説明

流体噴射装置

【課題】省スペース化を図ることができる流体噴射装置を提供すること。
【解決手段】所定方向に移動可能に設けられ、流体を噴射する噴射領域を有する流体噴射ヘッドと、前記流体噴射ヘッドの待機時に前記噴射領域を覆う待機用キャップ部、前記噴射領域を覆って吸引する吸引用キャップ部、及び、前記流体噴射ヘッドから排出される前記流体を受ける流体受部が前記所定方向に沿って配列されたメンテナンス機構と、前記メンテナンス機構上を前記所定方向に移動可能に設けられ、前記待機用キャップ部、前記吸引用キャップ部及び前記流体受部のうち少なくとも1つを覆うように形成された蓋部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
流体を噴射する流体噴射装置として、例えばインクジェットプリンタなどが知られている。インクジェットプリンタは、噴射ヘッドからインクを噴射して記録媒体に画像を記録する装置である。インクジェットプリンタには、一般的に、噴射ヘッドのメンテナンスを行うメンテナンス機構が内蔵されている。
【0003】
メンテナンス機構は、例えば噴射ヘッドのインク噴射領域を覆うキャップ部や、噴射ヘッドから排出されたインクを受けるインク受部(フラッシング部)などを有している。噴射ヘッドを移動させ、キャップ部やインク受部などにアクセスさせることでメンテナンスが行われる構成になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−51806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、メンテナンス機構に複数種類の機構を搭載すると、メンテナンス機構が大型化し、ひいてはインクジェットプリンタ自体が大型化してしまうことになる。
【0006】
上記事情に鑑みて、本発明の目的は、省スペース化を図ることができる流体噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る流体噴射装置は、所定方向に移動可能に設けられ、流体を噴射する噴射領域を有する流体噴射ヘッドと、前記流体噴射ヘッドの待機時に前記噴射領域を覆う待機用キャップ部、前記噴射領域を覆って吸引する吸引用キャップ部、及び、前記流体噴射ヘッドから排出される前記流体を受ける流体受部が前記所定方向に沿って配列されたメンテナンス機構と、前記メンテナンス機構上を前記所定方向に移動可能に設けられ、前記待機用キャップ部、前記吸引用キャップ部及び前記流体受部のうち少なくとも1つを覆うように形成された蓋部とを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、待機用キャップ部、吸引用キャップ部及び流体受部が流体噴射ヘッドの移動方向に沿って配列されており、これらを覆う蓋部が各部の配列方向に移動することとしたので、最小限の移動で蓋部を各部に効率的にアクセスさせることができる。これにより、省スペース化を図ることができる。
【0009】
上記の流体噴射装置は、前記待機用キャップ部、前記吸引用キャップ部及び前記流体受部は、それぞれが昇降可能に設けられていることを特徴とする。
本発明によれば、待機用キャップ部、吸引用キャップ部及び流体受部のそれぞれが昇降することで、流体噴射ヘッドの動作に応じた柔軟なメンテナンスが可能となる。これにより、省スペース化を図りつつ、メンテナンス性を向上させることができる。
【0010】
上記の流体噴射装置は、前記待機用キャップ部は、前記噴射領域の全体を覆う寸法に形成されていることを特徴とする。
本発明によれば、流体噴射ヘッドの待機時において噴射領域の全体が覆われることになるため、流体噴射ヘッド内での流体の固化をより確実に防ぐことができる。
【0011】
上記の流体噴射装置は、前記吸引用キャップ部は、前記噴射面の一部を覆う寸法に形成されていることを特徴とする。
本発明によれば、吸引用キャップ部が噴射面の一部を覆う寸法に形成されているので、メンテナンス機構内の省スペース化を図ることができる。
【0012】
上記の流体噴射装置は、前記流体受部は、前記噴射面の一部に重なる寸法に形成されていることを特徴とする。
