説明

流体噴射装置

【課題】吸収材を備えていない回収部の姿勢変化による流体の逆流を抑制することができる流体噴射装置を提供する。
【解決手段】インクを噴射する記録ヘッドと、廃インクを、インク流路53を介して導き入れて回収する廃インク回収部50とを備えるプリンターであって、廃インク回収部50に設けられ、廃インク回収部50の姿勢に応じてインク流路53を開閉する開閉装置60を有するという構成を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、流体噴射ヘッドに形成されたノズル開口からターゲットに流体を噴射する流体噴射装置として、例えば、インクジェット式プリンター(以下、単に「プリンター」という。)が広く知られている。
こうしたプリンターでは、通常、増粘したインク(流体)によるノズル開口の目詰まり抑制、及び記録ヘッド(流体噴射ヘッド)内のインク中に混入した気泡や塵埃の排出等を目的として、記録ヘッド内から増粘等したインクを強制的に吸引して排出する、所謂クリーニングが行われる。
【0003】
そして、このクリーニングにより記録ヘッド内から強制吸引された廃インクは、液体流路として機能する可撓性チューブを介してプリンター内の所定箇所に配置された廃インクタンクに排出され、その廃インクタンク内に収容された廃インク吸収材に吸収されるようになっている。なお、廃インク吸収材の吸収能力には限界があり、その吸収能力が飽和した場合には、廃インクの吸収効率が低下してしまう。そこで、廃インク吸収材の吸収能力が飽和した場合には、その廃インクタンクをプリンターから取り外して、新しい廃インクタンクと交換している(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−269208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記廃インクタンクは廃インク吸収材を備えて部品価格が高いことから、交換コストを安価に抑えるためには、廃インク吸収材を備えていない廃インクタンクを採用することが望ましい。
しかしながら、廃インク吸収材を備えていない廃インクタンクは、廃インクを保持する機能を備えていないので、例えば、ユーザーが、持ち運び可能な家庭用プリンターを、縦置きや裏返して収納している場合に、廃インクが廃インクタンクからチューブを介して逆流し、プリンター内部に漏れ出してしまう場合がある。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、吸収材を備えていない回収部の姿勢変化による流体の逆流を防止することができる流体噴射装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は、流体を噴射する流体噴射ヘッドと、上記流体を所定の流路を介して導き入れて回収する回収部とを備える流体噴射装置であって、上記回収部に設けられ、上記回収部の姿勢に応じて上記流路を開閉する開閉装置を有するという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、流体を所定の流路を介して導きいれて回収する回収部の姿勢に応じてその所定の流路を開閉することで、回収部の姿勢変化による該流路を介した流体の逆流を防止する。
【0008】
また、本発明においては、上記開閉装置は、上記流路を開放する開放位置と上記流路を閉塞する閉塞位置との間で移動自在な弁部材と、上記弁部材に対し上記開放位置から上記閉塞位置に向けて所定の付勢力を与える付勢部材と、上記回収部が所定の姿勢のときに上記付勢力に抗する力を付与する所定位置に位置して、上記弁部材を上記開放位置に位置させる錘部材と、を有するという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、弁部材が付勢部材により開放位置から閉塞位置に向けて付勢されているため、該付勢力に抗する力が作用しないときは、上記所定の流路が閉塞される。そして、回収部が所定の姿勢のときは、錘部材が該付勢力に抗する力を付与する所定位置に位置することで、弁部材が付勢力に抗して閉塞位置から開放位置に移動し、上記所定の流路が開放される。
【0009】
