説明

流体噴射装置

【課題】回転体上に設けた流体受部を移動させた際に、流体受部内の流体が乾燥してしまう事態を回避可能とする。
【解決手段】噴射ノズルが設けられたノズル面の対面に回転体が設けられており、この回転体の表面に、噴射ノズルからの流体を受ける流体受部が備えられている。回転体が回転して流体受部がノズル面の対面の位置から遠ざかると、この回転体の回転に連動して、蓋部材が流体受部に当接して流体受部に蓋をする。こうすれば、流体受部がノズル面の対面から移動するのに伴って流体受部に蓋がされるので、流体受部を移動させた後も流体受部内の流体が外気に曝さることがない。これにより、流体受部内の流体が乾燥してしまう事態を回避することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、噴射ヘッドから流体を噴射する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷媒体上にインクを吐出して画像を印刷するプリンター(いわゆるインクジェットプリンター)は、高品質の画像を簡便に印刷可能であることから、今日では、画像の出力手段として広く使用されている。また、この技術を応用して、インクの代わりに、適切な成分に調製した各種の流体(例えば、機能材料の微粒子が分散された液体や、ジェルなどの半流動体など)を、基板上に噴射すれば、電極や、センサ、バイオチップなど、各種の精密な部品を、簡便に製造することも可能と考えられる。
【0003】
これらインクジェットプリンターあるいは流体噴射装置では、流体を適切に噴射するために、微細な噴射ノズルが設けられた専用の噴射ヘッドを搭載している。噴射ヘッドの対面には、印刷用紙などの媒体を支えるプラテン部が設けられており、プラテン部によって媒体が正確な位置に保持された状態で噴射ノズルから流体を噴射することにより、媒体上の正確な位置に流体を噴射することが可能となっている。また、噴射ヘッド内で流体が乾燥するなどして流体の性状が変化した場合には、流体を正常に噴射することができなくなることがある。このため、プラテン部とは別の位置には、吸引ポンプに接続されたキャップが備えられており、噴射ヘッド内の流体の性状が変化した場合には、噴射ヘッドをプラテン機構の位置からキャップの位置に移動させ、キャップを噴射ヘッドに押し付けて吸引ポンプを駆動することにより、性状が変化した流体を噴射ノズルから吸い出して排出することが可能となっている。
【0004】
また、流体噴射装置に大型の噴射ヘッドを搭載した場合などには、噴射ヘッドをプラテン部の位置からキャップの位置へ移動させることが困難になることがある。そこで、噴射ヘッドの対面に設けた回転体の表面にプラテン部とキャップとを設けておき、回転体を回転させることにより、噴射ヘッドを移動させることなくプラテン部とキャップとを簡便に切り替え可能とする技術が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2003−534165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、提案されている技術では、キャップ内の流体がキャップを使用しない間に乾燥してしまうという問題があった。すなわち、キャップの使用後に回転体を回転させてキャップからプラテン部へ切り替えると、キャップ内が外気に向けて開放された状態となるので、キャップ内に付着していた流体から揮発成分が揮発するなどして流体が乾燥してしまう。その結果、キャップ内に流体が固着して吸引ポンプの吸引流路を閉塞する等の不都合が生じてしまう。もちろん、キャップ内の流体を完全に排出してから回転体を回転させることも考えられるが、キャップ内に付着した流体を完全に排出することは実際には容易ではない。
【0007】
この発明は、従来の技術が有する上述した課題を解決するためになされたものであり、回転体上に設けたキャップを回転させた際に、キャップ内の流体が乾燥してしまう事態を回避可能とする技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題の少なくとも一部を解決するために、本発明の流体噴射装置は次の構成を採用した。すなわち、
噴射ヘッドに設けられた噴射ノズルから流体を噴射する流体噴射装置であって、
前記噴射ノズルが形成されたノズル面に対面して設けられ、該ノズル面と並行な回転軸を中心に回転する回転体と、
