説明

流体搬送設備に用いる流量調整装置

【課題】流体搬送設備の設置(施工)時に、搬送流路途中の複数の流量調整部材を通過する流量を所定流量に調整し、その後は該流体搬送設備から取り外し、施工後、他の設備の調整に再使用可能な汎用性の流量調整装置を提供すること。
【解決手段】流量調整部材4A〜4Fのそれぞれに流量調整ユニット21を設置する。該ユニット21は、流量調整部材の操作部13に着脱自在な作動装置24、及び操作部の作動力を検知する作動力検知手段25を有している。制御装置27は、作動力検知手段で検知された操作部の作動力や流量調整部材の下流又は上流のダクト内に仮設した流量検知装置23からのデータを記憶部に入力し、かつ作動装置に風量調整羽根11a,11bの開閉量変更値を出力し、流体搬送設備設置後、流量を変更又は調整する際に各流量調整部材を流れる流量を所定流量値およびその許容範囲である目標流量に調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体搬送設備に用いる流量調整装置に関し、さらに詳細には、例えばファンユニットのような流体送出装置から送り出された空気を複数の空気吹出部へ分配し、これら空気吹出部から各対象室に吐出する流量を所定流量に調整する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
流体搬送設備の代表例としては、建造物の各室内などに清浄および/又は温度調整された空気を供給する清浄空気搬送設備や空調設備が知られている。例えば、清浄空気搬送設備では、ファンユニット(流体送出装置)から送給された清浄な空気が主ダクトやこれから分かれた分岐ダクトからなる搬送流路を通り、該搬送流路に設置した可変空気流量調整部(ヴォリュームダンパー)で流量が調整されて吹出口から各対象室に供給される。
【0003】
従来の流体搬送設備において各ヴォリュームダンパーを通る搬送流体の流量は、直管部やベント部など該流体搬送設備を構成する部材による抵抗、ポンプやファンなどの搬送装置による搬送動力などの要因により大きく変化する。しかし、一般的には、流体送出装置に近いヴォリュームダンパーを通過するときの風量が流体送出装置から遠いヴォリュームダンパーを通過するときの風量より多くなる。そのため、従来の流体搬送設備では、人手により各ヴォリュームダンパーを通過する風量を予め設定された値に近くなるように各ヴォリュームダンパーのダンパー開度を調整している。
【0004】
このような制御方法としては、例えば特開平10−63341号公報(特許文献1)に開示されたHIVAC分配システムにおけるブランチ流量の自動較正装置および方法が知られている。前記特許文献1に開示の自動較正装置および方法では、ファンの吹出し口付近のダクトにシステム総流量を検出する流量センサーが設けられ、また各端末ユニットにつながる各ダクトには速度圧センサーが設けられている。この自動較正装置および方法では、オペレータが暖房、換気および空調(HVAC)用流体分配システムの較正を要求すると、各速度圧センサーの較正用データがネットワークを介して遠隔的に集められ、較正計数が算出されてローカルコントローラに送られ、このローカルコントローラによって各端末ユニットが制御され、このプロセス全体がすべて自動的に行われるようにしたものである。
【特許文献1】特開平10−63341号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記特許文献1に開示された自動較正装置は、流体搬送設備の一部として恒久的に組み込まれているもので、流体搬送設備の作動中はいつでも或いは必要に応じて各ヴォリュームダンパーを通過する風量を制御するものである。そのため、この自動較正装置は、これを組み込んだ流体搬送設備の価格を高めていると共にその設置コストも高価となる。
【0006】
また、通常、新たに建築された建造物に流体搬送設備を設置(施工)したときには、各ヴォリュームダンパーを通過する流体の流量を所定流量に調整するための初期設定が必要となる。しかし、前記特許文献1の自動較正装置では、新たに建築された建造物に設置(施工)した直後に、自動較正装置を働かせない状態で、ある設定条件を満足するように人手により予め高精度に測定を行って流量係数を算出し、その流量係数に基づいて風量の調整を行っておき、その後に条件の変化に応じて較正するようにしたものである。したがって、自動較正装置の有無にかかわらず、施工直後に調整作業が必要となり、この調整作業は手動で行われることになる。
【0007】
本発明の目的は、建造物に新たに流体搬送設備を設置(施工)したとき、搬送流路に設置された複数の流量調整部材を通過する流体の流量をそれぞれ目標流量に自動的に調整すると共に調整後は該流体搬送設備から取り外して他の流体搬送設備における施工後の調整に用いることが可能な汎用性のある流量調整装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための本発明の前提は、流体送出装置から搬送流路を通って送給される流体の流量を該搬送流路に設置された流量調整部材により調整して複数の流体吐出部へ送る流体搬送設備に用い、前記各流量調整部材の開閉部を操作部により操作して流路断面積を変更し、前記各流量調整部材を通過する流量を目標流量に調整する流量調整装置である。
【0009】
かかる流量調整装置において本発明の特徴は、前記流量調整部材ごとに設置される流量調整ユニットを備え、前記各流量調整ユニットが、前記流量調整部材より少なくとも下流側の前記搬送流路内に取り外し可能に仮設される流量センサーを有する流量検知装置と、前記流量調整部材の前記操作部に着脱自在に連結可能であり、前記操作部を作動させる作動装置と、前記作動装置に設置され、前記操作部の操作力を検知する操作力検知装置と、記憶部および演算部を備えると共に前記操作力検知装置および前記作動装置に電気的につながり、該操作力検知装置で検知された前記操作部の操作力を信号として入力し、かつ前記作動装置に前記開閉部の開閉量変更値を出力する制御装置とを備え、前記流体搬送設備を設置した後、流量を変更又は調整する際に前記各流量調整ユニットを前記流体搬送設備に取り付けて、前記各流量調整部材の前記開閉部を通過する流量を前記目標流量に調整することにある。
