説明

流体混合器および流体混合方法

【課題】より多量の流体を吸引して他の流体に混合させることができる流体混合器およびこれを用いた流体混合方法を提供する。
【解決手段】管体10内に加圧流体F0を供給し、その圧力をオリフィス20により低下させて負圧を発生すると共に、流体室40および多孔質材料または多孔性膜よりなる流体吸引管30を通じて吸引流体F1を吸引させて加圧流体F0と混合し、流体飛沫群Sを発生させる。流体吸引管30を管体10と同一内径とすることにより、オリフィス20下流側の第2領域10Bにおける負圧の度合いを大きくすると共に、流体吸引管30の厚みを2mm以下と薄肉にすることにより、吸引流体F1の吸引に対する抵抗を小さくする。より多量の吸引流体F1を管体10内に吸引させ、加圧流体F0と混合させて、多量の流体飛沫群Sを発生させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二種以上の流体を混合して微細な流体飛沫群(例えば、マイクロバブル、ナノバブル、ミスト、ドライミスト、エマルジョンなど)または固体の飛翔群を発生させるのに好適な流体混合器および流体混合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のマイクロバブル発生器としては、例えば、パイプ内部に球体を配置すると共に下流側に小孔を設けたものが開示されている(例えば、特許文献1参照。)この泡発生器では、円管に高圧水を導くと、球体の下流側で水圧が下がって負圧が発生し、小孔から空気が吸引されてマイクロバブルが発生するようになっている。また、パイプ内部に絞りを配置し、下流側に小孔の代わりに多孔質管を設けたものが開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2003−305494号公報
【特許文献2】実開平04−45552号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1では小孔の数が限られるため、また、特許文献2では負圧の度合いが小さい割には多孔質管が厚く空気の吸引量が足りないため、いずれもマイクロバブルの発生量に限界があり、より多量の気体を吸引して多量のマイクロバブルを発生させることができるものが望まれていた。更に、マイクロバブルだけでなく、同じ装置でミスト、ドライミスト、エマルジョンも発生させることができ、加えて複数の異なる流体を同時に吸引し混合することができるものが望まれていた。
【0004】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、より多量の流体を自動的に吸引して他の流体に混合させることができる流体混合器およびこれを用いた流体混合方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による流体混合器は、以下の(A)〜(D)の構成要件を備えたものである。
(A)長手方向の一端から加圧された流体が供給される管体
(B)管体内に配置され、供給された流体の圧力を急激に低下させて下流側に負圧を発生させるオリフィス
(C)オリフィスの下流側の管体の内側に設けられ、管体と同一内径を有すると共に厚みが2mm以下であり、多孔質材料または多孔性膜よりなる流体吸引管と、流体吸引管の外側に設けられた流体室とを備えたものである。ここに「多孔性膜」とは、多数の小孔をもつ膜をいい、小孔は例えばエッチングまたはプレス等により穿孔されたものである。
【0006】
本発明による流体混合器では、多孔質材料または多孔性膜よりなる流体吸引管を通じて、流体が管体内に吸引され、加圧された流体と混合される。その際、流体吸引管が、管体と同一内径を有しているので、オリフィス下流側の負圧の度合いが大きくなると共に、流体吸引管の厚みが2mm以下と薄肉なので、流体の吸引に対する抵抗が小さくなる。よって、より多量の流体が管体内に吸引される。
【0007】