また、本発明においては、上記錘部材は、略球形状を有し、上記開閉装置は、上記所定の姿勢のときに上記錘部材を略水平面で支持する支持面を有する支持部を備えると共に上記支持面と逆側の面で上記弁部材と当接して上記付勢力を受けるレバー部材を有するという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、弁部材と当接して付勢力を受ける面と逆側の面で錘部材を支持するレバー部材を備える。そして、レバー部材の支持部は、上記所定の姿勢で略球形状の錘部材を略水平面で支持するため、上記所定の姿勢から姿勢が変化すると該略水平面が傾き、略球形状の錘部材がその傾いた面に沿って転動することで、錘部材が上記付勢力に抗する力を付与する所定位置から退避する。錘部材が転動して所定位置から退避すると、弁部材からの付勢力によりレバー部材が持ち上がり、弁部材が開放位置に移動し、上記所定の流路を閉塞する。
【0010】
また、本発明においては、上記レバー部材は、上記弁部材が当接する当接位置を挟んで上記支持部が設けられる位置と逆側の位置に回動中心を有するという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、レバー部材の回動中心の位置から支持部が設けられる位置まで距離が、該回動中心の位置から弁部材が当接する位置までの距離よりも長くなるので、梃子の原理により、錘部材の重さを、付勢部材の付勢力と釣り合う重さ以下に抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態におけるプリンターの構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態における記録ヘッドに設けられたノズルの配列を示す図である。
【図3】本発明の実施形態における記録ヘッドの内部構成を示す部分断面図である。
【図4】本発明の実施形態におけるキャッピング機構を示す構成図である。
【図5】本発明の実施形態における逆流防止ユニットの構成を示す断面図である。
【図6】本発明の実施形態における逆流防止ユニットの廃インク回収部の姿勢変化に応じた動きを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る流体噴射装置の各実施形態について、図を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。本実施形態では、本発明に係る流体噴射装置として、インクジェット式プリンター(以下、プリンターと称する)を例示する。
【0013】
図1は、本発明の実施形態におけるプリンター1の構成を示す斜視図である。
同図に示すように、プリンター1は、流体噴射ヘッドの一種である記録ヘッド2を搭載すると共にインクカートリッジ3を着脱可能に装着するキャリッジ4と、記録ヘッド2の下方に配設され記録紙6が搬送されるプラテン5と、キャリッジ4を記録紙6の紙幅方向に移動させるキャリッジ移動機構7と、記録紙6を紙送り方向に搬送する紙送り機構8とを有する構成となっている。加えて、プリンター1は、当該プリンター1全体の動作を制御する不図示の制御装置を有している。なお、上記紙幅方向とは、主走査方向(ヘッド走査方向)である。上記紙送り方向とは、副走査方向(主走査方向に直交する方向)である。
【0014】
インクカートリッジ3としては、本実施形態のようにキャリッジ4に装着するものには限らず、プリンター1の筐体側に装着してインク供給チューブを介して記録ヘッド2に供給するタイプのものを採用してもよい。本実施形態のインクカートリッジ3には、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)の異なる色のインクが収容されている。
【0015】
ガイドロッド9は、主走査方向に架設された支持部材である。キャリッジ4は、このガイドロッド9に支持された状態で取り付けられている。このキャリッジ4は、キャリッジ移動機構7によりガイドロッド9に沿って主走査方向に移動するようになっている。リニアエンコーダ10は、キャリッジ4の主走査方向上の位置を検出する。この検出信号は、位置情報として制御装置に送信されるようになっている。制御装置は、このリニアエンコーダ10からの位置情報に基づいて記録ヘッド2の走査位置を認識し、記録ヘッド2による記録動作(吐出動作)等を制御するようになっている。
【0016】
図2は、本発明の実施形態における記録ヘッド2に設けられたノズル17の配列を示す図である。
同図に示すように、記録ヘッド2は、インクを噴射する複数のノズル17が設けられたノズル形成面21Aを有する。ノズル形成面21Aには、複数のノズル17ごとにノズル列16が形成されている。各ノズル列16においては、例えば異なる色のインクを吐出可能になっている。本実施形態ではインクの色に対応して4列(16(Bk),16(M),16(C),16(Y))設けられている。1つのノズル列16は、例えば、180個のノズル17によって構成されている。
【0017】
