説明

流動体反射鏡及びこれを用いた照明装置、並びに、流動体反射鏡を用いた反射望遠鏡

【課題】 モーゼ効果を利用した焦点可変の流動体反射鏡を提供する。
【解決手段】 円柱状の封入容器11と、封入容器11を支持するヨーク12と、ヨーク12の第1の部分12bには巻回されたコイル13とを備えている。封入容器11には、非磁性流動体物質14,15が封入されており、これら非磁性流動体物質14,15の体積磁化率が互いに異なっている。そして、封入容器11の一方の主面11aが光の入出射面となり、封入容器11の他方の主面11b又は非磁性流動体物質14,15の界面が反射面となる。本発明によれば、封入容器11内に非磁性流動体物質14,15を封入し、封入容器11の他方の主面11b側に配置されたヨーク12を介して磁界を印加する構成であることから、光の入出射面である封入容器11の一方の主面11aを遮ることなく、光路を確保することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は流動体反射鏡及びこれを用いた照明装置、並びに、流動体反射鏡を用いた反射望遠鏡に関し、特に、モーゼ効果を利用した流動体反射鏡及びこれを用いた照明装置、並びに、流動体反射鏡を用いた反射望遠鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、液体などの流動体に磁界を与えることによって液面形状が変化する現象が知られており、この現象は一般に「モーゼ効果」と呼ばれている。しかしながら、モーゼ効果による液面の変化は極めて僅かであるため、モーゼ効果を実用的に利用することは困難であると考えられていた。これは、非磁性流動体物質と空気との比重差が非常に大きいため、重力の影響を強く受けることが主な原因である。
【0003】
この点に着目し、本出願人の特許出願にかかる特許文献1には、複数種類の非磁性流動体物質を用いることによって液面の変化を拡大する方法が開示されている。複数種類の非磁性流動体物質を用いれば、両者の比重差を非常に小さくすることができるため、比較的弱い磁界によって複数種類の非磁性流動体物質の界面を大きく変化させることが可能となる。
【特許文献1】特開平8−323192号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
モーゼ効果によって得られる界面変化をどのように活用すれば実用的に利用できるのか、これまで必ずしも明らかではなかったが、本発明者らは、これを焦点可変の流動体反射鏡としての利用が好適であることを見いだした。しかしながら、反射鏡として機能させるためには、光の入出射を妨げないよう、光路を確保した構造とする必要がある。しかも、焦点可変量を大きくするためには、絶対的な磁界の大きさだけではなく、反射鏡内における磁界の差(磁場勾配)を大きくする必要もある。
【0005】
したがって、本発明は、モーゼ効果を利用した焦点可変の流動体反射鏡であって、光路を確保した構造を有する流動体反射鏡を提供することを目的とする。
【0006】
また、本発明の他の目的は、モーゼ効果を利用した焦点可変の流動体反射鏡であって、大きな磁場勾配を形成可能な流動体反射鏡を提供することである。
【0007】
また、本発明のさらに他の目的は、このような流動体反射鏡を用いた照明装置を提供することである。
【0008】
また、本発明のさらに他の目的は、このような流動体反射鏡を用いた反射望遠鏡を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による流動体反射鏡は、一方の主面が光の入出射面となる封入容器と、少なくとも一部が前記封入容器の他方の主面側に配置されたヨークと、前記ヨークに磁界を印加するコイルと、前記封入容器内に封入された複数種類の非磁性流動体物質とを備え、前記複数種類の非磁性流動体物質は、体積磁化率が互いに異なることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、封入容器内に複数種類の非磁性流動体物質を封入し、封入容器の他方の主面側に配置されたヨークを介して磁界を印加する構成であることから、光の入出射面である封入容器の一方の主面を遮ることなく、光路を確保することが可能となる。
【0011】
ヨークは、封入容器の側面側に配置された部分をさらに有し、封入容器の他方の主面側に配置された部分と封入容器の側面側に配置された部分によって磁気ギャップが形成されていることが好ましい。これによれば、大きな磁場勾配を生じさせることが可能となる。