前記回転体の前記ノズル面に対面する表面に設けられ、前記噴射ノズルからの前記流体を受ける凹部を有する流体受部と、
前記流体受部が前記ノズル面に対面する位置から離れる方向に前記回転体が回転すると、該回転体の回転に連動して該流体受部に当接することで前記凹部に蓋をする蓋部材と
を備えることを要旨とする。
【0009】
かかる本発明の流体噴射装置では、噴射ノズルが設けられたノズル面の対面に回転体が設けられており、この回転体の表面に、噴射ノズルからの流体を受ける流体受部が設けられている。そして、回転体を回転させて流体受部をノズル面の対面の位置から遠ざけると、回転体の回転に連動して蓋部材が流体受部に当接し、流体受部に蓋をする。
【0010】
こうすれば、流体受部がノズル面の対面から遠ざかる動きに連動して、流体受部を蓋部材で蓋をすることができるので、流体受部で流体を受けていない間に流体受部内の流体が乾燥してしまう事態を回避することが可能となる。また、回転体を回転させて流体受部をノズル面の対面から遠ざけるだけで流体受部内の流体の乾燥を防ぐことができるので、別途、流体受部に蓋をする必要がない。このため、流体噴射装置の構成が複雑化することがなく、装置構成を簡素に保つことも可能となる。
【0011】
尚、流体受部は、噴射ノズルからの流体を受ける機構であれば、どのような機構であってもよい。例えば、噴射ノズルから流体を吸い出すキャップ機構であってもよいし、あるいは、噴射ノズルが噴射した流体を受けるいわゆるフラッシング受け機構であってもよい。
【0012】
また、上述した本発明の流体噴射装置では、蓋部材を回転体から突出した状態で設けておき、また、回転体が回転する際にこの蓋部材に当接する外側部材を設けておくものとしてもよい。そして、回転体を回転させて外側部材に蓋部材を当接させ、外側部材で蓋部材を回動させることで、蓋部材を流体受部に当接させるものとしてもよい。
【0013】
蓋部材を回転体に設けておけば、回転体に連動して流体受部が回転する際には、蓋部材も流体受部に追随して回転する。したがって、蓋部材と流体受部とが当接する際には、回転体の回転方向について互いの相対位置がほとんど変わらない状態で当接する。このため、蓋部材と流体受部との当接時に蓋部材あるいは流体受部が回転方向に動いて互いが擦れ合ってしまう虞を回避すること可能となる。また、蓋部材を外側部材に当接させて流体受部に蓋をすれば、蓋部材を駆動させるための複雑な機構が必要ないので、装置構成を簡素に保つことも可能となる。
【0014】
また、上述した本発明の流体噴射装置では、外側部材が、回転体の周方向を、ノズル面に対面する位置を除いて取り囲んで設けられているものとしてもよい。
【0015】
こうすれば、回転体に付着した流体が回転体の回転に伴って周囲に飛散したとしても、外側部材よりも外側には流体が飛散することがないので、飛散した流体によって周囲の装置が汚れてしまう事態を回避することが可能となる。
【0016】
また、上述した本発明の流体噴射装置では、蓋部材が流体受部に当接した状態で外側部材が蓋部材を流体受部の方向に付勢するものとしてもよい。例えば、外側部材を弾性材料で形成しておき、蓋部材が外側部材に当接すると、弾性力によって蓋部材が流体受部の方向に付勢されるものとしてもよい。
【0017】
こうすれば、蓋部材を流体受部に押し付けて流体受部により確実に蓋をすることができるので、流体受部内の流体の乾燥をより確実に防ぐことが可能となる。
【0018】
また、上述した本発明の流体噴射装置では、噴射ノズルからの流体を受ける被噴射媒体を支える被噴射媒体支持部を回転体に設けておき、回転体が回転して被噴射媒体支持部をノズル面に対面させると、それに連動して蓋部材が流体受部に蓋をするものとしてもよい。
【0019】
こうすれば、流体を噴射する際に被噴射媒体を支えるために被噴射媒体支持部をノズル面に対面させると、それに伴って蓋部材により流体受部に蓋がされるので、被噴射媒体に流体を噴射している間に流体受部の流体が乾燥してしまう事態を回避することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】いわゆるラインヘッド型のインクジェットプリンターを例にとって本実施例の流体噴射装置の構成を示した説明図である。
【図2】本実施例の回転ユニットを示した説明図である。
【図3】回転ユニットをキャップ機構として使用した状態から軸部材を回転させてプラテン機構へと切り替える様子を示した説明図である。
【図4】キャップとフラッシング受け部との両方を密閉可能とした第1変形例の回転ユニットを示した説明図である。