オリフィスの下流側においては、加圧された流体と流体吸引管により自動的に吸引された流体とが混合されて微細な流体飛沫群または固体の飛翔群が発生するようにしてもよい。ここにいう「流体飛沫群」とは、液体の膜に気体が包まれたマイクロバブルまたはナノバブルだけでなく、エマルジョン(周囲の液と溶け合わない微細液滴)、またはミストあるいはドライミスト(霧状液滴)なども含む。マイクロバブルは粒径10μm〜500μm程度、ナノバブルは粒径0.1μm〜10μm程度のものをいう。また、ミストとは30μm〜500μm程度の粒径をもつ液滴、ドライミストとは1μm〜30μm程度の粒径をもつ液滴をいう。
【0008】
すなわち、加圧された流体として高圧液体が供給された場合、流体吸引管を通じて気体が吸引されればマイクロバブルまたはナノバブルが発生し、周囲の液と溶け合わない液体が吸引されればエマルジョンが発生し、気体と周囲の液と溶け合わない液体とが吸引されればマイクロバブルまたはナノバブルとエマルジョンとが同時に発生する。
【0009】
他方、加圧された流体として高圧気体が供給された場合、流体吸引管を通じて液体または気体が吸引されれば、それらが気流中に混入して混合され、液体のみが吸引されればミストまたはドライミストが発生する。
【0010】
更に、加圧された液体と吸引された液体とが反応して気体の飛沫群または固体の飛翔群を発生すること、あるいは、加圧された気体と吸引された気体とが反応して液体の飛沫群を発生することもありうる。
【0011】
この流体混合器では、流体室が、互いに隔絶された複数の室を有することが好ましい。これら複数の室のうち少なくとも二つに異なる流体を供給することにより、これらの流体を流体吸引管を介して管体内に吸引させ、複数種類の流体を混合させることができるからである。
【0012】
更に、この流体混合器は、流体室に通じる配管と、この配管に設けられた流量調整弁とを備えていることが好ましい。流量調整弁の開度により、流体飛沫群の流量または粒径を調整することが可能となるからである。
【0013】
流体室は、管体および流体吸引管を一周して設けられているようにすることが好ましい。また、管体および流体吸引管は円管であり、流体室は環状であることが好ましい。
【0014】
管体の貫通孔よりも下流側の端部は、出口に近いほど管内の断面積が広くなる形状を有することが好ましい。発生した流体飛沫群の拡散を良くすることができるからである。
【0015】
本発明による流体混合方法は、流体の通路を有する管体の通路内にオリフィスを配置すると共に、オリフィスの下流側近傍の管体の内側に、管体と同一内径を有すると共に厚みが2mm以下であり、多孔質材料または多孔性膜よりなる流体吸引管を設け、管体の通路内に加圧した流体を供給し、その流体の圧力をオリフィスにより急激に低下させて負圧を発生すると共に、流体吸引管を通じて流体を吸引させることにより加圧した流体と吸引された流体とを混合するものである。
【0016】
また、加圧した流体と吸引された流体とを混合して微細な流体飛沫群または固体の飛翔群を発生させるようにしてもよい。
【0017】
あるいは、流体吸引管を通じて複数種類の流体を吸引させることにより、加圧した流体と複数種類の流体とを混合するようにしてもよい。その際、複数種類の流体として、例えば、流体飛沫群を微細化するための流体と、洗浄液とを吸引させるようにすれば、より微細な流体飛沫群を発生させることができると共に洗浄効果を高めることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の流体混合器によれば、流体吸引管を、管体と同一内径を有するようにしたので、オリフィス下流側の負圧の度合いを大きくすることができると共に、流体吸引管の厚みを2mm以下と薄肉にしたので、流体の吸引に対する抵抗を小さくすることができる。よって、より多量の流体を管体内に吸引させ、加圧された流体と混合させることができる。
【0019】
また、本発明の流体混合方法によれば、多量の流体を吸引させて混合させることができる。よって、流体を適宜選択することにより水質浄化,洗浄,冷却あるいは消火など多様な応用が可能である。また、液体からの気体の飛沫群または固体の飛翔群の生成、あるいは気体からの液体の飛沫群の生成などもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0021】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る流体混合器の全体構成を表したものである。なお、本発明の流体混合方法については、この流体混合器の作用に具現化されるものであるので併せて説明する。
