説明

流体噴射装置

【課題】回転駆動によりワイピング処理を実行させる際に生じる流体の飛散による汚染を防止する。
【解決手段】インクを噴射する複数のノズル13が設けられた噴射面11Aからインクを媒体に噴射する記録ヘッド11と、上記インクの噴射方向と直交する方向に延びる軸周りに回転駆動する回転体40と、回転体40の外周部40aに立設され、上記回転駆動により噴射面11Aに押圧して払拭するワイピング部材43と、上記回転駆動により上記押圧したワイピング部材43の先端部43aが噴射面11Aから離脱する際に、先端部43aの移動経路A前方側を遮る遮蔽位置に位置するインク飛散防止壁50と、を有するインクジェットプリンターを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
流体を噴射する流体噴射装置として、例えばインクジェット式記録装置が知られている。インクジェット式記録装置は、記録媒体(媒体)に文字や画像等を記録する装置であり、記録ヘッド(流体噴射ヘッド)に設けられたノズルから記録媒体にインク(流体)を選択的に噴射する構成になっている。
【0003】
この流体噴射装置では、良好な噴射状態を維持又は回復させるため、当該流体噴射ヘッドのメンテナンス処理を定期的に行っている。このメンテナンス処理としては、例えば、流体噴射ヘッドの噴射面を払拭(ワイピング)することで、ノズル近傍に付着したインクや増粘したインク等を除去したり、ノズルのメニスカスを破壊して、メニスカスを再調整させるパージ処理が挙げられる。
【0004】
下記特許文献1には、回転体の外周部にワイピング処理部を備えるメンテナンスユニットが開示されている。このメンテナンスユニットの外周部には、ワイピング処理部の他に、蓋部、パージ処理部、プライム処理部、キャッピング部が設けられており、回転体を回転駆動させることでこれらの内の一つを流体噴射ヘッドに対向させて所望のメンテナンス処理を実行させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−260372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記のように回転体の外周部にワイピング処理部(ワイピング部材)を備える構成のメンテナンスユニットにおいては、回転体の回転駆動によりワイピング部材を噴射面に押圧させた払拭を実行させることがある。
しかし、ワイピング終了時、押圧したワイピング部材が噴射面から離脱する際に、ワイピング部材の先端部が撓り、払拭した余剰のインクが飛散して、他の構成部位を汚染してしまうという問題がある。例えば、飛散したインクがプラテンに付着した場合、記録媒体に転写して画像品質の低下を招き、また、飛散したインクがキャップ部材に付着した場合、再び噴射面に転写してインク吐出不良を誘発するといった問題が生じる。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、回転駆動によりワイピング処理を実行させる際に生じる流体の飛散による汚染を防止することができる流体噴射装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、流体を噴射する複数のノズルが設けられた噴射面から上記流体を媒体に噴射する流体噴射ヘッドと、上記流体の噴射方向と直交する方向に延びる軸周りに回転駆動する回転体と、上記回転体の外周部に立設され、上記回転駆動により上記噴射面に押圧して払拭するワイピング部材と、上記回転駆動により上記押圧した上記ワイピング部材の先端部が上記噴射面から離脱する際に、上記先端部の移動経路前方側を遮る遮蔽位置に位置する流体飛散防止壁と、を有するという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、ワイピング部材が噴射面から離脱する際に、先端部の撓りにより前方に飛散する流体を、その先端部の移動経路前方を遮る遮蔽位置に位置する流体飛散防止壁で受けることが可能となる。
【0009】
また、本発明においては、上記流体飛散防止壁は、上記回転体の外周部に設けられているという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、流体飛散防止壁が回転体と一体となって回転することが可能となり、同じ外周部に設けられているワイピング部材との相対位置関係を常に一定にして、適切な位置関係で飛散する流体を受けることができる。
