説明

流体混合装置及び方法

【課題】混合効率が高く、しかも夾雑物が引っ掛っても容易に除去することができる流体混合装置及び方法を提供。
【解決手段】配管1を流れる液体に対し配管2から液体又は粉体等を添加した後、半開状態の複数のボールバルブ3A〜3Cを通過させて混合する。各ボールバルブ3A〜3Cは、軸心回りの位相に角度差θがつけられている。複雑な形のスタティックミキサーを設置する必要がなく良好な混合が可能である。さらに、夾雑物で閉塞した時には、バルブを開とすることで夾雑物を解き放つことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体に対し液体や気体、粉体等を合流させた後、配管内を流れている途中で混合するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体に対し、別の液体や粉体、スラリー等を合流(添加を包含する。)させた後、配管内で流れている途中で混合する場合、スタティックミキサ(ラインミキサ)が広く用いられている(例えば特許文献1の第2図)。
【0003】
特許文献2には、配管を屈曲させて水の流れを乱流化させた後、加圧水(気体溶解水)を添加して水と加圧水との混合効率を高めることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平1−109700
【特許文献2】特開2007−136285
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スタティックミキサーは、配管内に乱流化のためのエレメントを配置したものであり、夾雑物が引っ掛かったときや詰まったときには、通水を停止したり、配管を開放したりして掃除する必要がある。
【0006】
特許文献2のように、屈曲配管で乱流度を高めて流体同士を混合するのは、スタティックミキサーで混合する場合に比べて、混合性能が劣る。
【0007】
本発明は、混合性能が高く、しかも夾雑物が引っ掛っても容易に除去することができる流体混合装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明(請求項1)の流体混合装置は、第1の流体が流れる配管と、該配管に第2の流体又は粉体を合流させる合流部と、該合流部の後段の配管に設けられた開閉可能なバルブとからなる混合装置であって、該バルブが半開きとされていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項2の流体混合装置は、請求項1において、前記バルブの前段側の前記配管内の圧力を検知する圧力検知手段を設けたことを特徴とするものである。
【0010】
請求項3の流体混合装置は、請求項1において、前記バルブの前段側と後段側との前記配管内の圧力損失を検知する圧力損失検知手段が設けられていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項4の流体混合装置は、請求項1ないし3のいずれか1項において、前記バルブは、ボールバルブ又はバタフライバルブであることを特徴とするものである。
【0012】
請求項5の流体混合装置は、請求項4において、複数個の前記バルブが直列に設けられており、隣接するバルブのバルブ軸心線周りの位相が異なることを特徴とするものである。
【0013】
請求項6の流体混合方法は、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の流体混合装置を用いて流体を混合する流体混合方法であって、前記バルブに夾雑物が引っ掛ったときにバルブの開度を変える操作を行って夾雑物を解き放つことを特徴とするものである。
【0014】
請求項7の流体混合方法は、請求項6において、前記流体混合装置は、請求項2に記載のものであり、前記圧力検知手段により連続的に又は定期的に前記配管内の圧力を測定し、該圧力が所定以上増加したときに、前記バルブの開度を変える操作を行うことを特徴とするものである。