図3は、本発明の実施形態における記録ヘッド2の内部構成を示す部分断面図である。
同図に示すように、記録ヘッド2は、ヘッド本体18と、ヘッド本体18に接続された流路形成ユニット22とを備えている。流路形成ユニット22は、振動板19と、流路基板20と、ノズル基板21とを備えると共に、共通インク室29と、インク供給口30と、圧力室31とを形成する。さらに、流路形成ユニット22は、ダイヤフラム部として機能する島部32と、共通インク室29内の圧力変動を吸収するコンプライアンス部33とを備える。ヘッド本体18には、固定部材26と共に駆動ユニット24を収容する収容空間23と、インクを流路形成ユニット22に案内する内部流路28とが形成される。
【0018】
上記構成の記録ヘッド2によれば、ケーブル27を介して駆動ユニット24に駆動信号が入力されると、圧電素子25が伸縮する。これにより、振動板19がキャビティに接近する方向及び離れる方向に変形(移動)する。このため、圧力室31の容積が変化し、インクを収容した圧力室31の圧力が変動する。この圧力の変動によって、ノズル17から、インクが噴射される。
【0019】
図1に戻り、記録ヘッド2の移動範囲のうちプラテン5の外側の領域には、記録ヘッド2の走査起点となるホームポジションが設定されている。このホームポジションには、記録ヘッド2の良好な噴射特性を維持又は回復させる吸引処理を実施するキャッピング機構11が設けられている。
【0020】
図4は、本発明の実施形態におけるキャッピング機構11を示す構成図である。
キャッピング機構11は、キャップ部材12と、チューブポンプ40と、廃インク回収部(回収部)50とを備える。
キャップ部材12は、記録ヘッド2に対向する側が開口する略枡形状を有する。キャップ部材12の開口縁部は、ゴム部材等の弾性部材から形成され、ノズル形成面21Aを囲うように記録ヘッド2と当接することで、密閉空間を形成可能な構成となっている。キャップ部材12の内部には、液体を吸収し保持する吸収材12aが設けられている。キャップ部材12は、不図示の昇降装置により、上下方向に移動可能な構成となっている。昇降装置としては、例えばモーターとスクリューネジとを組み合わせた機構や、カム機構、ラック・ピニオン機構等の公知の昇降手段を用いることができる。
【0021】
チューブポンプ40は、キャップ部材12と廃インク回収部50との間に流路を形成する可撓性のチューブ体41と、チューブ体41の一部を円環状に湾曲させる略円筒状のポンプケース42と、ポンプケース42内部に設けられ、その軸心を回転中心とするポンプホイル43と、ポンプホイル43の外縁部に回転自在に軸支されるローラー体44と、ポンプホイル43を正転駆動(図4において反時計回り)させるモーター45と、を有する。チューブポンプ40は、ポンプホイル43の正転時、ローラー体44が円環状となったチューブ体41の内径側を押し潰しつつ公転駆動することで、キャップ部材12から廃インク回収部50に向けて流路内を吸引する吸引駆動を実行する。
チューブポンプ40は、ローラー体44の公転経路の一部に、ローラー体44によるチューブ体41の押し潰し量が不十分になるリークポイントXを有する。チューブポンプ40は、吸引駆動をしていない場合やポンプレリースの際に、リークポイントXにローラー体44を位置させる構成となっている。
【0022】
廃インク回収部50は、チューブポンプ40によって吸引された廃インクを貯溜する廃インクタンク51を備える。本実施形態の廃インクタンク51は、廃インクを吸収し保持する吸収材を備えておらず、廃インクを液体の状態で貯溜する構成となっている。
廃インク回収部50は、廃インクタンク51が着脱自在に取り付けられる逆流防止ユニット52を備える。逆流防止ユニット52は、チューブ体41の終端に接続されている。
【0023】
図5は、本発明の実施形態における逆流防止ユニット52の構成を示す断面図である。
逆流防止ユニット52は、チューブ体41と接続されて廃インクタンク51に廃インクを導き入れるインク流路(流路)53と、廃インク回収部50の姿勢に応じてインク流路53を開閉する開閉装置60とを有する。
【0024】
インク流路53の一端部53aはチューブ体41と連通し、インク流路53の他端部53bは廃インクタンク51と連通する構成となっている。インク流路53は、略コの字形状を有し、一端部53a及び他端部53bは略平行に延び、それらの間は、一端部53a及び他端部53bの延在方向と直交する方向に延在する直線部53cによって結ばれている。直線部53cには、流路面積を所定量絞る絞り部材54が設けられている。絞り部材54は、例えば、可撓性を有するゴム部材から構成されている。