【図5】外周部材を弾性体で形成した第2変形例の回転ユニットを示した説明図である。
【図6】内径が徐々に小さくなる形状の外周部材を用いて蓋部材を付勢する第3変形例の回転ユニットを示した説明図である。
【図7】キャップの端面に対して蓋部材の角度を可変にした第4変形例の回転ユニットを示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下では、上述した本願発明の内容を明確にするために、次のような順序に従って実施例を説明する。
A.流体噴射装置の構成:
B.本実施例の回転ユニット:
C.変形例:
C−1.第1変形例:
C−2.第2変形例:
C−3.第3変形例:
C−4.第4変形例:
【0022】
A.流体噴射装置の構成 :
図1は、いわゆるラインヘッド型のインクジェットプリンターを例にとって、本実施例の流体噴射装置の構成を示した説明図である。図示されている様に、インクジェットプリンター1は、大まかには箱型の形状をしており、上面にはユーザーがインクジェットプリンター1を操作するための操作パネル2やモニター画面3などが備えられている。また、向かって右側の側面には、画像が印刷された印刷媒体が排出される排紙口4が設けられている。
【0023】
インクジェットプリンター1の内部には、各種の機能を実行する複数のユニットあるいは部品が搭載されている。先ず、インクジェットプリンター1のほぼ中央の位置には、印刷媒体にインクを噴射するヘッドユニット30が設けられている。ヘッドユニット30の内部には、インクを収納したインクカートリッジが搭載されており、また、ヘッドユニット30の底面側(印刷媒体に向かい合う側)には、微細な噴射ノズルが設けられた噴射ヘッドが搭載されている。そして、インクカートリッジ内のインクを噴射ヘッドへと導いて、噴射ノズルからインクを正確に噴射することが可能となっている。
【0024】
図1の紙面上で、ヘッドユニット30の左方には、印刷媒体が装填される給紙カセット10が設けられており、給紙カセット10の印刷媒体が給紙ローラー20によって取り出されて、ヘッドユニット30の下部に搬送される。そして、ヘッドユニット30の下面を通過する際に、ヘッドユニット30の噴射ヘッドからインクが噴射されることにより、印刷媒体上に画像が印刷される。図1では、印刷媒体の搬送経路が太い破線で示されている。こうして画像が印刷された印刷媒体は、排紙口4から排出される。
【0025】
また、本実施例のインクジェットプリンター1では、紫外線に反応するタイプのインクを使用することも可能となっており、このことに対応して、ヘッドユニット30の右側(印刷媒体の搬送方向の下流側)には、紫外線を発生する紫外線ランプ60が備えられている。紫外線に反応するタイプのインクを使用する場合には、ヘッドユニット30からインクを噴射した後に紫外線ランプ60の紫外線を照射することで、インクを反応させて迅速に乾燥させたり、印刷媒体に定着させることが可能である。
【0026】
このように、インクジェットプリンター1は、ヘッドユニット30の底面に設けられた噴射ヘッドから印刷媒体上にインクを噴射することにより、画像を印刷する。もっとも、画像を適切に印刷するためには、印刷媒体をヘッドユニット30から一定の距離に保持しておく必要がある。このため、インクジェットプリンター1は、ヘッドユニット30の下方に、印刷媒体を支えるプラテンと呼ばれる平坦な面が形成された回転ユニット40を備えている。
【0027】
回転ユニット40は、図1に示されている様に、おおまかには長尺の略筒形状をしており、略筒形状の軸がヘッドユニット30の長手方向に向けられた状態で、ヘッドユニット30の底面に対面して設けられている。回転ユニット40の詳細な構造については後述するが、回転ユニット40には、画像の印刷時に印刷媒体を背面側から支えるプラテンや、噴射ヘッドに押し付けてインクの乾燥を防いだり、噴射ヘッドに押し付けた状態で噴射ヘッドからインクを吸い出すキャップなどが備えられている。そして、回転ユニット40を回転させてプラテンを噴射ヘッドの側に向ければ、印刷媒体を支えるプラテン機構として回転ユニット40を機能させることができ、キャップを噴射ヘッドの側に向ければ、キャップを噴射ヘッドに押し付けて噴射ヘッド内のインクの乾燥を防いだり、噴射ヘッドからインクを吸い出すキャップ機構として機能させることが可能となる。
【0028】
