説明

流体噴射装置、及び、流体噴射方法

【課題】表面が凹凸形状であり、且つ、高画質な画像を形成すること。
【解決手段】(A)電磁波を照射すると硬化する無色の流体を噴射するノズルと、(B)前記無色の流体に対して前記電磁波を照射する照射部と、(C)画像が形成された媒体上に複数の領域を定め、各前記領域に設定された高さデータに基づいて、各前記領域で硬化される前記無色の流体の高さを制御する制御部と、を有することを特徴とする流体噴射装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体噴射装置、及び、流体噴射方法に関する。
【背景技術】
【0002】
流体噴射装置として、紙や布、フィルムなどの各種媒体に流体(例えばインク)を噴射して、画像の印刷を行うインクジェットプリンターが知られている。
また、プリンターには、紫外線を照射すると硬化するインク(紫外線硬化型インク)を使用するものがある。その中でも、媒体上に着弾した紫外線硬化型インクを盛り上がった状態で硬化し、点字を印刷するプリンターが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−80598
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、点字のように触覚だけで内容を捉える画像に限らず、視覚的にも触覚的にも楽しめるように、画像表面が凹凸形状であり、且つ、高画質な画像の需要が高まっている。しかし、有色の紫外線硬化型インクだけで、表面が凹凸形状である画像を印刷しようとすると、例えば、凸部が凹部に比べて濃く印刷されるなどして、濃度むらが発生してしまう。
そこで、本発明は、表面が凹凸形状であり、且つ、高画質な画像を形成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、主たる本発明は、(A)電磁波を照射すると硬化する無色の流体を噴射するノズルと、(B)前記無色の流体に対して前記電磁波を照射する照射部と、(C)画像が形成された媒体上に複数の領域を定め、各前記領域に設定された高さデータに基づいて、各前記領域で硬化される前記無色の流体の高さを制御する制御部と、を有することを特徴とする流体噴射装置である。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】印刷システムの構成ブロック図である。
【図2】図2Aはプリンターの概略断面図であり、図2Bはプリンターの概略上面図である。
【図3】図3Aはキャリッジを示す図であり、図3Bは照射条件の違いによる無色インクのドットの違いを示す図である。
【図4】図4A及び図4Bはプリンターが印刷する画像を示す図である。
【図5】印刷方法例1のフローを示す図であり、
【図6】図6Aから図6Fは印刷方法例1を説明するための図である。
【図7】比較例の印刷方法を説明するための図である。
【図8】印刷方法例2のフローを示す図である。
【図9】印刷方法例2を説明するための図である。
【図10】比較例の印刷方法を説明するための図である。
【図11】無色インクのドットを形成する領域の変形例を示す図である。
【図12】表面が凹凸形状である画像の変形例を示す図である。
【図13】表面が凹凸形状である画像の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書及び添付図面の記載により少なくとも次のことが明らかにされる。
【0008】
即ち、(A)電磁波を照射すると硬化する無色の流体を噴射するノズルと、(B)前記無色の流体に対して前記電磁波を照射する照射部と、(C)画像が形成された媒体上に複数の領域を定め、各前記領域に設定された高さデータに基づいて、各前記領域で硬化される前記無色の流体の高さを制御する制御部と、を有することを特徴とする流体噴射装置を実現すること。
このような流体噴射装置によれば、表面が凹凸形状であり、且つ、高画質な画像を形成することができる。
【0009】
かかる流体噴射装置であって、前記制御部は、各前記領域に設定された前記高さデータに基づいて、前記ノズルから前記領域に前記無色の流体を噴射し前記照射部から前記領域上の前記無色の流体に前記電磁波を照射する動作を行わせる回数を、前記領域ごとに変えること。
このような流体噴射装置によれば、各領域の無色の流体の高さを制御することができる。
【0010】
かかる流体噴射装置であって、前記制御部は、先の前記動作における前記ノズルから前記媒体までの距離と、後の前記動作における前記ノズルから前記媒体までの距離と、を異ならせること。
このような流体噴射装置によれば、無色の流体をより正確な位置に着弾させることができる。
【0011】
かかる流体噴射装置であって、前記制御部は、先の前記動作において前記ノズルから前記無色の流体を噴射させるタイミングと、後の前記動作において前記ノズルから前記無色の流体を噴射させるタイミングと、を異ならせること。
このような流体噴射装置によれば、無色の流体をより正確な位置に着弾させることができる。
【0012】
かかる流体噴射装置であって、前記制御部は、各前記領域に設定された前記高さデータに基づいて、前記領域に噴射される前記無色の流体に対して前記照射部から照射する前記電磁波の照射条件を、前記領域ごとに変えること。
このような流体噴射装置によれば、各領域の無色の流体の高さを制御することができる。
【0013】
かかる流体噴射装置であって、前記複数の領域のうち、第1の高さが設定された第1の領域と、前記第1の高さよりも低い第2の高さが設定された第2の領域と、において、前記制御部は、1つの前記第1の領域に対して1つの前記ノズルを割り当て、複数の前記第2の領域に対して1つの前記ノズルを割り当てること。
このような流体噴射装置によれば、無色の流体の高さ制御を容易にすることができる。
【0014】
かかる流体噴射装置であって、有色の流体で画像が形成された媒体上に前記無色の流体を噴射し、前記媒体に前記有色の流体で形成された前記画像を構成する画素の大きさよりも、前記領域の方が大きいこと。
このような流体噴射装置によれば、無色の流体の高さ制御を容易にすることができる。
【0015】
また、電磁波を照射すると硬化する無色の流体を噴射する流体噴射方法であって、画像が形成された媒体上に複数の領域を定めることと、各前記領域に設定された高さデータに基づいて、各前記領域に前記無色の流体を噴射し、各前記領域で硬化される前記無色の流体の高さを制御することと、を有することを特徴とする流体噴射方法である。
このような流体噴射方法によれば、表面が凹凸形状であり、且つ、高画質な画像を形成することができる。
【0016】
===プリンター1について===
