体の支持面(反応面)の表面積を増大して、流体との接触面積を増大することができる。また、大きな反応面上で連続的に液を流動させることによって、反応効率が高まり、反応時間の短縮と測定感度の向上を図ることができる。なお、上側流体取扱室28、128、228、328内の流路の内面の表面積を増大するために使用するビーズ24、124、224、324の代わりに、図40Aおよび図40Bに示すように、上側流体取扱室28、128または第1の上側流体取扱室228a、328aと略同一の平面形状の略立方体または略円柱形の単一の吸水性部材34、134を使用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明による流体取扱装置の第1の実施の形態を示す斜視図である。
【図2A】図1の流体取扱装置の上側流体取扱部を拡大して示す平面図である。
【図2B】図2AのIIB−IIB線断面図である。
【図2C】図2Aの上側流体取扱部の底面図である。
【図2D】図2Aからビーズを取り除いた上側流体取扱部の平面図である。
【図2E】図2Dから網状部材を取り除いた上側流体取扱部の平面図である。
【図2F】図2Eから弁体を取り除いた上側流体取扱部の平面図である。
【図3A】図2Aの上側流体取扱部に使用する弁体の斜視図である。
【図3B】図3Aの弁体の側面図である。
【図3C】図3Aの弁体の平面図である。
【図3D】図3Aの弁体の底面図である。
【図3E】図3CのIIIE−IIIE線断面図である。
【図4】図2Aの上側流体取扱部の組立方法を説明する斜視図である。
【図5A】図1の流体取扱装置の下側流体取扱部を拡大して示す平面図である。
【図5B】図5AのVB−VB線断面図である。
【図6】図5Aの下側流体取扱部に図2Aの上側流体取扱部を載置して弁体を開く状態を説明する断面図である。
【図7A】本発明による流体取扱装置の第1の実施の形態の使用例を説明する図である。
【図7B】本発明による流体取扱装置の第1の実施の形態の使用例を説明する図である。
【図7C】本発明による流体取扱装置の第1の実施の形態の使用例を説明する図である。
【図7D】本発明による流体取扱装置の第1の実施の形態の使用例を説明する図である。
【図7E】本発明による流体取扱装置の第1の実施の形態の使用例を説明する図である。
【図8】本発明による流体取扱装置の第2の実施の形態を示す斜視図である。
【図9A】図8の流体取扱装置の上側流体取扱部を拡大して示す平面図である。
【図9B】図9AのIXB−IXB線断面図である。
【図9C】図9Aの上側流体取扱部の底面図である。
【図9D】図9Aの上側流体取扱部の側面図である。
【図10A】図9Aの上側流体取扱部に使用する弁体の斜視図である。
【図10B】図10Aの弁体の側面図である。
【図10C】図10Aの弁体の平面図である。
【図10D】図10Aの弁体の底面図である。
【図10E】図10CのXE−XE線断面図である。
【図11】図9Aの上側流体取扱部の組立方法を説明する斜視図である。
【図12A】図8の流体取扱装置の下側流体取扱部を拡大して示す平面図である。
【図12B】図12AのXIIB−XIIB線断面図である。
【図13】図12Aの下側流体取扱部に図9Aの上側流体取扱部を載置する状態を説明する斜視図である。
【図14】図12Aの下側流体取扱部に図9Aの上側流体取扱部を載置して弁体を開く状態を説明する断面図である。
【図15A】本発明による流体取扱装置の第2の実施の形態の使用例を説明する図である。
【図15B】本発明による流体取扱装置の第2の実施の形態の使用例を説明する図である。
【図15C】本発明による流体取扱装置の第2の実施の形態の使用例を説明する図である。
【図15D】本発明による流体取扱装置の第2の実施の形態の使用例を説明する図である。
【図15E】本発明による流体取扱装置の第2の実施の形態の使用例を説明する図である。
【図16】本発明による流体取扱装置の第3の実施の形態を示す斜視図である。
【図17A】図16の流体取扱装置の上側流体取扱部を拡大して示す平面図である。
【図17B】図17AのXVIIB−XVIIB線断面図である。
【図17C】図17Aの上側流体取扱部の底面図である。
【図17D】図17Aの上側流体取扱部の側面図である。
【図18】図17Aの上側流体取扱部の組立方法を説明する斜視図である。
【図19A】図16の流体取扱装置の下側装置本体部の一部を拡大して示す平面図である。
【図19B】図19AのXIXB−XIXB線断面図である。
【図20】図19Aの下側装置本体扱部に図17Aの上側流体取扱部を載置する状態を説明する斜視図である。
【図21】図19Aの下側装置本体部に図17Aの上側流体取扱部を載置して弁体を開く状態を説明する断面図である。
【図22A】本発明による流体取扱装置の第3の実施の形態の使用例を説明する図である。
【図22B】本発明による流体取扱装置の第3の実施の形態の使用例を説明する図である。
【図22C】本発明による流体取扱装置の第3の実施の形態の使用例を説明する図である。
【図22D】本発明による流体取扱装置の第3の実施の形態の使用例を説明する図である。
【図22E】本発明による流体取扱装置の第3の実施の形態の使用例を説明する図である。
【図22F】本発明による流体取扱装置の第3の実施の形態の使用例を説明する図である。
【図23A】本発明による流体取扱装置の第4の実施の形態を示す平面図である。
【図23B】図23Aの流体取扱装置の下側装置本体部の平面図である。
【図24A】図23Aの流体取扱装置の上側流体取扱部を拡大して示す平面図である。
【図24B】図24AのXXIVB−XXIVB線断面図である。
【図24C】図24Aの上側流体取扱部の側面図である。
【図25A】図24Aの上側流体取扱部に使用する弁体の斜視図である。
【図25B】図25Aの弁体の平面図である。
【図25C】図25BのXXVC−XXVC線断面図である。
【図26】図24Aの上側流体取扱部の組立方法を説明する斜視図である。