【0025】
開閉装置60は、弁部材61と、付勢部材62と、錘部材63と、レバー部材64とを有する。
弁部材61は、インク流路53を形成する筐体55により、インク流路53の直線部53cに沿って直動自在に支持されるガイド部61aを有する。ガイド部61aは、筐体55によって形成され錘部材63及びレバー部材64が配置される収容空間Sに、出没自在な構成となっている。弁部材61は、絞り部材54の絞り径よりも縮径したシャフト部61bと、シャフト部61bの先端に設けられて絞り部材54の絞り径よりも拡径した拡径部61cとを有する。拡径部61cは、直線部53cにおいて絞り部材54よりも下流側に配置される。
【0026】
この弁部材61は、拡径部61cと絞り部材54とが非接触でインク流路53を開放する開放位置(図5に示す位置)と、拡径部61cと絞り部材54とが接触してインク流路53を閉塞する閉塞位置(図6(後述)に示す位置)と、の間で移動自在な構成となっている。
付勢部材62は、弁部材61に対し開放位置から閉塞位置に向けて所定の付勢力を与える構成となっている。本実施形態の付勢部材62は、コイルバネから構成され、インク流路53の直線部53cに設けられている。付勢部材62の一端部は、筐体55に接続され、他端部は拡径部61cに接続されている。この付勢部材62は、常態で拡径部61cを絞り部材54に向けて付勢する構成となっている。
【0027】
錘部材63及びレバー部材64は、平面で囲まれた箱状の収容空間S内において移動自在に収容されている。
錘部材63は、廃インク回収部50が所定の姿勢のときに付勢部材62の付勢に抗する力を付与する所定位置(図5に示す位置)に位置し、弁部材61を開放位置に位置させる構成となっている。ここで、本実施形態の所定の姿勢とは、図1に示すようにプリンター1が通常姿勢で水平面上に設置されるときの廃インク回収部50の姿勢(以下、基準姿勢と称する)のことをいう。
本実施形態の錘部材63の形状は、重心を貫通する貫通孔が形成された略球形状を有する。
【0028】
レバー部材64は、廃インク回収部50が基準姿勢のときに錘部材63を略水平面で支持する支持面64aを備える支持部65を有する。また、レバー部材64は、支持面64aと逆側の面64bで弁部材61のガイド部61aと当接して、付勢部材62の付勢を受ける構成となっている。
レバー部材64は、筐体55により回動自在に支持される回動軸67を有する。レバー部材64の回動軸(回動中心)67は、弁部材61が当接する当接部66を挟んで、支持部65が設けられる側と逆側の位置に設けられている。この構成によれば、レバー部材64の回動軸67から支持部65まで距離が、回動軸67から当接部66までの距離よりも長くなるので、梃子の原理により、錘部材63の重さを、付勢部材62の付勢力と釣り合う重さ以下に抑えることが可能となる。これにより、錘部材63が、その移動に伴ってレバー部材64や筐体55に衝突することによる衝突エネルギーを小さくでき、また、その衝突に伴う騒音を低減することができる。
【0029】
続いて、上記構成の廃インク回収部50の姿勢変化に応じた逆流防止ユニット52の動作について図6を参照して説明する。
図6は、本発明の実施形態における逆流防止ユニット52の廃インク回収部50の姿勢変化に応じた動きを示す図である。
【0030】
プリンター1が図1に示す通常姿勢から、その側部や天部等を下向きにする通常姿勢以外の姿勢に変化すると、廃インク回収部50もそれに応じて基準姿勢以外の姿勢に変化する。このとき、逆流防止ユニット52は、図6に示すように、インク流路53を閉塞状態とさせ、廃インクタンク51からのインク流路53を介した廃インクの逆流を防止する。
【0031】
より詳しくは、廃インク回収部50の姿勢が変化し、例えば重力方向が図5に示す紙面下方から図6に示す紙面垂直方向奥側に変化すると、基準姿勢で錘部材63を略水平に支持していた支持面64aが傾き、錘部材63が自重によりその傾いた面に沿って移動することで、錘部材63が付勢部材62の付勢力に抗する力を付与する図5に示す位置から退避する。本実施形態の錘部材63は、略球形状を有するため、支持面64aの傾きによって、容易に重力方向に転動することができる。なお、図6においては、70の符号を付した収容空間Sの平面部が重力方向となるので、錘部材63は支持面64aから平面部70に移動し、支持面64aの代わりに平面部70が錘部材63の荷重を支えることとなる。
【0032】