【0012】
本発明において、複数種類の非磁性流動体物質は、比重が互いにほぼ同じであることが好ましい。これによれば、重力の影響をほとんど受けることなく、モーゼ効果による大きな界面変化を得ることが可能となる。
【0013】
また、複数種類の非磁性流動体物質は、屈折率が互いに異なることが好ましい。これによれば、両者の界面に分離膜など界面変化の抵抗となる部材を介在させる必要がないことから、このような部材の存在によって界面変化が抑制されることがない。この場合、複数種類の非磁性流動体物質は互いに接触し、互いに混ざり合わない性質を有していることが好ましい。
【0014】
本発明による流動体反射鏡は、封入容器の他方の主面側に配置された反射部材をさらに備えることが好ましい。これによれば、封入容器の他方の主面における反射効率を高めることが可能となる。
【0015】
本発明による流動体反射鏡は、複数種類の非磁性流動体物質間に配置された反射膜をさらに備えることもまた好ましい。これによれば、非磁性流動体物質間における反射効率を高めることが可能となる。
【0016】
また、本発明による流動体反射鏡は、ヨークを介して磁気バイアスを与える永久磁石をさらに備えることが好ましい。これによれば、コイルに電流を流していないニュートラルな状態においても、所定の反射角を維持することが可能となる。
【0017】
本発明による照明装置は、上述した流動体反射鏡と、封入容器の一方の主面側に配置された光源とを備えることを特徴とする。本発明によれば、モーゼ効果を利用して発散型或いは集光型の照明装置を提供することが可能となる。
【0018】
本発明による反射望遠鏡は、上述した流動体反射鏡と、封入容器の一方の主面側に配置され、封入容器の一方の主面より出射した光を反射するミラーとを備えることを特徴とする。本発明によれば、モーゼ効果を利用して、焦点可変の反射望遠鏡を提供することが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
このように、本発明によれば、光の入出射面となる封入容器の一方の主面を遮ることなく、光路を確保することが可能となることから、モーゼ効果を利用した焦点可変の流動体反射鏡を提供することが可能となる。また、封入容器内に比較的大きな磁場勾配を生じさせることが可能となることから、焦点距離の可変範囲も比較的大きくなる。
【0020】
また、本発明によれば、このような流動体反射鏡を利用して、発散型或いは集光型の照明装置を提供することが可能となり、さらには、焦点可変の反射望遠鏡を提供することも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明の好ましい実施の形態による流動体反射鏡10の構成を示す略断面図である。
【0023】
図1に示すように、本実施形態による流動体反射鏡10は、円柱状の封入容器11と、封入容器11を支持するヨーク12とを備えている。封入容器11は、反射鏡としての実使用時における光路上に配置されており、したがって、封入容器11のうち少なくとも光の入出射面となる一方の主面11aについては、ガラスなど可視光線に対して透過率の高い材料を用いる必要がある。
【0024】
ヨーク12は、封入容器11の他方の主面11b側に配置された第1の部分12bと、封入容器11の側面11c側に配置された第2の部分12cを有しており、第1の部分12bにはコイル13が円周方向に巻回されている。これにより、ヨーク12とコイル13は磁気回路を形成し、ヨーク12の第1の部分12bと第2の部分12cによって磁気ギャップが形成されている。より詳細には、ヨーク12の第1の部分12bは、封入容器11の他方の主面11bの略中央部に配置されており、ヨーク12の第2の部分12cは、封入容器11の側面11cのうち入出射面側(主面11a側)の近傍に配置されている。
【0025】
封入容器11の内部には、非磁性流動体物質14,15が封入されている。「非磁性流動体物質」とは、反磁性又は常磁性を有する液体などの流動体を指す。「反磁性」とは、体積磁化率χが負の値(χ<0)である物質の性質をいい、このような性質を有する物質としては、ほとんどすべての有機溶媒、例えば炭化水素、アルコール、ケトン、ベンゼン、テトラヒドロフラン等の有機溶媒、さらには、水、二硫化炭素、液体アンモニアなどの無機液体等が該当する。一方、「常磁性」とは、体積磁化率χが正の値(χ>0)である物質の性質をいい、このような性質を有する物質としては、硫酸銅水溶液など、反磁性体中に遷移金属イオンないし遷移金属錯体分子を溶質として含む溶液あるいはラジカルを溶質として含む溶液等が該当する。
