説明

流体圧シリンダ

【課題】 本発明は、製造が容易で精度良くピストンストロークの変更が可能な流体圧シリンダを提供することを課題とする。
【解決手段】 本発明による流体圧シリンダにおいては、内部に円筒状のシリンダ室を備えたシリンダブロックと、前記シリンダ室内を2つの圧力室に区画するピストン及び前記ピストンに連結され前記ピストン動作圧力を出力するピストンロッドとを備えたピストンアセンブリと、前記ピストンロッドを摺動自在に保持し前記ピストン端部位置を規制するために前記ピストンロッド周囲に配置され前記シリンダブロックに対して回動自在に保持されたストッパアセンブリと、前記ストッパアセンブリと前記シリンダブロックとを螺合する螺合手段とからなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気等の流体圧力を使用してピストンロッドを往復動させ、その出力を利用する流体圧シリンダに関する。
【背景技術】
【0002】
空気圧または油圧を利用して往復動出力を得るアクチュエータとして、従来から流体圧シリンダが知られており、このシリンダに関して多くの提案がなされている。
【0003】
例えば特許文献1には、シリンダ本体と、ピストン及びピストンロッドとの備えた軸部材と、可動ストッパと回転調整つまみとを有し、この回転調整つまみにより前記ストッパを移動させて前記軸部材のストローク端位置を調整する流体圧シリンダが開示されている。このシリンダにおいては、回転調整つまみによりストッパの位置を変更することができるが、つまみが手動であり正確な位置調整が困難であるという問題点がある。また、可動ストッパがネジによりシリンダ本体に直接接続されているため、ネジの遊びによる位置のバラツキが生じるという問題点もある。
【0004】
また、特許文献2には停止位置の変更可能な空気圧シリンダとして、シリンダチューブ内に、ピストンの摺動方向に位置調整可能なエンドブロックを気密に嵌挿し、このエンドブロックのピストン摺動方向への摺動を案内する案内手段を設けると共に、このブロックの周囲にネジを設けて、そのネジに螺合するウォームホイールにウォームを噛合させ、このウォームをステッピングモータにより駆動する技術が開示されている。このシリンダではエンドブロックがモータにより駆動されるため、位置制御が容易にできるという利点はあるが、エンドブロックがネジによりウォームホイールに連結されさらにこのウォームホイールがウォームに噛合駆動されるため、ネジの遊びによる位置のバラツキが生じるという問題点がある。
【0005】
【特許文献1】特開2004−176888号公報
【特許文献2】特公平7−94846号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述の問題点に鑑みてなされたものであり、製造が容易で精度良くピストンストロークの変更が可能な流体圧シリンダを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するため本発明による流体圧シリンダにおいては、内部に円筒状のシリンダ室を備えたシリンダブロックと、前記シリンダ室内を2つの圧力室に区画するピストン及び前記ピストンに連結され前記ピストン動作圧力を出力するピストンロッドとを備えたピストンアセンブリと、前記ピストンロッドを摺動自在に保持し前記ピストン端部位置を規制するために前記ピストンロッド周囲に配置され前記シリンダブロックに対して回動自在に保持されたストッパアセンブリと、前記ストッパアセンブリと前記シリンダブロックとを螺合する螺合手段とからなることを特徴とする。
【0008】
前記シリンダブロックは複数の部材から構成され、気密を維持しつつ前記ストッパアセンブリに対する軸受及び螺合部材を備えていることが望ましい。
【0009】
前記ストッパアセンブリは、ストッパ部材と前記ストッパ部材に連結されシリンダ外部に延伸されたスプライン部材と、前記スプライン部材を回動させるための回転伝達部材とからなることが好適である。また、前記スプライン部材と前記回動伝達部材とは相互回転不可かつ軸方向の摺動可能に連結されていることが好ましい。
【0010】
前記ストッパアセンブリは、回転発生手段により駆動されることが望ましく、前記ストッパアセンブリの少なくとも一部が引抜加工または押出加工により形成された部材からなることがより好適である。
【0011】