【0015】
請求項8の流体混合方法は、請求項6において、前記流体混合装置は、請求項3に記載のものであり、前記圧力損失検知手段により連続的に又は定期的に前記配管内の圧力損失を測定し、該圧力損失が所定以上増加したときに、前記バルブの開度を変える操作を行うことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の装置及び方法では、合流部にて流体を合流させ、半開状態のバルブを通過させることにより乱流化を促進させ、十分に混合する。
【0017】
バルブの弁体に夾雑物が付着したときには、弁体の開度を変える操作を行うことにより、夾雑物が除去される。
【0018】
バルブの前段側の配管内の圧力を検知する圧力検知手段を設け、この圧力検知手段により連続的に又は定期的にバルブの前段側の配管内の圧力を測定し、この圧力が所定以上増加したときに、バルブに夾雑物が引っ掛かったと判断し、バルブの開度を変える操作を行うようにすることが好ましい。
【0019】
あるいは、バルブの前段側と後段側との配管内の圧力損失を検知する圧力損失検知手段を設け、この圧力損失検知手段により連続的に又は定期的にバルブの前段側と後段側との配管内の圧力損失を測定し、この圧力損失が所定以上増加したときに、バルブに夾雑物が引っ掛かったと判断し、バルブの開度を変える操作を行うようにしてもよい。
【0020】
このようにすることにより、夾雑物により配管が閉塞して該配管内の圧力が増大した状態のまま流体混合装置を運転することによるエネルギーの浪費や、この配管の閉塞による流量の低下を防止することが可能となる。また、バルブに夾雑物が引っ掛かっていないときにバルブの開度変更操作を行ってしまうような無駄を省くことが可能となり、効率的に流体混合装置を運転することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施の形態に係る混合装置の模式的な断面図である。
【図2】ボールバルブの一部断面図である。
【図3】バタフライバルブの一部断面図である。
【図4】実施の形態に係る混合装置の模式的な断面図である。
【図5】実施の形態に係る混合装置の模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、第1,2図を参照して第1の実施の形態について説明する。
【0023】
第1図の通り、この実施の形態では、配管(主配管)1中を流れる流体A(この実施の形態では液体)に対し枝配管2から流体Bが添加される。流体Bとしては、薬液(例えば、凝集剤、pH調整剤、防食剤、殺菌剤などの薬液)、スラリー、気体溶解水などの各種の液体のほか、空気、窒素、酸素、炭酸ガスなどの気体であってもよい。また、流体Bの代わりに粉体を添加することも可能である。
【0024】
この配管1の下流側に複数個のボールバルブ3が直列に接続配置されている。この実施の形態では、3個のボールバルブ3A,3B,3Cが設置されているが、設置個数はこれに限られない。ただし、2個以上が好ましく、特に3〜4個程度が好ましい。
【0025】
各ボールバルブ3は、バルブボディー4内にボール(弁体)5を配置したものであり、このボール5に直径方向に孔6が貫設されている。ボールバルブ3の構成は特に限定されるものではなく、各種のものを用いることができる。一般的なボールバルブの構成を第2図に示す。ボール5は、ステム7によって矢印Pの如く回動される。ボール5の外周面はボディー4の内周面に保持されたシート8と摺動する。
【0026】
第2図では、ボール5の孔6がボールバルブ3の軸心線L方向を指向しており、全開状態となっている。第1図は、夾雑物を解き放つためのバルブ開閉操作を行っていない、流体混合装置の通常運転時を示しており、この流体混合装置の通常運転時には、各ボールバルブ3(3A〜3C)のボール5は半開状態とされている。
【0027】
