説明

流動床反応炉

【課題】伝熱阻害要因を低減しつつ、低コストにて、下部壁部分から上方の所定区間の上部壁部分の摩耗減肉を防止する。
【解決手段】熱交換を行うための炉壁管を備えた上部壁部分Aに沿って下降してくる粒子を、上部壁部分Aにおける下部壁部分Bより上方に離間した位置に内側に突出すると共に上部壁部分Aの周方向に沿って帯状を成す帯状耐火物7に接触させることで、その流れを炉の内側に向かわせ、これにより、帯状耐火物7より下の上部壁部分Cに対する粒子の接触を防止し、当該上部壁部分Cの摩耗減肉を防止する。また、このように、帯状耐火物7を、上部壁部分Aにおける下部壁部分Bより上方に離間した位置に帯状に設けることで、下部壁部分から上方の所定区間を硬化肉盛層若しくは保護皮膜層で覆う従来技術に比して、低コストとすると共に、伝熱阻害要因を低減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動床反応炉に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、底部から供給される燃料と空気を流動材と混合し流動床(流動層)を形成しながら燃焼させ、この燃焼反応により、炉壁管内を流れる水と熱交換する流動床ボイラが知られている。この流動床ボイラでは、流動材の激しい撹拌や熱による炉内壁の摩耗減肉を防止すべく、流動床を形成する炉下部内壁を耐火物で構成している。このような流動床ボイラでは、耐火物の上面と、当該耐火物の上面から上方に所定距離離間した位置との間、すなわち、耐火物から上方の所定区間(例えば2m)において、流動材等の粒子が炉壁管に沿って下降するのを繰り返し当該炉壁管に繰り返し衝突するため、この所定区間の炉壁管に対して、以下の特許文献1に記載のように、耐摩耗性金属より成る硬化肉盛層を溶接により設けるか、若しくは、耐摩耗性金属より成る保護皮膜層を溶着により設け、耐摩耗性の向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−50003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記流動床ボイラにあっては、耐火物上面から所定区間に亘る広範囲に、耐摩耗性金属より成る硬化肉盛層を溶接により設けるか、若しくは、耐摩耗性金属より成る保護皮膜層を溶着により設けることから、コストが非常に高くなるという問題がある。また、このように炉壁管を覆う硬化肉盛層若しくは保護皮膜層が広範囲に亘るため、熱交換のための伝熱が阻害されるという問題もある。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するために成されたものであり、伝熱阻害要因を低減しつつ、低コストにて、炉内壁の摩耗減肉を防止できる流動床ボイラを始めとした流動床反応炉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による流動床反応炉は、反応室の下部から気体を導入し固形物を流動させながら反応室で反応を行わせる流動床反応炉であって、熱交換を行うための炉壁管を有する上部壁部分と、この上部壁部分の下に設定され耐火物を有する下部壁部分と、を具備した流動床反応炉において、上部壁部分における下部壁部分より上方に離間した位置に、内側に突出すると共に上部壁部分の周方向に沿って帯状を成す帯状耐火物を備えたことを特徴としている。
【0007】
このような流動床反応炉によれば、熱交換を行うための炉壁管を備えた上部壁部分に沿って下降してくる粒子は、上部壁部分における下部壁部分より上方に離間した位置に設けられ内側に突出すると共に上部壁部分の周方向に沿って帯状を成す帯状耐火物に接触し、その流れが炉の内側に向かうことになる。このため、帯状耐火物より下の上部壁部分に対する粒子の接触が防止され、当該上部壁部分の摩耗減肉を防止できる。また、このように、帯状耐火物は、上部壁部分における下部壁部分より上方に離間した位置に帯状に設けられたものであるから、下部壁部分から上方の所定区間を硬化肉盛層若しくは保護皮膜層で覆う従来技術に比して、低コストであると共に、伝熱阻害要因を低減でき熱交換効率を向上できる。
【0008】
ここで、帯状耐火物は、その上面の内側に位置し内側に向けて下るように傾斜する傾斜面を有していると、この傾斜面により、下降してくる粒子が積極的に炉の内側に寄せられるようになり、帯状耐火物より下の上部壁部分に対する接触が一層防止され、当該上部壁部分の摩耗減肉を一層防止できる。