図1は、印刷システムの構成ブロック図である。図2Aはプリンター1の概略断面図であり、図2Bはプリンター1の概略上面図である。本実施形態のプリンター1は連続紙(以下、用紙S)に対して印刷を行うとする。まず、プリンター1はコンピューター70から印刷データを受信すると、コントローラー10により各ユニット(搬送ユニット20、駆動ユニット30、ヘッドユニット40、照射ユニット50)を制御し、用紙Sに画像を形成する。なお、検出器群60によりプリンター1内の状況が監視され、コントローラー10はその検出結果に基づいて各ユニットを制御する。
【0017】
搬送ユニット20は、用紙Sが連続する方向(以下、搬送方向)に沿って、上流側から下流側に用紙Sを搬送するものである。なお、印刷中の印刷領域では、用紙Sが下からバキューム吸着され、用紙Sは所定の位置に保持される。
【0018】
駆動ユニット30は、キャリッジ31を、搬送方向に対応するX方向と、用紙Sの幅方向に対応するY方向とに自在に移動させるものである。駆動ユニット30は、キャリッジ31をX方向に移動させるX軸ステージ32と、X軸ステージ31をY方向に移動させるY軸ステージ33を有する。
【0019】
ヘッドユニット40は、用紙Sにインクを噴射するためのヘッド41を有する。ヘッド41の下面には、インク噴射部であるノズルが複数設けられる。そして、各ノズルには、インクが入った圧力室(不図示)と、圧力室の容量を変化させてインクを噴射させるための駆動素子(例えばピエゾ素子)が設けられている。駆動素子に駆動信号(駆動波形)が印加されることにより、駆動素子は変形し、その変形に伴って圧力室が膨張・収縮することによりインクが噴射される。
【0020】
照射ユニット50は、ヘッド41から噴射された「紫外線硬化型インク」を硬化するためのものであり、2つの照射部(第1照射部51と第2照射部52)を有する。
【0021】
各ユニットの動きをまとめると、まず、搬送ユニット20によって未だ印刷がなされていない用紙部分が印刷領域に供給される。そして、X軸ステージ32によってキャリッジ31(ヘッド41)がX方向(搬送方向)に移動し、この移動中に印刷領域の用紙Sに対してノズルからインクが噴射され、用紙SにはX方向に沿ったドット列が形成される。その後、キャリッジ31は、Y軸ステージ33により、X軸ステージ32を介して、Y方向(幅方向)に移動し、その後、再び、キャリッジ31(ヘッド41)がX方向に移動しながらノズルからインクが噴射される。このように、キャリッジ31のX方向への移動によるドット形成動作と、キャリッジ31のY方向への移動動作と、を交互に繰り返すことで、先のドット形成動作により形成されたドットの位置とは異なる位置にドットが形成され、画像が完成する。印刷領域に位置する用紙部分の印刷が終了すると、搬送ユニット20によって未だ印刷がなされていない用紙部分が再び印刷領域に供給される。そして、印刷が終了した用紙部分は、搬送方向の下流側にて必要な大きさに裁断される(不図示)。
【0022】
図3Aは、キャリッジ31に搭載されたヘッド41と第1照射部51と第2照射部52を示す図である。以下、ヘッドユニット40と照射ユニット50について詳しく説明する。図3Aはキャリッジ31を上から見た図であり、ノズルの配置等を仮想的に示した図である。キャリッジ31の中央部にヘッド41が設けられ、X方向(搬送方向)の左側(下流側)に第1照射部51が設けられ、X方向の右側(上流側)に第2照射部52が設けられている。
【0023】
ヘッド41の下面には、有色インク(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)を噴射するノズルと、無色透明の紫外線硬化型インク(以下、無色インクとも呼ぶ)を噴射するノズルと、が設けられている。ここで、紫外線硬化型インクとは、紫外線を照射すると硬化するインクであり、ビヒクル、光重合開始剤及び顔料の混合物に、消泡剤、重合禁止剤等の補助剤を添加して調合される。なお、ビヒクルは、光重合硬化性を有するオリゴマー、モノマー等を、反応性希釈剤により粘度調整して調合される。インクとしては、水性インクと油性インクの両方を含むものとする。なお、本実施形態では有色インクは紫外線硬化型インクでないとする。しかし、これに限らず、有色インクも紫外線硬化型インクであってもよい。また、無色透明の紫外線硬化型インクは完全な透明に限らない。詳細は後述するが、本実施形態では用紙Sに有色インクを噴射した後、その上に無色インクを噴射する。そのため、無色インクは、有色インクで形成された画像を透過できる程度に半透明なインクであってもよい。
【0024】
ノズルは、噴射するインクの種類ごとに、幅方向に所定のノズルピッチDで並んでいる。X方向の右側から順に、ブラックのインクを噴射するブラックノズル列Kと、シアンのインクを噴射するシアンノズル列Cと、マゼンタのインクを噴射するマゼンタノズル列Mと、イエローのインクを噴射するイエローノズル列Yと、無色インクを噴射する無色ノズル列UVと、が設けられている。
【0025】
第1照射部51と第2照射部52には、用紙S上に噴射された無色インクに対して紫外線を照射し、無色インクを硬化するランプ(例えばメタルハライドランプやLEDなど)が設けられている。
【0026】
図3Bは、照射条件の違いによる無色インクのドットの違いを示す図である。用紙Sに着弾した所定量の無色インクに対して、照射する紫外線の強度を強くし、短い時間で無色インクを硬化すると、無色インクは用紙S上に広がる前に、高さのある状態(盛り上がった状態)で硬化される。逆に、無色インクに照射する紫外線の強度を弱くして、長い時間に亘って無色インクを硬化すると、無色インクは用紙S上に広がり、高さの無い平たい状態で硬化される。つまり、無色インクに照射する紫外線の照射条件(紫外線強度・照射時間)を変えることによって、無色インクが硬化する状態(無色インクドットの高さやドット径)を変えることができる。
【0027】
また、無色インクのドットの大きさ(ドットを形成するためのインク量)を異ならせれば、同じ照射条件で照射しても、ドットの盛り上がり具合(無色インクのドットの高さ)を異ならせることが出来る。例えば、小ドット(少量のインク)に対して比較的に高く盛り上がった状態(図3Bの右上図)で硬化される照射条件で、大ドット(多量のインク)を照射すると、高さのない広がった状態(図3Bの右下図)で硬化できる。これは、ドットのインク量によって硬化に必要なエネルギーが異なるからである。
【0028】
ところで、本実施形態のプリンター1では、図2Bに示すように、キャリッジ31がX方向及びY方向に移動し、キャリッジ31のX方向への移動中にヘッド41からインクが噴射されることによって画像が形成される。また、キャリッジ31がX方向の右側から左側へ移動する際にも、左側から右側へ移動する際にも、ヘッド41からインクが噴射されるとする。そのため、ヘッド41(無色ノズル列UV)に対してX方向の左側にも右側にも照射部を設ける。そうすることで、キャリッジ31がX方向の左側から右側へ移動する際に無色ノズル列UVから噴射された無色インクは第1照射部51によって硬化することができ、キャリッジ31がX方向の右側から左側へ移動する際に無色ノズル列UVから噴射された無色インクは第2照射部52によって硬化することができる。