この流体混合装置の通常運転時におけるボールバルブ3の開度は、全開に対して50〜95%、特に60〜80%程度が好ましい。各バルブ3の前後での差圧は0.1〜12.5kPa、特に0.4〜4kPaとするのが好ましい。なお、通常、ボールバルブは半開きで使用するとボール部分の摩耗が生じるため、半開きでの使用に適さない。これは、ボール部分に摩耗が生じた場合、弁を閉じたときに漏れが生じる恐れがあるためである。しかしながら、本発明においては、弁を閉じて完全に配管を遮断する必要はないため、多少摩耗が生じても流体混合装置としての機能に問題はない。
【0028】
この実施の形態では、各ボールバルブ3同士の間に接続用の短い直管状の配管10が介在されているが、この配管10を省略してボールバルブ3同士を直結してもよい。また、直管状の配管10の代わりに、直角なL字形又は斜めに屈曲したく字形の配管を用いてもよい。また、配管10は分岐を有した丁型部材などであってもよく、配管10にインライン計器が設けられていてもよい。
【0029】
液の合流部から最初のバルブ3Aまでの距離aや、複数の直列配置のバルブ3A,3B間、3B,3C間の間隔bは、できるだけ小さいことが好ましい。具体的には、a,bは配管径dに対して10倍以内、特に5倍以内、とりわけ3倍以内とするのが好ましい。
【0030】
第1図では、各ボールバルブ3のステムの軸心は紙面と垂直方向に示されているが、本発明では隣接するボールバルブ3のステム7の軸心線方向は平行でないことが望ましい。
【0031】
即ち、1番目のボールバルブ3Aのステム軸心線方向が第2図の如くボールバルブ軸心線L方向に対し12時方向にある場合、2番目のボールバルブ3Bのステム軸心線方向は12時方向に対し角度θだけ回転した方向となっていることが好ましい。この角度差(軸心線周りの位相差)θは15°〜165°特に30°〜150°程度が好適である。2番目と3番目及びそれ以降のボールバルブ同士の角度差も同様であることが好ましい。
【0032】
なお、ボールバルブを2個だけ設置する場合、角度差θは約60〜120°が好適であり、約90°が最も好ましく、約60°がその次に好ましい。ボールバルブを3個設ける場合は、隣接するボールバルブの角度差θは約60〜120°が好適であり、約90°が最も好ましく、約60°又は約120°がその次に好ましい。
【0033】
[第2の実施の形態]
第1,2図では、ボールバルブ3が用いられているが、第3図に示すバタフライバルブ20を用いてもよい。
【0034】
第3図のバタフライバルブ20は、円環状のボディー21内に円板状のディスク(弁体)22を回動自在に配置し、ステム23によって矢印P方向に回動させるようにしたものである。バタフライバルブ20の開度は全開に対して30〜85%、特に40〜70%程度が好ましい。1つのバルブの前後での差圧は0.1〜12.5kPa、特に0.4〜4kPaとするのが好ましい。
【0035】
バタフライバルブを設置する場合も、ボールバルブ20の場合と同様に、隣接するバタフライバルブに角度差θを設けるのが好ましい。好ましい角度差はボールバルブの場合と同様である。
【0036】
バルブの種類は、液流路における乱流促進の面から、回転式液路遮断型のバルブ(バタフライバルブ又はボールバルブ)が好ましく、夾雑物による混合装置閉塞時にバルブ全開にした時にバルブ通過箇所形状が配管形状に近いことからボールバルブがより好ましい。中でも、配管径と概同寸法のバルブ部断面積を得ることができるために、穴のサイズが配管径に近いボールバルブが好ましく、フルポア型のボールバルブが最も好ましい。ただし、バルブはゲート式液路遮断型のバルブであってもよい。
【0037】
ゲート式液路遮断型のバルブを設置する時には、前段のバルブと次のバルブの角度差は、30°以上であることが好ましく、90°以上がより好ましい。バルブを2個設置するときには、角度差120°とするのが最も好ましく、180°とするのが次に好ましく、90°とするのがその次に好ましい。
【0038】
以上、説明した実施の形態に係る流体混合装置によって液体同士、液体と粉体などを効率よく混合することができる。
【0039】