【0010】
また、本発明においては、上記流体飛散防止壁は、上記流体噴射ヘッドに設けられているという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、流体の飛散は噴射面からワイピング部材が離脱することで生じるので、その噴射面を備える流体噴射ヘッドに流体飛散防止壁を備えれば、ワイピング部材が離脱する領域により近い位置で流体の飛散を防止できる。
【0011】
また、本発明においては、上記流体飛散防止壁は、上記遮蔽位置と、上記先端部の移動経路上から退避する非遮蔽位置との間を移動自在であるという構成を採用する。
本発明では、流体飛散防止壁を遮蔽位置と非遮蔽位置との間で移動させる可動式にする。この構成によれば、流体飛散防止壁が回転体の外周部に設けられる場合には、流体飛散防止壁と流体噴射ヘッドの噴射面との干渉を避けることができる。また、流体飛散防止壁が流体噴射ヘッドに設けられる場合には、流体飛散防止壁とワイピング部材の先端部との干渉を避けることができる。
【0012】
また、本発明においては、上記流体飛散防止壁の移動により、上記流体飛散防止壁の上記ワイピング部材と対向する側面と摺接して清掃する清掃部材が設けられているという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、流体飛散防止壁で受けた流体をその移動に伴って自動に回収、清掃することができる。これにより、流体飛散防止壁のメンテナンス頻度を低減させることが可能となる。
【0013】
また、本発明においては、上記流体飛散防止壁は、上記回転体の回転角度に基づいて上記移動をするという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、回転体の回転角度によりワイピング部材が噴射面から離脱するタイミングを導いて、流体飛散防止壁を適切なタイミングで遮蔽位置に移動させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態におけるインクジェットプリンターの概略構成図である。
【図2】本発明の実施形態における記録ヘッドを噴射面側から視た図である。
【図3】本発明の実施形態における記録ヘッドの構成を示す断面図である。
【図4】本発明の実施形態におけるメンテナンス機構の構成を示す図である。
【図5】本発明の実施形態におけるワイピング処理時のメンテナンス機構の様子を示す図である。
【図6】本発明の別実施形態におけるメンテナンス機構の構成を示す図である。
【図7】本発明の別実施形態におけるメンテナンス機構の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る流体噴射装置の各実施形態について、図を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。本実施形態では、本発明に係る流体噴射装置として、インクジェット式プリンター(以下、インクジェットプリンターと称する)を例示する。
【0016】
図1は、本発明の実施形態におけるインクジェットプリンターPRTの概略構成図である。図2は、本発明の実施形態における記録ヘッド11を噴射面11A側から視た図である。図3は、本発明の実施形態における記録ヘッド11の構成を示す断面図である。
なお、図中示すように、XYZ直交座標系を設定し、XYZ直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係について説明する場合がある。この場合においては、記録媒体Mの搬送方向をX方向と、該搬送方向と直交する搬送面幅方向をY方向と、X方向及びY方向と直交する高さ方向(鉛直方向)をZ方向と称する。
【0017】
インクジェットプリンターPRTは、インク滴(流体)を噴射することで記録媒体(媒体)Mに所定の情報や画像を印字する記録処理を行う構成となっている。記録媒体Mとしては、例えば記録用紙やプラスチック、ガラス基板等が用いられる。インクジェットプリンターPRTは、図1に示すように、インクを噴射する記録ヘッド(流体噴射ヘッド)11を備えるインク噴射機構IJ、記録媒体Mを搬送する搬送機構CR、記録ヘッド11をメンテナンスするメンテナンス機構MN、及び上記各構成部の動作を統括的に制御するコンピュータシステムを有する制御装置CONTを有する。
【0018】