【0022】
流体混合器1は、水などの液体Lを収容する槽2内に設置され、加圧流体F0と吸引流体F1とを混合して、液体L中に流体飛沫群Sを生成するものであり、例えば、風呂釜や浴槽などの泡状洗浄剤を発生する泡発生器としても用いられる。加圧流体F0は、例えば、加圧ポンプ3により加圧された加圧液体である。吸引流体F1は、配管4から流体混合器1内に導入されるようになっている。
【0023】
加圧ポンプ3は、例えば、槽2内の液体L(例えば水)を加圧し、加圧流体F0(例えば高圧水)として流体混合器1に供給するものである。なお、加圧ポンプ3は、槽2とは別の槽(図示せず)内の液体を加圧して流体混合器1に供給するようにしてもよい。また、加圧ポンプ3を省略し、加圧流体F0として水道水を供給するようにしてもよい。加圧ポンプ3は水中ポンプでもよい。
【0024】
配管4の一端は後述する流体室40に通じ、他端から吸引流体F1を流体混合器1内に吸引することができるようになっている。具体的には、配管4の他端は例えば大気中に開放されており、吸引流体F1は気体、例えば空気である。配管4には流量調節弁5が設けられていることが好ましい。流量調整弁5の開度により、流体飛沫群Sの流量または粒径を調整することが可能となるからである。
【0025】
図2および図3は、図1に示した流体混合器1の主要部の断面構成を表したものである。この流体混合器1は、例えば、管体10の内部にオリフィス20が配設された構成を有している。管体10は、オリフィス20を境界位置として長手方向に沿って上流側の第1領域10Aと下流側の第2領域10Bとに分かれており、下流側の第2領域10Bに流体吸引管30および流体室40が設けられている。
【0026】
管体10は、例えば、ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリ塩化ビニルもしくはポリアミド等のプラスチック、またはステンレス鋼もしくは黄銅などの金属により構成された円管であり、上流側の第1領域10Aには上述した加圧流体F0が供給され、下流側の第2領域10Bにおいて吸引流体F1が吸引されて流体飛沫群Sが発生するようになっている。管体10の第1領域10A側の端部は、加圧流体F0の供給口であり、上述した加圧ポンプ3または外部の水道管等(図示せず)が接続されている。なお、第1領域10Aには流体圧測定用タップ(図示せず)を設けることもできる。
【0027】
第2領域10B側の端部は、流体飛沫群Sを放出するための出口10Cとなっている。第2領域10B側の端部は、出口10Cに近いほど管内の断面積が広くなる末広がりのテーパ形状を有していることが好ましい。発生した流体飛沫群Sの拡散を良くすることができるからである。なお、加工性または用途などの理由により、断面積一定の直管、または出口10Cに近いほど管内の断面積が狭くなる先細りのテーパ形状であってもよい。
【0028】
加圧流体F0の流量Qは、例えば、円管の内径が11mm前後の場合、10l/min以上80l/min以下であることが好ましく、円管の内径が異なる場合は{(内径)mm/11mm}の比の2乗に比例して増減させることが好ましい。
【0029】
オリフィス20は、加圧流体F0の圧力を急激に低下させて第2領域10Bに負圧を発生させるためのものである。オリフィス20の採用により、この流体混合器1は、特許文献1に記載されたように球状の負圧発生体を管体内に配設するよりも、構造が簡単になり、低コストで容易に作製可能となっており、実用性および普及性に優れたものとなっている。
【0030】
オリフィス20の開口径の管体10の内径に対する比率は、例えば0.3〜0.7であることが好ましい。負圧の大きさを調節でき、吸引流体F1の流量や流体飛沫群Sのサイズを変えることができるからである。
【0031】
流体吸引管30は、管体10の内部に上述した吸引流体F1を供給するためのものであり、管体10と同一内径を有すると共に厚みが2mm以下である。これにより、この流体混合器では、より多量の吸引流体F1を吸引して加圧流体F0に混合させることができるようになっている。
【0032】
