説明

流体噴射装置

【課題】耐熱性が良い流体噴射装置を得る。
【解決手段】燃焼器10では、主ノズル12が主噴射口12Aから主流体18を噴射する。さらに、一対の副ノズル24の副噴射口24Aが、主流体18の噴射方向に対して逆方向でかつ該噴射方向に対して所定角度傾斜した方向から、子午面T内に位置する主流体18の渦輪構造に向けて、副流体28を噴射する。また、制御装置30の制御により各副ノズル24から副流体28が間欠的に噴射される。このため、主流体18を効率良く拡散させることができる。ここで、主ノズル12及び副ノズル24が耐熱性を有するため、燃焼器10の耐熱性を良くできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主ノズルの主噴射口から噴射された主流体を拡散することができる流体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃焼器、特にサイズの小さなものは、分散型のエネルギーシステムにおいて必要とされる。その場合、燃焼特性を改善する上で、バーナから噴出するガスの周囲ガス(酸素、空気)との混合が効率良く行われる必要がある。また、燃焼器は、様々な負荷の下で稼動されるため、NO等の低減を考えると、燃料と周囲ガスである酸化剤との混合も制御する必要がある。
【0003】
ここで、外側ノズル内に内側ノズルが設けられると共に、外側ノズルの内壁に複数のフラップ型アクチュエータが配置された同軸ノズルがある(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
この同軸ノズルでは、外側ノズルから噴射される外側流体(例えば空気)の流速を内側ノズルから噴射される内側流体(例えばメタン)の流速より速くすると共に、すべてのフラップ型アクチュエータを矩形波で同時に駆動させると、フラップ型アクチュエータの動作に同期して外側流体のせん断層に強い渦輪が生じることで、内側流体が外側流体側へ引き出されて、内側流体と外側流体との混合が著しく促進される。
【0005】
しかしながら、この同軸ノズルでは、外側ノズルの内壁に配置されるフラップ型アクチュエータが流体に接触すると共にプラスチックで形成されている。このため、同軸ノズルの耐熱性が悪くなる可能性がある。
【非特許文献1】[No.01−1]日本機械学会2001年度年次大会講演論文集(II)[2001−8.27〜30,福井市]、「K−1309 アクチュエータ群を用いた円形噴流のアクティブ制御」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、耐熱性の良い流体噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の流体噴射装置は、主噴射口を備え、該主噴射口から主流体を噴射する主ノズルと、断面積が前記主ノズルの主噴射口の断面積より小さい副噴射口を備え、該副噴射口が、前記主流体の噴射方向に対して逆方向でかつ該噴射方向に対して所定角度傾斜した方向から、前記主流体の噴射方向と直交する子午面内に位置する前記主流体の渦輪構造に向けて副流体を噴射するように設けられた複数の副ノズルと、前記副ノズルの各々から前記副流体が間欠的に噴射するように前記副流体の噴射を制御する制御手段と、を含んでいる。
【0008】
請求項1に記載の流体噴射装置では、主ノズルの主噴射口より複数の副ノズルの各副噴射口が断面積を小さくされており、主ノズルが主噴射口から主流体を噴射すると共に、副ノズルが副噴射口から副流体を噴射する。
【0009】
また、複数の副噴射口が、主流体の噴射方向に対して逆方向でかつ該噴射方向に対して所定角度傾斜した方向から、主流体の噴射方向と直交する子午面内に位置する主流体の渦輪構造に向けて、副流体を噴射する。しかも、制御手段が、副ノズルの各々から副流体が間欠的に噴射するように、副流体の噴射を制御する。
【0010】
このため、主流体に副流体が効率良く混合されて主流体が刺激されることで、主流体を効率良く拡散させることができる。
【0011】
