説明

流体噴射装置及び流体噴射装置のメンテナンス方法

【課題】装置内の汚染を防ぐことができる流体噴射装置及び流体噴射装置のメンテナンス方法を提供すること。
【解決手段】流体を噴射するノズルが形成されたノズル面を有する流体噴射ヘッドと、前記流体噴射ヘッドの前記ノズル面を払拭するワイパと、前記ワイパを支持するワイパ支持部と、前記ワイパ支持部による前記ワイパの支持位置を調整する調整機構とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体噴射装置及び流体噴射装置のメンテナンス方法に関する。
【背景技術】
【0002】
流体噴射装置としてのインクジェット式記録ヘッド(以下、単に記録ヘッドという)では、ノズルから噴射される液滴の良好な吐出状態を維持又は回復するためのメンテナンス処理を定期的に行っている。その具体的なメンテナンス動作として、例えば、噴射によりノズル面に付着してしまったインク(流体)等をワイパで払拭することによってノズル面に付着した付着物を除去するワイピング動作などがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一般に、ワイピング動作では、ワイパ部材が記録ヘッドのノズル面に当接して撓み変形しながらノズル面上を摺動し、ノズル面の端部から離れる際に弾性反発力によって原形復帰させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3−222753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の構成では、この復帰する際の振動によってワイパ部材の先端に付着したインクの一部が飛散し、プリンタ内部の諸部材を汚してしまうという問題がある。
【0006】
上記のような事情に鑑み、本発明は、装置内の汚染を防ぐことができる流体噴射装置及び流体噴射装置のメンテナンス方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る流体噴射装置は、流体を噴射するノズルが形成されたノズル面を有する流体噴射ヘッドと、前記流体噴射ヘッドの前記ノズル面を払拭するワイパと、前記ワイパを支持するワイパ支持部と、前記ワイパ支持部による前記ワイパの支持位置を調整する調整機構とを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、ワイパ支持部によるワイパの支持位置を調整することができるので、ワイパに対して力が作用するときの当該ワイパの剛性又は弾性力を調整することができる。したがって、ワイパに付着した流体が撓み解消時に飛散しない程度にワイパの剛性又は弾性力を調整することができるため、装置内の汚染を防ぐことができる。
【0009】
上記の流体噴射装置は、前記ワイパは、前記ノズル面を所定方向に払拭し、前記ワイパ支持部は、前記ワイパのうち少なくとも前記所定方向の上流側を保持する上流側保持部を有し、前記調整機構による前記支持位置の調整は、前記ワイパのうち前記上流側保持部から突出する部分の突出量の調整を含むことが好ましい。
本発明によれば、調整機構による支持位置の調整として、ワイパのうち上流側保持部から突出する部分の突出量を調整することができる。当該突出量は、払拭動作によって撓み変形する部分の寸法である。撓み変形する部分の寸法が大きくなるとワイパの弾性力が小さくなり、撓み変形する部分の寸法が小さくなるとワイパの弾性力は大きくなる。本発明では、この性質を利用することにより、ワイパの弾性力を調整することができる。
【0010】
上記の流体噴射装置は、前記上流側保持部は、前記ワイパ支持部の他の部分に対して分離可能に形成されており、前記調整機構は、前記上流側保持部を前記ノズル面側から離れた方向に移動させる駆動機構を有することが好ましい。
本発明によれば、上流側保持部がワイパ支持部の他の部分に対して分離可能に形成されており、調整機構が上流側保持部をノズル面側から離れた方向に移動させる駆動機構を有するため、効率的にワイパの弾性力を調整することができる。
【0011】
上記の流体噴射装置は、前記ワイパは、前記所定方向の上流側に向けて形成された凸部を有し、前記上流側保持部は、前記凸部を保持することが好ましい。