本発明によれば、流体受部が噴射面の一部に重なる寸法に形成されているので、メンテナンス機構内の省スペース化を図ることができる。
【0013】
上記の流体噴射装置は、前記吸引キャップ上を前記所定方向の交差方向に移動可能に設けられ、前記噴射面をワイピングするワイピング部を更に備えることを特徴とする。
本発明によれば、吸引用キャップ部による流体噴射ヘッドの吸引領域とワイピング部のワイピング領域とを対応させるようにワイピング部が配置されているため、スペースを効率的に利用しつつメンテナンス動作を行うことができる。
【0014】
上記の流体噴射装置は、前記ワイピング部は、前記蓋部の移動領域から外れた領域を移動し、前記ワイピング部の一部は、前記蓋部の移動領域上に出没可能に設けられていることを特徴とする。
本発明によれば、蓋部の移動領域から外れた領域を移動するワイピング部の一部が、当該移動領域上に出没することで、効果的なワイピング動作を行うことができる。
【0015】
上記の流体噴射装置は、前記蓋部は、前記吸引用キャップ部と前記流体受部とを同時に覆う寸法に形成されていることを特徴とする。
本発明によれば、流体噴射ヘッドの待機時に蓋部が吸引用キャップ部と流体受部とを同時に覆うことができる。流体噴射ヘッドを用いない場合において、吸引用キャップ部及び流体受部を同時に保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態に係るプリンタ装置の構成を示す概略図。
【図2】メンテナンス機構の構成を示す平面図。
【図3】メンテナンス機構の構成を示す側面図。
【図4】メンテナンス機構の一部の構成を示す側面図。
【図5】メンテナンス機構の一部の構成を示す側面図。
【図6】メンテナンス機構の動作の様子を示す動作図。
【図7】同、動作図。
【図8】同、動作図。
【図9】同、動作図。
【図10】同、動作図。
【図11】同、動作図。
【図12】同、動作図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明が適用されたプリンタ装置PRTの主要部の構成を斜視図によって示したものである。同図に示すように、プリンタ装置PRTは、噴射機構IJ、搬送機構CR、メンテナンス機構MN及び制御装置CONTを有している。
【0018】
以下の各図においては、XYZ直交座標系を設定し、XYZ直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係について説明する場合がある。この場合、図1におけるプリンタ装置PRTの正面視方向をX方向とし、プリンタ装置PRTの側面視方向をY方向とする。加えて、X方向及びY方向のそれぞれと直交する方向(すなわち図中上下方向)をZ方向とする。
【0019】
噴射機構IJは、キャリッジ1、キャリッジモータ2、タイミングベルト3、ガイド部材4、プラテン5を有している。キャリッジ1は、タイミングベルト3に接続されている。キャリッジモータ2の駆動によりタイミングベルト3が往復するようになっている。ガイド部材4は、プラテン5の軸方向に沿って延在しており、キャリッジ1の往復移動を案内する。
【0020】
キャリッジ1の上側面には、インクを供給するブラックインクカートリッジ7、およびカラーインクカートリッジ8が着脱可能に装填されている。ブラックインクカートリッジ7及びカラーインクカートリッジ8に収容されているインクとしては、例えば紫外線の照射を受けて硬化する紫外線硬化インクが用いられている。
【0021】
キャリッジ1の図中下面には、記録ヘッド(流体噴射ヘッド)20が設けられている。記録ヘッド20は、キャリッジ1の往復移動に伴ってY方向に移動可能になっている。記録ヘッド20は、ノズル20aを有している。これらのノズル20aは、複数列(例えば5列)に配列されており、ノズル列20Rを形成している。記録ヘッド20は、ノズル列20R毎に異なるインクカートリッジ(ブラックインクカートリッジ7及びカラーインクカートリッジ8)に接続されている。ノズル20aからは、上記の紫外線硬化インクが噴射されるようになっている。以下、ノズル20a(ノズル列20R)が形成された領域をノズル形成領域と表記する。
【0022】
搬送機構CRは、例えば搬送ローラなどを有しており、記録用紙6を記録ヘッド20の−Z側へ搬送させる。
【0023】