ここで、主流体の渦輪構造には副流体が接触するだけであるので耐熱性を向上することができ、更に、副ノズルが耐熱性を有する構成にすることで、仮に流体噴射装置が燃焼器である場合でも、流体噴射装置の耐熱性を更に良くすることができる。
【0012】
請求項2に記載の流体噴射装置は、請求項1に記載の流体噴射装置において、前記子午面の位置を前記主噴射口から前記主噴射口の直径に相当する距離離れた位置に想定する。
【0013】
請求項2に記載の流体噴射装置では、前記子午面の位置が主噴射口から主噴射口の直径に相当する距離離れた位置に想定されている。このため、主流体を一層効率良く拡散させることができる。
【0014】
請求項3に記載の流体噴射装置は、請求項1または請求項2に記載の流体噴射装置において、前記副流体の流速を前記主流体の流速より速くする。
【0015】
請求項3に記載の流体噴射装置では、副流体の流速が主流体の流速より速くされている。このため、主流体を一層効率良く拡散させることができる。
【0016】
請求項4に記載の流体噴射装置は、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の流体噴射装置において、前記複数の副ノズルからの前記副流体の前記主流体との接触位置を、噴射された前記主流体と前記子午面とが交差して形成される子午線の周囲に沿って0°以上90°以下の範囲内に等間隔に配置する。
【0017】
請求項4に記載の流体噴射装置では、複数の副ノズルからの副流体の主流体との接触位置が、噴射された主流体と前記子午面とが交差して形成される子午線の周囲に沿って0°以上90°以下の範囲内に等間隔に配置されている。このため、主流体を一層効率良く拡散させることができる。
【0018】
請求項5に記載の流体噴射装置は、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の流体噴射装置において、前記副噴射口の断面積を前記主噴射口の断面積に対して1/100〜1/130の大きさにする。
【0019】
請求項5に記載の流体噴射装置では、副ノズルの副噴射口の断面積が主ノズルの主噴射口の断面積に対して1/100〜1/130の大きさにされている。このため、主流体を一層効率良く拡散させることができる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように本発明の流体噴射装置によれば、耐熱性を良くすることができる、という効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1には、本発明の流体噴射装置が適用されて構成された実施の形態に係る燃焼器10が側面図にて示されている。なお、図面では、燃焼器10の前方を矢印FRで示し、燃焼器10の上方を矢印UPで示す。
【0022】
本実施の形態に係る燃焼器10は、例えばガスタービンや石油ファンヒータ等の暖房器用の燃焼器等に適用されるものである。
【0023】
燃焼器10は、鉄等で形成された耐熱性を有する主ノズル12を備えており、主ノズル12の後端部には、管状の導入管14が設けられている。導入管14の後端には、電磁バルブである主バルブ16が設けられており、主バルブ16が開放されることで、燃料である主流体18(例えば、液体燃料)が導入管14を介して主ノズル12内に導入され、下記主噴射口12Aより噴射される。
【0024】
主ノズル12の前後方向中間部(導入管14の前側)には、筒状のチャンバ部20が設けられており、チャンバ部20内は、導入管14内に連通されると共に、導入管14内に比し断面積が大きくされている。
【0025】
主ノズル12の前端部(導入管14の前側)には、円管状の噴射管22が設けられており、噴射管22内は、チャンバ部20内に連通され、かつ、導入管14内に比し断面積が大きくされると共にチャンバ部20内に比し断面積が小さくされている。噴射管22の前端には、円状の主噴射口12Aが形成されており、上述の如く主バルブ16が開放されることで、主流体18が、導入管14、チャンバ部20及び噴射管22を介して主噴射口12Aから、円錐台状の主噴流として酸化剤中(空気中)に噴射されると共に主噴流の周囲に断面円環状の渦輪構造が形成され、燃焼された状態で、前方へ噴射される。
【0026】