本発明によれば、ワイパが所定方向の上流側に向けて形成された凸部を有するため、変形方向においてワイパが補強されることになる。また、上流側保持部が凸部を保持することとしたので、ワイパを傾ける調整動作及び傾けたワイパを復帰させる復帰動作を行う際には、補強部分である凸部を介して行うことができる。これにより、ワイパの強度を向上させつつ調整動作及び復帰動作をスムーズに行うことができる。
【0012】
上記の流体噴射装置は、前記調整機構は、前記ワイパを前記ノズル面側に押し出す第2駆動機構を有することが好ましい。
本発明によれば、調整機構がワイパをノズル面側に押し出す第2駆動機構を有することとしたので、ワイパを直接移動させることで支持位置を調整することができる。
【0013】
上記の流体噴射装置は、前記調整機構は、前記ワイパによる前記ノズル面の払拭の進捗状況に応じて、前記ワイパの支持位置を調整することが好ましい。
本発明によれば、調整機構がワイパによるノズル面の払拭の進捗状況に応じてワイパの支持位置を調整することとしたので、ワイパの弾性力を最適な状態に保持することができる。
【0014】
本発明に係る流体噴射装置のメンテナンス方法は、流体を噴射するノズルが形成されたノズル面を有する流体噴射ヘッドを備える流体噴射装置のメンテナンス方法であって、ワイパ支持部によって支持されたワイパを用いて、前記ワイパ支持部による前記ワイパの支持位置を調整しながら、前記流体噴射ヘッドの前記ノズル面を払拭することを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、ワイパ支持部によって支持されたワイパを用いて、ワイパ支持部によるワイパの支持位置を調整しながら、流体噴射ヘッドのノズル面を払拭することとしたので、ワイパとノズル面との距離を調整し、ワイパに付着した流体が撓み解消時に飛散しない程度にワイパの弾性力を調整しつつノズル面を払拭することができるため、装置内の汚染を抑制することができる。
【0016】
上記の流体噴射装置のメンテナンス方法は、前記ワイパが前記ノズル面に対して所定方向に移動するように前記ノズル面の払拭を行い、前記ノズル面の払拭を終了させる際、前記ワイパが前記所定方向に対して反対方向に傾くようにすることが好ましい。
本発明によれば、ワイパがノズル面に対して所定方向に移動するようにノズル面の払拭を行い、ノズル面の払拭を終了させる際、ワイパが所定方向に対して反対方向に傾くようにすることとしたので、ワイパの弾性力を低減させることができる。これにより、払拭が終了しワイパとノズル面との接触状態が解除される際、ワイパから流体が飛散するのを効率的に防ぐことができるので、装置内の汚染を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態に係るプリンタの概略構成を示す一部分解図。
【図2】本実施形態に係るワイピング機構の構成を示す図。
【図3】本実施形態に係るワイピング機構の構成を示す図。
【図4】本実施形態に係るプリンタの電気的な構成を示すブロック図。
【図5】本実施形態に係るワイピング動作を説明するための要部拡大図。
【図6】本実施形態に係るワイピング動作を説明するための要部拡大図。
【図7】本発明の第2実施形態に係るプリンタのワイピング機構の構成を示す図。
【図8】本発明の第3実施形態に係るプリンタのワイピング機構の構成を示す図
【図9】本発明の第4実施形態に係るプリンタのワイピング機構の構成を示す図
【図10】本発明の第5実施形態に係るプリンタのワイピング機構の構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0018】
[第1実施形態]
以下、本発明の各実施形態につき、図面を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
図1は、第1実施形態に係るインクジェットプリンタ1(流体噴射装置)の概略構成を示す一部分解図である。
【0019】
インクジェットプリンタ1は、プリンタ本体5を備えている。プリンタ本体5には、キャリッジ4を往復移動させるキャリッジ移動機構16、インク供給チューブ14を介して記録ヘッド3に供給するインク(流体)を貯留したインクカートリッジ6、記録ヘッド3(流体噴射ヘッド)の噴射特性を維持するためのクリーニング動作等に用いられるメンテナンス装置7、などが設けられている。
