説明

流出微粒子土壌沈殿回収槽

【課題】 泥水中に含まれる赤土、粘土質等の微粒子土壌を効果的に沈殿させ、しかも低コストで効率的に回収可能とせしめるよう、上下二重構造のフィルターコンクリートを使用した伏流水濾過方式の沈殿回収槽を提供することを目的とする。
【解決手段】 所定長のコンクリート溝1の内底部とその上方に、2枚のフィルターコンクリート敷板5、6を間隔を置いて設置し流水路9、10を上下2段に亘って形成し、前記コンクリート溝における排水口近傍に、下方の流水路を閉鎖するフィルターコンクリート遮蔽板7を縦配設して構成される個槽Aを、複数個、前後方向に、コンクリート溝1と下方のフィルターコンクリート敷板5、6を互いに直結させる一方、上方のフィルターコンクリート敷板間に、下方の流水路への落水口となる隙間12を介して連設して構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流出微粒子土壌沈殿回収槽に関する。
【背景技術】
【0002】
山間部の乱開発、風水害等により流出する赤土、粘土質等の微粒子土壌は、泥水となって河川へ流出し、川床の生物環境を破壊し、やがては海洋や湖沼等に達してこれらも汚染する。
【0003】
従来、このような泥水の河川への流出を防ぐために、コンクリート製の沈殿槽、吸着フィルター、蛇籠等が用いられている。
【特許文献1】特になし
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来使われている一般的なコンクリート槽では、微粒子土壌を沈殿せしめるまでの時間的余裕が稼げず、吸着フィルターは土壌の回収にコストがかかりすぎ、さらに昔ながらの蛇籠は効果的ではあるが、キープした土壌回収が困難である等々の問題がある。
【0005】
本発明は、上記した従来の技術が有するこのような問題点に鑑みなされたもので、泥水中に含まれる赤土、粘土質等の微粒子土壌を効果的に沈殿させ、しかも低コストで効率的に回収可能とせしめるよう、上下二重構造のフィルターコンクリートを使用した伏流水濾過方式の沈殿回収槽を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る流出微粒子土壌沈殿回収槽は、所定長のコンクリート溝の内底部とその上方に、2枚のフィルターコンクリート敷板を間隔を置いて設置し流水路を上下2段に亘って形成し、前記コンクリート溝における排水口近傍に、下方の流水路を閉鎖するフィルターコンクリート遮蔽板を縦配設して構成される個槽を、複数個、前後方向に、コンクリート溝と下方のフィルターコンクリート敷板を互いに直結させる一方、上方のフィルターコンクリート敷板間に、下方の流水路への落水口となる隙間を介して連設したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、以上のとおり構成されるものであるから、山間部の乱開発、風水害等により流出する泥水から赤土、粘土質等の微粒子土壌のみを効果的に沈殿させることができ、河川、湖沼、海洋等の微粒子土壌による汚染を完全に防止することができる。また、使用の限界が容易に判り、堆積した土砂の除去作業(部分的な除去作業を含めて)を低コストで効率良く行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明に係る流出微粒子土壌沈殿回収槽の使用状態を示す縦断側面図であり、図2は、同上の一部を切り欠いた平面図であり、図3は、同上における個槽を示す部分斜視図である。
【0009】
当該個槽Aは、所定長の略U字型のコンクリート溝1と、2枚のフィルターコンクリート敷板5、6と、フィルターコンクリート遮蔽板7とを主要部材として構成されている。
【0010】
上記略U字型のコンクリート溝1は図1に示したように、一般的なコンクリート材料を用いて形成されており、側壁内側のやや中央に、フィルターコンクリート敷板6用の水平な定置段部2、2、側壁内側の上方にコンクリート蓋8用の傾斜した定置段部3、3が各々対向して設けられている。また、略U字型のコンクリート溝1の排水口近傍における前記定置段部2、2と内底部bの間に、フィルターコンクリート遮蔽板7用の縦溝4、4が各々対向して設けられている。
【0011】
上記2枚のフィルターコンクリート敷板5、6のうち、下方のフィルターコンクリート敷板5は、コンクリート溝1の内底部に嵌合定置可能な幅およびコンクリート溝1と同一長さに、かつ上方のフィルターコンクリート敷板6と比べて厚目(約3倍)に形成されている。
【0012】
上記フィルターコンクリート敷板5は、砂利がセメントで固められていなる砂利層5aと、平均直径50mm〜100mmの粗骨材が無機質混和剤を添加したセメントによって固められてなる粗骨材層5bの二層構造に形成されている。
【0013】
上記無機質混和剤は、食品添加物である無機質の酸化鉄、塩化アンモニア、塩化カリウム、塩化カルシウム等をバランス良く配合したもので、これをフィルターコンクリートに加えることによりコンクリート密度と付着性能を高めることができる。
【0014】
上記粗骨材層5bは、粗骨材とセメントと無機質混和剤とを3:1:1の割合で混練することによって形成される。
【0015】
上記フィルターコンクリート敷板6は、コンクリート溝1の定置段部2、2上へ定置固定可能な幅およびコンクリート溝1(およびフィルターコンクリート敷板5)よりも短く形成され、かつ既述のように下方のフィルターコンクリート敷板5と比べて薄目(約3分の1の厚さ)に形成されている。
【0016】