主ノズル12の主噴射口12Aの前側には、鉄、セラミックス等で形成された耐熱性を有する矩形管状の副ノズル24(ミニノズル)が一対配置されており、一対の副ノズル24は、主噴射口12Aの上側及び左右方向一側に配置されて、それぞれ後方(主噴流と逆方向)へ向かうに従い主噴射口12A側へ向かう方向へ傾斜されている。
【0027】
副ノズル24の基端には、電磁バルブである副バルブ26が設けられており、副バルブ26が開放されることで、副流体28(例えば主流体18と同じ流体、酸化剤を含む流体等)が副ノズル24内に導入される。副ノズル24の先端には、矩形状の副噴射口24Aが形成されており、副バルブ26が開放されることで、副流体28が副ノズル24を介して副噴射口24Aから噴射される。
【0028】
一対の副噴射口24Aは、噴射された主流体18の外側でかつ主流体18の噴射方向(前方)と直交する平面(子午面)S内に配置されており、図2に示す如く、主噴流の周囲に角度θ、例えば90°の間隔で配置されている。
【0029】
副噴射口24Aの断面積(副流体28の噴射方向に垂直な断面積)は、主噴射口12Aの断面積(主流体18の噴射方向に垂直な断面積)に対して小さく、例えば1/100〜1/130の大きさにされており、副流体28の噴射速度は、主流体18より流速が若干速くなるようにポンプ等によって供給される。
【0030】
これにより、図1に示す如く、一対の副噴射口24Aからの副流体28が、主流体18の噴射方向(前方)に対して逆方向(後方)でかつ該噴射方向に対して所定角度(例えば5°〜10°好ましくは5°〜6°)傾斜した方向から、主流体18の噴射方向と直交する子午面T内に位置する主流体18の渦輪構造に向けて、噴射される。また、子午面Tは、主バルブ16の主噴射口12Aから主噴射口12Aの直径Dに等しい距離Xだけ前方(主流体18の噴射方向)へ離れた位置に配置されると共に、一対の副噴射口24Aからの副流体28の主流体18の渦輪構造との接触位置は、主流体18と子午面Tとが交差して形成される子午線の周囲に沿って90°離間している。
【0031】
上記主バルブ16及び一対の副バルブ26は、制御手段としての制御装置30(コンピュータ)に接続されており、制御装置30の制御によって、主バルブ16及び一対の副バルブ26が間欠的で、かつ交互に開放制御される。
【0032】
次に、本実施の形態の作用を説明する。
【0033】
以上の構成の燃焼器10では、制御装置30の制御によって主バルブ16が継続して開放されることで、主ノズル12が主噴射口12Aから主流体18を、渦輪構造を有する円錐台状の噴流として噴射されると共に燃焼された状態で、継続して前方へ噴射する。
【0034】
さらに、制御装置30の制御によって一対の副バルブ26が開放されることで、一対の副ノズル24の副噴射口24Aから、主流体18の噴射方向に対して逆方向でかつ該噴射方向に対して所定角度傾斜した方向から、子午面T内に位置する主流体18の渦輪構造に向けて、副流体28が間欠的で、かつ交互に噴射される。
【0035】
すなわち、制御装置30は、一対の副バルブ26を制御することで、副ノズル24の各々から副流体28が間欠的に噴射するように、副流体28の噴射を制御する。具体的には、図3に示す如く、制御装置30は、一対の副バルブ26の双方に対して、副バルブ26を所定時間T1開放して副ノズル24から所定時間T1副流体28を噴射させた後に副バルブ26を特定時間T2(例えば所定時間T1の2倍の時間)閉鎖して副ノズル24からの副流体28の噴射を特定時間T2停止させる制御を、繰り返す。しかも、制御装置30は、一方の副バルブ26を所定時間T1開放して一方の副ノズル24から所定時間T1副流体28を噴射させた直後に他方の副バルブ26を所定時間T1開放して他方の副ノズル24から所定時間T1副流体28を噴射させることで、一方の副バルブ26を開放して一方の副ノズル24から副流体28を噴射させている間は他方の副バルブ26を閉鎖して他方の副ノズル24からの副流体28の噴射を停止させる。
【0036】
このため、主流体18に副流体28が効率良く混合されて主流体18の渦輪構造が刺激されることで、主流体18を子午面Tより下流において断面楕円状にさせて、主流体18を効率良く拡散させることができる。これにより、NO等の発生を低減することができる。