【0010】
本発明の実施態様の一例としては、前記流量調整ユニットの前記制御装置における前記記憶部が、前記流量調整部材により調整される前記目標流量、前記操作部の操作力、前記流量調整部材の流量特性値を記憶する。
【0011】
本発明における実施態様の他の一例としては、前記演算部が、前記操作部、前記操作力検知装置、前記流量検知装置および前記記憶部に電気的につながり、前記開閉部を動かす前記操作部のための操作要求量を算出する。
【0012】
本発明における実施態様の他の一例としては、前記流量調整装置が、前記流量調整部材ごとに設置される前記流量調整ユニットを操作する情報処理装置を備え、該情報処理装置が、前記流量調整ユニットそれぞれの前記制御装置から情報を入力し、前記各流量調整ユニットそれぞれの前記制御装置に動作指令を出力して、前記各流量調整ユニットにおける前記流量調整部材の前記開閉部を操作して前記流量調整部材を通過する流量を前記目標流量に調整する。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る流量調整装置によれば、各流量調整部材に設置される流量調整ユニットを構成する作動装置が、流量調整部材の操作部に着脱自在に連結可能であるので、各流量調整部材における目標流量への調整が終了した後には、作動装置を流量調整部材の操作部から外すと共に、流量調整部材より下流側の搬送流路内に仮設された流量センサーも取り外すことができるので、本発明の流量調整装置を施工後の別な流体搬送設備における流量調整に用いることができることから、該流量調整装置を汎用的に再使用することができる。
【0014】
また、本発明の流量調整装置では、流量調整ユニットの制御装置における記憶部が、流量調整部材により調整される流量の目標値(所定流量値およびその許容範囲)、操作部の操作力、流量調整部材の流量特性値を記憶し、記憶部に入力されたこれらデータを用いて流量調整部材における開閉部の開度を演算部により演算し、制御装置がその結果を出力して作動装置を動かすので、流量調整部材における開閉部の開度を高い精度で調整することが可能となる。
【0015】
さらに、本発明に係る流量調整装置では、流量調整部材ごとに設置される流量調整ユニットを操作する情報処理装置を備えているので、各流量調整ユニットそれぞれの制御装置から入力された情報を一カ所で管理し、各流量調整ユニットそれぞれの制御装置に動作指令を出力でき、各流量調整ユニットの流量調整部材における開閉部の開度調整操作を情報処理装置により制御できる。そのため流体搬送設備の施工直後に行う各流量調整部材の目標流量調整に多くの作業者がかかわる必要がなくなることから労力の軽減を図ることができると共に、人件費なども大幅に節約できるので調整コストが一層安価となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
添付の図面を参照し、本発明に係る流量調整装置の詳細を説明すると、以下のとおりである。図1は、流体搬送設備の一例として、空調設備の概略的な搬送系統1に本発明に係る一実施形態の流量調整装置20を設置して示す概略的な構成説明図であり、図1では、空調機本体は省略されている。空調設備の搬送系統1は、ファンユニットなどのように空気を送風する流体送出装置2を備え、この流体送出装置2の送出口2aには主ダクト3が接続されている。流体送出装置2における送出口2aの近傍における主ダクト3には第1流量調整部材4Aが設置されている。
【0017】
主ダクト3における第1流量調整部材4Aより下流側には、2つの分岐ダクト6,7が接続され、分岐ダクト6には、さらに別の分岐ダクト8が接続されている。主ダクト3から分岐した分岐ダクト6の分岐部6aと分岐ダクト6から分岐した分岐ダクト8の分岐部8aとの間には、第2流量調整部材4Bが設置されている。主ダクト3の末端部近傍には第3流量調整部材4Cが設置され、該主ダクト3の末端部吹出し口3aは、第1対象室5Aに開放している。また、各分岐ダクト6,7,8の各末端部近傍には、第4,5,6流量調整部材4D,4E,4Fが設置され、これら各分岐ダクト6,7,8の各末端部吹出し口6b,7a、8bは、第2,3,4対象室5B,5C,5Dに開放している。これら主ダクト3,各分岐ダクト6,7,8は、流体搬送設備の搬送系統1における搬送流路を構成している。
【0018】
流体送出装置2の送出口2a近傍における主ダクト3に設置された第1流量調整部材4A,分岐部6a近傍における分岐ダクト6に設置された第2流量調整部材4B、および第1〜4対象室5A〜5Dに開放する主ダクト3および分岐ダクト6,7,8の各端末部吹出し口3a,6b,7a,8bのそれぞれ近傍に設置された第3〜6流量調整部材4C〜4Fは、実質的に同一の構造のものであり、これら流量調整部材4A〜4Fを代表してそのうちの第1流量調整部材4Aが図2に示され、図3には図2の3−3線で第1流量調整部材4Aを切断した断面図が概略的に示されている。第1流量調整部材4Aは、ダクトと同様な大きさと形状のケーシング9を備え、該ケーシング9の貫通路がダクトに連通する流路10となる。このケーシング9の内部には、流れ方向から見た流路面積を可変にする2つの風量調整羽根11a,11bが回転可能に取り付けられている。これら風量調整羽根11a,11bが、第1流量調整部材4Aの開閉部を構成している。
【0019】
ケーシング9の側壁には操作部13が設けられ、該操作部13は、複数のギヤを組み合わせて構成された減速歯車列(図示せず)を介して一方の風量調整羽根11aの回転軸14aに接続している。他方の風量調整羽根11bの回転軸14bは、両回転軸14a,14bに取り付けた複数のギヤ(図示せず)を介して連動する。すなわち、図3から明らかなように2つの風量調整羽根11a,11bが、流路10の流れ方向に直交する垂直方向に向くように回転したときには、該流路10を全閉することになり、また、流路10の流れ方向に平行な水平方向に向くように回転したときには、該流路10を全開することになる。
【0020】