【0020】
このプリンタ本体5には、記録紙を搬送する記録紙搬送機構(不図示)が設けられており、この記録紙搬送機構は、紙送りモータやこの紙送りモータによって回転駆動される紙送りローラ(いずれ不図示)等から構成され、記録紙を記録(印字・印刷)動作に連動させてプラテン13の上に順次送り出すようになっている。また、プリンタ本体5は、装置全体を制御する制御装置(図4参照)を有している。
【0021】
以下、表記の簡単のため、図中の方向をXYZ座標系を用いて説明する。具体的には、キャリッジ4の往復移動の方向をX方向と表記し、平面視でX方向に直交する方向をY方向と表記する。X方向軸及びY方向軸を含む平面に垂直な方向をZ方向と表記する。なお、X方向、Y方向及びZ方向のそれぞれは、図中の矢印の方向が+方向、矢印の方向とは反対の方向が−方向であるものとする。
【0022】
キャリッジ移動機構16は、プリンタ本体5の幅方向に架設されたガイド軸8と、パルスモータ9と、パルスモータ9の回転軸に接続されてこのパルスモータ9によって回転駆動される駆動プーリー10と、駆動プーリー10とはプリンタ本体5の幅方向の反対側に設けられた遊転プーリー11と、駆動プーリー10と遊転プーリー11との間に掛け渡されてキャリッジ4に接続されたタイミングベルト12を有して構成されている。
【0023】
そして、パルスモータ9を駆動することによってキャリッジ4がガイド軸8に沿って主走査方向(図中X方向)に往復移動するようになっている。
【0024】
メンテナンス装置7は、記録ヘッド3の各ノズルから増粘したインクを吸引する吸引動作等に用いられるキャッピング機構15、記録ヘッド3のノズル面3Aに付着したインクを払拭するワイピング動作に用いられるワイピング機構17などを有している。
【0025】
キャッピング機構15は、キャップ部材15A、吸引ポンプ34(図4参照)等を有して構成されている。キャップ部材15Aは、ゴム等の弾性材をトレイ形状に成型した部材によって構成してあり、ホームポジションに配設されている。このホームポジションは、キャリッジ4の移動範囲内であって記録領域よりも外側の端部領域に設定され、電源オフ時や長時間に亘って記録が行われなかった場合にキャリッジ4が配置される場所である。
【0026】
ホームポジションにキャリッジ4が位置する場合には、キャップ部材15Aが記録ヘッド3のうち図中−Z側の表面(ノズル面3A:図5及び図6参照)に当接して封止する。この封止状態で吸引ポンプ34(図4参照)を作動させると、キャップ部材15Aの内部が減圧されて、記録ヘッド3内のインクがノズル18(図5及び図6参照)から強制的に排出される。
【0027】
また、キャップ部材15Aは、記録ヘッド3による記録動作前や記録動作中等において、増粘したインクや気泡等を排出するためにインク滴を吐出するフラッシング処理においてインク滴を受ける。
【0028】
ワイピング機構17は、例えばキャッピング機構15と一体的にホームポジションに配置されている。ワイピング機構17は、キャリッジ4の移動方向においてキャッピング機構15よりもプラテン13側に設けられている。
【0029】
図2は、ワイピング機構17の構成を示す断面図である。
図2に示すように、ワイピング機構17は、ワイパ部材(ワイパ)17A、ワイパ支持部17Bを有している。ワイパ部材17Aは、例えばゴムなどの弾性材を用いて形成された板状部材であり、記録ヘッド3のノズル面3Aを払拭する。
【0030】
ワイパ支持部17Bは、ワイパ部材17Aを支持する。ワイパ支持部17Bは、少なくともワイパ部材17Aの+X側の板面17p及び−X側の板面17qを保持するように形成されている。ワイパ支持部17Bは、板面17qを保持する部分が可動部17Cとなっている。可動部17Cは、ワイパ支持部17Bの他の部分とは独立して移動可能に設けられており、例えばZ方向に移動可能に設けられている。可動部17Cは、例えばモータ機構などを有する駆動部ACに接続されており、当該駆動部ACの作動によって移動するようになっている。駆動部ACによる可動部17Cの移動量及び移動のタイミングについては、例えば制御装置58によって制御されるようになっている。
【0031】