こうした回転ユニット40を搭載することにより、本実施例のインクジェットプリンター1は、プラテン機構やキャップ機構を簡便に切り替えることが可能となっている。もっとも、こうした回転ユニットでは、キャップを使用しない間にキャップ内が外気に曝された状態になるので、キャップ内に付着したインクが乾燥し易く、乾燥したインクによってキャップ内の吸収材が目詰まりを起こす等の不都合を生じる虞がある。そこで、本実施例のインクジェットプリンター1では、回転ユニット40の構成を次のような構成とすることで、プラテンやキャップを簡便に切り替え可能としながらも、キャップ内のインクが乾燥してしまう事態を回避可能としている。
【0029】
B.本実施例の回転ユニット :
図2は、本実施例の回転ユニットを示した説明図である。図示されている様に、回転ユニット40は、略筒状の軸部材42と、軸部材42の表面に設けられたプラテン44と、キャップ46などから構成されている。軸部材42には、図示しない駆動モーターが接続されており、駆動モーターを駆動して軸部材42を回転させることにより、プラテン44を用いる場合とキャップ46を用いる場合とを切り替えることが可能となっている。また、キャップ46の側方には、軸部材42の端面に取り付けられた蓋部材50が備えられている。そして、回転ユニット40は、略半円筒状の外周部材52の内側に収められた状態で、インクジェットプリンター1に搭載される。こうした構成を採用することにより、本実施例の回転ユニット40では、キャップ46を使用していない間にキャップ46内のインクが乾燥するのを防ぐことが可能となっている。この点について、図3を参照しながら説明する。
【0030】
図3は、回転ユニットをキャップ機構として使用した状態から、軸部材を回転させてプラテン機構へと切り替える様子を示した説明図である。回転ユニット40をキャップ機構として使用している状態では、図3(a)に示されている様に、ヘッドユニット30の下方にキャップ46が位置している。この状態から、ヘッドユニット30が図示しないカム機構によって押し下げられてキャップ46に当接する。そこで、キャップ機構からプラテン機構に切り替える際には、まず、カム機構を駆動させてヘッドユニット30を持ち上げることで(図中のハッチングが付された矢印を参照)、キャップ46をヘッドユニット30の底面から離間させる。次いで、図3(b)に白抜きの矢印で示されている様に、駆動モーターを駆動して軸部材42を回転させる。
【0031】
ここで、軸部材42を回転させると、軸部材42の回転に連動して蓋部材50も回転するので、図3(b)に示されている様に、蓋部材50が外周部材52に当接する。その状態から軸部材42を更に回転させていくと、外周部材52によって蓋部材50がキャップ46の方向に次第に押されていき、図中に黒色の矢印で示した様に、蓋部材50がキャップ46に覆い被さっていく。その状態から更に軸部材42を回転させていくと、蓋部材50がキャップ46を次第に覆っていき、やがて、プラテン44がヘッドユニット30の真下に位置した状態になると、図3(c)に示されている様に、蓋部材50がキャップ46を完全に覆った状態となり、キャップ46が蓋部材50によって密閉される。
【0032】
この様に、本実施例の回転ユニット40では、軸部材42を回転させると、その回転に連動して蓋部材50とキャップ46とが接近し、蓋部材50とキャップ46とが当接してキャップ46密閉される。こうしてキャップ46を密閉しておけば、回転ユニット40をプラテンとして使用している間にキャップ46内は外気に曝されることがないので、キャップ46内のインクの乾燥を防ぐことができる。その結果、乾燥したインクによって、キャップ内に設けられたインクの吸収体が目詰まりを起こしたり、あるいは、キャップに接続された吸引ポンプの吸引流路が閉塞する等の不都合が生じる虞を回避することが可能となる。
【0033】
また、本実施例の回転ユニット40では、軸部材42の回転に連動してキャップ46と蓋部材50とが当接してキャップ46が密閉される。このため、回転ユニット40をキャップ46からプラテン等の他の機構に切り替えるだけでキャップ46を密閉してキャップ46内のインクの乾燥を確実に防ぐことが可能となっている。また、キャップ46を密閉する動作を別途行う必要がないので、蓋部材50を駆動させる専用の駆動機構を別途設けておく必要がない。このため、インクジェットプリンター1の装置構成を簡素に保つことも可能となっている。
【0034】