これら第1〜6流量調整部材4A〜4Fのそれぞれには、図1に示されるように本発明に係る一実施例の流量調整装置20が配置される。流量調整装置20は、図4のシステム構成図に示されるように情報処理装置22(図1も併せて参照)と第1〜6流量調整ユニット21とを備え、これら流量調整ユニット21は、第1〜6流量調整部材4A〜4Fに対してそれぞれ1つ配置される。情報処理装置22は、すべての流量調整ユニット21からの情報を入力し、また各流量調整ユニット21に対して制御のための指示を出力する。第1流量調整部材4Aに対して配置される第1流量調整ユニット21を例にしてその構成を説明すると、この第1流量調整ユニット21は、図2の構成説明図および図5のシステム構成図に示されるように第1流量調整部材4Aの下流側の主ダクト3内に取り外し可能に仮設される流量センサー23aから信号を受ける流量検知装置23を備えている。
【0021】
また、第1流量調整ユニット21は、第1流量調整部材4Aの操作部13に着脱自在に連結可能な作動装置24を備えている。この作動装置24は、電動モータ(図示せず)、該電動モータの回転力を減速するギヤ機構、該ギヤ機構で減速された回転力を出力する出力軸など(いずれも図示せず)から構成されている。作動装置24は、その出力軸を第1流量調整部材4Aの操作部13における操作軸に着脱可能に連結され、出力軸と操作軸とが連結されているときには電動モータの回転力が減速ギヤ機構から出力軸を介して操作軸に伝達される。したがって、作動装置24が作動されると、操作部13を介して2つの風量調整羽根11a,11bが回転し、それら風量調整羽根11a,11bの開度が調整される。
【0022】
作動装置24には、操作部13の操作力と操作量を検知する操作力検知装置25が設置されている。これら作動装置24と操作力検知装置25とは、信号線26a,26bにより制御装置27に電気的に接続されており、該制御装置27は、操作力検知装置25で検知された操作部13の操作力を信号として入力し、かつ作動装置24に対して2つの風量調整羽根11a,11bの開閉量変更値を出力する。
【0023】
第1流量調整ユニット21の制御装置27は、記憶部(図示せず)と演算部(図示せず)とを備え、記憶部は第1流量調整部材4Aにより調整される目標流量(所定流量値およびその許容範囲)、操作部13の操作量、第1流量調整部材4Aの流量特性、操作部13の操作力と該操作力から割り出した操作量とを記憶する。また、制御装置27に設けられた演算部は、記憶部に電気的につながっており、記憶部に入力されたデータに基づいて風量調整羽根11a,11bを作動させる操作部13に対して操作要求量を算出する。ここで、目標流量即ち「所定流量値およびその許容範囲」とは、所定流量値の前後10%の範囲、好ましくは所定流量値の前後5%の範囲にある状態を言う。例えば、風量調整羽根11a,11bが全開のときに流れる流量を100%とし、ある流量調整部材の所定流量値がその60%であったとすると、測定流量値が50〜70%の範囲にあればよく、更に好ましくは測定流量値が55〜65%の範囲であればよい。
【0024】
第1流量調整部材4Aの流量特性とは、図6に示されるように横軸を風量調整羽根11a,11bの開閉値(開度)とし、第1流量調整部材4Aを流れる流量を縦軸としたときのグラフ(特性曲線28)で示されるそれらの相関関係を言う。すなわち、図6の流量特性を示すグラフから明らかなように、風量調整羽根11a,11bの開度がゼロ(全閉)のときには第1流量調整部材4Aを通過する流量はゼロであり、風量調整羽根11a,11bを開きはじめると緩やかに流量が増加する(特性線28の直線部28a)。
【0025】
開きはじめからある開度になると特性線28は曲線28bを画いて流量が急激に増加し、その後、風量調整羽根11a,11bの開度増加に対応して流量が増加する。このような特性線28において、符号28cで示される範囲が有効制御範囲である。この有効制御範囲を過ぎて、風量調整羽根11a,11bの開度が全開位置に近づくと、特性線28は曲線28dを画いて流量の増加量が急激に減少しはじめ、それを過ぎると緩やかに流量の増加量が減少し(特性線28の直線部28e)、やがて全開位置になって流量は最大となる。
【0026】
図6に示される流量特性において、直線部28cの範囲が有効制御範囲である、と説明したが、基本的には、風量調整羽根11a,11bの全閉位置と全開位置を除いた範囲でもよい。しかし、全開状態のときの開度を100%としたとき、20%〜80%の範囲を有効制御範囲とすることが好ましい。
【0027】
このように構成される流量調整装置20を用いて施工直後の流体搬送設備における流量調整方法について以下説明する。流体搬送設備における各流量調整部材4A〜4Fを通過する流体の流量を流量調整装置20により調整する方法は、図7および図8の各フローチャート図に示す初期設定モードと調整モードとによって構成される。最初に、初期設定モードについて説明すると、該初期設定モードでは、流量調整部材の台数と位置情報を情報処理装置22に入力する(ステップ101)。この実施形態では、流量調整部材は参照符号4A〜4Fで示すように6台である。各流量調整部材4A〜4Fの位置情報としては、流体送出装置2から各流量調整部材4A〜4Fまでの主ダクト又は、主ダクトと分岐ダクトに沿った長さ(道のり)を情報処理装置22に入力する。
【0028】
次に、流体送出装置2を停止させるか又は停止状態にあることを確認する(ステップ102)。その後、情報処理装置22からの指示により第1〜6流量調整ユニット21それぞれの作動装置24を作動させ、第1〜第6流量調整部材4A〜4Fそれぞれの操作部13を介して風量調整羽根11a,11bを回転して操作部13の操作力を操作力検知装置25で検知する(ステップ103)。次いで、検知した操作力が著しく高くなる位置についてその操作力を限界操作力とし、その位置をそれぞれ全閉位置と全開位置として認識する(ステップ104)。そして、操作部13の限界操作力と、全閉位置および全開位置から割り出された全閉全開位置間の操作量とが操作特性として制御装置27の記憶部に入力されて保存される(ステップ105)。操作力の検知としては操作部13が風量調整羽根11a,11bを回転させるときの回転トルク値を検出することが望ましい。
【0029】