インク噴射機構IJは、記録媒体Mにインク滴(流体)を噴射する記録ヘッド11と、記録ヘッド11にインクを供給するインク供給部12とを有する構成となっている。本実施形態で用いるインクは、染料や顔料、これを溶解または分散する溶媒を基本的成分とし、必要に応じて各種添加剤が添加された液状体を用いる。
【0019】
本実施形態の記録ヘッド11は、イエロー(Ye)、マゼンタ(Ma)、シアン(Cy)、ブラック(Bk)の各色調に対応した共通インク室14(14Y、14M、14C、14B)を有し、それらと対応して連通するノズル13から各色に応じたインクを噴射する構成となっている。なお、記録ヘッド11は、不図示のヘッド移動装置によりZ方向に移動自在となっている。
インク供給部12は、上記4色のインクを貯蔵するインクタンク12(12Y、12M、12C、12K)を有する。また、インク供給部12は、不図示のインク供給ポンプを有し、各共通インク室14にその色調に応じたインクをインクタンク12から供給する構成となっている。
【0020】
図2に示すように、記録ヘッド11は、インクジェットプリンターPRTが対象とする最大サイズの記録媒体Mの幅(最大記録媒体幅W)に亘って設けられたノズル形成領域15を有するライン型の記録ヘッドである。ノズル形成領域15は、上記各色のインクに対応したノズル形成領域15Y、15M、15C、15Kを有する。ノズル13は、各ノズル形成領域15に対応してY方向に複数配列されてノズル列Lを構成する。このノズル13が複数形成された噴射面11Aは、−Z方向側に向けて配置される。
【0021】
図3に示すように、記録ヘッド11は、ヘッド本体18と、ヘッド本体18に接続された流路形成ユニット22とを備えている。流路形成ユニット22は、振動板19と、流路基板20と、ノズル基板21とを備えると共に、共通インク室14と、インク供給口30と、圧力室31とを形成する。さらに、流路形成ユニット22は、ダイヤフラム部として機能する島部32と、共通インク室14内の圧力変動を吸収するコンプライアンス部33とを備える。ヘッド本体18には、固定部材26と共に駆動ユニット24を収容する収容空間23と、インクを流路形成ユニット22に案内する内部流路28とが形成される。
【0022】
上記構成の記録ヘッド11によれば、ケーブル27を介して駆動ユニット24に駆動信号が入力されると、圧電素子25が伸縮する。これにより、振動板19がキャビティに接近する方向及び離れる方向に変形(移動)する。このため、圧力室31の容積が変化し、インクを収容した圧力室31の圧力が変動する。この圧力の変動によって、ノズル13から、インクが噴射される。
【0023】
図1に戻り、搬送機構CRは、紙送りローラ35、排出ローラ36等を有している。紙送りローラ35、排出ローラ36は、不図示のモータ機構によって回転駆動されるようになっている。搬送機構CRは、インク噴射機構IJによるインク滴の噴射動作に連動させて記録媒体Mを搬送面MRに沿って搬送する構成となっている。
【0024】
次に、メンテナンス機構MNの構成について、図4を参照して説明する。
図4は、本発明の実施形態におけるメンテナンス機構MNの構成を示す図である。
メンテナンス機構MNは、回転駆動する回転体40と、回転体の外周部40aに設けられるプラテン部材41、キャップ部材42、ワイピング部材43、インク飛散防止壁50と、キャップ部材42内のインクを吸引する吸引ポンプ45と、吸引ポンプ45により吸引したインクを貯溜する廃インクタンク46とを有する。
【0025】
回転体40は、記録ヘッド11の噴射面11Aと対向する位置に設けられ、インクの噴射方向と直交するY方向に延びる軸周りに回転駆動する構成となっている。回転体40は、不図示の回転駆動装置により駆動され、図4において時計回り、反時計回りに回転自在な構成となっている。また、回転体40には、その回転角度を検出するエンコーダが設けられ、該検出結果は制御装置CONTに出力される。
【0026】
プラテン部材41は、記録ヘッド11と対向する位置で記録媒体Mを支持する媒体支持部である。プラテン部材41は、記録媒体Mを支持する支持面41aを有している。支持面41aは、プラテン38a及びプラテン38bと共に搬送面MRの一部を構成する。プラテン部材41は、支持面41aが記録ヘッド11のノズル形成領域15に対応した領域をカバーするように形成されている。
【0027】