【0029】
なお、ヘッド41に対してX方向の左側及び右側に照射部を設けるに限らず、どちらか一方の側にのみ照射部を設けてもよい。例えば、ヘッド41の左側にのみ照射部(第1照射部51)を設けた場合には、キャリッジ31が左側から右側へ移動する際にのみ無色インクを噴射するか、又は、キャリッジ31が右側から左側へ移動する際に無色インクを噴射した後、キャリッジ31が左側から右側へ移動する際に噴射した無色インクを硬化するとよい。また、本実施形態のプリンター1では、図3に示すように、無色ノズル列UVから第1照射部51までの距離と、無色ノズル列UVから第2照射部52までの距離とが異なる。そのため、キャリッジ31が左側から右側へ移動する場合と、右側から左側へ移動する場合とでは、ノズルから無色インクが噴射されてから、照射部によって紫外線が照射されるまでの時間が異なってしまう。そこで、X方向の最も右側に(ブラックノズル列Kの右側に)、無色ノズル列UVをもう1つ設けて、無色インクが噴射されてから紫外線が照射されるまでの時間を等しくしてもよい。
【0030】
===印刷方法について===
図4A及び図4Bは、本実施形態のプリンター1が印刷する画像を説明するための図である。図4Aは、山の画像を上から見た図であり、図4Bは、図4Aに示す線AA’における山の画像の断面図である。図4A及び図4Bに示す「山の画像」は、用紙Sに対する(垂直方向の)高さが「X1」である画像A(黒塗り部)と、用紙Sに対する高さが「X2」である画像B(クロス部)と、用紙Sに対する高さが「X3」である画像C(白塗り部)と、から構成される。例えば、山の画像を印刷する場合に、山の部分が用紙Sに対して垂直方向に盛り上がっていると、その画像が山を表していることがより判別され易くなる。また、用紙Sに対して盛り上がっている山の部分を触って楽しむことができる。このように、本実施形態では、視覚的にも触覚的にも画像を楽しめるように、立体的な画像、即ち、表面が凹凸形状である画像を形成する。
【0031】
ところで、紫外線硬化型インク(無色インク)は、図3Bに示すように、インクに照射する紫外線強度や照射時間を調整することによって、硬化するインクの高さを調整することができる。そこで、本実施形態のプリンター1は、まず、用紙S上に有色インクYMCKで山の画像(図4Bの斜線部)を形成し、その後、有色インクで形成された画像上に無色インク(紫外線硬化型インク)を噴射することで山の凹凸部を形成する。言い換えれば、有色インクで2次元の画像を形成し、無色インクで3次元の画像を形成する。なお、図4A及び図4Bでは、画像Aから画像Cを区別するために、無色インクで形成する凹凸部を黒塗りにしたりクロスを施したりしているが、凹凸部は無色透明である。
【0032】
このような立体的な画像を形成する場合、ユーザーは、アプリケーションソフト上などにおいて、どの画像部分をどれ位の高さにしたいかを示す「高さデータ」を設定する。例えば、図4A及び図4Bに示す画像を形成する場合、ユーザーは、最も高い画像Aの高さデータを「X1」に設定し、次に高い画像Bの高さデータを「X2」に設定し、最も低い画像Cの高さデータを「X3」に設定する。
【0033】
そして、コンピューター70のメモリーに記憶されているプリンタードライバは、2次元の画像データ(山の画像データ)と、高さデータと、に基づいて、プリンター1に立体的な画像を形成させるための印刷データを作成する。本実施形態では、2次元の画像を有色インクで印刷し、表面の凹凸部を無色インクで形成する。そのため、プリンタードライバは、有色インクのノズル列YMCKを用いて2次元の画像を形成させるための印刷データと、無色インクのノズル列UVを用いて表面の凹凸部を形成させるための印刷データと、を作成する。印刷データを作成した後、プリンタードライバはプリンター1にその印刷データを送信する。以下、立体的な画像を形成するプリンター1の印刷方法について詳しく説明する。
【0034】
<印刷方法例1について>
図5は、印刷方法例1のフローを示す図であり、図6Aから図6Fは、印刷方法例1を説明するための図である。プリンター1のコントローラー10は、コンピューター70から印刷データを受信すると、まず、有色インクのノズル列YMCKを用いて、用紙S上に2次元の画像を印刷させる(S001)。
【0035】
次に、プリンター1のコントローラー10は、無色インクに関するデータの有無を確認する(S002)。無色インクに関するデータが有る場合は、有色インクで形成した2次元の画像上に、無色インクで凹凸部を形成するということである。逆に、無色インクに関するデータが無い場合には(S002→NO)、用紙S上には有色インクにて2次元の画像を印刷するのみであるため、印刷を終了する。
【0036】
無色インクに関するデータが有る場合には(S002→YES)、有色インクの画像上に無色インクを噴射し、凹凸部を形成する。ところで、図4A及び図4Bに示すように、本実施形態のプリンター1が印刷する画像では、用紙S上の場所によって(画像Aから画像Cによって)、用紙Sからの高さが異なる。即ち、本実施形態では、有色インクの画像上に多段階的に高さの異なる凹凸部を無色インクで形成する。そのために、この印刷方法例1では、図5のフローに示すように、無色インクを噴射して紫外線を照射する動作(S003)を繰り返し行う。そして、無色インクに関するデータが無くなったら(S004→YES)、印刷を終了する。印刷方法例1では、無色インクを噴射して紫外線を照射する動作を行う回数を異ならせることによって、高さの異なる画像を形成する。
【0037】
以下、無色インクにて凹凸部を形成する方法について詳しく説明する。ここで、プリンタードライバがインストールされたコンピューター70は、無色インクに関する印刷データを作成する際に、有色インクの画像が形成される用紙S上に複数の「領域」を定める。そして、プリンタードライバにより、ユーザーにて設定された高さデータに基づいて、各領域に対応する高さデータが設定される。そして、各領域に設定された高さデータに基づいて、ノズルから領域に無色インクを噴射した後に照射部から領域上の無色の流体に紫外線を照射する動作を行わせる回数を、領域ごとに変える。(なお、無色インクを噴射し紫外線を照射する動作を行わせる回数を決定することは、プリンタードライバに従ってコンピューター70が行うが、無色インクの噴射に関する印刷データに基づいて、ノズルからの無色インクの噴射と紫外線の照射を制御するのは、プリンター1のコントローラー10である。そのため、コンピューター70と、プリンター1のコントローラー10が「制御部」に相当し、コンピューター70とプリンター1が接続された印刷システムが「流体噴射装置」に相当する)。