具体的には、風量調整羽根11a,11bは、全開位置から回転して全閉位置になるとケーシング9の内壁面適所に取り付けられたストッパー15によりそれ以上の回転が阻止されるようになっている。これは、全閉位置から回転して全開位置になったときも同じである。したがって、風量調整羽根11a,11bが全閉位置から回転して全開位置に来たとき、あるいはその逆のときには、風量調整羽根11a,11bはそれ以上回転することができないため操作部13の回転トルク値が増大する。操作力検知装置25は、作動装置24を介して操作部13の回転トルク値を常時検知しており、この回転トルク値が所定値より増大したとき、流量調整部材4A〜4Fの下流側における流量計測値を参考にして全閉位置または全開位置に来たことを判断する。
【0030】
次に、流量調整部材4A〜4Fのすべてについてステップ103〜105を実施したか否かが判別(ステップ106)され、すべての流量調整部材4A〜4Fについて実施していない場合(NO)にはステップ103の前に戻り、実施されていない流量調整部材について操作特性値を取得する。
【0031】
流量調整部材4A〜4Fのすべてについてステップ103〜105を実施している場合(YES)には、ステップ107に移り、情報処理装置22からの指示により、1つの流量調整ユニット21、例えば第1流量調整ユニット21を除く他のすべての流量調整ユニット21において作動装置24により操作部13を動かして流量調整部材4B〜4Fの風量調整羽根11a,11bをほぼ半開(開度約50%)位置にする。次いで、情報処理装置22は、第1流量調整部材4Aの流量特性を測定するため、この流量調整部材4Aに対応する第1流量調整ユニット21の作動装置24により操作部13を動かして風量調整羽根11a,11bを全開位置にする(ステップ108)ように指示をする。その後、流体送出装置2を作動させる(ステップ109)。
【0032】
情報処理装置22は、風量調整羽根11a,11bを全開位置にした第1流量調整部材4Aの操作部13を作動装置24により動かし、風量調整羽根11a,11bを全開位置から全閉位置に回転させ(ステップ110)、これによる第1流量調整部材4Aの下流側での流量変化を流量検知装置23で得て、第1流量調整部材4Aの開度と流量との関係をデータ化し、制御装置27の記憶部に入力する(ステップ111)。制御装置27の記憶部に入力されたこれらデータに基づいて、制御装置27の演算部では、流量変化量/調整羽根開度変化量、の式から第1流量調整部材4Aの流量特性を計算する。すなわち、流量変化量と調整羽根開度変化量とデータに基づき演算部で流量変化特性値(図6の特性線28)が計算され、記憶部に入力されて保存されると共にこの特性値における有効制御範囲(図6参照)が認識されて記憶部に入力される(ステップ112)。
【0033】
残るすべての第2〜6流量調整部材4B〜4Fそれぞれについて順次に、第1流量調整部材4Aの流量特性値を得たと同じ方法を繰り返し、即ちステップ110〜ステップ112までの操作を行い、すべての流量調整部材4A〜4Fについて風量調整羽根11a,11bの開度変化量と流量変化量とのデータをそれぞれの制御装置27の記憶部に入力し、そのデータに基づいて流量変化特性値を演算部で計算し、それぞれの特性値における有効制御範囲(図6参照)が認識されて記憶部に入力されて保存される(ステップ113)。その後、すべての流量調整部材4A〜4Fについて流量変化特性値を得たか否かが判別され(ステップ114)、未だ流量変化特性値を得ていない場合(NO)には、流量変化特性値を得ていない流量調整部材についてステップ110〜112を繰り返す。すべての流量調整部材4A〜4Fについて流量特性値を得ている場合(YES)には、これらすべての流量調整部材4A〜4Fについて風量調整羽根11a,11bを回転させてほぼ半開位置にする(ステップ115)。
【0034】
以上のようにして空調設備の搬送系統1における第1〜6流量調整部材4A〜4Fについて流量変化特性値など必要なデータがそれぞれ対応する流量調整ユニット21により得られたところで、この初期設定モ−ドが終了する。
【0035】
流量調整装置20の初期設定モ−ドが終了すると、各ダクトから第1〜4対象室5A〜5Dに吐出される流体の流量や、主ダクト3及び分岐ダクト6内の流量を目標流量に調整する調整モ−ドが実行される。この調整モードは、以下に説明する手順で行われる。この調整モードを示すフローチャート図は、図8と図9とに分けて示されており、図9のフローチャート図は図8に示されるフローチャート図の続きである。これらフローチャート図に示されるように、情報処理装置22からの指示によりすべての流量調整ユニット21における作動装置24が動かされ、操作部13を介して各流量調整部材4A〜4Fの風量調整羽根11a,11bを同じ開度にする(ステップ201)。
【0036】
次に、流体送出装置2の電源を入れて作動させ(ステップ202)、各流量調整ユニット21の流量検知装置23でそれぞれ流量調整部材4A〜4Fの下流側の流量を検知し、その計測データを制御装置27に入力する(ステップ203)。各流量調整ユニット21の制御装置27には、それぞれ対応する流量調整部材4A〜4Fを通過すべき流体の流量値が目標流量として予め入力されている。それぞれの流量調整ユニット21の制御装置27は、対応する流量調整部材4A〜4Fについての目標流量とステップ203で得た計測流量値(検知流量)とを比較し、その差を情報処理装置22に入力する(ステップ204)。
【0037】
次いで、流体送出装置2に最も近い第1流量調整部材4Aの開度を調整するため情報処理装置22から第1流量調整ユニット21の制御装置27に指示が出力される。制御装置27はこの指示を受けて作動装置24を動かし、操作部13を介して第1流量調整部材4Aの風量調整羽根11a,11bを回転させる。その際、風量調整羽根11a,11bの開度調整は、図6の特性線28における有効制御範囲(線部分28cの範囲)内でなされる。風量調整羽根11a,11bの開度が変化している間の流量変化値は、制御装置27により目標流量と比較される(ステップ205)。
【0038】