上記フィルターコンクリート敷板6は、平均直径50mm〜100mmの粗骨材が無機質混和剤を添加したセメントによって固められてなる粗骨材層6aのみの一層構造に形成されている。この無機質混和剤の種類およびこれと粗骨材とセメントとの配合割合も既述フィルターコンクリート敷板5と同様である。
なお、図中6bは、フィルターコンクリート敷板6の上面前後部位に付設された取手を示す。
【0017】
このようにコンクリート溝1の内底部に嵌合定置したフィルターコンクリート敷板5と、定置段部2、2に定置固定したフィルターコンクリート敷板6とにより、コンクリート溝1の内部に流水路9、10が上下2段に亘って形成されている。
【0018】
上記フィルターコンクリート遮蔽板7は、前記コンクリート溝1の内底部にフィルターコンクリート敷板5を嵌合定置した状態において両側の縦溝4、4に嵌挿可能な幅と長さ有し、かつ縦溝4、4と同一高さに形成されている。
【0019】
上記フィルターコンクリート遮蔽板7は、前記フィルターコンクリート敷板6と同じ材料にて形成され、外周に矩形状の金属製の補強枠7aが嵌合固定されている。
【0020】
上記コンクリート蓋8は、既述コンクリート溝1と同じコンクリート材料を用いて形成され、コンクリート溝1の斜めの定置段部3、3に嵌合定置可能な幅およびコンクリート溝1と同一長さに、かつ上方のフィルターコンクリート敷板6とほぼ同一厚さに形成されている。
【0021】
上記コンクリート蓋8は、その両側下方に、コンクリート溝1の定置段部3、3に対応する傾斜縁8a、8aが各形成されると共に、前後両端の中央上方に操作用の切欠き8b、8bが各形成されている。
【0022】
図面において、11は、下方のフィルターコンクリート敷板5の上面に複数個、間隔を置いて接着配置した目詰り防止石であり、これにより突起石下流部に強く巻きこむ乱水流が発生して微粒子土壌を流水路途中で可能な限り堆積させることなく、透水性を長期に亘って維持できるようになっている。
【0023】
本発明は、以上のように構成される個槽A・・・を図1および図2に示したように、複数個、前後方向に、各コンクリート溝1と下方のフィルターコンクリート敷板5をおよびコンクリート蓋8同志を互いに直結させる一方、上方のフィルターコンクリート敷板6間に隙間12を介して連設することによって構成される。
【0024】
このさい、フィルターコンクリート敷板6の上下部に形成されている流水路9、10中、下方の流水路9は、フィルターコンクリート遮蔽板7によって各々閉鎖される一方、上方の流水路10は、連通接続される。
【0025】
また、上記上方のフィルターコンクリート敷板6は、下方のフィルターコンクリート敷板5よりも短目に形成され、かつフィルターコンクリート敷板5の長手方向のほぼ中央に配設されているため、各フィルターコンクリート敷板6間に既述のように隙間12が形成され、これがフィルターコンクリート敷板6上方の流水路10から下方の流水路9への落水口10aとなる。
【0026】
使用に際しては、図1に示したように、回収槽後部のコンクリート溝1内に流入した赤土、粘土質等の微粒子土壌を含む泥水は、先ず1槽目の流水路9へ進入し、透水性のフィルターコンクリート遮蔽板7およびフィルターコンクリート敷板5を濾過されつつ通過して第2槽目の流水路9へ到達する。
【0027】
そして、第1槽目が微粒子土壌によって目詰りを起し、流水路9内に微粒子土壌が堆積されてくると、第一槽目の濾過を終えた泥水は、上方のフィルターコンクリート敷板6を濾過されつつ通過して上方の流水路10へ湧き上がり、第2槽目との間に形成された落水口10aから落下して第2槽目の流水路9へ到達し、既述第1槽目と同様の作用を繰り返す。
【0028】
さらに、第3槽目、第4槽目、第5槽目・・・と順次濾過が繰り返されて、泥水は最終的には清水となって流下し、回収槽から河川、湖沼、海洋等に排水される。なお、全ての槽上方の流水路10を水が流れる状態となった時点で各フィルターコンクリートの濾過の限界としてバキューマーで内部土砂を除去する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る流出微粒子土壌沈殿回収槽の使用状態を示す縦断側面図である。
【図2】同上の一部を切り欠いた平面図である。
【図3】同上における個槽を示す部分斜視図である。
【符号の説明】
【0030】
A 個槽
1 コンクリート溝
5、6 フィルターコンクリート敷板
7 フィルターコンクリート遮蔽板
9、10 流水路
10a 落水路
12 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定長のコンクリート溝の内底部とその上方に、2枚のフィルターコンクリート敷板を間隔を置いて設置し流水路を上下2段に亘って形成し、前記コンクリート溝における排水口近傍に、下方の流水路を閉鎖するフィルターコンクリート遮蔽板を縦配設して構成される個槽を、複数個、前後方向に、コンクリート溝と下方のフィルターコンクリート敷板を互いに直結させる一方、上方のフィルターコンクリート敷板間に、下方の流水路への落水口となる隙間を介して連設したことを特徴とする流出微粒子土壌沈殿回収槽。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−26548(P2006−26548A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−210186(P2004−210186)
【出願日】平成16年7月16日(2004.7.16)
【出願人】(395012857)
【出願人】(504262373)
【出願人】(504261136)
【Fターム(参考)】