支持面64aが錘部材63の荷重を支えなくなると力の平衡状態が崩れて、レバー部材64が、付勢部材62の付勢力により収容空間Sに突出した弁部材61のガイド部61aにより押されて、回動軸67周りに回動する。なお、この回動時に、レバー部材64が平面部70に支持されている錘部材63に接触しても、本実施形態の錘部材63は略球形状を有するため容易に押し退けることができる。
弁部材61は、付勢部材62により開放位置から閉塞位置に向けて付勢されているため、支持面64aが錘部材63の荷重を支えなくなり付勢部材62の付勢力に抗する力が作用しなくなるときは、弁部材61が開放位置から閉塞位置に移動し、図6に示すように、拡径部61cが絞り部材54と接触することでインク流路53が閉塞される。このため、廃インク回収部50が、基準姿勢以外の姿勢に変化して、廃インクタンク51から水頭差により廃インクが逆流しようとしても、インク流路53の直線部53cで塞き止めることができるため、チューブ体41を介してキャップ部材12から廃インクが漏れ出すことを防止することができる。
【0033】
一方、プリンター1が図1に示す通常姿勢にあるとき、プリンター1に設けられた廃インク回収部50は基準姿勢にある。このとき、逆流防止ユニット52は、図5に示すように、インク流路53を開放状態とさせる。より詳しくは、錘部材63の荷重がレバー部材64に加わり、このレバー部材64が付勢部材62の付勢力に抗して弁部材61を下方に押下げることにより、弁部材61が開放位置に位置する。弁部材61が開放位置に位置すると、拡径部61cと絞り部材54とが非接触となり、絞り部材54とシャフト部61bとの間に隙間が生まれるため、インク流路53の一端部53aと他端部53bとの間が連通する。このため、チューブポンプ40により吸引された廃インクは、インク流路53を介して廃インクタンク51に導入される。
【0034】
したがって、上述した本実施形態によれば、インクを噴射する記録ヘッド2と、廃インクを、インク流路53を介して導き入れて回収する廃インク回収部50とを備えるプリンター1であって、廃インク回収部50に設けられ、廃インク回収部50の姿勢に応じてインク流路53を開閉する開閉装置60を有するという構成を採用することによって、廃インク回収部50の姿勢に応じてそのインク流路53を開閉することで、廃インク回収部50の姿勢変化によるインク流路53を介したインクの逆流を防止することができる。このため、廃インクタンク51に廃インクを吸収し保持する吸収材を設けずに済み、廃インクタンク51の交換コストを安価に抑えることができる。
【0035】
また、本実施形態においては、開閉装置60は、インク流路53を開放する開放位置とインク流路53を閉塞する閉塞位置との間で移動自在な弁部材61と、弁部材61に対し開放位置から閉塞位置に向けて所定の付勢力を与える付勢部材62と、廃インク回収部50が基準姿勢のときに上記付勢力に抗する力を付与する所定位置に位置して、弁部材61を開放位置に位置させる錘部材63と、を有するという構成を採用することによって、弁部材61が付勢部材62により開放位置から閉塞位置に向けて付勢されているため、該付勢力に抗する力が作用しないときは、インク流路53を閉塞させることができる。そして、廃インク回収部50が基準姿勢のときは、錘部材63が該付勢力に抗する力を付与する所定位置に位置することで、弁部材61が付勢力に抗して閉塞位置から開放位置に移動し、インク流路53を開放させることができる。
【0036】
また、本実施形態においては、錘部材63は、略球形状を有し、開閉装置60は、基準姿勢のときに錘部材63を略水平面で支持する支持面64aを有する支持部65を備えると共に支持面64aと逆側の面64bで弁部材61と当接して上記付勢力を受けるレバー部材64を有するという構成を採用するとによって、レバー部材64の支持部65は、基準姿勢で略球形状の錘部材63を略水平面で支持するため、基準姿勢から姿勢が変化すると該略水平面が傾き、略球形状の錘部材63がその傾いた面に沿って転動することで、錘部材63が上記付勢力に抗する力を付与する所定位置から退避する。錘部材63が転動して所定位置から退避すると、弁部材61からの付勢力によりレバー部材64が持ち上がり、弁部材61が開放位置に移動し、インク流路53を閉塞することができる。
【0037】
また、本実施形態においては、レバー部材64は、弁部材61が当接する当接位置を挟んで支持部65が設けられる位置と逆側の位置に回動軸67を有するという構成を採用することによって、レバー部材64の回動軸67の位置から支持部65が設けられる位置まで距離が、回動軸67の位置から弁部材61が当接する位置までの距離よりも長くなるので、梃子の原理により、錘部材63の重さを、付勢部材62の付勢力と釣り合う重さ以下に抑えることが可能となる。