【0009】
また、帯状耐火物の高さHは、100mm≦H≦300mmの関係を満たすことが好ましい。これは、L<100mmであると、帯状耐火物が短すぎて例えばスタッドピンで保持する場合には当該スタッドピンによる保持が難しく脱落の虞があるからであり、また、L>300mmであると、伝熱阻害が大きくなってしまうからである。
【0010】
また、帯状耐火物の突出長Lは、40mm≦L≦100mmの関係を満たすことが好ましい。これは、L<40mmであると、帯状耐火物が薄すぎて例えばスタッドピンで保持する場合には当該スタッドピンによる保持が難しく脱落の虞があり、且つ、下降してくる粒子が帯状耐火物より下の上部壁部分に接触しやすくなるからであり、また、L>100mmであると、帯状耐火物が厚すぎて例えばスタッドピンで保持する場合には重すぎ脱落の虞があるからである。
【発明の効果】
【0011】
このように本発明による流動床反応炉によれば、伝熱阻害要因を低減しつつ、低コストにて、下部壁部分から上方の所定区間の上部壁部分の摩耗減肉を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る流動床反応炉を示す概略断面構成図である。
【図2】図1に示す流動床反応炉の上部壁部分の要部を下部壁部分の上部と共に炉内側から見た図である。
【図3】図2のIII-III矢視図である。
【図4】図2のIV-IV矢視図である。
【図5】矩形筒形状を成す流動床反応炉及びサイクロンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明による流動床反応炉の好適な実施形態について図1〜図5を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る流動床反応炉を示す概略断面構成図、図2は、図1に示す流動床反応炉の上部壁部分の要部を下部壁部分の上部と共に炉内側から見た図、図3(a)は、図2のIII-III矢視図、図3(b)は、図3(a)に溶接肉盛を施した図、図4は、図2のIV-IV矢視図、図5は、矩形筒形状を成す流動床反応炉及びサイクロンを示す図であって、図5(a)は一部破断側面図、図5(b)は図5(a)のV-V矢視図であり、ここでは、流動床反応炉を循環流動床(CFB;Circulating FluidizedBed)ボイラとして説明する。
【0014】
図1に示すように、循環流動床ボイラ100は、矩形筒の上下端を閉じた形状を呈し、その下部は、下方に行くに従って幅方向(図1の左右方向)に狭まり矩形筒が小さくなる形状とされている。この循環流動床ボイラ100は、矩形筒の上下端を閉じた形状を構成している炉壁1内が反応室2とされ、この反応室2の底部に設けた複数の開口3から燃焼空気を導入すると共に反応室2の下部から燃料(固形物)を導入し当該燃料を流動させながら反応室2で燃焼反応を行わせるものである。
【0015】
この循環流動床ボイラ100の炉壁1は、具体的には、図2及び図4に示すように、炉壁周方向(図の左右方向)に並設した水壁チューブ(炉壁管)4,4同士を平板状のフィン5で連結した所謂メンブレンパネルで構成されている。この水壁チューブ4は、反応室2での燃焼反応による熱を、当該水壁チューブ4内に流れる水と熱交換する。
【0016】
これらの水壁チューブ4及びフィン5から成り炉壁を構成するメンブレンパネル1は、図1に示すように、底部から上方に所定距離離間した位置において、斜め下方且つ外方に向かって折り曲げられ、外方に所定距離向かったらさらに斜め下方且つ内方に向かって折り曲げられ、この折り曲げにより形成されたへこみ部に耐火物6が設けられている。
【0017】
すなわち、炉壁は、図1及び図2に示すように、熱交換を行うための水壁チューブ4を有しメンブレンパネル1が露出する上部壁部分Aと、この上部壁部分Aの下に設定されて耐火物6を有し当該耐火物6によりメンブレンパネル1が覆われる下部壁部分Bと、を具備する構成とされている。そして、このように下部壁部分Bのへこみ部に耐火物6が収容されることで、上部壁部分Aの内壁面と下部壁部分Bの耐火物6の表面とがほぼ面一に連続する構成とされている。
【0018】
なお、耐火物6は、ここでは、セラミック焼成物等の耐火ライニングとされている。また、水が流れる水壁チューブ4に代えて、水蒸気が流れる炉壁管を用いて熱交換を行うようにしても良い。