図2は、メンテナンス機構MNの構成を示す平面図である。図3は、メンテナンス機構MNの構成を示す正面図である。
図1〜図3に示すように、メンテナンス機構MNは、フラッシング受部30、吸引用キャップ部40、待機用キャップ部50及びワイピング部60、蓋部70及びガイド部80を有している。
【0024】
フラッシング受部30、吸引用キャップ部40及び待機用キャップ部50は、Y方向に沿って一列にこの順で配置されている。フラッシング受部30が最もプラテン5に近い位置(−Y側)に配置されており、待機用キャップ部50が最もプラテン5から離れた位置(+Y側)に配置されている。ワイピング部60は、吸引用キャップ部40の+X側に配置されている。上記の記録ヘッド20のX方向の寸法、吸引用キャップ部40のX方向の寸法及び待機用キャップ部50のX方向の寸法は、ほぼ等しくなっている。フラッシング受部30のX方向の寸法は、吸引用キャップ部40及び待機用キャップ部50に比べて大きくなっている。
【0025】
フラッシング受部30は、記録ヘッド20から排出されるインクを受けるインク受部である。フラッシング受部30に排出されたインクは、不図示の廃液タンクに収容されるようになっている。フラッシング受部30は、記録ヘッド20の一部に平面視で重なる寸法に形成されている。図3に示すように、フラッシング受部30は、カム機構などの不図示の駆動機構によって昇降可能に設けられている。フラッシング受部30は、内部に不図示のインク吸収材を有している。インク吸収材の表面には、不図示のノズルのドット抜け検出用電極が配置されている。
【0026】
吸引用キャップ部40は、記録ヘッド20のノズル形成領域を覆って吸引する。吸引用キャップ部40は、吸引ポンプなどの不図示の吸引機構が設けられている。吸引用キャップ部40は、1つのノズル列20Rに対応する領域を覆う寸法に形成されたキャップ部材41を有している。このため、吸引用キャップ部40は、ノズル形成領域の一部を覆う寸法に形成されていることになる。図3に示すように、吸引用キャップ部40は、カム機構などの不図示の駆動機構によってZ方向に移動可能に設けられている。当該キャップ部材41が記録ヘッド20に当接することで、記録ヘッド20に接する空間を密閉状態にすることができるようになっている。吸引用キャップ部40は、記録ヘッド20を移動させながらノズル列を1列ずつ順に覆って吸引することで、記録ヘッド20のノズル形成領域の全領域を吸引することができるようになっている。
【0027】
待機用キャップ部50は、記録ヘッド20のノズル形成領域の全体を覆うように設けられている。待機用キャップ部50は、記録ヘッド20の各ノズル列に対応する位置にキャップ部材51が設けられている。待機用キャップ部50は、例えばカム機構などの不図示の駆動機構によって昇降可能に設けられている。キャップ部材51は、記録ヘッド20に当接することで記録ヘッド20に接する空間を密閉状態することができるようになっている。キャップ部材51には、吸引機構は設けられていない。したがって、当該待機用キャップ部50は、例えばノズルの保湿のために用いられる。
【0028】
ワイピング部60は、記録ヘッド20のノズル20a形成面を摺動する部分である。ワイピング部60は、吸引用キャップ部40の+X側に配置されている。ワイピング部60は、吸引用キャップ部40の+Z側に配置されている。ワイピング部60は、吸引用キャップ部40の+Z側をX方向に移動可能に設けられている。
【0029】
図4及び図5は、ワイピング部60の構成を詳細に示す図である。図4及び図5は、メンテナンス機構MNを+Y方向に見たときの図である。
図4及び図5に示すように、ワイピング部60は、摺動部材61、保持部材62、移動機構63及び回転機構64を有している。
【0030】
摺動部材61は、外力によって弾性変形可能な材料からなり、記録ヘッド20のノズル形成面に当接する部分である。保持部材62は、摺動部材61を保持する。移動機構63は、摺動部材61及び保持部材62をX方向に移動させる機構である。
【0031】