更に、本実施例の回転ユニット40では、外周部材52が蓋部材50を押すことにより、キャップ46と蓋部材50とを当接させるので、図3(b)に黒色の矢印で示されている様に、蓋部材50をキャップ46の端面に対してほぼ垂直な方向から押し付けることができる。このため、蓋部材50をキャップ46に確実に密着させて、キャップ46内のインクの乾燥を確実に防ぐことが可能となっている。
【0035】
尚、回転ユニット40をプラテン機構に切り替えた後に、再びキャップ機構として用いる際には、図3(c)に示された状態から、軸部材42を逆向き(図3(b)に白抜きの矢印で示した向きと逆の向き)に回転させてキャップ46をヘッドユニット30の位置に戻せばよい。軸部材42を逆向きに回転させると、蓋部材50と外周部材52とが離れた際に、蓋部材50の重さによってキャップ46から蓋部材50が離れていくので(図3(a)を参照)、軸部材42を回転さてキャップ46をヘッドユニット30の位置まで戻すだけで、キャップ46から蓋部材50を取り外すことができる。もちろん、蓋部材50の重さによってキャップ46から蓋部材50を外すのではなく、蓋部材50にバネ部材等を接続しておき、バネ部材の弾性力によって蓋部材50をキャップ46から外すようにしてもよい。いずれの場合も、蓋部材50が外周部材52から離れると蓋部材50がキャップ46から外れていくので、軸部材42を回転させてキャップ46をヘッドユニット30の位置に移動させるだけで、蓋部材50を簡便に取り外すことが可能となる。そして、そのままカム機構を駆動してヘッドユニット30を押し下げれば、キャップ46をヘッドユニット30に押し付けて、回転ユニット40を再びキャップ機構として機能させることが可能となる。
【0036】
また、プラテン機構などのキャップ以外の機構を使用する際には、図3(c)に示されている様に、キャップ46が傾いた状態になる。しかし、キャップ46は蓋部材50によって密閉されているので、キャップ46が傾いても、キャップ46の中に残っているインクが流れ出てしまう虞がない。このため、キャップ機構を使用した後は、キャップ46内のインクが完全に排出されるのを待ってから回転ユニット40を切り替える必要はなく、キャップ機構の使用後に直ちにプラテン機構に切り替えることが可能である。これにより、本実施例のインクジェットプリンター1では、キャップ機構の使用後に直ちにプラテン機構に切り替えて、画像の印刷を迅速に再開することが可能となっている。
【0037】
更に、キャップ46が傾いてもキャップ46内のインクが流れ出ないことから、キャップ46の中にインクを意図的に残留させておくことも可能である。こうすれば、キャップ46内がインクの揮発成分によって保湿された状態に保たれるので、キャップ46をヘッドユニット30に押し付けた際に、ヘッドユニット30内のインクから揮発成分がキャップ46内に揮発して、ヘッドユニット30内のインクの性状が変化してしまう事態を防ぐことが可能となる。
【0038】
また、本実施例の回転ユニット40では、回転ユニット40の外側に外周部材52が備えられているので、軸部材42やプラテン44等に付着したインクが軸部材42の回転に伴って周囲に飛散したとしても、インクは外周部材52よりも外側に飛散することはない。このため、飛散したインクによって周囲の装置が汚れてしまう事態を回避することも可能となっている。
【0039】
更に、本実施例の回転ユニット40では、図3(a)に示されている様に、キャップ46をヘッドユニット30に向けた状態で、紫外線ランプ60とキャップ46との間に、蓋部材50が位置した状態になる。このため、紫外線ランプ60の紫外線がキャップ46内に直接照射されることがなく、キャップ46の使用時にキャップ46内のインクが紫外線に反応して固化する等の不都合を回避することが可能となっている。更に、キャップ46をヘッドユニット30に向けている間だけでなく、キャップ46とプラテン44とを切り替えている間も、蓋部材50がキャップ46と紫外線ランプ60との間に位置するので(図3(b)を参照)、こうした間も紫外線がキャップ46内に照射されることがない。このことから、キャップ46を使用したりキャップ46とプラテン44とを切り替える際に紫外線ランプ60を消灯する必要がないので、紫外線ランプの制御回路を簡素化することが可能となる。また、紫外線ランプ60を消灯する必要がないことから、プラテン44に切り替えて印刷を再開する際には、紫外線ランプ60を点灯して紫外線ランプ60の光量が安定するまで待機する必要がないので、印刷を迅速に再開することが可能となる。更に、紫外線ランプ60を頻繁に消灯させたり点灯させたりする必要がないことから、紫外線ランプ60の寿命を長期化することも可能となっている。