制御装置27が風量調整羽根11a,11bの開度変化に伴う流量の変化値と目標流量とを比較しながら、計測流量が目標流量になるかならないか、即ち所定流量値か又はその許容範囲に入るか否かを判別し(ステップ206)、計測流量が目標流量にならない限りステップ205の直前に戻って風量調整羽根11a,11bの開度が変化され続ける。計測流量が目標流量になると、制御装置27は作動装置24を停止して風量調整羽根11a,11bの回転を停止する。これにより、とりあえず第1流量調整部材4Aの開度調整が終了する。
【0039】
その後、流体送出装置2に次に近い第2流量調整部材4Bの開度を調整するため情報処理装置22から第2流量調整ユニット21の制御装置27に指示が出力される。制御装置27がこの指示を受けると、先に説明した第1流量調整部材4Aの開度調整の場合と同様なステップで第1流量調整部材4Aの開度を調整する。この時も、風量調整羽根11a,11bの開度が変化している間の流量変化値は、制御装置27により第2流量調整部材4Bにおける目標流量と比較される(ステップ207)。
【0040】
制御装置27は風量調整羽根11a,11bの開度変化に伴う流量の変化値と目標流量とを比較しながら、計測流量が目標流量なったか否かを判別し(ステップ208)、計測流量が目標流量にならない限りステップ207の直前に戻って風量調整羽根11a,11bの開度が変化され続ける。計測流量が目標流量になると、制御装置27は作動装置24を停止して風量調整羽根11a,11bの回転を停止する。これにより、とりあえず第2流量調整部材4Bの開度調整が終了する。しかし、第2流量調整部材4Bの流量を目標流量に調整したとき、既に調整した第1流量調整部材4Aの流量値に影響を及ぼして、その流量値が目標流量から外れてしまうことがある。
【0041】
そこで、風量調整羽根11a,11bの開度調整により第2流量調整部材4Bを通る流体の流量を目標流量に調整し終わったときには、既に調整済の第1流量調整部材4Aを通る流体の流量(目標流量)に変化がないかを判別する(ステップ209)。このステップ209で、第1流量調整部材4Aの流量が目標流量から外れている(変化がある)、と判別(NO)された場合には、ステップ205の直前に戻って第1流量調整部材4Aの流量を再調整し、引き続き第2流量調整部材4Bの流量を再調整する。ステップ209で、第1流量調整部材4Aの流量が目標流量から外れていない(変化がない)、と判別(YES)された場合には、次に流体送出装置2に近い第5流量調整部材4Eの流量を調整するステップ210に移行する。
【0042】
このステップ210では、ステップ207と同じように第5流量調整部材4Eの流量を調整しながら、該第5流量調整部材4Eの流量が目標流量になったか否かを判別し(ステップ211)、目標流量にならない(NO)場合にはステップ210の直前に戻って第5流量調整部材4Eの流量調整を繰り返し、目標流量になった(YES)場合には、既に調整済の第1,2流量調整部材4A,4Bの流量値に変化がないかを判別する(ステップ212)。
【0043】
ステップ212で、第1,2流量調整部材4A,4Bの流量がそれぞれの目標流量から外れている(変化がある)、と判別(NO)された場合には、ステップ205の直前に戻って第1流量調整部材4Aの流量を再調整し、引き続き第2流量調整部材4Bおよび第5流量調整部材4Eの流量を再調整する。また、ステップ212で第2流量調整部材4Bの流量だけが目標流量から外れている(変化がある)、と判別(NO)された場合には、ステップ207の直前に戻って第2流量調整部材4Bの流量を再調整する。ステップ212で、第1,2流量調整部材4A,4Bいずれの流量もそれぞれの目標流量から外れていない(変化がない)、と判別(YES)された場合には、次に流体送給装置2に近い第6流量調整部材4Fの流量を調整するためステップ213に移行する。
【0044】
ステップ213では、先に説明した第1流量調整部材4Aの開度調整の場合と同様なステップで第6流量調整部材4Fの開度が調整され、風量調整羽根11a,11bの開度が変化している間の流量変化値は、制御装置27により第6流量調整部材4Fの目標流量と比較される。制御装置27は風量調整羽根11a,11bの開度変化に伴う流量の変化値と目標流量とを比較しながら、計測流量が目標流量になるか否かを判別し(ステップ214)、計測流量が目標流量にならない限りステップ213の直前に戻って風量調整羽根11a,11bの開度が変化され続ける。計測流量が目標流量になると、とりあえず第6流量調整部材4Fの開度調整が終了する。しかし、第6流量調整部材4Fの流量を目標流量に調整したとき、既に調整した第1、2,5流量調整部材4A,4B,4Eの流量値に影響を及ぼして、それらの流量値がそれぞれの目標流量から外れてしまうことがある。その場合は、そのうちの最先に調整された流量調整部材の調整ステップの直前に戻り、それ以降の流量調整部材について再調整される。
【0045】
すなわち、風量調整羽根11a,11bの開度調整により該第6流量調整部材4Fを通る流体の流量を目標流量に調整し終わったときには、既に調整済の第1,2,5流量調整部材4A,4B,4Eを通る流体の流量(目標流量)に変化がないかを判別する(ステップ215)。このステップ215で、第1、2,5流量調整部材4A,4B,4Eの流量がそれぞれの目標流量から外れている(変化がある)、と判別(NO)された場合には、ステップ205の直前に戻って第1,2,5,6流量調整部材4A,4B,4E,4Fにおける流量の再調整が順次実行される。
【0046】
また、これら第1、2,5流量調整部材4A,4B,4Eのいずれか1つ或いは2つの流量調整部材における流量がそれぞれの目標流量から外れている(変化がある)、と判別された場合には、そのうちの最先に調整された流量調整部材の調整ステップの直前に戻り、それ以降の流量調整部材について再調整される。ステップ215で、これら第1,2,5流量調整部材4A,4B,4Eの流量がそれぞれの目標流量から外れていない(変化がない)、と判別(YES)された場合には、次に流体送出装置2に近い第3流量調整部材4Cの流量を調整するステップ216に移行する。
【0047】