流体吸引管30は管体10と同一内径であるので、オリフィス20の開口径の流体吸引管30の内径に対する比率は、管体10の場合と同様に、例えば0.3〜0.7である。これにより、オリフィス20の下流側を急拡大させ、第2領域10Bにおける負圧の度合いを大きくすることができる。
【0033】
また、流体吸引管30の厚みを2mm以下とするのは、流体吸引管30通過時の流動抵抗が厚さと共に増すので、厚すぎると吸引流量が過少または吸引できなくなるからである。
【0034】
流体吸引管30は、ポリエチレンあるいはポリプロピレンなどのプラスチック,ステンレス鋼,黄銅などの金属,セラミックスまたはガラスなどの多孔質材料または多孔性膜よりなる円管である。ここに「多孔性膜」とは、多数の小孔をもつ膜をいい、小孔は例えばエッチングまたはプレス等により穿孔されたものである。多孔質材料の細孔径または多孔性膜の小孔径は、用途に応じて変えることができ、これにより流体飛沫群Sの流量および粒径を制御することもできる。
【0035】
流体吸引管30の管体10との連結構造は特に限定されないが、例えば、管体10の内壁面には段差状の凹部11が設けられ、この凹部11により流体吸引管30が係止されているようにすることができる。
【0036】
流体室40は、液体吸引管30を介して管体10の内部へ吸引流体F1が円滑に吸引されるようにするためのものであり、管体10および流体吸引管30を一周して、環状に設けられている。流体室40の具体的な構成については特に限定されないが、例えば、管体10の第1領域10Aと第2領域10Bとの間には、管体10を一周する間隙を有し、この間隙の管体10内の端部に流体吸引管30が設けられ、間隙の外側は封止部材41で塞がれ、流体吸引管30と封止部材41との間の環状空間が流体室40となっている。なお、封止部材41の構成材料については特に限定されないが、例えば、管体10と同様の材料により構成することができる。封止部材41と管体10との間には、気密用のOリング42を設けることが好ましい。分解が容易となり、流体吸引管30に目詰まり等が生じた際には簡単に交換できるからである。しかし、封止部材41は、接着剤あるいは溶接等により管体10に直接接合されていてもよい。
【0037】
流体室40は、吸引流体F1を吸引するための吸引口43を介して上述した配管4に連通している。この吸引口43には、吸入弁(図示せず)が設けられていることが好ましい。吸入弁の開度を調節することにより、発生する流体飛沫群Sのサイズまたは流量を変えることができるからである。
【0038】
この流体混合器1は、例えば、次のようにして製造することができる。
【0039】
まず、管体10の第1領域10Aおよび第2領域10B並びに封止部材41として、上述したプラスチックを溶融し管体状に押し出すことにより成形したものあるいは射出成形したもの、またはステンレス等の金属管を適当な長さに切断した円管を用意する。これらの円管には、流体吸引管30を係止させるための段差状の凹部11を設けておく。
【0040】
次いで、上述した多孔質円管よりなる流体吸引管30およびオリフィス20を用意し、管体10の第1領域10Aと第2領域10Bの間の間隙に流体吸引層30およびオリフィス20を配置し、凹部11により係止させる。
【0041】
続いて、間隙の外側に、Oリング42を挟んで封止部材41を着脱可能に固定するか、あるいは接着剤あるいは溶接等により管体10に固定する。これにより、流体吸引管30と封止部材41との間に環状の流体室40が形成される。最後に、流体室40に吸引口43を設けて配管4との連通をとり、管体10の第1領域10A側の端部に加圧ポンプ3を接続する。これにより、図1ないし図3に示した流体混合器1が完成する。
【0042】
この流体混合器1では、管体10に加圧流体F0を導くと、オリフィス20の周りでは流路が狭いため高剪断流れとなり第2領域10B側の静圧Pがエネルギー保存式(ベルヌーイの式)を満たすように低くなる。この静圧Pは加圧流体F0の流量がある程度大きくなると大気圧以下(負圧)となる。その結果、吸引流体F1が、配管4,流体室40,および多孔質材料または多孔性膜よりなる流体吸引管30を順に介して管体10の内部に自動的に吸引(自吸)される。吸引された吸引流体F1は高剪断流れによりせん断され、加圧流体F0と混合されて流体飛沫群Sとして放出される。