キャップ部材42は、記録ヘッド11の噴射面11Aをキャッピングするトレイ形状の部材である。キャップ部材42の開口縁部を構成するリップ部42aは、ゴム部材等の弾性部材から形成され、複数のノズル13を囲うように噴射面11Aと当接可能な構成となっている。なお、キャップ部材42は、ノズル13内で粘度が高くなったインクを噴射するフラッシングを行う際、噴射されたインクを受ける部分でもある。キャップ部材42は、トレイ内部にインク吸収材42bを有している。キャップ部材42の底部中央には、回転体40に形成されたインク排出孔40bに連通する流出口42cが設けられている。
【0028】
吸引ポンプ45は、インク排出孔40bと廃インクタンク46との間に設けられ、キャップ部材42の流出口42cを介して吸引動作を行う構成となっている。廃インクタンク46は、吸引動作により流れ込むインクを貯溜する構成となっている。なお、廃インクタンク46は、装置本体に対して着脱自在であり、定期的に内部に貯溜したインクを廃棄する構成となっている。
【0029】
ワイピング部材43は、回転体40の外周部40aに立設して、回転体40の回転駆動により噴射面11Aに押圧して払拭する構成となっている。本実施形態のワイピング部材43は、ゴム部材等の弾性体からなり、矩形の板形状を有する。
図4に示す2点鎖線は、ワイピング部材43の先端部43aの移動経路Aを示す。先端部43aの移動経路Aは、噴射面11Aと非接触時は、回転体40の回転軸を中心とした円軌道を形成する。一方、噴射面11Aと接触時は、先端部43aが撓みつつ噴射面11Aに沿って移動するので、直線軌道を形成する。
【0030】
インク飛散防止壁50は、回転駆動により押圧したワイピング部材43の先端部43aが噴射面11Aから離脱する際に、先端部43aの移動経路A前方側を遮る遮蔽位置に位置して余剰インクを受ける構成となっている。本実施形態のインク飛散防止壁50は、回転体40の回転方向においてワイピング部材43を挟んだ両側の外周部40aにそれぞれ設けられる。インク飛散防止壁50とワイピング部材43との回転方向における相対距離は、余剰インクの飛散を受ける関係で可能な限り近接させることが望ましい。
なお、回転体40の回転方向が一方側のみに制限される場合には、インク飛散防止壁50をワイピング部材43の前方側に一つだけ設ける構成であっても良い。
【0031】
インク飛散防止壁50は、先端部43aの移動経路A上に位置する遮蔽位置と、先端部43aの移動経路Aから退避する非遮蔽位置との間を移動自在となっている。本実施形態におけるインク飛散防止壁50の移動方向は、ワイピング部材43の立設方向と平行な方向であり、回転体40には、非遮蔽位置に位置するインク飛散防止壁50を収容可能な収容溝40cが形成されている。
【0032】
なお、インク飛散防止壁50を移動させる構成としては、周知のラックピニオン機構やカム機構等を採用できる。制御装置CONTは、回転体40の回転角度に基づいてワイピング部材43が噴射面11Aから離脱するタイミングを導き、上記機構を作動させてインク飛散防止壁50を移動させる。
【0033】
続いて、図5を参照して、上記構成を備えるメンテナンス機構MNのワイピング処理時の具体的な動作について説明する。
図5(a)は、ワイピング処理開始時のメンテナンス機構MNの様子を示す図である。図5(b)は、ワイピング処理終了時のメンテナンス機構MNの様子を示す図である。
【0034】
ワイピング処理を行う場合、制御装置CONTは、回転体40を回転駆動させ、図5(a)に示すように、ワイピング部材43の先端部43aを噴射面11Aに接触、押圧させる。なお、この時、制御装置CONTは、記録ヘッド11とインク飛散防止壁50との干渉、衝突を避けるべく、予め前方のインク飛散防止壁50を非遮蔽位置に位置させる。
ワイピング部材43の先端部43aは、回転体40の回転駆動により、噴射面11Aに押圧した状態で、噴射面11Aに沿って移動し、その全面を払拭する。そして、制御装置CONTは、該払拭中に後方のインク飛散防止壁50が記録ヘッド11と干渉しないように、後方のインク飛散防止壁50を非遮蔽位置に位置させる(図5(b)参照)。
【0035】
図5(b)に示すように、ワイピング処理終了の際、制御装置CONTは、前方のインク飛散防止壁50を遮蔽位置に位置させる。先端部43aは、回転体40の回転駆動により噴射面11Aから離脱する際に押圧状態が解除されて前方に撓り、払拭した余剰インクを移動経路Aの前方に飛散させる。インク飛散防止壁50は、予め遮蔽位置に位置して移動経路Aの前方を遮り、余剰インクを受けてその飛散を防止する。なお、同図に示すように、先端部43aが噴射面11Aが離脱する際に、インク飛散防止壁50が噴射面11Aより高い位置に位置すれば、噴射面11Aに沿って飛散する微量の余剰インクも受けることができるため、他の構成部の汚染をより効果的に防止することが可能となる。