【0037】
また、副流体28が主噴射口12Aから主噴射口12Aの直径Dに相当する距離Xだけ前方へ離れた位置の渦輪構造に噴射される。さらに、副流体28の流速が主流体18の流速より若干速くされている。しかも、一対の副噴射口24Aからの副流体28の主流体18との接触位置が、主流体18と子午面Tとが交差して形成される子午線の周囲に沿って90°離間して配置される。さらに、副噴射口24Aの断面積が主噴射口12Aの断面積に対して1/100〜1/130の大きさにされている。このため、主流体18を一層効率良く拡散させることができる。
【0038】
ここで、主ノズル12及び副ノズル24が耐熱性を有し、副ノズル24は主流体18の渦輪構造に接触しない位置に配置されているため、燃焼器10の耐熱性を良くすることができる。
【0039】
なお、本実施の形態では、一対の副噴射口24Aからの副流体28と主流体18との接触位置を、主流体18の周囲に沿って90°離間して配置した構成としたが、0°以上90°以下の範囲内、例えば45°の間隔で配置してもよい。
【0040】
さらに、本実施の形態では、副ノズル24を一対設けた構成としたが、副ノズル24を3つ以上設けた構成としてもよい。この場合、3つ以上の副噴射口24Aからの副流体28の主流体18との接触位置が、主流体18と子午面Tとが交差して形成される子午線の周囲に沿って0°以上90°以下の範囲内に等間隔に配置した構成にするのが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施の形態に係る燃焼器を示す側面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る燃焼器における主噴射口と副噴射口との配置を示す前方から見た模式図である。
【図3】(A)及び(B)は、本発明の実施の形態に係る燃焼器における一対の副バルブの各々に対する制御装置の制御を示すグラフである。
【符号の説明】
【0042】
10 燃焼器(流体噴射装置)
12 主ノズル
12A 主噴射口
18 主流体
24 副ノズル
24A 副噴射口
28 副流体
30 制御装置(制御手段)
T 子午面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主噴射口を備え、該主噴射口から主流体を噴射する主ノズルと、
断面積が前記主ノズルの主噴射口の断面積より小さい副噴射口を備え、該副噴射口が、前記主流体の噴射方向に対して逆方向でかつ該噴射方向に対して所定角度傾斜した方向から、前記主流体の噴射方向と直交する子午面内に位置する前記主流体の渦輪構造に向けて副流体を噴射するように設けられた複数の副ノズルと、
前記副ノズルの各々から前記副流体が間欠的に噴射するように前記副流体の噴射を制御する制御手段と、
を含む流体噴射装置。
【請求項2】
前記子午面の位置を前記主噴射口から前記主噴射口の直径に相当する距離離れた位置に想定した請求項1記載の流体噴射装置。
【請求項3】
前記副流体の流速を前記主流体の流速より速くした請求項1または請求項2記載の流体噴射装置。
【請求項4】
前記複数の副ノズルからの前記副流体の前記主流体との接触位置を、噴射された前記主流体と前記子午面とが交差して形成される子午線の周囲に沿って0°以上90°以下の範囲内に等間隔に配置した請求項1〜請求項3のいずれか1項記載の流体噴射装置。
【請求項5】
前記副噴射口の断面積を前記主噴射口の断面積に対して1/100〜1/130の大きさにした請求項1〜請求項4のいずれか1項記載の流体噴射装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2007−203267(P2007−203267A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−28405(P2006−28405)
【出願日】平成18年2月6日(2006.2.6)
【出願人】(803000115)学校法人東京理科大学 (545)
【Fターム(参考)】