【0026】
非磁性流動体物質14,15としては、体積磁化率χが互いに異なる物質を用いる必要がある。これは、体積磁化率χに差がなければモーゼ効果が発現しないからである。したがって、非磁性流動体物質14の体積磁化率をχ14とし、非磁性流動体物質15の体積磁化率をχ15とした場合、体積磁化率の差△χ(=|χ14−χ15|)はできるだけ大きいことが好ましい。具体的な数値を挙げると、0.1〜2T程度の磁場印加により有意の界面変化を生じさせるためには、体積磁化率の差△χを1×10−8以上、より好ましくは1×10−7〜1×10−3、さらに好ましくは1×10−7〜1×10−5程度とすればよい。
【0027】
体積磁化率については、両者に差がある限り、いずれも正の値であっても構わないし(χ14>0,χ15>0)、いずれも負の値であっても構わない(χ14<0,χ15<0)。もちろん、一方が正の値で他方が負の値であっても構わない(χ14>0,χ15<0、又は、χ14<0,χ15>0)。非磁性流動体物質14,15の体積磁化率の絶対値|χ|は、1×10−1以下、特に1×10−4以下であることが好ましい。
【0028】
また、非磁性流動体物質14,15としては、屈折率nが互いに異なる物質を用いることが好ましい。これは、非磁性流動体物質14,15が互いに接触している場合、屈折率nに差がなければ、界面における反射やレンズ効果が生じないからである。ここで、非磁性流動体物質14の屈折率をn14とし、非磁性流動体物質15の屈折率をn15とした場合、屈折率の差△n(=|n14−n15|)についても、できるだけ大きいことが好ましい。但し、非磁性流動体物質14,15を互いに接触させるためには、これら非磁性流動体物質14,15は、互いに混ざり合わない性質を有している必要がある。
【0029】
また、非磁性流動体物質14,15としては、比重ρができるだけ近いことが好ましく、ほぼ同じであることが最も好ましい。つまり、非磁性流動体物質14の比重をρ14とし、非磁性流動体物質15の比重をρ15とした場合、比重の差△ρ(=|ρ14−ρ15|)ができるだけ小さいことが好ましい。これは、比重の差△ρが大きくなればなるほど、重力による影響が大きくなるため、モーゼ効果による界面変化が抑制されるからである。具体的な数値を挙げると、0.1〜2T程度の磁場印加により有意の界面変化を生じさせるためには、|△ρ|は、0〜1g/cm程度、特に0〜0.1g/cmであることが好ましい。したがって、「非磁性流動体物質14,15の比重ρがほぼ同じ」とは、比重の差△ρが0.1g/cm以下であることを意味し、△ρが0.1g/cm以下であれば、重力による影響をほとんど無視することができる。
【0030】
より大きな界面変化を得るためには、
|△χ/△ρ|>|χ14/ρ14|、且つ
|△χ/△ρ|>|χ15/ρ15
であることが好ましい。0.1〜2T程度の磁場印加により有意の界面変化を生じさせるためには、|△χ/△ρ|は1×10−4cm−1程度以上、特に1×10−3cm−1程度であることが好ましい。
【0031】
図1に示す例では、非磁性流動体物質14が光の入出射面側(主面11a側)、非磁性流動体物質15が反対側(主面11b側)に位置しているが、このような状態を保つ方法としては、例えば、封入容器11の主面11aの内壁に非磁性流動体物質14と親和性の高い材料を塗布し、封入容器11の主面11bの内壁に非磁性流動体物質15と親和性の高い材料を塗布する方法などが考えられる。或いは、封入容器11の主面11aの内壁に非磁性流動体物質15に対して反親和性を持つ材料を塗布し、封入容器11の主面11bの内壁に非磁性流動体物質14に対して反親和性を持つ材料を塗布する方法も考えられる。
【0032】
次に、本実施形態による流動体反射鏡10の機能について説明する。
【0033】
上述のとおり、コイル13は、ヨーク12の第1の部分12bの円周方向に巻回されているため、コイル13に電流を流すと、ヨーク12の第1の部分12bと第2の部分12cによって形成された磁気ギャップを介して、図2に示すような磁界Mが発生する。つまり、ヨーク12の第1の部分12bは、封入容器11の他方の主面11bの略中央部に配置されているため、磁束密度はヨーク12の第1の部分12bに近いほど高くなる。また、ヨーク12の第2の部分12cは、封入容器11の側面11cのうち入出射面側(主面11a側)の近傍に配置されているため、磁界は封入容器11内のほぼ全体に印加される。これにより、封入容器11に封入された非磁性流動体物質14,15の界面16に生じる磁界Mは、ヨーク12の第1の部分12bに近い中心部ほど強く、ヨーク12の第1の部分12bから遠い外周部ほど弱くなる。つまり、非磁性流動体物質14,15の界面16には磁場勾配が生じることになる。