【0036】
したがって、上述した本実施形態によれば、インクを噴射する複数のノズル13が設けられた噴射面11Aからインクを記録媒体Mに噴射する記録ヘッド11と、上記インクの噴射方向と直交する方向に延びる軸周りに回転駆動する回転体40と、回転体40の外周部40aに立設され、上記回転駆動により噴射面11Aに押圧して払拭するワイピング部材43と、上記回転駆動により上記押圧したワイピング部材43の先端部43aが噴射面11Aから離脱する際に、先端部43aの移動経路A前方側を遮る遮蔽位置に位置するインク飛散防止壁50と、を有するという構成を採用することによって、ワイピング部材43が噴射面11Aから離脱する際に、先端部43aの撓りにより前方に飛散する流体を、その先端部43aの移動経路A前方を遮る遮蔽位置に位置するインク飛散防止壁50で受けることが可能となる。
したがって、本実施形態では、回転駆動によりワイピング処理を実行させる際に生じるインクの飛散による汚染を防止することができる。
【0037】
また、本実施形態においては、インク飛散防止壁50は、回転体40の外周部40aに設けられているという構成を採用することによって、インク飛散防止壁50が回転体40と一体となって回転することが可能となり、同じ外周部40aに設けられているワイピング部材43との相対位置関係を常に一定にして、適切な位置関係で飛散するインクを受けることができる。
【0038】
さらに、本実施形態においては、インク飛散防止壁50は、上記遮蔽位置と、先端部43aの移動経路A上から退避する非遮蔽位置との間を移動自在であるという構成を採用することによって、インク飛散防止壁50と記録ヘッド11との干渉を避けることができる。
【0039】
また、本実施形態においては、インク飛散防止壁50は、回転体40の回転角度に基づいて上記移動をするという構成を採用することによって、回転体40の回転角度によりワイピング部材43が噴射面11Aから離脱するタイミングを導いて、インク飛散防止壁50を適切なタイミングで遮蔽位置に移動させることができる。
【0040】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0041】
例えば、図6に示すように、インク飛散防止壁50の移動により、インク飛散防止壁50のワイピング部材43と対向する側面50aと摺接して清掃する清掃部材60を備える構成であっても良い。ワイピング終了時に飛散する一回当たりの余剰インクは微量であるため、清掃部材60を設けずとも支障はないが、長期的な使用を考慮すると図6に示す構成を採用することが望ましい。
清掃部材60は、スポンジ、織布、不織布等のインク吸収材から構成され、側面50aと接した状態で回転体の外周部40aに固定される。インク飛散防止壁50が遮蔽位置と非遮蔽位置との間を移動すると、側面50aに清掃部材60が摺接して余剰インクを回収、清掃する。したがって、余剰インクは、清掃部材60により自動的に回収、清掃されるため、インク飛散防止壁50のメンテナンス頻度を低減できる。
【0042】
また、例えば、図7に示すように、インク飛散防止壁50を、記録ヘッド11に設ける構成を採用しても良い。余剰インクの飛散は、噴射面11Aからワイピング部材43が離脱することで生じるので、その噴射面11Aを備える記録ヘッド11にインク飛散防止壁50を備えれば、ワイピング部材43が離脱する領域により近い位置で余剰インクの飛散を防止できる。また、インク飛散防止壁50を遮蔽位置と非遮蔽位置との間で可動式とすることで、インク飛散防止壁50とワイピング部材43の先端部43aとの干渉を避けることができる。
【0043】
尚、上述の実施形態においては、流体噴射装置がインクジェットプリンターである場合を例にして説明したが、インクジェットプリンターに限られず、複写機及びファクシミリ等の装置であってもよい。
【0044】
また、上述の実施形態においては、流体噴射装置が、インク等の流体(液状体)を噴射する流体噴射装置である場合を例にして説明したが、本発明の流体噴射装置は、インク以外の他の流体を噴射したり吐出したりする流体噴射装置に適用することができる。流体噴射装置が噴射可能な流体は、流体、機能材料の粒子が分散又は溶解されている液状体、ジェル状の流状体、流体として流して噴射できる固体、及び粉体(トナー等)を含む。