ステップ216では、先に説明した第1流量調整部材4Aの開度調整の場合と同様なステップで第3流量調整部材4Cの開度が調整され、風量調整羽根11a,11bの開度が変化している間の流量変化値は、制御装置27により第3流量調整部材4Cの目標流量と比較される。制御装置27は風量調整羽根11a,11bの開度変化に伴う流量の変化値と目標流量とを比較しながら、計測流量が目標流量になるか否かを判別し(ステップ217)、計測流量が目標流量にならない限りステップ216の直前に戻って風量調整羽根11a,11bの開度が変化され続ける。計測流量が目標流量になると、とりあえず第3流量調整部材4Cの開度調整が終了する。しかし、第3流量調整部材4Cの流量を目標流量に調整したとき、既に調整した第1,2,5,6流量調整部材4A,4B,4E,4Fの流量値に影響を及ぼして、それらの流量値がそれぞれの目標流量から外れてしまうことがある。その場合は、そのうちの最先に調整された流量調整部材の調整ステップの直前に戻り、それ以降の流量調整部材について再調整される。
【0048】
すなわち、風量調整羽根11a,11bの開度調整により第3流量調整部材4Cを通る流体の流量を目標流量に調整し終わったときには、既に調整済の第1,2,5,6流量調整部材4A,4B,4E,4Fそれぞれの流量(目標流量)に変化がないかを判別する(ステップ218)。このステップ218で、第1、2,5,6流量調整部材4A,4B,4E,4Fの流量がそれぞれの目標流量から外れている(変化がある)、と判別(NO)された場合には、ステップ205の直前に戻って第1,2,5,6,3流量調整部材4A,4B,4E,4F,4Cにおける流量の再調整が順次実行される。
【0049】
また、これら第1、2,5,6流量調整部材4A,4B,4E,4Fのいずれか1つ或いは3つの流量調整部材における流量が、対応する目標流量から外れている(変化がある)、と判別された場合には、そのうちの最先に調整された流量調整部材の調整ステップの直前に戻り、それ以降の流量調整部材について再調整される。ステップ218で、これら第1,2,5,6流量調整部材4A,4B,4E,4Fの流量が目標流量から外れていない(変化がない)、と判別(YES)された場合には、流体送出装置2から最も遠い位置にある第4流量調整部材4Dの流量を調整するステップ219に移行する。
【0050】
ステップ219では、先に説明した第1流量調整部材4Aの開度調整の場合と同様なステップで最後の第4流量調整部材4Dの開度が調整され、制御装置27により第4流量調整部材4Dの目標流量と計測流量値とが比較される。制御装置27は風量調整羽根11a,11bの開度変化に伴う流量の変化値と目標流量とを比較しながら、計測流量が目標流量になっているか否かを判別し(ステップ220)、計測流量値が目標流量にならない限りステップ220の直前に戻って風量調整羽根11a,11bの開度が変化され続ける。計測流量値が目標流量になると、とりあえず第4流量調整部材4Dの開度調整が終了する。しかし、第4流量調整部材4Dの流量を目標流量に調整したとき、既に調整した第1,2,5,6,3流量調整部材4A,4B,4E,4F,4Cの流量値に影響を及ぼして、それらの流量値がそれぞれの目標流量から外れてしまうことがある。その場合は、そのうちの最先に調整された流量調整部材の調整ステップの直前に戻り、それ以降の流量調整部材について再調整される。
【0051】
すなわち、風量調整羽根11a,11bの開度調整により第4流量調整部材4Dを通る流体の流量を目標流量に調整し終わったときには、既に調整済の第1,2,5,6,3流量調整部材4A,4B,4E,4F,4Cそれぞれの流量(目標流量)に変化がないかを判別する(ステップ221)。このステップ221で、第1、2,5,6,3流量調整部材4A,4B,4E,4F,4Cの流量がそれぞれの目標流量から外れている(変化がある)、と判別(NO)された場合には、ステップ205の直前に戻って第1,2,5,6,3,4流量調整部材4A,4B,4E,4F,4C,4Dにおける流量の再調整が順次実行される。
【0052】
また、これら第1、2,5,6,3流量調整部材4A,4B,4E,4F,4Cのいずれか1つ或いは4つの流量調整部材における流量が、対応する目標流量から外れている(変化がある)、と判別された場合には、そのうちの最先に調整された流量調整部材の調整ステップの直前に戻り、それ以降の流量調整部材について再調整される。ステップ221で、これら第1,2,5,6,3流量調整部材4A,4B,4E,4F,4Cの流量がそれぞれの目標流量から外れていない(変化がない)、と判別(YES)された場合には、この調整モードが終了する。
【0053】
このモードの終了により、すべての流量調整部材4A〜4Fが流量制御装置20によって目標流量に調整されると、情報処理装置22におけるディスプレイなどに、第1〜6流量調整部材4A〜4Fについて設計条件が満たされた旨の表示が出て、ユーザー又は管理者に知らせる。調整モ−ドが終了して第1〜6流量調整部材4A〜4Fについて設計条件が満たされた場合、情報処理装置22のディスプレイにそのことが表示されるだけではなく音声などによって操作者に知らせるようにすることもできる。
【0054】
ところで、図8及び図9に示されるフローチャート図に基づく一連の流量調整を流量調整装置20によって行っているときに、第1〜6流量調整部材4A〜6Fいずれかの流量が所定回数だけ実行しても設計条件を満足しない(目標流量にならない)場合には、設計条件が満足されない流量調整部材を情報処理装置22のディスプレイに表示させ、その調整を一時的に保留し、他の流量調整部材について流量調整を行う。
【0055】
設計条件が満足されずに一時的に保留された流量調整部材については、それ以外の流量調整部材の流量調整が終了した後に再度調整が実行される。しかし、再度の調整でも目標流量にならない場合には、風量調整羽根11a,11bを全開に設定するか、或いはこの流体搬送設備のユーザー又は管理者が望む任意の開度に手動で設定する。その際、既にそれぞれの目標流量に調整されている他の流量調整部材の流量に影響を及ぼしてその流量値がそれぞれの目標流量から外れてしまう場合には、目標流量から外れた流量調整部材の流量調整を再度行う。その時、目標流量から外れた流量調整部材の流量が目標流量になればそれで終了し、もし、目標流量にならなければ目標流量に最も近い流量値に設定して終了する。
【0056】