この装置の方法によれば、複雑な形のスタティックミキサーを設置する必要がなく良好な混合が可能である。さらに、夾雑物が引っ掛ったり閉塞した時には、バルブの開度を変えることにより夾雑物を解き放つことができる。例えば、半開状態のバルブを全開又は全閉とした後、半開状態に戻したり、半開状態の開度を変えたりすることを1回以上、より好ましくは複数回行うことにより、付着した夾雑物を解き放つことができる。なお、このバルブ開閉操作の回数が多いほど夾雑物の剥離効果が高くなるが、バルブ開閉操作の回数が多くなると、例えばバルブが手動式である場合には操作者の労力が増大し、バルブが電動式である場合には消費電力が増大するため、これらの両方を考慮し、一般的には、3〜5回のバルブ開閉往復操作(バルブを半開状態から全開又は全閉とした後、半開状態に戻すまでを1回とする操作)を行うことが最も効果的である。
【0040】
バルブに引っ掛かった夾雑物を取り除くためにバルブ開閉操作を行う際には、バルブの開閉範囲を、開方向及び閉方向ともにできるだけ広範囲とすることが好ましい。従って、流体混合装置が、バルブが瞬間的に全閉とされることを許容するものである場合には、バルブ開閉操作におけるバルブの開閉範囲を、全閉から全開までとすることが好ましい。
【0041】
この実施の形態では、液体同士または液と粉体の合流を配管1,2で行っているので、別途槽を設ける必要がない。
【0042】
[第3の実施の形態]
以下、第4図を参照して第3の実施の形態について説明する。
【0043】
この実施の形態では、枝配管2の後段側且つ最前段のバルブ3Aの前段側(即ちバルブ3Aの直前)の配管1に、該配管1内の圧力を検知する圧力検知手段としての圧力計11が設けられている。また、この実施の形態では、該圧力計11の測定値に基づいて各バルブ3(3A〜3C)を制御するバルブ制御装置12が設けられており、各バルブ3は、該バルブ制御装置12からの作動信号により開閉作動するように構成されている。なお、バルブ制御装置12からの作動信号により開閉作動するバルブ3としては、例えば電動式バタフライ弁、電動式ボールバルブ、電動式ゲートバルブ等が好適であるが、各種の市販品を用いることができる。
【0044】
圧力計11は、流体混合装置の運転開始後、連続的に又は定期的に配管1内の圧力を測定する。この圧力計11による測定を定期的に行う場合には、1〜96時間おき、特に8〜48時間おきに測定を行うことが好ましい。バルブ制御装置12は、夾雑物を解き放つためのバルブ開閉操作を行っていない通常運転時には、各バルブ3を所定の開度にて半開状態とする。なお、通常運転時における各バルブ3の開度の好適範囲は、前述の通りである。このバルブ制御装置12は、流体混合装置の運転開始後、配管1内が定常状態となったときの圧力計11の測定値(以下、この測定値を初期圧力値という。)を記憶し、その後の圧力計11の測定値とこの初期圧力値との差を演算し、この初期圧力値からの配管1内の圧力増加量が所定値以上となったときには、バルブ3に夾雑物が引っ掛かったと判定し、各バルブ3を開閉作動させるように構成されている。この際、初期圧力値の110%以上、特に120%以上の圧力値を設定圧力値とし、圧力計11の測定値がその設定圧力値以上となったときに、あるいは圧力計11の測定値が、30kPa以上に設定した設定圧力値以上となったときに、バルブ3に夾雑物が引っ掛かったと判断し、各バルブ3を開閉作動させることが好ましい。この場合、バルブ制御装置12は、例えば、半開状態の各バルブ3を所定時間(好ましくは1〜5秒、特に好ましくは2〜3秒)全開又は全閉とした後、半開状態に戻したり、半開状態の開度を変えたりすることを所定回数(前述の通り、好ましくは複数回、特に好ましくは3〜5回)行うように構成されている。なお、初期圧力値は、経験則等により予め設定されていてもよい。あるいは、予め配管1内の圧力の上限値を設定しておき、圧力計11の測定値がこの設定値を超えた場合に、各バルブ3を開閉作動させるようにバルブ制御装置12を構成してもよい。
【0045】