【0045】
また、上述の実施形態において、流体噴射装置から噴射される流体(液状体)としては、インクのみならず、特定の用途に対応する流体を適用可能である。流体噴射装置に、その特定の用途に対応する流体を噴射可能な噴射ヘッドを設け、その噴射ヘッドから特定の用途に対応する流体を噴射して、その流体を所定の物体に付着させることによって、所定のデバイスを製造可能である。例えば、本発明の流体噴射装置(液状体噴射装置)は、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、及び面発光ディスプレイ(FED)の製造等に用いられる電極材、色材等の材料を所定の分散媒(溶媒)に分散(溶解)した流体(液状体)を噴射する流体噴射装置に適用可能である。
【0046】
また、流体噴射装置としては、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する流体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる流体を噴射する流体噴射装置であってもよい。
さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する流体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する流体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する流体噴射装置、ジェルを噴射する流状体噴射装置、トナーなどの粉体を例とする固体を噴射するトナージェット式記録装置であってもよい。そして、これらのうちいずれか一種の流体噴射装置に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0047】
11…記録ヘッド(流体噴射ヘッド)、11A…噴射面、13…ノズル、40…回転体、40a…外周部、43…ワイピング部材、43a…先端部、50…インク飛散防止壁(流体飛散防止壁)、50a…側面、60…清掃部材、A…移動経路、PRT…インクジェットプリンター(流体噴射装置)、M…記録媒体(媒体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を噴射する複数のノズルが設けられた噴射面から前記流体を媒体に噴射する流体噴射ヘッドと、
前記流体の噴射方向と直交する方向に延びる軸周りに回転駆動する回転体と、
前記回転体の外周部に立設され、前記回転駆動により前記噴射面に押圧して払拭するワイピング部材と、
前記回転駆動により前記押圧した前記ワイピング部材の先端部が前記噴射面から離脱する際に、前記先端部の移動経路前方側を遮る遮蔽位置に位置する流体飛散防止壁と、を有することを特徴とする流体噴射装置。
【請求項2】
前記流体飛散防止壁は、前記回転体の外周部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の流体噴射装置。
【請求項3】
前記流体飛散防止壁は、前記流体噴射ヘッドに設けられていることを特徴とする請求項1に記載の流体噴射装置。
【請求項4】
前記流体飛散防止壁は、前記遮蔽位置と、前記先端部の移動経路上から退避する非遮蔽位置との間を移動自在であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の流体噴射装置。
【請求項5】
前記流体飛散防止壁の移動により、前記流体飛散防止壁の前記ワイピング部材と対向する側面と摺接して清掃する清掃部材が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の流体噴射装置。
【請求項6】
前記流体飛散防止壁は、前記回転体の回転角度に基づいて前記移動をすることを特徴とする請求項4または5に記載の流体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−264726(P2010−264726A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−120231(P2009−120231)
【出願日】平成21年5月18日(2009.5.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】