移動機構63は、例えば回転駆動軸63a、支持軸63bを有している。回転駆動軸63aはモータなどの不図示の駆動機構に接続されている。回転駆動軸63aは、軸表面に螺旋状の溝(不図示)が形成されており、当該溝には保持部材62の一部が係合された状態になっている。このため、回転駆動軸63aが回転することによって保持部材62に力を伝達し、当該力によって保持部材62がX方向に移動するようになっている。支持軸63bは、保持部材62が回転せずに移動するように支持する軸である。
【0032】
回転機構64は、摺動部材61をθY方向(Y軸周りの方向)に回転させる。回転機構64は、可動子64a、回転ギア64b及び回転軸64cを有している。可動子64aは保持部材62に取り付けられており、可動子64aに力が加わらない状態では当該保持部材62と一体的に移動可能になっている。図4に示すように、X方向において可動子64aは保持部材62より大きく、保持部材62が−X方向に進むとき、可動子64aは保持部材62に対して−X方向に突出した状態となっている。そして、可動子64aの端部が壁Wに当接し、さらに保持部材62を移動させると、図5に示すように、可動子64aは移動せずに保持部材62だけ移動することになり、保持部材62と可動子64aは相対的に移動することとなる。可動子64aの+Z側表面には、凹凸部65が形成されている。回転ギア64bは、可動子64aの+Z側に配置されており、可動子64aの凹凸部65にかみ合うギア部66を有している。回転軸64cは、例えば−Y側の軸部に回転ギア64bが軸支されており、+Y側の軸部に摺動部材61が軸支されている。回転ギア64b、回転軸64c及び摺動部材61は、一体的に回転するようになっている。
【0033】
図5に示すように、保持部材62を−X側へ移動させ可動子64aを+X側へ押圧することにより可動子64aが保持部材62とは独立して移動し、当該可動子64aの移動によって回転ギア64bが回転するようになっている。回転ギア64bが回転することで、回転軸64c及び摺動部材61が一体的に回転するようになっている。そのため、摺動部材61は倒立状態から倒れた状態となる。そして、図5に示す状態から、保持部材62がX方向に移動すると、摺動部材61が倒れた状態で進む。このとき、保持部材62に対して可動子64aが突出した状態となっている。そして、保持部材62が進んで、図4に示す壁Wと反対側の図示していない壁に可動子64aが当接し、保持部材62がさらに進むと、保持部材62と可動子64aは図5とは反対方向の相対的な動きとなり、摺動部材61は倒立するように回転する。このように、摺動部材61が回転することで、例えば摺動部材61を立てた第1状態(図4の状態)と摺動部材61を倒した第2状態(図5の状態)とを切り替えることが可能になっている。
【0034】
摺動部材61が第1状態の場合、摺動部材61は後述する蓋部70の移動領域上に出現することになる。摺動部材61が第2状態の場合、摺動部材61は蓋部70の移動領域上から退避した状態となる。摺動部材61の第1状態と第2状態とを切り替えることにより、蓋部70の移動領域に障害物となる摺動部材61が出現するのを回避することができるようになっている。このようにワイピング部60は、蓋部70の移動領域から外れた領域を移動し、摺動部材61が蓋部70の移動領域上に出没可能に設けられている。
【0035】
ワイピング部60は、吸引用キャップ部40とはY方向で同じ位置に配置されており、この位置からX方向に往復移動するようになっているため、吸引用キャップ部40による記録ヘッド20のノズル領域と摺動部材61のワイピングするノズル領域とが同じノズル領域となるように対応させるように配置されている状態となっている。
【0036】
図1〜図3に戻って、蓋部70は、フラッシング受部30、吸引用キャップ部40及び待機用キャップ部50の+Z側をX方向に往復移動可能に設けられている。図1、2では、メンテナンス機構MNの構成を判別しやすくするため、蓋部70を一点鎖線で示すと共に蓋部70を透過させた状態で示している。蓋部70は、図12に示すようにX方向の中央部が+Y側に突出した形状に形成されている。この突出した部分は、吸引用キャップ部40及び待機用キャップ部50のX方向の寸法とほぼ等しくなっている。蓋部70は、フラッシング受部30及び吸引用キャップ部40を同時に覆う寸法に形成されている。蓋部70のX方向の寸法は、例えばフラッシング受部30のX方向の寸法よりも大きくなっている。蓋部70のY方向の寸法は、例えば図10に示すように待機用キャップ部50のY方向の寸法とほぼ等しくなっている。