図3は、可動部17Cが図2の状態から−Z方向に移動したときの状態を示す図である。図3に示すように、可動部17Cが移動することにより、可動部17Cによるワイパ部材17Aの支持位置が支持位置Saから支持位置Sbへと移動することとなる。この支持位置の移動により、ワイパ部材17Aのうち可動部17Cに対して突出する突出部17fのZ方向の寸法が大きくなる。
【0032】
このため、図2に示す状態でワイパ部材17Aに対して同じく−X方向の力を加えた場合に比べて、図3に示す状態でワイパ部材17Aに対して−X方向の力を加えた場合においては、ワイパ部材17Aの撓み変形する部分の寸法が大きくなり、その分ワイパ部材17Aの撓み変形によって発生する弾性力は小さくなる。
【0033】
図4は、インクジェットプリンタ1の電気的な構成を示すブロック図である。
本実施形態におけるインクジェットプリンタ1は、全体の動作を制御する制御装置58を備えている。制御装置58には、インクジェットプリンタ1の動作に関する各種情報を入力する入力装置59、インクジェットプリンタ1の動作に関する各種情報を記憶した記憶装置60、記録紙を搬送する記録紙搬送機構35、記録ヘッド3に対してメンテナンス処理を実行するメンテナンス装置7などが接続されている。また、インクジェットプリンタ1は、圧電素子25を含む駆動ユニットに入力する駆動信号を発生する駆動信号発生器62を備えている。駆動信号発生器62は、制御装置58に接続されている。
【0034】
駆動信号発生器62には、記録ヘッド3の圧電素子25に入力する吐出パルスの電圧値の変化量を示すデータ、及び吐出パルスの電圧を変化させるタイミングを規定するタイミング信号が入力される。駆動信号発生器62は、入力されたデータ及びタイミング信号に基づいて吐出パルス等の駆動信号を発生する。
【0035】
次に、上述したインクジェットプリンタ1のワイピング動作について説明する。図5及び図6は、ワイピング動作を説明する図である。
まず、制御装置58は、ワイピング処理を開始するとキャリッジ4をホームポジションに配置する。ワイピング動作は、フラッシング動作後あるいは吸引動作後に行われるため、記録ヘッド3(キャリッジ4)が既にホームポジションに配置された状態から開始される。
【0036】
制御装置58は、ホームポジションに配置されているキャリッジ4を−X方向へ移動させる。キャリッジ4の移動に伴って、ワイパ部材17Aが記録ヘッド3の側部に当接する。この状態から更にキャリッジ4が移動すると、記録ヘッド3の側部によってワイパ部材17Aが−X側に押圧されて変形し、記録ヘッド3の側部を乗り越えてノズル面3Aに接触する。図5に示すように、ワイパ部材17Aは、その変形の程度に応じた所定の圧力でノズル面3Aに接触する。
【0037】
そして、キャリッジ4のさらなる移動により、弾性変形したワイパ部材17Aがノズル面3A上を摺動し、その上端(+Z側端部)がノズル面3Aに付着したインクを掻き取る。掻き取られたインクは、弾性変形したワイパ部材17Aの外面を−Z側に伝わり、例えば不図示のインク回収部などに回収される。
【0038】
ワイパ部材17Aの上端がノズル面3Aの+X側端部に近づいたら、制御装置58は、ワイピング機構17の駆動部ACを作動させ、ワイパ支持部17Bの可動部17Cを−Z側に移動させる。この動作により、図6に示すように、ワイパ部材17Aの突出部17fのZ方向の寸法が大きくなるため、ワイパ部材17Aの撓み変形する部分の寸法が大きくなり、弾性力が小さくなる。ワイパ部材17Aの変形部分の寸法が大きいため、掻き取られたインクは飛散せずにワイパ部材17Aの表面を伝わりやすくなる。
【0039】
この状態でキャリッジ4を更に−X方向に移動させると、ノズル面3Aがワイパ部材17A上を通過し、ワイパ部材17Aはその弾性力によって直立状態に復帰する。ワイパ部材17Aの弾性力はワイピング動作の開始時に比べて小さくなっているため、その分直立状態に復帰する際にはインクが飛散しにくくなる。
【0040】
以上のように、本実施形態によれば、ワイパ支持部17Bによるワイパ部材17Aの支持位置を調整することができるので、ワイパ部材17Aの支持位置とノズル面3Aとの距離を調整することができる。当該距離を調整することにより、ワイパ部材17Aに付着したインクが撓み解消時に飛散しない程度にワイパ部材17Aの弾性力を調整することができるため、インクジェットプリンタ1内の汚染を防ぐことができる。
【0041】