【0034】
これにより、例えば、非磁性流動体物質14の体積磁化率(χ14)よりも非磁性流動体物質15の体積磁化率(χ15)の方が大きい場合、モーゼ効果によって、非磁性流動体物質15の中央部が盛り上がり、非磁性流動体物質14の外周部が盛り上がることになる(図2参照)。そして、非磁性流動体物質14,15の屈折率nが互いに異なっていれば、かかる界面における光の反射方向が変化するとともに、レンズ効果が生じることになる。また、非磁性流動体物質14,15の屈折率nがほぼ同じであっても、界面16に反射膜(図示せず)を介在させておけば、反射膜による光の反射方向が変化することになる。
【0035】
界面16の変動量は、コイル13に流す電流量によって変化させることができる。つまり、コイル13に流す電流量を変化させれば、磁界Mの絶対値が変化するとともに、界面16に生じる磁場勾配も変化することから、コイル13に流す電流量によって界面16の変化状態を制御することができる。このように、コイル13に流す電流量を変えることによって、界面16の変動量を変化させることが可能となる。
【0036】
このように、本実施形態による流動体反射鏡10は、、封入容器11の他方の主面11b側に配置された第1の部分12b、並びに、封入容器11の側面11c側に配置された第2の部分12cを有するヨーク12によって磁界を印加する構成であることから、光の入出射面である封入容器11の主面11aを遮ることなく、光路を確保することが可能となる。しかも、ヨーク12の第1の部分12bと第2の部分12cによって磁気ギャップを形成していることから、大きな磁場勾配を生じさせることも可能となる。
【0037】
本実施形態による流動体反射鏡10は、封入容器11の主面11a側に光源を配置することによって、照明装置として利用することが可能となる。
【0038】
図3は、流動体反射鏡10を用いた発散型の照明装置20の構成を示す略断面図である。
【0039】
図3に示す照明装置20は、図1に示した流動体反射鏡10(χ14<χ15)と、封入容器11の主面11a側に配置された光源21(キセノン管など)によって構成されており、非磁性流動体物質14,15の界面16を反射面として利用することによって、発散角度が可変とされている。つまり、χ14<χ15である場合、コイル13に流す電流量が大きいほど、非磁性流動体物質15の中央部の盛り上がりも大きくなることから、コイル13に流す電流量が大きいほど発散角度は広くなり、逆に、コイル13に流す電流量が小さいほど発散角度は狭くなる。このように、図3に示す照明装置20は、コイル13に流す電流量に応じて発散角度を調整することが可能となることから、例えば、広角ズームに連動するストロボとして利用することができる。
【0040】
尚、図3に示す照明装置20のように、非磁性流動体物質14,15の界面16を反射面として利用する場合、非磁性流動体物質14,15の屈折率差△nが充分に大きい必要があるが、一般に、比重差△ρの小さい流動体間において大きな屈折率差△nを得ることは比較的困難である。この場合には、図4に示すように、非磁性流動体物質14,15の界面に反射膜17を配置し、その表面を反射面として用いることが好ましい。これによれば、非磁性流動体物質14,15に屈折率差△nが存在しない場合であっても、高い反射率を得ることが可能となるとともに、非磁性流動体物質14,15として互いに混ざり合う性質を有する物質を用いることが可能となる。但し、使用する反射膜17としては、モーゼ効果による界面の変動を妨げないよう、柔軟性の高い材料を用いる必要がある。
【0041】
図5は、流動体反射鏡10を用いた発散型の他の照明装置30の構成を示す略断面図である。
【0042】
図5に示す照明装置30は、図1に示した流動体反射鏡10(χ14>χ15)と、封入容器11の主面11a側に配置された光源31によって構成されており、封入容器11の他方の主面11bを反射面として利用することによって、発散角度が可変とされている。つまり、χ14>χ15である場合、コイル13に流す電流量が大きいほど、非磁性流動体物質15の周辺部の盛り上がり(非磁性流動体物質14の中心部の盛り下がり)も大きくなることから、コイル13に流す電流量が大きいほど発散角度は広く、逆に、コイル13に流す電流量が小さいほど発散角度は狭くなる。このように、図5に示す照明装置30についても、コイル13に流す電流量に応じて発散角度を調整することができることから、図3に示した照明装置20と同様、広角ズームに連動するストロボとして利用することができる。