【0038】
有色の画像が形成された用紙S上に設定する「領域」の大きさは、有色インクの画像を形成する際に設定した「画素(ドットが形成される最小単位)」の大きさよりも大きくするとよい。有色インクの画像を形成する際に設定した画素の大きさが小さいほど、有色インクの画像は高画質な画像となる。一方、無色インクで形成する凹凸部は人が触って楽しんだりするため、あまり小さい領域ごとに画像の高さを制御する必要はない。「領域」を小さく設定し過ぎると、不必要に印刷データの量を増やしたり、ノズルから無色インクを噴射する時間間隔が短くなり、印刷時間を長引かせたりしてしまう。そこで、本実施形態では、有色の画像が形成された用紙S上に設定する「領域」の大きさは、有色インクの画像を構成する「画素」の大きさよりも大きくする。
【0039】
図6Aから図6Fでは、説明のため、有色インクの画像が形成された用紙Sにおいて、X方向の左側から順に、領域A、領域B、領域C、領域D、領域E、領域F、領域G、領域H、と定める。また、領域Cと領域Dに、高さデータが「X1」である画像A(図4B)を形成し、領域Bと領域Eと領域Fに、高さデータが「X2」である画像Bを形成し、領域Aと領域Gと領域Hに、高さデータが「X3」である画像Cを形成する。
【0040】
図6A及び図6Bは、キャリッジ31(ヘッド41と第1照射部51)がX方向の左側から右側へ移動する際に、有色インクの画像が形成された用紙Sに無色インクを噴射し、紫外線を照射する様子を示す図である。このキャリッジ31のX方向への1回の移動を「パス」と呼び、図6A及び図6Bは同じパスにて行われた動作を示す図である。まず、図6Aに示すように、有色インクの画像が形成された用紙Sの領域A〜領域Hに対して、ヘッド41の無色ノズル列UVから無色インクを噴射する。そして、図6Bに示すように、領域A〜領域Hに噴射された無色インクに対して、第1照射部51から紫外線を照射する。その結果、領域A〜領域Hには、硬化した無色インクのドットが形成され、用紙Sから無色インクのドットまでの高さが「X3」となる。即ち、用紙Sからの高さが「X3」である画像Cが、領域A,G,Hに形成されたことになる。そのため、次以降のパスでは、領域A,G,Hに無色インクを噴射する必要がなくなる。
【0041】
図6C及び図6Dは同じパスにて行われた動作を示す図である。次のパスにて、キャリッジ31(ヘッド41と第2照射部52)がX方向の右側から左側へ移動する際に、図6Cに示すように、領域B〜領域Fに対して、ヘッド41の無色ノズル列UVから無色インクを噴射する。そして、図6Dに示すように、領域B〜領域Fに噴射された無色インクに対して、第2照射部52から紫外線を照射する。その結果、図6Dに示すように、領域B〜領域Fには、無色インクのドットが2つ重ねて形成され、用紙Sから無色インクのドット(の上部)までの高さが「X2」となる。即ち、用紙Sからの高さが「X2」である画像Bが、領域B,E,Fに形成されたことになる。そのため、次以降のパスでは、領域B,E,Fに無色インクを噴射する必要がなくなる。
【0042】
図6E及び図6Fは同じパスにて行われた動作を示す図である。次のパスにて、キャリッジ31(ヘッド41と第1照射部51)がX方向の左側から右側へ移動する際に、図6Eに示すように、領域Cと領域Dに対して、ヘッド41の無色ノズル列UVから無色インクを噴射する。そして、図6Fに示すように、領域Cと領域Dに噴射された無色インクに対して、第1照射部51から紫外線を照射する。その結果、図6Fに示すように、領域Cと領域Dには、無色インクのドットが3つ重ねて形成され、用紙Sから無色インクのドット(の上部)までの高さが「X1」となる。即ち、用紙Sからの高さが「X1」である画像Aが領域Cと領域Dに形成されたことになる。
【0043】
以上をまとめると、最も高さが低い画像Cを形成する領域(領域A,G,H)に対しては、無色インクを噴射して紫外線を照射する動作が1回しか行われず、次に高さが低い画像Bを形成する領域(領域B,E,F)に対しては、無色インクを噴射して紫外線を照射する動作が2回行われ、最も高さの高い画像Aを形成する領域(領域C,D)に対しては、無色インクを噴射して紫外線を照射する動作が3回行われる。言い換えれば、画像の高さを高くする領域ほど、多くのパスにおいて、無色インクが噴射されて紫外線が照射される。その結果、画像Cを形成する領域では無色インクのドットが1個形成され、画像Bを形成する領域では無色インクのドットが2個重ねて形成され、画像Aを形成する領域では無色インクのドットが3個重ねて形成される。そうして、用紙Sに対する高さの異なる画像を形成する。
【0044】
つまり、印刷方法例1では、無色インクを噴射して紫外線を照射する動作を行う回数(繰り返す回数)を、有色インクの画像が形成された用紙S上に定めた領域ごとに異ならせることによって、無色インクで形成する画像の高さを多段階的に異ならせる。
【0045】
図7は、印刷方法例1とは異なる比較例の印刷方法を説明するための図である。ここで仮に、無色インクは用いずに、有色の紫外線硬化型インク(以下、有色インクと呼ぶ)だけを用いて、表面が凹凸形状である画像を印刷したとする。印刷方法例1と同様に、有色インクを噴射して紫外線を照射する動作を行う回数を用紙Sに定めた領域ごとに異ならせることで、高さの異なる画像を形成する。その結果、最も高さの高い画像Aを形成する領域C,Dでは、3つの有色インクのドットが重ねて形成され、次に高い画像Bを形成する領域B,E,Fでは、2つの有色インクのドットが重ねて形成され、最も高さの低い画像Cを形成する領域A,G,Hでは、1つの有色インクのドットが形成される。
【0046】
この比較例のように、有色インクのドットを重ねる数を異ならせることによって、画像の高さを異ならせようとすると、高さの異なる画像を同じ濃度で形成したくとも、有色インクのドットが多く重ねられた領域(例えば領域C,D)は濃く視認され、有色インクのドットがあまり重ねられなかった領域(例えば領域A,G,H)は淡く視認される。即ち、有色インクを噴射して紫外線を照射する動作を行う回数を領域ごとに異ならせることで、高さの異なる画像を形成しようとすると(表面が凹凸形状である画像を形成しようとすると)、画像に濃度むらが発生してしまう。
【0047】
これに対して、本実施形態の印刷方法例1では、まず、用紙Sに有色インクで2次元の画像を形成し、その後に無色インクのドットを重ねることによって、表面が凹凸形状である画像を形成することができる。そのため、高い画像を形成する領域であっても有色インクが重ねられることがなく、濃く視認されることを防止でき、他の画像が形成される領域との濃度むらを防止できる。このため、印刷方法例1によれば、高画質な画像であり、且つ、無色インクで表面が凹凸形状である画像を形成することができる。