【図27A】図23Bの下側装置本体部の一部を拡大して示す平面図である。
【図27B】図27AのXXVIIB−XXVIIB線断面図である。
【図28】図27Aの下側装置本体部に図24Aの上側流体取扱部を載置する状態を説明する斜視図である。
【図29】図27Aの下側装置本体部に図24Aの上側流体取扱部を載置して弁体を開く状態を説明する断面図である。
【図30】本発明による流体取扱装置の第5の実施の形態において排液専用トレイとして使用する下側装置本体部を示す斜視図である。
【図31A】図30の下側装置本体部の一部を拡大して示す平面図である。
【図31B】図31AのXXXIB−XXXIB線断面図である。
【図32】図30の下側装置本体扱部に図2Aの上側流体取扱部を載置する状態を説明する斜視図である。
【図33】図30の下側装置本体部に図2Aの上側流体取扱部を載置して弁体を開く状態を説明する断面図である。
【図34】本発明による流体取扱装置の第5の実施の形態の使用例を説明する図である。
【図35】本発明による流体取扱装置の第6の実施の形態において排液専用トレイとして使用する下側装置本体部を示す斜視図である。
【図36A】図35の下側装置本体部の一部を拡大して示す平面図である。
【図36B】図36AのXXXVIB−XXXVIB線断面図である。
【図37】図35の下側装置本体扱部に図9Aの上側流体取扱部を載置する状態を説明する斜視図である。
【図38】図35の下側装置本体部に図9Aの上側流体取扱部を載置して弁体を開く状態を説明する断面図である。
【図39】本発明による流体取扱装置の第6の実施の形態の使用例を説明する図である。
【図40A】第1〜第3、第5および第6の実施の形態の流体取扱装置においてビーズの代わりに使用可能な吸水性部材の斜視図である。
【図40B】第4の実施の形態の流体取扱装置においてビーズの代わりに使用可能な吸水性部材の斜視図である。
【符号の説明】
【0082】
10、110、210、310 流体取扱装置
12、112、212、312 上側装置本体部
14、114、214、314、414、514 下側装置本体部
16、116、216、316 上側流体取扱部
18、118 下側流体取扱部
18a、118a 外壁部
18b、118b、218b、318b、418b、518b 突起部
20、120、220、320 外壁部
20a、120a、220a、320a 上側鉛直壁部
20b、120b、220b、320b 水平壁部
20c、120c、220c、320c 下側鉛直壁部
22、122 網状部材
24、124、224、324 ビーズ
26、126、226、326 弁体
26a、126a、226a、326a 弁座水平部
26b 弁棒部
26c、126c、226c、326c 弁座鉛直部
26d、126d、226d、326d 切欠き部
26e、126e、226e、326e スリット
28、128、228、328 上側流体取扱室
30、130 下側流体取扱室
32、132、232 ピペット
34、134 吸水性部材
120d、220d、320d 切欠き部
214a、314a、414a、514a 凹部
214b、314b、414b、514b 排出口
217a、317a 第1の上側流体取扱部
217b、317b 第2の上側流体取扱部
221、321 仕切り板
223、323 スリット
228a、328a 第1の上側流体取扱室
228b、328b 第2の上側流体取扱室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の上側流体取扱部が配列された上側装置本体と、この上側装置本体を載置可能な下側装置本体とからなり、
前記上側装置本体の前記複数の上側流体取扱部の各々が、流体を注入するための注入口と、この注入口から注入された流体を収容するための上側流体収容室と、この上側流体収容室内に配置されて前記上側流体収容室内の流体が前記上側流体収容室内で接触する表面の面積を増大させる表面積増大部材と、前記上側流体収容室内の流体を下方に排出するための排出口と、この排出口を開閉する弁体とを備え、
前記下側装置本体が、前記上側流体収容室から排出された流体を収容するための下側流体収容部を備え、前記下側装置本体上に前記上側装置本体を載置すると前記複数の上側流体取扱部の各々の弁体が開くことを特徴とする、流体取扱装置。
【請求項2】
前記下側装置本体の前記下側流体収容部の底面から上方に突出する突起部が、前記複数の上側流体取扱部の各々に対応して形成され、前記下側装置本体上に前記上側装置本体を載置すると前記突起部が前記弁体を上方に押し上げて開くことを特徴とする、請求項1に記載の流体取扱装置。
【請求項3】
前記表面積増大部材の通過を防止し且つ流体の通過を許容する開口部が形成された保持部材が、前記表面積増大部材と前記弁体との間に配置されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の流体取扱装置。
【請求項4】
前記複数の上側流体取扱部の各々の上側流体取扱室が、前記表面積増大部材を収容した第1の上側流体取扱室と、前記弁体を取り付けた第2の上側流体取扱室に分離され、これらの第1および第2の上側流体取扱室の間に前記保持部材が配置されていることを特徴とする、請求項3に記載の流体取扱装置。
【請求項5】
前記下側装置本体の前記下側流体収容部が、前記複数の上側流体取扱部の各々の上側流体収容室に対応するように互いに分離された複数の下側流体取扱室からなることを特徴とする、請求項1または2に記載の流体取扱装置。
【請求項6】
前記下側装置本体の前記下側流体収容部が、前記複数の上側流体取扱部の各々の上側流体収容室に対応するように互いに分離された複数の下側流体取扱室からなり、前記保持部材が前記弁体の上方に配置されて前記表面積増大部材を支持していることを特徴とする、請求項3に記載の流体取扱装置。
【請求項7】
前記下側装置本体の前記下側流体収容部の底面に流体を排出するための排出口が形成されていることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載の流体取扱装置。
【請求項8】
前記弁体が透明な部材からなることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれかに記載の流体取扱装置。
【請求項9】
前記表面積増大部材が多数の微小粒状物であることを特徴とする、請求項1乃至8のいずれかに記載の流体取扱装置。
【請求項10】
前記表面積増大部材が単一の部材からなることを特徴とする、請求項1乃至8のいずれかに記載の流体取扱装置。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図2F】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図7E】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【図10E】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【図15C】
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【図15D】
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【図15E】
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【図16】
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【図17A】
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【図17B】
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【図17C】
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【図17D】
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【図18】
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【図19A】
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【図19B】
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【図20】
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【図21】
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【図22A】
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【図22B】
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【図22C】
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【図22D】
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【図22E】
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【図22F】
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【図23A】
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【図23B】
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【図24A】
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【図24B】
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【図24C】
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【図25A】
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【図25B】
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【図25C】
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【図26】
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【図27A】
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【図27B】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31A】
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【図31B】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36A】
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【図36B】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40A】
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【図40B】
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