【0037】
ガイド部80は、フラッシング受部30、吸引用キャップ部40及び待機用キャップ部50の+X側及び−X側に一対設けられている。図1では、+X側に配置されたガイド部80のみを示しているが、実際には−X側にもう1つガイド部80が設けられている。図をわかりやすくするため、図2及び図3及びそれ以降の図において、ガイド部80の図示を省略している。ガイド部80は、記録ヘッド20の移動方向と同一方向であるY方向に延在するように形成されている。蓋部70はガイド部80に沿ってY方向に移動可能に設けられている。
【0038】
次に、上記のように構成されたプリンタ装置PRTの動作を説明する。
記録動作を行う場合、制御装置CONTは、搬送機構CRによって記録用紙6をプリンタ装置PRT内に搬送させる。制御装置CONTは、記録用紙6が記録ヘッド20の−Z側に到達したら、画像データや文字データなどの印刷データに基づいて、搬送機構CRによって記録用紙6を搬送させつつノズル20aからインクを噴射させる。
【0039】
メンテナンス動作を行う場合、制御装置CONTは、蓋部70を待機用キャップ部50の+Z側へ移動させ、待機用キャップ部50を+Z方向へ移動させる。この動作により、待機用キャップ部50が蓋部70に当接した状態で覆われることとなる。待機用キャップ部50を蓋部70で覆った後、制御装置CONTは、記録ヘッド20を+Y方向へ移動させメンテナンス機構MNの位置へアクセスさせる。記録ヘッド20をメンテナンス機構MNにアクセスさせた後、制御装置CONTは、記録ヘッド20のメンテナンス動作を行わせる。
【0040】
フラッシング動作の説明をする。フラッシング動作を行う場合、制御装置CONTは、図6に示すように、フラッシング受部30を+Z側へ移動させ、記録ヘッド20をフラッシング受部30の+Z側に配置させる。このとき、記録ヘッド20に形成されたノズル列20Rのうち一部(ここでは+Y側の3列)のみをフラッシング受部30の+Z側に配置させるようにする。この状態で、制御装置CONTは、当該3列のノズル列20Rに設けられる各ノズル20aから選択的にインクを排出させる。
【0041】
この3列のインク排出が終了した後、制御装置CONTは、図7に示すように、記録ヘッド20を+Y側へ移動させ、残りの2列のノズル列20Rをフラッシング受部30上に配置させる。ノズル列20Rの配置後、制御装置CONTは、当該2列のノズル列20Rに設けられるノズル20aから選択的にインクを排出させる。ノズル列20R排出されたインクQは、フラッシング受部30のインク吸収材によって吸収され、不図示のインクタンクに排出される。フラッシング動作の終了後、制御装置CONTは、フラッシング受部30を−Z側へ移動させ、元の位置に戻す。
【0042】
吸引動作及びワイピング動作の説明をする。吸引動作を行う場合、制御装置CONTは、図8に示すように、記録ヘッド20を当該吸引用キャップ部40の+Z側に配置させる。このとき、最も+Y側のノズル列20Rが吸引用キャップ部40の上方に配置されるようにする。ノズル列20Rの配置後、吸引用キャップ部40を+Z側へ移動させ、キャップ部材41を記録ヘッド20に当接させる。この状態で、制御装置CONTは、不図示の吸引機構を作動させ、記録ヘッド20のノズル形成領域の1列分を吸引する。
【0043】
ノズル列20Rの1列についての吸引動作が終了した後、制御装置CONTは、図9に示すように、吸引用キャップ部40を一端もとの位置に戻し、ワイピング部60の摺動部材61を第1状態(立った状態)とし、摺動部材61を記録ヘッド20に当接させる。摺動部材61を当接させた後、制御装置CONTは、図10に示すように保持部材62を−X方向に移動させ、記録ヘッド20のノズル形成面のワイピング動作を行う。保持部材62が−X側の終点に達すると、ワイピング部60の回転機構64の作用によって摺動部材61が第2状態となる。この状態で、制御装置CONTは、保持部材62を+X方向に移動させ、ワイピング部60を元の位置に戻す。
【0044】