【0048】
また、印刷方法例1では、無色インクのドットを重ねる数を異ならせることによって、領域ごとの画像の高さを制御する。そのため、用紙S上に形成する無色インクのドットの大きさを全て同じにすることができる。ゆえに、無色ノズル列UVから噴射する無色インクの量や、紫外線の照射条件を同じにすることができ、印刷制御が容易となる。なお、複数の無色インクのドットを重ねるため、無色インクを噴射する途中のパス(例えば図6Bや図6D)は、最後のパス(例えば図6F)に比べて、紫外線の照射強度を弱めたり、照射時間を減らしたりしてもよい。そうすることで、途中のパスにて形成される無色インクのドットは半硬化状態(完全に硬化されていない状態)となり、後のパスで噴射される無色インクのドットと既に噴射された無色インクのドットとの繋がりを強め、剥がれ難い画像(凹凸部)を形成することができる。
【0049】
また、印刷方法例1では、無色インクのドットを重ねていくため、印刷が進むに従って、ノズルと、ノズルから噴射された無色インクの着弾位置(無色インクのドットの上部)と、の距離(以下、PG(ペーパーギャップ)と呼ぶ)が小さくなってしまう。本実施形態のプリンター1は、X方向に移動するヘッド41から無色インクを噴射させるため、PGが異なると無色インクのX方向における着弾位置がずれてしまう虞がある。そうすると、無色インクのドットが正しく重ねて形成されず、正しい高さの画像が形成されなくなってしまう。
【0050】
そこで、印刷方法例1では、無色インクのドットを重ねていくに従って、ヘッド41の位置を用紙Sに対して高くする、又は、ヘッド41に対して用紙Sの位置を下げる。言い換えれば、先のパス(動作)と後のパスとにおいてノズルから媒体までの距離を異ならせ、後のパスにおけるノズルから媒体までの距離を、先のパスにおけるノズルから媒体までの距離よりも長くする。そうすることで、無色インクのドットを重ねて形成するとしても、PGを常に一定にすることができる。その結果、無色インクのドットを正しい位置に着弾させることができ、正しい高さの画像を形成することができる。
【0051】
例えば、図6Aから図6Fを用いて説明すると、未だ無色インクが噴射されていない状態(図6A)では、ヘッド41と用紙Sの下部分との距離が「X4」であり、有色インクの画像に対して無色インクが噴射される。このときの有色インクの画像からヘッド41(ノズル)までの距離「Xf」を所定のPGとする。そして、次のパスで無色インクが噴射される状態(図6C)では、無色インクのドットが1つ形成されたところに、無色インクが噴射される。そのため、1つの無色インクのドットからヘッド41までの距離が所定のPGである「Xf」となるように、ヘッド41の位置を高くして、ヘッド41と用紙Sの下部分との距離を「X4」よりも長い「X5」にする。同様に、最後のパス(図6E)では、2つの無色インクのドットからヘッド41までの距離が所定のPGである「Xf」となるように、ヘッド41の位置を高くして、ヘッド41と用紙Sの下部分との距離を「X5」よりも長い「X6」にする。
【0052】
また、ノズルとノズルから噴射された無色インクの着弾位置との距離PGを一定にすることによって、無色インクのドットを正しい位置に着弾させるに限らない。例えば、先のパス(動作)と後のパスとにおいて、ノズルから無色インクを噴射させるタイミングを異ならせてもよい。無色インクのドットが重ねられる数が増えるに従って、無色インクが着弾するまでの時間が短くなる。そこで、無色インクのドットが重ねられるに従って、ノズルから無色インクを噴射するタイミングを遅らせてもよい。具体的には、ノズルから無色インクを噴射させるために、そのノズルに対応する駆動素子(ピエゾ素子)に印加する駆動波形の発生を遅らせるとよい。そうすることで、無色インクを噴射するタイミングの制御は複雑になるが、ヘッド41の高さを変えたり、用紙Sの位置を下げたりする機構がなくとも、無色インクのドットを正しい位置に着弾させることができる。
【0053】
<印刷方法例2>
図8は、本実施形態の印刷方法例2のフローを示す図であり、図9Aから図9Fは、印刷方法例2を説明するための図である。前述の印刷方法例1と同様に、プリンター1のコントローラー10は、コンピューター70から印刷データを受信すると、まず、用紙S上に有色インクで2次元の画像を印刷させ(S101)、画像の表面に凹凸部を形成するか否かを判断する(S102)。
【0054】
ここで、無色の紫外線硬化型インク(無色インク)は、前述のように(図3B)、紫外線の照射条件(紫外線強度・照射時間)を変えることによって、硬化する無色インクドットの高さを変えることができる。また、ドットサイズ(ノズルから噴射するインク量)が異なる場合に、インク量によって照射条件を変えることで、所望のドットの高さに硬化させることができる。そこで、印刷方法例2では、高さの高い画像(例えば図4Bの画像A)を形成する領域には、比較的に多量の無色インクを噴射し、紫外線の照射強度を強くして、短時間で無色インクを硬化する。逆に、高さの低い画像(例えば図4Bの画像C)を形成する領域には、比較的に少量の無色インクを噴射し、紫外線の照射強度を弱くして、長時間をかけて無色インクを硬化する。
【0055】
つまり、この印刷方法例2では、有色インクの画像が形成された用紙S上に定められた領域ごとに、照射部からの紫外線の照射条件を異ならせる。そのため、図8のフローに示すように、まず、照射部の照射条件を設定し(S103)、同じ高さの画像を形成する領域に対しては、同じパスにて、同じ量の無色インクを噴射し、同じ照射条件で紫外線を硬化する。そして、異なる高さの画像を形成する領域に対しては、照射部の照射条件を設定し直して、異なるパスにて、無色インクを照射し、その無色インクを硬化する。これを、無色インクのデータが無くなるまで繰り返し行う。
【0056】
以下、印刷方法例2について具体的に説明する。なお、前述の印刷方法例1と同様に、有色インクの画像が形成された媒体に複数の「領域」を定め、領域C,Dに画像Aを形成し、領域B,E,Fに画像Bを形成し、領域A,G,Hに画像Cを形成する。プリンタードライバにより、ユーザーにて設定された高さデータに基づいて、各領域に対応する高さデータが設定される。そして、各領域に設定された高さデータに基づいて、どの照射条件(どのパス)で領域に噴射される無色インクを硬化するかが、領域ごとに決定される。(なお、各領域の照射条件を決定することは、プリンタードライバに従ってコンピューター70が行うが、無色インクの噴射に関する印刷データに基づいて、ノズルからの無色インクの噴射と紫外線の照射を制御するのは、プリンター1のコントローラー10である。そのため、コンピューター70と、プリンター1のコントローラー10が「制御部」に相当する)。
【0057】