【0043】
ここでは、流体吸引管30が、管体10と同一内径を有しているので、オリフィス20下流側の第2領域10Bにおける負圧の度合いが大きくなると共に、流体吸引管30の厚みが2mm以下と薄肉なので、吸引流体F1の吸引に対する抵抗が小さくなる。よって、より多量の吸引流体F1が管体10内に吸引され、オリフィス20の後方に生じた高速な循環渦Vxにより吸引流体F1が剪断されて加圧流体F0と混合され、微細な流体飛沫群Sが多量に発生する。
【0044】
このとき、例えば、加圧流体F0に洗浄液を加えれば、洗浄液の洗浄作用および流体飛沫群Sへの汚れの付着作用で効果的な洗浄が行われる。また、洗浄液の導入により表面張力が低下し、流体飛沫群Sのサイズが更に小さくなり、流体飛沫群Sへの汚れ付着効果が高くなる。
【0045】
このように本実施の形態では、流体吸引管30を、管体10と同一内径を有するようにしたので、オリフィス20下流側の第2領域10Bにおける負圧の度合いを大きくすることができると共に、流体吸引管30の厚みを2mm以下と薄肉にしたので、吸引流体F1の吸引に対する抵抗を小さくすることができる。よって、より多量の吸引流体F1を管体10内に吸引させ、加圧流体F0と混合させることができ、多量の流体飛沫群Sを容易に発生させることができる。
【0046】
また、オリフィス20により加圧流体F0の圧力を急激に低下させて第2領域10Bに負圧を発生させるようにしたので、従来のように球状の負圧発生体を管体内に配設するよりも、構造が簡単になり、低コストで容易に作製可能とすることができる。よって、実用性の高い流体飛沫群発生器を実現することができ、広く普及する可能性を期待することができる。
【0047】
(第2の実施の形態)
図4および図5は、本発明の第2の実施の形態に係る流体混合器1の主要部の断面構成を表したものである。この流体混合器1は、流体室40が、複数(例えば四つ)の室40A,40B,40C,40Dを有していることを除いては、第1の実施の形態と同様の構成を有している。よって、対応する構成要素には同一の符号を付して説明する。
【0048】
室40A〜40Dは、例えば、プラスチックまたは金属よりなる仕切り板44により互いに隔絶されている。これらの室40A〜40Dには、各々吸引口43A〜43Dが設けられており、吸引口43A〜43Dにはそれぞれ配管4(図4および図5には図示せず、図1参照。)が接続されている。これにより、この流体混合器1では、室40A〜40Dに複数種類の吸引流体F1〜F4を供給し、それらを流体吸引管30を通じて同時に吸引させることにより、加圧流体F0と吸引流体F1〜F4とを同時に混合させて流体飛沫群Sを発生させることができるようになっている。
【0049】
例えば、吸引流体F1に重曹水、吸引流体F2に酢、吸引流体F3,F4に空気とすれば、吸引流体F1と吸引流体F2との化学反応により、炭酸ガスの流体飛沫群(マイクロバブル)Sを生成することができる。その際、吸引流体F3,F4の空気は混合の促進に寄与することができる。
【0050】
また、例えば、吸引流体F1〜F4のいずれかに洗浄液、それ以外に空気とすれば、洗浄液の洗浄作用および流体飛沫群Sへの汚れの付着作用で効果的な洗浄が行われる。また、洗浄液の導入により表面張力が低下し、流体飛沫群Sのサイズが更に小さくなり、流体飛沫群Sへの汚れ付着効果が高くなる。
【0051】
更に、例えば、吸引流体F1として流体飛沫群Sを微細化するための流体、吸引流体F2として洗浄液、吸引流体F3,F4として空気を吸引させるようにすれば、より微細な流体飛沫群Sを発生させることができると共に洗浄効果を高めることができる。
【0052】
なお、吸引口43A〜43Dに接続された配管4は、吸引流体F1〜F4の種類に応じてそれぞれ別の気体ボンベや液体タンクなどに接続され、あるいは大気中に開放されている。
【0053】
この流体混合器1は、流体室40を形成する際に内部に仕切り板44を設けて室40A〜40Dを形成することを除いては、第1の実施の形態と同様にして製造することができる。
【0054】