流体混合装置の最後のバルブ3Cの後段側に、配管1内の圧力を変動させる圧力変動要因が存在する場合には、この圧力変動要因に起因する配管1内の圧力変動の周期を把握しておき、所定の条件の下で、夾雑物による配管1の閉塞判断を行うものとする。例えば、バルブ3の後段側の圧力変動要因としては、圧力式砂濾過器が挙げられる。バルブ3の後段側にこのような濾過器が設けられている場合には、濾過器の逆洗直後において、夾雑物による配管1の閉塞判断を行うことが好ましい。
【0046】
この実施の形態のその他の構成は、前述の第1図と同様であり、第4図において第1図と同一符号は同一部分を示している。
【0047】
このように構成された流体混合装置にあっては、バルブ3(3A)の直前の配管1内の圧力が初期圧力よりも所定以上増加したときに、バルブ制御装置12が、バルブ3に夾雑物が引っ掛かったと判断し、各バルブ3を開閉動作させて夾雑物を解き放つ。これにより、夾雑物により配管1が閉塞して該配管1内の圧力が増大した状態のまま流体混合装置を運転することによるエネルギーの浪費や、この配管1の閉塞による流量の低下を防止することが可能となる。また、バルブ3に夾雑物が引っ掛かっていないときに各バルブ3の開度変更操作を行ってしまうような無駄を省くことが可能となり、効率的に流体混合装置を運転することが可能となる。
【0048】
なお、この実施の形態では、圧力計11の測定値に基づいてバルブ制御装置12が自動的に各バルブ3を開閉作動させるように構成されているが、作業者が定期的に圧力計11の測定値を読み取り、この圧力計11の表示値が運転開始時の値(又は予め設定された設定値)から所定以上増加したときに、バルブ3に夾雑物が引っ掛かったと判断し、該作業者が手動で又はバルブ制御装置を操作して各バルブ3を開閉させるようにしてもよい。この場合、例えば圧力計11としてアナログ式圧力計を用いた場合には、初期圧力値をこの圧力計11の表示面にマーキングしておくことにより、配管1内の圧力の初期圧力値からの増加量を容易に読み取ることができる。
【0049】
[第4の実施の形態]
以下、第5図を参照して第4の実施の形態について説明する。
【0050】
この実施の形態では、枝配管2の後段側且つ最前段のバルブ3Aの前段側(即ちバルブ3Aの直前)の配管1に、該配管1内の圧力を検知する圧力計11Aが設けられ、最後段のバルブ3Cの後段側(即ちバルブ3Cの直後)の配管1に、該配管1内の圧力を検知する圧力計11Bが設けられている。即ち、この実施の形態では、該圧力計11A,11Bにより、バルブ3(3A〜3C)群の前後の圧力損失を検知するための圧力損失検知手段が構成されている。これらの圧力計11A,11Bは、互いに同期して連続的に又は定期的に配管1内の圧力を測定する。この圧力計11A,11Bによる測定を定期的に行う場合には、1〜96時間おき、特に8〜48時間おきに測定を行うことが好ましい。この実施の形態では、該圧力計11A,11Bは、第4図の流体混合装置における圧力計11と同様のものである。
【0051】
この実施の形態では、バルブ制御装置12は、該圧力計11A,11Bの測定値の差、即ちバルブ3(3A〜3C)群の前後の圧力損失を演算し、この圧力損失に基づいて各バルブ3(3A〜3C)を制御するように構成されている。具体的には、この実施の形態では、バルブ制御装置12は、流体混合装置の運転開始後、配管1内が定常状態となったときの圧力計11A,11Bの測定値から得られた圧力損失(以下、これを初期圧力損失という。)を記憶し、その後の圧力計11A,11Bの測定値から得られる圧力損失とこの初期圧力損失との差を演算し、この初期圧力損失からの配管1内の圧力損失の増加量が所定値以上となったときには、バルブ3に夾雑物が引っ掛かったと判定し、各バルブ3を開閉作動させるように構成されている。この際、初期圧力損失の150%以上、特に200%以上の圧力損失を設定圧力損失とし、圧力計11A,11Bの測定値から得られた圧力損失がその設定圧力損失以上となったときに、あるいは圧力計11A,11Bの測定値から得られた圧力損失が、5kPa以上に設定した設定圧力損失以上となったときに、バルブ3に夾雑物が引っ掛かったと判断し、各バルブ3を開閉作動させることが好ましい。