図9A及び図9Bは、同じパスにて行われた動作を示し、キャリッジ31(ヘッド41と第1照射部51)がX方向の左側から右側へ移動する際に、有色インクの画像が形成された用紙Sに無色インクを噴射し、紫外線を照射する様子を示す図である。まず、図9Aに示すように、領域Cと領域Dに対して無色インクを「Y1pl」噴射する。そして、図9Bに示すように、領域Cと領域Dに噴射された無色インクに対して、第1照射部51から紫外線を照射する。このとき、ノズルから噴射される無色インクの量(Y1pl)は最も多く、第1照射部からの紫外線強度は最も強く、最も短い時間で無色インクを硬化する。その結果、領域Cと領域Dでは、用紙Sから無色インクのドットまでの高さが「X1」となり、画像Aが形成されたことになる。
【0058】
図9C及び図9Dは、同じパスにて行われた動作を示し、キャリッジ31(ヘッド41と第2照射部52)がX方向の右側から左側へ移動する際に、図9Cに示すように、領域B,E,Fに対して、ヘッド41の無色ノズル列UVから無色インクを、前のパスで噴射したインク量(Y1pl)よりも少ない量「Y2pl」噴射する。そして、図9Dに示すように、領域B,E,Fに噴射された無色インクに対して、前のパス(図9B)の照射強度よりも弱い強度の紫外線を第2照射部52から照射し、前のパスにて紫外線を照射した時間よりも長い時間照射する。その結果、領域B,E,Fでは、用紙Sからの高さが「X2」となり、画像Bが形成されたことになる。即ち、領域B,E,Fには、領域C,Dに形成された無色インクのドットよりも高さの低い無色インクのドットが形成される。
【0059】
図9E及び図9Fは、同じパスにて行われた動作を示し、キャリッジ31(ヘッド41と第1照射部51)がX方向の左側から右側へ移動する際に、図9Eに示すように、領域A,G,Hに対して、ヘッド41の無色ノズル列UVから無色インクを、前のパスで噴射したインク量(Y2pl)よりも少ない量「Y3pl」を噴射する。そして、図9Fに示すように、領域A,G,Hに噴射された無色インクに対して、前のパス(図9D)の照射強度よりも弱い強度の紫外線を第1照射部51から照射し、前のパスにて紫外線を照射した時間よりも長い時間照射する。その結果、領域A,G,Hでは、用紙Sからの高さが「X3」となり、画像Cが形成されたことになる。即ち、領域A,G,Hには、領域B,E,Fに形成された無色インクのドットよりも高さの低い無色インクのドットが形成される。
【0060】
このように印刷方法例2では、高さの異なる画像を形成するために、有色インクの画像が形成された用紙S上に定めた領域ごとに、紫外線の照射条件(照射強度と照射時間)と、を異ならせる。ここでは、用紙S上に定めた領域は全て同じ大きさとし、各領域に形成する無色インクのドット径は等しいとする。そのため、高さの高い画像を形成する領域には、噴射する無色インクの量を増やす。印刷方法例2では、パスの単位で照射条件を変えればよいため、照射条件を変える制御が容易である。
【0061】
図10は、比較例の印刷方法を説明するための図である。ここで仮に、無色インクは用いずに、有色の紫外線硬化型インク(以下、有色インクと呼ぶ)だけを用いて、高さの異なる画像を形成したとする。そして、印刷方法例2と同様に、有色インクに照射する紫外線の照射条件を異ならせることによって、各領域に形成する有色インクのドットの高さを制御したとする。
【0062】
具体的には、高さの高い画像Aを形成する領域(領域C,D)には多量の有色インクを噴射し、紫外線の照射強度を強くして、短い照射時間で有色インクのドットを硬化する。逆に、高さの低い画像Cを形成する領域(領域A,G,H)には少量の有色インクを噴射し、紫外線の照射強度を弱くして、長い照射時間に亘って有色インクのドットを硬化する。そうすることで、領域ごとに画像の高さを異ならせることができる。
【0063】
この比較例のように、有色インクのドットに照射する紫外線の照射条件を異ならせることによって、画像の高さを異ならせる場合には、ドットの高さを調整しつつ、用紙S上に広がる有色インクのドット径の大きさも正確に調整する必要がある。例えば、図10に示すように、高さの低い画像Cを形成する領域に噴射する有色インクの量が多かったり、有色インクに対して紫外線を照射する時間を長くし過ぎてしまったりすると、領域をはみ出る程の大きいドットが形成されてしまう。そうすると、有色インクのドット同士が重なり、その部分が濃く視認されてしまう。逆に、高さの高い画像Aを形成する領域に噴射する有色インクの量が少なかったり、有色インクに照射する紫外線の照射強度が強すぎたりすると、領域よりも小さいドットが形成され、白スジが生じてしまう。また、同じ大きさの領域であっても、高さの高い画像Aが形成される領域の方が、高さの低い画像Cが形成される領域よりも、多量の有色インクが噴射されるため、画像Aが形成される領域の有色インクのドットは濃く視認され、濃度むらが発生してしまう。
【0064】
これに対して本実施形態の印刷方法例2では、まず、用紙Sに有色インクで2次元の画像を形成し、その後、無色インクを噴射し、その無色インクに対する照射条件を変えることによって、表面が凹凸形状である画像を形成する。そのため、誤差により、無色インクのドット径が小さく形成されたとしても、画像上に白スジが現れることを防止でき、無色インクのドット径が大きく、重なったとしても、濃度が濃く視認されることを防止できる。このため、印刷方法例2によれば、高画質な画像であり、且つ、無色インクで表面が凹凸形状である画像を形成することができる。
【0065】
図11は、無色インクのドットを形成する「領域」の変形例を示す図である。ここまで、図9A〜図9Fに示すように、領域ごとに1つの無色インクのドットを形成している、即ち、1つの領域に対して1つのノズルを割り当てているが、これに限らない。ノズルから同じインク量を噴射した場合に、高さの低い無色インクのドット径は、高さの高い無色インクのドット径よりも大きくすることができる。そこで、例えば、図11に示すように、高さの低い画像を形成する領域(3)〜領域(6)(第2の高さが設定された第2の領域に相当)と、高さの高い画像を形成する領域(1)〜領域(2)(第1の高さが設定された第1の領域に相当)と、があるとする。この場合、領域(1)と領域(2)には、それぞれ1つのノズルを割り当て、1つの無色インクのドットを形成し、領域(3)と領域(4)には、同じ1つのノズルを割り当て、2つの領域に1つの無色インクのドットを形成する。同様に、領域(5)と領域(6)に、1つの無色インクのドットを形成する。このとき、領域(1)と領域(2)の無色インクに紫外線を照射する照射条件と、領域(3)〜領域(6)の無色インクに紫外線を照射する照射条件と、を異ならせる。そうすることで、高さの低い画像を形成するパスでは、無色インクを噴射する回数を減らすことができ、印刷データ量を削減することができる。即ち、凹凸画像を形成する制御が容易となる。