この流体混合器1では、管体10に加圧流体F0を導くと、第1の実施の形態と同様にして、オリフィス20の下流側の第2領域10Bにおける静圧Pが負圧となる。その結果、吸引流体F1〜F4が、配管4,流体室40,および流体吸引管30を順に介して管体10の内部に自動的に吸引され、加圧流体F0と混合されて流体飛沫群Sとして放出される。ここでは、流体室40が互いに隔絶された室40A〜40Dを有しているので、これらの室40A〜40Dおよび流体吸引管30を介して複数種類の異なる流体F1〜F4が管体10内に同時に吸引されて同時に混合される。
【0055】
このように上記実施の形態では、流体室40に、互いに隔絶された複数の室40A〜40Dを設けるようにしたので、流体吸引管30を通じて複数種類の吸引流体F1〜F4を同時に吸引させることにより加圧流体F0と吸引流体F1〜F4とを同時に混合することができる。よって、多流体を同時に混合できる多流体混合器を実現することができる。
【0056】
なお、上記実施の形態では、仕切り板44が流体室40内および流体吸引管30を貫通して設けられている場合について説明したが、仕切り板44は、図6に示したように、流体室40内のみに設けられているようにしてもよい。
【0057】
また、上記実施の形態では、流体室40が、管体10を一周していると共に内部に仕切り板44を有する場合について説明したが、室40A〜40Dは、各々独立した別々の流体室として構成されていてもよい。
【0058】
更に、上記実施の形態では、室40A〜40Dにそれぞれ異なる吸引流体F1〜F4を供給する場合について説明したが、室40A〜40Dのうち少なくとも二つについて、異なる吸引流体を供給するようにすればよい。例えば、室40A,40Cに吸引流体F1を供給し、室40B,40Dに別の吸引流体F2を供給するようにしてもよい。
【0059】
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく種々変形可能である。例えば、上記実施の形態では、管体10が円管である場合について説明したが、管体10は、オリフィス20の形状との相対的な関係で下流側に負圧を発生できるものであれば、その形状は任意である。
【0060】
更に、例えば、上記実施の形態では、流体混合器の構成を具体的に挙げて説明したが、全ての構成要素を備える必要はなく、また、他の構成要素を更に備えていてもよい。例えば、噴出特性や吸引特性を向上させるために、管体10の入口および出口10C、並びに流体吸引管30の形状を適宜変えてもよい。
【0061】
加えて、例えば、上記実施の形態において説明した流体の種類、または流量あるいは流体飛沫群の発生条件などは限定されるものではなく、他の流体としてもよく、または他の流量あるいは発生条件としてもよい。例えば、加圧流体F0および吸引流体F1は、流体混合器の使用目的に応じて適宜選択されるものであり、他の気体や液体でもよい。例えば、加圧流体F0としては、上記実施の形態で説明した水のほか、空気、水蒸気、不活性ガス、または、酸素あるいはオゾン等の支燃性ガスあるいは可燃性ガスを用いることができる。吸引流体F1は、上述した空気および洗浄剤のほか、水,消火液,殺虫剤,消毒剤,空気清浄剤,入浴剤,芳香剤あるいは消臭剤等でもよい。加圧流体F0に水、吸引流体F1に水と溶け合わない油等を用いればエマルジョンを発生できる。
【0062】
更にまた、加圧された液体と吸引された液体との化学反応により固体の飛翔群を発生すること、あるいは、加圧された気体と吸引された気体との化学反応により液体の飛沫群を発生することもありうる。
【0063】
この流体混合器は、マイクロバブルまたはナノバブルの発生に使えば、貯水池やダム等の水質浄化、または電子部品の洗浄などに有効である。また、ミストまたはドライミストの発生に使えば、例えば、加湿や気化熱を利用した冷却、またはミストの気化により室内の酸素濃度を燃焼範囲以下に下げる消火に用い、優れた効果を得ることができる。
【0064】
更に、この流体混合器を家庭用のバスポンプ等の小型ポンプに取り付ければ、気泡や入浴剤を好みの部位にあてることが可能なハンディタイプのジェットバスとして利用することも可能であり、体の洗浄と共に効果的な温浴作用および局所的なマッサージ効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る流体混合器の全体構成を表す図である。