【0043】
尚、図5に示す照明装置30のように、封入容器11の他方の主面11bを反射面として利用する場合、高い反射率を得るためには、封入容器11の他方の主面11bを反射面にミラー等の反射部材を配置することが好ましい。
【0044】
図6は、照明装置30を広角ズーム連動ストロボとして用いたカメラ100の構成を示す概略図である。
【0045】
図6に示すカメラ100は、照明装置30と、ズームレンズ110と、ズーミング操作部120と、制御回路130とを含んで構成されている。ズームレンズ110は、ズーム駆動パルスモータ111を用いてリードスクリュー112を回転させることにより、その焦点距離を変化させることのできるレンズである。また、ズーミング操作部120は、揺動可能なスイッチ121と、スイッチ121のWIDE端121aを介して電源Vccと制御回路130との間に接続された抵抗122と、スイッチ121のTELE端121bを介して電源Vccと制御回路130との間に接続された抵抗123とを備えており、使用者がスイッチ121をWIDE端121a側に操作すると、制御回路130のWIDE入力端子131aがスイッチ121を介して接地され、TELE端121b側に操作すると、制御回路130のTELE入力端子131bがスイッチ121を介して接地されるよう構成されている。
【0046】
制御回路130は、WIDE入力端子131a及びのTELE入力端子131bを有する入力回路131と、マイクロプロセッサ132と、出力回路133と、D/Aコンバータ134とを備えている。マイクロプロセッサ132は、ズーミング操作検知部132aと、変換テーブル132bと、プロセス制御部132cとを有しており、ズーミング操作検知部132aは、使用者によるズーミング操作を入力回路131を介して検知すると、必要な画角を計算し、その値を変換テーブル132b及びプロセス制御部132cに送出する。プロセス制御部132cは、これを受けて出力回路133に駆動信号を供給し、出力回路133はこれに基づいてズーム駆動パルスモータ111を駆動する。一方、変換テーブル132bは、画角を電流値に変換し、得られた電流値(デジタル値)をD/Aコンバータ134によってアナログ信号に変換する。変換テーブル132bは、画角が広いほど(広角であるほど)大きな電流値を出力し、画角が狭いほど(望遠であるほど)小さな電流値を出力する。D/Aコンバータ134によって得られたアナログ信号は、電流アンプ140によって増幅され、照明装置30に含まれるコイル13に供給される。
【0047】
かかる構成により、使用者がスイッチ121をWIDE端121a側に操作すると、ズームレンズ110は広角側に動作するとともに、これに連動して、コイル13に流れる電流は増大し、その結果、照明装置30の発散角度が広くなる。つまり、図7に示すように、ズームレンズ110の視野角A1と照明装置30による照射角B1はほぼ一致し、これにより、広角撮影時における画面隅の光量低下を防止することができる。一方、使用者がスイッチ121をTELE端121b側に操作すると、ズームレンズ110は望遠側に動作するとともに、これに連動してコイル13に流れる電流は減少し、その結果、照明装置30の発散角度が狭くなる。つまり、図7に示すように、ズームレンズ110の視野角A2と照明装置30による照射角B2はほぼ一致し、これにより、望遠撮影時において被写体に光量を集中させることができる。
【0048】
図8は、流動体反射鏡10を用いた集光型の照明装置40の構成を示す略断面図である。
【0049】
図8に示す照明装置40は、図1に示した流動体反射鏡10(χ14<χ15)と、封入容器11の主面11a側に配置された光源41と、光源41から見て照射方向に配置された反射集光板42によって構成されており、封入容器11の他方の主面11bを反射面として利用することによって、集光角度が可変とされている。つまり、χ14<χ15である場合、コイル13に流す電流量が大きいほど、非磁性流動体物質15の中央部の盛り上がりも大きくなることから、コイル13に流す電流量が大きいほど反射角度は狭く(焦点距離が短く)、逆に、コイル13に流す電流量が小さいほど反射角度は広く(焦点距離が遠く)なる。このように、図8に示す照明装置40は、コイル13に流す電流量に応じて集光角度を調整することが可能となることから、例えば、フォーカスに連動する超望遠レンズ用ストロボとして利用することができる。