前記ストッパアセンブリと前記シリンダブロックとを螺合する前記螺合手段は、ボールネジであることが望ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明による流体圧シリンダでは、ストッパアセンブリがストッパ部材とストッパ部材から延伸されたスプライン部材、及びこのズプライン部材を回動させるための回転伝達部材とからなっていて、この回転伝達部材をベアリングによりシリンダブロックに回転自在に保持した上でストッパ部材とスプライン部材が軸方向に摺動するため、ストッパの位置を精度良く調整することが可能となる。さらに、シリンダブロックの部材として引抜加工または押出加工による素材を用い、螺合手段をボールネジとすることにより、位置精度をさらに高めることができる。また、シリンダ部材を複数の部材から構成したことにより、ストッパアセンブリに対するベアリングや螺合部材として市販の製品を組み込むことが可能となるため、シリンダの製造が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【実施例】
【0013】
以下、本発明の好適な実施例について図面に基づいて説明する。図1は本発明による流体圧シリンダの実施例を示す全体断面図である。本シリンダの全体構成としては、内面が円筒状に形成されたシリンダブロック1の端部がヘッドカバー9により、また反対側端部がストッパヘッド44を備えたストッパアセンブリ(後述)の一部をなすストッパヘッド44によりそれぞれ密閉されており、このシリンダブロック1内に片側端部にピストンヘッド61とピストンロッド2からなるピストンアセンブリが摺動自在に装着されている。ピストンロッド2はストッパアセンブリを貫通して外部まで延長され、ピストンヘッド61の動作を外部に伝達する。一方、ストッパアセンブリ3はシリンダブロック1に対して回転自在に装着されており、回転によりシリンダブロック1の軸方向に移動できるように構成されている。ストッパアセンブリ3のストッパヘッド44と反対側端部はシリンダブロック1より外部に延出されており、回転伝達機構(後述)を介してモータ8に連結されている。
【0014】
ピストンアセンブリは円筒状ピストンロッド2の片側端部にやはり円筒状のピストンヘッド61が装着されている。ピストンヘッド61の外径はシリンダブロック1の内径よりも若干小さく形成されており、外周にサポートウェアリング17、マグネット62及びピストンパッキン63が装着されている。サポートウェアリングの外径はシリンダブロック1の内径に適合して摺動自在に構成されている。ピストンパッキン63はピストンヘッド61の左右を気密に隔離するよう配置されている。ピストンヘッド61の両端にはさらにバンパ64が配置されており、ピストンヘッド61が動作した際にヘッドカバー9或いはストッパヘッド44に当接する衝撃を緩和する。また、ピストンヘッド61にマグネット62を配置したことにより、磁力によってシリンダ外部よりピストン位置を検出して外部へ信号を取り出すことができる。
【0015】
シリンダブロック1は内面が円筒状に形成されたシリンダ室22を備え、端部がヘッドカバー9とヘッドカバーOリング15により気密に封止され、内部にピストンアセンブリ2が収納されている。シリンダ室22にはまた、ピストンアセンブリ2に挿通されたストッパアセンブリ3も収納されている。このストッパアセンブリ3とピストンアセンブリ2とは回動かつ摺動自在に、しかも気密に配置されている。ストッパアセンブリ3は、ベアリング5によりシリンダブロック1に回転自在に保持されており、また部分的にボールネジ雄ネジが形成されていてシリンダブロック1に固定されたボールネジ雌ネジ部材4と螺合している。ストッパアセンブリ3はさらに、シリンダブロック1の外部において回転伝達機構に連結されている。回転伝達機構は、プーリーA6、ベルト(図示してない)及びプーリーB7からなっている。シリンダブロック1にはプーリーA6が固定されており、ベルト(図示してない)によりプーリーB7と連結されている。プーリーB7はステッピングモータ等の回転発生手段8に接続されている。回転発生手段8は、シリンダブロック1から伸びる取付けプレート28に固定されている。
【0016】
上記実施例のシリンダブロック1の詳細組み立て図を図2に示した。シリンダブロック1は、シリンダ本体21、ボールネジホルダ23、アダプタ25及び取付けプレート28からなっている。シリンダ本体21には連結突起部30が形成されており、ボールネジホルダ23内にボールネジ雌ネジ部材4を収納した後に嵌合して結合する。ボールネジホルダ23はさらに、接続口31においてアダプタ25と結合される。このアダプタ25内のアダプタ室26は、ピストンアセンブリ2が挿通可能な径に形成されている。アダプタ25は、取付けプレート28のベアリング室29にベアリング5を収納した後に嵌合結合される。シリンダ本体21、ボールネジホルダ23及びアダプタ25の結合については、図示してないが各々の部材を貫通する複数の穴を設け、ボルト等により固定することで行うことができる。また、アダプタ25と取付けプレート28との結合は、アダプタ25を通して取付けプレート28にボルト13を締め付けることにより行うことができる。シリンダブロック1を複数の部材から構成したことにより、シリンダ本体21を軸方向にほぼ同一の外形及び内径に形成することができるため、アルミニウム等の引抜加工或いは押出加工による精度の高い部材を使用することが可能となる。