【0019】
この循環流動床ボイラ100には、図5に示すように、サイクロン11が付設されている。このサイクロン11は、反応室2での燃焼反応により生じた燃焼ガス及び粒子を、サイクロン11の上部の燃焼ガス導入口11aを通して導入して当該粒子を燃焼ガスから分離し、分離粒子をサイクロン11の下部の粒子排出口11bを通してボイラ下部に戻すものである。
【0020】
ここで、この循環流動床ボイラ100では、図1及び図2に示すように、下部壁部分Bの耐火物6の上端から上方に所定距離(約2m)離間した位置までが特に上部壁部分の摩耗減肉が顕著となるため、本実施形態にあっては、この所定距離離間した位置に、内側に突出すると共に上部壁部分Aの周方向に沿って帯状を成す帯状耐火物7を設けている。
【0021】
この帯状耐火物7は、帯状に延びて棚段の如き構成とされ、図2及び図3に示すように、その上面の内側に位置し内側に向けて下るように傾斜する上部傾斜面8を有すると共に、その下面の内側に位置し内側に向けて上がるように傾斜する下部傾斜面9を有し、上部傾斜面8の内側の稜線と下部傾斜面9の内側の稜線との間の面は鉛直面12とされている。なお、この帯状耐火物7は、上部壁部分Aの全周に亘って連続的に設けられていても、周方向に断続的に設けられていても良い。
【0022】
帯状耐火物7は、ここでは、セラミック焼成物とされている。このセラミック焼成物は、図3及び図4に示すように、水壁チューブ4の外周面に、当該水壁チューブ4の軸線方向に沿って、スタッドピン10を千鳥状に(例えば軸線方向に沿って、外周面の真ん中、左側、真ん中、右側という順に離間して並ぶように)配列し溶接してアンカーとすると共に、これを内側から囲むように帯状耐火物の形状を成形するための型枠を配置し、この型枠内に耐火物を流し込み、固化、離型、焼成することで得られる。なお、耐火煉瓦等を用いることもできる。
【0023】
このような構成を有する循環流動床ボイラ100によれば、反応室2で燃焼反応が行われ、この燃焼反応による熱は水壁チューブ4に伝達されて熱交換が行われる。燃焼反応により生じた燃焼ガスは、粒子を伴いながら炉内中央側から上昇し後段のサイクロン11へ排出され、残りの粒子は上部壁部分Aに沿って下降する。
【0024】
この上部壁部分Aに沿って下降してくる粒子は、上部壁部分Aにおける下部壁部分Bより上方に離間した位置に設けられ内側に突出すると共に上部壁部分Aの周方向に沿って帯状を成す帯状耐火物7に接触し、その流れは炉の内側に向かう。このため、帯状耐火物7より下の上部壁部分C(図1参照)に対する粒子の接触が防止され、当該上部壁部分Cの摩耗減肉を防止できる。また、このように、帯状耐火物7は、上部壁部分Aにおける下部壁部分Bより上方に離間した位置に帯状に設けられたものであるから、下部壁部分から上方の所定区間を硬化肉盛層若しくは保護皮膜層で覆う従来技術に比して、低コストであると共に、伝熱阻害要因を低減できる。すなわち、伝熱阻害要因を低減しつつ、低コストにて、下部壁部分Bから上方の所定区間の上部壁部分Cの摩耗減肉を防止できる。
【0025】
加えて、本実施形態にあっては、帯状耐火物7は、セラミック焼成物や耐火煉瓦等とされているため、従来技術のように硬化肉盛層若しくは保護皮膜層を設ける場合に比して、一層低コスト化が図られている。
【0026】
また、帯状耐火物7は、その上面の内側に位置し内側に向けて下るように傾斜する上部傾斜面8を有しているため、この傾斜面8により、下降してくる粒子が積極的に炉の内側に寄せられるようになり、帯状耐火物7より下の上部壁部分Cに対する接触が一層防止され、当該上部壁部分Cの摩耗減肉を一層防止できる。
【0027】
ここで、帯状耐火物7の高さH(図3参照)は、100mm≦H≦300mmの関係を満たすことが好ましい。これは、L<100mmであると、帯状耐火物7が短すぎてスタッドピン10で保持する場合に当該スタッドピン10による保持が難しく脱落の虞があるからであり、また、L>300mmであると、伝熱阻害が大きくなってしまうからである。
【0028】
また、帯状耐火物7の突出長Lは、40mm≦L≦100mmの関係を満たすことが好ましい。これは、L<40mmであると、帯状耐火物7が薄すぎてスタッドピン10で保持する場合に当該スタッドピン10による保持が難しく脱落の虞があり、且つ、下降してくる粒子が帯状耐火物7より下の上部壁部分Cに接触しやすくなるからであり、また、L>100mmであると、帯状耐火物7が厚すぎてスタッドピン10で保持する場合に重すぎ脱落の虞があるからである。