【図2】図1に示した流体混合器の構成を表す断面図である。
【図3】図2のIII−III線に沿った断面図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る流体混合器の構成を表す断面図である。
【図5】図4のV−V線に沿った断面図である。
【図6】図5の変形例を表す断面図である。
【符号の説明】
【0066】
1…流体混合器、2…槽、3…加圧ポンプ、4…配管、5…流量調整弁、10…管体、10A…第1領域、10B…第2領域、10C…出口、20…オリフィス、30…流体吸引管、40…流体室、40A〜40D…室、41…封止部材、42…Oリング、43,43A〜43D…吸引口、44…仕切り板、F0…加圧流体、F1〜F4…吸引流体、S…流体飛沫群

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向の一端から加圧された流体が供給される管体と、
前記管体内に配置され、供給された前記流体の圧力を急激に低下させて下流側に負圧を発生させるオリフィスと、
前記オリフィスの下流側の前記管体の内側に設けられ、前記管体と同一内径を有すると共に厚みが2mm以下であり、多孔質材料または多孔性膜よりなる流体吸引管と、
前記流体吸引管の外側に設けられた流体室と
を備えたことを特徴とする流体混合器。
【請求項2】
前記オリフィスの下流側において、前記加圧された流体と前記流体吸引管により自動的に吸引された流体とが混合されて微細な流体飛沫群または固体の飛翔群が発生する
ことを特徴とする請求項1記載の流体混合器。
【請求項3】
前記流体室は、互いに隔絶された複数の室を有する
ことを特徴とする請求項1または2記載の流体混合器。
【請求項4】
前記流体室に通じる配管と、この配管に設けられた流量調整弁とを備えた
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の流体混合器。
【請求項5】
前記流体室は、前記管体および前記流体吸引管を一周して設けられている
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の流体混合器。
【請求項6】
前記管体および前記流体吸引管は円管であり、前記流体室は環状である
ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の流体混合器。
【請求項7】
前記管体の他端部は、出口に近いほど管内の断面積が広くなる形状を有する
ことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の流体混合器。
【請求項8】
流体の通路を有する管体の前記通路内にオリフィスを配置すると共に、前記オリフィスの下流側近傍の前記管体の内側に、前記管体と同一内径を有すると共に厚みが2mm以下であり、多孔質材料または多孔性膜よりなる流体吸引管を設け、前記管体の通路内に加圧した流体を供給し、その流体の圧力を前記オリフィスにより急激に低下させて負圧を発生すると共に、前記流体吸引管を通じて流体を吸引させることにより前記加圧した流体と前記吸引された流体とを混合する
ことを特徴とする流体混合方法。
【請求項9】
前記加圧した流体と前記吸引された流体とを混合して微細な流体飛沫群または固体の飛翔群を発生させる
ことを特徴とする請求項8記載の流体混合方法。
【請求項10】
前記流体吸引管を通じて複数種類の流体を吸引させることにより前記加圧した流体と前記複数種類の流体とを混合する
ことを特徴とする請求項9記載の流体混合方法。
【請求項11】
前記複数種類の流体として、流体飛沫群を微細化するための流体と、洗浄液とを吸引させる
ことを特徴とする請求項10記載の流体混合方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−173631(P2008−173631A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−325905(P2007−325905)
【出願日】平成19年12月18日(2007.12.18)
【出願人】(504159235)国立大学法人 熊本大学 (314)
【Fターム(参考)】