また、本実施形態によれば、ワイパ部材17Aの上端がノズル面3Aの+X側端部に近づいたときに制御装置58がワイパ部材17Aの支持位置を調整することとしたので、ノズル面3Aの例えば中央部分を払拭する際に弾性力が不足するような事態を回避することができる。このように、制御装置58がワイパ部材17Aによるノズル面3Aの払拭の進捗状況に応じてワイパ部材17Aの弾性力を最適な状態に保持することができる。
【0042】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を説明する。本実施形態に係るインクジェットプリンタは、ワイピング機構の構成が第1実施形態とは異なっており、他の構成は第1実施形態と同一になっている。このため、本実施形態では第1実施形態との当該相違点を中心に説明する。なお、本実施形態においても、第1実施形態と共通のXYZ座標系を用いて説明する。
【0043】
図7(a)及び図7(b)は、本実施形態に係るインクジェットプリンタのワイピング機構217の構成を示す図である。
図7(a)及び図7(b)に示すように、ワイピング機構217は、ワイパ部材217A及びワイパ支持部217Bを有している。ワイパ部材217Aは、ヒンジ部217Dを介してワイパ支持部217Bに接続されている。ワイパ支持部217Bは、可動部217Cを有している。
【0044】
図7(a)の状態から、ワイパ部材217Aに対して−X方向の力を加えると、ワイパ部材217Aが−X方向に撓むように変形する。この状態で可動部217Cを−Z方向に移動すると、ワイパ部材217Aがヒンジ部217Dを中心に回転しながら−X側に傾いていく。
【0045】
このまま可動部217Cの+Z側の端部がワイパ部材217Aの−Z側端部よりも−Z側に移動すると、図7(b)に示すように、ワイパ部材217Aは−X側に倒されることになる。この状態から、可動部217Cを+Z側に移動させると、ワイパ部材217Aはヒンジ部217Dを中心に回転し、図7(a)に示す状態に復帰することとなる。
【0046】
このように、本実施形態によれば、ヒンジ部217Dを介してワイパ部材217Aとワイパ支持部217Bとを接続させる構成としたので、弾性力によらずにワイパ部材217Aの姿勢を復帰させることができる。これにより、ワイパ部材217Aに付着したインクを飛散させるのを回避することができる。また、可動部217Cを用いてワイパ部材217Aの姿勢を制御することができるため、ワイピング動作からワイパ部材217Aを倒す動作へ、また、倒れた状態のワイパ部材217Aを復帰させる動作へと、スムーズに行うことができる。
【0047】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態を説明する。本実施形態に係るインクジェットプリンタは、ワイピング機構の構成が第1実施形態とは異なっており、他の構成は第1実施形態と同一になっている。このため、本実施形態では第1実施形態との当該相違点を中心に説明する。なお、本実施形態においても、第1実施形態と共通のXYZ座標系を用いて説明する。
【0048】
図8(a)及び図8(b)は、本実施形態に係るインクジェットプリンタのワイピング機構317の構成を示す図である。
図8(a)及び図8(b)に示すように、ワイピング機構317は、ワイパ部材317A及びワイパ支持部317Bを有している。ワイパ部材317Aは、ヒンジ部317Dを介してワイパ支持部217Bに接続されている。また、ワイパ部材317Aは、図8(a)の−X方向に向けて形成された凸部318を有している。ワイパ支持部317Bは、可動部317Cを有している。可動部317Cは、図8(a)に示すように、凸部318の−Z側を支持する構成になっている。
【0049】
図8(a)の状態から、ワイパ部材317Aに対して−X方向の力を加えると、ワイパ部材317Aが−X方向に撓むように変形する。この状態で可動部317Cを−Z方向に移動すると、ワイパ部材317Aがヒンジ部317Dを中心に回転しながら−X側に傾いていく。
【0050】
このまま可動部317Cの+Z側の端部が−Z側に移動すると、図8(b)に示すように、ワイパ部材317Aは−X側に倒されることになる。この状態から、可動部317Cを+Z側に移動させると、可動部317Cの+Z側端部が凸部318を押圧し、ワイパ部材317Aはヒンジ部317Dを中心に回転することになり、ワイパ部材317Aが図8(a)に示す状態に復帰することとなる。
