説明

流体噴射反力回転式洗浄装置

【課題】高い洗浄効率を有し、取扱性に優れた流体噴射反力回転式洗浄装置を提供する。
【解決手段】流体噴射反力回転式洗浄装置10は、流体を噴射する複数の噴射ノズル11を有する回転体12と、配管100に接続・支持されるとともに回転体12を回転自在に支持する基軸体13とを有する。基軸体13の外周部と回転体12の内周部の間に形成された内室に流体を供給し、内室に連通する回転体の流体給送路へ半径方向に流体を圧送する。噴射ノズル11から噴射する流体の反力によって回転体12が回転する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業設備等を洗浄する際、その洗浄装置として好適な流体噴射反力回転式洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種産業分野において、産業設備等を効率的に洗浄すべく、従来幾つかの洗浄装置が開発されている。たとえば洗浄水を噴射する噴射ノズルを首振りおよび往復移動可能にしたものが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2001−87676号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来装置の多くは噴射ノズル自体は固定式であり、洗浄可能な方向および対象、さらには面積が制約されることから洗浄範囲が制限される。そして1台の装置でカバーできる範囲が限定されるため、設置箇所が多くならざるを得なかった。また、装置の設置、取付作業に手間がかかり、設置工事も煩雑になっていた。
【0005】
本発明はかかる実情に鑑み、高い洗浄効率を有し、取扱性に優れた流体噴射反力回転式洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の流体噴射反力回転式洗浄装置は、流体を噴射する複数の噴射ノズルを有する回転体と、配管に接続・支持されるとともに前記回転体を回転自在に支持する基軸体とを有し、前記基軸体の外周部と前記回転体の内周部の間に形成された内室に前記流体を供給し、前記内室に連通する前記回転体の流体給送路へ半径方向に前記流体を圧送し、前記噴射ノズルから噴射する前記流体の反力によって前記回転体が回転するようにしたことを特徴とする。
【0007】
また、本発明の流体噴射反力回転式洗浄装置において、前記回転体は、前記基軸体の長手方向に隔置された軸受を介して、前記基軸体のまわりに回転自在に軸支され、前記内室が前記軸受の間に挟まれるように配置されることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の流体噴射反力回転式洗浄装置において、前記軸受のスラスト方向端面に当接するフランジ部の内面に、概略放射状もしくは半径方向に形成されたスリット状溝を持つことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の流体噴射反力回転式洗浄装置において、前記基軸体の外周部にさらに、スリット状溝を持つことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、配管から基軸体を通って回転体の流体給送路へ流体を圧送することにより、噴射ノズルから噴射する流体の反力によって回転体が回転し、広い洗浄対象を極めて効率良く洗浄することができる。この場合、基軸体の外周部と回転体の内周部の間に内室が形成され、この内室に連通する回転体の流体給送路へ半径方向に流体を圧送する。これにより水圧によって回転体に対してスラスト荷重を生じさせるのを実質的に抑制し、回転体を円滑かつ効率的に回転作動させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明による流体噴射反力回転式洗浄装置の好適な実施の形態を説明する。
図1は、本発明の流体噴射反力回転式洗浄装置の全体構成例を示している。この流体噴射反力回転式洗浄装置10は、流体を噴射する複数の噴射ノズル11を有する回転体12と、配管100に接続・支持されるとともに回転体12を回転自在に支持する基軸体13とを有し、噴射ノズル11から噴射する流体の反力によって回転体12が回転するようになっている。
【0012】
なお、本実施形態ではたとえば各種産業設備等を洗浄する際、本発明の流体噴射反力回転式洗浄装置を使用するものとする。また、噴射ノズル11からは典型的には水を噴射する例とするが、本発明装置の使用対象あるいは流体としてその他の設備類または流体に対して有効に適用可能である。
【0013】
図2および図3は、流体噴射反力回転式洗浄装置10の詳細構造を示している。回転体12は概略円筒状を呈し、その軸方向ほぼ中央部位置の外周面から半径方向に一対のアーム14が延出する。各アーム14の先端には噴射ノズル11が取り付けられるが、アーム14の端部は相互に反対方向を向くように屈曲する。噴射ノズル11の中心部には吹出穴11aが貫通形成されており、該吹出穴11aからスプレー状等に水を噴射するようになっている。該吹出穴11aから典型的には噴射ノズル11の回転円周の接線方向に水が噴射される。
【0014】
回転体12から延出するアーム14はパイプ状に形成され、内部に流体給送路15を有する。基軸体13の外周部と回転体12の内周部の間には内室16が形成され、流体給送路15は内室16に開口して(開口15a)連通する。後述するように基軸体13から内室16に水が供給され、さらにその水は回転体12の流体給送路15へ半径方向に圧送される。
【0015】
回転体12は、基軸体13の軸方向(スラスト方向)に隔置された2つの軸受17を介して、基軸体13のまわりに回転自在に軸支される。内室16は軸受17の間に挟まれるように配置される。軸受17は典型的にはテフロン(登録商標)等によりリング状に形成され、回転体12の内周部に形成された段部12aに嵌るようになっている。回転体12および軸受17は、上下のフランジ18,19間に配置され、実質的にガタつかないように保持される。
【0016】
この例では上フランジ18は基軸体13と別体に構成され、ボルト20によって基軸体13の上端部に締着される。下フランジ19は基軸体13と一体に構成される。
【0017】
基軸体13の内部には配管100内部に連通する流体給送路21が形成される。流体給送路21はアーム14とほぼ同一高さ位置まで形成され、基軸体13の外周部に開口して(開口21a)内室16に連通する。図2に示されるようにアーム14の流体給送路15と基軸体13の流体給送路21とは、内室16を挟んで対向するように開口する。
【0018】
なお、基軸体13の下端部にネジ部13aを有し、このネジ部13aにて配管100に螺着するようにしている。
【0019】
軸受17のスラスト方向端面に当接するフランジ18,19の内面に、概略放射状もしくは半径方向に形成されたスリット状溝を持つ。たとえば図3に示されるように各フランジ18,19の中心部から外周部にかけて、それぞれ適度な深さの溝22,23が形成される。
【0020】
また、基軸体13の外周部にさらに、スリット状溝24を持つ。溝24は適度な深さで基軸体13の外周部にたとえば螺旋状に形成され、その場合上下のフランジ18,19の溝22,23の中心部側に繋がるように形成される。
【0021】
上記構成において、配管100から基軸体13の流体給送路21を介して、内室16へ水が圧送され、さらに内室16からアーム14の流体給送路15を介して、噴射ノズル11へと水が圧送される。噴射ノズル11の吹出穴11aから水が噴射することにより、その水の反力によって回転体12、したがって噴射ノズル11自身が回転する。各噴射ノズル11からは図1に示されるように環状のスプレーSが形成され、このように噴射ノズル11自身が回転することで極めて広い洗浄対象を効率良く洗浄することができる。したがって、各種産業設備等を極めて効率的に、しかも完全に洗浄することができる。
【0022】
上記の場合、内室16に面する各軸受17の一部にはスラスト方向の水圧が作用する。この水圧によるスラスト荷重は、上下の固定のフランジ18,19により受けられ、回転体12には実質的にスラスト荷重が作用しない。すなわち、回転体12の段部12aや端面における軸受17やフランジ18,19との接触部に摩擦力が実質的に発生しないため回転体12は極めて円滑に回転する。また、摩擦力がないので水圧を効率的に利用することができる。
【0023】
また、水に混入したゴミ等の不純物は、内室16から基軸体13の溝24を通って、さらに各フランジ18,19の溝22,23を介して中心部から外周部へと排出される。このように装置の作動中、不純物が噴射ノズル11に到達する前に予め装置外部へ排出することができ、不純物等による回転体12の回転不良や噴射ノズル11のゴミ詰まり等を未然に防ぐことができる。この点でも装置の円滑作動が保証される。
【0024】
本発明装置を取付設置する場合、基軸体13の下端部にネジ部13aを配管100に螺合させるだけで簡単かつ的確に取り付けることができる。したがって設置、取付作業に手間がかからず、設置工事が容易である。
【0025】
上記のように本発明を好適な実施形態について説明したが、本発明はそれらの実施形態にのみ限定されるものでなく、本発明の範囲内で適宜変更等が可能である。
たとえば、噴射ノズル11の個数等は必要に応じて増減することができる。すなわち、単一の噴射ノズル11を有し、あるいは3つ以上の噴射ノズル11を有してもよく、いずれの場合にも上述の実施形態と同様に、各噴射ノズル11から水が噴射することにより、その水の反力によって回転体12が円滑に回転する。
また、本発明装置は、その他の種々の設備や装置等の洗浄に有効に適用である。その場合、噴射すべき流体として、水の他の流体を使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の流体噴射反力回転式洗浄装置の全体構成例を示す斜視図である。
【図2】本発明の流体噴射反力回転式洗浄装置の具体的構造を示す断面図である。
【図3】本発明の流体噴射反力回転式洗浄装置の具体的構造を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0027】
10 流体噴射反力回転式洗浄装置
11 噴射ノズル
11a 吹出穴
12 回転体
12a 段部
13 基軸体
14 アーム
15 流体給送路
16 内室
17 軸受
18 上フランジ
19 下フランジ
21 流体給送路
22,23,24 溝
100 配管