【0017】
上記実施例におけるストッパアセンブリ3の詳細組み立て図を図3に示した。ストッパ本体41は片側にストッパヘッド44が形成されており、内部はピストンロッド室42を設けて中空としてある。ピストンロッド室42はピストンアセンブリ2が挿通可能な径に形成されていて、ロッドパッキン71によりピストンロッド2との気密を確保する。ストッパヘッド44の外径はシリンダブロック1の内径よりも若干小さく形成されており、外周にウェアリング72及びストッパパッキン73が装着されている。ウェアリング72の外径はシリンダブロック1の内径に適合して摺動自在に構成されており、ストッパパッキン73によりシリンダブロック1との気密を確保している。また、このストッパ本体41上にはボールネジ雄ネジが形成されており、ボールネジホルダ23内に収納されるボールネジ雌ネジ部材4と螺合される。さらに、ストッパ本体41のストッパヘッド44と反対側端部には雄ネジ接続部43が設けてあり、スプラインシャフト45の雌ネジ接続部48に螺合結合される。スプラインシャフト45も中空とされており、ピストンアセンブリ2が挿通可能な径に形成されている。
【0018】
カップリングホルダ51は片側端部がベアリング5の内径に適合した外径に形成されており、取付けプレート28内に配置されたベアリング5に挿入後ストップリング等により回転可能に固定される。一方、カップリングホルダ51の反対側端部にはリニアボールベアリング室52が設けてあり、リニアボールベアリング54を挿入固定できるように形成されている。リニアボールベアリング54の内部はスプライン受入れ室55が設けてあり、スプラインシャフト45の外径に適合するように形成されているが、複数の軸方向突起(図示してない)が設けてあり、スプラインシャフト45に設けた複数の軸方向溝(図示してない)と嵌合するように構成されている。従って、スプラインシャフト45がカプラ54を通してカップリングホルダ51に挿通された際には、スプラインシャフト45は軸方向には摺動自在であるが、カップリングホルダ51との相互回転はキーにより規制されるように構成されている。これによって、カップリングホルダ51の回転がスプラインシャフト45を介してストッパ本体41に伝達される。
【0019】
この実施例による流体シリンダのストッパ44を軸方向に移動させるには、モータ8を規定量だけ回転させる。この回転はプーリーB7からベルト及びプーリーA6を介してカップリングホルダ51に伝達される。この回転はさらにカプラ54及びスプラインシャフト45を介してストッパ本体41に伝達される。ストッパ本体41にはボールネジ雄ネジが形成されており、シリンダブロック1に固定されたボールネジ雌ネジ部材4と螺合しているため、ボールネジの溝に従ってスプラインシャフト45とストッパ本体41が軸方向に移動することになる。
【0020】
ストッパアセンブリ3の回転はカップリングホルダ51が規制し、ストッパ44の軸方向の移動はボールネジにより行うため、回転と軸方向移動が別駆動となり精度の高い調整が可能となる。
【0021】
図1は、ピストンヘッド61がシリンダ室22の右端(後退端)に位置している状態である。シリンダ室22は実際にはピストンヘッド61上のピストンパッキン63により圧力室22a及び22b(便宜上これらの圧力室番号は図2に示した)に区画されている。この状態では、第1ポート11は圧力室22aに連通しており、第2ポート12は圧力室22bに連通しているため、第1ポート11より圧縮空気等の流体を供給してピストンパッキン63の右側の圧力室22a圧力を上昇させ、第2ポートより流体を排出してピストンパッキン63の左側の圧力室22b圧力を減少させると、ピストンヘッド61を左方へ駆動することができる。ピストンヘッド61はストッパヘッド44に当接したところで停止する(前進端)。従って、ストッパヘッド44の位置を上述のようにモータ8の回転により制御することにより、ピストンヘッド61のストロークを調整することができる。ただし、ピストンヘッド61が前進端に達した際には、第2ポート12と圧力室22bが連通する必要があるため、ピストンパッキン63の位置は第2ポート12より右側になければならない。また、ストッパヘッド44の位置は常に第2ポート12より左側になければならない。この範囲において、ストッパアセンブリ3の位置を調整できる。
【0022】