【0050】
この場合も、高い反射率を得るためには、封入容器11の他方の主面11bを反射面にミラー等の反射部材を配置することが好ましい。
【0051】
図9は、流動体反射鏡10を用いた集光型の他の照明装置50の構成を示す略断面図である。
【0052】
図9に示す照明装置50は、図1に示した流動体反射鏡10(χ14>χ15)と、封入容器11の主面11a側に配置された光源51と、光源51から見て照射方向に配置された反射集光板52によって構成されており、非磁性流動体物質14,15の界面16を反射面として利用することによって、集光角度が可変とされている。つまり、χ14>χ15である場合、コイル13に流す電流量が大きいほど、非磁性流動体物質15の周辺部の盛り上がり(非磁性流動体物質14の中心部の盛り下がり)も大きくなることから、コイル13に流す電流量が大きいほど反射角度は狭く(焦点距離が短く)、逆に、コイル13に流す電流量が小さいほど反射角度は広く(焦点距離が遠く)なる。このように、図9に示す照明装置50についても、コイル13に流す電流量に応じて集光角度を調整することができることから、図8に示した照明装置40と同様、フォーカスに連動する超望遠レンズ用ストロボとして利用することができる。
【0053】
この場合も、高い反射率を得るためには、図4を用いて説明したように、非磁性流動体物質14,15の界面に反射膜17を配置し、その表面を反射面として用いることが効果的である。
【0054】
図10は、流動体反射鏡10を用いた反射望遠鏡60の構成を示す略断面図である。
【0055】
図10に示す反射望遠鏡60は、鏡筒61と、鏡筒61の底部に配置された流動体反射鏡10(χ14<χ15)と、封入容器11の主面11a側に配置されたミラー62と、接眼レンズ63によって構成されており、封入容器11の他方の主面11bが反射面(主鏡)として用いられる。つまり、鏡筒61に入射した光は、流動体反射鏡10によって一旦反射した後、ミラー62によってその進行方向を90°曲げられ、接眼レンズ63へと導かれる。反射望遠鏡60の焦点は、コイル13に流す電流量を変化させ、非磁性流動体物質14,15の界面を変動させることによって調整することができる。この場合も、高い反射率を得るためには、封入容器11の他方の主面11bを反射面にミラー等の反射部材を配置することが好ましい。
【0056】
本発明は、以上説明した実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0057】
例えば、上記実施形態においては、一つの封入容器に2種類の非磁性流動体物質を封入しているが、3種類以上の非磁性流動体物質を封入しても構わない。
【0058】
また、図11に示すように、ヨーク12のうち、第1の部分12bと第2の部分12cを繋ぐ部分を永久磁石18に置き換え、例えば第1の部分12b側をN極、第2の部分12c側をS極とすれば、非磁性流動体物質14,15に磁気バイアスを与えることができる。これによれば、コイル13に電流を流していないニュートラルな状態においても、ヨーク12を介して磁気バイアスが与えられることから、所定の反射角を維持することが可能となる。
【0059】
また、ヨーク12のうち、第1の部分12bと第2の部分12cを繋ぐ部分の全体を永久磁石18に置き換えるのではなく、図12に示すように、ヨーク12の底部に永久磁石18を一部挿入したり、或いは、図13に示すように、ヨーク12の側部に永久磁石18を一部挿入する構成としても構わない。すなわち、磁気バイアスの印加は、ヨーク12の磁路内に永久磁石18が挿入する限り、どの部分に挿入しても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の好ましい実施の形態による流動体反射鏡10の構成を示す略断面図である。
【図2】流動体反射鏡10のコイル13に電流を流した状態を示す図である。
【図3】流動体反射鏡10を用いた発散型の照明装置20の構成を示す略断面図である。
【図4】照明装置20に含まれる非磁性流動体物質14,15の界面に反射膜17を配置した例を示す図である。
【図5】流動体反射鏡10を用いた発散型の他の照明装置30の構成を示す略断面図である。
【図6】照明装置30を広角ズーム連動ストロボとして用いたカメラ100の構成を示す概略図である。
【図7】カメラ100による効果を説明するための模式図である。
【図8】流動体反射鏡10を用いた集光型の照明装置40の構成を示す略断面図である。