ワイピング動作の終了後、制御装置CONTは、記録ヘッド20を1列分+Y方向に移動させ、次のノズル列20Rについて上記吸引動作及びワイピング動作を行わせる。このように、複数(例えば5列)のノズル列20Rについて1列ずつ吸引動作及びワイピング動作を行うことで、記録ヘッド20の全ノズル形成領域の吸引動作及びワイピング動作が行われる。
【0045】
記録ヘッド20の待機時の動作の説明をする。長期間記録ヘッド20を用いない場合、記録ヘッド20のノズル20aを剥き出しの状態で放置しておくと、ノズル20a内のインクが乾燥し、詰まりの原因となる。同時に、フラッシング受部30や吸引用キャップ部40についても放置され、各部に付着したインクが固化することになる。
【0046】
これに対して、本実施形態置いては、記録ヘッド20を待機させる場合、図11及び図12に示すように、制御装置CONTは、記録ヘッド20が待機用キャップ部50によって覆われた状態にすると共に、フラッシング受部30及び吸引用キャップ部40が蓋部70によって覆われた状態にする。
【0047】
具体的には、制御装置CONTは、蓋部70を−Y方向へ移動させ、蓋部70の凸部71が吸引用キャップ部40上に配置されるように位置合わせをする。位置合わせを行った後、制御装置CONTは、フラッシング受部30及び吸引用キャップ部40をそれぞれ+Z側へ移動させ、蓋部70に当接させる。この動作により、フラッシング受部30及び吸引用キャップ部40が蓋部70に覆われた状態となる。
【0048】
一方、制御装置CONTは、記録ヘッド20を待機用キャップ部50上に配置し、ノズル列20Rとキャップ部材51との間で位置合わせを行う。位置合わせを行った後、制御装置CONTは、待機用キャップ部50を+Z側へ移動させてキャップ部材51と記録ヘッド20とを当接させる。この動作により、記録ヘッド20の各ノズル列20Rが待機用キャップ部50によって覆われた状態となる。
【0049】
以上のように、本実施形態によれば、フラッシング受部30、吸引用キャップ部40、及び待機用キャップ部50が記録ヘッド20の移動方向に沿って配列されており、これらを覆う蓋部70が各部の配列方向に移動することとしたので、最小限の移動で蓋部70を各部に効率的にアクセスさせることができる。これにより、省スペース化を図ることができる。
【0050】
加えて、待機用キャップ部50、吸引用キャップ部40及びフラッシング受部30のそれぞれが昇降可能に設けられているので、記録ヘッド20の動作に応じた柔軟なメンテナンスが可能となる。これにより、省スペース化を図りつつ、メンテナンス性を向上させることができる。また、記録ヘッド20の待機時に蓋部70が吸引用キャップ部40とフラッシング受部30とを同時に覆う構成となっているため、記録ヘッドを待機させる場合において、吸引用キャップ部40及びフラッシング受部30を同時に保護することができる。
【0051】
また、待機用キャップ部50が記録ヘッド20の全体を覆う寸法に形成されているため、記録ヘッド20の待機時において記録ヘッド20の全体が覆われることになる。これにより、記録ヘッド20内でのインクの固化をより確実に防ぐことができる。加えて、吸引用キャップ部40が記録ヘッド20の一部を覆う寸法に形成されていると共に、フラッシング受部30が記録ヘッド20の一部に重なる寸法に形成されている構成としたので、メンテナンス機構MNの省スペース化を図ることができる。
【0052】
さらに、本実施形態によれば、吸引用キャップ部40による記録ヘッド20の吸引領域と摺動部材61のワイピング領域とを対応させるようにワイピング部60が配置されているため、スペースを効率的に利用しつつメンテナンス動作を行うことができる。このワイピング部60は、蓋部70の移動領域から外れた領域を移動し、摺動部材61が蓋部70の移動領域上に出没可能に設けられている。このため、例えば摺動部材61の摺動時にのみ蓋部の移動領域に出現させ、蓋部70の移動時には当該移動領域から退避させるようにするなど、メンテナンス機構MNの動作のタイミングに合わせて効率的に移動させることができる。これにより、省スペース化を図りつつも、効率的な動作が可能になる。
【0053】