【0051】
このように、本実施形態によれば、ワイパ部材317Aの−X側に凸部318を設けることとしたので、ワイパ部材317Aが補強されることになる。また、可動部317Cが凸部318を保持することとしたので、ワイパ部材317Aを傾ける調整動作及び傾けたワイパを復帰させる復帰動作を行う際には、補強部分である凸部318を介して行うことができる。これにより、ワイパ部材317Aの強度を向上させつつ調整動作及び復帰動作をスムーズに行うことができる。
【0052】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態を説明する。本実施形態に係るインクジェットプリンタは、ワイピング機構の構成が第1実施形態とは異なっており、他の構成は第1実施形態と同一になっている。このため、本実施形態では第1実施形態との当該相違点を中心に説明する。なお、本実施形態においても、第1実施形態と共通のXYZ座標系を用いて説明する。
【0053】
図9(a)及び図9(b)は、本実施形態に係るインクジェットプリンタのワイピング機構417の構成を示す図である。
図9(a)及び図9(b)に示すように、ワイピング機構417は、ワイパ部材417A及びワイパ支持部417Bを有している。ワイパ部材417Aは、ヒンジ部417Fを介してワイパ支持部417Bに接続されている。ワイパ支持部417Bは、分割された2つの可動部、すなわち、第1可動部417C及び第2可動部417Dを有している。第2可動部417Cは、ワイパ部材417Aの−X側に当該ワイパ部材417Aに接するように設けられている。第2可動部417Cは、ヒンジ部417Eを介してワイパ支持部417Bに接続されている。
【0054】
図9(a)の状態から、ワイパ部材417Aに対して−X方向の力を加えると、ワイパ部材417Aが−X方向に撓むように変形する。この状態で第1可動部417Cを−Z方向に移動すると、図9(b)に示すように、第2可動部417Dがヒンジ部417Eを中心に回転して−X側に傾くと共に、当該第2可動部417Dに接するワイパ部材417Aについても、第2可動部417Dに連動して−X側に傾いていく。
【0055】
このまま第1可動部417Cの+Z側の端部が−Z側に移動すると、図9(c)に示すように、第2可動部417Dは−Z側に倒されることになり、ワイパ部材417Aは当該第2可動部417Dの上に倒されることになる。なお、図9(c)に示すように、第2可動部417Dについては、倒された状態でワイパ支持部417Bの上面とほぼ面一状態となるように形成されていることが好ましい。
【0056】
この状態から、第1可動部417Cを+Z側に移動させると、第1可動部417Cが第2可動部417Dを+Z側に押圧し、第2可動部417Dが復帰する。また、第2可動部417Dの復帰に連動して、ワイパ部材417Aはヒンジ部417Fを中心に回転し、図9(a)に示す状態に復帰することとなる。
【0057】
このように、本実施形態によれば、ワイパ支持部417Bが分割された2つの可動部(第1可動部417C及び417D)を有する構成としたので、ワイパ部材417Aを押圧する際のマージンが形成されることになる。このため、ワイパ部材417Aを倒す動作及びワイパ部材417Aを復帰させる動作を滑らかに行わせることができる。
【0058】
[第5実施形態]
次に、本発明の第5実施形態を説明する。本実施形態に係るインクジェットプリンタは、ワイピング機構の構成が第1実施形態とは異なっており、他の構成は第1実施形態と同一になっている。このため、本実施形態では第1実施形態との当該相違点を中心に説明する。なお、本実施形態においても、第1実施形態と共通のXYZ座標系を用いて説明する。
【0059】
図10(a)及び図10(b)は、本実施形態に係るインクジェットプリンタのワイピング機構517の構成を示す図である。
図10(a)及び図10(b)に示すように、ワイピング機構517は、ワイパ部材517A及びワイパ支持部517Bを有している。ワイパ支持部517Bは、ワイパ部材517Aの−Z側に可動部517Cを有している。可動部517Cは、駆動部AC2に接続されており、当該駆動部AC2の駆動によってZ方向に移動可能に設けられている。