【図9】流動体反射鏡10を用いた集光型の他の照明装置50の構成を示す略断面図である。
【図10】流動体反射鏡10を用いた反射望遠鏡60の構成を示す略断面図である。
【図11】流動体反射鏡10に含まれるヨーク12の一部を永久磁石18に置き換えた例を示す略断面図である。
【図12】流動体反射鏡10に含まれるヨーク12の一部を永久磁石18に置き換えた他の例を示す略断面図である。
【図13】流動体反射鏡10に含まれるヨーク12の一部を永久磁石18に置き換えたさらに他の例を示す略断面図である。
【符号の説明】
【0061】
10 流動体反射鏡
11 封入容器
11a 封入容器の一方の主面
11b 封入容器の他方の主面
11c 封入容器の側面
12 ヨーク
12b ヨークの第1の部分
12c ヨークの第2の部分
13 コイル
14,15 非磁性流動体物質
16 非磁性流動体物質の界面
17 反射膜
18 永久磁石
20,30,40,50 照明装置
21,31,41,51 光源
42,52 反射集光板
60 反射望遠鏡
61 鏡筒
62 ミラー
63 接眼レンズ
100 カメラ
110 ズームレンズ
111 ズーム駆動パルスモータ
112 リードスクリュー
120 ズーミング操作部
121 スイッチ
121a WIDE端
121b TELE端
122,123 抵抗
130 制御回路
131 入力回路
131a WIDE入力端子
131b TELE入力端子
132 マイクロプロセッサ
132a ズーミング操作検知部
132b 変換テーブル
132c プロセス制御部
133 出力回路
134 コンバータ
140 電流アンプ
A1,A2 視野角
B1,B2 照射角
M 磁界

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の主面が光の入出射面となる封入容器と、少なくとも一部が前記封入容器の他方の主面側に配置されたヨークと、前記ヨークに磁界を印加するコイルと、前記封入容器内に封入された複数種類の非磁性流動体物質とを備え、前記複数種類の非磁性流動体物質は、体積磁化率が互いに異なることを特徴とする流動体反射鏡。
【請求項2】
前記ヨークは、前記封入容器の側面側に配置された部分をさらに有し、前記封入容器の前記他方の主面側に配置された部分と前記封入容器の前記側面側に配置された部分によって磁気ギャップが形成されていることを特徴とする請求項1に記載の流動体反射鏡。
【請求項3】
前記複数種類の非磁性流動体物質は、比重が互いにほぼ同じであることを特徴とする請求項1又は2に記載の流動体反射鏡。
【請求項4】
前記複数種類の非磁性流動体物質は、屈折率が互いに異なることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の流動体反射鏡。
【請求項5】
前記複数種類の非磁性流動体物質は互いに接触しており、互いに混ざり合わない性質を有していることを特徴とする請求項4に記載の流動体反射鏡。
【請求項6】
前記封入容器の前記他方の主面側に配置された反射部材をさらに備えることを特徴とする請求項4又は5に記載の流動体反射鏡。
【請求項7】
前記複数種類の非磁性流動体物質間に配置された反射膜をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の流動体反射鏡。
【請求項8】
前記ヨークを介して磁気バイアスを与える永久磁石をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に載の流動体レンズ。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の流動体反射鏡と、前記封入容器の前記一方の主面側に配置された光源とを備えることを特徴とする照明装置。
【請求項10】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の流動体反射鏡と、前記封入容器の前記一方の主面側に配置され、前記封入容器の前記一方の主面より出射した光を反射するミラーとを備えることを特徴とする反射望遠鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−208662(P2006−208662A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−19584(P2005−19584)
【出願日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】