各バルブ3の開閉作動方法は、第4図の流体混合装置と同様である。なお、初期圧力損失は、経験則等により予め設定されていてもよい。あるいは、予め経験則等により圧力損失の上限値を設定しておき、圧力計11A,11Bの測定値から得られた圧力損失がこの設定値を超えた場合に、各バルブ3を開閉作動させるようにバルブ制御装置12を構成してもよい。この実施の形態でも、バルブ制御装置12は、夾雑物を解き放つためのバルブ開閉操作を行っていない通常運転時には、各バルブ3を所定の開度にて半開状態とする。
【0052】
この実施の形態のその他の構成は、前述の第1図と同様であり、第4図において第1図と同一符号は同一部分を示している。
【0053】
このように構成された流体混合装置にあっては、バルブ3(3A〜3C)群の前後の圧力損失が初期圧力損失よりも所定以上増加したときに、バルブ制御装置12が、バルブ3に夾雑物が引っ掛かったと判断し、各バルブ3を開閉動作させて夾雑物を解き放つ。これにより、夾雑物により配管1が閉塞して該配管1内の圧力が増大した状態のまま流体混合装置を運転することによるエネルギーの浪費や、この配管1の閉塞による流量の低下を防止することが可能となる。また、バルブ3に夾雑物が引っ掛かっていないときに各バルブ3の開度変更操作を行ってしまうような無駄を省くことが可能となり、効率的に流体混合装置を運転することが可能となる。
【0054】
上記の実施の形態でも、圧力計11A,11Bの測定値から得られた圧力損失に基づいてバルブ制御装置12が自動的に各バルブ3を開閉作動させるように構成されているが、作業者が定期的に圧力計11A,11Bの測定値を読み取って圧力損失を求め、この圧力損失が運転開始時の圧力損失(又は予め設定された設定値)から所定以上増加したときに、該作業者が手動で又はバルブ制御装置を操作して各バルブ3を開閉させるようにしてもよい。
【0055】
この実施の形態では、バルブ3Aの直前の配管1に第1の圧力計11Aを設けると共に、バルブ3Cの直後の配管1に第2の圧力計11Bを設け、これらの圧力計11A,11Bの測定値の差をバルブ3(3A〜3C)群の前後の圧力損失としているが、バルブ3(3A〜3C)群の前後の圧力損失を測定する手段はこれに限定されない。例えば、このバルブ3(3A〜3C)群が測定領域となるように、流体混合装置に差圧計を設けることもできる。バルブ3Cの後段側の配管1に大気開放部が存在する場合には、バルブ3Cの後段側の圧力を大気圧とし、バルブ3Aの前段側の配管1に設けられた圧力計11Aの測定値をもって、バルブ3(3A〜3C)群の前後の圧力損失とするか、あるいは、バルブ3Cの直後から大気開放部までの配管1内の圧力損失を補正した後に、バルブ3Aの前段側の配管1に設けられた圧力計11Aの測定値をもって、バルブ3(3A〜3C)群の前後の圧力損失とすることもできる。
【0056】
本発明装置を凝集剤の添加に用いる場合には、SSを含む排水が流れる配管に無機凝集剤とpH調整剤をそれぞれ添加し、半開きの各バルブを通過させることにより効率よく混合することができる。
【実施例】
【0057】
次に、実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限りこの実施例の記載に限定されるものではない。
【0058】
<実施例1>
第4図の流体混合装置を用い、下記の条件にて有機性の工場排水の凝集処理を行った。
流体A: 有機性の工場排水(流量:10m/h)
流体B: 10%(as Al)のポリ塩化アルミニウム水溶液(添加量:300mg/L)
バルブ3A〜3C: ボールバルブ
通常運転時における各バルブ3A〜3Cの開度:70%
バルブ3Aと3Bの角度差θ:90°
バルブ3Bと3Cの角度差θ:90°
運転開始後、圧力計11の測定値が50kPa以上となったときにバルブ3A〜3Cを全て開放し、2秒後に元の開度に戻した。その後、圧力計11の測定値が50kPa以上となる度に、バルブ3A〜3Cを全て開放し、2秒後に元の開度に戻した。