【0060】
図10(b)に示すように、可動部517Cが+Z方向に移動することにより、ワイパ部材517Aの−X側の面を保持するワイパ支持部517Bの支持位置が、支持位置Scから支持位置Sdへと移動することとなる。この支持位置の移動により、ワイパ部材517Aのうちワイパ支持部517Bに対して突出する突出部517fのZ方向の寸法が大きくなる。このように、ワイパ部材517Aを直接移動させることで、突出部517fのZ方向の寸法を調整可能になっている。
【0061】
このため、図10(a)に示す状態でワイパ部材517Aに対して同じく−X方向の力を加えた場合に比べて、図10(b)に示す状態でワイパ部材517Aに対して−X方向の力を加えた場合においては、ワイパ部材517Aの撓み変形する部分の寸法が大きくなり、その分ワイパ部材517Aの撓み変形によって発生する弾性力は小さくなる。
【0062】
したがって、本実施形態によれば、ワイピング動作を行う際、第1実施形態と同様に、ワイパ部材517Aの弾性力はワイピング動作の開始時に比べて小さくすることができるため、その分直立状態に復帰する際にはインクが飛散しにくくなる。このように、ワイパ部材517Aを直接移動させることで支持位置を調整することができるため、効率的にワイピング動作を行うことができる。
【符号の説明】
【0063】
1…インクジェットプリンタ 3…記録ヘッド 3A…ノズル面 17、217、317、417、517…ワイピング機構 17A、217A、317A、417A、517A…ワイパ部材 17B、217B、317B、417B、517B…ワイパ支持部 Sa〜Sd支持位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を噴射するノズルが形成されたノズル面を有する流体噴射ヘッドと、
前記流体噴射ヘッドの前記ノズル面を払拭するワイパと、
前記ワイパを支持するワイパ支持部と、
前記ワイパ支持部による前記ワイパの支持位置を調整する調整機構と
を備える流体噴射装置。
【請求項2】
前記ワイパは、前記ノズル面を所定方向に払拭し、
前記ワイパ支持部は、前記ワイパのうち少なくとも前記所定方向の上流側を保持する上流側保持部を有し、
前記調整機構による前記支持位置の調整は、前記ワイパのうち前記上流側保持部から突出する部分の突出量の調整を含む
請求項1に記載の流体噴射装置。
【請求項3】
前記上流側保持部は、前記ワイパ支持部の他の部分に対して分離可能に形成されており、
前記調整機構は、前記上流側保持部を前記ノズル面側から離れた方向に移動させる駆動機構を有する
請求項2に記載の流体噴射装置。
【請求項4】
前記ワイパは、前記所定方向の上流側に向けて形成された凸部を有し、
前記上流側保持部は、前記凸部を保持する
請求項3に記載の流体噴射装置。
【請求項5】
前記調整機構は、前記ワイパを前記ノズル面側に押し出す第2駆動機構を有する
請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載の流体噴射装置。
【請求項6】
前記調整機構は、前記ワイパによる前記ノズル面の払拭の進捗状況に応じて、前記ワイパの支持位置を調整する
請求項1から請求項5のうちいずれか一項に記載の流体噴射装置。
【請求項7】
流体を噴射するノズルが形成されたノズル面を有する流体噴射ヘッドを備える流体噴射装置のメンテナンス方法であって、
ワイパ支持部によって支持されたワイパを用いて、前記ワイパ支持部による前記ワイパの支持位置を調整しながら、前記流体噴射ヘッドの前記ノズル面を払拭する
流体噴射装置のメンテナンス方法。
【請求項8】
前記ワイパが前記ノズル面に対して所定方向に移動するように前記ノズル面の払拭を行い、
前記ノズル面の払拭を終了させる際、前記ワイパが前記所定方向に対して反対方向に傾くようにする
請求項7に記載の流体噴射装置のメンテナンス方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−110832(P2011−110832A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−269935(P2009−269935)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】