【0038】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0039】
上述の実施形態では、本発明の流体噴射装置をインクジェット式のプリンターに適用しているが、インク以外の他の流体を噴射したり吐出したりする流体噴射装置に適用してもよい。すなわち、微小量の液滴を吐出する流体噴射ヘッド等を備える各種の流体噴射装置に適用可能である。なお、液滴とは、上述流体噴射装置から吐出される流体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう流体とは、流体噴射装置が噴射させることができるような材料であれよい。
【0040】
例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状態、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての流体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散または混合されたものなどを含む。また、流体の代表的な例としては、上述実施形態で説明したようなインクが挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インクおよび油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種流体組成物を包含するものとする。
【0041】
流体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散または溶解のかたちで含む流体を噴射する流体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する流体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる流体を噴射する流体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。
【0042】
さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する流体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する流体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する流体噴射装置を採用してもよい。
【符号の説明】
【0043】
1…プリンター(流体噴射装置)、2…記録ヘッド(流体噴射ヘッド)、50…廃インク回収部(回収部)、53…インク流路(流路)、60…開閉装置、61…弁部材、62…付勢部材、63…錘部材、64…レバー部材、64a…支持面、64b…面、65…支持部、67…回動軸(回動中心)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を噴射する流体噴射ヘッドと、前記流体を所定の流路を介して導き入れて回収する回収部とを備える流体噴射装置であって、
前記回収部に設けられ、前記回収部の姿勢に応じて前記流路を開閉する開閉装置を有することを特徴とする流体噴射装置。
【請求項2】
前記開閉装置は、
前記流路を開放する開放位置と前記流路を閉塞する閉塞位置との間で移動自在な弁部材と、
前記弁部材に対し前記開放位置から前記閉塞位置に向けて所定の付勢力を与える付勢部材と、
前記回収部が所定の姿勢のときに前記付勢力に抗する力を付与する所定位置に位置して、前記弁部材を前記開放位置に位置させる錘部材と、を有することを特徴とする請求項1に記載の流体噴射装置。
【請求項3】
前記錘部材は、略球形状を有し、
前記開閉装置は、前記所定の姿勢のときに前記錘部材を略水平面で支持する支持面を有する支持部を備えると共に前記支持面と逆側の面で前記弁部材と当接して前記付勢力を受けるレバー部材を有することを特徴とする請求項2に記載の流体噴射装置。
【請求項4】
前記レバー部材は、前記弁部材が当接する当接位置を挟んで前記支持部が設けられる位置と逆側の位置に回動中心を有することを特徴とする請求項3に記載の流体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−183776(P2011−183776A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−54330(P2010−54330)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】