上記実施例は本発明の好適な実施態様の一部であり、本発明の精神を逸脱しない範囲において多くの改変をなし得ることは言うまでもない。例えば、上記実施例においてはシリンダブロックの横にモータを配置し、プーリーとベルトによりカップリングホルダを駆動したが、カップリングホルダにモータを組み込むことも可能である。また、ヘッド側カバーへ同機構を形成することで、左右のストローク調整を行うことも可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明によれば、製造が容易で精度良くピストンストロークの変更が可能な流体圧シリンダを提供することが可能となるため、流体圧シリンダの向上に貢献できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本は発明による流体圧シリンダの実施例を示す全体断面図である。
【図2】図1に示した実施例のシリンダブロックの詳細を示す組立断面図である。
【図3】図1に示した実施例のストッパアセンブリの詳細を示す組立断面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 シリンダブロック
2 ピストンロッド
3 ストッパアセンブリ
4 ボールネジ雌ネジ部材
5 ベアリング
6 プーリーA
7 プーリーB
8 モータ
9 ヘッドカバー
11 第1ポート
12 第2ポート
13 固定ボルト
14 止め輪
15 ヘッドカバーOリング
16 ストップリング
17 サポートウェアリング
18 止めネジ
21 シリンダ本体
22 シリンダ室
22a、22b 圧力室
23 ボールネジホルダ
24 ボールネジ室
25 アダプタ
26 アダプタ室
27 接続突起部
28 取付けプレート
29 ベアリング室
30 連結突起部
31 接続口
41 ストッパ本体(ボールネジ本体)
42 ピストンロッド室
43 雄ネジ接続部
44 ストッパヘッド
45 スプラインシャフト
46 ピストンロッド室
47 ストッパ受入れ室
48 雌ネジ接続部
51 カップリングホルダ
52 リニアボールベアリング室
53 スプライン受入れ室
54 リニアボールベアリング
55 スプライン受入れ室
61 ピストンヘッド
62 マグネット
63 ピストンパッキン
64 バンパ
71 ロッドパッキン
72 ウェアリング
73 ストッパパッキン
81 ワッシャ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に円筒状のシリンダ室を備えたシリンダブロックと、前記シリンダ室内を2つの圧力室に区画するピストン及び前記ピストンに連結され前記ピストン動作圧力を出力するピストンロッドとを備えたピストンアセンブリと、前記ピストンロッドを摺動自在に保持し前記ピストン端部位置を規制するために前記ピストンロッド周囲に配置され前記シリンダブロックに対して回動自在に保持されたストッパアセンブリと、前記ストッパアセンブリと前記シリンダブロックとを螺合する螺合手段とからなることを特徴とする流体圧シリンダ。
【請求項2】
前記シリンダブロックは複数の部材から構成され、気密を維持しつつ前記ストッパアセンブリに対する軸受及び螺合部材を備えていることを特徴とする請求項1記載の流体圧シリンダ。
【請求項3】
前記ストッパアセンブリは、ストッパ部材と前記ストッパ部材に連結されシリンダ外部に延伸されたスプライン部材と、前記スプライン部材を回動させるための回転伝達部材とからなることを特徴とする請求項1または2記載の流体圧シリンダ。
【請求項4】
前記スプライン部材と前記回動伝達部材とは相互回転不可かつ軸方向の摺動可能に連結されていることを特徴とする請求項3に記載の流体圧シリンダ。
【請求項5】
前記ストッパアセンブリは、回転発生手段により駆動されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の流体圧シリンダ。
【請求項6】
前記シリンダブロックの少なくとも一部が引抜加工または押出加工により形成された部材からなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の流体圧シリンダ。
【請求項7】
前記螺合手段がボールネジであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の流体圧シリンダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−144917(P2011−144917A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−19493(P2010−19493)
【出願日】平成22年1月12日(2010.1.12)
【出願人】(593177000)株式会社協和精工 (1)
【出願人】(510027191)
【Fターム(参考)】