【0040】
尚、図3に示した回転ユニット40では、蓋部材50が軸部材42に連動して回転する構成を採用していたが、蓋部材50が回転しない構成とすることも可能である。例えば、蓋部材50を外周部材52の内側に固定して蓋部材50を回転させない構成としてもよい。こうした場合も、キャップ46が軸部材42に連れて回転して蓋部材50に接近し、キャップ46と蓋部材50とが当接してキャップ46が密閉されるので、軸部材42を回転させるだけでキャップ46を密閉することが可能である。また、蓋部材50を固定した構成とすれば、蓋部材50を可動にするための軸受けなどを省略することができるので、回転ユニット40の構成をより簡素化することが可能である。これに対して、図3に示した様に、蓋部材50を軸部材42に連動して回転させる構成としておけば、上述した様に、蓋部材50によって紫外線ランプ60の紫外線がキャップ46内に照射されるのを防いだり、蓋部材50をキャップ46の端面に対して垂直な方向から押し付けて、キャップ46をより確実に密閉することが可能となる。
【0041】
C.変形例 :
C−1.第1変形例 :
前述した実施例の回転ユニット40では、蓋部材50によってキャップ46を密閉するものとして説明した。しかし、キャップ46だけでなく、いわゆるフラッシング受け部を密閉することも可能である。
【0042】
図4は、キャップとフラッシング受け部との両方を密閉可能とした変形例の回転ユニットを示した説明図である。図4(a)に示されている様に、変形例の回転ユニット40では、軸部材42の表面にフラッシング受け部48が設けられており、ヘッドユニット30の噴射ヘッドからフラッシング受け部48にインクを噴射する動作(フラッシング動作)を行うことによって、ヘッドユニット30内で性状が変化したインクを噴射ヘッドから排出することが可能となっている。尚、フラッシング受け部48の内部には、フラッシング動作によって排出されたインクを吸収するための吸収材が設けられており、また、フラッシング受け部の底面には、インクを排出するための排出チューブが接続されているが、図4では煩雑になるのを避けるため、これらの図示を省略している。
【0043】
図4(a)に示されている様に、フラッシング受け部48の側方には、フラッシング受け部用の蓋部材54が設けられており、フラッシング受け部用の蓋部材54の内側(図中にハッチングを付して示した部分を参照)には、ゴム製のシール部材が貼り付けられている。そして、フラッシング動作を行った後に軸部材42を回転させると、図4(b)に示されている様に、蓋部材54が外周部材52に押されてフラッシング受け部48に接近し、蓋部材54のシール部材がフラッシング受け部48に覆い被さっていく。そして、プラテン44がヘッドユニット30の対面に位置する状態まで軸部材42を回転させると、蓋部材54のシール部材がフラッシング受け部48に密着して、フラッシング受け部48が密閉された状態となる。
【0044】
このように、フラッシング受け部48の側方に蓋部材54を設けておけば、フラッシング受け部からプラテン機構等に切り替えた際に、フラッシング受け部48を密閉してフラッシング受け部の中のインクが乾燥するのを防ぐことが可能となる。これにより、乾燥したインクによってフラッシング受け部内のインクの吸収材が目詰まりする等の不都合が生じる虞を回避することが可能となる。また、図4(c)に示されている様に、プラテン44をヘッドユニット30の位置に移動させた状態では、フラッシング受け部48とキャップ46とが共に密閉された状態になるので、プラテン44の使用中には、フラッシング受け部48とキャップ46との両方のインクが乾燥するのを防ぐことが可能となっている。
【0045】
尚、キャップ46は、図6(a)に示されている様に、フラッシング動作を行っている間も密閉された状態になっており、プラテン44の使用中だけでなく、フラッシング動作の間もキャップ内のインクが乾燥するのを防ぐことが可能となっている。
【0046】
また、回転ユニット40を切り替えて再びフラッシング動作を行う際には、図4(b)に白抜きの矢印で示した向きと逆の向きに軸部材42を回転させて、フラッシング受け部48をヘッドユニット30の位置に移動させればよい。こうすると、前述したキャップ46の蓋部材50と同様に(図3を参照)、蓋部材54と外周部材52とが離れた際に蓋部材54がフラッシング受け部48から離れていくので、軸部材42を回転させるだけで蓋部材54を取り外すことが可能である。