【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を噴射する複数の噴射ノズルを有する回転体と、配管に接続・支持されるとともに前記回転体を回転自在に支持する基軸体とを有し、
前記基軸体の外周部と前記回転体の内周部の間に形成された内室に前記流体を供給し、前記内室に連通する前記回転体の流体給送路へ半径方向に前記流体を圧送し、前記噴射ノズルから噴射する前記流体の反力によって前記回転体が回転するようにしたことを特徴とする流体噴射反力回転式洗浄装置。
【請求項2】
前記回転体は、前記基軸体の長手方向に隔置された軸受を介して、前記基軸体のまわりに回転自在に軸支され、前記内室が前記軸受の間に挟まれるように配置されることを特徴とする請求項1に記載の流体噴射反力回転式洗浄装置。
【請求項3】
前記軸受のスラスト方向端面に当接するフランジ部の内面に、概略放射状もしくは半径方向に形成されたスリット状溝を持つことを特徴とする請求項2に記載の流体噴射反力回転式洗浄装置。
【請求項4】
前記基軸体の外周部にさらに、スリット状溝を持つことを特徴とする請求項3に記載の流体噴射反力回転式洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−61858(P2006−61858A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−248609(P2004−248609)
【出願日】平成16年8月27日(2004.8.27)
【出願人】(502343159)有限会社香取組製作所 (1)
【Fターム(参考)】