【0029】
さらにまた、図3(b)に示すように、帯状耐火物7の上面から上方の短い範囲に亘る上部壁部分F(水壁チューブ4及びフィン5;メンブレンパネル)との間に、溶接肉盛13を施すことが好ましい。このように溶接肉盛13を設けることによって、帯状耐火物7の上面で粒子が上部壁部分F側に跳ね返った場合に当該溶接肉盛13に当たることになり、上部壁部分Fの摩耗減肉を防止できる。
【0030】
因みに、図5に示すように、2個のサイクロン11が、矩形筒形状を成す循環流動床ボイラ100の両端側(図5(b)の上下端側)に各々付設されている場合、具体的には、サイクロン11の上部の燃焼ガス導入口11aが、矩形筒形状を成す炉の上部の両端に各々接続され、サイクロン11の下部の粒子排出口11bが、燃焼ガス導入口11aの下方位置に各々接続される場合には、炉の両端側に粒子が戻されることになるから、炉の両端側の粒子排出口11bの上方の上部壁部分の摩耗減肉が顕著となり、従って、この炉の両端側の粒子排出口11bの上方のみに帯状耐火物7を設けるようにしても良い。なお、このような場合にあっても、循環流動床ボイラ100の高さL1は、約15m(小型の場合)〜約40m(大型の場合)であり、帯状耐火物7は、L1の高さにかかわらず、下部壁部分Bの耐火物6の上端から上方にL2=約2m離れた位置に設けられている。
【0031】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、上記実施形態においては、低コスト化の観点から、帯状耐火物7を、セラミック焼成物や耐火煉瓦等としているが、当該帯状耐火物とほぼ同形状の溶接肉盛としても良い。
【0032】
また、上記実施形態においては、循環流動床ボイラ100を矩形筒形状としているが、例えば、円筒形状等であっても良い。
【0033】
また、上記実施形態においては、特に好適であるとして、循環流動床ボイラ100に対する適用を述べているが、循環しない流動床ボイラに対しても適用でき、さらには、燃焼反応ではなく発熱を伴う化学反応を行う炉に対しても適用でき、要は、反応室の下部から気体(空気以外でも可)を導入し固形物(例えば燃料や反応対象物)を流動させながら反応室で反応を行わせる流動床反応炉に対して適用できる。
【符号の説明】
【0034】
1…メンブレンパネル(炉壁)、2…反応室、3…開口、4…水壁チューブ(炉壁管)、5…フィン、6…耐火物、7…帯状耐火物、8…帯状耐火物の上部傾斜面、9…帯状耐火物の下部傾斜面、10…スタッドピン、11…サイクロン、13…溶接肉盛、100…循環流動床ボイラ(流動床反応炉)、A…上部壁部分、B…下部壁部分、C…帯状耐火物より下の上部壁部分、H…帯状耐火物の高さ、L…帯状耐火物の突出長。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応室の下部から気体を導入し固形物を流動させながら前記反応室で反応を行わせる流動床反応炉であって、熱交換を行うための炉壁管を有する上部壁部分と、この上部壁部分の下に設定され耐火物を有する下部壁部分と、を具備した流動床反応炉において、
前記上部壁部分における前記下部壁部分より上方に離間した位置に、内側に突出すると共に前記上部壁部分の周方向に沿って帯状を成す帯状耐火物を備えたことを特徴とする流動床反応炉。
【請求項2】
前記帯状耐火物は、その上面の内側に位置し内側に向けて下るように傾斜する傾斜面を有することを特徴とする請求項1記載の流動床反応炉。
【請求項3】
前記帯状耐火物の高さHは、100mm≦H≦300mmの関係を満たすことを特徴とする請求項1又は2記載の流動床反応炉。
【請求項4】
前記帯状耐火物の突出長Lは、40mm≦L≦100mmの関係を満たすことを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の流動床反応炉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−141089(P2011−141089A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−2182(P2010−2182)
【出願日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】