【0059】
30日間の通水試験中、流体混合装置を通過した流体の流量が、運転開始時の流量の90%を下回ることはなく、良好な凝集処理が行われた。
【0060】
<実施例2>
第5図の流体混合装置を用い、下記の条件にて実施例1と同じ工場排水の凝集処理を行った。
圧力計11Aと圧力計11Bとにより、バルブ3A〜3Cにおける圧力損失を測定したこと以外は、実施例1と同じ条件で凝集処理を行った。
運転開始直後の圧力計11Aの測定値と圧力計11Bの測定値との差(初期圧力損失)は4kPaであった。その後、圧力損失の測定値が10kPa以上となったときにバルブ3A〜3Cを全て開放し、2秒後に元の開度に戻した。その後、圧力損失の測定値が10kPa以上となる度に、バルブ3A〜3Cを全て開放し、2秒後に元の開度に戻した。
【0061】
30日間の通水試験中、流体混合装置を通過した流体の流量が、運転開始時の流量の90%を下回ることはなく、良好な凝集処理が行われた。
【0062】
<参考例>
第1図の流体混合装置を用い、バルブ3A〜3Cの開閉操作を一切行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして有機性の工場排水の凝集処理を行った。
【0063】
30日間の通水運転中、良好な凝集処理が行われたが、運転開始時の流量に比べ、30日後の流量は約30%減少した。
【0064】
運転停止後にバルブ3Aを確認したところ、夾雑物が引っ掛かっているのが確認された。
【符号の説明】
【0065】
1 配管
3 ボールバルブ
5 ボール
7 ステム
11,11A,11B 圧力計
12 バルブ制御装置
20 バタフライバルブ
22 ディスク
23 ステム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の流体が流れる配管と、
該配管に第2の流体又は粉体を合流させる合流部と、
該合流部の後段の配管に設けられた開閉可能なバルブとからなる混合装置であって、
該バルブが半開きとされていることを特徴とする流体混合装置。
【請求項2】
請求項1において、前記バルブの前段側の前記配管内の圧力を検知する圧力検知手段を設けたことを特徴とする流体混合装置。
【請求項3】
請求項1において、前記バルブの前段側と後段側との前記配管内の圧力損失を検知する圧力損失検知手段が設けられていることを特徴とする流体混合装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、前記バルブは、ボールバルブ又はバタフライバルブであることを特徴とする流体混合装置。
【請求項5】
請求項4において、複数個の前記バルブが直列に設けられており、隣接するバルブのバルブ軸心線周りの位相が異なることを特徴とする流体混合装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の流体混合装置を用いて流体を混合する流体混合方法であって、
前記バルブに夾雑物が引っ掛ったときにバルブの開度を変える操作を行って夾雑物を解き放つことを特徴とする流体混合方法。
【請求項7】
請求項6において、前記流体混合装置は、請求項2に記載のものであり、
前記圧力検知手段により連続的に又は定期的に前記配管内の圧力を測定し、該圧力が所定以上増加したときに、前記バルブの開度を変える操作を行うことを特徴とする流体混合方法。
【請求項8】
請求項6において、前記流体混合装置は、請求項3に記載のものであり、
前記圧力損失検知手段により連続的に又は定期的に前記配管内の圧力損失を測定し、該圧力損失が所定以上増加したときに、前記バルブの開度を変える操作を行うことを特徴とする流体混合方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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