図8及び図9に示したフローチャート図による調整モードは、各流量調整部材4A〜4Fを通過する流体の流量を流体送出装置2に近い順からそれぞれ目標流量に設定する調整方法であったが、この調整モードでは、後から調整した流量調整部材によって既に調整が終了した流量調整部材に影響を与える場合、既に調整が終了した流量調整部材を再調整する必要があり、この再調整が繰り返し起こることから調整に時間が掛かる、という問題がある。
【0057】
図10は、本発明に係る流量調整装置20の他の流量調整方法における調整モードを示すフローチャート図である。図10のフローチャート図に示されている調整モードによると、各流量調整部材4A〜4Fの流量調整を短時間で行うことができる。以下、図10のフローチャート図に沿ってこの調整モードを説明する。この流量調整方法における初期設定モードは、図7のフローチャート図と同じであるので、その説明を省略する。
【0058】
図10のフローチャート図に示す調整モードでは、最初に、すべての流量調整部材4A〜4Fの風量調整羽根11a,11bを回転させて半開にする。風量調整羽根11a,11bの開度を半開にする理由は、調整前の風量調整羽根11a,11bを半開にしておくと、その後の調整で風量調整羽根11a,11bを大きく回転する必要がないからである。この利点を考慮しなければ、風量調整羽根11a,11bの開度は全閉以外の任意の開度でよい(ステップ301)。図7のフローチャート図に示す初期設定モードでは、ステップ115で各流量調整部材4A〜4Fにおける風量調整羽根11a,11bの開度をほぼ半開にして終了しているので、このステップ301では、すべての流量調整部材4A〜4Fにおける風量調整羽根11a,11bの開度がほぼ半開に設定されているか否かの確認と、ユーザー又は管理者が流量調整部材4A〜4Fにおける風量調整羽根11a,11bの開度を指定している場合にその開度への設定とを行うことになる。
【0059】
引き続いて、流体送出装置2の電源を入れて作動させ(ステップ302)、その後、各流量調整部材4A〜4Fの流量を測定(検知)し、それら流量調整部材4A〜4Fを流れる流体の流量とそれぞれの目標流量(所定流量値およびその許容範囲)とが比較される(ステップ303)。次いで、1つでも流量調整部材の測定流量値が、目標流量になっていないものが有るか否かが判別(ステップ304)される。各流量調整部材4A〜4Fそれぞれの測定流量値が目標流量になっていれば、目標流量に設定されている(NO)、と判断され、この調整モードは終了する。
【0060】
1つでも流量調整部材の測定流量値が、目標流量になっていなければ(YES)、すべての流量調整部材4A〜4Fについて流量の再調整が実行される。ところで、ステップ303において各流量調整部材4A〜4Fの測定流量と目標流量とが比較され、測定流量値が目標流量になっていない流量調整部材が1つでも有るか否かがステップ304で判別されるとき、後に行う調整作業では調整しきれない程の著しい差異が生じている流量調整部材が存在することも考えられる。そのような場合には、その流量調整部材を「見直し候補調整部材」として情報処理装置22に入力して記憶する。
【0061】
ステップ304において測定流量が目標流量になっていない流量調整部材が1つでも有ると判別(YES)されると、すべての流量調整部材4A〜4Fの調整を行うための順番が決定される(ステップ305)。この順番は、通常、上流側(流体送給装置2に近い側)からとするが、ユーザー又は管理者の希望があれば、それに従った順番で行ってもよい。ただし、下流側に位置する流量調整部材の流量を最初に調整すると、その後に上流側の流量調整部材の流量を調整したとき、既に調整した下流側の流量調整部材に狂いが生じることが多いので、調整作業の回数が多くなり好ましくはない。
【0062】
その後、決められた順番で全ての流量調整部材4A〜4Fの風量調整羽根11a,11bを図6に示される有効制御範囲内で回転し、それぞれの流量調整部材4A〜4Fの流量をそれぞれの目標流量に調整する(ステップ306)。次いで、全ての流量調整部材4A〜4Fの測定流量が目標流量に達したか否かが判別(ステップ307)され、目標流量に達した(YES)と判別されればこの調整モードは終了する。しかし、流量調整部材4A〜4Fの1つでもその測定流量値が目標流量に達していない場合(NO)には、全ての流量調整部材4A〜4Fについて規定回数だけステップ306を実施したか否かが判別され(ステップ308)、規定回数だけ流量調整が行われていなければ、ステップ304の前に戻って全ての流量調整部材4A〜4Fについて有効制御範囲内で微調整を含む再調整が実施される。
【0063】
つまり、全ての流量調整部材4A〜4Fについて定められた順番で流量調整が実施されたとき、例えば最後に実施した流量調整部材の調整で、既に調整した流量調整部材の流量に狂いが生じた場合には、ステップ307でNOの判別結果が出てステップ308に移行する。そこで、全ての流量調整部材4A〜4Fについて規定回数だけ流量調整作業が行われていなければ、再びステップ306の前に戻って最初から調整がやり直され、狂いの生じた流量調整部材について流量が再調整され、また他の流量調整部材についても再調整されることになる。
【0064】
このようにして、すべての流量調整部材4A〜4Fが、規定回数に亘りそれぞれの目標流量になるまで調整が繰り返される。その間、すべての流量調整部材4A〜4Fの測定流量が目標流量になればその調整モードは終了し、規定回数実施しても測定流量が目標流量にならない流量調整部材があれば、その流量調整部材の流量調整を中止し、その流量調整部材の風量調整羽根11a,11bを全開にするか、或いはユーザー又は管理者が指定する任意の開度に設定(ステップ309)して調整モードを終了する。
【0065】
なお、ステップ303〜304における流量検知、流量比較及び判別で、「見直し候補調整部材」があって、それが情報処理装置22に記憶されている場合には、ステップ309においてその旨がディスプレイなどに表示され、ユーザー又は管理者に対して知らせる。
【0066】