【0047】
C−2.第2変形例 :
また、上述した様に、外周部材52は、蓋部材50、54をキャップ46あるいはフラッシング受け部48に当接させる機能を有していることから、外周部材52を弾性材料で形成しておくこととしてもよい。
【0048】
図5は、外周部材52を弾性体で形成した第2変形例の回転ユニットを示した説明図である。図5(a)に示されている様に、第2変形例の回転ユニット40においても、軸部材42を取り囲む位置に外周部材52が設けられているが、第2変形例の回転ユニット40では、この外周部材52が弾性部材で形成されている。
【0049】
軸部材42を回転させて蓋部材50を外周部材52に当接させると、図5(b)に示されている様に、蓋部材50が外周部材52の内側に入りこむとともに、外周部材52が蓋部材50に押されて外側に弾性変形する。そして、その状態から軸部材42が更に回転して、蓋部材50がキャップ46に覆い被さった状態になると、図5(c)に示されている様に、今度は外周部材52が弾性力によって元の形状に戻ろうとし、外周部材52が蓋部材50を外側から内側に押し付ける。これにより、蓋部材50がキャップ46に押し付けられてキャップが密閉される。このように、第2変形例の回転ユニットでは、外周部材52によって蓋部材50を付勢することにより、蓋部材50とキャップ46とを確実に密着させることが可能となっており、その結果、キャップ46をより確実に密閉することが可能となっている。
【0050】
尚、蓋部材50を付勢するのではなく、キャップ46を付勢することとしてもよい。例えば、キャップ46と軸部材42との間に弾性部材を設けておき、弾性部材の弾性力によって、軸部材42側からキャップ46を蓋部材50に押し付けてもよい。こうした場合も、キャップ46と蓋部材50とを密着させてキャップを確実に密閉することが可能となる。
【0051】
C−3.第3変形例 :
また、外周部材を弾性部材で形成しておくのではなく、外側部材を内径が徐々に小さくなる形状に形成しておくことにより、回転ユニットを回転させる力によって蓋部材を付勢してキャップに密着させることも可能である。
【0052】
図6は、内径が徐々に小さくなる形状の外周部材を用いて蓋部材を付勢する第3変形例の回転ユニットを示した説明図である。図6(a)には、外周部材52の内径を一定に形成した場合の外周部材の位置が破線で示されており、これに対して、図中に矢印で示されている様に、第3変形例の回転ユニット40では、外周部材52の内径が外周部材52の底に近づくに連れて次第に小さくなるように形成されている。
【0053】
図6(b)に示されている様に、軸部材42を回転させると、前述した実施例の回転ユニット40と同様に、蓋部材50が外周部材52に押されてキャップ46を密閉していく。ここで、外周部材52の内径は、外周部材52の底に近づくにつれて次第に小さくなるので、軸部材42を回転させて蓋部材50を外周部材52の底の方に移動させていくと、蓋部材50が外周部材52によって内側に押され、蓋部材50がキャップ46に押し付けられる。これにより、蓋部材50をキャップ46により確実に密着させてキャップ46を密閉することが可能となる。また、外周部材52の内径は、外周部材52の底に近づくにつれて次第に小さくなっているので、軸部材42を回転させるほど蓋部材50をキャップ46に強く押し付けることができる。このように、第3変形例の回転ユニット40では、軸部材42を回転させる駆動モーター等の力によって蓋部材50を付勢することが可能となっており、その結果、蓋部材50をキャップ46に密着させてキャップ46を確実に密閉することが可能となっている。
【0054】
C−4.第4変形例 :
また、キャップ46に対する蓋部材50の角度を可変にすれば、蓋部材50とキャップ46とをより一層確実に密着させることが可能となる。
【0055】
図7は、キャップの端面に対して蓋部材の角度を可変にした第4変形例の回転ユニット40を示した説明図である。図7(a)に示されている様に、第4変形例の回転ユニット40では、蓋部材50が、軸部材42に接続された接続アーム50aによって軸受けされており(図中に「A」と示した部分を参照)、図中に白抜きの矢印で示した様に、蓋部材50がこの軸受け部分を中心にして回転可能となっている。こうすれば、キャップ46や蓋部材50を組み付ける際の組み付け誤差などのために、キャップ46と蓋部材50とが斜めに当接してしまったとしても、蓋部材50が回転してキャップ46に密着することができる。これにより、キャップ46をより確実に密閉することが可能となる。