上記実施例は、インクジェット式のプリンタと、インクカートリッジが採用されているが、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする液体噴射装置と、その液体を収容した液体容器を採用しても良い。微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であれ良い。例えば、物質が液相であるときの状態のものであれば良く、粘性の高い又は低い液状態、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散または混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施例の形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インクおよび油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散または溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置を採用しても良い。そして、これらのうちいずれか一種の噴射装置および液体容器に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0054】
PRT…プリンタ装置(流体噴射装置) 20…記録ヘッド(流体噴射ヘッド) MN…メンテナンス機構 30…フラッシング受部(流体受部) 40…吸引用キャップ部 50…待機用キャップ部 60…ワイピング部 70…蓋部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に移動可能に設けられ、流体を噴射する噴射領域を有する流体噴射ヘッドと、
前記流体噴射ヘッドの待機時に前記噴射領域を覆う待機用キャップ部、前記噴射領域を覆って吸引する吸引用キャップ部、及び、前記流体噴射ヘッドから排出される前記流体を受ける流体受部が前記所定方向に沿って配列されたメンテナンス機構と、
前記メンテナンス機構上を前記所定方向に移動可能に設けられ、前記待機用キャップ部、前記吸引用キャップ部及び前記流体受部のうち少なくとも1つを覆うように形成された蓋部と
を備えることを特徴とする流体噴射装置。
【請求項2】
前記待機用キャップ部、前記吸引用キャップ部及び前記流体受部は、それぞれが独立して昇降可能に設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の流体噴射装置。
【請求項3】
前記待機用キャップ部は、前記噴射領域の全体を覆う寸法に形成されている
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の流体噴射装置。
【請求項4】
前記吸引用キャップ部は、前記噴射面の一部を覆う寸法に形成されている
ことを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の流体噴射装置。
【請求項5】
前記流体受部は、前記噴射面の一部に重なる寸法に形成されている
ことを特徴とする請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載の流体噴射装置。
【請求項6】
前記吸引キャップ上を前記所定方向の交差方向に移動可能に設けられ、前記噴射面をワイピングするワイピング部
を更に備えることを特徴とする請求項1から請求項5のうちいずれか一項に記載の流体噴射装置。
【請求項7】
前記ワイピング部は、前記蓋部の移動領域から外れた領域を移動し、
前記ワイピング部の一部は、前記蓋部の移動領域上に出没可能に設けられている
ことを特徴とする請求項6に記載の流体噴射装置。
【請求項8】
前記蓋部は、前記吸引用キャップ部と前記流体受部とを同時に覆う寸法に形成されている
ことを特徴とする請求項1から請求項7のうちいずれか一項に記載の流体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−194950(P2010−194950A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−44249(P2009−44249)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】