以上の説明から明らかなように、図10のフローチャート図に示される調整モードは、要するに、各流量調整部材を1つ1つ正確に目標流量に設定して行くのではなく、ある流量調整部材の流量を目標流量に設定することにより他の流量調整部材の流量に狂いが生じても、決定された調整順に従って全ての流量調整部材4A〜4Fを調整し、次のステップで、目標流量にならない流量調整部材があるかを調べ、あればそれを含めたすべての流量調整部材を再調整する、という方法である。その結果、調整作業が短時間で行え、しかも所定流量に対して前後数パーセントの許容範囲を持たせていることから一層調整時間の短縮化と調整作業労力の軽減化を図ることができる。
【0067】
図8,図9のフローチャート図に示す調整モード及び図10のフローチャート図に示す調整モードのいずれの場合でも、該調整モードが終了すると、流量調整装置20は流体搬送設備から撤去される。すなわち、該流量調整装置20を構成する作動装置24および操作力検知装置25がそれぞれの流量調整部材4A〜4Fから取り外され、また流量検知装置23の流量センサー23aが各ダクト内から取り外され、各制御装置27、流量検知装置23、情報処理装置22と共に流体搬送設備の搬送系統1から撤去される。撤去された流量調整装置20は、別な流体搬送設備において施工直後の流量調整に用いられる。
【0068】
前述した本発明の好適な実施形態では、情報処理装置22と第1〜6流量調整ユニット21の各制御装置27とは有線LANや無線LANなどで電気的に接続することができる。また、各流量調整ユニット21において制御装置27と、操作力検知装置25および流量検知装置23
との電気的な接続は有線や無線を用いることができる。
【0069】
なお、前述した本発明の実施形態では、説明の便宜上、同一構成の流量調整部材4A〜4Fを用いた例であったが、それぞれの流量調整部材4A〜4Fの構成が同一である必要はまったくない。したがって、第1流量調整部材4Aが3枚の風量調整羽根から構成され、第2流量調整部材4Bが図3に示されるように2枚の風量調整羽根から構成されたものであっても本発明の効果に何ら影響を与えるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の一実施形態における、流体搬送設備に用いる流量調整装置を概略的に示す構成説明図。
【図2】図1に示される流量調整装置を構成する1つの流量調整ユニットを示す概略的に示す構成説明図。
【図3】図2の3−3線で切断して示す流量調整部材の断面図。
【図4】本発明に係る流量調整装置のシステム構成を示すブロック図。
【図5】流量調整装置における流量調整ユニットのシステム構成を示すブロック図。
【図6】流体搬送設備を構成する流量調整部材の流量特性を示す特性図。
【図7】本発明に係る流量調整装置により流量調整を行う方法における初期設定モードのステップを示すフローチャート図。
【図8】本発明に係る流量調整装置により流量調整を行う方法における調整モードのステップ前半部分を示す部分的なフローチャート図。
【図9】図8に示すフローチャート図に引き続く調整モードのステップ後半部分を示す部分的なフローチャート図。
【図10】本発明に係る流量調整装置により流量調整を行う他の方法における他の調整モードを示すフローチャート図。
【符号の説明】
【0071】
1 流体搬送設備の搬送系統
2 ファンユニット(流体送出装置)
3 主ダクト(搬送流路)
4A,4B,4C,4D,4E,4F 流量調整部材(ダンパー)
5A,5B,5C,5D 対象室
6,7,8 分岐ダクト(搬送流路)
10 流量調整部材の流路
11a,11b 風量調整羽根
20 流量調整装置
21 流量調整ユニット
22 情報処理装置
23 流量検知装置
24 作動装置
25 操作力検知装置
26a,26b 信号線
27 制御装置
28 流量調整部材の流量特性線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体送出装置から搬送流路を通って送給される流体の流量を該搬送流路に設置された流量調整部材により調整して複数の流体吐出部へ送る流体搬送設備に用い、前記各流量調整部材の開閉部を操作部により操作して流路断面積を変更し、前記各流量調整部材を通過する流量を目標流量に調整する流量調整装置において、
該流量調整装置が、前記流量調整部材ごとに設置される流量調整ユニットを備え、前記各流量調整ユニットが、前記流量調整部材より少なくとも下流側の前記搬送流路内に取り外し可能に仮設される流量センサーを有する流量検知装置と、前記流量調整部材の前記操作部に着脱自在に連結可能であり、前記操作部を作動させる作動装置と、前記作動装置に設置され、前記操作部の操作力を検知する操作力検知装置と、記憶部および演算部を備えると共に前記操作力検知装置および前記作動装置に電気的につながり、該操作力検知装置で検知された前記操作部の操作力を信号として入力し、かつ前記作動装置に前記開閉部の開閉量変更値を出力する制御装置とを備え、
前記流体搬送設備を設置した後、流量を変更又は調整する際に前記各流量調整ユニットを前記流体搬送設備に取り付けて、前記各流量調整部材の前記開閉部を通過する流量を前記目標流量に調整することを特徴とする前記流量調整装置。
【請求項2】
前記流量調整ユニットの前記制御装置における前記記憶部が、前記流量調整部材により調整される前記目標流量、前記操作部の操作力、前記流量調整部材の流量特性値を記憶する請求項1に記載の流量調整装置。
【請求項3】
前記演算部が、前記操作部、前記操作力検知装置、前記流量検知装置および前記記憶部に電気的につながり、前記開閉部を動かす前記操作部のための操作要求量を算出する請求項1または2に記載の流量調整装置。
【請求項4】
前記流量調整装置が、前記流量調整部材ごとに設置される前記流量調整ユニットを操作する情報処理装置を備え、該情報処理装置が、前記流量調整ユニットそれぞれの前記制御装置から情報を入力して、前記流量調整ユニットそれぞれの前記制御装置に動作指令を出力し、前記各流量調整ユニットにおける前記流量調整部材の前記開閉部を操作して前記流量調整部材を通過する流量を前記目標流量に調整する請求項1〜3いずれかに記載の流量調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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