【0066】
また、本実施形態では、高さの異なる画像を形成する場合に、異なるパスにて形成している。即ち、1つのパスで形成する画像は同じ高さの画像であるが、これに限らない。例えば、同じパスにて、高さの異なる画像Aと画像Bを形成してもよい。ただし、印刷方法例2では、紫外線の照射条件を異ならせることによって異なる高さの画像を形成するため、同じパスで高さの異なる画像を形成するということは、同じパス内で領域ごとに照射条件(照射強度と照射時間)を変えることになるため、照射部の制御が複雑になる。即ち、異なる高さの画像を形成するパスを別にすることで、同じパス内での紫外線の照射条件は一定にすることができ、照射部の制御が容易になる。
【0067】
また、1つのノズルから噴射可能な無色インクの量には限界がある。即ち、この印刷方法例2のように、ノズルから噴射する無色インクの量と照射条件を調整することによって、表面に凹凸形状を形成する場合、形成可能な画像の高さには限界がある。そこで、印刷方法例1と印刷方法例2を組み合わせて、表面が凹凸形状である画像を形成してもよい。例えば、1回のパスにて形成可能な高さよりも高い画像と、それよりも低い画像とを形成するとしたとき、低い画像を形成する際には照射強度を弱くして、長い時間紫外線を照射する。一方、高い画像を形成する際には、照射強度を強くして、短い時間紫外線を照射し、更に、次のパスにて、先に形成された無色インクのドットの上に無色インクのドットを重ねて形成する。そうすることで、種々の高さデータに応じた画像を形成することができる。
【0068】
<変形例>
図12は、表面が凹凸形状である画像の変形例を示す図である。図12には、画像D(斜線部)を上から見た図と、線AA’における断面図と、を示す。ここまで、図4A及び図4Bに示す山の画像のように、用紙Sに対して高さのある画像を例に挙げている。この場合、ユーザーは高さデータとして「+(プラス)のデータ」を入力する。しかし、これに限らず、ユーザーが、ある画像を他の画像よりも低く形成したい場合には、ある画像に対する高さデータとして「−(マイナス)のデータ」を入力できるようにしてもよい。例えば、図12に示すように、画像D(斜線部)に対する高さデータが「−X4」である場合、画像Dの部分を他の部分に比べて、「X4」だけ高さを低く形成することを示す。この場合、プリンタードライバは、画像D以外の領域に無色インクを噴射させる印刷データを作成する。そうすると、プリンター1は、画像Dには無色インクを噴射せず、画像D以外の領域に画像Dを形成する領域よりも、「X4」だけ高さが高くなるように、無色インクが噴射して、紫外線を照射する。その結果、画像Dの部分を他の部分に比べて、「X4」だけ高さを低くすることができる。
【0069】
図13は、表面が凹凸形状である画像の変形例を示す図である。ここまで、凹凸を形成したい画像に対して高さデータをユーザーに入力させ、その画像全体の高さを制御しているが、これに限らない。例えば、画像のフチ(輪郭)だけを用紙Sに対して盛り上がらせてもよい。図13に示すような画像を有色インクで用紙S上に形成した後に、図中の太線部分(フチ部分)に相当する領域に対してだけ無色インクを噴射させる。そうすることで、画像のフチだけ他の画像部分よりも盛り上がらせることができる。また、画像のフチに限らず、図13に示す文字「2008」のフチだけを他の部分よりも盛り上がらせてもよい。
【0070】
また、前述の実施例では、図3Aに示すように、ヘッド41に無色ノズル列UVを1つだけ設けており、1種類の無色インクのみを噴射させているが、これに限らない。ヘッド41に無色ノズル列UVを複数設けてもよい。例えば、一方の無色ノズル列UV1と他方の無色ノズル列UV2とにおいて、ノズルから噴射させる無色インクの粘度を異ならせてもよい。
【0071】
例えば、高さの高い画像を形成する場合には、粘度の高い無色インクを用いて、高さの低い画像を形成する場合には、粘度の低い無色インクを用いるとよい。通常、粘度の高い無色インクは用紙Sの表面に広がり難く、逆に、粘度の低い無色インクは用紙Sの表面に広がり易い。そのため、紫外線の照射条件(照射強度や時間)が同じであっても、粘度の高い無色インクは高い画像を形成しやすく、粘度の低い無色インクは低い画像を形成しやすい。そのため、無色インクにて形成する画像の高さを制御し易くなる。そして、粘度の異なる無色インクを用いて、更に、照射条件を変えることによって、より多段階的に無色インクの画像の高さを調整できる。
【0072】
また、粘度の異なる無色インクを用いることで、触感の異なる画像を形成できる。例えば、用紙S上のある画像部分と別の画像部分に対して粘度の異なる無色インクを噴射することで、ある画像部分の触感と別の画像部分の触感とを異ならせることができ、より触って楽しめる画像を形成することができる。
【0073】
===その他の実施の形態===
以上、上記実施の形態に基づき本発明に係る流体噴射装置等を説明したが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。
【0074】
前述の実施形態では、紫外線硬化型の無色インクを有色インクの画像が形成された媒体上に噴射し、表面に凹凸形状を形成しているが、これに限らない。紫外線を照射すると硬化するインクに限らず、例えば、電子線、X線、可視光線、赤外線等の電磁波で硬化するインクであってもよいとする。
【0075】
前述の実施形態では、無色インクの高さを制御するための照射条件の変更方法として、強度を強くして短時間で照射する場合と、強度を弱くして長時間で照射する場合とを挙げているが、これに限らない。例えば、強度を強くして短時間で照射する場合と、強度を弱くして同じ短時間(或いは更に短い時間)で照射する場合とで、照射条件を変更してもよい。こうすることで、強度を弱くする場合に、よりインクの盛り上がりが無く平たい状態で硬化することができる。ただし、この強度を弱く短時間とした場合には、無色インクの硬化が不十分な場合がある。そこで、インクの噴射と噴射後の照射とを伴うパスを、1ページなど所定の媒体量を完成した後に、そのページ全面に十分な強度で照射して、硬化が不十分であった無色インクを硬化するとよい。言い換えれば、照射条件の強度を変更するだけでも、無色インクを平たく硬化することが出来る。
【0076】
また、紫外線の強度や照射時間を変更するに限らず、インクを噴射してから紫外線の照射を開始するまでの時間を変更してもよい。紫外線の照射を開始するまでの時間を長くすることで、無色インクを高さのない広がった状態(図3Bの右下図)に硬化することができ、逆に紫外線の照射を開始するまでの時間を短くすることで、無色インクを盛り上がった状態(図3Bの右上図)で硬化することができる。なお、無色インクに紫外線を照射する時間や、インクを噴射してから紫外線の照射を開始するまでの時間を変更する方法として、例えば、キャリッジ31の移動速度を調整すればよい。