【0056】
また、図7(b)に示されている様に、蓋部材50を、キャップ46に当接する内側部材50bと、弾性部材50dを介して内側部材50bを支える外側部材50cとに分けて設けておいてもよい。こうした場合、内側部材50bは、弾性部材50dによってキャップ46に押し付けられるとともに、キャップ46の端面の傾きに合わせて自在に回転してキャップ46の端面に密着することができるので、キャップ46をより確実に密閉することが可能となる。
【0057】
以上、本実施例の流体噴射装置をインクジェットプリンターを例にとって説明したが、本発明は上記すべての実施例および変形例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。例えば、上述した実施例および変形例では、噴射ヘッドが固定された状態でインクを噴射するタイプのインクジェットプリンター(いわゆるラインヘッド型のインクジェットプリンター)を例にとって説明したが、噴射ヘッドが往復動しながらインクを噴射するタイプのインクジェットプリンター(いわゆるシリアル型のインクジェットプリンター)であってもよい。こうした場合も、上述した本実施例の回転ユニットを用いれば、キャップやプラテンを迅速に切り替えることができるとともに、キャップを確実に密閉してキャップ内のインクの乾燥を防ぐことが可能となる。
【符号の説明】
【0058】
1…インクジェットプリンター、 2…操作パネル、 3…モニター画面、
4…排紙口、 10…給紙カセット、 20…給紙ローラー、
30…ヘッドユニット、 40…回転ユニット、 42…軸部材、
44…プラテン、 46…キャップ、 48…フラッシング受け部、
50…蓋部材、 52…外周部材、 60…紫外線ランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
噴射ヘッドに設けられた噴射ノズルから流体を噴射する流体噴射装置であって、
前記噴射ノズルが形成されたノズル面に対面して設けられ、該ノズル面と並行な回転軸を中心に回転する回転体と、
前記回転体の前記ノズル面に対面する表面に設けられ、前記噴射ノズルからの前記流体を受ける凹部を有する流体受部と、
前記流体受部が前記ノズル面に対面する位置から離れる方向に前記回転体が回転すると、該回転体の回転に連動して該流体受部に当接することで前記凹部に蓋をする蓋部材と
を備える流体噴射装置。
【請求項2】
請求項1に記載の流体噴射装置であって、
前記蓋部材は、前記回転体から突出した状態で設けられており、
前記流体受部が前記ノズル面に対面する位置から離れる方向に前記回転体が回転すると、該回転体から突出して設けられた前記蓋部材に当接して該蓋部材を回動させることにより、該蓋部材を前記流体受部に当接させる外側部材を備える流体噴射装置。
【請求項3】
前記外側部材は、前記回転体の前記ノズル面に対面する箇所を除いて、該回転体を周方向に覆う状態で設けられた部材である請求項2に記載の流体噴射装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の流体噴射装置であって、
前記外側部材は、前記蓋部材が前記流体受部に当接した状態で、該蓋部材を該流体受部に付勢する部材である流体噴射装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の流体噴射装置であって、
前記回転体の表面には、前記噴射ヘッドからの流体を受ける被噴射媒体を、該被噴射媒体の背面側から支持する被噴射媒体支持部が設けられており、
前記蓋部材は、前記被噴射媒体支持部と前記ノズル面とが対面する状態まで前記回転体を回転させると、前記流体受部に当接する部材である流体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−274433(P2010−274433A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−126157(P2009−126157)
【出願日】平成21年5月26日(2009.5.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】