【0077】
また、前述の実施形態では、プリンター1が、ヘッド41の有色インクノズル列YMCKで媒体上に画像を形成した直後に、無色インクノズル列UVを噴射しているが、これに限らない。例えば、予めプリンター1にて有色インクの画像が形成された媒体が、再度プリンター1にセットされた時に無色インクを噴射してもよく、プリンター1とは別の印刷装置にて有色インクの画像が形成された媒体上に無色インクを噴射してもよい。また、YMCKインクなどの有色の流体インクにて形成された画像上に無色インクを噴射するに限らず、無色インクを噴射する媒体には視覚可能な画像が形成されていればよく、流体以外のインクによって形成された画像や感光体によって形成された画像でもよい。また、無色インクにより凹凸形状が形成された画像は、視覚的触覚的に楽しむための用途に限らず、無色インクの凹凸形状により偽造防止などの機能を媒体に持たせることができる。
【0078】
前述の実施形態に示す印刷方法例(図5、図8)では、表面が凹凸形状である画像を形成する場合にのみ、無色インクを用いるとしているが、これに限らない。例えば、有色インクで形成した2次元の画像表面を滑らかにして光沢感を出すだめに、無色インクを用いてもよい。
【0079】
前述の実施形態では、コンピューター70がプリンタードライバに従って印刷データを作成しているが、これに限らず、プリンター1のコントローラー10が印刷データを作成してもよい。この場合、プリンター1が流体噴射装置に相当し、コントローラー10が制御部に相当する。
【0080】
前述の実施形態では、図2A及び図2Bに示すように、連続紙Sを印刷領域に搬送し、印刷領域の用紙Sに対して、ヘッド41がX方向とY方向に移動し、X方向に移動するヘッド41からインクを噴射させて、画像を形成するプリンターを例に挙げているが、これに限らない。例えば、媒体(カット紙)の幅方向にノズルが並んだヘッドと照射部との下に媒体を通し、連続して搬送される媒体に対してインクを噴射し、無色インクに紫外線を硬化するプリンター(所謂ラインヘッドプリンター)でもよい。また、ノズル列方向と交差する方向にヘッドを移動しながら媒体にインクを噴射し、無色インクを硬化する動作と、ノズル列方向に媒体を搬送する動作と、を交互に繰り返すシリアル式のプリンターでもよい。
【0081】
前述の実施形態では、流体噴射装置としてインクジェットプリンターを例示していたが、これに限らず、様々な工業用装置に適用可能である。例えば、布地に模様をつけるための捺染装置、カラーフィルター製造装置や有機ELディスプレイ等のディスプレイ製造装置、チップへDNAを溶かした溶液を塗布してDNAチップを製造するDNAチップ製造装置等であっても、本件発明を適用することができる。
【0082】
また、インクの噴射方式は、駆動素子(ピエゾ素子)に電圧をかけて、インク室を膨張・収縮させることにより流体を噴射するピエゾ方式に限らず、発熱素子を用いてノズル内に気泡を発生させ、その気泡によって流体を噴射させるサーマル方式でもよい。
【符号の説明】
【0083】
1 プリンター、
10 コントローラー、11 インターフェイス、12 CPU、13 メモリー、
14 ユニット制御回路、20 搬送ユニット、30 駆動ユニット、
31 キャリッジ、32 X軸ステージ、33 Y軸ステージ、
40 ヘッドユニット、41 ヘッド、50 照射ユニット、51 第1照射部、
52 第2照射部、60 検出器群、70 コンピューター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)電磁波を照射すると硬化する無色の流体を噴射するノズルと、
(B)前記無色の流体に対して前記電磁波を照射する照射部と、
(C)画像が形成された媒体上に複数の領域を定め、各前記領域に設定された高さデータに基づいて、各前記領域で硬化される前記無色の流体の高さを制御する制御部と、
を有することを特徴とする流体噴射装置。
【請求項2】
請求項1に記載の流体噴射装置であって、
前記制御部は、各前記領域に設定された前記高さデータに基づいて、前記ノズルから前記領域に前記無色の流体を噴射し前記照射部から前記領域上の前記無色の流体に前記電磁波を照射する動作を行わせる回数を、前記領域ごとに変える、
流体噴射装置。
【請求項3】
請求項2に記載の流体噴射装置であって、
前記制御部は、先の前記動作における前記ノズルから前記媒体までの距離と、後の前記動作における前記ノズルから前記媒体までの距離と、を異ならせる、
流体噴射装置。
【請求項4】
請求項2に記載の流体噴射装置であって、
前記制御部は、先の前記動作において前記ノズルから前記無色の流体を噴射させるタイミングと、後の前記動作において前記ノズルから前記無色の流体を噴射させるタイミングと、を異ならせる、
流体噴射装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の流体噴射装置であって、
前記制御部は、各前記領域に設定された前記高さデータに基づいて、前記領域に噴射される前記無色の流体に対して前記照射部から照射する前記電磁波の照射条件を、前記領域ごとに変える、
流体噴射装置。
【請求項6】
請求項5に記載の流体噴射装置であって、
前記複数の領域のうち、第1の高さが設定された第1の領域と、前記第1の高さよりも低い第2の高さが設定された第2の領域と、において、
前記制御部は、1つの前記第1の領域に対して1つの前記ノズルを割り当て、複数の前記第2の領域に対して1つの前記ノズルを割り当てる、
流体噴射装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の流体噴射装置であって、
有色の流体で画像が形成された媒体上に前記無色の流体を噴射し、
前記媒体に前記有色の流体で形成された前記画像を構成する画素の大きさよりも、前記領域の方が大きい、
流体噴射装置。
【請求項8】
電磁波を照射すると硬化する無色の流体を噴射する流体噴射方法であって、
画像が形成された媒体上に複数の領域を定めることと、
各前記領域に設定された高さデータに基づいて、各前記領域に前記無色の流体を噴射し、各前記領域で硬化される前記無色の流体の高さを制御することと、
を有することを特徴とする流体噴射方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2010−162801(P2010−162801A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−7999(P2009−7999)
【出願日】平成21年1月16日(2009.1.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】